第305回放送と人権等権利に関する委員会

第305回 – 2022年6月

「ペットサロン経営者からの申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2022年6月21日(火)午後4時~午後6時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1. 審理要請案件「ペットサロン経営者からの申立て」

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。「押さえなさい。暴れないように。それを何回も何回も繰り返すので」「『私は神だ』みたいなことを言うんです」といった、ペットサロン経営者に関する発言が放送された。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
3カ月以上、9回の面会・交渉を経ても解決せず、「相容れない状況」となっていたために今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。
今回の委員会では、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

2. その他

事務局から最新の申立て状況や「自殺報道」に対する視聴者意見、「民放連放送基準」改正について説明した。

以上

2022年6月21日

「ペットサロン経営者からの申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、6月21日の第305回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。「押さえなさい。暴れないように。それを何回も何回も繰り返すので」「『私は神だ』みたいなことを言うんです」といった、ペットサロン経営者に関する発言が放送された。
 この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
 これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
 3カ月以上、9回の面会・交渉を経ても解決せず、「相容れない状況」となっていたために今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。

 6月21日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第172回 放送倫理検証委員会

第172回–2022年6月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

第172回放送倫理検証委員会は6月10日に千代田放送会館で開催された。
毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話が6月2日に公表され、その概要が報告された。
委員会が3月9日に通知・公表したテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年6月10日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. 毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話の公表を報告

毎日放送が2022年元日に放送したバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』について、5月の第171回委員会では、放送局としての自律的な自浄作用が機能しているとの一定の評価を行うとともに、質的公平性について踏み込むことは政治ジャーナリズムの足かせになる可能性があることを考え、紙一重のところで審議入りはしないとの結論に至った。その上で、当該番組に問題がなかったと誤解されるおそれもあることから討議入りとし、6月2日、委員長談話をBPOウェブサイトに公表した。
今回の委員会では、小町谷委員長から公表についての報告が行われ、事務局からは毎日放送のチェック体制の強化策など対応が説明された。

2. テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

3月9日に通知・公表したテレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見(委員会決定第42号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を社内に周知徹底した上で、社内各部署の危機管理担当者で構成される「放送倫理関連委員会」において、放送倫理違反があった点と、本件放送の5つの問題点についての説明が行われ、全社的な共有をしたことや、検証委員会の委員を招いて勉強会を開催したことなどが記されている。また再発防止に向けて、番組全般の管理の強化や、中堅、ベテラン向けの報道倫理研修を行い、「放送倫理ホットライン」を設置したことと共に、制作会社のテレビ朝日映像における再発防止策などが報告されている。
委員からは、再発防止に向けて「管理の強化」や「徹底的なチェック」などが挙げられているが、それ以前に放送ジャーナリストとしての基本的な確認作業を怠らないようにすべきだとの意見が出されたものの、委員会の意図するところはくまれているとして、報告を了承し、公表することにした。
テレビ朝日の対応報告は、こちら(PDFファイル)

3. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が出され、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から5月までの委員会において、担当委員からヒアリングに関する報告に続き、意見書の原案が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、追加で実施した当該番組の関係者に対するヒアリングの内容が報告された。その上で、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再度、意見書の修正案が提出される予定である。

4. 5月に寄せられた視聴者意見を議論

5月に寄せられた視聴者意見のうち、知床観光船事故で犠牲になった男性がプロポーズの手紙をしたためていたことを放送したことについてプライバシーの侵害だと指摘する意見や、人気お笑い芸人の死去に関する報道がWHOの「自殺報道ガイドライン」に反していたと指摘する意見が、それぞれ複数あったことについて、事務局から概要が報告されたが、さらに踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

2022年5月に視聴者から寄せられた意見

2022年5月に視聴者から寄せられた意見

バラエティー番組での「妻の脳内では夫は寄生虫みたいな感じ」という出演者の発言、「鬼講師」のスパルタぶりを強調した演出などに多くの意見が寄せられました。

2022年5月にBPOに寄せられた意見は2,255件で、先月と比較して607件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール83%、電話16%、郵便・FAX1%。
男女別は男性45%、女性15%で、世代別では40歳代26%、30歳代23%、50歳代21%、20歳代15%、60歳以上9%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、5月の送付件数は1,152件、50事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から35件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

バラエティー番組出演者の「妻の脳内では夫は寄生虫みたいな感じ」という発言、芸能人の急死の報じ方、バラエティー番組での「鬼講師」のスパルタぶりを強調した演出などに多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は39件、CMについては28件でした。

青少年に関する意見

5月中に青少年委員会に寄せられた意見は119件で、前月から34件減少しました。
今月は「表現・演出」が25件、「いじめ・虐待」が23件、「マナー・服装」が19件、「非科学的な事柄」が16件、「報道・情報」が11件でした。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 誤送金問題の報道について。容疑者が小学校の卒業文集に書いた内容を報道していることは理解に苦しむ。小学生時代に書いたことと今を結びつけ、金への執着は「昔からの性根」と言わんばかり。人権問題ではないか。

  • 誤送金に新人職員が関わっていたと報じられていたが、新たな報道では、この職員は銀行に書類を持っていくよう指示されただけで、ミスの根幹部分には関わっていないという。この職員へのネットでの攻撃はすさまじく、個人名および写真が公開されている。報道がこのような状況を作ったといえる。

  • 誤送金によって一人の青年を犯罪者にし、その一生を激変させてしまったことについて町はどう考えているのか、どう責任を取っていくのかを取材すべきではないだろうか。

  • 急死した芸能人の自宅前から中継。方法や発見場所を具体的に説明。「自殺報道ガイドライン」にことごとく反している。

  • 芸能人急死の報道後、彼と年齢の近い知人が自殺念慮を口にするようになった。相談窓口の案内さえすれば免罪されるかのように報道しているが、報道の繰り返しが新たな自殺者を生むことを、報道機関として自覚してもらいたい。

  • 時々「いのちの電話」などを利用しているが、有名人の急死報道で紹介されるたびにつながりにくくなる。中には必要がないのにかけてみる人もいると聞く。必要な人が利用できるよう紹介を1回おきに減らすなど検討してほしい。

【番組全般・その他】

  • あるラジオ情報番組のコメンテーターは特定の国会議員が大嫌いのようだ。その議員の「脱マスク」発言を取り上げたニュースについて「彼に必要なのはマスクより猿ぐつわ。後ろ手に縛りあげてボコボコにしたい」「ふざけるな、このバカたれが」などと発言。個人的な悪感情をラジオという公の場でむき出しにするのは不適切。

  • ニュースを解説するバラエティー番組で中国と日本のアニメーターの「平均月収」について「中国52万円、日本19万円」と伝えたことに対して、Twitterで中国人のアニメーターらが「うそだ」と指摘、給与明細の画像が公開されたりしている。「中国52万円」は「ごく一部の人」の給料であって、全体の平均は日本と同じレベルかそれ以下だという。誤った情報を放送すべきでない。

  • 高校サッカー部の暴行問題で学校関係者を生出演させてその一方的な意見を放送し、問題が限定的であるかのような印象を与えた。後日、その学校関係者の番組での発言にうその内容があったと指摘されている。公平な取材に基づく放送が行われたとはいえない。

  • 「マナー講師」が相手を叱りつける、明らかにパワハラと思われる行為を面白おかしくナレーションを付けて放送した局に不快感を覚えた。局のモラルを問う。

  • スパルタマナー講師が相手を面罵(めんば)する演出。これが放送されたということはこの内容を放送局が容認したということ。放送局の時代遅れな体質、偏見、おごりを感じた。講師個人ではなく、この演出を笑いとして制作した放送局にがく然とした。子どもたちも見る人気の番組だからこそ視聴率だけを求めるのではなく、もっと真摯(しんし)に価値ある番組作りをしてほしかった。視聴者に寄り添う温かい気持ちを感じない番組だった。

  • バラエティー番組で「認知科学評論家」の出演者が「妻の脳内では『家庭』は『自分の領域』。そのルールが適用されるので世間のルールは通用しない。(夫である)皆さんは寄生虫みたいな感じ」と発言した。男女を入れ替えて「夫から見て妻は寄生虫みたいなもの」という内容であれば放送できるわけがない。ということは適切な内容ではない。笑えればいいというものではない。

  • 「妻の地雷を踏まない方法スペシャル」で夫を「寄生虫」呼ばわり。出演した男性タレントたちが披露したエピソードは男女が逆ならモラハラ、DVと非難されるようなものばかりだった。

  • お笑い芸人がラジオの生放送で、最近自身が健康診断代わりに受けたという「検査」について「脳に傷ができているそうなので砂糖玉を舌下において癒(いや)す」「特殊なもので単なる砂糖玉ではない」「検査含めて4万円」などと詳細に説明していた。法に抵触する医療行為を推奨するような内容だ。「砂糖玉」などいわゆる「ホメオパシー医療」について日本学術会議は「治療効果は科学的に明確に否定されている」との会長談話を出している。公共の電波でこうした情報を提供するのは不適切ではないか。

  • 父親が「柔道の指導」として17歳の娘にヴィーガン(完全菜食主義)を勧め、高校入学以降、肉、魚、卵、乳製品を一切とらせていないという。柔道の成績が上がったことをヴィーガンの効果として語っていたが、青少年の場合は身体への悪影響が非常に大きい。間違った知識がテレビで流布され、それを見た知識のない親が子どもに与える苦痛を考えると看過できない。

  • 私は内科医。番組で「オフィスで次々に人が倒れた。原因はある人の皮膚から出た有毒ガス。パトム/PATMという症状」というケースを、実際に起こりうることとして描いていた。医学的にはPATMという疾患は認められていないし、次々と人が倒れるような濃度の有毒ガスが人の皮膚から出るはずがない。

  • いわゆる「おバカタレント」の誤答・珍答を嘲笑する番組は見ていて不快。学習障害などの人に対する配慮・理解が失われると思う。

  • 人気俳優に密着取材した番組で彼の喫煙シーンが何度も放送され、喫煙に対するポジティブなメッセージになっていると感じた。

  • ワイドショーで「『新人は30分前出社』という自社のルールに疑問」という視聴者の投稿を取り上げ、出演者が「自分なら従う」「従わない」などの意見を述べ合って終わった。人間関係や恋愛の問題ならこれでもいいかもしれないが、この問題は賃金、労働時間など法令にも関係する。専門家を交えてトークするなどすべきで、素人の雑談で終わらせるのは不適切ではないか。

  • 寿司を毎日食べるという評論家が、ある大手回転寿司チェーンのメニューをランキングしたという内容だったが、紹介した6品中、3品が「明日発売」。不適切だと思った。

  • コンプライアンスが厳しくなってやりにくい、という出演者や制作者の発信がある。確かに規制の行き過ぎを感じることもあるが、出演者・制作者が視聴者との価値観のズレに気付いていないから、という場合もあるのではないか。実際に新しい価値感でネタを作って結果も出している若い芸人たちがいる。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 夫婦関係にまつわるトーク番組で、脳科学者の「みなさん(夫)は寄生虫」発言があった。番組全体を通して、妻の要求は全て正しく、夫に対してのモラハラ・パワハラは笑いごととして看過されるべきという内容。社会経験が少ない母親などが影響され、自分のワガママを許さない夫に責任があるとして、児童虐待、ネグレクトを正当化する材料にもなり、罪のない児童の虐待死につながる可能性も考えられる。公共のテレビで放送する危険性を考慮すべき。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • あるゲーム番組で、連勝中の特定の出演者が負けるように仕向けることを“キャンペーン”と称し、「負けろ」「空気を読め」等の貼り紙を貼るなどしていた。実力で良い成績を残した人を妬み、いじめてもいいという印象を与えており憂慮する。

【「非科学的な事柄」に関する意見】

  • 特撮ヒーロー番組で、政府特務機関(味方組織)が、敵組織の戦略的人類退化政策から国を守るため、「体内の“悪魔”を取り除く」スタンプの押印を義務化するという描写があった。その見せ方が、最近の新型コロナウイルスのワクチン接種と酷似している。政府特務機関はヒーローと悪魔を戦わせ、国民たちに不安の危機感を煽り、そのスタンプ押印希望者を増やすマッチポンプをしていた。接種への皮肉もしくは警鐘を鳴らしているのだろうが、陰謀論者による反ワクチン描写のようにも思えるので、これを朝の子供達が見る時間帯に放送されていて心配になった。

【「マナー・服装」に関する意見】

  • 女性マナー講師が番組ADにスパルタ式にテーブルマナーを指導していたが、言葉遣いも悪く見ていて気分が悪かった。相手を追い込み威圧する高圧的な態度は許せない。子どもも見ている時間帯で、教育上よくない。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 芸能人の訃報について。直接的な言葉を使った報道に耳を疑い、ひどくショックを受けた。WHOの自殺報道ガイドラインを認識しているのか。厚労省が注意喚起したのは明らかに特定の番組に向けてだ。翌日に反省の言葉もなく、続報を流す姿勢にも大きな疑問が残る。子ども達も多く見ている時間、視聴者への影響をよく考えるべきだ。

第246回 放送と青少年に関する委員会

第246回-2022年5月

視聴者からの意見について…など

2022年5月24日、第246回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、8人の委員全員が出席しました。
4月後半から5月前半に寄せられた視聴者意見には、美容整形手術をテーマにしたバラエティー番組に元AV女優が出演したことに対し、「ゴールデンタイムの出演はいかがなものか」「家族で見ていられない」などの意見が寄せられました。また、恐怖体験を語るトーク番組で、お笑い芸人がエレベーターに乗った時に先に待っていた女性が一緒に乗って来ず、自分を警戒していたことが不服でもう一度戻って反応を見ようとしたら、既に姿がなく恐怖でゾっとしたというオチの話をしたという内容に対し、「性被害を自衛する女性を批難する言動」「人権意識が希薄だ」という意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見について議論しました。
5月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。モニターからは知床の観光船沈没事故の報道で、「被害者家族への取材に気配りが感じられた」という受け止めの一方、「運航会社を批判的にとらえるインタビューばかりだった」「亡くなった人の手紙を公開する必要はないのではないか」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらのモニターからの意見について議論しました。
最後に次期調査研究のテーマ選定や、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会、および地方局との意見交換会など、今後の予定について話し合いました。
次回は、6月28日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年5月24日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
自殺報道のガイドラインについて
調査研究について
地方局との意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

4月後半から5月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
美容整形手術をテーマにしたバラエティー番組に元AV女優が出演したことに対し、「ゴールデンタイムの出演はいかがなものか」「家族で見ていられない」などの意見が寄せられました。委員からは「以前から同様の批判的意見が寄せられることがあるが、出演自体が青少年に与える影響はあまり感じられない」「番組の内容自体に特に問題はないと思われる」といった意見が出されました。
恐怖体験を語るトーク番組で、お笑い芸人がエレベーターに乗った時に先に待っていた女性が一緒に乗って来ず、自分を警戒していたことが不服でもう一度戻って反応を見ようとしたら、既に姿がなく恐怖でゾっとしたというオチの話をしたという内容に対し、「性被害を自衛する女性を批難する言動」「人権意識が希薄だ」という意見が寄せられました。委員からは「心霊体験もどきの話を意図したもので、話を盛り上げるための状況説明の範囲だろう」という意見が出されました。
何百年も続く旧家に嫁ぐ庶民の女性の苦闘を描くドラマで、子どもが溺れていても一族の人間が誰も助けず傍観する薄情な様子や、主人公をサウナに閉じ込める危険な行為の描写に対して、「人命を粗末にしている」「いじめを助長する」などの意見が寄せられました。委員からは「フィクションとしての設定であり、特に問題はないと思われる」との意見が出されました。
特撮ヒーロー番組で、敵に操られて悪に染まった人間を主人公が見殺しにし「悪い奴は死んで当然だ」という発言をしたことに対し、「あまりに残酷」「改心させて欲しかった」などの意見が寄せられました。委員からは「勧善懲悪ストーリーの範囲内で、そこまでの影響はないだろう」との意見が出されました。
高級料理を皆で食べその料金を予測し一番外れた者が全額を負担するという番組で、一人の出演者が連勝し続けている状況下で他の出演者が「負けろ」「空気を読め」などの嫌がらせをしたことに対し、「ズルではなく実力で勝ち続ける人を貶めるようなやり方は、いじめにしか見えない」「学校や会社でのいじめに繋がる」との意見が寄せられました。委員からは「弱い者への集団的行為と捉えられるものではない」「強い者に対するやっかみレベルの演出と思われる」との意見が出されました。
童謡の歌詞を替え歌にしてお笑芸人に仕掛けるドッキリ企画に対し、「子どもが真似をする」「冷蔵庫に人が入るのは危険」などの意見が寄せられました。委員からは「同様の番組について前回も議論しており、このような視聴者意見が来ていることを確認してほしい」「今回は一人に連続して全部を仕掛ける内容にはなっておらず、全体として討論に進むという程度には至っていないと思われる」との意見が出されました。
今回の委員会の議論から、「討論」に進んだものはありませんでした。

中高生モニターについて

5月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。朝や夕方の情報番組を取り上げたモニターが多く、いくつかの番組を比較した報告もありました。
一番感想が多かった知床の観光船沈没事故の報道では「被害者家族への取材に気配りが感じられた」という受け止めの一方、「運航会社を批判的にとらえるインタビューばかりだった」「亡くなった人の手紙を公開する必要はないのではないか」などの声がありました。
山梨県の不明女児や芸能人の自殺に関する報道については「もっと家族などに配慮すべきではないか」という感想が複数寄せられました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢の報道や生放送中の地震対応などについて要望・感想がありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、バラエティー番組の『LIFE!春~君の声に捧げるコント~』(NHK)に8人から感想が寄せられ、とくに「大人たちに言いたいこと」をお題にした”子ども川柳”に「共感できた」という声が挙がっていました。そのほか『香川照之の昆虫すごいぜ』(NHK Eテレ)、『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)にそれぞれ3人から、『半分だけで考えてみた!』(NHK BS)に2人から感想がありました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 観光船の沈没事故をはじめ不明女児や芸能人の死去に関する報道で、家族にお気持ちを聞くシーンが多かったように思う。観光船事故の報道で、被害者の手紙を公開したことに疑問の声があったが、事故と関係ないようなプライベートな話を報じる傾向はあるので、何が必要で何が必要でない情報か、私たちが得るべき情報は何かということを一緒に考えたい。

    • 観光船事故の報道で「運航会社が悪者のようなインタビューばかりだった」という声があった。ただ、こうした事故があったときどういう会社かを知るためには周りにインタビューをするし、それを放送すると結果的に悪者のようになってしまうことがある。それを抑えようとすると公式な発表があるまで報じられなくなってしまい、その辺の兼ね合いについても考えてもらえればと思う。

    • SDGsの話に関心を持っている中学生モニターがかなりいたことは喜ばしい。報道や学校教育などの効果だと思う。

    • ローカル番組を取り上げてローカル性の良さに触れている報告が複数あった。ローカル放送局の大切さも意識して見てくれているのはよいことだと感じた。

  • 【自由記述について】

    • 報道番組のキャスターについて「コメントが的確で、スポーツニュースのときに楽しそうでいい」などと評価する声があった。キャスターに対しても、そうした人間性が見えたようなときに親しみを感じたりするのだろう。

    • 「昔よりバラエティー番組の幅が狭くなった」という記述があった。少し深読みかもしれないが、もっと自由にやっていいのではないかというような感想と受け止めた。

    • バラエティー番組のパターンが似てきていて幅が狭くなった、という印象を持っているのかもしれない。

    • 中高生がテレビのバラエティーに求めるのは、今のお笑いの第7世代と呼ばれる若手に象徴されるように、コンビ仲がいいとか優しい笑いのようなものではないか。若手芸人の皆さんや若い制作者の方々は、そのあたりの感触もよく分かっているのではないかと思う。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『LIFE! 春~君の声に捧げるコント~』(NHK)に多くの感想が届けられた。NHKの「君の声が聴きたい」キャンペーンの一環だったが、とかく重いテーマになりがちなところをうまくコントにつなげ、子どもたちの今のリアリティを吸い上げたのではないか。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 『news every.』(日本テレビ)、『ゴゴスマ』(CBCテレビ)知床観光船沈没のニュースに関しては、報道陣の方々の多くは、被害者家族の方々にマイクを向けることに十分気を配っていらっしゃるように感じます。一方で、山梨県道志村の不明女児の報道に関しては、少し違和感を覚えています。行方不明の女の子の母親に対して、捜査が進展するたびに報道陣の方々からのマイクやカメラが向き、連日母親のコメントが報道されている印象です。いちばん辛い状況におかれているはずのご家族に対しては、極力配慮をするべきだと思います。(高校2年・女子・東京)

    • 『ZIP!』(日本テレビ)、『情報7DAYSニュースキャスター』(TBSテレビ)亡くなった被害者の方のプロポーズの内容が書かれた手紙の公開はしなくてよいと強く思いました。相手の方のためだけに書かれたものを亡くなったからといって公開することはプライバシーの侵害です。「もし、自分が」と思うと「あなたたちに伝えたかったことじゃない!」と思ってしまうなと思いました。「他の番組では放送しないことを放送して見てもらおう!」ではなく、「どの報道番組よりも相手に寄り添う番組にしよう!」という心がけで番組が制作されたら「見てみたいな」となると思います。(高校2年・女子・千葉)

    • 『Live News イット!』(フジテレビ)北海道の観光船が事故を起こしたというニュースの取り上げ方が気になりました。当初、事故を起こした会社を批判的にとらえる、会社を悪者にするようなインタビューばかり放送されていて「もし、これが別の原因で起こってしまった事故だったら番組はどうやって責任をとるつもりだろうか」と疑問を持つとともに怖くなりました。「取材部ネタプレ」のコーナーはとても面白いなと感じています。普段、現場で取材をしている記者たちがイチオシのネタをプレゼンしていて、記者だからこその詳しい情報が分かるし、毎回惹かれる見出しと内容なのでどの記事もとても気になります。選ばれなかった記事も見てみたいなと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『めざまし8』(フジテレビ)上島竜兵さんが亡くなられた時のニュースを見ました。ネットでも問題視されていましたが、死因を報道する、本人の自宅前からの中継、近隣の方へのインタビューなど、やり過ぎた報道が行われていたように思います。今回の報道の仕方は、上島さんへの配慮と同時に、視聴者への配慮も足りなかったのではないかと思います。(高校2年・女子・広島)

    • 『news23』(TBSテレビ)今回の放送は、局のSDGsウィーク中であったこともあり、その話題を冒頭にもってきていたのは印象づけられて良いと思いました。SDGsのように長期的な取り組みを継続して報道する姿勢は素敵だなと思います。番組中盤の「調査報道23時」では、映画界の性暴力被害について、被害者のそのままの声を時間をかけて伝えたり、具体的な被害の内容や現場の取り組みについても伝えたりしていて内容が深く入ってきました。(高校1年・男子・兵庫)

    • 『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ)平日朝に放送している『ZIP!』は朝の情報番組ということもあり、短い時間でたくさんのことを伝えているのですが、バンキシャ!は日曜日にゆっくり深掘りできる内容なので落ち着いてみることができる。時間帯や曜日ごとに取り上げ方が違うことに、制作をしている方々の工夫を感じた。(中学3年・女子・千葉)

  • 【自由記述】

    • 知床遊覧船の沈没事故についてのニュースの中で、事故当日に交際相手の女性にプロポーズをする予定だった男性が書いた手紙が公開されていて驚きました。この事故を実感を持って伝えるには有効な報道の仕方でしょうし、遺族に公開の許可をとっていれば問題ないというメディアの考え方もわかります。ただ問題は、ニュースの受取り手が「亡くなられた男性に対するプライバシーの侵害だ」「メディアには道徳が欠けているのではないか」などと感じていること自体です。そうなってしまうとメディアが伝えたかったニュースの核の部分が入らなくなってしまいます。”多くの人に見られる番組”だけにとらわれないようにお願いします。(高校1年・男子・兵庫)

    • 芸能人の方が亡くなるニュースが次々と入ってきました。詳しいことはよく分からないのですが、この報道をするたび同時に「こころの相談窓口」の電話番号なども画面に映されますが、なんとなくその部分の説明が形式的な「社会的な義務だからやってます」という雰囲気がして気になっています。(高校1年・男子・滋賀)

    • ロシアとウクライナの情勢について、在日のロシア人が日本人に誹謗中傷を受けていることに違和感をもっています。これは、マスコミの報道の仕方に問題があると思います。そこで報道するとき「ロシア」と使わずに「ロシア軍」や「プーチン大統領」など、ロシア国民には侵攻に関与したり支持したりしていない人が多いことをしっかり示してほしいです。(高校2年・男子・福岡)

    • 通販番組は一社だけの収入になってしまいます。この状態が激しくなってしまうと、お金のある企業だけがどんどんメディアを侵食し、その企業の作りたい未来しか作れません。テレビ・ラジオという選択の余地が限られているものの中で、そのようなことをやっても大丈夫なのか?と家族と話しました。地方になればなるほど選択ができなくなって真実がぼやけてしまいます。通販番組のあり方についてもう一度考えてほしいです。(中学2年・男子・山形)

    • 最近、日本では地震がとても多くなり、生放送の番組を見ていて、そのアナウンサーの対応がとてもすごいなと思います。どの番組のどのアナウンサーも瞬時に言葉を選び、その言葉は私たちの不安を和らげてくれるような気がします。地震が起こるとすぐに生放送をやっている番組に切り替えます。生放送、アナウンサー、とてもすごいし大切だと思います。(中学2年・女子・東京)

    • 昔と比べてバラエティー番組の幅が狭くなったと感じます。興味を持ったお笑い番組の多くも深夜にやっていて少し残念です。SNS時代である今だからこそ、少し奇抜、クセのある番組を放送しても良いのではないでしょうか。(中学2年・女子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『LIFE!春~君の声に捧げるコント~』(NHK)川柳のコーナーでは、同じ世代の人たちの声だったので、とても共感しました。家族に対する思春期特有の悩みがある人は、一緒にこの番組を見たら「ここをもう少しこうしてほしい」などと、素直に話せるようになるのではないでしょうか。(中学2年・女子・山形)

    • 『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)SDGsやガーナのゴミ問題など、世界や地球環境について考えることができた。ゴミを使ったアート作品は、売ったお金を現地で活用していて、あまり世界で活躍する日本人をみる機会がなかったので知ることができてよかった。(中学2年・女子・山形)

自殺報道のガイドラインについて

中高生モニターからの意見等を受けて、自殺報道についての議論となりました。
人気お笑い芸人の訃報を伝える情報番組で、自殺の手段を伝え自宅前からの中継に街頭インタビューを交えて動機を推測するなど、直接的な表現を使った報道に対して、「WHOの自殺報道ガイドラインを認識しているのか」「厚労省が注意喚起したのは明らかに特定番組だ」との意見がありました。
2020年にも芸能人の自殺報道が問題になり厚労省の注意喚起が出され、民放連でもWHOの自殺報道ガイドラインと共に自主・自律的に対処する呼び掛けがあったことが事務局より報告されました。
委員からは、「行政の介入には反対だが、直接的な表現を使った報道には問題があると思う」「自殺報道に限らず、行政機関から注意喚起があったという事態を踏まえ、報道の自由を守るという視点から考えていただきたい」「相談窓口の紹介さえすればアリバイ的に大丈夫というマニュアル化に陥っているのでは」「知床の観光船事故のプロポーズ全文もそうだが、エモーショナル過ぎないか」などの意見も出されました。

調査研究について

次期調査研究担当委員から、青少年がバラエティー番組から得られる満足をテーマとする研究の提案があり、年次変化を見る調査方法などについてのプレゼンが行われ、それについて意見交換しました。
次回以降に継続して議論を行い、調査研究のロードマップを検討することになりました。

地方局との意見交換会について

新型コロナウイルス禍により開催が延期されていた青少年委員会と地方局との意見交換会を、感染状況を考慮し感染防止に配慮しつつ、年度内に再開する方向で準備を進めることになりました。

今後の予定について

本年4月15日に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解をテーマにした在京・在阪各局の番組制作担当者を招いての意見交換会を開催する予定です。

以上

委員長談話

毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』について

2022年6月2日
放送倫理検証委員会
委員長 小町谷 育子

 BPO放送倫理検証委員会は、毎日放送が2022年元日に放送した2時間のトークバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』(以下「本番組」という)に、政治的公平性を問題視する意見が視聴者から多数BPOに寄せられたことから、本番組について4回にわたり議論をしてきた。
 本番組では、司会のお笑いタレント2人が、3組のゲストとの間で順繰りにトークを行うという構成が取られていた。冒頭のゲスト1組が、松井一郎大阪市長、吉村洋文大阪府知事、弁護士でコメンテーターの橋下徹氏の3人だった。松井氏には日本維新の会代表、吉村氏には同副代表との肩書が付され、そこに日本維新の会前代表である橋下氏が加わることにより、同一政党の関係者が一堂に会した形となった。松井氏と橋下氏が吉村氏を挟んで並び、ボケとツッコミのような巧みな話術により笑いを取りながら、先の衆議院選における維新の躍進、文通費(文書通信交通滞在費)問題、将来の総理候補などの国政に関する政治問題や、大阪における新型コロナ対策、大阪万博、大阪都構想などの関西エリアの問題に関するトークが繰り広げられた。構成上、3人のトークは冒頭だけではなく最終パートでも流されており、3人がメインのゲストとして遇されている。
 委員会は、本番組を収録したDVDを視聴するとともに、毎日放送がまとめた報告書および番組審議会の議事要旨などを参考にしながら、本番組が制作された経緯や放送後の対応を検討した。委員会の席上、委員から次々と意見が述べられた。

  • 報告書は、視聴率の追求を前面に打ち出すことで、今回の問題を政治的公平性の案件とはとらえていない、政治性はないということを述べているようだが、果たしてそのように評価してよいか。
  • 政治的な問題を取り扱った番組としては量的公平性を著しく損なっている事案といえるが、それを質的公平性により補正し政治的公平性を保っているといえるか。番組側が日本維新の会の政治的主張に対する批判や反論を投げかけたりしていない以上、質的公平性も損なわれている可能性がある。
  • 収録番組で編成等の目を通っているはずで、バランスを取る編集も十分可能であったのに、そのまま放送に至ったのは、毎日放送のガバナンスに問題があるのではないか。
  • 報道、教養、教育、娯楽など各ジャンルの調和を保つことを求める番組調和原則があるが、多くの番組が特定のジャンルに分類することが難しくなっている現状を踏まえると、バラエティー番組だから政治的公平性は緩くても大丈夫という言い訳はもはや通用しない。
  • 番組を収録した以上、放送しなければならないという考えがあったとすれば、放送倫理違反など問題がある番組にストップをかけられなくなりかねず深刻な事態だ。
  • 政党政治家と公権力担当者の区別を曖昧にすることにより、行政の施策を府知事・市長が説明する形を取って、政党の言いたいことを言わせてしまっている。局は視聴者の知る権利に応えるために番組を制作すべきであり、誰の声を聴いて番組を制作しているのかわからない。
  • 政策トークの中に特定の政党名がふんだんに盛り込まれている。にもかかわらず、番組進行はただ面白く盛り上げているだけで、そのまま放送するようなことが許されていいのだろうか。
  • 局の他番組を精査した場合、果たして放送局全体で政治的公平性が保たれているのだろうか。放送、編成の実態も含めた判断が必要だ。

 委員のこれらの意見は、個別に述べられたものであるが、委員会の総意として共有のできるものであった。
 討議の結果、委員会は、全員一致の結論として、次の2つの理由から紙一重のところで本番組について審議入りを見送ることとした。
 第一に、テレビ放送における政治的公平性で問われるのは量的公平性ではなく質的公平性である(選挙報道・評論について述べたものとして「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」委員会決定第25号)。量的公平性を厳密に追求すると質的公平性がかえって損なわれる可能性があるとともに、放送ジャーナリズムの意義が形式化するおそれがある。質的公平性に十全に配意して番組制作がなされれば、たとえ量的公平性を損なっている部分があるとしても、政治的公平性を保つことができるはずである。しかし、本番組の制作過程で、質的公平性の確保に向けて、番組の構成を綿密に検討したり、トークの内容に創意工夫を尽くしたりした形跡はうかがわれない。非常に問題のある番組といえるのだが、委員会が審議し意見書を公表すれば、放送局が政治問題を伝えるにあたって質的公平性を追求する際の足かせになるおそれがあることを懸念した。
 第二は、放送後の対応である。本番組放送直後に開かれた番組審議会は、バラエティー番組の方が影響力は大きいこと、出演者が政治的な影響力を持っていることに制作者が鈍感であることなどを厳しく指摘し、維新の政策の取り上げ方、スタジオトークを出演者任せにした手法、毎日放送の番組全体で政治的公平性が取れていると局が考えたことなどに疑問を呈していた。委員会とは役割が異なるものの、番組審議会の意見は委員会も賛同ができるところである。そして、専務取締役をリーダーとして立ち上げられた調査チームが速やかに自主的な調査を行い、再発防止のための活動も始まっている。したがって、局の自律的な自浄作用が理想的な形で働いたと一定の評価ができる。
 以上が委員会が審議入りをしない判断に落ち着いた理由である。しかし一方で、審議入りしないという結論だけが独り歩きし、本番組に垣間見えた問題点が放送界に共有されないことを委員会は危惧する。そこで、各放送局の番組制作において参考にしてもらうために、以下の2点を指摘することとした。

①視聴率重視から生じる懸念
 まず、委員会が着目したのは、視聴率重視によるキャスティングが相次ぐことにより政治的公平性を損なうおそれがある点である。
 本番組で3人がキャスティングされた理由の一つは、松井氏、吉村氏が過去に出演したコーナーの視聴率が高かったことから、高視聴率が取れるのではないかと期待したからだという。新型コロナの感染拡大で、大阪府知事と大阪市長はコロナ対策の陣頭指揮を執るリーダーとしてテレビに出演する機会が格段に増えた。大阪の視聴者にとって、2人は名前も顔も良く知られた話題性のある政治家ということになる。彼らが話術に長けたタレント性を併せ持っていることもあって、視聴率を追求するならば、大阪の放送局では、日々のニュース以外でも日本維新の会の政治家を出演させる割合が高まる可能性がある。そこに党派的に偏った番組制作がなされる危うさがあるのだ。
 有権者に対する影響がより広範囲に及ぶ全国放送ではどうか。政治に関する番組を視聴率重視で制作するならば、テレビで取り上げられる機会が多くなじみのある政治家、すなわち大阪と同様に話題性のある政治家が視聴率の取れる出演者として選ばれることになるのではないか。それでは、特定の政党の政治家のみが取り上げられるおそれを払拭できない。 
 こうした視聴率重視のキャスティングが各番組でなされた場合、全体として政治的公平性を保つことは難しくなるといえる。
 番組ジャンル間の境界が曖昧になる中、バラエティー番組では、こと政治問題を取り上げるに限っては、視聴率重視によるキャスティングが適切であるかどうかは、今一度見直す必要がある。加えて、情報と娯楽が混在しているニュース番組や情報番組において、視聴率を偏重すれば本番組と同様のことが起きかねないことにも留意してほしい。
 さらに、視聴率にとらわれると、コメンテーター等の出演者の意見が過激になり、面白さを求めるあまり情報が偏り、結果として誤った印象を視聴者に与えることがありうるのではないか。政治に関する番組でそうしたことが起きた場合の悪影響はいうまでもないだろう。本番組はその最たる例になっているのではないかと、委員会は憂慮する。

②異なる視点の不提示と質的公平性
 次に、委員会が指摘したいのは、本番組が行政を担っている政党の政策について何ら異なる視点を提示しておらず、質的公平性を欠いているのではないかという点である。
 たとえば、新型コロナ対策については、行政における数々の実績が紹介される一方、その影で昨年5月以降、人口あたりの新型コロナ死者数が全国で一番高い水準で推移していたことなど、対策の評価にとって不都合な事実は紹介されていない。その他の事項についても日本維新の会の政策に対して、異なる観点から質問をしたり、反論、異論が出されたりすることはなく、同党の政策が一方的に肯定的に流される結果になったきらいがある。これでは、質的公平性をできる限り確保するために、局が自主性を発揮してさまざまな創意工夫をこらしたと見ることは困難だろう。
 もっとも、こうした事態は、バラエティー番組の本番組に限ったことではないかもしれない。政治家の記者会見や取材において、相手の嫌がる問題を取り上げたり、困らせる質問をしたりすれば、政治家を不愉快にさせ、怒らせ、ひいては将来の取材に支障をきたすのではないかと自粛、抑制、萎縮してしまっていないだろうか。それでは、メディアは、政治家の主張を紹介するだけの導管になってしまいかねない。
 政策を多角的に検討して、そのプラスとマイナスを十分に掘り下げることによって、視聴者はより広くより深く政策を理解することができ、その是非の判断もなし得るのである。質的公平性を担保するためには、異なる視点の提示が欠かせないことを忘れてほしくない。
 大切なのは、視聴者の側に立って、放送に至るまで、放送局が政治的公平性について真剣に議論をした上で番組を制作したのかということである。その鋭意な努力を欠いた放送番組によって一番不利益を受けるのは、偏った情報を受け取ることになる視聴者である。

 政治をめぐる放送において視聴率偏重の人選がなされていないか、異なる視点の提示がないなど質的公平性が担保されていない番組が制作されていないか。今回の問題をきっかけに各放送局において改めて確認をしてもらいたい。

 今夏には参議院議員選挙が予定されており、積極的な政治報道が望まれるところである。民主主義社会においては、政治に関する情報は党派に偏ることなく主権者に対し潤沢に伝えられるべきであり、委員会は、各放送局が、政治的公平性に配慮しながら、有権者のために政治に関する情報を分かりやすく多角的に伝える放送を行うことを期待している。

以上

委員長談話全文(PDF)pdf