放送人権委員会、新委員長に弁護士の三宅弘委員

第78回 – 2007年4月

フジテレビ『はねるのトびら』に関する審議
中学生モニターについて …など

議事の詳細

日時
場所
議題
出席者

フジテレビ『はねるのトびら』に関する審議

フジテレビ『はねるのトびら』での、顔にシリコンゴムを巻くシーンをビデオ視聴のうえ審議、委員からは次の意見が出された。

  • 見ていてグロテスクとしか言いようがなく、どうしてああいったことを思いつくのかわからない。
  • すべてのバラエティー番組が子どもに悪影響を与えると言うのは短絡的だと思うし、この番組も子どもが真似をするほどインパクトがあるとは思えない。しかし、このゴム巻きを見たかぎり、判断力がない子どもにとっては危険な行為だと感じた。放送局や制作者はどう判断しているのか知りたい。
  • この番組は視聴率も高く、人気もあるようだが、若い人たちが本当に面白がって見ているのかどうか。バラエティー番組はいつくかのコーナーで構成されていて、ほかのコーナーが面白いから見ているかもしれない。
  • 最近のバラエティー番組では、危険と思われるようなことをお笑い芸人たちにやらせているが、その中でも子どもに与える影響を考えると、このゴム巻きは簡単に真似をすることができ危険だと思う。
  • シリコンゴムはそんなに危険ではないかもしれないが、それがない時は手近なビニール紐などを使う可能性もあって、その場合、首に巻きつけたら危険度は高くなる。

以上の審議の結果、委員会として当該局に対し、子どもが簡単に真似をする危険性への配慮、危険予告のテロップが入ってなかったがなぜか、などについて回答を求めることとした。

次に、視聴者意見の審議では、いくつかのバラエティー番組で、男性芸人が裸に近い格好で出てくることに対し、「わいせつ行為ではないか」といった視聴者意見が寄せられ、委員からは「路上で裸の男性が女性に抱きつく様子をテレビで放送するのは、法律的にどうなのか」「公の場所では犯罪となる行為がテレビだと許されると思っていること自体が問題だ」といった発言があった。

また、前回委員会から議論している青少年委員会のあり方について、引き続き意見交換を行った。

各委員の意見は、次のとおり。

  • 今のテレビは視聴率戦争という厳しい状況の中で数字を取るために番組を作っているので、現場の意識や制作会社との関係、制作費など、現在の放送局の仕組みを整理して考えていかなくてはいけない。その中で、委員会としてどう対応していくかが問題ではないか。
  • 最近ではBPOのHPでの視聴者意見に対する反論が増えていて、委員会での視聴者意見の取り上げ方も注目されている。視聴者がテレビに対して何か言いたいということを委員会として真摯に受け止めるべきだ。テレビは視聴者のものと考え、委員会としては視聴者と制作者の回路となり、双方向で話し合える場を提供することも役目ではないか。
  • 子どもたちの中には、テレビで放送されることすべてが本当だと思っている子どももいる。制作者たちは、テレビには免罪符があって、テレビの枠の中ではなんでも許される、という潜在意識を持っているのではないか。委員会としては、そのことに警鐘を鳴らしたい。
  • 今までもバラエティー番組については、いじめにつながるなど子どもへの影響を考え、放送局に対し配慮を望んできたが、やはり視聴率が優先されるようだ。スポンサーにとっては視聴率のいい番組にお金を出すのは当たり前だが、委員会として、質の高い番組を提供することがテレビ文化を向上させ、企業の社会的な信用につながる、とスポンサーに働きかけていくことも必要ではないか。
  • 問題があると指摘された番組は、提供しているスポンサーにも責任があることを認識してもらうため、情報としてスポンサーに知らせることを検討してはどうか。またBPOのHPなどで公表すれば、企業としても提供する番組を選別していくのではないか。
  • 供スポンサーに知らせることですぐに効果があるとは思えないが、その番組を提供しているスポンサー全社に責任の一端があることを認識してもらうことが大切だ。

以上の意見交換の結果、委員会審議で回答を求める番組については、当該局に対してだけでなく、番組を提供しているスポンサーにも知らせることについて、今後も継続して検討することとした。

中学生モニターについて

中学生モニター制度2年目の今年は、全国から公募し、31人採用した。今月は、そのうち29人から41件(1人で複数件の報告有)のレポートが寄せられた。対象はすべて全国放送の番組で、バラエティー番組についてが一番多く17件、ドラマが12件、アニメ番組5件、情報・討論番組3件、ニュース・映画・音楽番組・スポーツ番組が各1件だった。系列別ではフジテレビ系が16件、日本テレビ系11件、テレビ東京系5件、テレビ朝日系4件、NHKとTBS系が2件ずつだった。

  • バラエティー番組では、2件意見が寄せられたのは『めちゃ×2イケてるSP』と『志村けんのバカ殿様』。両番組とも賛否両論があり「ドッキリという事を忘れてしまうぐらい感動しました」、「いつも、大笑いして、みんなが明るくなり、楽しいです。小さな子にも、分かりやすい内容です」という好評意見と、「ドッキリですが、騙されていても笑っていられるような方が見て楽しい」、「たまにですが、少し”エロッポイ”ところが…。ほどよい”エロさ”で、ほどよい”おもしろさ”でよいと思います」という批判意見があった。
    他の番組は概ね好評だったが、『はねるのトびらSP』には「罰として、いすをグルグル回す事自体いい事ではないのに、ましてや人によってえこひいきまでしていて、とてもがっかりしました」、『タモリのジャポニカロゴス ナヌッ!日本語のゆかいなマチガイSP』には「外国人を侮辱しているように見えるコーナーがあるので、これからはやめてほしいと思いました」などの批判があった。またバラエティー番組全般について「若手お笑い芸人が出演する番組で、一部の芸人さんをいじめる番組がとても多いことが気になります」という意見も寄せられた。
  • ドラマでは、2件ずつ報告があった『喰いタン2』と『東京タワー オカンとボクと時々オトン』は好評で、「『喰いタン』の時よりも、もっともっと面白いストーリーでした」、「親子愛や母の寛大さを感じさせるものがあって、見ていて心が熱くなるものがありました」などという意見だった。
    ほかに『1リットルの涙 特別編~追憶~』には「主人公の亜也がどれだけ必死で病気になってからの10年間を生きたのか分かった」、『花嫁のパパ』にも「親子のスキンシップの大切さだったり、大切なことを言っていて見たあとスッキリして気持ちが良い」など、共感する意見が寄せられた。
    また『風林火山』には「ちょっと暗いトーンなので、甲州弁とコミカルさもほしい。政略結婚させられた女性の心の動きもしっかり描いてほしい」という要望があった。
  • アニメ番組では『Yes!プリキュア5』『ケロロ軍曹』『おとぎ銃士赤ずきん』『アイシールド21』は好評。『名探偵コナン』には「一日で物語を終わらすか、前編を見てない人にもわかるように、後編のときに、これまでの流れを紹介してほしい」という意見が寄せられた。
  • その他、情報・討論番組『今、日本がおかしい!!?教育再生?直談判スペシャル』には「イジメを受け止めない教師、子供を叱れない教師など。その様な教師は約2割。失望しました」という意見も寄せられた。

24日(火)に開かれた青少年委員会では、本田委員長から「全体として以前より幅広い意見が寄せられ今の中学生の考えが良く伝わる」という感想が述べられた。委員の発言は以下のとおり。

  • 『”教育再生”直談判スペシャル』への意見は鋭く、子どもが先生をあまり信頼していない現状が見えてくる。
  • 『志村けんのバカ殿様』に対する”ほどよいエロさでよい…”という意見は中学生の本音が出ている、制作者も考えるべきだ。
  • “『ビートたけしのTVタックル』の討論が私達より下手だ”という意見があったが、良し悪しは別にしてあれは番組の演出だということは知っておいてほしい。

調査・研究活動について

橋元委員から「小中学生はテレビをどう見ているか?―36人インタビュー調査」について、次のとおり調査企画チーム(第13、14回会合)の報告があった。

  • 今回の調査は、質的調査に重点をおくため、対象者36人ひとりひとりの面接に時間をかけた深層インタビューを行った。
  • インタビュー調査と併用してテレビについての事前アンケートと1週間の日記式生活行動調査も行った。
  • 生活行動調査では、1日の行動を15分ごとに記録してもらい、テレビ視聴に関しては、テレビ番組表をもとにどの番組をどのように見ていたかを記入するといった調査も行った。
  • 事前アンケートや生活行動調査からだけでも、子どものテレビ視聴時間には読書時間や母親との関係が大きく影響していることがわかった。
  • 報告書のメインとなるところはインタビュー調査なので、これから8月を目途にまとめていく。9月中旬ごろには、調査報告の発表を含めた

第186回 放送と人権等権利に関する委員会

第186回 – 2012年8月

ストローアート事案和解解決
イレッサ報道事案の審理
審理要請案件:「国家試験の元試験委員からの申立て」事案~審理入り決定…など

「ストローアート作家からの申立て」事案は、委員会の仲介斡旋で和解合意に至り、解決したことが委員長から報告された。先月審理入りした「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案、「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の実質審理が、それぞれ始まった。審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2012年8月21日(火) 午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「ストローアート作家からの申立て」事案、和解合意により解決を報告

本事案については、先月の委員会におけるヒアリング後、委員会が申立人と被申立人であるフジテレビに対し、和解合意に向けての仲介斡旋作業を進めてきた。その結果、最終的に双方の間で合意に至り、8月21日午後、委員会開催に先立って和解合意書が取り交わされ、解決した。
委員会では、三宅委員長が作業経緯を報告するとともに、今回の和解について委員会の考えを示した「委員会コメント」を付し、ホームページ等において公表することを決めた(詳しくは仲介・斡旋解決事案の項をご参照ください)。

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

前回委員会で審理入りが決定した後、被申立人から「答弁書」の提出を受け、実質的な審理に入った。
本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたって放送した企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性が「放送はイレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性、正確性、公正さに欠け、放送倫理に抵触している。こうした放送や、申立人の主義主張とは反する発言の使われ方、取材休憩中の撮影とその映像の放送などによって名誉とプライバシーを侵害された」として、謝罪と放送内容の訂正を求め申し立てたもの。
これに対しフジテレビは、答弁書において「本番組は肺がん治療に関し、様々な立場から多様な意見があることを新薬イレッサを例に報道したもので、客観性、正確性、公正さに欠けるところはなく、放送倫理に抵触する部分はない。申立人に対する名誉、プライバシーの侵害もない。従って、謝罪や放送内容の訂正は受け入れられない」と主張し、全面的に反論している。
この日の委員会ではまず、本件放送が客観性・正確性・公正さに欠けているとする申立人主張の根拠のひとつにもなっているイレッサ訴訟東京地裁判決の判決内容について、起草担当の委員がレジュメをもとに説明した。続いて事務局が双方の主張を整理した後、各委員が意見を述べた。次回審理に向け、申立人の「反論書」と、被申立人の「再答弁書」において、より詳しく説明を求めたいこと等についても話し合った。
次回は「反論書」と「再答弁書」の提出を受け、さらに審理を重ねることにしている。

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の審理

上記事案の実質審理が始まった。
審理しているのは、テレビ神奈川が本年4月11日夜放送した『tvkNEWS930』で、番組では、神奈川県警が無許可営業のスナックを風営法違反容疑で摘発する現場を取材し、1分強のニュースとして放送した。この報道に対し、スナックの女性経営者と家族から「略式命令の軽微な罰金刑にもかかわらず、映像では顔のアップ、実名と年齢、店と自宅の住所まで放送したのはプライバシーをあまりにも公開し過ぎ」など人権侵害を訴える申立書が提出された。申立人は、放送から1カ月以上もの間、ネット上でこのニュースの動画が再生できる環境にあったとし、この点でもプライバシーや名誉毀損になると主張している。
これに対しテレビ神奈川は答弁書で、「通常の実名報道原則に基づき放送した」としたうえ、「報道される側の基本的人権についても十分慎重に検討した。無届け営業を現場で否定しなかったため、当人の顔のボカシは入れずに放送した」と主張している。
この日の委員会では、報道内容にプライバシーの侵害等の人権侵害はあったか、カメラ取材は適切に行われたか、報道の仕方・取り上げ方に行き過ぎはなかったか、インターネット展開における放送局の管理体制は十分だったか、等をめぐって意見を交わした。
次回、9月の委員会では申立人とテレビ神奈川の双方にヒアリングを行い、そのうえでさらに議論を深めることになった。

審理要請案件:「国家試験の元試験委員からの申立て」事案~審理入り決定

国家試験の元試験委員からの申立てについて審理入りが決定した。
対象となった番組はTBSテレビの『報道特集』。本年2月25日に「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」と題した特集を放送、大学教授で社会福祉士試験委員会副委員長を務めていた申立人が、その著書で社会福祉士資格試験の過去問題を解説し、大学の授業でこれをテキストとして用い、期末試験でも社会福祉士の試験問題と同じ形式で出題していたこと、厚生労働省の調査を受け申立人が試験委員を辞任したこと等を報道した。
申立人はこの報道に対し、申立書において「本件番組は申立人がいかにも国家試験の試験問題を漏洩したかのように報道する等、申立人が試験委員としての職責に背く行為をしたかのように視聴者に印象付け、その名誉と信用を著しく毀損した」としており、TBSに謝罪と放送の訂正等を求めている。
これに対しTBSは、「本放送の主旨は、申立人に国家試験の試験委員としてふさわしくない行為があり、社会福祉士試験の公平性・公正性に疑念を招いたのではないかと問いかけたものである。申立人に問題漏洩等があったとはいささかも言及していない」と局の見解において反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条の規定に照らし、本件申立ては要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会以降、実質審理に入る。

7月の苦情概要

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事案数の増加に伴い、審理を迅速かつ的確に行うため、10月9日(火)に臨時で委員会を開催することになった。
  • 次回委員会は9月18日(火)に開かれることになった。

以上