第47回 放送倫理検証委員会

第47回 – 2011年3月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』…など

3月11日に開催予定だった第47回放送倫理検証委員会は、東日本大震災のため、31日に延期して開催された。
一括審議となったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送『イチハチ』のホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3つについては、意見書の構成やターゲットについて、ヒアリングを踏まえて議論をおこなった。次回の委員会までに意見書の草案を担当委員が作成し、それを基に審議することになった。
日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』で、最新のペットビジネスとしてペットサロンとペット保険を紹介したが、客として登場した2人の女性は、ともに運営会社の社員だった。
この事案については、取材・制作にあたったディレクターや上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施したが、その概要が担当委員から報告された。この中では、ディレクターと上司との間にさまざまな認識の乖離があったことが指摘され、なぜミスが防げなかったのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は生かされているのか等について意見交換が行われた。次回の委員会には、意見書の原案が提出される。
政治的公平性に問題があるのではないかが問題となったBS11の『”自”論対論~参議院発~』については、前回から討議を継続して番組編成全体で公平性に配慮しているという局の主張を検証した。この番組は、司会者、出演者ともに一政党のみで、その政党の広報番組と区別できないという偏りがある点に問題があるとして審議入りすることになった。
TBSがボクシングのタイトルマッチを中継録画で放送した際、直前のニュース番組『Nスタ』で、既にKOで決着がついていたにもかかわらず、あたかも結果が出ていないかのように伝えたことを不当な演出として問題にするべきかを討議した。確かに、視聴者に誤った印象を与えるが、ニュースではなく一種の番組宣伝であり、あえて審議するほどの重大性はないうえに、局も自発的に改善策を示してしているので取り上げないことにした。

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

酵素飲料を飲むことでダイエットに成功したと番組で紹介した女性が、その飲料を販売する社長であったことが判明したテレビ東京の「月曜プレミア」と、15億円でホテルを購入しようとする富豪女性に密着した取材は、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の「イチハチ」が、すでに審議入りしていた。
これに加え、毎日放送の同じ「イチハチ」で、ニューヨークに23件もの不動産を持つ女性が紹介されたが、当該局が「女性の所有であることが証あったことだった。また、世代間ギャップの指摘明できず、事実と異なる放送をした可能性が高い」と公表した案件について、前記2つの事案と通底する問題があるとして、前回委員会で一括して審議入りした。
これを受けて毎日放送のニューヨーク事案について、制作スタッフらからのヒアリングが行われ、その結果が担当委員から報告された。
その上で、情報バラエティー番組における事実関係や情報の取り扱いについて議論が展開されたが、制作サイドの事実に対する認識や判断の甘さ、拡大解釈が、内部で精査されることなく安直に番組つくりがなされていく実態や、事案発覚後も、プロデューサークラスと現場ディレクタークラスとの間で、何が問題であったかの認識に温度差があることも浮かび上がってきた。
委員会では、これまで様々な形で発信してきた委員会の思いが、なかなか現場の制作スタッフに伝わっていないのではないだろうかという懸念を踏まえて、如何にしたら伝わるのか、意見書のスタイルを含めて模索し、担当委員の間で原案を作ることとした。

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

1月8日に放送されたこのニュース番組は、右肩上がりの状況が続いているというペットビジネスを取り上げ、ペットサロンとペット保険の2人の女性客を紹介した。ところが2人は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったことが判明し、前回の委員会で審議入りした事案。
担当委員は、2人の女性客が社員だと知りながら取材・放送したディレクターをはじめ、上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施した。そこで浮き彫りになったのは、取材方法や職場のコミュニケーション状況などについて、ディレクターと上司の間にさまざまな認識の乖離がもあった。
委員の間からは、報道の使命や責任について十分な社内教育が行われているのか、ミスを防げなかった組織的な原因はどこにあるのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は本当に現場に生かされているのだろうか、などの意見が出された。次回の委員会では、担当委員から意見書の原案が提出される。

【委員の主な意見】

  • 上司は部下に目配りをして対話の場も設けていると考えているのに、部下のほうは自分が理解されず評価もされていないと思っている。この状況は、当該局だけの問題だとは思えないし、報道現場だけに起きている問題だとも思えない。そこに根の深さを感じる。
  • ニュースを伝えるという報道の使命や役割は、同じような情報を扱うバラエティー番組と比べて、はるかに重いものだ。報道モラルの低下を言うのは簡単だが、どんな社内教育や指導が行われているのか、
  • 「バンキシャ」の誤報問題のあと、さまざまな再発防止策が打ち出され、社内の研修なども充実させたという。ところがこのディレクターは研修会の参加記録は残っているのに、本人には参加した記憶がないということだ。教訓が本当に生かされているのかどうかの検証も必要ではないか。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論』

視聴者から、政治的公平性に問題があるのではないかとの指摘があったBS11の政治討論番組
『”自”論対論~参議院発~』(全11回)は、司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている。当該局からは、番組編成全体で政治的公平性を保つようバランスをとっているとの説明書が提出された。
8番組35放送分のDVDの提出を受け、全体として本当に配慮されているかの検証を行ったが、一政党に偏して11回の放送を行ったという問題性は明らかであり、審議入りをして、なぜそのような企画が採用されたのか、その際他の政党に対する公平性の確保についてはどのように実現するつもりであったのかなどを調査することを決めた。

【委員の主な意見】

  • 司会者が「われわれ自民党は」という発言をしている。明らかに放送法の第一条「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」に反している。
  • 放送法と憲法の関係には、微妙な問題が存在している。表現の自由と大きくかかわることなので慎重に議論すべきだ。
  • スポンサーが明示されていないことは大きな問題だ。
  • まるで、政党の持ち込み番組ではないか。
  • アメリカでは不偏不党の枠が取り払われている。それをどう考えるべきか。
  • 放送局として、編成権や主体性の放棄につながるのではないか。
  • 放送局の自律は、MC(司会者)やキャスターの存在に託されるのではないか。
  • 反対意見があればお寄せ下さいというテロップ表示を流せば、一方に偏すると言うことを避けたと見なせるのではないか。
  • 不毛な機械的公平性議論は避ける必要はある。

終了しているボクシングの試合を試合前のように伝えたTBS『Nスタ』スポーツコーナー

夕方の報道番組『Nスタ』(2月1日放送)のスポーツコーナー『こちら運動部』で、直後に当該局が放送するボクシング世界タイトルマッチを前に、試合の見所などを、スタジオと会場で事前に収録したVTRで放送した。しかし、実際には、試合はこの放送の30分近く前に結果が出ており、視聴者に誤解を与えかねない放送になった。
当該局からの報告書では、放送までの経緯が説明され、更に社内での議論の結果、今回の放送は生で進行している番組の中では視聴者に誤解を与えた表現であり、避けるべきだったと結論している。また今後の対応について、生番組における、競技が終了しているスポーツ番組の告知については、番組宣伝コーナーを設けるなどが示された。
委員会ではこの放送を番組宣伝と考えるかどうか、意図的に誤解させるメッセージがあったのではないかなどの意見が出されたが、事案の重さと、当該局の認識の仕方、今後の対応への姿勢から審議入りしないことに決定した。

【委員の主な意見】

  • 嘘をついたわけでもないし、ある意味番組宣伝として捉えれば、どうなんだろう。お金をかけて独占放送権を買っているわけだから。
  • スポーツ中継を種明かしして、これはディレイですといわれて結果がわかっているものを見ても面白くない。
  • 次から番組宣伝をしますということが明示されていれば問題はない。
  • 意図的に誤解させるメッセージがあったことは否定できない。しかし大きな問題ではないということもできる。
  • 過剰な臨場感を期待させるために、余計な勇み足をしている。
  • 報道のニュースの枠内であったということが問題だ。

「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」を受けて当該4局から報告書

2010年12月2日に行われた標記事案の委員会決定を受けて、当該4局はそれぞれの対応と取り組み状況をまとめた報告書を、当委員会に提出した。
この日の委員会において4局の取り組みが検討され了承された。
4局の報告はこちら。

以上

第46回 放送倫理検証委員会

第46回 – 2011年2月

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

政治的公平性が問題になった在京テレビ局の討論番組…など

第46回放送倫理検証委員会は2月18日に開催された。
当該局から提出された報告書を公表することで討議を終了したフジテレビの『Mr.サンデー』については、川端委員長の前文を付して、BPOのホームページと「BPO報告」に掲載されたことが報告された。
在京のテレビ局が1月に放送した討論番組は、政治的公平性に疑念があると、視聴者から意見が寄せられた。討議の結果、より詳細な資料を検討する必要があるという結論に至った。当該局に資料の提出を依頼し、継続して討議することにした。
取材方法に問題があり、視聴者に誤解を与えるような内容であったことから審議入りが決定した毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(10年11月17日放送)テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)については、担当委員が行ったヒアリングの中間報告が行われた。
同じ毎日放送の『イチハチ』(1月12日放送)でニューヨークに不動産を23件持っている女性を紹介したが、視聴者から虚偽ではないかとの指摘があった。当該局は調査不足による誤った放送であったことを認めている。上記2番組と共通する問題なので、この番組を加えて3番組をいっしょに審議することにした。
日本テレビの報道番組『news every.サタデー』(1月8日放送)が最近流行のペットビジネスとして、ペットサロンとペット保険を紹介した。ところが客として登場した2人の女性は、これらの店舗を展開する運営会社の社員であったことが、当該局への視聴者意見から判明した。このような取材が行われた背景や原因を検証するために、審議入りすることにした。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

当該局から提出された社員研修用の詳細な報告書「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」は、他の放送局でも、調査の方法やあるべき解決策の指針、問題点の事前チェックの参考資料として役立つと思われたので、当該局に公表することを依頼したところ、了解が得られた。
BPOでは、川端委員長の前文を付してBPOのホームページにアップするとともに、2月15日発行の「BPO報告」(NO.93)の3ページ以降にこの報告書を掲載した。(全文はこちら[PDF])
pdf

政治的公平性が問題になった在京テレビ局の討論番組

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている政治討論番組が放送された。政治的公平性から見ておかしいのではないか、との視聴者意見が寄せられた。
当該局によると、番組編成上同様のレギュラー番組が複数あり、その中で政治的公平性を保つようバランスを取っているとの説明であった。委員会はそれを検証するために関係する番組と説明書を提出してもらい、討議を継続することにした。

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』および毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(1)

テレビ東京は、酵素飲料を飲むことにより、ダイエットに成功したと紹介された女性は、その飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。毎日放送は、15億円でホテルを買収しようとする富豪女性が紹介されたが、そのホテルを宣伝するための作り話ではないかと視聴者から指摘があった事案である。
前回の委員会では、この2事案については事実の確認と演出方法に共通する問題点があるので、一括して審議入りすることにした。
主に両番組の制作スタッフを対象にして、2人の担当委員によってヒアリングを実施し、その経緯を委員会に報告した。その報告によると、出演者の選定プロセスが安易であることや情報・事実に対する認識に甘さがあること、また、制作スタッフ間でのコミュニケーション不足などが指摘され、制作体制上、共通する問題点が明らかになってきた。

所有者の確認が不十分だった毎日放送『イチハチ』(2)

世間の常識と隔絶したセレブたちの豪勢な生活ぶりを紹介するスペシャル番組の中で、ニューヨークに23件の不動産を持つという女性を紹介した。ニューヨークの豪華なコンドミニアムをその女性の案内で取材・放送したが、視聴者から「紹介されたコンドミニアムは彼女の所有物件ではない」との情報が当該局に寄せられた。当該局が独自に調査した結果、「女性の所有であることが証明できず、事実と異なる放送をした可能性が高い」と公表した。
委員会では、当該局からの報告書を元に討議した結果、制作過程において前回審議入りを決めた同じ番組の「ホテル購入話」と通底する問題があるのではないかとの判断から、テレビ東京と毎日放送の前記2番組とあわせて3つの番組をまとめて審議することにした。

【委員の主な意見】

  • これらの問題の中核は、セレブな出演者の話を鵜呑みにすることにある。事実確認とか取材がおろそかになり、出演者をどう扱うかということが制作の中心になってしまっている。
  • 出演者に嫌われたくないという制作者の気持ちの根底には、この人のお蔭で番組を成立させてもらっている、ネタを貰っているという意識が厳然とあるのではないか。
  • このような企画に登場するセレブな出演者について、制作サイドは芸能人であるという認識を持っているようだ。しかし、視聴者にとっては、一般人の中にこのような人がいると理解するのだから、当然、裏取りはしなければならない。
  • スタジオトークに留まらず、実際にあるリアルな世界に取材に出るという選択をした段階で、テレビと関係ない世界との関わりが出てくる。そこに対してどういう責任を果たすかという認識がない。
  • バラエティー番組であるし、トーク全体が駄法螺話だから、厳密に取材しなくてもよいのではないかという議論が現場にあるのだろうか。
  • この問題は明確に倫理違反とまで言えるかどうか。事実誤認になる可能性はあるけれども、本当に事実誤認であるかどうかは、委員会は立証できない。
  • 放送界が、情報という人参を結局うまく利用されているのではないだろうか。商品として利用されているものもあれば、芸能人になるステップに利用されているものもある。

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

『news every.サタデー』(1月8日放送)のコーナー企画で、新しいペットビジネスとしてペットサロンとペット保険を取り上げた。犬を連れてそれぞれの店を訪れた2人の女性客を取材したが、この女性はペットビジネスを展開する運営会社の社員だったことが、放送後に局に寄せられた視聴者意見で判明した。当該局は2週間後(1月22日)にお詫び放送をして視聴者に謝罪した。
当該局から委員会に提出された報告書によると、取材したディレクターは、2人の女性客が運営会社の社員だと知りながら、時間の制約もあって取材・放送したという。
委員からは、ニュース現場の報道モラルはどうなっているのか、誰もこのミスに気づかなかったのはなぜか、一昨年の「バンキシャ!」問題のあと示された再発防止策は機能しているのだろうか、などの指摘があった。
委員会は、同様の問題が繰り返された背景や原因などを検証するために審議入りすることにした。

【委員の主な意見】

  • 情報バラエティー番組について、事実を正確に伝えることの重要性を議論しているが、正確さが命のニュース番組でも同じような問題が起きてしまった。ニュース現場の劣化、報道モラルの低下を指摘せざるを得ない。
  • ニュースを伝える者としての主体性が全く感じられない。どんな手段や方法であっても、とにかく映像さえ撮れればいいという安易さには憮然たる思いがする。
  • この担当ディレクターは社員ではないということだが、なぜ先輩やデスクに相談をしなかったのだろうか。職場内のコミュニケーションそのものが、日常的に機能していないということなのか。
  • ひとりの判断ミスにだれも気づかず、問題のある放送がそのまま放送されてしまった。軽い話題やトピックスでも、許されることではない。
  • 「バンキシャ!」問題は、情報の裏付けが不十分で、結果的には誤報になったが、取材者にはチャレンジする姿勢が感じられた。その意味では、今回の事案のほうが問題の根は深いともいえる。
  • 「バンキシャ!」の誤報問題のあと、さまざまな再発防止策が打ち出され、社内の研修なども充実させたということだったが、どこまで機能しているのか。大きな代償を払って得たはずの教訓は、本当に生かされているのだろうか。

以上

第45回 放送倫理検証委員会

第45回 – 2011年1月

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送のバラエティー番組 『イチハチ』…など

第45回放送倫理検証委員会は1月14日に開催された。
フジテレビの『Mr.サンデー』事案では、当該局から提出された詳細な報告書は、今後同様の事案が発生した時の参考にもなるし、ひいては再発防止の効果も期待できると思われるので、委員会としてこの報告書を公表することの可否を照会したところ、当該局の了解が得られた。それを前提に検討した結果、この事案は、問題の性質、影響度、放送後の対応等を総合的に考慮し、当該局の報告書を公表して、討議を終了することにした。
前回の委員会で継続討議にした以下の2つの番組は、取材方法に問題があり、視聴者に誤解を与えるような内容であった。類似した事案であることから、まとめて審議入りすることに決定した。

  • 毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(10年11月17日放送)
    8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介したが、その中で、ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介された。視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった事案。
  • テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)
    酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。

議事の詳細

日時
2011年 1月14日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、石井委員、香山委員、是枝委員 重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌に関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、街で偶然見つけたかのように放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。
前回の委員会で、当該局から出された社員研修用の詳細な報告書が、単なる監視体制の強化ではなく、現場の自覚と自発的な取り組みを強調していることなどを評価し、これを公表すれば、他の放送局でこうした事案が発生した場合に、調査の方法やあるべき解決策の指針として役立つのではないか、また、この報告書を他局でも研修等の素材とすることで事前に問題点がチェックでき、同種事案の再発防止にも役立つのではないかという意見が多く出された。そこで委員会から公表の可否を照会したところ、当該局から公表の了解が得られた。
委員会では、この事案で問題となった手法が、審議入りを見送ることで今後も安易に使われる可能性があるなど、この事案の持つ問題の性質・広汎性・影響度を考慮するとともに、これまで生じた同様の事案との軽重を比較検討した。この番組が取り上げた月刊女性ファッション誌が付録のバッグの人気でヒットしているという社会現象自体は現実に存在すること、更に当該局から再発防止に有効だと思われる報告書(社内向けで本来非公開)の公表に協力が得られたことなどを総合的に判断したうえで、審議入りしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • 放送により社会に与えた影響が大きいか小さいかという点と、事が起きた後に局がどのように対応したかは大切なポイントだと思う。これまでの事案に照らして、取り上げなくて良いと思う。
  • 当該局の報告書が厚ければ良いのか、そういう判断基準だと誤解されないかという疑問がないわけではない。しかし現場のスタッフが再発防止のために第三者委員会を作って話し合った結果として考えるならば、よく出来ていると思う。現場のディレクターが何を考えてこうなってしまったかが良く分かる。
  • この報告書の水準で各局がやってくれたら、それがどんどんテレビ界に広まってくれたら、委員会としてはありがたい。
  • こういった問題は、「嘘じゃなくて演出の範囲だ。他もやっている」といった反応も予測出来るが、当該局は不適切表現で、やるべき演出方法ではないという認識を示した。こういった真面目な対応は評価できる。
  • 過去の事案で他局から提出された報告書と比較しても、今回は内容的に充実していると思う。そこを評価しないと、「では、どうすればよいのか」という事になってしまう。

【フジテレビ『Mr.サンデー』の社内研修用報告書】

フジテレビから公表する了解が得られた社内研修用の報告書「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」は、放送倫理検証委員会の川端委員長の前文を付して、2011年2月16日、ホームページ上に公表した。また、BPO報告No.93にも掲載されている。

pdf公表にあたって_- 委員長前文
pdfフジテレビの報告書 - 「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送の
バラエティー番組 『イチハチ』

昨年の11月17日に放送された『イチハチ』で、富豪の女性が九州にあるホテルを買収するために折衝する模様が放送されたが、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと、視聴者から指摘された事案。当該局からの経緯報告書や新たに提出された資料を基に議論を行った結果、放送倫理上の問題があり、より詳しい事実関係を関係者からヒアリングする必要があるとして、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

昨年の11月8日に放送された『月曜プレミア!』で、酵素飲料を飲み、断食と組み合わせた方法でダイエットに成功した女性が紹介されたが、この女性がその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明した事案。当該局からは、前回委員会に提出した経過報告書に次いで、あらためて詳細な内部調査を行った結果をまとめた報告書が提出された。
毎日放送の事案同様、放送倫理上の問題があり、制作プロセスや事実関係の確認が必要だと判断し、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

【上記2事案に関する委員の主な意見】

  • 制作担当者のチェックが甘かったことが原因で、出演者が仕掛けたわけではないのに、番組が出演者の商売として有利に作用するという結果をもたらした。そういう意味では、2つの番組には共通性がある。
  • 個人であれ企業であれ、取材対象者がメディアを有効利用しようという意図を持っている場合があることを否定することはできない。しかしそれはメディア側のチェックの問題だ。
  • 番組制作者は、出演者の取捨選択についてきちんと判断しなければならないが、その能力が劣化しているのではないか。
  • 民放連の放送基準のなかに、宣伝になるようなものは放送してはいけないという項目(37条)があるのに、「結果的に利用されちゃったね、おしまい」というのはおかしい。気が付いた人が調べればすぐに分かるのに、あなた任せが蔓延している。制作担当者が調べるべきところを自分がやってしまうと現場スタッフの士気が下がる、といった遠慮があるのだろうか。

上記2番組について委員会は、バラエティー番組や情報番組などの番組ジャンルを問わず、テーマの取材対象として取り上げるかどうかを吟味するリサーチの段階で、事実関係や情報の精査がおろそかになっているのではないかとの危惧感を抱いた。この2番組については、共通の問題点があり、それが視聴者の信頼を失うことに繋がるのではないかという観点から、今後、一括して審議入りすることとした。

以上

第44回 放送倫理検証委員会

第44回 – 2010年12月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』…など

第44回放送倫理検証委員会は12月10日に開催された。12月2日に通知公表が行われた参議院選挙事案については、報道された新聞記事やテレビ番組を見た上で意見交換を行った。
女性誌が付録につけたバッグ関連の取材で、やらせの疑惑が持たれたフジテレビの『Mr.サンデー』について、当該局のプロジェクトチームが社員研修用に作成した報告書が新たに提出されたので討議した。委員の間では評価できる内容だという意見が多かったので、当該局に対してその報告書を公表する意思があるかどうかを確認した上で、今後の対応を決めることにした。
8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介するバラエティー番組。ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介されたが、視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった。誤解を与えるような取材方法や事実関係について継続して討議することにした。
テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)で、酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。当該局で内部調査が行われており、次の委員会までに詳細な報告書が提出される予定なので、討議は次回に持ち越すこととした。

議事の詳細

日時
2010年12月10日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、是枝委員 立花委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

さきの参議院選挙(7月11日投票)に関連して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた4番組の事案は、12月2日に当該4局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。担当委員からそれに関する報告があり、続いて報道された新聞記事とテレビ番組を視聴した上で意見交換を行った。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌が付録につけるバッグがブレイクしていることに関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、偶然に街で見つけたかのようにして放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。当該局の「再発防止プロジェクトチーム」が、本事案の問題点を詳細に検証し、社内の制作セクションに向けて作成した報告書が新たに提出された。委員からはこの報告書は評価でき、委員会がこれを公表することによって、全放送局にわたり再発防止が期待できるのではないか、という意見が出された。

【委員の主な意見】

  • 今回の社内向け報告書は、他の番組を含めてすべての現場で徹底的に議論しようという姿勢が貫かれているところは評価できる。
  • この報告書は事実経緯がよく調べられ、問題点も指摘されている。今後、このような事案が発生した局は、この報告書をお手本にすべきだ、という事例として公表できないだろうか。
  • これまで提出された報告書は、監視体制を強めますというワンパターンだったのに比べれば、今回のものは委員会が言い続けている現場で討論することによりスタッフの自覚を促すというやり方に近い。そういう意味で評価できる。
  • 「事実をありのまま伝える」という基本的な取材姿勢が欠けていた点に問題がある。報告書によると取材者は「(街で見つけた)15人に(あらかじめ用意した)3人を足したのは何故か」と漠然と思っているだけだ。報告書では、なぜ肝心のその分析をしなかったのだろうか。
  • (放送基準解説書の)情報系番組において虚偽が許されないという箇所に該当するし、演出過剰であるということは指摘できる。
  • 制作スタッフの中に、これはおかしいと思った人が複数いながら、積極的に止める手段はとらず、見逃してしまう結果となった。何故そうなったのか、構造上の問題があるのではないか。
  • この社内向け報告書は、担当ディレクターがきちんとした倫理意識を持っていなかったからだと、個人の資質のせいにしているが、むしろそこが問題ではないか。

委員会は当該局に対して、委員会による報告書の公開を打診し、その結果次第で今後どのように討論を続けるかを決めることにした。

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われたバラエティー番組

「世間の常識から外れたセレブな女性のお買い物」というテーマで、8人の若い女性が2週にわたって紹介された。それについて、視聴者から内容に疑問があると、複数の意見が寄せられた。
そのうちの1人で、以前宿泊したホテルが気に入ったので、そのホテルを買収したいという女性に密着。番組では、ホテル側との折衝シーンが流され、あたかも買収話が進んでいるかのように構成されているが、視聴者から、買収話はウソであり宣伝のための話題つくりではないかとの指摘があった。さらに、放送後、買収話が進んでいると信じた利用客からホテルに対して問い合わせが相次いだ。
ホテル側は売却の意思がないことや取材に協力したことなどをブログに載せて対応した。また、そのセレブ女性の周辺関係者が、ホテルのオーナーの肉親であることが明らかになった。
取材方法や事実関係を精査するために、討議を継続することにした。

【委員の主な意見】

  • 放送人の自主・自律性の問題であり、取材・制作の過程できちんとした倫理に基づいて制作していたのか疑問がある。
  • 放送前に、そのセレブ女性が所属する事務所から、制作会社のプロデューサーには、「売却の話はなさそうだ」という情報が伝わっていたが、その情報が局の担当者には伝わっていない。そこも問題だ。
  • バラエティー番組であったとしても、「事実」を扱う場合は、それをねじ曲げないように最大限の配慮が必要だ。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組
  『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

11月8日放送の『月曜プレミア!』で、野菜や果物を発酵させた酵素飲料を飲み、断食と組み合わせたダイエットを体験して、減量や美容の増進に成功したという女性が紹介された。ところが放送後に、この女性はその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明し、当該局は取材時の確認作業に不手際があったことを認めた。
事案の概要を記した経緯書が委員会に提出されたが、事実関係についての詳細な内部調査が進められている最中であり、詳しい報告書を待つことにした。
新たな討議事案も含めて、バラエティー番組でも事実を扱う場合は、正確な情報に基づいて制作されなければならないのに、肝心の情報の確認や取材の方法に共通した問題があるという指摘が委員の間から相次いだ。当該局からの詳細な報告書の提出を求めるなどした上で、次回の委員会で討議を継続することにした。

以上

第43回 放送倫理検証委員会

第43回 – 2010年11月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』…など

第43回放送倫理検証委員会は11月12日に開催された。今夏に行われた参議院選挙関連の放送で、公平・公正性に疑念が持たれた報道番組および情報番組の合計4番組について3回目の審議を行った。その結果、担当委員が作成した決定文案について委員会の合意が得られたので、12月上旬に当該4局に対して通知した上で記者発表する運びとなった。 付録にバックをつけることで売り上げが伸びている女性誌関連のインタビュー取材で、視聴者から不自然な映像が指摘され、やらせの疑惑が持たれたフジテレビの『Mr.サンデー』について討議した。過去にも他局で同様の事案があり、議論はそれとの関連にも及んだが、当該局から新たに提出される報告書を待って、改めて討議することにした。 10月22日に開催された「在阪局・BPO検証委 意見交換会」(詳細は90号参照)について、意見交換会に参加した在阪各局から意見や感想が寄せられたので事務局から報告した。 事務局からは、11月10日に行われた総務省のフォーラムはまとめの段階に入り、今まで出された意見を集約したうえで座長の見解を添えて総務大臣に提出される見通しであることを報告した。

議事の詳細

日時
2010年11月12日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、重松委員 立花委員、服部委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた報道2番組(長野朝日放送、信越放送)と情報バラエティー2番組(TBS、BSジャパン)の事案について、前回の審議をふまえて、担当委員から決定文の修正案が提出された。
この4番組には、参議院比例代表選挙の趣旨を正しく理解せずに制作したと思われるものから、単純な過失と見られるものまで、放送の公平・公正性に関する疑念の程度には差があるが、民主主義の根幹を成す選挙に関わる放送であるのに、公平・公正性を損なわないよう制作するという根本的倫理が十分に尊重されていないという点では、共通の問題があることから4番組を一括した形で委員会決定とすることが、今回の審議で改めて確認された。
一方、TBSのバラエティー番組『アッコにおまかせ』(6月6日放送)の中でも、参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念がもたれる内容があったことが審議の過程で明らかになり、決定文で指摘することになった。
当該4局に対する委員会決定の通知と公表の記者会見は、12月上旬に行うことにした。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

付録にデザイナーズバッグを付けることで販売部数を伸ばしている女性誌に関して、フジテレビの情報番組『Mr.サンデー』が、インタビュー取材を2回にわたって放送(8月8日、9月26日)したところ、視聴者から「場所が異なる2ヶ所の取材現場に同じ女性が映っている」などとやらせ疑惑が指摘された。当該局が調査した結果、制作スタッフが複数の女性を事前に仕込んで撮影したことがわかったので、お詫び放送(10月17日)をするとともに、委員会に対し詳細な報告書を提出した。
これと同様の取材方法が、去年・今年と名古屋のテレビ局において採られており、委員会はBPO報告に記載して注意を喚起した。にもかかわらず、同様の事案が起きたことに委員会は危惧を抱き、過去の事例を踏まえて討議した。

【委員の主な意見】

  • 問題は髪型を変えて2度も出てくる女性で、仕込み過剰だ。特定の女性をそうまでして出すのは、普通ではない。「やらせ」と同じことだ。
  • こういう取材では、あるがままに表現すれば良いと思う。そうではない取材方法に走ってしまう理由が分からない。
  • 日本のメディアは「やらせ」にアレルギー反応があって、すごく潔癖になっている。それは虚偽放送の抑止力になっているが、この事例は「やらせ」と言われるのを回避するために、無理やり通行人に聞いてみたという形式にしてしまったのではないか。
  • バッグを持った通行人を15人も見つけたなら、そのほかに事前調査で判明した愛好者を3人連れてきて、意見を聞きましたと正直なストーリーにすればよい。なぜ通行人18人にこだわったのか。
  • 最近、雑誌にバッグや景品をつけるというのは凄まじい現象になっている。その現象自体について虚偽を言ったわけではない。
  • こういった取材方法が、このまま広がっていったらまずい事になるというのはわかる。しかし、過去にあった捏造事案と比較すると、手法選択の間違い、数の水増し、連絡体制の問題はあるにしても、この事例は軽いと思う。
  • 演出はある程度、番組に必要だと思う。どこまで許されるかと いう程度問題ではないか。
  • 街頭でインタビューして意図しない答えが返ってくることが、実は、取材者を鍛えてゆく。しかし今回のように、コメントや映像を仕込んで済まそうとすることが、取材、制作の弱さになって行き、非常に大きな不祥事を起こす土壌になる。
  • 当該局は、問題点の検証と再発防止に向けたプロジェクトチームを立ち上げ、報告書をまとめることにしている。委員会ではそれを受けてさらに議論を重ねることした。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

10月22日に大阪の読売テレビで開催した「在阪局・BPO検証委意見交換会」に関して、在阪各局の出席者から事務局へ意見や感想が寄せられたので委員会に報告した。これらの意見を参考にして、次回以降開催する地方における意見交換会の材料にする予定である。

以上

第42回 放送倫理検証委員会

第42回 – 2010年8月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

5カ月間で3回のお詫び放送をしたTBSの『がっちりアカデミー!!』…など

第42回放送倫理検証委員会は10月8日に開催された。放送の公平・公正性に疑念が持たれた参議院選挙に関する4番組(2つの報道番組と2つの情報バラエティー番組)については、当該4局に対して実施したヒアリングの報告と、担当委員が作成した決定文案の審議を行った。その結果、決定文の方向性が固まったので、次回の委員会までに修正案を作成し、再度審議することにした。
5ヶ月の間にお詫び、訂正放送を3回繰り返したTBS『がっちりアカデミー!!』については、当該局から提出された再発防止の取り組みを検討した結果、それを了承して討議を終えることにした。
「在阪局・BPO 検証委 意見交換会」については、議論の材料にするために在阪局に依頼したアンケート結果を集約して委員に配布するとともに、テーマや進行方法について、委員と事務局が意見を交わした。
事務局からは、8月25日に行われた総務省のフォーラムに、BPOの活動内容を正しく理解してもらうための補足説明書を提出したことを報告した。

議事の詳細

日時
2010年10月 8日(金) 午後5時~7時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、2つのニュース番組と2つの情報バラエティー番組は、放送の公平・公正性に疑念が持たれたため、前回審議入りした。この事案について、担当委員が9月下旬、当該4放送局に対するヒアリングを実施した上で作成した決定文案を中心に審議を行った。
審議の対象になったのは、以下の4番組である。

  • 長野朝日放送『abnステーション』(6月22日放送)
  • 信越放送『SBCニュースワイド』(7月8日放送)
  • TBS『関口宏の東京フレンドパークII』(6月28日放送)
  • BSジャパン『絶景に感動! 思わず一句 初夏ぶらり旅』(7月11日放送)

上記4番組は、公平・公正性に関する疑念を生じさせる程度が相当異なり、参議院比例代表選挙の趣旨を正しく理解せずに制作した結果、公平・公正性に重大な疑問を生じさせているものから、単純な過失と見られるものまでバラツキがある。またヒアリングの結果、問題の認識や受け止め方にも局間で差異があることが判明した。
いずれにせよ、民主主義の根幹を成す選挙に関わる放送は十分に慎重でなければならない。当委員会は、今年5月の第38回委員会でも、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)で選挙の事前運動と受け取られかねない放送が行われた事案を討議した。この事案は審議入りこそしなかったものの、参議院選挙を間近に控えていることもあり、委員会は「BPO報告」に詳しく記載して全放送局に注意喚起を求めた。
にもかかわらず、その意図が放送現場に届かなかったという自省も込めて、当委員会は今回の審議事案の決定文で、改めて全ての放送局に注意を喚起して、公平・公正性に対するきめ細かな配慮や、再発を防ぐための目配りを、強く求めることにした。
なお、次回の委員会までに、担当委員によって修正案が作成される。

5カ月間で3回のお詫び放送をしたTBSの『がっちりアカデミー!!』

この番組は既報のように、5カ月間で事実に反する説明や不適正な編集など3回のミスがあり、そのたびにお詫び放送をしている。委員会は前回 の討議で、番組制作過程におけるチェック方法に問題があると判断し、どのような対策を講じて実施したかについて報告を求めた。
当該局からは「この問題ではA弁護士のアドバイスを受けた、B協会やC役所に確認した」など、委員会が指摘した後の放送について、詳細かつ具体的なチェック内容を記した報告書が提出された。その後はミスが出ておらず、委員会はこのままの状態が継続することを期待して、当該局の対応を了承し、討議を終えることにした。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

10月22日(金)に大阪の読売テレビで開催することになった「在阪局・BPO検証委 意見交換会」での議論の材料とするため、在阪各局に対し実施したアンケート結果を集約し、各委員に配付した。会合のテーマを3つに絞ることや進行方法などについて、委員と事務局が意見を交わした。

■在阪局との意見交換会開く 検証委初の試みに11局84人参加

「在阪局・BPO検証委 意見交換会」が10月22日、読売テレビの1階ホールで開かれ、予定の3時間を超えて意見が交わされた。
開催に当たっては、在阪局以外にも、関西圏の局に案内を出した結果、制作現場で中核的な役割を担っているデスクやプロデューサーを中心に11局84人の参加があった。
委員会側からは、川端委員長、吉岡委員長代行をはじめ、重松、立花、服部、水島委員のあわせて6名が参加した(事務局除く)。
意見交換会は、双方が率直な意見を述べることにより、相互の理解を深めるという趣旨から、非公開とした。開催にあたり在阪局にアンケートを行い、100通近い回答の結果に基づき、次の3つのテーマを設定することにした。

  • 放送局と委員会の距離 ~検証委員会は放送局より偉いのか?~
  • 委員会の思いと現場の言い分 ~委員会決定は現場に届いているのか?~
  • 放送局に明日はあるのか ~表現の自由を守るために~

会は、各テーマの合間に各委員からの5分コメントをはさんで進行された。
テーマ2の意見交換では予定時間をオーバーするほど活発な発言があった。最後に川端委員長のまとめのコメントがあり、約15分押しで閉会となった。
意見交換会に引き続いて、各局の経営者の方々も参加して懇親会が行われた。そこでは「3時間はあっという間に過ぎ、話し足りなかった」「画面や活字でしか接する機会がない委員から、生で話が聞けたことは有意義だった」といった在阪局からの声が聞かれた。
検証委員会と東京以外の放送局との意見交換会の開催は、今回が初めての試みであったが、在阪各局の熱意と協力によって会は活況を呈することとなった。委員会としては、今後も年に一度くらいの割合で、このような会を各地で開催する予定である。

以上

第41回 放送倫理検証委員会

第41回 – 2010年9月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与を批判したテレビ東京の『週刊ニュース新書』…など

第41回放送倫理検証委員会は9月10日に開催された。
まず、7月に行われた参議院選挙をめぐって、放送の公平・公正性に疑念が持たれた2つの報道番組と2つのバラエティー系情報番組について討議した。その結果、4番組をまとめて審議入りすることとし、当該局に対してヒアリングを実施することになった。
昨年11月にテレビ東京の報道番組『週刊ニュース新書』で、岡崎市がいわゆる貧困ビジネスに不正に関与していると報道した。岡崎市はそのような事実はないと反発し、両者間で話し合いが続けられていたが決着がつかず、岡崎市側から、議論を再開してほしいと要望があった。討議の結果、事実関係に争いがあるが、この事件についてどちらの言い分が正しいかを認定することは当委員会の役割ではないという結論となった。
TBSの『がっちりアカデミー!!』は、この4月にスタートした番組であるが、5カ月の間にお詫び、訂正放送が3回も繰り返されたのは、番組の制作・チェック体制に問題があるのではないかという意見が相次いだ。今後どのような再発防止策を実施するのかについて当該局に報告を求め、推移を見守ることにした。
TBSの情報生番組『ひるおび!』で、ある政治家がツイッターを始めたと放送したが、政治家本人に確認しておらず、結局”なりすましツイッター”であることがわかった。同番組内で訂正されたが、取材の基本である事実確認を怠らないようBPO報告に記載して、注意を喚起することにした。
初めて開催する在阪局と検証委員会との意見交換会について、テーマや進行方法を検討した。
事務局からは、8月25日に行われた総務省のフォーラムについて報告があった。

議事の詳細

日時
2010 年 9月10 日(金) 午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、視聴者から、以下の4つの番組は放送の公平・公正性に問題があるのではないかという意見が寄せられた。

  • 長野朝日放送『abnステーション』(6月22日放送)
  • 信越放送『SBCニュースワイド』(7月8日放送)
  • TBS『関口宏の東京フレンドパークII』(6月28日放送)
  • BSジャパン『絶景に感動! 思わず一句 初夏ぶらり旅』(7月11日放送)

上記4番組のうち、(1)と(2)はローカルニュース番組、(3)と(4)は情報バラエティー番組である。
このたびの参議院選挙比例代表には12の政党・政治団体から186人が立候補したが、長野県内で放送された(1)と(2)は、長野県に関係がある3つの政党の4人の候補者だけを取り上げ、その他の政党や候補者には言及しなかった点に問題がある。参議院比例代表選挙には制度上長野県という区切りを入れる余地がないので、ことさらに長野県関係者だけを取り出して放送することは、長野県内の有権者を、長野県関係の候補者に誘導する効果を否定できない以上、それだけで選挙の公正・公平性の問題が生じる。
一方、(3)は、選挙の公示期間中であるにもかかわらず、特定の改選議員の名をあげて所属政党を当てさせるクイズを出題した。
また、(4)は、あるタレント候補がリポーターを務めた3年前の旅番組を、投票日当日の夕方に再放送したという問題である。
選挙は、民主主義の根幹に関わる重大事であるが、その選挙をめぐって、公平・公正性に疑念が持たれる放送があったことは、仮にその原因が制度の理解不足や不注意であったとしても問題である。各局の放送基準でも、公平性について厳しく規定されている。委員会としては、以上の4番組を一括して審議入りし、当該局へのヒアリングを実施したうえで、「意見」を述べることにした。

【委員の主な意見】

  • 参院選の比例代表の非拘束名簿について、番組で選挙民に知らせたいというのは問題ない。でも、そのサンプルとして県連所属という区切りで県内の候補だけを取り上げると、ほかの候補者との関係でどうしたって公平性を害することになる。
  • 参議院の比例代表区には、県という区切りは何の意味も持たない。しかし、この2つのニュースでは、それが何か意味のある区切りであるかのように報道されていることが問題だ。
  • 選挙制度を当該局が正しく理解しているのかを議論する以前に、当該局側がいずれも放送の時点では、ルール違反をしたと思っていないことが問題ではないか。民放連やNHKの放送基準、いろいろな法的な規定について無頓着であるということは、放送の自由の上にあぐらをかいているんじゃないかと思われても仕方ない。
  • 信越放送のほうは投票日3日前の放送という問題があるが、中身を比べてみたら、4人の候補者間の公平という点では長野朝日放送のほうがはるかに問題が大きい。参議院の非拘束名簿のもとではありえない区切り方を放送局が勝手にやったことによって、ああいう放送が可能になったのだから。
  • これは氷山の一角で、ほかのローカル局でもあるかもしれないということを前提にすべきだ。とりあえず、俎上にあがっているニュースの2番組は選挙制度を理解しない結果として公平・公正性を害している。ほかにもあるかもしれないので、注意喚起のために取り上げざるをえない。
  • 2つのニュース番組については、選挙制度上認められない内容であったために、公正性を害したという倫理違反が考えられる。バラエティー系の2番組は、本来チェックされるべきものがチェックされないで素通りしているという、そういう不注意が問題だ。
  • 視聴者の、ある種リテラシーみたいなものを喚起するためにも、こういう放送はいけないのだと公表することには意味があるように思う。
  • 選挙の公平・公正性というのは民主主義の基本だから、それを最大限、尊重するような放送をしなければいけないのに、こういう放送がなされているのは、どこかが緩んでいるのではないか。メディアにはそういう責任がある。

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与を批判したテレビ東京の『週刊ニュース新書』

昨年12月と今年の1月に、委員会で討議した事案。 昨年11月28日に放送された「”貧困”を食い物に……行政の闇」は、岡崎市と無料低額宿泊所の業者とが癒着して、生活保護を受けている入居者を苦しめていると伝えた。それに対して岡崎市が反論し、岡崎市とテレビ東京との間で解決に向けて話し合いが継続されていたので、委員会としては推移を見守ることにしたが、8月に話し合いが決裂。岡崎市から、検証委員会で議論を再開してほしいと要請が出された。
この事案では、果たして意図的な「誇張」や「ゆがめられた表現」があるのかについて、両者の主張に食い違いがある。そのどちらが正しいかという事実認定や裁定を行うことは、当委員会の任務ではない。両者の主張が平行線をたどる中で、この先委員会が議論を行っても意味がないとして、討議を終えることにした。

5カ月間で3回のお詫び放送をしたTBSの『がっちりアカデミー!!』

8月13日の放送の『がっちりアカデミー!!』のテーマは自己破産で、自己破産者は給料の4分の1が、1カ月間差し押さえられると誤った情報を流した。
翌週お詫び放送をしたが、その訂正自体が不正確で誤解を生むものだった。討議の結果、訂正放送もされているし、法律の専門家を監修者に加えるという対策もとられているので、この放送だけを審議案件とはしないことにした。
しかし、この番組は開始以来5カ月で事実関係においてミスが3回あり、3回お詫び放送をしている。過去の2回は、4月16日放送の「薬の説明書」と「お薬手帳」との取り違い、6月18日放送のテスト答案に関する編集ミスである。番組のチェック体制に問題があると判断せざるを得ず、対策の実施状況報告の提出を求めるとともに、委員の意見を詳しく載せて推移を見守ることにした。

【委員の主な意見】

  • 今回の放送の訂正放送自体にも事実誤認がある。自己破産が認められても、免責決定がなされなかったら、責任を免れることはできない。
  • 「裁判所が破産と言うと借金が棒引きになります」というコメントは誤りだ。破産の手続と免責の手続は全然違う手続だ。もっと慎重に制作すべきではないか。
  • 普通、お詫び訂正放送のこういう文章を作る時には、一応、法律の専門家のアドバイスを受けるべきではないのか。
  • お詫びと訂正で「出演者の発言にこうありましたけども、こう訂正します」とはっきり言わないと、どこがどう訂正なのか、これでは次の回しか見てない人には分からない。
  • これだけ続くと、ちょっと酷い。どこかが壊れたんじゃないかなと思ってしまう。金属疲労というレベルではなくて。
  • 多分、番組の作りの構造として、リサーチャーがいて法律事務所などの調査は全部その人たちがやり、まとめたペーパーはディレクターに渡す。出演者のコメントは構成作家が別に書く。こういった、寄せ集めて作っていく悪い面がこの番組には出ていて、リサーチャーがコメント原稿をチェックできる状況になく、最初の情報が人を経るごとに変わっていった。その結果が、今回の間違ったコメントになったと思われる。
  • 現場の感覚として、番組スタート以来何カ月間も監修者を付けずにやってきてしまったことが、一番の問題だと思う。この手の番組をやるのであれば、普通は最初に監修者を付けると思うが。
  • 不注意が原因、派生する問題が小さい、すぐに訂正した、という事案の場合、過去の例からすると、取り上げないという方に行くけれど、わずか5カ月で3回目だとそうもいかないか…
  • 日本の場合、法的な知識のレベルが、少数の専門家以外はガクッと低いということがある。いい加減な専門家に聞いて、そのいい加減な専門家の回答を理解できないまま勝手に誤解して放送するという問題だ。これはある意味で、根は深いのかもしれない。

“なりすましツイッター”を本物と誤報したTBSの『ひるおび!』

TBSの生の情報番組『ひるおび!』(9月6日放送)で、ある政治家がツイッターを始めたと放送したが、そのコーナー終了直後に社内からの指摘を受け、当該政治家の事務所に電話で聞いたところ誤報であることが判明した。番組では25分後にお詫びをした。有名人に成りすましたツイッターが横行している中、報道の原則である確認をせずに放送したことについて、注意喚起を求めることとした。

【委員の主な意見】

  • 元農水大臣の時の事案が生かされてない。局内で何の情報も伝わってないということは、この局には、BPOが何をやっても伝わらないのだと思ってしまう。
  • お詫びをする対象というのは、本来、視聴者であるはずなのに、そうではなくてその政治家に謝ったのではないかと受け取れる。
  • ブラックノートの時の回答書に、何か問題が起きた時には、かなりいろいろな人を集めて、仰々しい会議を開きますと書いてあった。それが実行されていれば、本当はセクションを超えて連絡が行われていなければいけないはずだ。
  • ツイッターには有名人のなりすましが多いので必ず確認が必要という基本常識がないことが問題。
    ケアレスミスが多すぎる。バラエティーでやったように、いつもトラッシュボックスがあって、その中からまたいろんなものをやるというシステムが必要かもしれない。
  • こういう情報番組でも、自分が直接取材で得た情報ではない、新聞記事とかを読んで番組を作ることがある。その手法が一般化してしまったので、取材源に当たるとか確認を取るという基本原則がなくなったのだと思う。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

意見交換会は10月22日(金)に大阪の讀賣テレビの大会議室で行うことに決まった。放送局、検証委員会がそれぞれ常日頃思っている疑問や要望などについての質疑応答を行う予定。また、そのための材料として放送局側から事前にアンケートを提出してもらい、それに基づいていくつかのテーマを設定することにした。

以上

第40回 放送倫理検証委員会

第40回 – 2010年7月

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュース番組

寝起き時の脳の働きを調べる実験データに改竄があったTBSの『がっちりアカデミー』…など

第40回放送倫理検証委員会は7月9日に開催された。
TBSの複数の番組で放送された「農水大臣が外遊先でゴルフをしていた」という報道が誤報であった事案について、当該局から提出された経緯報告書をもとに、2回目の討議を行った。その結果、取材で得た情報がニュースデスクに共有されないなど、重大なミスが内在していたこと、お詫び放送の伝え方に不備があったことなどが、改めて指摘された。委員会として審議入りはしないが、当該局に対するウォーニングとして、議論の内容をBPO報告で詳しく紹介することにした。
バラエティー番組で、睡眠から目覚めたときの脳の働きについて、被験者のペーパーテストで調べる実験を行ったが、間違ったテスト結果が放送された。制作過程のミスであり社会的な影響もないので取り上げないこととした。
参議院選挙に関する放送で、比例代表の特定の候補者だけ取り上げて紹介した報道番組や、候補者の名前をクイズ問題に出したバラエティー番組等に、公平公正の観点から疑問があると、視聴者から指摘が寄せられた。これらの番組については、当該局から報告書を提出してもらった上で、次の委員会でまとめて討議することにした。
委員会が4月に出したTBSのブラックノート事案の「意見」に対して、当該局から改善策が提出されたので検討の結果、了承することで一致した。
東京以外の放送局と検証委員会との意見交換会について検討した結果、開催にむけて準備に入ることとした。
事務局からは、この夏に開催される2つの勉強会の案内があった。

議事の詳細

日時
2010年 7月 9日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュース番組

TBSは5月20日の『朝ズバッ!』およびその他のニュース枠で、複数の民主党幹部の取材に対する発言をもとに、口蹄疫発生後に中南米に外遊した当時の農水大臣が外遊先でゴルフをしていたと報じた。しかし、その後誤報であることが判明したとして、当日昼前のニュースでお詫び放送をし、社内処分も実施した事案。
委員会は、取材から放送に至る経緯の説明には明確でない部分があるとして、改めて当該局に質問書を出し、提出された詳細な経緯報告書をもとに、2回目の討議を行った。
報告書の中で当該局は、「記者が取材先で得た重要な情報が、ニュースデスクに伝わっていなかったこと」「記者の思い込みなどから、裏付け取材が不十分だったこと」などを認める一方、番組の制作担当者の連絡ミスからニュース原稿は”民主党幹部の発言の引用”であるのに、画面表示ではゴルフをしたことが一部で断定的な表現になってしまった、などと説明している。
委員の中からは、他のメディアも同じように取材しているのにTBSだけが誤報をしたという事実を重く受け止める必要がある、現職閣僚の進退につながりうる報道なのに裏付け取材が甘い、お詫び放送の伝え方が曖昧で関係者や視聴者に対する謝罪になっていない、などの厳しい指摘が出された。
委員会は、当該局からの詳細な報告書によって、事実関係や問題点の所在がほぼ判明したこと、当該局はすでに誤報に至った原因を解明し、局内処分をし、再発防止策もとっていること、不十分とはいえ迅速なお詫び放送もなされていること、この事案を委員会が審議の対象にすることは、政治家への取材や監視を不必要に萎縮させるおそれもあり好ましくないことなどから、審議入りはしないこととしたが、当該局に注意を促すウォーニングとして、議論の内容をBPO報告などで詳しく紹介することにした。

【委員の主な意見】

  • 今回の報告書で、かなり詳細な経緯まで分かったが、記者の取材した情報が指揮をとるデスクに正しく伝わらないというのが本当だとしたら、大きな問題だ。
  • ぶら下がりなどで他社も同じような情報をキャッチしていたということだが、それではなぜTBSだけが放送に踏み切って誤報を出してしまったのか。裏付け取材の不備などと簡単に言うのではなく、重く受け止める必要がある。
  • ゴルフをしていたという情報をつかんで、これでいけるという雰囲気や思い込みのようなものが記者、キャップ、そしてデスクにも広がったのではないか。仮に民主党幹部がそう発言しても、現職閣僚のクビがかかったニュースなのだから、現地を含めて徹底的な裏付け取材をしなければ放送できないはずだ。
  • 倫理上の問題というよりも、取材者として、報道担当者としての資質の問題とも言えるのではないか。そうならば、この委員会で議論する問題ではない。
  • 当該局は最後まで、大臣が実際にゴルフをしていたかどうかの事実関係を伝えていない。伝えているのは、大臣自身が否定の会見をしたことと、民主党幹部が発言を翻したということだけ。報道機関として、事実はどうだったかをきちんと確認して、客観的に伝えるべきだった。
  • その部分がきちんと押さえられていないから、お詫び放送も、誰に何をお詫びしているのか曖昧なままになっている。
  • 今回の事案は、ファクト(事実)とクォート(引用)の関係が問題になった。もちろんクォートとしてでもニュースとして伝えるべきケースもあるが、その場合きちんと区別をして伝えなければならない。
  • 政治問題や政治家に対するメディアの監視が重要であることは、言うまでもない。誤報はむろん良くないが、誤報の原因が究明され、すでに対策も取られた事案であり、むしろメディア側が不必要に萎縮することのないよう審議入りは控えるべきではないか。
  • 確かに審議入りしての議論までは必要ではないと思うが、さまざまな課題が浮き彫りになった事案だ。当該局に注意を促す趣旨で、BPO報告やホームページなどでは、議論の中身をできるだけ詳しく紹介してほしい。

寝起き時の脳の働きを調べる実験データに改竄があったTBSの『がっちりアカデミー』

TBSのバラエティー番組『がっちりアカデミー』(6月18日)で、寝起き時の脳の働きを調べるために、深い眠りと浅い眠りではどのような違いがあるかについて、被験者のアシスタントディレクターへの簡単なペーパーテスト(計算問題)が行われた。その中で、1問目の解答が不正解であるカットが放送されたにも関わらず、結果は100点だったのはおかしい、と視聴者から指摘があった。
当該局は誤りを認めて、7月2日にお詫び放送をした。さらに当該局は、予備のカットを使ってしまったという単純な編集ミスで、意識的な数字の改竄ではないと説明している。また、この実験は厳密な科学実験ではなく、深い眠りと浅い眠りの違いをわかりやすく示すことが目的なのだから100点でも80点でも大差はなく、社会的に大きな問題があるとはいえない。勿論、編集ミスから放送にいたるまでのチェック機能が働かなかった結果、間違ったデータを放送したことについて当該局は反省すべきだが、既に非を認めて丁寧なお詫び放送をしているので、取り上げないことにした。

【委員の主な意見】

  • 視聴者が気がついたことを、編集段階で何人ものスタッフが下見しているのに気がつかないことが情けない。
  • ミスの内容は明白だし、お詫びもきちんとしている。それによって健康被害が起きたわけでもないし、社会的な影響もない。
  • この事案もそうだけれど、全体にケアレスミスが多すぎる。すみませんでしたとか、気がつきませんでしたとか。

参議院選挙に関して不適切な内容があった複数の番組

放送で選挙を扱うときは番組のジャンルに関わらず、公平公正を常に留意しなければならないが、このたびの参議院選挙においては複数の番組に対して視聴者から、公平公正の観点から疑問があるとする意見が寄せられている。番組を視聴し、当該局に報告を求めた上で、次回の委員会で一括して討議することにした。

TBSから提出された『報道特集NEXT』ブラックノート事案の改善策について

民放連の申し合わせに従い、4月に委員会意見が出された『報道特集NEXT』ブラックノート事案について、TBSから具体的な改善策を含めた取り組み状況が提出された。委員会は報告書を検討し、了承した。
なお、報告書はBPOのホームページに掲載した。

東京以外の放送局と検証委員会との意見交換会の開催

委員会の活動や決定内容を深く知ってもらうことについては前回の委員会で議論したが、広く知ってもらうために、委員が地方に出向いて意見交換をすることが提案され、初回は大阪エリアを候補地とすることで承認された。

事務局連絡

7月29日に、民放連とATPが開催する放送倫理セミナー「バラエティー番組と放送倫理」(水島委員が司会)の案内と、8月3日にBPOが開催する事例研究会の出席要領について事務局から説明があった。

以上

第39回 放送倫理検証委員会

第39回 – 2010年6月

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュースとフジテレビの『とくダネ!』

委員会の意思表明の方法について…など

TBSとフジテレビの複数の番組で放送された、農水大臣の外遊先におけるゴルフ報道が誤報であった事案について討議した。その結果、TBSについては、取材からお詫び放送までの経緯に明確でない部分があるので、当該局に質問書を出し、回答を得た上でどう扱うかを決めることとした。 委員会で審理・審議した内容は、記者発表やBPO報告で公表しているが、審理や審議に至らなかった議論の内容が、制作現場に伝わりにくいという現状について、どう改善すべきかを検討した。 事務局からは、昨年秋に続く2回目のBPO事例研究会を、8月3日に開催することを報告した。

議事の詳細

日時
2010年6月11日(金) 午後5時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、立花委員、服部委員、水島委員

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュースとフジテレビの『とくダネ!』

TBSは『朝ズバッ!』(5月20日放送)およびその他のニュース枠で、複数の民主党幹部からの証言をもとに、口蹄疫発生後に中南米に外遊した当時の農水大臣が外遊先でゴルフをしたと報じた。
しかし、農水大臣が抗議し、取材した民主党幹部も証言を翻したことから誤報であることが判明したとして、当日昼前のニュース等でお詫び放送をした事案。当該局は自主的に原因究明を行い、裏付け取材が不十分だったことや局内のチェックのミスを認めて、既に社内処分も発表している。委員会はそうした当該局の自主的な対応を理解しつつも、誤報に至った事実関係に明確でない部分があるので、当該局に対して質問書を出し、その回答を待って取り扱いを決めることとした。
フジテレビの『とくダネ!』は、TBSの報道をキャスターが引用しただけであり、お詫びもしているので取り上げないことにした。

【委員の主な意見】

  • 報道は当初、口蹄疫の問題がありながら長期間日本を留守にしたことが問題という伝え方だったが、2回3回と報道を重ねるに従って、外遊先でゴルフをしたことに重点が移っていった。ゴルフの方が責めやすいからなのか。
  • コメントでは「ゴルフをしたという民主党幹部の発言から生じた疑惑」を伝えているのに、テロップでは「農水大臣ゴルフ」と断定し、齟齬をきたしている。ファクトではなくクオート(引用)だというなら、徹底してそう表示すべきだ。
  • 記者の問いかけに対して、大臣が当初は否定せず無言であったことを、取材者側は肯定の根拠と判断したということだが、手前勝手な解釈だ。
  • 「言論の自由」の中には誤報も含まれ、それは常に起こり得ることだ。間違いが起こった場合、原因を調べ、どう対応したかが問題になる。このケースで、TBSはそれなりに対応しているし、大きな問題ではないと思う。
  • 民主党の複数の幹部の発言として「こんな時期に外遊するのはケシカラン」「その際ゴルフをした」、と報じたのは取材不足とはいえない。しかし、ゴルフについて本人が否定し、民主党の幹部も自らの発言から逃げたので、結果としてファクトではなかった。
  • TBSの取材について、どのような裏づけがあって、あのような放送になったのかは、時間軸に沿ったきちんとした説明がないと正確なことがわからない。
  • 今回のケースは、クオートのときにどういう報道の仕方なら許されるのか、本人が否定したときにどのように対応するかという問題だ。
  • お詫び放送は、TBS側の問題点に関しては頬被りして、民主党幹部が発言を変えたことに原因があると逃げているように感じる。
  • TBSは取材が不十分であったことはお詫びしているが、肝心のゴルフをしたかどうかについては触れていない。フジテレビのキャスターは農水大臣には謝るが視聴者に向いていない。

委員会の意思表明の方法について

委員会の決定内容を、放送局の一部だけの人ではなく、主に、実際に制作現場で働いている人たちに広く知ってもらうためにはどうすべきかについて検討した。審理や審議に入った事案は、決定内容を記者発表し、「BPO報告」やホームページにも詳細に掲載しているが、審理や審議に至らなかった議論の内容は、制作現場に伝わりにくいという指摘がある。今後、事案の内容に適した公表の方法を事案ごとに検討し、改善に努めることになった。

連絡事項

昨年秋から始めたBPO主催の2回目の事例研究会を、8月3日に開催することにした。検証委員会関係のテーマは、TBSのブラックノート詐欺事件報道を踏まえた「委託制作における放送局の責任~取材・報道のあり方をめぐって」で、服部委員が参加・報告する。

以上

第38回 放送倫理検証委員会

第38回 – 2010年5月

選挙の事前運動とも受け取れる放送があった日本テレビの『行列のできる法律相談所』

「バラエティー番組」のブックレットを刊行…など

第38回放送倫理検証委員会は5月14日に開催された。ダメな夫をテーマにした日本テレビの『行列のできる法律相談所』で、出演した前衆議院議員への投票依頼とも受け取れる放送があった事案について、当該局からの回答書を基に討議した。制作担当者に、政治的な公平公正に対する問題意識や、公職選挙法に抵触するのではないかという認識が欠落していたことが明らかになり、それは放送倫理以前の問題だと指摘があった。当該局は非を認めて、バラエティーなどの番組制作者に繰り返し勉強会を実施しているので審議入りはしないが、局の回答の要約とそれに対する委員の意見をBPO報告に掲載し、当該局の今後の放送に事後措置の実効性が表れているかどうかを見守ることにした。
「バラエティー番組」に関するブックレットが完成したので、出席した委員に配付し、簡単な意見交換を行った。
事務局からは、番組制作会社でつくるATP(全日本テレビ番組製作社連盟)に対して、今後委員会決定を読んでもらうよう依頼したことを報告した。

議事の詳細

日時
2010 年 5月14日(金) 午後5時~6時半
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

選挙の事前運動とも受け取れる放送があった日本テレビの『行列のできる法律相談所』

ダメな夫をテーマにした『行列のできる法律相談所』(3月21日放送)に、前衆議院議員である夫と現職の参議院議員であるその妻が出演し、前議員である夫および所属する政党に対して、次回の選挙で投票を依頼するかのような放送が行われた。選挙の事前運動を禁止した公職選挙法や放送法、民放連の放送基準に示されている政治的な公平公正に抵触する疑いがあるので、委員会から質問書を出したところ、当該局からは、概略、次のような回答が寄せられた。

  • 上記2人に出演依頼をしたのは、当該局の別番組に出演してもらった際、立場の落差があるトークが展開されて、面白いと判断したためである。
  • 選挙区や政党の名前を字幕スーパーしたのは、トークの内容を理解しやすくするためで、日常的にやりとりの大部分は字幕スーパーでフォローしている。放送内容が、公職選挙法・放送法や民放連の放送基準に抵触するとは考えず、同じ選挙区の他陣営やほかの政党から批判が出るとも思わなかった。
  • 放送当日まで、チーフプロデューサーやプロデューサーなど19人のスタッフが、繰り返し内容のチェックをしたが、問題を指摘する声は出なかった。
  • 放送終了後、視聴者から「事前運動ではないか」との指摘を受けて、部外の専門家などからも意見を聞いたが、公職選挙法上の事前運動には該当しないとの見解を得た。
  • しかし、誤解を生む可能性に思いが至らなかったことは、勉強不足・認識不足であり、反省している。社内の各職場で今回の問題点が提示され、改めて認識を深めるように指示がなされた。バラエティー局や情報エンターテインメント局の勉強会では、「演出する上での慎重さが足りなかった」「バラエティー番組でもテレビ局の責任は免れないのが分かった」などの反省の言葉が相次いだ。今後さらに指導を徹底し、再発防止に努める。

この回答について、委員の間で議論が交わされ、政治的な公平公正が理解されていない、放送法や放送基準についての認識はどうなっているのか、放送倫理を議論する以前の問題ではないか、などの指摘がなされた。

【委員の主な意見】

  • 面白い夫婦なので出演させたが、選挙のことは全然考えなかった。放送後に指摘されて反省したという説明だが、制作スタッフに誰ひとりとして問題意識がなかったというのは、とても信じ難い。
  • 制作スタッフに全然認識がなかったというが、本当にそうなのだろうか。テロップの扱い方などの問題について、チーフプロデューサーもチェックして、何にも気がつかなかったとは、ただ驚くしかない。
  • 認識がなかったというのにも2段階あるのではないか。つまり完全に頭から抜けていたというレベルなのか、選挙ネタ自体を、このような方法ならば扱えると思ってやったのかが問題なのだが、「おねがいします」というテロップを入れる際に、発言者ではなく前議員の画像を選択しているなど、後者の可能性がうかがえるのではないか。
  • 夫の前議員の選挙区をあれだけ細かくテロップ表示したことは許容できない。なんとも思わずにこのようなテロップを流したとすれば、それが一番問題だと思う。
  • 民放連の放送基準(12)は「事前運動の疑いがあるものは取り扱わない」となっている。そもそも制作者は、選挙事前運動の疑いすらも持たなかったというのだから、それ以前の話であり、論外だろう。
  • 当該局は、番組内で謝罪すると再度出演者の印象を強めるので触れられないという意味のことを言っているが、出演者の固有名詞などを出さずに反省点を伝えることはそんなにむずかしくはない。
  • 今回の問題の反省を、ぜひ今後に生かしてほしいし、反省点が改善されているかどうかを見守る必要があると思う。

議論の結果、委員会としては、当該局が今回の問題の原因が単に番組担当者の勉強不足・認識不足であることを認め、既にバラエティーなどの制作担当者に対して繰り返し勉強会を実施するなどの事後処置をとっていることなどから審議入りはしないが、今後の放送にその事後処置の実効性があらわれているかどうかを見守ることとした。

「バラエティー番組」のブックレットを刊行

ブックレット第5号「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見と各局の対応」を5月14日刊行した。これは、昨年11月17日の委員会意見に、意見発表後の新聞記事および各局が行った勉強会、研修会やアンケート結果、あるいは番組審議会の扱いなどさまざまな反響を資料編として添付したものである。バラエティー番組に関する資料は少ないので、放送関係者がこのジャンルについて議論する際に参考になることを期待している。

連絡事項

放送倫理検証委員会が出す決定文を、放送局だけではなく、実際に番組を制作している制作会社のスタッフにも読んでもらうべきだとの委員からの提案を受けて、事務局がATPの事務局を訪問し、その旨を依頼した。ATPも同意見であったので、今後連絡を密にすることとした。

以上

第37回 放送倫理検証委員会

第37回 – 2010年4月

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

「バラエティー番組」のブックレット刊行について…など

第37回放送倫理検証委員会は4月9日に開催された。冒頭、香山リカ、是枝裕和、重松清(欠席)の新委員3名が紹介され、新しい委員長代行に吉岡委員が指名された。
ブラックノート詐欺事件を報じたTBSの『報道特集NEXT』について、4月2日に「意見書」を通知・公表したことに関連して、委員から意見や感想が述べられた。
「バラエティー番組」のブックレットに収録する関連資料について合意が得られ、5月上旬に刊行の運びとなった(注:5月14日刊行)。
ダメな夫をテーマにした日本テレビの『行列のできる法律相談所』に前衆議院議員の夫と参議院議員であるその妻が出演した。次回総選挙での投票依頼とも受け取れる不適切な放送があったので、当該局に質問書を出して説明を求めることにした。
日本テレビの報道番組『NEWS ZERO』で、女子フィギュアスケートの浅田選手へのインタビューをめぐって、事実と異なる編集が行われた。既に当該局が非を認め、自主的に訂正・お詫びをしているので審議入りはしないが、問題点を指摘することにした。

議事の詳細

日時
2010年4月9日(金) 午後5時~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、石井委員、香山委員、是枝委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

本事案については、4月2日に当該局に対して「意見書」を通知・公表した。記者会見の質疑や新聞報道について各委員から意見や感想が述べられた。

【委員の主な意見】

  • 「犯人に逃げられたのは、この取材をした番組の責任ではないのか。委員会はそれについて何も言っていないが」との質問があった。しかし、それはこの委員会が審議すべき事柄ではない。
  • 報道では、犯人のクルマに発信器を取り付けたことについてあまり触れられていなかった。このことが軽く考えられているのではないか、という気がした。
  • 興信所のホームページなどを見ると、発信器を使って尾行します、とよく書いてある。尾行調査などで相当使われているようだ。取材での発信器取り付けは大きいテーマだと思うが、記者会見では質問がなかった。
  • 制作会社との共同制作番組における局側の対応や放送責任のとり方などが重要なテーマなのに、今回の新聞報道を見ていると、そこはあまり報道されていなかった。
  • 今回の記事もそうだが、新聞報道がパターン化する傾向があるのではないか。BPOが局を批判した部分はそれに乗って局を批判する、BPOが局を守れば今度はBPOを批判するという、一面的な対応になっていないか。

「バラエティー番組」のブックレット刊行について

ブックレットには、委員会の「意見書」と、各局のその後の対応やメディアの反応などを簡潔にまとめた資料を収録し、今後、関係者がバラエティーに関して考えるときに役立つように配慮した。刊行は5月上旬を予定している。

選挙の事前運動とも受け取れる放送があった日本テレビの『行列のできる法律相談所』

3月21日放送の『行列のできる法律相談所』はダメな夫を紹介することがテーマであった。その中で、落選中の前衆議院議員である夫と参議院議員であるその妻が出演した。その際、夫の選挙区とその自治体名や、次回の選挙での投票を依頼したようにも受け取れるメッセージを字幕スーパー入りで放送した。また、比例区についても、夫妻が所属する政党への投票を誘導するような紹介がされた。これらは政治的な公平に反し、選挙の事前運動の疑いがあるのではないかという指摘があった事案。当該局からは経緯説明書が提出されたが、曖昧な説明が多く、より詳しい報告を求める必要があるとの意見が相次いだため、委員会として正式な質問書を出し、その回答書を見た上で対応を決めることとした。

【委員の主な意見】

  • これは選挙番組風にしようという意識のもとに、前議員の顔にテロップが「よろしくお願いします」とかかるように意図的な演出をしている。
  • 繰り返し見ていると、出演交渉の際に、選挙区についての話をするという約束があったとしか思えないような流れだ。無理やり選挙区の話に持っていっているという気がする。
  • 番組制作者には公職選挙法への意識はなく、選挙自体もひとつのエンターテイメントとして認識していたということがベースにあるのではないか。
  • 本来、局で自主的に解決すべき問題だ。考査部門とか、あるいは番組審議会とかで、チェックや議論をするべきだ。
  • 生放送ではなく、わざわざ時間をかけて編集して作った番組だから、あのテロップを出した事情については、きちんとした説明を聞く必要がある。
  • これだけ視聴者意見が寄せられているのは、相当な人があれは異常だと思って見ているわけだ。局内で編集から放送までの過程で、なぜ全部スルーしてしまったのか。

スポーツ選手へのインタビューで事実と異なる編集をした日本テレビ『NEWS ZERO』

『NEWS ZERO』(3月29日放送)で、女子フィギュア世界選手権終了後に浅田、安藤、キムの3選手がいっしょにインタビューに応じた模様を放送した。「3人は友達ですか」の質問に浅田選手が「はい」と答える映像が流された。しかし、浅田選手は実際には何も答えず微笑んでいただけであり、「はい」の映像は「安藤選手と友達ですか」という別な質問の答えを編集で差し替えていたという事案。
誤った情報に接した担当チーフディレクターの思い込みによる指示が原因であるとの当該局の説明を元に討議した結果、事実と異なる編集を意図的に行ったことはある意味でねつ造といえるが、当該局が非を認め、4日後に訂正放送を行い、お詫びしている、NOをYESと改ざんしたわけではなく、また、それによって深刻な被害を被った人が出たわけでもないから、自主的な対応を評価して審議対象にはしないこととした。

【委員の主な意見】

  • 明白な故意のあるねつ造ではあるが、うなずいた映像と「はい」と言ったのを入れ替えただけの違いだ。被害者がいるわけではないし、迅速に訂正をしているということを考えると、取り上げる必要があるのだろうか。
  • NOをYESと変えたのだとしたら問題だが、そうではない。
  • あの”うなずき”は本当にYESという意味の”うなずき”なのかという疑問もある。
  • 局内で事実関係をきちんと調査した上で訂正放送をし、原状回復したのだから、その自主的・自律的な措置を尊重するべきだ。むしろ、同じ局でありながら、前の「法律相談」事案の対応と、どうしてこんなに違うのかが疑問だ。
  • テレビ的な表現とか、わかりやすさということを追求していくと、このような落とし穴に落ちてしまうことがある。
  • 制作者が事実とは違うと知りながらこのような編集をしてしまうことについて不感症になっていることのほうが怖い。

以上