第203回 放送と人権等権利に関する委員会

第203回 – 2013年11月

フジテレビの対応報告書
宗教団体会員事案の審理・・・など

「大津いじめ事件報道に対する申立て」事案で、フジテレビから提出された対応報告書を了承した。「宗教団体会員からの申立て」事案について審理し、「委員会決定」案をさらに検討した。

議事の詳細

日時
2013年11月19日(火)午後4時~6時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、
曽我部委員、田中委員、林委員

1.「大津いじめ事件報道に対する申立て」事案の対応報告書

2013年8月9日に通知・公表された「委員会決定第50号」に対し、フジテレビより局としての対応と取り組みをまとめた報告書が11月5日付で提出された。この日の委員会で報告書の内容が検討され、了承された。

2.「宗教団体会員からの申立て」事案の審理

テレビ東京が2012年12月30日に放送した報道番組「あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~」で、番組で紹介された男性が、公道で盗撮された容姿・姿態が放送されたほか、カウンセリングにおける会話や両親に宛てた手紙の内容が公にされるなどプライバシーが侵害されたとして、謝罪と今後二度と当該番組を放送しないと誓約するよう求めて申し立てたもの。
この日の委員会では、前回委員会と前週開かれた第3回起草委員会での議論を反映した「委員会決定」案について検討した。本件放送で申立人が特定されるかどうか、プライバシー侵害と番組の公共性・公益性との関係などについて各委員が意見を述べ、委員会決定の方向性を煮詰めた。
次回委員会でさらに審理を進める。

3.その他

  • 次回委員会は12月17日に開かれる。
  • 県単位の意見交換会を2014年1月30日に鹿児島で開催する。

以上

2013年10月

意見交換会を大阪で開催

放送人権委員会は、近畿地区の放送事業者との意見交換会を10月29日に大阪で開催した。毎年1回地区単位で意見交換会を開いており、近畿地区での開催は2006年以来7年ぶりで、10社77人が出席した。委員会側からは三宅弘委員長ら9人の委員全員が出席し、前半では曽我部真裕委員が判例や放送番組をもとに報告を行い、休憩後の後半では最近の「委員会決定」をめぐって人権や放送倫理について意見をかわした。予定を上回る3時間20分にわたって議論をした。

概要は以下のとおりである。

◆三宅弘委員長 冒頭あいさつ◆

ご承知のとおり、特定秘密保護法案が国会に提案をされようとしています。サツ回りを日ごろされている報道機関の方々にとっても、テロとかスパイということで行政機関の長が認定した情報が特定秘密になるということで、これは都道府県の警察本部長まで含みますので、霞ヶ関以外の取材・報道関係者にとっても、非常に危険なものだと考えています。法案の中身を見ると、戦前の国防保安法(1937年)、軍機保護法(1941年)に似た条文があります。それはまさに戦前の治安維持法をベースにさまざまな戦時立法の中で作られた法律です。普通の戦争のできる国に舵が切られようとしている状況だと私は考えています。
ことし6月に亡くなったBPOの初代理事長の清水英夫さんが30年以上前に情報公開権利宣言というのを自ら起案されて、情報公開を求める市民運動の宣言としました。その一節に、「国民の目と耳が覆われ、基本的な国政情報から隔離されるとき、いかなる惨禍に見舞われるかは、過去の戦争を通して私たちが痛切に体験したところである」とあります。清水さんは学徒動員で出陣した経験の持ち主だから、このひと言でおわかりになったと思いますが、私どもは過去の歴史を読み解きながら追体験しなければなりません。報道機関には国家秘密のベールを切り裂き、鋭い調査報道がますます求められるのではないかと考えています。放送に求められる社会的な要請というのはこれからもますます強くなると思います。
そういう中で、私たち放送人権委員会がどういう役割を果たすのかということを常日ごろ考えています。報道に対して無用な権力介入を招かないように、取材、報道は放送の対象者の名誉、プライバシーを侵すことなく、放送倫理にもかなう必要があります。そのためのアドバイスをするという役割が、私どもの機関であると認識しています。
清水さんは、かつて放送人権委員会は「必要悪」だと言われました。私の先代の堀野委員長は、「辛口の友人」という言葉で話されました。こちらから友人と言ってもそちらから受け入れていただけるかどうか? きょうの意見交換会などを通じて友情を深めたいと思っています。

◆曽我部真裕委員の報告◆

「報道と人権-最近の事例から改めて確認する」

曽我部委員は、名誉毀損の法律的な枠組みの確認として(1)適示事実の公共性(2)目的の公益性(3)真実・真実相当性といった名誉毀損の正当化自由などの説明に続いて、裁判所の判断の基準について、最近の判例を基に報告した。

何を放送したかがポイント

まず、名誉毀損を判断するときに、何を放送したかがそもそも争いになる場合があります。番組というのは一定の長さがあるし、ニュアンスのある表現も含まれているので、番組が何を提示しているのかということを確定する必要がある場合があります。なぜそういう必要があるのかというと、1つは、そもそもこれが名誉毀損にあたるのかどうかという点、もう1つは、免責事由のときに何を証明したら真実証明になるのかという点に関連する場合があるからです。
民放キー局が埼玉県の所沢産の野菜がダイオキシンに汚染されていると報道したことに対し農家が名誉毀損だと訴えた事案で、高裁判決と最高裁判決とで、この番組が何を放送したのかということについての理解が違いました。そこが勝敗に直結したというところに注目したいと思います。
高裁判決は、このダイオキシン報道の中身の要約として、「民間の研究所が所沢産の野菜を調査したところ、1グラムあたり0.64から3.80ピコグラムTEQのダイオキシンが検出されたこと」というのが放送内容だったと理解しました。これを立証できるかという問題になったときに、1グラムあたり3.4ピコグラムTEQの白菜が1つあったので、これは「真実性あり」だと認定しました。
これに対して最高裁は報道の要約を、「ホウレンソウを中心とする所沢産の葉物野菜が全般的にダイオキシンによる高濃度の汚染状態にあり、その測定値が1グラムあたり0.64から3.80ピコグラムTEQもの高い数字があること」としました。そうすると、白菜が1点だけあっただけでは「真実の証明になりません」ということなのです。放送が何を言ったかを判断する基準は、「一般視聴者の普通の注意と見方」です。テレビの場合は、ナレーションとか効果音とかいろいろな演出があるので、それも総合的に加味して一般人の基準で判断します。その結果、最高裁は単にそういう高濃度の汚染されている野菜が少しあるというだけではなくて、全般的にあるという印象を与えたのだという理解をしているということです。

未確認情報の報道に関する異なる判例

次に、未確認情報の報道の場合の裁判所の判断を確認します。うわさであると断わったうえで、社会的評価を低下させるようなことを報道した場合に、何を立証すればいいのでしょうか。1968年の最高裁の決定は、「真実性立証の対象となるのは、風評そのものが存在することではなく、その風評の内容である事実の真否」だと判断しました。これは非常に古い判断ですが、最近になっても同様の判断があります。2005年の東京高裁の判決で、「名誉毀損の違法性の判断においては、真実性の証明の対象は疑惑の対象として指摘される事実」だ、というふうに判断をしています。疑惑報道の場合であっても、疑惑の内容の真実性を立証することが求められるということだとすると、これは報道機関にとってかなり厳しい判断です。
そうでない判断も幸いなことにあります。2002年の東京高裁の判決で、ある夕刊紙がある県の県会議員が多額の脱税をしているという疑惑を報道したことに関するものです。判決では、「立候補者にかかる事柄である場合は、民主的政治の土台としての表現の自由・報道の自由が最大限に尊重されるべき」だ、というスタンスをまず述べているのが注目されますが、それをふまえて「真実であること、真実であると信ずるについて相当の理由があることの完全な証明がなくても、疑念、疑惑として合理的な根拠があり、国民、政党、議会等あるいは司直の手によって今後の更なる真実究明をする必要があることを社会的に訴えるために、これを意見ないし論評として表明することは民主的政治の維持のために許容されるべきであり、これを報道することは違法性を欠く」というふうに示しています。

未確認情報をどう報道するか

要は裁判例は分かれているということですが、では、どのように考えるべきかというと、佃克彦著の「名誉毀損の法律実務(第2版)」には、次のように書かれています。風評形式の記事の場合は、先ほどの1968年の最高裁判決の判断方法が妥当すると解すべきではないとしています。佃氏は「その記事がいかなる事実を適示していると読者が受け止めるかの問題であって、記事の形式によって判断方法が自動的に決まるわけでない」と、「メディアとしては事実として書ける部分と、推測にとどまる部分を明確に分け、表現の仕方に注意して報じることが必要」だということです。そういう形で真摯にやっていれば、メディアが救済されることになると思われます。
これらの判決や見解をふまえると、さしあたり次のようなことが言えるのではないでしょうか。まず、最低限、「疑惑報道」であることが視聴者に理解されなければなりません。この問題は、何を放送したかということと同じで、一般の視聴者の基準で判断します。つまり視聴者がその放送を見て、これは断定的に言っていると判断するのか、疑惑報道だと理解するのか、それにかかるということと思われます。
そのうえで、疑惑報道だと理解されるようなものであったとしても、疑惑であると言えば何でも報道していいというわけでは当然なくて、次の2点が必要になります。つまり、(1)取材は可能な限りしたうえで、疑惑として合理的な根拠があること、さらに、(2)さらなる真実究明が必要であることを訴える必要があることです。これは疑惑段階であえて報じる価値があるというような趣旨です。
つまり、疑惑としての合理的な根拠が必要であり、疑惑段階で報じる価値があることというのが少なくとも必要だと思われます。現在のところ、裁判所の判断は分かれていますが、少なくとも今述べたことは満たす必要があると思われます。こうした点を後ほどの議論の参考にしていただきたく思います。

曽我部委員は、続いて裁判員制度と報道という論点から事件報道で配慮すべき点などについて説明し報告を終えた。

◆決定50号「大津いじめ事件報道に対する申立て」について◆

まず、起草担当の委員が決定のポイント等を説明してから、意見交換に入った。

奥武則委員長代行:今回の決定のポイントは、一つはインターネット上に少年の実名が判読できる画像が掲載され、その画像を放送したテレビ局の責任をどこまで問えるかということですが、名誉毀損とかプライバシー侵害といった人権上の問題を考えた時に、実際に放送されたテレビの画像では分からないわけですですから、そこでは人権侵害の問題は生じないと、そういう判断をまず前段でしているわけです。
しかし、放送が静止画として切り取られてインターネットに流れる、そういう新しいメディア状況をどういうふうに判断するかという問題が2番目の焦点になるわけです。放送された画面を勝手に切り取って、それをインターネットにアップするという第三者の故意行為は、著作権法に違反する行為であり、そういう第三者の違反行為が介在しているから責任ありませんよ、と局側は言うわけですね。それは、そのとおりだと考えざるを得ないところがある。しかし、問題はその先で、ニュースなり番組を作る人が、新しいメディア状況をどこまでしっかり考えて作らなければいけないのかという点です。この場合、特にいじめ事件という世の中にずいぶん喧伝されて話題になった事件で、少年が関わっているわけですから、その実名に関わる情報、画像の扱いは極めて慎重にしなければいけないと、その点でミスがありましたと、決定ではそういう判断をしたわけです。
それから、なぜこういうミスが起こったのかという問題ですが、実際ヒアリングで聞いても、どうしてこういうことが起こったのか、実はよく分からないところがあるんです。「そこをもっとしっかり究明しろ」とおっしゃる方もいますが、それは放送人権委員会の仕事からちょっと逸脱するだろうと思っています。決定では、全員が見過ごしたというか、考えが及ばなかったという意味で、報道現場全体の人権感覚の欠如ということを指摘したわけです。
私がテレビ局の現場の方々に求めたいのは、やっぱり一人一人が仕事をしていく中でのある種の感覚ですね、「ここは、やっぱりちょっと気を付けなきゃいけない」とか「ここまではやっちゃいけない」とか、そういう感覚を一人一人が身に付けて、判断していくしかないんであって、決定文の表現になると、「人権感覚の涵養」とか、「高度に研ぎ澄ました人権感覚」とか、そういう堅苦しい言葉にならざるを得ないのですが、結局どんなにしっかりシステムを整えて管理する仕組みを作っても、そこで働いている人間がしっかりしてなきゃダメなんですよね。結局、最後は人間だという気がしていまして、こういう決定文になったわけです。

大石芳野委員:アンケートの回答を拝読しますと、「大津いじめ事件の問題は他山の石」と答えてらっしゃる方が何人かいらっしゃって、審理をしていても新しい大きな問題だなというふうに思いました。「ビデオテープの時代でも、止めれば判読できた」というご意見もありましたけれども、結局、今の新しい時代に入っての問題だったと思います。
それで、どうして起こったかというと、やはり奥代行がおっしゃいましたけれども、機械の問題ではなく人間の問題だったかなと。なぜこの映像素材を3種類(モザイク処理したもの、モザイク処理のないもの、黒塗りをしたもの)作ったのか、局にヒアリングで聞きましたが、明確な答えがありませんでした。アンケートでは、「現場が忙し過ぎた」、「流れ作業だった」とか、「意思の疎通が不足だった」とお書きになった方もいらっしゃいますけれども、やはり、そういうことだったんだろうなと思います。というのは、局はずっと長い間この3種類を使ってきたわけですから、今回だけというわけではなく、長い間使っていた、それが今回は誰も気付かなかったというのがヒアリングでの答えで、担当の人のミスということになっていますが、一人のせいにしてしまうのは、どうなのかなと私は考えたりしています。
記者だけではなく、派遣の人も、子会社の人も、いろんな人たちが集まって放送、ニュースを作っているようですので、そういう中で一番大事なのはジャーナリスト感覚だと思うんです。これはバラエティでもドラマでも、放送に関わる人はみなジャーナリストでなければならないと私は強く思っています。落としたら割れると分かっていた器を落としてしまった原因は何だったのか、しっかり握っていなかったのか、あるいはよそ見していたのか、そういう人間の意識に関わってきますので、これは皆さんだけでなく、私にとっても大事なジャーナリストとしての自覚というか、認識というか、そういうものに関わってくるかなということを、つくづく感じております。

【謝罪放送について】

(以下、会場からの発言)

  • 今回の事案では、局が放送で謝罪をしたことによって、「え、そんな映像が流れたんだ」ということで拡散した部分もあったと思うんです。もしかしたら、放送で謝罪せずにご本人に謝罪するところに留めておけば、こんなに拡散しなかったかもしれないと思ってしまって。どういう謝罪が正しいのか、うかがいたい。

奥委員長代行:ご質問の点は委員会でもかなり議論がありました。確かに謝罪放送が一つのきっかけになった部分はあるだろうと思いますが、じゃあ、謝罪放送がなければ、ああいう形のバッシングが加速・過熱しなかったかというと、それは全く検証できないということが一つありますね。
それから皆さん、テレビ局の現場にいらっしゃる方ですから、ぜひ自分の問題として考えていただきたいんですけれども、今回のケースで言えば、テレビ局は当初は全然認識がなかったわけです。翌日の午前中、新聞社から電話が入って、「お宅のテレビの画像がインターネットに流れて大問題になっているよ」と取材を受けたんですね。その段階で、テレビ局の現場の方がどういう判断をするか。これは個人情報に関わる問題だから、テレビで謝罪しないで当事者にだけ「ごめんなさい」と謝って済ませるか。今質問された方は、そういう選択もあるのではないかとおっしゃったわけですけども、どうでしょうかね? 
やっぱり自分のテレビニュースの映像が素材になって大きな問題になっている、人権問題が生じていると分かった時に、それはテレビ放送の問題としてあるわけですから、それをテレビの放送で何か口を拭っておくことは、やっぱりまずいのではないかというのが委員会の判断です。人権に関わるので、謝罪の仕方にも配慮して謝罪放送をした選択は正しかっただろうと、委員会は判断しました。

三宅委員長:ちょっと補足ですけど、局が謝罪しているということをふまえ、決定を出す前に、委員長として、委員会の総意でしたから、双方に和解で解決しませんかという話もしました。委員会の決定文が流れることによって、もう一度視聴者にこの放送の記憶を喚起させて、少年と母親がまたメディアやツイッター等でたたかれるようなことがあってはならないと思ったので、そういう配慮もいたしました。最終的には、申立人側は多少そういうことがあったとしても、きっちりした決定をもらいたいという判断をされて、和解には応じられませんでしたけども、それなりの働きかけをするという意味合いでも、謝罪放送は重要なポイントだったかなとは考えています。

  • 今回の場合、相手方に謝罪放送をするというコンタクトはとったんでしょうか? 当社では間違った情報を流した場合は、まず最初に先方と連絡を取ってご意見をお聞きして、最終的にどうするか判断しています。

奥委員長代行:局は、問題を把握した段階で、もちろんその当事者に連絡する段取りを取ったようなんですけれども、つかまらず、ちょっと経ってから代理人の弁護士と話し合いができたということでした。少し待ってから、謝罪放送をするかどうか考えることができた可能性はあるんですけれど、ただ、既に新聞社の取材が入っていて、記事に書かれる可能性がすごくあるわけです。そういう時に局として何も対応を取っていないというのは、選択としてはまずかろうと判断し、速やかに人権に配慮しつつ責任を認めたということだと思います。単純な誤りについて「ごめんなさい」と言うのとは相当違う問題があり、確かにいろんなケースがあるだろうなとは思っています。

【放送自体の問題性】

  • 決定の冒頭の「テレビ映像に限ればプライバシーの侵害には当たらない」という部分にすごく違和感を覚えます。要するに、放送そのものに一部でも出ている以上、ひとコマかも分からないですけれど、放送自体にプライバシー侵害の問題はなかったといえるのか、お聞きしたい。

三宅委員長:曽我部委員の報告にありましたが、「一般人の通常の見方」が最高裁の判断の基準です。ネット上でなくても、静止画像にしたら判読できるからプライバシー侵害に当たるのではないかという議論があることは十分承知していますが、私も何回その映像を見ても分からないんです。もう1.1秒ぐらいですから。しかも、テレビは真ん中を見ますが、ちょうど上の端なので、何回見ても分からないという状況ですので、「一般人の通常の見方」からすると、プライバシー侵害はちょっと酷じゃないかなと、それよりも放送倫理上の問題としてはっきり判断したほうが納得いただけるんじゃないかということも考えました。
明らかな名誉毀損とかプライバシー侵害の事例は、もう長年積み重ねられてきていますから、多分即座に放送局でも対応されて、委員会に来るまでに解決されているようなケースもあるのではないかと、私どもも推測しています。確かに非常に微妙なケースの申立てが多くなってきております。
そういう観点からすると、無理やり名誉毀損かプライバシー侵害かどうかを判断をするよりは、放送倫理上の問題としてこれからの放送に生かしていただくような見解を述べるということが委員会に求められているのではないかと。静止画像にできるからプライバシー侵害とするかどうかいう点について、最終的にそこは問わないという結論を委員会が出しているということを読んでいただけると、読み方として参考になるのではないかなと思います。

◆決定51号「大阪市長選関連報道への申立て」について◆

朝日放送の当該ニュースの同録DVDを視聴したあと、まず委員長と起草担当の委員が決定のポイントを説明した。

三宅委員長:短いストレートニュースですが、一番印象に残るのは、「スクープです」と言い切られたところと、内部告発者が「やくざと言ってもいいくらいの団体だと思っています」、そこのところが、やはり大きな問題点ではなかったかと考えております。 
曽我部委員の報告にありましたが、噂を報道する時は、その真実証明の対象が実際の噂があるということではなくて事実証明だという判例のグループと、疑いは疑いとして合理的な疑いとして報道をすればいいという判例の2つに分かれておりますが、今回の決定はどちらの立場かというと、疑いは疑いとして合理的に判断されるべきだというところに一応立っているわけです。そういう意味では、放送局側にかなり理解を示す立場という前提条件があります。それは決定の結論でも一文入れて、「また、疑惑を報道するのであれば、取材努力を尽くしたうえで、あくまでも疑惑の段階であることが明確になるようにすべきである」という、この一文が今言った判例の立場をベースに考えているということです。ただ、冒頭の「スクープです」がかなり強烈で、どうも「疑い」という感じがしないというころが、やはりこの委員会決定になった部分だと思います。
それから「やくざ」という強い表現の論評の部分ですね,あそこでどうしても使わないといけない映像なのか、非常に気になりました。短い報道であればあるほど、脇が甘くならないようにきっちり固めていただく必要があるのではないかということを、今回警告させていただいたと考えています。

小山剛委員:今回の決定の最初のポイントは、この放送が何を報道したのかということです。放送をご覧になって分かりますように、「疑惑」という言葉が2か所用いられていますが、回収リストについては、「疑惑」ではなく、当然に本物であるという扱いになっているという印象を受けました。それから内部告発者の「やくざと言ってもいいくらいの団体」というコメントですが、非常に視聴者に与えるインパクトが強く、かつまた「スクープ」という表現も含めて考えますと、組合がこのようなことをやったということを断定している、もしかすると交通局ぐるみかもしれない、もうちょっと大きな疑惑に広がる可能性があるということを伝えたのではないかと思います。単にこのような疑惑があったとか、市議会議員が調査活動をしたと報じたという受け止め方は、多分一般的な視聴者はしないのではないかと判断しました。
それから2番目ですが、仮に名誉毀損の場合でも、免責事由が満たされれば責任は問われません。この放送自体には確実に公共性はあっただろうし、別に組合たたきというわけではなくて、公益性もあっただろうと思います。しかし、最後の「真実相当性」が、委員会に提出された資料やヒアリングでお聞きした限りでは十分なご説明が得られなかったということです。特に、相手方に対する取材をせず、あのような報道をしたところが一番問題ではないかと感じております。

曽我部委員:2点だけ申し上げたいと思います。一つはアンケートの感想を拝見してということですが、「疑惑は疑惑として報じるべきだ」とか、「裏取りが重要である」というような回答が多くて、当該局も、もちろん一般論としてはそのことは当然ご承知と思うのですが、なぜ、そういうことになってしまったかというと、やはりアンケートの中に出てくるように、一つは「スクープということで、勇み足だったのではないか」というご意見がありますし、もう一つは、今回特有の問題に関することで、大阪では現市長就任以降いろいろな出来事があり、私も近所におりまして、非常に関心を呼んで多々報道されているというのは承知しております。そういう中で、やはりある種予断のようなものが生じてと言いますか、チェックが緩やかになってしまっていた部分も、おそらくあるのかなとは思っております。放送は旬を切り取るものだともいわれますので、こういうことを要求するのはなかなか難しいとは思うわけですけれども、やはり、一歩流れから距離を置いた立場で冷静に眺める目というものが必要ないかと感じたところでございます。
もう1点、この決定は名誉毀損の問題と放送倫理の問題を大きく2つ取り上げておりますが、最終的な結論は放送倫理上の問題とさせていただいております。今回の当事者は社会的関心の高い団体で、例のリストがねつ造だったことは大阪市も正式に調査され結果を発表されていて、それが報道されていることからすれば、リストがねつ造だったこと自体は、大阪市民というか関西一円の視聴者は、事後的であれ、理解され周知徹底されているだろうと思うわけです。そういうことからすると、名誉毀損自体はいったんは成立しているけれども、結果的に相当程度というか一定程度というか、それなりには回復されているとも考えられます。
むしろ、今回の事案で今後に生かしていただくべきは、報道における裏取りの問題ですとか、やくざ発言のあの段階での使い方、あるいは続報の在り方など、決定の「5.放送倫理上の問題」で4点ほど指摘しておりますけれども、そういった点を委員会の問題意識としてお伝えするほうが、今後のためになるのではないかという立場で、名誉毀損の問題よりはこちらを取り上げたとご理解いただければと思います。

【各局の対応】

「回収リスト」に関する在阪テレビ各局の放送対応を尋ねた。

  • ABCの昼ニュースで放送され、私どももリストは入手していたので、これは業界ではありがちですが、うちも夕方からやろうかということで、基本的にはニュースの構図としては同じものを全国ネットで1回、ローカルで1回やりました。ただ、私どもがリストを入手して大阪交通労組に取材したときに、強く否定されて直ちに放送することを逡巡したという経緯がありました。現場の判断を尊重して、グッと我慢を貫けば、良かったんですけれども、それ以上我慢できずに放送したと。ABCさんとの違いは本当にわずかで、労組のインタビューを放送したということと、「スクープです」と言わなかったという、この2点ぐらいなのかなと。
    ですので、記者全員に決定文の概要をメールで送って、これは他人事ではないと。特に独自ダネあるいはスクープになると、ネタを取ってきた記者やデスクは舞い上がりがちなので、そういう時こそより慎重にやらねばならないということと、やはり当事者に当たるということ、対立する側の意見を聞くという取材の基礎を改めて徹底するようにしました。

  • うちの場合は、取材による信憑性とかではなく、物理的な問題でその日のニュースに入らなかったというか、入る余裕がなかったので放送しなかったのですが、うちでも起こりうる話かなということで、決定文については報道のほうでも要約を全員にメールで配信しました。

  • 結果的に2月6日は放送を見送りました。ABCさんのお昼のニュースを見まして、これはやられたなと。とりあえず、記者に対して裏が取れたら夕方のニュースで放送しようと指示を出しました。放送直前になって、現場から「組合が完全にあれはねつ造だ」という言い方をしていると、記者も心証からガセだと思うという報告が上がって来ました。組合側の声を放送してバランスが取れるか検討した結果、かえって疑惑がクロだという雰囲気に伝わってしまうだろうなという判断で、とりあえず放送を見送ろうと、そういう形になりました。
    うちが最初に放送したのは、翌日橋下市長が調査を指示したというニュースで、その日の夕方の番組では、民主党のあの偽メール事件と同じようなことが起きていますと、そっちの方の目線で放送しました。

  • 基本的にはあまりこのあたりを深くは取材出来てないと思いますので、おそらく放送しなかったのではないかと思っております。

  • 報道の担当者がいませんので、現場でどういう判断をしたかは、申し上げられないんですが、私の知る限りでは、これについては裏を取らなければやはり放送はしないだろうと、こういうことはなかなかあり得ないかな、という部分はあります。

【当該局の発言】

  • 決定に対するコメント等から、ひょっとしてABCは何も反省していないんじゃないかという疑義を、どうもお持ちだということを漏れ聞きましたが、まったくそういうことはなくて、ニュース原稿を見ても、やはり交通労組のコメントが入っていなかったのは致命的だと思いますし、疑惑と言いながら、かなり断定的な表現になっていたと、「やくざ」という内部告発者のインタビューもちょっときついと、というあたりの反省点は、実は内部的には既に共通認識として持っております。
    ただ、申立てがあくまで名誉毀損ということでしたので、こちらの反論もそちらを中心にやって来ました。その分、反省すべきは反省するというところが、ちょっと伝わらなかったのかと思います。決定文の最後でご指摘の表現上の問題点、取材の甘さは十分認識していますが、名誉毀損の部分が最後で放送倫理の部分に変わってしまったところが、最初決定を受け取った時にちょっと理解しにくかったということが社内の反応としてもありました。それから、委員会は個人の報道被害の救済が大原則なのに、今回の団体の申立てはいいのかなと、交通労組は組合員のみなさんの集まりではあるが、集合体としてそれなりの権力機関として見られているのではないか、という思いも背景としてありました。
    いずれにしましても、社内的にいろいろこれからも議論、取り組みをしたうえで、報告書をまとめることになりますけれども、今日の意見も十分参考にさせていただいて、やって行きたいと思います。

【「スクープ」など放送での表現について】

  • 「スクープ」とは独自ネタということで、こういう疑惑があるというスクープもスクープであろうと思います。「スクープです」という表現を使ったことで、断定的に論じているという点は納得いかない。

小山委員:  別に「スクープです」と言ったから断定的とは言っていない。決定文6ページの(b)の最後のところで、「このことに加えて、本件放送の冒頭で『朝日放送のスクープです』と強調され、本件報道の真実性が強く印象付けられることもあわせ考えると」と論じております。「スクープです」だから断定的なのではなく、その印象がより強まったということです。
結局、この回収リストについては、「回収リストらしきもの」とか、あるいは「その疑い」といった表現はなくて、断定的な言及です。それから内部告発者についても、断定して「内部告発者」と放送されていました。そういったものがあって、「疑惑」は頭と最後の2か所だけで、サンドイッチされた中間の部分は全て断定的に放送されたと判断しました。

三宅委員長:ニュースの中で、紹介カードの問題で橋下市長に謝罪している映像がありましたね、「ああいう過去の労組のやってきた内容からすると、今回もそうらしい」という、そういう「らしさ」をある程度出せば、違う内容の放送になったんじゃないかなと実は思っています。
真実相当性の立証というのは、仮に事後にねつ造だと分かっても救済される余地がありうるところですので、やっぱり「疑い」を放送する時には、注意していただいて、決め付けない構成にするやり方があったのではないかなと。私もかつて、無罪になった被告人について報道機関が有罪を前提に放送したと訴えられ、最終的に真実相当性が認められて勝ったケースの代理人をしたことがありましたから、今回のような1分そこそこニュースでも、そういう構成で作れたのではないかという感じが体験的にしました。

坂井眞委員長代行:「スクープです」と言っておきながら、「いやいや、スクープと言っても疑いですから、間違っているかもしれません」というのでは、「スクープ」というほどの迫力はないんじゃないかという気がします。本件放送で「スクープ」と言ってもいいのですが、その場合例えば、「組合に真否を問い合わせたけれど、逃げ回っているので裏は取れておりません」ということを同時に言って、でもこういう疑いがありますと言えば、だいぶ印象は違うと思います。でも、そんな報道ではおそらく「スクープ」とは言いづらいかなと思いますし、だったらそもそも「スクープ」と言うのは止めたほうが良いという話になるのではないかという気がしています。
今の話を前提に聞いていただくと、奇妙さが分かるんですが「朝日放送のスクープです」と始まって、その後「疑いが独自の取材で明らかになりました」ではまったく迫力がないんですよ。結局、まだ「疑い」ならば、スクープとは言わないで欲しいなと。
その後、以前知人紹介カードを集めていたことが発覚して謝ったことがあると報じた上で、さらに今度は回収リストが独自に入手出来ました、そこにはこんなことが書いてありましたと。これでは、印象としては「まだ裏は取れていません」という話にはなっていないわけですよ。回収リストを入手したら、こういうことが書いてありましたと報じて、さらにその後「やくざ」という話ですから、そうすると、これは最初に「疑い」という言葉があって、最後に「組織ぐるみの疑い」とあっても、やっぱり「疑い」の報道とは受け取れないだろうと私は思います。
しかも、最後のところで、リストには政治活動が制限されている管理職が入っている、非組合員のコード番号も記されていると。だとしたら、この回収リストは組合には作れないじゃないかという疑問が当然浮かびますね。それを合理的に説明しようとしたのか、最後に「組織ぐるみ」と指摘をする。しかしこれだと、組合じゃなくて交通局の「組織ぐるみ」ということになって、もともとの「労組がリストを作成した」というニュースではなくなっちゃう。どうも奇妙な、詰めが甘い報道に思えてしょうがないんです。

田中里沙委員:「スクープ」とは業界用語であって、一般の人はあまり敏感にかつ深く反応するものではないと感じています。新聞の「号外」は社会共通の話題になる内容ですが、テレビの「スクープ」はその意味合いがわかりづらい。もちろん大切で価値のあるものですし、記者であれば一度はスクープを取りたいと思うのが普通ですが、この受け手との「温度差」をふまえて使用してもらってはいかがかと考えています。
私は日常の仕事で企業の広報の方と接することがよくありますが、皆さんマスコミが呈する「疑惑」自体に非常にナーバスになっています。「疑惑」とマスコミが報道すれば、世間一般の方はそのことをクロあるいはグレーだと受け止めがちです。報道されたことはその時点における事実となりますので、やはり慎重に発信していただかなければいけないだろうと思っています。一方で、視聴者は速報性を求める面もありますので、疑惑を報じる際には、締めくくりのところで、「現在このような疑惑があります。取材先はノーコメントで取材にも応じない段階なので、追及していきます、あるいは調べています」などと、そのような状況を示していただければ、多分視聴者は「疑い」はこの後どうなるだろう、という見方をするのではないかと思います。

林香里委員:決定に対する朝日放送の放送を見て、反省していらっしゃらないのではないかと、かなりショックを受けていたんですが、今日だいぶ印象が変わりまして、私自身納得しております。
そしてもう一つ、朝日放送の皆さんにお礼申し上げたいのは、今日実際のニュース映像を見せていただいたことです。映像を見ることで議論も活性化するし、皆さんもいろいろ考えることが出来ます。多分作られた方はもう1回見るのも嫌だろうと思いますので、映像を許可していただいたことを、私はありがたく思っています。

【続報について】

  • 決定の「5.放送倫理上の問題」の「続報のあり方」のところで、「その趣旨をふまえれば、続報では本件放送の日時やリード部分等を明示した上で、申立人の関与がなかった事実を伝えるべきであった」とございますけども、ABCさんの方は「リストがねつ造で、労組が関与をしていなかったことは、続報の中で明らかにしている」と。委員会はなぜ不十分だという見解を持たれたのか。

小山委員:手元にある原稿(3月26日の朝日放送のニュース)を見てみますと、まず前説として、「去年の大阪市長選挙の際、大阪市交通局の労働組合の名義で、当時の市長の支援リストが作成されていた問題で、大阪市はこのリストが交通局の非常勤職員によるねつ造だったと発表しました」。本文に入って、「この問題は去年の大阪市長選に絡み、交通局労組の名義で作成された平松前市長の支援カードの回収リストを、内部告発者が維新の会の市議会議員に持ち込み、市議会で追及されたものです。リストには、交通局職員1800人分の職員コードや氏名があり、『協力しないと不利益がある』などと書かれていました。これに対して組合側は『労組が知り得ない情報も含まれていて、文書作成には一切関与していない』と全面的に否定、被疑者不詳のまま刑事告発しています。その後交通局は調査を進めて・・・」ずっとこんな感じの、要するに事実関係の羅列なんですね。
あれだけ強い、インパクトの強い報道を行った当事者という感じが全然しないわけでして、これによって内容的には最初の当該報道は事実上、修正されていることになると思うんですけれども、やはり報道が報道だけに、何月何日にこういう形で報道したものの、その回収リストがねつ造であることが明らかになったといった形で、やっぱり当該ニュースを引用して伝えるべきではなかったかというのが委員会の判断です。

【団体からの申立てについて】

  • 今回の団体からの申立てについて、朝日放送としては、委員会の運営規則や我々の今までの理解からすると、受理しないのではないかと考えていた事案を受理されたということで、質問書をお出ししました。
    その回答というのが、決定文の中で、いわゆる組合の性格を一般論として論じて、組合が個人の集合であり、その権利を守るべきであるから受理したというような内容だと思いますが、正直、すとんと落ちて来るものではない。さらに言うと、途中で申立人に書記の方が入って来られた。書記の訴えは組合とは異なるので、委員会はいったんは仲介、斡旋ということを当然示唆すべきではなかったかなと思っています。また、書記の方と話し合う気持ちがありますか、と朝日放送に提示があって然るべきかなと思っているんですが、それもなくて。これから、こういった形で団体からの申立てを委員会として受けると理解していいのか、回答いただければと思います。

三宅委員長:団体からの申立てを審理したケースは過去にもございまして、資料に「委員会決定事案と判断内容」というのがありますが、決定43号の「拉致被害者家族からの訴え」、これは拉致被害者家族会からの申立てで、団体からの申立てを審理したケースの最近のものとしてはそれがございます。
それから、さらにさかのぼりますと、「幼稚園報道」という決定2号の申立人は、幼稚園と理事長、保護者。それから決定17号の「熊本・病院関係者死亡事故報道」は病院を運営する医療法人と理事長が申立人になっていたということで、今回が初めてのケースではないということを、まずご理解いただければと思います。
で、今回の場合は団体としてかなり規模が大きかったので、そのところをどう判断するか、申立てがあった段階で考えました。決定の5ページの「委員会の判断」の「1.本件申立てについて」のところに書いているつもりでございます。その後ろの方ですかね、「また、本件放送は、本組合による重大な不正行為の告発の主旨を含み、本組合及び組合員個人らの信用、名誉、名誉感情等の」というのがありますね。ここのところが、どうもやっぱり腑に落ちなかった。「やくざと言ってもいいくらいの団体」というところは、結局組合員が皆やくざだというようなニュアンスの、侮辱的な表現をここに含んでいると判断すると、この辺については、非常に「深刻な影響を及ぼすおそれがある内容を含むものだった」という判断をして、規模は大きいけれども、「救済を検討する必要性が高く」と。次の段落の「委員会の過去の判断をふまえ」は今言った事例もありますよということをふまえ、「以上の事実関係を総合的に考慮したとき、本件申立てについては、救済を検討する必要性が高く」ということで、「本組合の団体の規模、組織、社会的性格等をあわせ考えてもなお、委員会において権利侵害や放送倫理上の問題の有無について審理することが相当である」と判断をしたということです。
書記の個人としての申立てについては、別件の申立てということは確かにそうですが、その後ろに書いてあるように、本組合の書記の立場として被害を受けているということだったので、審理する必要はないということで、仲介、斡旋まではする必要もないという判断が同時にされているということです。
なかなか詳しくも書きにくいので、決定ではこういう具合にお答えしていると、ご理解いただければと思います。

◆その他の委員会決定について◆

【決定47号「無許可スナック摘発報道への申立て」】

  • 決定文に「悪質性の比較的軽微な『無許可営業』」とあるが、犯罪が軽微かどうかの線引き、基準は何か。

奥委員長代行:どこかに線引きがあるということではないんですね。略式命令で50万円の罰金を払っているじゃないか、これが軽微な犯罪と言えるのか、とアンケートに書いていらっしゃる方がいますけれども、略式命令で50万だから軽微だとか、あるいは懲役5年だから軽微じゃないとか、どこかに線引きが出来るという話ではなくて、これはスナックのママさんが、ちょっと勘違いをしていたのか、風俗営業法の許可を取っていなかったっていう事案ですね。
それを、もう執拗に彼女の全身からアップから、捜査員と受け応えする場面とか、捜査車両に乗り込む場面とか、1分何秒ぐらいのニュースのうちで、申立人の映像が37秒だったか、ほとんど登場するという、つまり風俗営業法違反の無許可営業についてのニュースとして、これだけ顔をさらすというのはやり過ぎじゃないか、という話なんですね。じゃあ何が軽微で、何が軽微じゃないか、それは個々の報道にあたっている人間が判断出来る問題であって、判断しなければいけないだろうと私は思います。

小山委員:ちょっと補足ですけども、この風俗営業法の無許可、無届けの件数は、この事案の神奈川県でも多数発生しております。また、別に近年増加しているわけではなく、横ばいか、もしくは減少している、その意味でもあちこちにたくさんある事件の一つに過ぎないんですね。風営法関係の摘発というのは相当の件数がある。本件は性風俗というわけでもない。それなのに、ここまで放送でやるのかと。
あと、罰金50万という金額は大きいように見えるかもしれませんけど、専門家の話を聞きますと、それはその間に得た収益を没収するという趣旨も含んでいるとのことで、そのようなことも少し考慮したということだったと思います。

【決定48号「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」】

  • 決定文の「取材対象者の思いを軽視して長年の信頼関係を喪失したことは、報道機関として重く受け止める必要がある」いう部分、局側に明らかな瑕疵があったとは思えず、当事者間の微妙な問題にまで踏み込んだ判断に違和感を覚える。

市川正司委員:民間放送連盟の報道指針の中に「視聴者・聴取者および取材対象者に対し、常に誠実な姿勢を保つ」という1項目があり、取材対象者との関係という問題も、一応視野に入っているということが、まず一つあります。
この番組では、2002年当時イレッサの被害者であった娘の父親の申立人と、2007年頃にイレッサの副作用情報を充分認識して服用していたという別の患者さんを、5年以上経っているにもかかわらず同列に置いて、申立人はどうしてそんな損害賠償訴訟をやっているのか、という捉え方をされかねないような報道の仕方をしたということで、委員会は構成上の問題を指摘しています。しかし、若干今までの案件と違いまして、誤った報道、明確な誤認であるとか、あるいはプライバシー侵害、名誉毀損と明確に言えるという部分はなく、そういう意味で非常に判断が難しいところでした。
委員会の多数意見としては、問題はあるものの、やはり構成上の問題で人権侵害や放送倫理違反には踏み込めないだろうという理解です。それに対して少数意見は、先程の信頼関係の問題をより深く重く捉えて、申立人にとっては自らの思いを誤って伝えられた、あるいはそういう可能性があったという点で、放送倫理上問題があったと考えたということであります。そういう意味で、多数意見も少数意見も取材の過程だけではなくて放送内容との関係も含めて、取材対象者との信頼関係を喪失したと、ここの部分は申し上げていると、こういうふうに理解いただければと思います。

【決定49号「国家試験の元試験委員からの申立て」】

  • 実際にこれを取材して構成したのは当社で、ローカルでも放送したんですが、決定後、現場の記者と話し合いをしたことで2つほど申し上げたい。一つは、「少数意見」で「放送倫理上問題あり」とされたが、我々としては、つまりこれでアウトと言われると、捜査当局がクロとする事案しかもう扱えないのではないかということで、取材現場を萎縮させる効果をもたらしたということを申し上げたい。もう一点、委員会の判断は「放送倫理上問題なし、要望」ということだったんですが、この委員会判断が9ページなのに対して、「少数意見」は6ページにわたっているということに違和感を覚えたということが、現場の声としてございました。
    我々はあくまで国家資格の試験委員であれば、「李下に冠を正さず」ではないでしょうか、ということを言いたかったんで、漏えいがあったか、なかったかという、そこに論点が行き過ぎていたんじゃないだろうかというのが、現場の思いとしてあります。

◆人権や放送倫理をめぐる質疑応答◆

事前アンケートで寄せられた質問について、委員に回答してもらった。

【桜宮高校の体罰事件の実名の扱いについて】

  • バスケット部の顧問の先生について、書類送検された時点で実名で報道した局と、在宅起訴された時点で実名報道した局がある。どう考えたらよいか。

坂井委員長代行:これは、おそらく基準は明示できないというのが共通意見だと思います。刑事事件の報道なので、実名がだめだということは法律的には言われてない。だけれど、例えば日弁連は原則匿名にするべきだと、完全にとまでは言ってないですけど、原則匿名にしろと言っています。
それは、刑事手続き的には無罪推定があるからですが、原則無罪推定と言っても、犯罪の重さだとか、被疑者の立場で、全然利益状況が違うわけです。少年だったら少年法で保護されるわけですし、これがまた汚職事件か何かだったらまた違って、地方自治体の普通の公務員だったのか、それとも中央官庁のいわゆる官僚と言われる人なのかで変わってくる。おそらく犯罪報道をする時に公益目的が否定されるということはないので、公共性の重さということが、ケースごとにそれぞれ違って来るということですね。
では、桜宮高校の事件はどうかというと、一教員だということは確かです。だけれども、内容はすごく重いものがあるということで、現場の皆さんが悩まれるのはすごく良く分かります。教師が生徒に暴力をふるうということは、あってはならないので、一教員の行為であってもそれは書くべきだと。だけど、こいつは悪い奴だという方向で報道が過熱した状況で、要するに水に落ちた犬をたたけ、みたいな話になると、大きな副作用が出ることがあるんですね。報道してもいいけれど、そこで実名を大々的に報道することによって、どういうマイナスがあるかということも含めて考えて、そこから先は、それぞれが比較考量して、判断して行くことになるんじゃないのかなと、こういうふうに思っています。

【事件・事故報道の際の建物の撮影】

  • 一般的に事件・事故の現場の建物を公道から撮るのは差し支えないと理解しているが、例えばビルの一室とか、マンションの一室で事件・事故が起きた場合、その建物全体を撮ることがどうかという問題です。マンションの住民から撮影を断られたという回答や、一方で、マンションが特定できないように配慮して撮影したという回答もある。どう考えたらよいか。

三宅委員長:『判断ガイド2010』をお持ちの方は、314ページにかつての事務所等の撮影についての委員会の判断が示されています(決定35号「"グリーンピア南紀"再生事業の報道」)。建物の外観や肖像が映ったんですけれども、「事務所等の撮影が無断で行われたとしても、放送された映像によって何らかの権利侵害が生じるなど、特段の事情が存在しない限り非難に値するとは考えられない」と。「当委員会決定においても、肖像権の侵害となる行為があった場合でも、報道・取材の自由が民主主義社会において国民の知る権利に奉仕するという重要な意義を有することから、当該取材・報道行為が公共の利害に関する云々」ということで、肖像権の侵害の違法性はないというような判断とかも並べ立てて、建物の外側から撮ったことについては、まったく問題ないというようなケースもございます、という紹介をまずしておきましょう。この時は、確かビルの映像とその窓から中がちょっと見えたんじゃなかったかと思いますが、その映像自体について、このケースの時は問題ないとしました。だいぶ前のケースですが、一概に建物の外観映像が撮れないかというと、そういうわけではないと、まず言っておきましょう。

  • マンションの一室に容疑者が住んでいるような場合でも、マンションの外観映像をはっきり分かる形で放送することに問題はないか。

三宅委員長:先ほどの、実名報道を書類送検のときからするのか、在宅起訴のときからするのかと一緒で、容疑者のプライバシーがどの程度保護されるものか、犯罪者として明らかになった事実との関係上、公共目的と公益性があるということで、名前を明らかに出来るなり、プライバシーの侵害も制約されて致し方なしと言えるのかどうかという、微妙なケースだと思いますね。

以上

第76回 放送倫理検証委員会

第76回–2013年11月

「対決内容を編集で偽造」フジテレビ『ほこ×たて2時間スペシャル』について討議

参院選関連の2番組、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本『百識王』、「意見書原案」を基に審議

「弁護士紹介の被害者は"関係者"」日本テレビ『スッキリ!!』、「意見書原案」を基に審議

「他局の取材音声を、無断受信して使用」鹿児島テレビ2つのローカル番組、局のヒアリングを基に審議

第76回放送倫理検証委員会は11月8日に開催された。
委員会が今年8月に出した関西テレビ『スーパーニュースアンカー』「インタビュー映像偽装」に関する意見について、当該局から提出された対応報告書を了承し、公表することにした。
今夏の参議院選挙をめぐって、選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議対象となっている、関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(ネット選挙解禁に関する特集企画で、特定の比例代表立候補者だけを紹介)とテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(投票日当日の放送に、比例代表候補者がVTR出演)の2つの番組について、担当委員から意見書の原案が提出された。意見交換の結果、次回委員会までに担当委員が修正案を作成して、意見の集約をめざすこととなった。
ネット詐欺の被害者として放送したが、実は被害者ではなく弁護士から紹介されたその事務所の事務員であったことが問題となった日本テレビの情報番組『スッキリ!!』についても、意見書の原案が提出された。当該局へのヒアリングとこれまでの委員会での議論を踏まえて問題点を整理したもので、弁護士から、担当した事件の被害者と紹介されたことは、本人確認や被害事実の存在についての裏付けとなるのかという点などについて長時間にわたる意見交換が行われた。次回委員会までに、担当委員が修正案を作成する。
他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し放送に使用していた鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』について、担当委員からヒアリングの概要が報告され、意見交換がなされた。
フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて2時間スペシャル』の出演者が、「対決内容が編集によって偽造された」と告発し、当該局側もこの指摘をほぼ認めて番組の打ち切りを決めた事案について、討議を行った。その結果、ロケや編集の過程についてさらに確認したい点や疑問点が出てきたこと、当該局の報告によるとこのスペシャル番組以外にも類似のケースが見つかっていることなどから、委員会は、次回委員会までにより詳しい報告書の提出を求めることにして、討議の継続を決めた。

1.関西テレビ『スーパーニュースアンカー』「インタビュー映像偽装」に関する意見の対応報告書についての審議(了承)

関西テレビは、『スーパーニュースアンカー』の「インタビュー映像偽装」に関する意見(委員会決定第16号)を受けて、社としての再発防止策を報告書にまとめ、10月28日、委員会に提出した。
それによると関西テレビは、▽報道に携わる記者やカメラマンなど個々人のノウハウや経験を高めるため、勉強会や事例研究会を随時開催するほか、報道局の指針や見解をまとめた「報道通信」を作成すること▽世代間のコミュニケーションを活性化させるため、記者やデスクの相談窓口になる報道局専任部長を新たに配置して、取材から放送に至る諸問題の解決にあたることなど、多様な改善策にすでに着手している。
委員会は、当該局が「不適切な映像」と考えていたものが、委員会に「許されない映像」の放送であったと指摘されたことについて十分に反省したうえで、信頼回復のための取り組みが幅広く進められているとして、この報告書を了承することにした。

2.参院選関連の2番組、関西テレビの『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本の『百識王』についての審議

一括して審議の対象となっているのは、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党の比例代表選挙立候補予定者だった太田房江元大阪府知事の選挙準備活動を紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、自民党の比例代表選挙の渡邉美樹候補が著名経済人としてVTR出演している番組を、参議院選挙投票当日の午前中に放送したテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)の2番組である。
担当委員から、2つの放送局の関係者に実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を踏まえた「意見書原案」が提出された。
委員会が、3年前から選挙をめぐる放送の公平・公正性について、意見書や委員長コメントを出して警鐘を鳴らしてきたにもかかわらず、同様な問題が再び起きたことを重視して、原案では、2つの番組の問題点などを指摘するとともに、今後こうしたことがさらに繰り返されないための提言などが盛り込まれた。委員による質疑や活発な意見交換の結果、担当委員が意見書の修正案を作成し、次回委員会でさらに議論を重ねて、意見の集約をめざすことになった。

3.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介されたが、実は被害者ではなかったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演した弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして審議入りした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
当該番組の取材ディレクターやプロデューサー、情報カルチャー局の幹部などあわせて11人を対象に実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を踏まえて、担当委員から「意見書原案」が提出された。
委員会では、原案をもとに、「専門家の取材はどうあるべきか」「弁護士の紹介であることは、その内容を信じる理由となりうるか」などを主な論点にして、踏み込んだ意見交換が行われた。
その結果、委員会で示されたさまざまな意見を盛り込んだ修正案を担当委員が作成し、次回委員会で議論を続けることになった。

4.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用したことが問題になった鹿児島テレビの2つのローカル番組についての審議

鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』(6月29日放送)で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部を紹介した。その際、選手を激励する監督の声をあわせて10か所で約2分間放送したが、これは、他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったことが判明した。前回の委員会から審議を継続した事案。
関連会社から派遣されたディレクターは、他局が監督に着けてもらったワイヤレスピンマイクの音声を、カメラマンと音声マンに傍受するよう指示し、その音声を自局取材の音声のように使用して放送していた。電波法59条は、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して窃用することを禁じている。
11月初旬、当該番組の取材ディレクターやカメラマン、音声マンのほか、鹿児島テレビのコンプライアンス責任者など、あわせて6人を対象にヒアリングが実施され、その概要が、担当委員から報告された。
「ディレクターはなぜ他局の音声を窃用したのか」「取材した3人に違法だという認識はあったのか」「放送前のチェック機能が働かなかったのはなぜか」「放送局や関連会社ではどのような社員教育や研修が実施されていたのか」などについて詳しい説明があり、委員の間で意見交換が行われた。
その結果、事実関係はほぼ明らかになり論点も整理できたとして、次回委員会に担当委員が意見書の原案を提出することになった。

5.「対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて2時間スペシャル』についての討議

「矛盾する両者の真剣勝負」を売り物にするフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて』は、2012年の民放連賞でテレビエンターテインメント番組の最優秀賞を受賞していた。
10月20日に放送された2時間スペシャル番組の中の「スナイパー軍団対ラジコン軍団」について、ラジコンカーを操作した出演者が、放送3日後に所属する会社のウェブサイトに「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発し、問題が発覚した。
この出演者は「ラジコンカーの対決で、実際の対戦相手が異なっていた」「実際には、最初に対決したラジコンボートが3連勝して勝負は決していた」「過去の放送でも対決相手のタカやサルについて、番組スタッフから演出に協力させられた」などと指摘した。
これを受けて当該局は、ロケ担当ディレクターや番組のチーフプロデューサー、それに制作会社の幹部などを対象に内部調査を実施した結果、出演者の指摘をほぼ認め、「視聴者の皆様の期待と信頼を裏切る行為が確認された以上、真剣勝負を標榜している番組の継続は不可能」として、番組の打ち切りを決めた。
委員会は、当該局から提出された報告書をもとに討議を行い、「バラエティー番組なので一定の演出はあるにせよ、それが限界を超えているかどうか」「視聴者は真剣勝負をどの程度前提にして、この番組を視ていたのか」など、さまざまな意見が出された。また、当該局がこのスペシャル番組以外にも類似のケースがあったことを認めているため、詳細を確認するべきだとの指摘もあった。
委員会では、当該局宛ての質問書を作成し、ロケや編集過程での疑問点を中心に再度報告を求めて、討議を継続することになった。

【委員の主な意見】

  • 素材となる映像を自分たちが作ったストーリーに沿って編集でまとめたもので、これを演出といえるのだろうか。まるでドラマを作っているように感じられる。
  • ここまで編集で対決の内容を変更してしまうことは、この番組のコンセプトからしても、企画として成立しないと思う。
  • バラエティー番組では、勝負といってもかなり演出がほどこされていることは昔からあると思うが、少なくとも出演者に納得してもらうことが前提だろう。今回の事案は相当にひどいのではないか。
  • 実際にはなかった対決を編集で作ってしまうことは、やはり問題だ。
  • バラエティー番組に演出はつきものなのだから、いまさら委員会があれこれ言うのは難しいという気もする。
  • 視聴者はこの番組の対決をどこまで真剣勝負として見ていたのだろうか。それによって、視聴者の信頼を裏切ったかどうかの見方が変わるだろう。
  • 報告書が短時間に作成されたこともあってか、もっと確認したい点や疑問点もある。さらに詳細な報告書の提出を求めて議論したほうがいい。

以上

2013年10月に視聴者から寄せられた意見

2013年10月に視聴者から寄せられた意見

被災現場の取材ヘリが救助の妨害になるなどの、批判意見多数。真剣勝負を謳ったバラエティー番組の不適切な演出の発覚に、残念、謝罪を行うべきなどの意見。

2013年10月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,739件で、先月と比較して108件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール73%、電話24%、FAX1%、手紙ほか2%。
男女別は男性71%、女性26%、不明3%で、世代別では30歳代31%、40歳代27%、20歳代16%、50歳代14%、60歳以上9%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は782件【48局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、18件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

来年4月から消費税が5%、から8%、に増税されることが、正式発表されたが、「上がった」かのような印象ばかり先走りして、増税の時期を勘違いする可能性があるといった意見が寄せられた。
伊豆・大島で台風26号による大規模な災害が発生したが、取材ヘリによる騒音で救助活動の妨げとなっているといった切実な声や、災害対応に忙しい行政の担当者を生出演させるのは、如何なものかといった批判が多く寄せられた。
ストーカー殺人事件については、被害者の写真や動画を興味本位に掲載しているのではないのか、容疑者を「アニメオタク」とレッテルを貼っているが、ステレオタイプな報道姿勢だという声などが寄せられた。
過激な発言を売り物にしているトーク番組で、コメンテーターの発言が甚大な民族差別に当たるのではないのかといった声も寄せられた。
真剣勝負を謳い文句にしていた番組にヤラセ疑惑が発生したが、いままで楽しみにしていただけに裏切られた気持ちだといった批判意見が多数寄せられた。
ラジオに関する意見は45件、CMについては48件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は121件で、前月より12件減少した。
今月は「性的表現に関する意見」が27件、「表現・演出に関する意見」が19件、次いで「委員会に関する意見」が16件、「低俗、モラルに反する意見」が12件と続いた。
「低俗、モラルに反する意見」では、女性タレントへの"ドッキリ企画"で、下着姿の男性タレントが悪戯をする企画を問題視する意見が複数寄せられている。また、演歌歌手が歌っている前で無視して宴会をするというバラエティー番組の企画について、「いじめに繋がる」という意見のほか、「制作者の意図が理解できない」と放送局の見識を問う意見が寄せられている。
そのほか、「委員会に関する意見」では、フジテレビ『27時間テレビ 生爆烈お父さん』について「委員会の考え」を示したことに対する意見が多く寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 安倍総理が来年2014年4月から消費税8%、への増税を発表した。テレビ局には、消費税が現在の5%、から8%、に上がるのだから、わかりやすい説明をしてほしい。また、消費税増税に至った経緯をしっかりと報道して頂きたい。

  • 「消費税8%、決定」の記事を紹介する際、来年4月からの増税にもかかわらず、「予定通りあがりました」と煽り、CMを挟んでもう一度「消費税あがった」と言った。「あがった」という印象だけが残り、もう8%、に増税されたと誤解してしまう人もいるのではないのか。高齢者は増税されたと勘違いし「増税詐欺」に引っかかってしまうかもしれない。増税決定を報道することはいいが、来年4月からの実施であることをしっかり伝えるべきだ。

  • 私は伊豆大島に住んでいるのだが、台風26号の影響で土砂崩れが発生した。各放送局の報道ヘリコプターが大きな音を立てて被災現場上空を旋回している。騒音で小さな声が聞こえず、助けられるものも助けられない。ヘリコプターでの取材は即刻止めてほしいと、各局に電話をしたが状況は変わらない。何とかしてほしい。

  • 災害時のマスコミの取材ヘリが救助を妨害するという問題が何度も話題になっているのに、一向に改善しない。「報道の自由」が人命より優先するのか。ショッキングな映像をとるために、取材ヘリが周辺を飛ぶことは妨害以外の何ものでもない。こういう時のために取材協定などを結ぶべきではないか。災害を見世物にしながら、妨害までして、マスコミはきれいごとを話す。人命に関することだけに怒りの声は強い。せめてヘリは共同などにできないのか。

  • 台風26号で被害を受け、犠牲者を多数出した伊豆大島の町長を吊るし上げていた。見苦しい番組だった。町長の対応の不手際は否めないが、自然災害であることをマスコミ各社は理解していないのであろうか。現地の指揮官が対応に当たっている最中、早朝から番組に縛りつけ作業の妨害をし、相手が反論できないのを良いことに無責任に叩くことはやめるべきだ。公開裁判のような感じだった。番組出演より現場での仕事を優先させるべきなのに、長時間拘束することは報道機関の横暴ではないだろうか。視聴率狙いや話題性だけで大衆心理に迎合した放送スタイルは、反省して貰いたい。

  • 台風が来ていて地元の情報が知りたいのに、テレビではキー局のニュースしかやってなく、主に関東ばかりが取り上げられている。震災の時もそうだが、災害の可能性がある時は、地元のニュースも放送してほしい。キー局とは違ってお金がないことはわかるが、このような状況の時くらい、地元の災害情報を出さないと地元局の意味がなくなる。地元の情報が知りたいのに、それが地元局で得られないことは問題だ。

  • 先日発生した、横浜線踏切人身事故に関する報道だが、昼から夜のニュース番組で紹介していたが、いずれも配慮を欠く内容だった。遺族へのインタビューや、そもそも助けに入る行為が本来あってはならないことを一切報道せず、美談に持って行こうとする姿勢を感じた。この手の事故は、非常ボタンを押す、赤い服や布を振るか発煙筒などがあればそれも使用するなど、列車に対して、まずは止めるということをするべきである。マスコミとしては、広く事故を防ぐ方法や列車に対しての知らせ方や、安易にホームから降りる、踏切に入っての救助はしてはならないことを報道すべきだ。

  • 「横浜の踏切人身事故」のニュースが各局で多く取り上げられた。助けた女性の行為は素晴らしいが、あまりにも美化しすぎではないか。周辺住民や親族に対する取材のあり方も考えるべきだ。

  • 事件や事故で亡くなった方のご遺族へのインタビューは、止めるべきだ。事件や事故で亡くなった方の遺族へのインタビューは非常識だと常々感じている。家族が亡くなって辛い中、気持ちの整理がつかない遺族の方に「どんなお気持ちですか?」と尋ねることは、あまりにも無神経ではないか。自分が遺族の立場に立った時、マイクを向けられコメントを求められてどう思うか。絶対にいい気分ではないはずだ。亡くなられた方のご遺族にコメントを求めて、いったい何をどうしたいのか。どんなコメントを引き出せば、満足するのか、いつも不思議でならない。

  • 東京電力福島第一原発の汚染水問題を取り上げていた。現在進行形で起きている汚染水問題を知ることの出来る内容で、日本全国の方にぜひ見て頂きたい番組だと思った。解決が見えない汚染水問題を「モグラたたき」に例えることはわかりやすい表現だが、「東京電力福島第一原発汚染水」のことを「モグラ」と比喩するのは、如何なものか。報道番組であり、バラエティー番組のお笑いのネタではない。ボカしたり、暗号化したりせずに、きちんと「汚染水」と表現してほしい。「東京電力福島第一原発の汚染水」とはっきり表現するべきだ。

  • 「氾濫する土下座」というテーマの放送をしていた。客の女性が某衣料品販売店の店員にクレームをつけ、土下座を強要し、逮捕されるという事件があった。その土下座している様子の写真をぼかしながらも放送していた。インターネットのみならずテレビでもその姿を晒されてしまった店員やその家族、関係者はどういう気持ちだろうか。一種のハラスメントと言えないだろうか。この写真のほかにも別件の写真や動画を流しており、もっと配慮してほしい。

  • 衣料品の店員に土下座を強要したとされる事件で、微罪逮捕であるにもかかわらず、あたかも凶悪犯罪を起こしたかのように大々的にセンセーショナルに報道するマスコミの姿勢は、興味本位としか思えない。報道機関としての本来の役割を放棄しているのではないのか。

  • 高3年女子ストーカー殺人で、亡くなった方のブログから大量の本人写真を必要以上に転載し紹介しているが、必要なのか。両親の承諾はとっているのか。事件の内容よりも「話題のあるニュース」として面白半分に放送しているように思える。あまりにも非道徳的な行為だ。

  • 三鷹市女子高生刺殺事件で、犯人の素性をリポートする際に「アニメオタクである」ということを放送した。オタクという趣味は、直接的な動機には当たらないと思われるが、オタクであることが悪ととらわれかねない差別的な報道だった。アニメファンにとって誤解と不安を与える間違った報道だ。また、こういう犯罪が起こると、ブログやツイッターなどのSNSや学生時代の文集などを報道各局が引っかきまわす傾向にあるが、いくら犯罪を起こしたからといって、事件とは直接的な関係のない個人情報まで流す必要はあるのか。

  • 10月から年金支給額が減額されるが、消費増税については大きく報道されたが、年金支給減額についてはあまり報道されなかったのではないのか。消費増税を隠れ蓑にして、年金減額といったトピックを隠蔽したとしか思えない。年金生活者にとっては大問題だ。年金生活者の身になって報道してほしい。

  • 三鷹市で女子高生が殺害される痛ましい事件があったが、報道の仕方がおかしい。責められるべきは犯人なのに、「警察の対応が悪かったのではないのか」「防げたのではないか」など、警察批判に偏っている。以前からストーカーが絡んだ犯罪があると、何かにつけて警察のせいにして報道する番組ばかりで嫌になる。いくら警察でも常に市民につきっきりはできないし、今回の対応も決して間違ってはいないのに、わざわざ批判的なコメンテーターばかり揃えて執拗に批判している。これでは殺された女子高生を警察批判のために利用しているだけではないか。

  • ニュースや情報番組で、ツイッターによせられた視聴者の個人的なつぶやきが放送中に画面上で流される。なかには、ある思想に基づくような意見もある。他人の意見を見たいわけではないのに、ニュースを見ると個人的意見が垂れ流されている。テレビ報道として、起こった事実のみ報道してほしい。

  • 10月に真夏日の記録を更新したニュースで、埼玉県の熊谷市より暑い土地がいくつかあるのにもかかわらず、さも熊谷が一番暑かったような放送に違和感を覚えた。熊谷よりも暑かった土地がいくつもあり、マスコミにだまされているという思いが強い。"暑い=熊谷"は、マスコミが勝手につけたイメージであり、熊谷だけが暑いのではない。

  • 「ヘイトスピーチ」に関する議論の中でコメンテーターの一人から「在特会は在日特権を白日に晒した」という発言があった。この「在日特権」という言葉は、在日韓国・朝鮮人を差別する理由としてまことしやかに囁かれているキーワードだが、実際には納税、生活保護などいろいろな面で在日韓国・朝鮮人が「特権的に」扱われている事実はない。差別を助長する表現がさも事実であるかのように放送されるのは、問題だ。

  • コメンテーターが「在特会が活動したおかげで在日の特権の問題が明らかになった」と、国民の知らないことを知らせてくれた。大変よいことだ。引き続き詳しく知りたい。在日特権の特集を組んでほしい。

  • 台風が接近すると、ヘルメットを被った記者やアナウンサーが海岸から中継し「危険なので海岸には近づかないでください」と警告するが、人がそこにいれば、人は行きたがるものだ。海岸に記者が立たなくても、海の映像だけで危険なことはわかる。人も立てないほど危険なところだと分かれば人は行かない。

【番組全般・その他】

  • 「絶対に○○なもの」同士を戦わせて決着をつける、真剣勝負をうたい文句にし、その道のプロ同士の対決を売りにしている番組で、今まで楽しみに見ていた。しかし、スナイパー軍団VSラジコン軍団にラジコン・カーで出演した人のブログにヤラセに関する告発が載っていて、正直がっかりした。おまけに過去に動物虐待と思われるヤラセ対決があったとのことで、番組内で謝罪などを行うべきだ。

  • 大変に興味深く素晴らしい番組と信じていたのに、出演していた方より信じられないような証言が公表されている。手口があまりにも悪い。真実だとすれば完全に視聴者を裏切る内容であり、恐らく今回だけではないのではないかとの疑問すら感じさせ、今までの放送内容が信じられなくなった。視聴者はテレビ局側で勝手に編集されてしまっては、どうしようもない。素晴らしい番組であったからこそ、残念でならない。

  • 有名司会者の記者会見が報道されたが、あまりのフラッシュの光の強さに最初から最後までみる事はできなかった。「フラッシュに注意してください」というテロップはあるが、最初から最後までもの凄いフラッシュを焚いて撮影していた。私の息子は幼いころ強い光を目に浴びて、てんかんにかかってしまった。十数年前もあるアニメをみていた子供たちが具合を悪くしたという事件が起きた。テレビ局はてんかん患者を増やしたいのか。もう少し考えて、放送してほしい。テレビで強い光は放送しないでいただきたい。

  • 大食い番組が復活した。以前、番組をまねて、パンの早食い競争をした男子中学生がのどにパンを詰まらせて死亡した事故が起き、一時は下火になっていたのに、またこういった番組が増えている。今後この種の番組を放送するのであれば、せめてひと言「まねをしないよう」呼びかけるテロップなどを入れるべきだ。

  • 料理の紹介などで魚等の活き作りの様子が放送される。この日は、海老の活き作りを紹介していたが、活きた海老をさばき、盛り付けするシーンで、その海老が動き、まだ活きていることを示していた。残酷に思えた。人間は何かの命を犠牲にして食を摂り生きている。それならば少しでも苦痛のない方法で命を頂き食して、感謝することが犠牲にした命に対しての礼儀のように思う。とくに活き造りは、命を弄んでいるように感じてならない。

  • 改編時になると、各局とも色々な番組に新ドラマの出演者が出ている。ひどい局になると、番組の中身とは無関係に一日中出ずっぱりだ。視聴率を取りたい気持ちはわからないでもないが、視聴者もバカではない。見たいと思うような良質のドラマであれば、自然と見るものだ。宣伝に時間を費やすよりも、番組の中身の充実に時間を割いて頂きたい。

  • 物騒なニュースばかりが放送されるが、このようなひどい日本になったのはテレビの影響が大きい。例えば、お笑い芸人が簡単に相方の頭をたたいて笑いを取るような番組が多い。放送界が利益のみを追求していては良い番組は出来ない。気分が悪くなるような、くだらない番組は止めて、子ども達に良い影響を与える優れた番組を放送をするべきだ。

  • バラエティー番組全般に言えることだが、VTRが流れている間、スタジオの出演者の喋る声がうるさくて仕方ない。また、全然面白くもないことを出演者が言った後、わざとらしくスタッフの大きな笑い声が入るが、耳障りだ。

  • ミステリードラマで、必ずといってもいいほど、男子高校生が粗暴な罪を犯すシーンが出てくることはいかがなものか。あからさまな偏見や悪意を持っているとしか思えない。ネットのニュースや警察の検挙率データなどを見ていると、粗暴な傷害事件や暴行事件を犯す率が高い世代は、少年でなく30~40代が明らかに多い。しかも少年が被害者になるケースもかなり多い。少年という弱者を、わざと悪者・有害な存在として描くことで、いい大人が勝手な優越感・満足感に浸っているとしか思えない。

  • 民放は朝から晩まで同じ放送をしている。ワイドショーやニュースは多少の時間差はあっても、切り口や解説まで同じで、「警察24時」や「海外の日本人」など、タイトルが違うだけでやっていることは同じだ。もっと放送局のカラーを出した個性のある番組を放送をしてほしい。

  • 体罰についてのコーナーで、出演したタレントが体罰を肯定し、「今後も限定的に体罰を取り入れるべきだ」とコメントしていた。それ自体、公序良俗に反することを推奨する不適切な言動だと思うが、もう1つの問題は、「番組での発言は出演者個人の見解によるものです」というテロップを表示したことだ。番組を制作する以上、出演者の意見にも責任を持ってほしい。スーパー1枚で責任の所在をあいまいにすることなく、真摯な番組作りを目指してほしい。

  • プロ野球選手の戦力外通告のニュースが出てくると、「待っていました」と言わんばかりに「戦力外通告を受けた選手達」のような番組が放送される。不謹慎すぎると思う。言い方は悪いが、「人の不幸は蜜の味」と言わんばかりの、番組の作り方に嫌悪感を抱く。

  • 直前に援助交際の絡んだ犯罪を報道しておきながら、その直後に女性が料金を払ってデート相手の男性を求めるという行為を「レンタル彼氏」などと言い、好意的に伝えていた。援助交際まがいだと思うのだが、買う主体が女性であれば問題ないという歪んだ倫理観が透けて見える。

  • 新聞のラテ欄に最終回ということだったのだが、番組の最後に、「次回の放送は」というテロップが表示されていた。番組ホームページにも「次回の放送は」と書いてあった。今回の放送が最終回とあるのに、一体何なのか。「今回は最終回スペシャル」は嘘だったのか。放送局はいい加減な情報を流さないでほしい。

  • 旅行中に見学した包丁の工場で、承諾もないままにマイクを向けられた。その後、友人から私のインタビューが放送されたことを聞いたので、放送局に苦情を言うと「マイクを向けられ、答えた時点で了解したことになる」と、高圧的に言われた。しかし、番組名や番組の趣旨など伝え、了解を得てから質問するのが礼儀ではないか。騙して録るような取材は納得できない。番組名はわからないが、改めるべきだ。

  • 観光名所や高速道路、鉄道の路線、工業地帯を空から見るという他局にはないようなユニークな番組だが、なぜかBSでしか放送されていない。数年ほど前に中断されるまでは普通に放送していたが、現在はBSのみでの放送となっている。BSと地上波の両方で放送することは出来ないのだろうか。

  • 過剰な煽りで期待感を持たせておいて本人が登場せず、しかも長時間の番組の15分程度の放送だった。まるでシリーズ復活を思わせる宣伝を行い、この内容はあまりにもひどすぎる。かって占い師が登場すると煽った他局の手法を思い出すほど、不快なやり口だ。コーナーの1つとしてミニドラマをやると言えば良いのに、この内容は誰がみても詐欺だ。

  • 特定の番組という訳ではないが、最近はBSのみでしか放送されていない番組が多い。一部の番組はBSと地上波の両方で放送されているが、このような番組はごく僅かしかない。中には人気が高いにもかかわらず、BSのみでの放送となっている番組もある。これではBS契約者かBSアンテナを持っているものしか番組を見ることができず、不公平である。

  • 女性タレントが、コンビニの肉の加工工場を取材していた。工場が稼働中で、働いている全員が作業服にマスクをするなど衛生に配慮しているのに、彼女だけがマスクもせずに加工している肉に触ってペラペラ喋っているシーンが流れていた。衛生的にいいのか。この工場は本当に衛生に気を使っているのか。なぜマスク無しの取材を許可したのか。当然その時の肉は製品になって消費者の口に入っているわけで、もっと衛生に配慮した取材をするべきだ。

  • ご当地キャラへの爆破どっきりをやっていたが、火の粉などが飛んできたら、火だるまになる可能性さえあった。しかも、着ぐるみは視野が狭いので、普通の服を着た人間とは違う。転んで火だるまになってしまうのではないかと、見ていて恐怖を感じた。バラエティー番組で大怪我をしている人のニュースを過去に何回か見たことがある。笑えるジョークではなかった。他のご当地キャラも、爆発のすごさに本気で震えていた。人が恐怖で震え逃げまどうシーンを、何故爆笑して見られるのか。そのようなシーンが番組に必要なのか理解できない。

  • 色使いが独特で、見ていると気分が悪くなった。テレビの基準を超えた目を悪くする映像で、心配だ。私は映画「タイタニック」を劇場で見た際に具合が悪くなり倒れた経験がある。このアニメも「ポケモン」現象と同じような事象がおきるのではないのか。

  • お笑い系の方が何人かで宿泊する場面があった。CPAP(睡眠時無呼吸症候群の治療器具)をつけて寝るのだが、そのスイッチを切って、呼吸困難になることを面白がっていた。スタジオで見ていた女性タレントも「こんな器具をつけた彼氏はいやだ」と言っていた。これのどこが面白いというのか。私自身がこの治療を受けている身なので、怒りが込み上げてきた。

【ラジオ】

  • ラジオショッピングで、「印鑑を変えたら金運が上がった」という放送をしているが、規制されるべきではないか。ラジオショッピング自体が聞くに堪えず、「歯が白くなった」や「体臭が爽やかになった」なども真偽が定かではないが、「印鑑を変えたらお金が貯まるようになった」などということは明らかなデマだ。こうした放送を流し続けることは、詐欺行為ではないのか。番組のパーソナリティーもそれに合わせて「なるほど」や「お金が貯まるのはいいですね」などと詐欺行為に加担しており、悪質である。

  • 大学教授の舌禍に絡めツイッターの件に触れていた。教授を庇護する訳ではないが、女性アシスタントが述べていた「人に直接言えない気の弱い人が気が大きくなって呟いている」という見解は間違いだと思う。ツイッターは、つい口を滑らせて炎上したり、著名人というだけで炎上するケースもある。ツイッターのあり方を番組のなかで考え直すべきだ。

【CM】

  • グラビアアイドルがCMに出ているが、グラビアに出る人は食べ物の宣伝にふさわしくない。いやらしい雰囲気と食べ物はミスマッチングのような感じがする。番組は見たくなければ、チャンネルを替えればいいが、CMは突然放送されるので、止めることもできない。

  • テレビで放送されるコマーシャルには見るに絶えないものが多々ある。今のテレビは日本人だけでなく外国人も沢山みているので、間違ったことでも外国人にそれが日本の文化だと思われてしまう。テレビでコマーシャルを放送する企業のホームページに、自分のところのCMに関する視聴者意見を聴く窓口を開くことが必要ではないのか。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する意見】

  • 下着姿の男性タレントによる女性タレントへの悪戯が、セクハラにしか見えない。こんな内容を子どもに見せていいのか。秩序やモラルが崩壊する。即刻、やめてもらいたい。

  • 演歌歌手をばかにした扱いは、度を越したもので不快だった。メインの芸人の悪ふざけに出演者ばかりかスタッフまでが便乗し、放送する意図が全く理解できない。「自分たちが楽しければ何をやっても良い」というメッセージを伝えたいのか。成人式で馬鹿騒ぎをする連中と相通じるものを感じた。この放送局のテレビ放送に対する考え方の甘さ、見識の欠如が感じられる。「おもてなし」を世界に発信した国の国民として、このような番組が放送されたことをたいへん恥ずかしく思う。

【いじめ・虐待に関する意見】

  • 演歌歌手が一所懸命歌っているのに、みんなで無視をすることがとても感じが悪かった。何も面白くない。笑えないし気分が悪くなった。張り切って演歌歌手が歌っているのに、年下の人達がよってたかって馬鹿にすることは良くない。青少年に、いじめの方法を公共の電波を使って教えているようなものだ。

【食べ物に関する意見】

  • ドッキリ企画で食べ物を粗末にするようなことはやめてほしい。子どもがテレビを見る時間帯なのに、そういうことは、いい大人なのだから考えれば分かると思う。人を楽しませるだけでなく、常識や知識を与える番組作りをしてほしい。

  • 男性お笑い芸人と女性タレントによるお寿司屋さんのリポートで、海鮮丼が爆発して驚かされるシーンがあった。いくらドッキリでも、食べ物の中に爆発物を仕掛けることはいかがなものか。「安全に配慮した上で行っています」と表示はあったが、安全であればいいのか。食べ物となって出されたものを、粗末にしているように感じた。しかも小さい子も見るような時間での番組で、食べ物を粗末にしていたことは残念だった。

【言葉に関する意見】

  • ドラマで「殺す」「死ね」という言葉が連発され、命が軽く扱われているように感じた。子ども達がこの番組を見て、このような言葉を気軽に口にしてしまうのではないかと思い、わが子には見てほしくない。ドラマの内容は「大切な人を守る」という筋書きのようだが、セリフが過激すぎるように思う。休日の夜、しかも人気のある俳優を使っているので、子ども達もたくさん見ていると思う。このドラマの影響で、「殺す」「死ね」などという言葉を気軽に口にする世の中にはなってほしくない。

【委員会に関する意見】

  • 『生爆烈お父さん』のコーナーについて。汗まみれになって、若い女性アイドルをもてあそぶ行為がお笑いなのか。不愉快極まりない。青少年を健全に育成することが、大人の責任だ。放送関係者には、文化の向上につながる番組を放送していただきたい。

  • 『生爆烈お父さん』の件で発表があったが、疑問を抱いた。あの内容はコントだ。私の周囲の人に聞いても、ネット上の意見を見ても面白いと思った人ばかりだし、お笑いを制限したらテレビはもっと面白くないものになる。BPOは意見があるから制限するのではなく、否定する意見も肯定する意見も聞いた上で判断していただきたい。好きな番組が制限されることは嫌だ。

  • 『生爆烈お父さん』への「委員会の考え」を読んだ。番組も見ていたが、BPOからこのような意見が出たことに驚いた。放送倫理上問題があるような内容だったが、このレベルで問題があるとしたら、何も放送できないと思う。われわれ30歳代が子どもの時代は、もっと過激な内容が放送されていたが、変な妄想も持たず社会人として社会に貢献している。このまま、このような意見が通り、規制ばかりでテレビが縮小をたどると、若者はネットへ依存し、より偏屈な世界へとのめり込む人が増えるのではないか。