第229回放送と人権等権利に関する委員会

第229回 – 2016年1月

ストーカー事件再現ドラマ事案の審理、ストーカー事件映像事案の審理、
STAP細胞報道事案の審理、自転車事故企画事案の審理、
世田谷一家殺害事件特番事案の審理入り決定…など

ストーカー事件再現ドラマ事案とストーカー事件映像事案の「委員会決定」案が大筋で了承され、委員長一任となった。その結果、両事案の通知・公表は2月に行われることになった。STAP細胞報道事案、自転車事故企画事案を審理、また「世田谷一家殺害事件特番への申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2016年1月19日(火)午後4時~10時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが2015年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内いじめ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内いじめの「首謀者」とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求める申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された音声データや加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
この日の委員会では、第4回起草委員会を経た「委員会決定」案が提示され、前回委員会以降の修正点等について起草担当委員が説明を行い、各委員から細部にわたるさまざまな意見が述べられた。その結果、一部表現・字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。「委員会決定」の通知・公表は2月に行なわれることになった。

2.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、前の事案と同じフジテレビが2015年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かる。車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「ストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張する申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは「番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
この日の委員会では、第2回起草委員会を経た「委員会決定」案が示された。審理の結果、一部表現・字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。「委員会決定」の通知・公表は2月に行なわれることになった。

3.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張している。
今回の委員会では前回に続いて起草担当委員が提出した「論点メモ」に沿って各委員が意見を述べた。その結果、次回委員会までに起草担当委員が、論点とヒアリングに向けた質問項目を整理することになった。次回委員会ではそれをもとにさらに審理を進める予定。

4.「自転車事故企画に対する申立て」事案の審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。
同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
これに対してフジテレビは、事前説明が十分でなかった点は申立人にお詫びしたが、「再構成ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない」とし、この点は視聴者も十分に理解できるので、申立人の名誉と信用を侵害したものではないと主張している。
今月の委員会では、ヒアリングに向けて論点と質問項目を審理した。論点については、本件放送による人権侵害はあったのか、放送倫理上の問題として申立人に対する取材前の説明はどうだったのか等を検討し、来月の委員会で申立人とフジテレビからヒアリングをすることになった。

5.審理要請案件:「世田谷一家殺害事件特番への申立て」~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送に対し入江氏は、番組の取材要請の仲介をした人物を介してテレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。その後弁護士とともに7回にわたってテレビ朝日側と話し合いを行い、放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。
このため入江氏は2015年12月14日、委員会に申立書を提出、「テレビ的技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びに(新聞の)ラジオ・テレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
申立人はこの中で、実際の面談において申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」を否定しているにもかかわらず、過剰な演出、恣意的な編集がなされ、「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したかのように、事実と異なる報道、公正を欠く放送をされたと主張。また、実際の面談において申立人は犯人の特定につながる具体的な発言は一切していないにもかかわらず、音声を一部ピー音で伏せるなどの過剰な演出、恣意的な編集により、申立人が殺害された長男の発達障害に関連して犯人の特定につながる具体的な発言を行ったかのように、事実と異なる報道、公正を欠く放送をされたとして、「これらは、悲しみから再生された申立人の人格そのもの、真摯に築いてきた生き方、すなわち人格権としての名誉権、自己決定権を著しく毀損するもの」と訴えている。
さらに申立人は、テレビ朝日が新聞のラジオ・テレビ欄で「被害者実姉と独占対談」「○○を知らないか?『心当たりがある!』遺体現場を見た姉証言」と実際にはない発言を本件番組の目玉として番組宣伝を行ったのは、「放送倫理に著しく違反する」と述べている。
これに対しテレビ朝日は2016年1月14日、本件申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出し、申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張した。
またテレビ朝日は、番組では「妹達には恨まれている節はなかったと感じる。経済的なトラブル、金銭トラブル、男女関係みたいなものなど一切無かったですから。」とサファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。さらに、申立人が被害者長男の「発達障害に関連して犯人の特定につながる具体的発言を行ったかのように事実と異なる報道、公正を欠く放送をされた」と述べていることについては、事件現場が世田谷区上祖師谷であることなどの情報と合わせれば、視聴者による誤った推測で「具体的な場所」が「特定」される可能性があったためで、言葉を伏せたのはそのような誤解が起きないようにという配慮であり、「公正を欠く放送」には当たらないと考えていると主張している。
このほかテレビ朝日は、新聞のラジオ・テレビ欄で「『心当たりがある!』遺体現場を見た姉証言」との表記で番組宣伝等を行ったことに関しては、サファリック氏の「(規制音)へ行ったり、そのような接点は考えられますか?」という質問に対し、申立人が「考えられないでもないですね。」と回答した点を挙げ、番組ではこの発言を新聞ラ・テ欄や番組宣伝等に利用するのに際し、「字数制限の制約の中で表現する上での演出上許容範囲であると思料しており、ご指摘のような『放送倫理に著しく違反している』とは考えていない」としている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。

6.その他

  • 2月3日に福岡で開かれる地区別意見交換会(九州・沖縄地区)について、事務局から概要を説明した。
  • 1月13日に行われたテレビ愛知への講師派遣について、事務局が概要を報告した。委員会から坂井眞委員長、同局からは関連会社を含め約30人が参加、最近の委員会決定などを題材に活発な意見交換を行った。
  • 次回委員会は年2月16日に開かれる。

以上

2016年1月19日

「世田谷一家殺害事件特番への申立て」審理入り決定

放送人権委員会は1月19日の第229回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送に対し入江氏は、番組の取材要請の仲介をした人物を介してテレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。その後弁護士とともに7回にわたってテレビ朝日側と話し合いを行い、放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。
このため入江氏は2015年12月14日、委員会に申立書を提出、「テレビ的技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びに(新聞の)ラジオ・テレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
申立人はこの中で、実際の面談において申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」を否定しているにもかかわらず、過剰な演出、恣意的な編集がなされ、「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したかのように、事実と異なる報道、公正を欠く放送をされたと主張。また、実際の面談において申立人は犯人の特定につながる具体的な発言は一切していないにもかかわらず、音声を一部ピー音で伏せるなどの過剰な演出、恣意的な編集により、申立人が殺害された長男の発達障害に関連して犯人の特定につながる具体的な発言を行ったかのように、事実と異なる報道、公正を欠く放送をされたとして、「これらは、悲しみから再生された申立人の人格そのもの、真摯に築いてきた生き方、すなわち人格権としての名誉権、自己決定権を著しく毀損するもの」と訴えている。
さらに申立人は、テレビ朝日が新聞のラジオ・テレビ欄で「被害者実姉と独占対談」「○○を知らないか?『心当たりがある!』遺体現場を見た姉証言」と実際にはない発言を本件番組の目玉として番組宣伝を行ったのは、「放送倫理に著しく違反する」と述べている。
これに対しテレビ朝日は2016年1月14日、本件申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出し、申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張した。
またテレビ朝日は、番組では「妹達には恨まれている節はなかったと感じる。経済的なトラブル、金銭トラブル、男女関係みたいなものなど一切無かったですから。」とサファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。さらに、申立人が被害者長男の「発達障害に関連して犯人の特定につながる具体的発言を行ったかのように事実と異なる報道、公正を欠く放送をされた」と述べていることについては、事件現場が世田谷区上祖師谷であることなどの情報と合わせれば、視聴者による誤った推測で「具体的な場所」が「特定」される可能性があったためで、言葉を伏せたのはそのような誤解が起きないようにという配慮であり、「公正を欠く放送」には当たらないと考えていると主張している。
このほかテレビ朝日は、新聞のラジオ・テレビ欄で「『心当たりがある!』遺体現場を見た姉証言」との表記で番組宣伝等を行ったことに関しては、サファリック氏の「(規制音)へ行ったり、そのような接点は考えられますか?」という質問に対し、申立人が「考えられないでもないですね。」と回答した点を挙げ、番組ではこの発言を新聞ラ・テ欄や番組宣伝等に利用するのに際し、「字数制限の制約の中で表現する上での演出上許容範囲であると思料しており、ご指摘のような『放送倫理に著しく違反している』とは考えていない」としている。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第100回 放送倫理検証委員会

第100回–2016年1月

委員会発足10周年 事業・イベントなど検討開始…など

第100回放送倫理検証委員会は1月8日に開催された。
委員会運営規則の一部改正案が、2015年の年末、加盟各局に送付され、意見募集が始まったことが報告された。
2007年5月に発足した委員会が100回の節目を迎え、5月からは10年目に入ることから、10周年にちなんで何らかの事業やイベントができないか、検討を開始した。

議事の詳細

日時
2016年1月8日(金)午後5時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.委員会運営規則の一部見直し、意見募集始まる

委員会の運営規則の一部見直しについて、前回委員会で了承された改正案を、2015年12月、加盟各局に送付したことが事務局から報告された。
改正案の内容は、審議や審理に入る前にその適否を議論している「討議」という手続きと、審議の際にも原則的に行っているヒアリングを、運営規則に明文化するというもので、委員会運営の現状に合わせる最小限の改正となっている。
委員会運営への理解と認識を深めてもらうため、加盟各局に呼びかけてこの改正案に対する意見募集を1月下旬まで実施し、寄せられた意見を参考に、次回委員会で改正案を議決する予定である。4月からの施行をめざしている。

2.委員会発足10周年 事業・イベント等を検討

2007年5月に発足した委員会が100回の節目を迎えた。この間に公表した委員会決定は、審理による「勧告」が1件、審理による「見解」が2件、審議による「意見」が20件の、合わせて23件にのぼる。また、委員会決定に準じるものとして、提言1件、委員長談話2件、委員長コメント2件を公表してきた。
委員会は、ことし5月から10年目に入ることから、10周年にちなんで何らかの事業やイベントなどができないかの検討を開始した。メディアを取り巻く環境が激しく変化している中で、いま放送が果たすべき使命や役割とは何なのか。委員会では、2016年度内の実施を目標に、シンポジウムや講演会の開催や記念誌刊行などの企画について、引き続き検討することにしている。

以上

2015年12月に視聴者から寄せられた意見

2015年12月に視聴者から寄せられた意見

暴力団の内部抗争を大きく取り上げているが、まるで社会の重要人物みたいな扱いで、違和感を覚えたなどの意見。女性のお天気キャスターが生放送中に突然泣き出したことを扱った番組に対し、笑いのネタにするのは如何なものかなどといった意見があった。

2015年12月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,202件で、先月と比較して288件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール72%、電話26%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性77%、女性22%、不明1%で、世代別では40歳代26%、30歳代25%、20歳代17%、50歳代16%、60歳以上14%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は527件【44局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、17件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

暴力団の内部抗争を大きく取り上げているが、まるで社会の重要人物みたいな扱いで、違和感を覚えたなどの意見が寄せられた。
女性のお天気キャスターが生放送中に突然泣き出したことを扱った番組に対し、笑いのネタにするのは如何なものかなどといった意見があった。
ラジオに関する意見は46件、CMについては35件あった。

青少年に関する意見

12月中に青少年委員会に寄せられた意見は119件で、前月から6件増加した。
今月は、「表現・演出」「低俗、モラルに反する」がそれぞれ19件と最も多く、次に「視聴者意見への反論・同意」が15件、「暴力・殺人・残虐シーン」「性的表現」がともに14件と続いた。
「表現・演出」については、いわゆる"ドッキリ番組"についての意見が複数寄せられている。「低俗、モラルに反する」では、深夜帯に放送された生放送のバラエティー番組に一般視聴者の小学生が電話で出演したことについて、多数の意見があった。
「暴力・殺人・残虐シーン」については、ドラマでの猟奇的なシーンやバラエティー番組での暴力的な映像が子どもに与える影響を懸念する声が多かった。「性的表現」については、お笑いタレントのネタに性的内容が含まれている場合は放送時間帯に配慮すべきとの意見が目立った。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 暴力団の内部抗争を大きく取り上げているが、暴力団の話題を一般のニュースと同列に扱うなどとんでもない。「組織のナンバー3が云々」とも言っているが、政界か財界の重鎮のような呼びかたで、暴力団員に使うには不適切だ。暴力団関連の話題を伝えることには反対だが、どうしても必要な場合は美化しないように気をつけてほしい。

  • 妻が夫を毒殺しようとしたという事件について放送していた。使われた2種類の毒のうち"キョウチクトウ"について、毒があると詳細に説明していた。全国の公園や街路樹に植えられており、園芸店でも簡単に入手できるとまで言っていたが、如何なものか。よからぬ考えを持った人物がこの情報を得て、犯罪に利用しないとも限らない。放送内容については、もっと慎重に検討するべきだ。

  • 裁判員裁判制度による初の死刑が執行された。判決に関わった裁判員に電話取材をしていたが、なぜその必要があるのか。そのままの音声を流していたが、コメントで良かったのではないだろうか。判決に負担を感じているだろう裁判員に、更にマスコミへの対応という負担まで負わすつもりなのか。

  • 女子中学生に会う男性などを特集していたが、そのやり方に疑問を感じた。放送局側が女子中学生と偽り、出会い系サイトを通じ男性と会う約束をし、実際にその現場に現れた男性に対し、追いかけ取材を行っていた。確かに出会い系サイトなどを通じ、女子中学生と会う男性の行為は許されることではない。ただテレビ局側の正義を振りかざした取材方法に、強く疑問を持った。

  • 自転車の交通安全に関するニュースで、コメンテーターが「実は私は自転車の飲酒運転をしている」と言った。発言を聞いてキャスターの顔色が変わっていたが、そういうコメンテーターを出演させるのは、如何なものか。

  • 福岡市の人口が神戸市を抜き、全国5番目になるというニュースについて、福岡市と神戸市でインタビューをしていた。福岡市では、明るいバックグラウンドミュージックを流し、勢いのある街という演出をしていた。一方、神戸市では、高齢者にインタビューをして、もの悲しく暗いバックグラウンドミュージックを流し、衰退した街であるという演出をしていた。明らかに神戸市が衰退しているという結果にもっていきたい、結論ありきの取材だったのではないのか。また、高齢者を街の衰退の象徴と位置付けているようにも感じられ、不愉快だった。

  • 女子中学生が先月から行方不明になっていた事件で、容疑者が捕まり本人が保護された。そのことを伝える際、女生徒の顔写真と氏名を何度も出していた。被害者に対する配慮に欠けているのではないか。若い女性が被害者となるこの種の事件では、公開捜査の段階で氏名と写真を出すものの、解決と同時にそれらを伏せることが常識なのではないのか。

【番組全般・その他】

  • 女性お天気キャスターが放送中に泣き出してしまった他局の出来事を取り上げていたが、キャスターは、「ネタにしたい話だ」という趣旨のことを笑いながら述べていた。揶揄して笑いのネタにするのは如何なものか。気象予報士の若い男性が、彼女の気持ちを擁護していたが、番組の流れはこの女性キャスターをバカにするようなタッチだった。

  • テレビでよく見る裸芸人が出演していた。普通のお店への取材であるにもかかわらず、パンツ1枚で訪れてインタビューしていた。"持ちネタ"であるにせよ、街中をパンツ1枚で歩いて見知らぬ人に話しかける様には、違和感があった。ある種、公然わいせつにも等しい。せめて道を歩く時くらい、上着を羽織るなど考慮するべきではないか。

  • 人間として人生を頑張っている人を紹介し、共感や励ましにもなる、とてもよい番組だ。ただ一点、この番組に限らず、元暴走族やそれに準ずる人に焦点をあてている点が気になる。焦点をあてられた人が元「何々」だった時に、深い心の傷を与えてしまった人たちに対しての配慮などが、この手の番組にはない。かつて被害を蒙った家族として、意見したい。

  • 伝説の大女優の、生前の隠し撮りされたであろう映像を流すことは、如何なものか。一切の芸能活動から身を引いて静かに暮らしていた生活を隠し撮りして、亡くなったと同時に公開するなど、礼節に欠けている。本人も女優時代の姿をファンには記憶してほしかったであろうし、ファンも女優時代の彼女をいつまでも覚えていたかっただろう。

  • ドッキリ企画をしかけるのだが、ドッキリの内容が"寝起きに突撃取材"などという単純なものではなく、"もし高級車を内緒で購入したら"や"妊娠していたら"など、家庭崩壊につながりかねない悪質なテーマが多く、不快になる。こんなくだらない番組ではなく、もっとまじめなドキュメンタリー番組を放送してほしい。

  • 警察の密着番組を見た。警察官がいかに頑張っているかを伝えるという趣旨はよくわかるが、不祥事が多い警察を持ち上げている気がする。自分の身内や友人には警察官もいて内情を聞いているが、内容には過剰な演出があると思う。

  • 放送の中で外国語を平然と使用しているが、日本語にかえることが出来ない固有名詞ならともかく、何でもかんでも外国語を使用している解説者が多々見受けられる。もっと日本語を大事にしてほしい。

  • スポーツコーナーのコメンテーターが、日本のプロ野球からアメリカのメジャーリーグへのポスティングシステムについて、「人身売買」という表現をした。ポスティングシステムは、日米両国の機構で取り決めた正当な方法だ。移籍希望する日本人選手を「人身売買される奴隷」扱いしたということにもなり、人権意識の欠如を示している。

  • 放送に対してやたらと批判的なニュースばかり目にするが、素晴らしい番組も中にはあり、批判するだけではなく、優れた番組を制作するテレビ局を表彰する機会などをもっと増やしてほしい。

  • 部屋で寝ているお笑い芸人に、「毎朝50kgの土砂をかけるとどうなるか」というかって放送した企画を紹介していた。顔から全身に土砂をかけて埋めていく映像を、お笑い芸人などが見て大笑いしていた。日本国内では大雨による土砂災害で尊い命を失った方がいるというのに、「土砂をかけて笑う」というのは信じられない。

  • 仕掛け人が同性愛者のフリをして、その秘密をターゲットが守るかどうか試すという内容だった。仕掛け人が男性相手にわざと抱き合う場面があり、「気持ち悪いポーズ」「恐怖」などと説明していて、残念に思った。同性愛者に対する差別的表現ではないか。番組制作者は同性愛者に対して「気持ち悪い」「怖い」と感じることがあるのかもしれないが、偏見であると知ってほしい。

  • 10年間日本に住み、飲食業界のサラリーマンである外国人の私にとって、内容がかなり失礼だった。見る人を笑わせながら日本のラーメン屋の優越性を主張するための番組だと思うが、内容と実情が一致していなかった。オーナーやスタッフをバカにしすぎていた。海外で頑張って日本食文化を広めようとしている方々にとって大きな侮辱だ。

  • 生の鶏肉を提供する店を紹介していた。「"新鮮"だから生で食べられる」と言っていたが、新鮮なものほど、菌がいるのだ。テレビで放送することにより、視聴者に鶏肉は生でも平気で食べられるという誤解を与えることになる。全国放送なのだから、そういったことを確認してから放送していただきたい。

【ラジオ】

  • 聴取率週間の一環として各ラジオ局が「現金や豪華商品などが当たるスペシャルウィーク」などを謳い文句にして、普段から聴取しているリスナーを蔑ろにした特別編成を組んでいる。さらにラジオ・テレビ兼営局に至っては、テレビ番組でもラジオのスペシャルウィークの宣伝すらしている。若者のラジオ離れやインターネットのせいにして広告費収入をぼやきながら、スペシャルウイーク中だけ出現するリスナーに現金や商品をばら撒くのは逆効果だ。

  • 「ワイドFM」というものが開局した。今日は、開局初日ということで、3人がメインでトークしていたのだが、話の内容は、あまりにも下世話で品のない発言が多かった。ラジオであっても言っていいことと悪いことがある。聴いていて気分が悪くなった。

【CM】

  • テレビ通販で「割引セール中につき、セットで○○万円」などと宣伝することがよくある。その○○万円という価格に目が奪われがちだが、実際にはそこに消費税や配送料などかなりの金額が加算される。本体価格である"○○万円"の数字につられてつい注文したくなるが、電話をして消費税や配送料のことを知り、断念することもある。総額が一目で分かるようにもっと大きくはっきりと表示すべきだ。

  • 爬虫両生類・有袋類・鳥類・哺乳小動物の展示・即売会のコマーシャルが流れているが、動物の命の売り買いは決して良いことではない。安易なテレビCMはやめてもらいたい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • タレントに仕掛けを施して驚く様を隠し撮りする、"ドッキリ番組"をしばしば見かける。特殊詐欺やいじめが社会問題化している中、このような番組は「人をだましてもいい」「だまされた人を笑ってもいい」「隠し撮りをしてもいい」との誤ったメッセージを視聴者に伝えることにならないか心配だ。

【「低俗、モラルに反する」との意見】

  • 深夜帯の生放送のバラエティー番組に、視聴者である小学生が電話出演していた。当該番組は視聴者から不幸な話をはがきで募集して、その話の内容によってプレゼントをもらえるというものだが、電話をかける相手を番組スタッフが選んでいるようだった。夜遅くに子どもからのはがきを選び、出演させるのはいかがなものか。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • ドラマの中で、主役である女性の体を刃物で次々に刺していくシーンがあり、子どもたちが影響を受けないのだろうかと心配になった。映画には年齢制限があるが、地上波テレビにはない。表現の自由やリアリティーを追求する演出も大事だとは思うが、テレビには年齢制限がないからこそ、このような映像にはもっと配慮が必要ではないか。

  • バラエティー番組で、お笑いタレントが他の出演者の胸に突然飛び蹴りをしていた。胸への飛び蹴りは大けがや、場合によっては死に至る可能性もある行為だ。子どもが真似するおそれもあるので、このようなシーンを放送しないでほしい。

  • プロ野球の乱闘シーンにふざけた実況解説をつけるなどして、面白おかしく取り上げていた。暴力を正当化しているようにも思われ、これを見た青少年への影響を懸念している。暴力行為を球団は批判しており、罰金などを科しているし、場合によっては刑事事件になる可能性もある。スポーツ界だけではなく、一般社会でも許されない行為を公共の電波で面白おかしく放送したことに強く抗議する。

【「性的シーン」に関する意見】

  • 昼間に放送されたバラエティー番組で、お笑いタレントが「セフレ」(性交のみの関係を意味する言葉)と連呼していた。コントのネタではあるが、子どもも見ている時間帯であり、非常に不快だった。

第176回 放送と青少年に関する委員会

第176回–2015年12月22日

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』の「委員会の考え」公表について報告…など

12月22日に第176回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、12月9日に公表した『ざっくりハイタッチ』の「委員会の考え」について事務局から事後報告があり、関連して日本民間放送連盟放送基準などについての確認が行われました。次に、11月16日から12月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、12月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は1月26日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年12月22日(火) 午後4時30分~午後7時20分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』について(報告等)

●12月9日に公表したテレビ東京「『ざっくりハイタッチ』赤ちゃん育児教室に関する"委員会の考え"」について、事務局からテレビ東京の事後対応などの報告と、関連する日本民間放送連盟(以下民放連)放送基準(18)の解説文にある、いわゆる「午後5時~9時」問題について以下のような説明がありました。
1998年12月に、郵政省(現総務省)放送行政局長の私的懇談会として設置された「青少年と放送に関する調査研究会」が7つの提言を行い、5番目に「放送時間帯の配慮」が謳われ「放送事業者自身が自主的に放送時間帯の設定を行うことが適当である」としました。
民放連は1999年1月に放送基準を改正し「(18)放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する」を付け加えました。
同時に郵政省・NHK・民放連共同で「青少年と放送に関する専門家会合」を発足させ協議し、1999年6月に取りまとめを公表しました。その中で「昨今の中学・高校生については、視聴時間帯が大人と大差ない実情にあり、さらにビデオ録画視聴も普及している状況から、時間帯の設定だけでは青少年の保護が十分ではなく、それ以外の時間帯へも放送事業者が、十分に配慮していくことが求められる」「児童・青少年が安心して視聴できる具体的な時間帯として17時~21時を定めることとする」としました。
これを受け1999年6月に民放連放送基準審議会が『「青少年と放送」問題への対応について』を公表し、民放連放送基準の新設条文(18)を順守徹底することと、具体的時間帯の設定として(18)の解説に「テレビでは午後5時~9時に放送する番組について、とりわけ児童の視聴に十分配慮する」を付け加えることにしました。
このように「午後5時~9時」問題は、単にその時間だけ「とりわけ児童の視聴に十分配慮する」のではなく、「青少年と放送に関する専門家会合」の取りまとめにあるように「時間帯の設定だけでは青少年の保護が十分ではなく、それ以外の時間帯へも各放送事業者が、十分配慮していくことが求められ」ています。
なお、NHKでは、「放送ガイドライン2015」 2 "放送の基本的な姿勢"の (4) 品位と節度【性】の項目に「青少年が視聴する時間帯などに十分留意する」とあり、NHK国内番組基準(制定 昭和34年7月21日、改正 平成10年5月26日)第11項 "表現"では「8 放送の内容や表現については、受信者の生活時間との関係を十分に考慮する」となっています。

これまでに青少年委員会は、青少年の視聴時間帯に関して以下のような「見解」などを公表しています。

◇「バラエティー系番組に対する見解」(2000年11月29日)で「最近は生活習慣の変化により11時台でも小中学生がテレビを見ており、まして子どもに人気のあるネプチューンによる番組となると一層の配慮が必要である」

◇『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』に関する委員会の考え(2014年3月10日)「『民放連・放送基準審議会「青少年と放送」問題への対応について』(1999年6月17日)(中略)においては、"17時~21時に放送する番組については、児童および青少年、とりわけ児童の視聴に十分、配慮する"としていますが、その前提として、"放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する"(民放連・放送基準第18条)を順守徹底することが求められています。
これは、各時間帯に応じて段階的に児童および青少年の視聴に十分な配慮が必要であることを意味し、21時を過ぎれば、児童および青少年の視聴に配慮する必要がなくなるわけではないことを十分に認識していただきたいと思います」

◇ "深夜帯番組の性的表現"に関する「委員長コメント」(2015年1月8日)「深夜であるからある程度の大胆な性的表現も許されるという規定は、実はない。民放連・放送基準の第18条には『放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する』とあり、解説に"テレビでは、午後5時~9時に放送する番組について、とりわけ児童の視聴に十分配慮する"とあるが、これは、午後5時~9時以外は大胆な性的表現は許されるということを意味していない。要するに深夜帯の番組での性的表現については、制作者がこれまでの慣行で、それ以外の時間帯よりも基準を緩和してもよいと理解し放送していると思われる。
私自身は、そうした形で、深夜帯の番組は、それ以外の時間帯よりも性的表現の基準を緩めて適用することすべてをダメだと考えているわけではない。(中略)深夜帯の番組における性的表現についての基準が明確な形では存在しないことが背景にある。しかし、だからといってそうした基準を多様な関係者の議論を経ることなく拙速に作成しても、それがわが国のテレビ番組の内容を向上させる方策になるとは考えにくい。(中略)放送の公共的責任についての自覚を持った上で、該当局だけでなく、各局においても、深夜帯番組における性的表現のあり方について速やかに議論を行っていただくようお願いすることにした」

視聴者意見について

  • 子ども向けアニメ番組で「親として子どもに見せたくない不快な表現があった」という視聴者意見について、委員からは、「親の深読みだろう。制作者も十分配慮していると思う」という意見が出ました。
  • 「猟奇的な暴力シーンが多く驚いた」という視聴者意見のドラマについて、委員からは「主人公が縛られ、いたぶられていたが、全体のメッセージ性との関連で暴力を助長しているとは感じられなかった」という意見が出ました。
  • 「BPOホームページなどに出た視聴者からの意見を読んで、それをBPO青少年委員会の考えだと勘違いしている人がいるようだ。言論の自由の立場から意見を表明するのは大切なことだが、青少年委員会がこれまで公表している『見解』や『委員長コメント』『委員会の考え』などをしっかり読んで真意をくみ取ってほしい」という意見が出ました。

中高生モニター報告について

12月の中高生モニターは、「日本民間放送連盟賞 2015年 特別表彰部門 〔青少年向け番組〕入選番組の感想」というテーマで書いてもらい31人から報告がありました。
今回受賞した番組は、テレビ山梨が制作し、2015年5月27日(水)20:00~20:45に放送された『ウッティ発!アンニョンハセヨ!ワタシ桑ノ集落再生人』です。
この番組は、少子高齢化が進む山梨県三郷町山保を舞台にしています。この地域はかつて国内シェア85%を占めた桑の品種「一瀬桑」の発祥の地。縁もゆかりもないこの集落に飛び込んだ韓国人ハン・ソンミンさんと妻の楠三貴さんは、使いみちのなくなった一瀬桑を利用した「桑の葉茶」で集落を活性化させ、若者を増やしたいと努力してきました。この夫婦の奮闘の4年間を追いかけたドキュメンタリーです。
今回は、中学3年生以上のモニターが大変詳しいリポートを書いてくれました。「どこの村でも今問題の少子高齢化と後継者の減少問題を柔らかくかつ真正面から取り上げていた。学べることが多く含まれていて全く飽きなかった」(鹿児島・中学3年女子)。「番組に描かれた地域の問題は首都圏にいる私たちにはなかなか接する機会がありません。是非、より多くの人にこの映像を見ていただきたいと思える素晴らしい内容でした」(神奈川・高校2年女子)。「山梨県の高校生モニターとして責任感を感じながら視聴した。地域密着型山梨発のベンチャー企業は聞いたことがなく目新しさ、新鮮味もあった。テレビ山梨のさらに面白い番組作りを期待している」(山梨・高校2年男子)。
ローカル番組を全国放送してほしいという意見も多数ありました。「このような良き番組が一ローカル番組として終わるのはもったいない。年に一回、地域で放送されたローカル番組の中で面白かったものに投票してもらい、最多得票番組を全国放送するということは可能だろうか」(長崎・高校1年女子)。「地方放送局の制作番組もすぐれたものは全国放送する~放送局は、1つの"流行"や人気となった番組に便乗するだけでなく、多くの人に意図せず容易に大切なメッセージが伝わる番組を大切にするというスタンスを忘れないでほしい」(岐阜・高校2年男子)。
中学生のモニターの中には、番組に登場した中学3年生に自分の生活を投影して報告を書いてくれた人がたくさんいました。「僕は自分と同じ年齢の長田君に注目して番組を見ました。未来をシンプルに語った彼ですが、僕は高校受験を目の前にして将来に対する夢と不安を抱えています。地方に住む青少年のためにももっと国を挙げての根本的な政策や事業での改善が必要ではないでしょうか」(東京・中学3年男子)。「農業に興味を持って手伝っている中学生を、凄くて大変大人だと感じました。都会の中学生だとあのような行動や発言をできる人はめったにいないと思います」(神奈川・中学1年女子)。
他方、批判も寄せられました。「良質で真面目な番組だからこそ、単なる娯楽としてテレビを楽しむ視聴者層を取り込むのはなかなか難しいだろう。シリーズ枠内ではあるが単発ドキュメンタリーは非常に難しい挑戦だと思う」(愛知・高校2年男子)。「日常でバラエティー番組などを見る人にとってはちょっとゆる過ぎる内容では。ハンさんのような人を紹介すべきとは思うが視聴率とのバランスが難しいのではないか」(大阪・高校1年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】今回の報告は1つの番組を見た感想というテーマで書いてもらっただけに、中高生モニターの日頃の読書量や物に向き合う姿勢が反映されていたと思う。非常に素晴らしい深い見方をしているモニターもいた。

  • (鹿児島・中学3年女子)ハンさんは日本人ではないが、とても日本人らしい人で、それがテレビを通して伝わってきた。4年という長い期間、ある人だけに焦点を当て続けることができるのは、地方局ならではだと思った。

●【委員の感想】今の中高生が意外にも過疎化している地方と都会のギャップを認識し身近な問題として受け止めていることがよくわかった。番組のメッセージもしっかり伝わっているようだ。

  • (長崎・高校1年女子)休日のお昼過ぎにドラマの再放送があるくらいだから、ローカル番組を全国で放送することは決して不可能なことではないと思う。これにより視聴者がその地域への関心や興味を持ち、実際に訪れたり移住したりすることで、過疎化や高齢化などその地域が抱える問題の解決にも十二分に役に立つはずだ。全国に情報を届けることができるテレビだからこそできる試みだ。テレビが日本全体を活性化する。それができるようになった日本は、きっと明るい。
  • (宮崎・高校1年女子)ハンさんのおかげで、集落が活性化し、これから若者が増えるのではないか。この番組を見て、これから私は"誰かのために"何かをしたいと思った。新しいことが見えてきて、今までやっていたことがさらに楽しく感じるかもしれない。最後にハンさんが言っていた。「この世を動かす力は"希望"である」と。

●【委員の感想】4回も見たモニターがいた。報告内容も大変濃い中身で、今の中高生の中にはしっかりした考えを持っている子どもたちも多いのだと心強く思った。

  • (青森・中学3年男子)まさか普段あまり見ないドキュメンタリー番組を4回も繰り返し見るとは思わなかった。見終わったあと、本当に素晴らしいという感想しか出てこなかった。良い所の1点目は、ハンさんと桑の生産者が腹を割って行った会議の風景を撮影できていたこと。しかもカメラが会議の邪魔になっていなかった。2点目は、運動会の入場シーン。小学生の入場と老人クラブの入場を対比することによって一目で少子高齢化の様子が分かるという構成には、本当に驚いた。僕はこのようなドキュメンタリーがもっと見たい。

●【委員の感想】番組のPRやプロモーションの方法、放送枠まで提案しているモニターもいた。

  • (愛知・高校2年男子)この番組名が、新聞に載ったりテレビで予告放送された時、どれほどの視聴者の心をつかめるだろうかと考えた。例えば、この番組をテレビドラマ化し、人気のタレントを出演させ、その後に"モチーフとなった実話"としてこのドキュメンタリーが放送されるとか、毎週放送される週末夜の報道番組の特集などで扱われるのであれば視聴者ももっと入りやすいのではないか。

●【委員の感想】今回の自由記述欄の中にハッとさせられる意見があった。放送局としても今後意識し検討すべき事柄だと思う。

  • (東京・中学3年男子)高齢者の犯罪報道が最近多い。お年寄りの中には認知症の影響などで、気性が激しくなったり異常な行動をしてしまったりするケースもあるだろう。未成年は実名報道しないのだから、高齢の犯罪者も罪が軽い場合は実名報道しないよう放送局が自主規制するとか、高齢化社会の日本ではもう少しお年寄りの犯罪報道も考えた方がいいのではないか。

今後の予定について

  • 3月13日(日)開催の中高生モニター会議について企画案が事務局から提出され、内容の検討が行われました。担当は菅原委員と決まりました。なお、今回はテレビ朝日の協力を得て行う予定です。
  • 来年度の中高生モニター約30人を1月20日から募集することにしました。

その他

  • 今年度の調査研究について菅原委員から、先日行われた立命館守山高校での意見交換会のアンケートを基に、調査研究の基礎データを今年度中にまとめるとの報告がありました。
  • 12月11日に放送人権委員会が通知・公表した「出家詐欺報道に対する申し立て」について、事務局から説明がありました。
  • 民放連の「青少年に見てもらいたい番組」と、青少年委員会の「青少年へのおすすめ番組」について、事務局から説明がありました。