第332回

第332回 – 2024年10月

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2024年10月15日(火)午後4時~午後9時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26・27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、起草委員から提出された委員会決定案について議論した。

2.「警察密着番組に対する申立て」審理

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に関する不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトでのお詫び文掲載のほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、6月の委員会で審理入りすることが決まった。
今回の委員会では、起草委員作成の「論点と質問項目」案について議論した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

以上

第199回

第199回–2024年10月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

第199回放送倫理検証委員会は、10月11日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』の中で人気漫画・アニメを連想させる商品に関する不正競争防止法違反被疑事件に密着し放送したが、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等、複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表し謝罪した。委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求めて討議した結果、放送倫理違反の疑いがあり詳しく検証する必要があるとして7月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から意見書の原案が提示され議論した。
毎日放送は、2024年7月17日に放送した『ゼニガメ』の中で、出張買取業者が奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり現金で買い取る様子を紹介したが、実際は買取業者が事前に用意した物であることがわかり、事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。その後さらに同じ業者を取材した2023年11月と2024年5月の放送分でも、事実と異なる内容があったことが判明し、毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は議論の結果、放送倫理上の問題がなかったかを検証する必要があるとして9月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では関係者に対するヒアリングの予定などが報告された。
TBSテレビが2024年6月19日に放送した『東大王』の特別番組「東大王VS難関中学 関東名門校SP」の中で、「野々村親子と学ぶ 業界No.1!味の素SP」というクイズコーナーが約30分間にわたってあり、視聴者からBPOへ「番組か広告か分かりづらい」という意見が寄せられた。当該放送局から提出された報告書を基に討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
NHKのラジオ国際放送問題について議論した。
9月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。
北東北地区(青森、秋田、岩手)で開催する意見交換会の実施要項と事前アンケートの集計などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年10月11日(金)午後4時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は、2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品をめぐる愛知県警の不正競争防止法違反容疑の強制捜査を取り上げ、逮捕された4人のうち3人が不起訴になったことを伝えず、また事後撮影した映像を密着取材したかのように編集して放送した。委員会は7月に審議入りし、関係者からのヒアリングを済ませており、今回は担当委員が作成した意見書の原案をもとに審議した。各委員から様々な意見が出され、議論が交わされたことをうけて第2稿を作成し、次回の委員会で継続審議することを確認した。
なお、この番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送した。奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり業者が現金で買い取る様子を紹介したが、実際は業者が事前に用意した物であることが明らかになり、事実と異なる放送があったことを翌7月18日に公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも同じ業者が土地や建物を遺族とおぼしき人物から現金で買い取る様子を放送していたが、実際はロケ以前に業者が買い取っていたこと、遺族として登場した人物も買取業者が事前に依頼していたことなどが判明した。毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は9月に審議入りし、当該放送局から提出された資料に基づき担当委員が議論を重ねた結果、ヒアリングの方向性がほぼ固まってきたことなどが報告された。関係者に対するヒアリングを10月中に行い、次回の委員会までに意見書の骨子案を作成することになった。

3. TBSテレビ『東大王』について討議

TBSテレビは2024年6月19日(水)19時から3時間にわたる『東大王』の特番「東大王VS難関中学 関東名門校SP」を制作。番組は3部構成で、中学受験で出題された問題を東大王チームが解くコーナー、動物園にいる動物を表す難読漢字をクイズにした番組名物の「難問オセロ!」コーナーと続き、最後に「野々村親子と学ぶ業界No.1!味の素SP」と題したクイズコーナーが放送された。
クイズは冷凍ギョーザや中華合わせ調味料など味の素の6商品を紹介して出題する形式で、正解の解説には味の素の社員が登場。画面左上には「東大王×No.1づくし!味の素」のテロップを表示し、味の素を冷凍食品界の王者と紹介。No.1商品と称する冷凍食品について3題を出題した後、何れも売り上げNo.1と銘打った中華合わせ調味料、和風だし、洋風インスタントスープに関するクイズを出題。クイズに優勝したチームには味の素商品の詰め合わせセットが贈られた。このコーナーの放送尺は約30分間だった。

放送後、BPOに視聴者から「クイズコーナーで味の素の商品に関する問題や解説を長時間にわたって取り上げていた。番組か広告か分かりづらい点、ステマなのかどうか分からない点において番組に疑問を持った」という声が寄せられた。これを受けて委員会は、TBSテレビに対して報告書を求め、10月4日に当該放送局から報告書が提出された。
報告書によると、当該コーナーは商品誕生の試行錯誤が学べる新企画として制作現場が立案したコーナーで、第1弾の明治に続く2回目の放送だった。制作にあたって味の素から対価は受け取っておらず、企画中に検討された企業PRにつながるような内容は全て取り上げず、番組側がクイズにしたいと考えた要素だけで自主的に構成された番組であるとしている。
一方で、放送中26分間にわたり画面左上に「東大王×No.1づくし!味の素」のテロップが出続けた点や、商品を賞賛するばかりの放送内容を「番組かCMか分かりづらい」と受け止めた視聴者がいた点については、結果的に反省すべき事だとしている。
当該コーナーは、放送後TBSテレビの考査局から「慎重さが求められる事案」との指摘を受けたが、放送前の段階で番組プロデューサー陣は問題があるとは思わず考査部門には相談していない。TBSテレビは、制作現場の番組と広告放送の識別の甘さを改めるべく、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしている。

委員会は、本事案について10月11日に討議入りを決定。民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に照合すると共に、番組か広告放送かの問題で放送倫理違反に問われた過去の委員会決定の事案と本事案とを比較して問題点を整理した。その結果、以下のような厳しい指摘が相次いだ。

  • 視聴者に身近な商品を取り上げれば視聴率につながると、制作現場が警戒心も後ろめたさもなく当たり前に考えていることに本事案の問題の根深さを感じる。

  • 1社提供で番組本編も提供社のことを取り上げているケースは、放送倫理違反であるにしても、視聴者は番組本編も広告だろうという意識で見るので実は影響はそんなに大きくない。むしろ、提供社でもない企業の事を殊更に取り上げる方が、その企業の担当者と何か裏取引があるのではないかという不信感が視聴者に募る。本事案はまさにそういう構成だ。

  • テレビショッピングかと思う程、芸能人らが褒めて美味しい美味しいと繰り返しており、視聴者からは番組か広告か分かりづらくステマかもしれないという意見が届いた。番組で取り上げた企業から対価はもらっておらず、自主的に構成した番組なので問題があるとは思わずそのまま放送したというテレビ局の対応を是認してしまっていいのか。

  • 民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」は、取り上げた企業から対価をもらっていなくても、番組制作や考査にあたっては、視聴者に広告放送であるとの誤解を招く内容・演出になっていないか常に留意する必要があるとしている。だからこそ、これまでの委員会決定で指摘したとおり番組考査が大事なのだが、TBSテレビの報告書を読む限り、制作現場は考査の必要性を全く意識せずに放送に至っており問題だ。

  • 番組か広告放送かの問題を巡って、地方局で放送倫理違反を問われるケースが相次いで以降、全国の地方局は番組と広告の境目を常に意識し苦労している。キー局がその点を全く意識せずに番組を制作しているというのが信じられない。これまで委員会決定を通じてBPOが訴えてきたことがまるで伝わっていない。これまでの委員会決定及び委員長談話の対象は全て地方局の事案であり、放送局間で公平な取扱いをしているのかも気になるところだ。

  • 「味の素」という企業名を書いたテロップが出続けていたり、商品を売上げNo.1と強調し味の素の商品を激賞したりしており、視聴者が広告ではないかと感じるのも致し方ないところがある。

  • 番組か広告放送かの問題で審議入りをして放送倫理違反を問われたある放送局の番組は「おいしさの追求」と銘打って企業の肯定的な側面の紹介に終始していた。本事案も番組コーナーのコンセプトはほぼ同じなので同様に審議入りすべきだ。

こうした厳しい意見が相次いだ一方で、本事案は、番組全編を通して一企業を取り上げているわけではない点や、番組のフォーマットであるクイズ形式に取り上げた企業の商品情報を落とし込んでいる点において、審議入りの判断をするまでには至らないという意見が出た。番組全体ではなく番組の一部で企業の商品やサービスを取り上げたケースにおいても審議入りの対象としてしまうと、キー局はもとより地方局も今後の対応に苦慮するのではないかといった意見も出た。
また、TBSテレビが報告書で、制作現場の番組と広告放送の識別の甘さを改めるべく、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしていることから、本事案は、今後のTBSテレビの自主的な対応に任せるということで討議を終了し、審議入りは見送った。

4. NHKのラジオ国際放送問題について議論

NHKは、2024年8月19日にラジオ国際放送などの中国語ニュースで中国籍の外部スタッフが、沖縄県の尖閣諸島の帰属などをめぐって、原稿にはない発言を行った。NHKは9月10日に「ラジオ国際放送問題への対応について」という文書を公表した。また、委員が作成したメモとNHKが公表した文書を資料としてこの問題について議論したが、委員会としてはこれについて取り上げるという判断には至らなかった。

5. 9月の視聴者・聴取者意見を報告

9月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、タレントが80キロ超のチャリティマラソンに挑む番組企画について、台風が接近し影響が懸念されていたにもかかわらずマラソンを中止しなかったことについての批判や、そもそも一人のタレントに80キロ超のマラソンを課す番組企画は無謀だといった声が寄せられた。この他、女性芸人が護身術を学んだ後に痴漢にあった場合どんな反応を見せるかという番組コーナーについて、性犯罪を思い起こさせるような演出は悪ふざけの度が過ぎるといった意見が寄せられたことなどが事務局から報告され、議論した。

6. 北東北地区意見交換会の開催について

放送倫理検証委員会は、2024年10月30日に青森、秋田、岩手の東北3県の放送局を対象に盛岡市で意見交換会を実施する。事務局から当日の実施要項や事前アンケートの集計結果を説明した。

以上

第271回

第271回-2024年9月24日

視聴者からの意見について…など

2024年9月24日、第271回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、欠席の榊原洋一委員長を除く7人の委員が出席しました。進行は吉永副委員長が代行しました。
7月後半から9月前半までの2カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
9月の中高生モニター報告のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年9月24日(火)午後4時00分~午後6時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

7月後半から9月前半までの2カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
バラエティー番組で、新型コロナが猛威を振るっていた当時にテレビのロケ現場で行われていた厳格な感染対策を揶揄(やゆ)するドッキリ企画を放送したところ、肯定的・好意的な意見も一部あったものの、多くの視聴者から「『感染対策は不要だ』『感染対策をする人々を嘲笑してよい』という誤ったメッセージを伝える懸念を感じた」などの批判的な意見が寄せられました。
担当委員は「この企画を放送してはならないとは言わないが、多くの死者が出た問題であるし、医療関係者や持病を持つ人たちに対しては配慮が欠けていたのだろうと思われる」と報告しました。別の委員は「(当時の)日本では、同調圧力の恐ろしさのようなものを感じていた人もいたわけで、それを笑いの手段として持ってきたことにはそれほど違和感を覚えなかった」と述べました。また、「(感染症にかかりやすい)小児がんの子どもたちがいるところなどは、今でも厳しい感染対策を強いられている。そこを揶揄されたと感じれば反発はあるだろう。この企画自体を非常識とは思わないし、実際に(今から振り返るとその当時は)滑稽な情景が国内にもあった。しかし、それを滑稽な状況として(番組の企画で)演出するには時期が早過ぎたのではないか」という意見も出されました。
西日本のある放送局のニュースサイトで、刑事裁判の判決を伝えるなかで性的暴行の被害者である12歳女子児童の供述調書の内容が掲載されたことについて視聴者から、「あまりに詳細に報じている。本人は苦しい思いをして、裁判のために信頼できる人に打ち明けた事柄だろう。裁判(公判)が公開なのは仕方ないが、その内容をメディアが社会にばらまく必要があるのか。まさにセカンドレイプだ」と厳しい批判が寄せられました。
担当委員は「指摘された内容はキー局のニュースサイトにも掲載されていて、いまでも読める」としたうえで、「本人に直接聞いたわけではなく、供述調書の内容というひとつのクッションが入っているので報じたのかもしれないが、(被害時に)12歳といういちばん難しい年ごろだということも考えると、もう少し想像力を働かせて配慮すべきだったのではないか」と説明しました。ある委員は「いま(キー局のサイトを)見ているが、被告人質問での検察官と被告人のやりとりも採録されている。公開の法廷における発言であったとは言え、女子児童にとってはデリケートな内容を含んでおり、こちらも書き過ぎかと感じる。報じるにあたってもうちょっと配慮があってもよかったのではないか」と述べました。
このほかに大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

9月のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、合わせて13番組への報告があり、複数のモニターが取り上げた番組は6つありました。
「青少年へのおすすめ番組」では『第44回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2024』(日本テレビ)に4人から、『サザエさん』(フジテレビ)に3人から、『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』(NHK総合)と『#8月31日の夜に。』(NHK Eテレ)および『日曜ビッグバラエティ ニッポンの空を守る仕事人【日本全国の空港で激レア映像大公開SP】』(テレビ東京)にそれぞれ2人から、感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 『映像の世紀バタフライエフェクト「オリンピック 聖火と戦火」』(NHK総合)
    パリオリンピック開幕と世界で多くの戦争が起きている現状が重なり、番組タイトルに惹かれた。視聴後はよりオリンピックへの興味が湧いた。開会式には平和・ジェンダー平等などのメッセージを強く込めているように見えたが、同時に他の国で戦争が起こっていることに違和感を覚えた。オリンピックの効果や意義は何かを考える必要があると思った。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『NHKスペシャル「原爆 いのちの塔」』(NHK総合)
    • 原爆の悲惨さをネット配信で世界に広めたりして、核廃絶を訴える番組に変えるべきだと思う。中高生を対象とするならYouTubeでも配信するべきだと思う。また僕は臆病で戦争の番組を夜に見るのは怖いので、明るい時間に放送してほしい。(中学2年・男子・東京)
    • 中高生でも分かりやすい表現や言葉で制作され、映画を見ているようでした。ただ資料の字幕が、白い紙の上に白い文字を使用しており、自分は理解できたけれど祖父母の年代だと見づらいと思います。このテーマの番組は世代を超えて同じものを見る必要があるので、字幕の色や大きさは工夫するべきだと思いました。(中学2年・女子・東京)
    • 番組冒頭に火傷で顔がただれてしまった人の写真が映しだされた。その他にもショッキングな映像があったが、ありのままを知ることができて良かったと思う。漫画「はだしのゲン」で私の原爆に対するイメージが形成されていたが、専門家の客観的な見解やドラマ・映像・写真から現実的な迫力を感じた。(高校2年・女子・青森)
  • 『NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争1944 絶望の空の下で」』(NHK総合)
    たくさんの人の手記が登場し、同じ出来事でも色々な人の思いが交錯していたと分かる一方で、主要人物についてはもう少し掘り下げてほしいと思いました。また場面転換が多く少し混乱してしまいました。(高校1年・女子・愛知)

  • 『NHKスペシャル「“一億特攻”への道 ~隊員4000人 生と死の記録~」』(NHK総合)
    • 私は終戦間際に原子爆弾の被害に遭った長崎で生まれ育ち、平和学習を重ねてきました。社会科の授業で「平和を語り継ぐとき、厳しい表現で伝えるべきか」が話題になったとき、私は「戦争は生ぬるいものではないし、実際に心身ともに傷ついた方も大勢いらっしゃるので、厳しい表現のほうが戦争の実情を知ることができる」と思っていましたが、番組を視聴して考えが変わりました。番組には戦時中の映像やラジオ音声がそのまま使われており、心が痛んだり目を背けてしまったりすることもあり、向き合いたくても向き合いづらい部分もあるのではないかと思いました。戦争の伝え方は、今後考えていきたいことの一つになりました。(中学3年・女子・長崎)
    • 上層部にとって若者兵はあくまでも駒の1つでしかなかったことが伝わってきた。この上層部の態度には強い憤りを感じたが、一億特攻という思想に対して国民のだれも違和感を抱かなかった当時の環境に我々は目を向け、日本人特有の同調圧力といった性質を反省するべきだと思う。(高校1年・男子・兵庫)
    • 特攻を支えていたのは日本人の「精神」であり、アメリカの「数」に対して「精神力」で対抗するのだという意識だったと番組で紹介していて、日本に昔からある「武士道」と似ていると思いました。(高校2年・男子・神奈川)
    • 特攻隊員の紹介が「10月30日、1機目は18歳の加藤さんで、2機目は廣田さん…」「一番端に写っているのが兄…」と、今まで見たことのある映像とは全く違う重いものだった。戦死した人にも人生があったし家族もいて、その一人ひとりに焦点を当てていて余計に心に刺さった。今までこんなにテレビ番組を見るのが辛いと思ったことはないくらいだった。同じ映像でも切り口によって見ている人には違う捉え方になる。これから新しい映像や資料は出てこないだろうけれど、切り口を変えることで後世に響く番組を作ることはできるのだと思った。(高校3年・男子・東京)
  • 『NHKスペシャル「“最後の一人を殺すまで”~サイパン戦 発掘・米軍録音記録~」』(NHK総合)
    戦争の映像を見たことはあったが、今までと違ってずっと重い気分になる番組だった。なぜかというと個人名や肉声があったからだと思う。人が亡くなるニュースは人数で表されるが、一人ひとりにそれまでの人生がある。自分は今までリアルとして捉えていなかったのだと思った。(中学3年・男子・東京)

  • 『クローズアップ現代「終わらない戦争(2) “生きていることが疎ましい” 知られざる戦渦の中絶」』(NHK総合)
    中絶手術は麻酔なしで行われ悲鳴が上がったという相馬医師の手記はとてもリアルで、女性の辛い気持ちが痛いほど胸に刺さりました。戦争にはいろいろな顔があるけれど実は全然知らないので、もっと子どもたちにも教えていくべきだと思いました。戦争系の映像はショックすぎて昨今ではあまり流されませんが、このような戦争があってたくさんの過ちがあり苦しんだ人が大勢いる、その人達がつかみ取った自由の中で今私たちが生きている、という事を忘れてはいけないと思いました。(高校3年・女子・奈良)

  • 『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』(NHK総合)
    • タイトルから内容を想像しやすかったです。また主人公と私の年齢が近いので、抱えている悩みに共感しやすかったです。戦争の話はテレビでは聞き飽きたけれど、語り部の話を私も聞いてみたいと思いました。(中学2年・女子・秋田)
    • 私が小学生の時に、戦争について小学校に話をしに来てくれた人がいたが、当時はまだ第二次世界大戦について習っておらず詳細な話の内容も覚えていなかったから、今回ドラマという形でもう1回聞くことができてよかった。ドラマの公演会前の物語部分をもう少し短くした方が、集中して見ることができるなと思った。(高校2年・女子・東京)
  • 『つなぐ、つながるSP 科学が変えた戦争1945⇒2024』(TBSテレビ)
    • 実際に原爆が落とされた映像を見て、こんなにも一瞬で町が変わってしまうのだと思った。昔は飛行機のような形だったけれど、今は小さなドローンが人の命を奪ってしまうことに驚いた。(中学2年・女子・鳥取)
    • 罪のない人達が次々と殺されていき、それでもまだ核を使い続けていることが許せないと思いました。私は戦争をすべきではないと思うし、憲法9条の改正に反対です。改正されると日本も戦争に参加することになり、多くの犠牲者を出して同じ過ちを繰り返してしまうかもしれません。いま世界で戦争が続いているので、この問題をもっと真剣に考えるべきだと思います。(高校1年・女子・岐阜)
  • 『徹子の部屋 「戦争」を忘れない~櫻井翔が聞く黒柳徹子の記憶~』(テレビ朝日)
    黒柳徹子さんが戦争についてゲストに話を聞いた過去のシーンが流れました。30~40年前まで芸能人の中にも当たり前に戦争体験者がいたなんて想像もつきませんでした。淡谷のり子さんの特攻隊のエピソードに黒柳さんも涙している姿が一番印象的でした。過去の映像を見ながら戦争を振り返ることができるのも長寿番組だからこそだと思います。(高校3年・女子・熊本)

  • 『池上彰の戦争を考えるSP2024 ~なぜ、世界から戦争はなくならないのか~』(テレビ東京)
    • どんな理由があろうと戦争は起こしてはいけないものだと思いました。また原爆の被害は、当たれば死に、生き残ってもつらい後遺症に苦しむ、というひどいものです。日本はただ一つの被爆国として非核三原則を推していかないといけないと思いました。(中学1年・男子・山形)
    • 世界から戦争をなくすためには歴史に学び、それはこの先の戦争の危機を予測し戦争を未然に防ぐことにつながるという池上さんの言葉があった。私の周りにいる大人は「戦争の歴史を学びなさい」と言ってはいたが、学んだ後のことまで教えてくれる人はいなかったので、歴史を学ぶことの意味が初めて分かった。(中学1年・女子・鹿児島)
    • 池上彰さんを知っていたので番組を視聴しましたが、私の同級生は池上さんを知らない人が多く、戦争番組には興味がないので1つも見ない人がほとんどです。若者にもっと見てもらった方がいいので、若者に圧倒的な知名度がある人や、中高生がリポートする企画などがあった方がいいと思います。(中学3年・女子・神奈川)
    • 旧日立航空機立川工場変電所の銃痕や現在の防衛省の下にある大本営地下壕跡など、東京都に残る戦争の遺跡を初めて見ました。実際に亡くなった方がいた場所で歴史を述べていて、いつも以上に内容を深く受け止めました。東京裁判についても初めて詳しく知り、もっと学校の授業でも取り上げて深く学ぶべきだと思いました。(高校2年・女子・愛媛)
  • 『託されし人たち ~被爆79年 約束の時~』(テレビ新広島)
    ある家族伝承者の「あの時に聞いておけば良かった、と思うことだらけ」という言葉に、記憶を伝承していく尊さと、避けて通れない難しさがあると痛感した。広島市の伝承者養成の取り組みを知り、また元々太平洋戦争に関心があることも相まって、自分もいつか伝承者になりたいという思いが生まれた。被爆地に限らず自分が住む県や他の地域でも、次世代に語り継ぐ人を養成してほしい。(中学2年・女子・埼玉)

【自由記述】

  • 過去のモニターリポートをウェブサイトで読んで、戦争関連のドラマやドキュメンタリー番組が毎年少ないことに気が付きました。私は、NHKは戦争関連の番組を多く放送しており内容も良いと思いましたが、民放の番組は少なくがっかりしました。消えゆく記憶を残すためには全ての放送局が大々的に放送すべきだと思いました。(高校2年・男子・山口)

  • 大量の終戦番組がどのように保管されているのかとても気になります。これまでの貴重なインタビューなどを“再利用”しないと、いずれ終戦番組を放送できなくなる日がくることは必至です。放送局あるいはどこかにまとめて保管されているのでしょうか。(中学3年・男子・千葉)

  • インターネットの検索サイトで『火垂るの墓』と入力すると、予測変換ワードの一番上に「放送禁止」の言葉が出てくる。子どものうちからアニメーションで戦争について学ぶのは大切だと思うので、ぜひ8月の上旬に放送してほしい。(高校2年・女子・青森)

  • 特に民放のニュース番組で、SNSでバズった記事や投稿を返信(リポストやコメント)つきで紹介するコーナーが最近増えているように思う。SNS上での返信には多くの考え方がありインタビューなどより気軽に取得できるが、テレビよりも身近な立場の人がいることで、自分の考えが知らないうちにコントロールされているような感覚になり怖く感じる。(中学2年・男子・東京)

  • ラジオはコーナーを決めて放送しているけれど、3カ月に1回くらい、いつものコーナーではなくフリートークだけを放送してほしい。ファンは特別感があって嬉しいし、新しいリスナーも番組や出演者について知ることができていいと思う。(中学2年・女子・鳥取)

  • テレビから得られる情報はフェイクニュースがなく信用されているので、テレビ局がニュースをSNSに投稿してほしい。(高校1年・男子・長崎)

  • 7月に報告したラジオ番組『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』のテレビ版(NHK総合)を視聴した。「親近感がわくラジオ放送」が実現できているのは、1つの机を囲んで3人が座っているからだと思った。テレビ番組を見た後に、この時収録されていたラジオを再び聴くと、3人が話しているところが想像できてとても面白かった。(高校1年・男子・兵庫)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』(NHK総合)
    年を取った田中さんと少年がだんだんと仲を深めていく様子を見て心が温まりました。最近、子どもの騒音問題を度々耳にしますが、田中さんと少年のような関係が築ければいいのになあと思いました。(中学3年・女子・東京)

  • 『#8月31日の夜に。』(NHK Eテレ)
    自分と同世代が「死にたい」「生きるのがつらい」と投稿していて驚いた。曲紹介中に都内のLIVE映像があり、「今同じ月を見ている仲間がいる」と思えることで救われるし、同じ時間を生きていることが分かる方法は良いと思った。こんな番組を見たのは初めてだったので来年も見てみようと思う。(高校3年・男子・東京)

  • 『第44回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2024』(日本テレビ)
    • 小田原城や日本一のつり橋でのクイズといった体を張る企画は斬新だと思ったが、クイズ番組の域を超えていてバラエティー色が強すぎた。数少ない人気のクイズ番組なので、今まで通りクイズに特化した番組構成でよかったと思う。(高校1年・男子・兵庫)
    • 1年に1回のこの番組をとても楽しみにしていました。長時間のクイズ番組を見る同世代は少ないと思うので、SixTONESが出演することで若者の視聴率が上がればいいなと思います。途中の体力を使う場面では男性と女性の体力の差を感じ、クイズ番組で必要な演出だったのかについて疑問が残っています。(高校3年・女子・奈良)
  • 『サザエさん』(フジテレビ)
    オープニングで福井県が紹介されていて、自分の住んでいるところが紹介されたら嬉しいだろうなと思った。『ワカメ夢の二階家』ではワカメが「お兄ちゃん(カツオ)とHさん(花沢さん)は結婚するには成績が釣り合わない」と言っていた。はっきり口にするのは違和感があるし、小さい子どもに“結婚の釣り合いの基準になる”と伝えるべきではないと気になった。(中学3年・男子・東京)

  • 『日曜ビッグバラエティ ニッポンの空を守る仕事人【日本全国の空港で激レア映像大公開SP】』(テレビ東京)
    聞いたことがない言葉が沢山出てきたけれど、その都度詳しく紹介していて分かりやすかった。特に税関の仕事が面白かった。今年の1月に飛行機が炎上する事故があったので、今回のような番組を見ると少しでも安心して乗ることができると思う。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『与次郎駅伝』(秋田テレビ)
    小学生や会社チームの団結がすごかったです。いつもの街並みが、駅伝になると華やかで活気にあふれていてよかったです。(中学2年・女子・秋田)

  • 『新 窓をあけて九州「いのちのバトン」』(長崎放送)
    長崎県諫早市では年間三千頭ほどの猪が駆逐され皮が捨てられるが、それを革小物にしようとする考えがすごいと思った。「命をつなぎたい」という思いを胸に手作業で作っており、尊敬できる働き方だと思った。(高校1年・男子・長崎)

  • 『ナマ・イキVOICE』(鹿児島テレビ放送)
    鹿児島県内の店だけを紹介しているので、気になる店を見つけたときに行きやすい。出演者の移動や実際に食べる姿を見て、自分も食べに行っている気分になれるのが良かった。(中学1年・女子・鹿児島)

  • 『DRAMATIC BASEBALL 2024 巨人 VS 阪神』(BS日本)
    「巨人対阪神の伝統の一戦」とアナウンサーが言っていた。どういう意味なのか分からなかったので調べたら、主にマスコミが対阪神タイガース戦をこう表現していることが分かった。他のチームでは“伝統の一戦”と表現しないので興味深かった。またピッチャーの名前の下に“防御率”“勝”が表示されていたが、野球を知らない人でも楽しめるように分かりやすい説明があると嬉しい。(中学1年・男子・山梨)

◆委員のコメント◆

【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 中学3年生から「厳しい表現では戦争について知ることを避けてしまう人も多くなるので、よりたくさんの人が知るようにもっと優しい表現にするべきだという議論が社会科の授業であった」と報告があった。ドラマや映画ではかなり凄惨なシーンもあるが、ドキュメンタリーの“現実”としての凄惨なシーンは「見たくない」という声が多くなっていると思う。

  • 『NHKスペシャル「“一億特攻”への道 ~隊員4000人 生と死の記録~」』(NHK総合)で特攻隊員の年齢や実名とともにその人生を取り上げていたのは、視聴した高校3年生にとって大きなインパクトがあったようだ。特攻隊員が本当に生きていたことや、戦争の悲惨さを実感できたのだと思う。

  • 『池上彰の戦争を考えるSP2024 ~なぜ、世界から戦争はなくならないのか~』(テレビ東京)のように、歴史を学んで今後の危機を予測したり現在のウクライナでの戦争と比較したりするなど、現代との連続性を強調する番組は若い視聴者からすると取っつきやすいのだろう。一方で『NHKスペシャル「“一億特攻”への道 ~隊員4000人 生と死の記録~」』(NHK総合)のように歴史の検証にしっかり焦点を当てた番組は若者が我が事として捉えにくいという面は否めないのかなと、リポート全体を通して思った。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『#8月31日の夜に。』(NHK Eテレ)について。「9月1日は子どもの自殺が多い」と報道されることがよくあるが、これは1977年~2017年までのデータで、最近のデータは反映されていない。この番組は危機感を煽るような趣旨の番組ではないが、自分が番組制作者と議論するときには「ことさらに“9月1日は~”と煽らないでほしい」と伝えるようにしている。

【その他(終戦・戦争関連番組のこれからについて)】

  • 今の中高生は戦争報道に対して「怖い」「嫌だ」「むごい」など拒否する傾向があるようだが、その一方で残酷さを売りにした映像コンテンツ・ゲームなどに触れる機会も多い。若い世代にとってそのバランスはどうなっているのか気になるところだ。

  • 残酷なシーンのあるコンテンツやゲームに日常的に触れている若者は、戦争報道にはそこまでの拒否反応がないのではないか。戦争報道を「怖い」という若者は、普段から残虐なコンテンツに接触していないと思う。

  • アニメで人の首が飛ぶシーンを見るのは平気な若者でも、ドキュメンタリー番組では「ガチなのはやめて」という感覚なのでは。原爆被害者の映像などにもホラー映画のような怖さを感じてしまうのかもしれない。しかしそういった残虐な出来事が戦争では本当に起きるということも、知っておかなければいけないと思う。

  • 残虐な映像を見た若者が心理的に病んでしまう可能性もあるので、そこは十分に気をつけなければならない。

  • 原爆資料館やひめゆり平和祈念資料館などでも、残虐な映像や展示では社会科見学でも来てもらえないといった悩みを抱えていると聞いた。犠牲者一人ひとりの名前を出してリアリティーを伝えるといった形にトレンドが変化しているようだ。

  • 我々が子どもの頃は、学校教育などでも戦時中の惨い映像を見せられてきたが、怖くても目を背けないで見るべきだという思いもあった。しかしそういった残虐な映像は苦手だという視聴者に配慮して戦争関連番組を制作しなければいけないとなれば、戦争の実態を報じるハードルは今後高くなっていくのだろう。もちろん“ガチの死体”や“人が殺される”ということに拒否反応を持つのは正常だ。子どものころに戦争体験者の言葉から想像する戦争はとても恐ろしかったし、残虐な映像がなくても伝えられることもある。これから先、テレビやラジオの表現のなかで、戦争のリアルさや怖さを青少年にどう伝えていくのかは大きな課題であり、考え続けていくべきテーマだと思う。

今後の予定について

次回は10月22日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

2024年9月に視聴者から寄せられた意見

2024年9月に視聴者から寄せられた意見

自民党総裁選や兵庫県知事をめぐる報道に多くの意見が寄せられました。

2024年9月にBPOに寄せられた意見の総数は2,193件で、先月から1,341件減少しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 85.8% 電話 12.8% 郵便・FAX 1.4%
男女別は、男性 52.1% 女性 26.1% 無回答 21.8%で、世代別では10代 1.7% 20代 10.9 30代 19.7% 40代22.8% 50代 20.4% 60代 13.1% 70歳以上 2.6%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。9月の個別送付先は25局で、意見数は670件でした。放送全般に対する意見は100件で、その中から13件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

自民党総裁選をめぐる報道や兵庫県知事への不信任決議をめぐる報道にさまざまな意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は37件、CMについては7件でした。

青少年に関する意見

2024年9月中に青少年委員会に寄せられた意見は62件で、前月から23件減少しました。
今月は「要望・提言」が32件と最も多く、次いで「表現・演出」が17件で、以下、「編成」「言葉」などが続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • 自民党総裁選の話題と比べると立憲民主党代表選の取り上げ方が小さいと感じる。同時期に行われるからこそ同様に取り上げてほしいと思う。

  • 自民党総裁選の報道で、特定の候補の扱いが大きかったり、特定の候補に対して批判的なコメントが目立ったりと、全員を公平に取り上げているとは思えなかった。

  • 連日ニュース番組も情報番組も自民党総裁選とメジャーリーグの話題ばかりだ。

  • 兵庫県知事に対する百条委員会や不信任決議案などをめぐる各社の報道内容は一方的な批判が多いと感じている。背景を含めて事実関係を詳しく正確に伝えてほしい。

  • 兵庫県の元幹部が自死したとされる問題に触れコメンテーターから、“追い込んで殺した”という趣旨の発言があり不穏当ではないかと感じた。

  • 毎年恒例の大型チャリティー番組。台風が接近し強風と大雨の予報が出る中で、トラックを周回させてまでマラソンを行う意味があるのだろうか。

  • 大型チャリティー番組のマラソン企画の中で、ランナーである女性タレントの身体を歩道の観客が触っていた。何らかの予防策を立てられないだろうか。

  • 人気タレントの夏休みに密着する番組。SNSでの発言により活動自粛中のタレントが収録現場にはいたはずなのに放送を見たら出演場面がまったく無くて驚いた。

  • 8年前に解散した人気アイドルグループについて、楽曲を使わない、歌唱の映像を使わないなどの不自然な扱いがいまだに続いていると感じる。

  • 「Z世代」などの言葉で若い世代をひとくくりにすることに抵抗感がある。どこかネガティブなニュアンスを感じるし、多様性をうたう時代の発想ではないと思う。

  • 事件のニュースで、目撃者の通報の模様や容疑者の供述内容を声優やアナウンサーに演じさせることが多い。現場の緊迫感や容疑者の言い分の理不尽さを際立たせる目的で行われていると理解するが、一方で、視聴者の怒りの感情や恐怖を煽る結果になっているとも感じる。

  • 各社でドラマのシナリオ大賞を実施しているが、バラエティー番組やアニメなどの企画を公募するコンテストがあってもよいと思う。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • ドラマで子どもが性的虐待を受けるシーンがあり、子役と成人俳優が同じフレーム内で撮影されていた。こうしたシーンはその必要性をよく検討したうえで、子役と成人を別撮りするなど、子役の精神面に配慮して撮影されるべきだ。

  • バラエティー番組で、護身術を習った翌日に暴漢に襲われるというドッキリがあった。夜道で暴漢に抱きつかれる状況は、女性ならだれもが想像する恐怖であり、視聴者にトラウマを与える可能性さえある。こうした影響を考慮した番組作りを心掛けてほしい。

  • ドラマの中で、ヘルメットをかぶらずに自転車を運転するシーンがあった。深夜ドラマだが、子どもたちが見ることもある。悪影響を与えるので、このような演出はやめるべきだ。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 高校生を対象にしたクイズ番組で、解答する前に80mの全力疾走が課されたため、先に答えが分かって走り出した女子の参加者が、遅れて走り出した男子に走力で負け、敗退してしまった。男女の体力差を補うよう競技内容が工夫されるべきだ。

  • バラエティー番組のことわざ「七転び八起き」をテーマにしたドッキリで、細身の男性アイドルを転ばせていた。床のシーツをいきなり引っ張る転ばせ方で、危なっかしくて笑えない。危ないことは面白いことではない。

【「編成」に関する意見】

  • 土日の朝9時以降は、子どもたちが水泳や体操などの習い事に出かける時間帯だ。しかし、日曜日の午前9時台に子ども向け特撮ドラマが数年前から放送されている。以前のように、午前9時以前の時間帯に放送すべきだと思う。

【「言葉」に関する意見】

  • 報道番組で、画面右上のタイトルに「“パワハラ知事”迫られる判断」と出ていたが、「パワハラ」は失礼ではないか。マスコミがそろって知事をいじめているようで、子どもには見せられない。