第210回放送と人権等権利に関する委員会

第210回 – 2014年6月

放送人権委員会判断ガイド2014…など

2014年度に刊行予定の『放送人権委員会判断ガイド2014』について、編集方針等をめぐり各委員が意見を交わした。

議事の詳細

日時
2014年6月17日(火)午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.『放送人権委員会判断ガイド2014』について

2014年度に刊行予定の『放送人権委員会判断ガイド2014』について、事務局が編集作業の進捗状況を報告した。そのうえで、目次、全体の構成、掲載する判例、各項目の内容・表現等について各委員が意見を交換した。

2.その他

・次回委員会は7月15日に開かれる。

以上

第83回 放送倫理検証委員会

第83回–2014年6月

出演者の家族と偽って別人を出演させていたバラエティー番組について討議。審議入りせず。…など

第83回放送倫理検証委員会は6月13日に開催された。
委員会が3月に通知・公表した、日本テレビ『スッキリ!!』「弁護士の"ニセ被害者"紹介」に関する意見に対して、当該局から提出された対応報告書を了承し、公表することにした。
"全聾の作曲家"と多くの番組で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼して自己の作品として発表していたことが発覚した問題について、討議を継続した。委員会が討議の対象とした5局の7番組について、企画から取材・放送に至る経緯を詳細に把握するため、各局にヒアリングへの任意協力を要請したところ、2局2番組について承諾が得られ、ヒアリングが実施された。委員会はヒアリングの結果を踏まえて、次回も討議を継続する。
一般社会にうまく溶け込めない人たちが更生していく様子を紹介する関西テレビのバラエティー番組『千原ジュニアの更生労働省 元ヤン芸能人がダメ人間に喝!』(関西ローカルで2014年3月16日放送)で、出演者の家族と偽って別人を出演させていたことが判明した。討議の結果、委員会は、問題の程度が大きいとは言えず、自主的・自律的な是正措置も適切に行われているとして、審議の対象とはしないことを決めた。

議事の詳細

日時
2014年6月13日(金)午後5時~8時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、是枝委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員(新任)、藤田委員、升味委員、森委員

1.日本テレビ『スッキリ!!』「弁護士の"ニセ被害者"紹介」に関する意見への対応報告書を了承

3月5日に委員会が通知・公表した、日本テレビ『スッキリ!!』「弁護士の"ニセ被害者"紹介」に関する意見(委員会決定第19号)への対応報告書が、5月下旬、当該局から委員会に提出された。
報告書には、問題発覚後に策定された「取材ルールの改定」「チェックシートや出演承諾書の活用」「コンプライアンス研修の充実」などの再発防止策に加え、委員会決定後も「担当ディレクターら当事者が講師になっての研修の実施」や「専門性の高い分野の取材での放送ガイドラインの一部改訂」などに取り組んできたことが具体的に報告されている。
委員会は、この対応報告書を了承し、公表することとした。

2.「全聾の作曲家」と多くの番組で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼して自己の作品として発表していたことが発覚した問題について討議

全聾でありながら『交響曲第1番HIROSHIMA』などを作曲したとして、多くのドキュメンタリー番組等で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼して自己の作品として公表していたことが発覚した問題について、討議を継続した。
まず、各番組の企画から取材・放送に至る経緯を詳細に把握するため、討議の対象として報告書の提出を受けた5局の7番組に対して、ヒアリングへの任意の協力を求めたところ、承諾が得られた2局2番組については既に実施したことが、担当委員から報告された。審議や審理入りをしていない事案について、委員会がヒアリングを実施した前例はなく、委員会の運営規則にも定められていないが、この事案について委員会の意見をまとめるためには不可欠であると判断し、各局にあくまでも任意の協力を要請したものである。残る3局の5番組に対しても順次協力を求める予定である。
また、佐村河内氏の自伝の内容が、7番組のなかでどのように表現されているかについて比較・検討を行った別の委員から、その結果が報告された。
意見交換の中では、取材の過程で佐村河内氏の「実像」に迫ろうという努力がどの程度なされていたのか、一部の取材者が断片的に感じたという「小さな違和感」はなぜ取材に活かされなかったのか、各局は問題発覚後に「騙されてしまった」とお詫びや訂正をしているが、各局がそろって誤った番組を制作して社会に大きな影響を与えたこと、特に、それに善意で協力した人々の心を傷つける結果になったことについて、真摯な反省を踏まえた原因や背景の検証をどこまで真剣に行っているのか、それは今後このような過ちを防ぐだけの内容になっているのかなどについて、さまざまな意見が出された。
そのうえで、「各局から報告書の提出を受け、各局にヒアリングをお願いした委員会こそ、横断的な視点でものが言える状況にある」「佐村河内氏を信じて放送に協力した人々、特に多くの子供たちのためにも、こうした失敗を繰り返さないためにはどうすればいいかを提言すべきだ」などの指摘も相次いだ。
委員会は、次回も討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 佐村河内氏の過去を知る人物にアプローチしようと努力した局も、佐村河内氏本人から強く拒否されて踏み込めないまま終わってしまっている。これまでのヒアリング結果を聞く限り、全体的に、佐村河内氏の主導で取材が進行した印象は否めない。

  • 取材者の中には、小さな違和感や疑問を断片的に感じたことはあったようだが、「障がい者だから」「病気がつらそうだから」「天才だから」などの理由によって、自分で自分を納得させてしまっている。取材スタッフの間でそれが共有され、お互いに議論していたら、どこかで踏みとどまることができたかもしれない。

  • 番組の多くは自伝の記述や、あらかじめ佐村河内氏本人が提示したストーリーに映像を当てはめているだけだ。そこに新しい発見や驚きがないものは、ドキュメンタリーと言えないのではないか。

  • ドキュメンタリーの体裁を採りながら、ドラマが入り込んだり、撮れないものを無理に映像化したりしている。これはドキュメンタリーを撮る者としての倫理観の欠如ではないのだろうか。

  • 取材中に佐村河内氏の嘘に気づくのは無理だったかもしれないが、真相が判明した今なら自分たちがどこでどのように騙されたのか踏み込んだ検証ができるはずだ。各局は、きちんとそれをしたと言えるのか。委員会の議論とは別に、各局が真っ先にやるべきなのは、その検証であり解明だろう。それをやらないままでは、同じ過ちを繰り返してしまうのではないか。

3.出演者の家族と偽って別人を出演させていた関西テレビのバラエティー番組について討議

関西テレビのバラエティー番組『千原ジュニアの更生労働省 元ヤン芸能人がダメ人間に喝!』(関西ローカルで2014年3月16日放送)で、出演者の家族と偽って別人を出演させていたことが判明した。
この番組は、一般社会にうまく溶け込めない人たちが、更生した芸能人のアドバイスを受けながら、番組内の企画に参加する中で更生していく様子を紹介するものである。ダメ人間だった5人の若者がカーリングの練習に取り組むなかで、お互いを認め合いチームワークを育んで、小学生の"実力チーム"にあと一歩まで迫った奮闘ぶりを、ひとつのコーナーとして約40分間放送した。出演者の家族や恋人などが更生前と後の様子を語る場面で、ひとりの若者の家族として登場した人物が実は別人であることが放送後に発覚した。
この番組は、関西テレビから制作委託を受けた制作会社が、さらにフリーのディレクターらに業務委託して制作されていたが、関西テレビの報告によると、番組収録の直前になって、出演者の家族の予定があわなくなり、フリーのディレクターの判断で、知人に代役を依頼して出演させたという。放送後、口止めされていた制作会社のスタッフからの連絡で事態が発覚し、このディレクターは関西テレビの社内調査に対して、やってはいけないことの区別がマヒしていたなどと答えたという。
関西テレビは、5月4日に視聴者へのお詫び放送を行い、さらに5月18日の自社検証番組『カンテレ通信』でも、問題点を整理して詳しく伝えた。
委員会は、別人を家族と紹介するのは真実性を損なううえ、制作段階でチェック機能が働かなかった点などは問題であるが、芸能人も出演するバラエティー番組であり、真実の過程の忠実な記録であることを強調する性格のものではないうえ、わずかの比重しか持たない一家族の出演場面での問題であり、視聴者の信頼を揺るがすほど問題の程度が大きいとは言えないと判断した。そのうえで、事後の自主的・自律的な是正措置も適切に行われていることから、討議の経過を委員会の議事概要には掲載するが、審議の対象とはしないことを決めた。

[委員の主な意見]

  • これまでも繰り返し指摘してきたことだが、局と制作会社やスタッフの間で日常的に円滑な情報交換やコミュニケーションが行われていたとは思えない。問題の本質はそこにあるのではないか。

  • 別人を家族として出演させたのは明らかに「虚偽」の事実であり、放送倫理に違反しているが、第三者に指摘される前にきちんとした事後対応はなされていた。

  • 同じバラエティーの『ほこ×たて』の場合は、番組の中核となる対決について「ない対決をある」ことにねつ造したものだったが、今回はそこまでの悪質性は感じられない。視聴者の信頼を裏切ったとまでは言うほどのものでもないだろう。

  • 関西テレビは、去年、報道番組で審議入りが2件続いたが、今回はバラエティー番組で問題が起きた。その都度、再発防止に努めるとしてきたが、その背景にはいったい何があるのかないのか、局としてきちんと総括してもらいたい。

  • 今回の再発防止策のなかで、今後一般市民に出演を求める場合、すべての出演者の本人確認を行い、出演承諾書を取るなどの是正措置を決めている。ここまでやる必要があるかどうかは別にして、局側の決意と姿勢は感じられるのではないか。

以上

2014年5月に視聴者から寄せられた意見

2014年5月に視聴者から寄せられた意見

集団的自衛権の問題に対し、はじめから結論ありきで放送するのは如何なものか、報道番組は公平であるべきなどの意見。福島舞台の漫画の描写について、"風評被害を助長""真実に迫るべき"など様々な意見。

2014年5月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,231件で、先月と比較して28件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール72%、電話25%、FAX2%、手紙ほか1%。
男女別は男性71%、女性26%、不明3%で、世代別では30歳代27%、40歳代27%、20歳代17%、50歳代 16%、60歳以上9%、10歳代4%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。5月の通知数は559件【44局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、16件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

集団的自衛権の問題を取り扱ったニュース番組に対し、はじめから結論ありきで放送するのは如何なものか、是々非々の報道をしてほしいといった意見などが寄せられた。
福島を舞台にした漫画の描写について報じていたが、漫画同様に風評被害を助長するものだといった意見や、マスコミはこれを契機に真実に迫るべきだといった様々な声が寄せられた。
一般人である女性研究者をパロディーにしようとした番組予告や、笑いのネタにしたバラエティー番組に対して、人権を無視したものだといった多くの批判意見があった。
ラジオに関する意見は42件、CMについては63件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は107件で、前月より17件減少した。
今月は、「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見が22件、次いで「低俗・モラルに反する」との意見が21件、「性的表現」に関する意見が16件と続いた。
「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見では、21時台に放送されているドラマの残虐なシーンや、「世紀の瞬間」を取り扱った番組での遺体映像について、配慮を求める声が複数寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 各局で、安倍総理の集団的自衛権についての記者会見を放送していた。新聞各社ではこの件について「危険だ」という論調で批判している。しかし、民放各局ではこの件について、問題提起する番組が少ない。安倍政権を支持し、集団的自衛権に賛成している人もいるだろうが、反対している人も多いと思う。公共の放送として、国民に集団自衛権に危険な内容もあることを問題提起するべきではないか。

  • 集団的自衛権については賛否両論あるはずだが、キャスターと専門家両方が集団的自衛権反対の意見や政府批判を一方的に述べ、賛成派や保守派の意見は紹介しようとしなかった。主観的で結論ありきの偏向報道になっている。報道番組は公平であるべきはずだ。

  • マンガ本の福島の放射線被害についての報道だったが、「鼻血と放射線との関係性は全く存在しない」との結論に帰結するかのような内容であった。しかし果たして、十分に多角的な調査に基づいたものだったのだろうか。御用報道でないと自信をもっていえるのかどうか、問い質したい。

  • 漫画本をめぐるタレントの発言ですが、「漫画は作品で、その作品を作っているのは作者なので、作者が何を言おうが問題ない」と言っているが、その作品において風評被害を受けた福島県についての配慮が著しく欠けている一方的な意見でしかない。撤回と謝罪を強く希望する。

  • 漫画の描写に批判が出ていることを番組で取り上げた。全体として番組自体がこの漫画を応援しているかのような印象だった。低線量被ばくの影響や人々の不安な気持ちを考えるきっかけにしたい、との発言もあった。しかし、「この漫画は福島への風評被害、偏見を助長するものである」という多くの批判も出ている。漫画の内容を肯定するかのような放送は慎むべきだ。

  • "東京電力福島第一原発を訪れた主人公が鼻血を出す"などの描写が問題視された漫画について、各局ともワイドショー等で「このような漫画は良くない」等と批判をしていた。これにより件の漫画は休載に追い込まれてしまった。勇気をもって「福島の放射能汚染」に言及した作者の思いが踏みにじられたということだ。各放送局は、本当に福島が安全だと言い切れるのか、疑問に感じる。

  • サッカー中継の放送中に大きな地震があり、都内では震度5弱だった。他局では地震速報に切り替えて放送をしていた。しかしこの局はサッカー中継のまま、テロップで震度を示しただけだった。震災時の教訓が生かされていない。大きな地震の時ですら庶民の感覚と大きく異なるテレビ局に存在意義はあるのか。

  • 地震のニュースで、わざわざ路上で生中継をおこなう理由が分からない。最大震度は5弱である。騒ぎすぎである。電車が何分遅れなどの報道は東京ローカルのニュースとして放送するべきだ。東京の話題を大きく報道することに他の地方の人々は腹が立っている。なぜなら、他の地方では同じような災害が起ころうが、東京のように詳しく報道しないからだ。

  • 刑事事件の被疑者などに対する取材や報道の仕方が腑に落ちない。被疑者であっても人間であり関係者や家族がいる。一定の人権が保障されるべきである。何でも根掘り葉掘り調べ上げ報道すれば良いというものではない。最近の報道番組は異常に思える。過熱報道は冤罪を作り出す可能性がある。プライバシーよりも知る権利が優先されるのか。もっと報道のあり方を慎重に考えた方が良い。

  • ストーカー絡みの殺人事件があったが、またしても警察批判に偏った報道をしている。犯人に関する情報よりも警察の対応について論じているばかりで、見ていて不快だ。以前の三鷹の事件の時も警察批判に終始していたが、こういった事件を警察批判の道具に使うことは最低だ。公務員(警察や教師など)に何かあれば鬼の首を取ったように批判する報道が多いが、報道関係者が起こした事件などは殆ど取り上げない。

  • かなり前から気になっているが、ここ数年は各局ともニュースで事件現場の血痕を平気で放送している。被害者とその家族の心情はまるで無視されている。無関係な人が見ても気分が悪くなるし、子どもの教育にもよくない。事件が起きた場所を伝えることが目的の映像に「血痕」の必要はない。昔はこのような映像はなかったと思う。改善されることを強く希望する。

  • 韓国旅客船が沈没していから1カ月経つが、毎日放送している。まだ行方不明の方もいるが、日本の事故でもないのに報道しすぎではないか。このままでは、年末まで放送するのではないかと思われる勢いだ。この話題に関してもうやめてもいい時期ではないのか。

  • 札幌市の連続爆破事件は、直接証拠もないとされ、逮捕された主婦は否認していると報道されている。それにもかかわらず、逮捕の主婦についてまるで犯人扱いしていた。あたかも真犯人であるかのように皆が話すと、聞いている方も犯人だと思ってしまう。この番組はニュースも扱うのにふざけたリポートはするし、いい加減だ。公共の電波を使ってこんな放送をしていいのか。

  • ニュース等で"節電"や"原発反対"と言いながら、放送局は電気を無駄に使っている。例えばBSで一晩中ショッピング番組を放送しているが、深夜の放送は止めて節電してほしい。局はニュースで放送していることと、実際やっていることが違い過ぎて、不愉快だ。

  • 先日、サッカー日本代表のメンバー発表の記者会見が生放送された。ある局以外全てのテレビ局が放送していたが、おかしい。みんながサッカーに興味があるわけではないし、全てのテレビ局が放送するほどの話題でもない。サッカーだけ特別扱いされている気がする。

  • サッカーの日本代表が決まったニュースを取り上げているが、スポーツという取り上げ方ではない。スポーツ選手はアイドルではない。写真を街行く人に見せて、「かっこいい」や「結婚相手は」などのインタビューは全く試合には関係ないし、選手に失礼である。スポーツ選手をバラエティーアイドルのような扱いをすることはスポーツに対する侮辱である。まして、団体スポーツは選手個人の技量もあるが、戦術上どういうフォーメンションかなどが重要である。そのようなことには触れないか、触れても言い訳程度だ。きちんとスポーツはスポーツとして、競技として放送するべきだ。

  • Internet Explorerの脆弱性に関する注意喚起があった。テロップに「エクスプローラー」と誤った略称を使ったり、あたかも全ての環境でIE以外のブラウザーを使わなければならない状況であると誤認させるような報道が散見された。マイクロソフトの公表した対策が少し難解であったことも一因となった可能性はあるが、結果的に視聴者の恐怖心を無用にあおるだけとなっていたのではないか。注意喚起を行うことはごもっともなことだが、冷静さを欠いてはいけない。

  • ニュースやワイドショーで、政治家の発言を紹介することがある。その際に、「某自民党関係者」や「元○○議員」などと、発言者が特定できないようにしているが、なぜ名前を明かさないのか。また、どのような場面で、どのような話の流れでその発言があったかも知らされない。発言者も番組コメンテーターも、自身の発言に責任を持ってもらうために、誰の発言かをぜひ公表してほしい。

  • 憲法改正をテーマに出演者の持論を展開しているが、殆どが改正には反対の立場で意見を述べている。世論を意図的に誘導しようとする意図を感じる。ある事柄について議論をする場合、とくに意見が別れる場合には、その両方の意見を持つ人間をゲストやコメンテーターとして出演させなければならないはずだ。また自国の安全保障を他国に委ねている現状を無視し、戦争放棄は世界に誇るものだと、偽善的で非現実的な主張はもう通用しないことを真摯に考えてほしい。

  • 各局とも、朝から芸能人の薬物所持逮捕を取り上げている。しかも、わざわざ誰も出て来ない自宅前からの中継や何年も会っていないような学生時代の友人のインタビューなど、どうでもいいような内容まで放送している。現在、日本では国民が知るべき問題が山積みである。芸能人の薬物所持問題など騒ぐほどのことではない。今、テレビは何を報道するべきか、冷静に考えて頂きたい。

  • メディアにとって、芸能人・音楽関係者が起こす犯罪は、例えそれが重大な事件であっても全て微罪の範囲なのか。今回の容疑者の覚醒剤事件は、容疑を否認しているものの、尿検査から陽性反応も出ている。最近は、芸能界に限らず、覚醒剤など薬物所持で検挙される人物の中には教師など、本来、子ども達に尊敬されるべき人間も多く含まれている。それと今回の事件もそうだが、芸能人が罪を犯した時、罪よりも当事者の経歴ばかりを放送し、亡くなった著名人と同等の報道をすることは控えるべきではないのか。

  • PC遠隔操作事件のコーナーで、被告を取り上げた際、ナレーションで「(偽装メールが発覚したのは)オウンゴールのような失策」、文字スーパーで「自ら招いた失策」としていた。偽装メールがばれて被告の犯罪がわかったことは、真実がわかり良かったことだ。「失策」とすることは、被告側に立っていると言わざるを得ない。

  • 中国で起きた事件を取り上げていた。小学校に刃物を持った男が押し入り、子ども達を切りつけている映像が流れた。中国の社会情勢を知らせたいのだろうが、このような恐ろしい映像を流す意味が解らない。事件があったことを知らせるだけで十分である。行き過ぎた報道に不快感を覚えた。

  • 人気アイドルグループの握手会でメンバーが切りつけられたが、犯人だけを悪者にし、事件を終わりにしてはいけない。諸悪の根源は、CDの付録に「握手券」や「投票券」を付けて、ファンを煽る「商法」にある。「会いに行けるアイドル」と謳うなら、煽られたファンが興奮しても仕方がない。徹底されていなかった手荷物検査やスタッフの未熟さ、何より「デート商法」を問題にするべきだ。

  • 人気アイドルグループの襲撃事件について、犯人が「だれでもよかった」と話していたと報じた直後、握手会はCDに封入された握手券を買えば参加でき、それを目当てに1人で何枚も同じCDを買うファンが少なくないことを放送し、あるファンの家を取材していた。大量に買われたCD入りの段ボールが部屋に山積みにされている様子が映されていたが、違和感を覚えた。今回のような無差別的傷害事件と、一部の異常な買い方をしているファンと何の関係があるのか。熱狂的なファンが起こした事件と受け取られかねない。そもそも犯人はファンですらない可能性もある。また今回の事件と結び付けて、まったく別問題であるCDの売り方そのものの印象を悪くさせているかのようだった。肝心の犯人についての情報はあっさりしていた。問題の本質が見えない歪んだ報道だった。

  • 人気アイドルグループの握手会の事件について、加害者の母親への取材があったが、行きすぎている。実家に押しかけ加害者家族を報じる必要性はどこにあるのか。本件に限らず、成人している加害者の家族に対してよく取材しているが、地元の人間には分かるし、ネットが発達した時代だから、映像や音声を加工したところでそれほど効果はない。にもかかわらず報道で加害者家族を取り上げ、晒すことに何の意味があるのだろう。加害者家族は時に自殺にまで追い込まれるほどの社会的制裁を受けるが、テレビ局はそれを煽り立てているように思う。正義を振りかざし加害者家族を責める番組も少なくない。被害者家族は当然のこと、加害者家族を含めた家族報道のあり方を検討していただきたい。

【番組全般・その他】

  • STAP細胞騒動をパロディー化したものを放送した。女性研究者は権力者だろうか。芸能人だろうか。犯罪者だろうか。そういう立場にない人をパロディーの素材として扱って良いのか。彼女は自分の所属する機関から「不正認定」をされてしまい、そのことに対して不服申し立てをしている最中であり、科学コミュニティーという閉鎖社会で孤立無援の弱い立場にある。立場の弱い者を笑いにしていいのか。そんな人を嘲り笑う構造はイジメそのものだ。意識の低いタレントは仕方ないにしても、その「悪ふざけ」をそのまま番組として制作するスタッフの知性のなさには呆れるばかりだ。テレビでは何でもありなのか。

  • テレビ局の公式サイトに「○○さんが緊急会見涙目で、○○はあります」との一文が掲載された。4月の記者会見で涙を見せながら「細胞はあります!」と断言した女性研究者のパロディーとみられ、芸能人でもない人の名前に"アホ"を付けて全国放送で晒し者にしようとした。多数の批判が寄せられたようで、「○○さん」の部分が「渦中の女性」に修正された。だが、ネット上にはコピー画像が出回っていて、確認できる状態だ。バラエティーなら何でも許されると考えているのか。

  • 視聴者のツイッターとの連動が売りのようだが、ツイッターのコメントがひどい。なかには評論家気取りの無責任で上から目線の素人意見や、出演者の服装・髪型に関する、おおよそニュースとは関係のない意味不明なツイートなどもある。日々のニュースに真剣に向き合おうとしているのか、はなはだ疑問なものが垂れ流されている。幼稚なネットユーザーが増えた原因はこの番組ではないか。ツイートを選んで番組にアップするスタッフもスタッフだ。あんな誰が見てもくだらないと思われるものを垂れ流すくらいなら、募集しないほうがましだ。

  • 私は漁師で、命を賭けて海に出て魚を取っている。その魚たちも人間に命を与えてくれる。ところがこのコーナーはそんなことも知らずに料理方法を知らないギャルに調理をさせて、その調理ができないことをネタにして笑いを取っている。そしてその魚を捨てる。こんな番組を平気で放送する局の意図が分からない。私たち漁師や食料となっている魚たちのことを考えてほしい。

  • ドッキリ企画だった。3Dプリンターで人の驚き顔を作っておき、本人を特定の楽屋に呼び出し、それを突然目の前に出して、どちらの顔が面白いかを検証するというものだった。本人の承諾なしに顔を再現したことは問題だし、事務所に承諾を得ているのかもしれないが、人の顔を3Dで再現ということが気持ち悪い。番組は、これからもシリーズにするらしい。気持ち悪いと感じている人が多いと思う。止めてほしい。3Dプリンターは注目されているが、同時に問題も起きている。間違った使い方を推奨する例にもなると思うので、こんなコーナーは作るべきではない。

  • 絶叫マシンに乗せる企画があった。女芸人数名が挑戦する。そこに出演していた40歳代位の女芸人の絶叫の表情のことを「ババア」などと言って、馬鹿にしているので不快だった。最近は、女性お笑いタレントをエベレストに登山させようとする企画があったが、結局、企画中止に至ったようだ。視聴者として不安になった。命の危険が及ぶかもしれないものをタレントに無理に挑戦させることは、如何なものか。このようなバラエティーは止めるべきである。

  • 年金問題に対するネット上の意見として、ある著名なHPを転載したまとめサイトでのコメントを掲載していた。運営者によって望むように編集したサイトは、まとめてあって見やすい反面、都合のいい記事だけを抽出している。スレッド内の本当の意見や一部の人の意見を無視し、都合のいいレス内容だけを挙げ、時には部分的な切り取りにより、本当の意味と真逆な解釈をされる編集も見られる。ニュースで扱うのは、不適切ではないのか。

  • 生き物の研究という名目の番組のようですが、これは生物虐待ではないのか。アリの巣を立体化するとして、800度以上の高熱で溶かしたアルミをアリの巣に流し込んでいた。巣の入り口に小さな植木鉢を伏せて、巣に住んでいたアリを引越しさせたと断っているが、植木鉢の中に入っていたアリは数十匹程度しかおらず、まだ巣の周辺にも沢山のアリがうろうろしており、どう見ても全てのアリを巣から出したようには見えなかった。にもかかわらず、熱したアルミを巣に流し込み、焼き殺してしまうのはいかがなものか。その前には、アリを親しみやすい生き物として紹介しており、それだけにショッキングだった。番組のために生き物を無駄に殺し、偉業を達成したかのように盛り上げる内容に、うすら寒さを覚えた。

  • バラエティー番組で生活保護不正受給の芸人をなぜ使うのか。不愉快で笑えない。使わないでほしい。あの出来事は忘れようとしても忘れることが出来ない。真面目に働いている私たちを愚弄したからだ。放送局も毅然とした態度をとらないといけない。

  • バラエティー番組での罰ゲームで、苦い、酸っぱい飲料やいわゆる「ゲテモノ」といわれる食べ物を飲食させるシーンをよく見る。今までは嫌がったりする様子を面白く見ていたが、昨今の学校でのアレルギーに関する事故を見て笑えなくなった。アレルギー物質は多種多様で本人も気付いていないものも多い。テストをしているのかも知れないが、体の中に物質を入れるという罰ゲームは止めるべきだ。

  • 「出演者の持論を発表する」というコーナーで、"新潟出身の女性は○○"であるかのように取り上げていた。繁華街近くでそのような子に声をかけて平均人数などを出し、"新潟の女のはかなり遊んでいる"かのように伝えていた。放送が関西圏だけなので、悪質なやり方をしているのではないか。私も新潟出身だが全然遊んでいない。地元の友達も、とっかえひっかえ遊んでいる子はいない。もう明日から出身地を偽りたくなった。こんな放送をみんなが見ていると思うと悲しくなる。こんな悪質な番組は早くなくしてほしい。深夜だからといって、偏見を生むような番組作りは問題だ。

【ラジオ】

  • 童謡を流すコーナーだが、ある男性が出てきて、自分で作ったデタラメな内容の童謡を不真面目に歌い、茶化していた。童謡が児童の唱歌として歌われてきた時代の人間から言うと、不真面目にもほどがある。先人の作詞・作曲家に対する侮蔑としか思えない。このようにくだらない歌を作って笑いはやし立てることは不快で、放送局の品位を疑う。

  • 番組の内容が、パーソナリティーが好きな話題である相撲・ボクシングなどに偏りすぎだ。他の話題はできないのか。聞いていて「また?」「朝刊の話題をもっとできないのか?」といつも思う。

  • 何かと視聴者を煽る発言が多い。今日は「街には監視カメラがあふれている」と発言したが、防犯カメラの間違いではないか。監視カメラと防犯カメラとでは、全く受け取り方が違う。

  • 聴取者が投稿した「電車の中が"わきが"の臭いでくさかった」という内容を読み上げていた。パーソナリティーが「自分も経験ある。誰かは言えないけど」と言い、犯人捜しのようなことをして盛り上がっていた。"わきが"は遺伝体質によるもので疾患の一種だ。それを笑いのネタにすることはいかがなものか。

【CM】

  • 財布を作る会社を経営している。1週間位前から流れているCMについて抗議したい。このCMは、"携帯を使用することでお財布を使わなくなる"ことをテーマにしているようで、お財布をぞんざいに扱う内容になっている。我々、財布を作ることで生計を立てている人間にとって許しがたく、営業妨害と言っても過言ではない。

  • CMで白人のエキストラばかり登場する風潮が不快です。非白人の外国人はあまり雇わないので、一種の人種差別だと感じます。

  • SNSゲームのCMを多数見かけるが、美少女ものなどが多く、見ているほうはとても不快だ。子供への教育にも良くないと思うし、スマホ課金を助長しているように思える。

  • シリーズ化されているCMだが、父親が犬であったり、息子が黒人であったり、何だか日本人が馬鹿にされているようで気色悪い。穿った見方をすれば慰安婦問題と同様、このCMは日本を貶めるための謀略の一環ではないのだろうか。

青少年に関する意見

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 21時台のドラマでの暴力や殺人シーンの演出が過激すぎる。特に、子どもが殺人を犯すシーンは非常にショッキングである。青少年が見ることができる時間帯であることを踏まえ、更なる配慮をすべきではないか。

  • 世界の「世紀の瞬間」を伝える番組で、ルーマニアの小児エイズで亡くなった赤ちゃんの映像が画像処理なしで放送された。非常に鮮明な映像であり、ゴールデンタイムに子どもを含む家族で見ていて、大変驚いた。報道したいという姿勢は評価したいが、衝撃映像の前にはナレーションやテロップなどを用いて視聴者に案内して欲しい。

【「低俗・モラルに反する」との意見】

  • 落語家が司会役の落語家に対して、死ぬことを期待しているかのようなネタで笑いをとることがある。これは毎回恒例のことであり、視聴者はこの程度のことは許容しているのかもしれない。しかしながら、数十年前、学校で「いじめ」問題が深刻化する先駆けとなった「お葬式ごっこ」を連想させる内容であり、子どもが真似ることも考えられる。笑いのネタにすることは控えて欲しい。

【「性的表現」に関する意見】

  • 夕方の情報番組で、出演者が男性器の呼称を具体的に発言していた。この番組は子どもが見ている時間帯に、出演者が平然と下ネタトークばかりしている。司会者もその会話をとがめることなく、下ネタに持っていこうとしている。深夜でもどうかと思うような内容を、子どもが見られる時間帯に放送するのはいかがなものか。

【「犯罪の助長」に関する意見】

  • 覚せい剤所持の疑いで有名歌手が逮捕されたが、同歌手を擁護しているように受け取られかねない放送が多いと感じる。「苦悩はわかる」などのコメントは、「苦しかったら薬に逃げてもいい」と受け取られかねない。覚せい剤使用は、芸能人だろうが一般人だろうが許していいことではない。視聴者の中には、「つらかったら覚せい剤をやってもいい」と勘違いする青少年が出てくる可能性もある。もっとしっかり、いけないことはいけないと言い切るべきだ。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 東京都が改正青少年育成条例に基づき、ある漫画本を不健全図書に指定し、当該漫画本が数日後から区分陳列の対象になる旨の報道があった。報道では、当該漫画本の表紙を映したり、内容を紹介していた。同報道を見て興味を持った小学生が、区分陳列される前に当該漫画本を購入し、他の子どもに見せていた。子どもも起きている時間帯のニュースで、不健全図書として指定されるような漫画本の詳細を報道する必要はない。報道するなら簡単な紹介だけでいいのではないか。

第158回 放送と青少年に関する委員会

第158回–2014年5月27日

視聴者意見などを基に、「子どもが関わる事件・事故報道における配慮」をテーマに討論…など

第158回青少年委員会を、5月27日に7人の委員全員が出席してBPO第1会議室で開催しました。4月16日から5月15日までに寄せられた視聴者意見で討論の対象になったのは、子どもが関わる事件・事故報道における配慮についてです。その他、5月の中高生モニター報告、6月6日に予定されている沖縄での意見交換会、調査研究などについて話し合いました。
次回は6月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2014年5月27日(火) 午後4時30分~午後6時50分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

  • 情報系の番組で、被害者の同級生や学校の卒業生を顔出しでインタビューしているが、配慮が足りないのではないか、という視聴者意見や、事件の説明について配慮を求める委員からの意見もあり、子どもが関わる事件・事故報道での配慮をテーマに討論しました。事実関係の確認のため、関連する局に資料の提出を要望し、次回引き続き討論することにしました。

中高生モニター報告

■中高生モニター報告 概要

5月の中高生モニターは、「最近見た番組の感想(報道・情報・ドキュメンタリー)」というテーマでリポートを書いてもらいました。今回は31人から報告がありました。
『報道ステーション』(テレビ朝日)は5人が取り上げました。「特に良いのが特集で
す。分かりやすくCGなどを使い解説をしてくれます」(福岡・高校1年男子)、「サッカー日本代表メンバー発表は、各報道番組が工夫を凝らし解説していましたが、特にこの番組は面白く、わかりやすかったです」(兵庫・高校1年男子)などと賛辞が多く見られました。 
ドキュメンタリーでは地方を舞台にした番組に関する報告が多く寄せられました。『福島をずっと見ているTV』(NHK Eテレ)「この番組を見て涙が出そうになりました。被災地の福祉や介護について私が何かすることはできないけれど、まずは現状を知ることが大事かなと思いました」(宮崎・高校2年女子)、『NEWSチャンネル4』(南海放送)「この番組の特集で愛媛県警に自動車警ら隊ができたということを初めて知った。地元局でこういうことを取り上げるのはすごく良いと思う」(愛媛・高校2年男子)。NHKのドキュメンタリーに関する報告も多くありました。『Brakelessブレーキなき社会~JR福知山線脱線事故9年~』(NHK)「この番組の完成度の高さに圧倒された。構成の工夫や画面の演出など、何をとっても素晴らしい。ここまで心に響く番組は、久しぶりだった」(東京・高校2年女子)、『ドキュメント72時間 上野公園 満開の桜の下で』(同)「この番組には自然に人間模様が表れます。広い社会を知り、多くの人の中での自分の位置を確認できるお気に入りの番組です」(大阪・中学3年女子)。
<自由記述欄>では、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」と依頼しました。今回はラジオについて書いた報告が多数ありました。「地元のK-mix(静岡エフエム放送)の番組をたまに聞きますが、テレビのアナウンサーよりも丁寧語でないけれど、そこが親しみやすくてたまらなく好きです」(静岡・中学1年女子)、「私は日々ラジオを通して自分の好きな洋楽と出合っています。元気づけてくれる色々な曲が聞けるのは嬉しいです」(東京・高校1年女子)、『基礎英語3』(NHKラジオ第二放送)「毎朝欠かさず聞いています。リスニング力がUPしてとてもいいです!」(大分・中学3年女子)。一方、テレビ番組に対する批判も寄せられました。「最近はどの局も長時間似たようなスペシャル番組ばかり放送する。友達とテレビの会話をすることはあまりなくネットの話の方が多い」(東京・中学3年男子)、「主にドキュメンタリーで、はやりの俳優にナレーションをさせないでほしい。読むための発声をしていないので非常に耳触りだ。せっかくの番組が台無しになる」(東京・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】テレビ・ラジオ番組に関しての報告なのに、インターネットやYouTube、SNSに言及しているリポートが散見され、我々が考えている以上に中高生のテレビの見方が急激に変わってきている、という実感を持った。

  • (広島・中学2年女子)『世界を変えるテレビ』(広島テレビ/日本テレビ)この番組を見て最初に思ったことはSNSの素晴らしさです。今、私たちの学校ではSNSに悪口を書き込み、いじめの原因になることが多く問題になっています。しかし、SNSにはデメリットだけでなくその人の使い方次第で世界を変えることができる力があるということを教えてもらえた番組でした。

●【委員の感想】番組の趣旨がしっかり中高生のハートに届いていると感じた報告があった。素晴らしい内容でそれを読むことによって間接的に番組の描いた情景にほろりとさせられた。テレビ番組の力を印象づけられた気がする。

  • (宮崎・高校2年女子)『福島をずっと見ているTV』(NHK Eテレ)今回は南相馬市の老々介護についてでした。とても大変そうで、私は愛している人のために自分の人生を捧げることができるだろうか、と思いました。今自分のことで精いっぱいの日々を過ごしている私にとって、おばあちゃんたちは人生の先輩だなと思いました。

●【委員の感想】制作方法、描写の仕方など、冷静にテレビ番組を見ていると思われる優れたモニターがいた。私自身は見逃していたので残念だったが、この番組を作った制作側も素晴らしいと思った。

  • (東京・高校2年女子)『Brakeless ブレーキなき社会~JR福知山線脱線事故9年~』(NHK)多角的な視点で事故原因に迫りつつ、過去・現在・未来の日本社会を捉えていく。様々な映像素材を使いながらも展開が自然なので混乱しない。タイトルも工夫が凝らされている。BBCとの共同制作であるこの番組をもっと多くの人に見てほしい。

●【委員の感想】ドキュメンタリーとは何ぞや?と問いかけたモニターがいたのにショックを受けた。モニターに応募してきた中高生はテレビ好きと思っていたが、やはり、中高生のテレビ離れはこちらの思っている以上に急激に進んでいるようだ。

  • (東京・中学3年男子)ドキュメンタリーとはどんな番組でいつやっているのでしょうか。改めて自分がテレビ番組にあまり興味がないことに気づきました。自分から積極的にテレビをつけることはあまりないです。リアルタイムに放送されている番組を見ることは少ないですし、友達ともテレビについてよりネットの話題の方が多いです。

●【委員の感想】ドキュメンタリー番組は事実に基づいているが物語性もあることを実によく読み取っている。中高生がドキュメンタリー番組をもっと見る機会があればいいと感じた。

  • (大阪・中学3年女子)『ドキュメント72時間 上野公園 満開の桜の下で』(NHK)桜を見る人も様々だが桜を見て思うことも人によって様々だ。しかし、桜が散ればその時間も終わる。つまり、自分を見つめなおす時間はたった一瞬だ。

●【委員の感想】テレビ番組に対する姿勢が実に多様化していると感じた。のめりこむ人もいれば、醒めて見ている人もいる。

  • (秋田・中学2年女子)勉強で疲れた後は、コロコロ画面が忙しく変化するにぎやかなテレビ番組は見ていて疲れます。勉強疲れ、運動疲れ、仕事疲れを取り除いてくれるような癒しの番組があるといいですね。

●【委員の感想】テレビ番組を様々な角度から見ているモニターに感心した。自分なりの感じ方で人生の糧にしているようだ。

  • (沖縄・中学2年男子)『クローズアップ現代 急増する野生動物被害』(NHK)これは人災なのでは?と私は思いました。人には人の言い分があるように、きっと動物には動物の正しい言い分があるんだろうなと思います。果たして、どちらが被害者で、どちらが加害者なんでしょうか。

●【委員の感想】青少年は今漠然とした不安を持っていて、将来自分に何ができるのか思案している子どもも多い。テレビ番組に勇気づけられた、と書いたモニター報告が印象に残った。

  • (青森・中学1年女子)『世界を変えるテレビ』(青森放送/日本テレビ)私はこれを見て、やろうと思えばできないものはないのではないかと思いました。私よりも小さな子がこんな大きなことを思いついてやっていることは本当にすごいことだと感動しました。

●【委員の感想】テレビ番組や制作姿勢について痛烈な批判もみられた。

  • (広島・中学2年女子)私が思うに今の多くのテレビに足りないものは、YouTubeのように新しいことに挑戦してみようという気持ちです。食べ物の番組が人気を集めたら同じような番組をたくさん作る、医療系のドラマが売れたら同様の番組をたくさん作る、同じことばかり繰り返しても視聴者は何も面白くありません。

  • (広島・中学2年女子)私はバラエティーでやっている料理の値段を当てるクイズや人気の商品が何かを当てる番組内容は意味が無いと思っています。芸能人が高級な料理を食べて値段を当てることに何の意味があるのかと不思議に思うのですが、番組は続いています。

その他

  • 6月6日に沖縄で開催予定の意見交換会について準備状況が報告されました。
  • 調査研究の今後の予定が報告されました。

2014年6月9日

2014年6月9日

顏なしインタビュー等についての要望
~最近の委員会決定をふまえての委員長談話~

放送と人権等権利に関する委員会
委員長 三宅 弘

I.情報の自由な伝達と名誉・プライバシーの保護など

人が自由に様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会を持つことは、個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ、社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことのできないものであり、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保を実効あるものとするためにも必要である。しかし、高度情報通信社会において、他人に知られたくない個人のプライバシー、名誉、肖像などはみだりに侵害されることのないよう保護することも必要である。情報の自由な伝達とプライバシーや秘密の保護との適正な調整があってこそ、行きすぎた社会の匿名化を防ぐことができる。

II.安易な顔なしインタビューが行われていないか

テレビニュースなどで、ボカシやモザイクを施したり、顔を写さないようにして、取材対象が特定できないようにする、いわゆる顔なしインタビューが放送されることがある。
知る権利に奉仕する取材・報道の自由の観点からは、取材・放送にあたり放送倫理における、事実の正確性、客観性、真実に迫る努力などを順守するために、顔出しインタビューを原則とすべきである。
この点について、テレビ局各局では、顔出しインタビューを原則としつつ、例外として顔なしインタビューを認める場合について検討し、社内ルールを定めている。海外では、例外としての顔なしインタビューをするにあたり、国際通信社傘下の映像配信会社が理由を付記したうえで配信したり、放送局が報道部門幹部だけでなく、法務部等社内複数の関係部署の承諾を義務付けている例もある。
しかし、実際の取材現場では、被取材者側に顔を出してインタビューに応じることへの抵抗感が強まる傾向があることや取材者側に顔を出すよう説得する十分な時間がないなどの理由から、顔なしインタビューが行われるケースも多いのではないかと推測される。とりわけ、地域の出来事について、周辺住民のインタビューをする際に、特に匿名にしなければならない具体的な理由が見当たらないにもかかわらず、安易に、顔なしインタビューが行われてはいないだろうか。

III.安易なボカシ、モザイク、顔なし映像はテレビ媒体の信頼低下を追認していないか

テレビ画面では一層、ボカシやモザイク、顔なしインタビューが日常化している。しかし、事実を伝えるべき報道・情報番組がこの流れに乗って、安易に顔なし映像を用いることは、テレビ媒体への信頼低下をテレビ自らが追認しているかのようで、残念な光景である。テレビ局の取材に対して取材対象者が顔出しでインタビューに応じてくれるかどうかは、テレビという媒体が、あるいは取材者が、どこまで信頼されているかを測る指標の一つであると考えられるからである。

IV.取材、放送にあたり委員会が考える留意点

以上をふまえると、取材にあたっては、次の事項に留意すべきである。

  • (1)真実性担保の努力を
    安易な顔なしインタビューを避けて、可能な限り発言の真実性を担保するため、検証可能な映像を確保することなどの努力を行うことが大切ではないか。

  • (2)取材対象者と最大限の意思疎通を
    安易な顔なしインタビューを避けるには、限られた時間であっても取材対象者と可能な限り意思疎通を図るよう努めるべきではないか。

  • (3)情報源の秘匿は基本的倫理
    情報の発信源は明示することが基本であるが、情報の提供者を保護するなどの目的で情報源を秘匿しなければならない場合、これを貫くことは放送人の基本的倫理である。

放送時においても、原則は顔出しインタビューとすべきである。一方、特にデジタル化時代の放送に対し、インターネットなどを用いた無断での二次的利用等が起こりうる可能性を十分に斟酌したボカシ・モザイク処理の要件を確立すべきである。
よって、放送にあたっては、次の事項に留意すべきである。

  • (4)プライバシー保護は徹底的に
    プライバシー保護が特に必要な場合は、一般の視聴者のみならず取材対象者の周辺にいる関係者においても、放送された人物が本人であると識別されることのないように慎重に行うべきである。その場合でも、前後の映像やコメント等によって識別されることがありうるので注意すべきである。中途半端なボカシ・モザイク処理は憶測を呼ぶなどかえって逆効果になりうることに留意すべきではないか。

  • (5)放送段階で使わない勇気を
    伝える内容と使用する映像との関係を十分に吟味し、ボカシなど加工を施してまで使用することが必然ではない映像については、放送時にこれに代替する映像素材を検討し、場合によってはその映像を使わないことも認めることがあってもよいのではないか。

  • (6)映像処理や匿名の説明を
    ボカシ・モザイク使用や顔なし映像の場合は、画面上でその理由を注記(字幕表示等)することで、メディア取材に対する市民意識を変える努力をすべきではないか。

  • (7)局内議論の活性化と具体的行動を
    一つ一つの映像を放送するに当たり、逮捕時の連行映像など定型的にボカシ・モザイク処理をするものも含め、なぜ必要なのかの議論を日常的に行うことが大切ではないか。社内ルールが定められていない放送局においては早急にルールが策定されるべきである。

V.行き過ぎた"社会の匿名化"に注意を促す

以上の留意点をふまえ、原則は顔出しインタビューであり、あくまで例外として顔なしインタビューを認めるという点について、テレビ局各局は、放送関係者だけではなく、一般社会においても認知されるよう努力すべきである。その際、取材対象となる市民との信頼関係に基づく十分な意思疎通が必要である。これにより、人が自由に様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会を持つことの大切さを認識することができる。また、例外的に顔なし映像を用いたり匿名化の処理をする場合には、画面上でその処理の理由を注記することなどにより、行きすぎた社会全体の匿名化にも注意を促すことができるものと考える。

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