放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第47回

第47回 – 2011年3月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』…など

3月11日に開催予定だった第47回放送倫理検証委員会は、東日本大震災のため、31日に延期して開催された。
一括審議となったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送『イチハチ』のホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3つについては、意見書の構成やターゲットについて、ヒアリングを踏まえて議論をおこなった。次回の委員会までに意見書の草案を担当委員が作成し、それを基に審議することになった。
日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』で、最新のペットビジネスとしてペットサロンとペット保険を紹介したが、客として登場した2人の女性は、ともに運営会社の社員だった。
この事案については、取材・制作にあたったディレクターや上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施したが、その概要が担当委員から報告された。この中では、ディレクターと上司との間にさまざまな認識の乖離があったことが指摘され、なぜミスが防げなかったのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は生かされているのか等について意見交換が行われた。次回の委員会には、意見書の原案が提出される。
政治的公平性に問題があるのではないかが問題となったBS11の『”自”論対論~参議院発~』については、前回から討議を継続して番組編成全体で公平性に配慮しているという局の主張を検証した。この番組は、司会者、出演者ともに一政党のみで、その政党の広報番組と区別できないという偏りがある点に問題があるとして審議入りすることになった。
TBSがボクシングのタイトルマッチを中継録画で放送した際、直前のニュース番組『Nスタ』で、既にKOで決着がついていたにもかかわらず、あたかも結果が出ていないかのように伝えたことを不当な演出として問題にするべきかを討議した。確かに、視聴者に誤った印象を与えるが、ニュースではなく一種の番組宣伝であり、あえて審議するほどの重大性はないうえに、局も自発的に改善策を示してしているので取り上げないことにした。

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

酵素飲料を飲むことでダイエットに成功したと番組で紹介した女性が、その飲料を販売する社長であったことが判明したテレビ東京の「月曜プレミア」と、15億円でホテルを購入しようとする富豪女性に密着した取材は、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の「イチハチ」が、すでに審議入りしていた。
これに加え、毎日放送の同じ「イチハチ」で、ニューヨークに23件もの不動産を持つ女性が紹介されたが、当該局が「女性の所有であることが証あったことだった。また、世代間ギャップの指摘明できず、事実と異なる放送をした可能性が高い」と公表した案件について、前記2つの事案と通底する問題があるとして、前回委員会で一括して審議入りした。
これを受けて毎日放送のニューヨーク事案について、制作スタッフらからのヒアリングが行われ、その結果が担当委員から報告された。
その上で、情報バラエティー番組における事実関係や情報の取り扱いについて議論が展開されたが、制作サイドの事実に対する認識や判断の甘さ、拡大解釈が、内部で精査されることなく安直に番組つくりがなされていく実態や、事案発覚後も、プロデューサークラスと現場ディレクタークラスとの間で、何が問題であったかの認識に温度差があることも浮かび上がってきた。
委員会では、これまで様々な形で発信してきた委員会の思いが、なかなか現場の制作スタッフに伝わっていないのではないだろうかという懸念を踏まえて、如何にしたら伝わるのか、意見書のスタイルを含めて模索し、担当委員の間で原案を作ることとした。

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

1月8日に放送されたこのニュース番組は、右肩上がりの状況が続いているというペットビジネスを取り上げ、ペットサロンとペット保険の2人の女性客を紹介した。ところが2人は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったことが判明し、前回の委員会で審議入りした事案。
担当委員は、2人の女性客が社員だと知りながら取材・放送したディレクターをはじめ、上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施した。そこで浮き彫りになったのは、取材方法や職場のコミュニケーション状況などについて、ディレクターと上司の間にさまざまな認識の乖離がもあった。
委員の間からは、報道の使命や責任について十分な社内教育が行われているのか、ミスを防げなかった組織的な原因はどこにあるのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は本当に現場に生かされているのだろうか、などの意見が出された。次回の委員会では、担当委員から意見書の原案が提出される。

【委員の主な意見】

  • 上司は部下に目配りをして対話の場も設けていると考えているのに、部下のほうは自分が理解されず評価もされていないと思っている。この状況は、当該局だけの問題だとは思えないし、報道現場だけに起きている問題だとも思えない。そこに根の深さを感じる。
  • ニュースを伝えるという報道の使命や役割は、同じような情報を扱うバラエティー番組と比べて、はるかに重いものだ。報道モラルの低下を言うのは簡単だが、どんな社内教育や指導が行われているのか、
  • 「バンキシャ」の誤報問題のあと、さまざまな再発防止策が打ち出され、社内の研修なども充実させたという。ところがこのディレクターは研修会の参加記録は残っているのに、本人には参加した記憶がないということだ。教訓が本当に生かされているのかどうかの検証も必要ではないか。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論』

視聴者から、政治的公平性に問題があるのではないかとの指摘があったBS11の政治討論番組
『”自”論対論~参議院発~』(全11回)は、司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている。当該局からは、番組編成全体で政治的公平性を保つようバランスをとっているとの説明書が提出された。
8番組35放送分のDVDの提出を受け、全体として本当に配慮されているかの検証を行ったが、一政党に偏して11回の放送を行ったという問題性は明らかであり、審議入りをして、なぜそのような企画が採用されたのか、その際他の政党に対する公平性の確保についてはどのように実現するつもりであったのかなどを調査することを決めた。

【委員の主な意見】

  • 司会者が「われわれ自民党は」という発言をしている。明らかに放送法の第一条「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」に反している。
  • 放送法と憲法の関係には、微妙な問題が存在している。表現の自由と大きくかかわることなので慎重に議論すべきだ。
  • スポンサーが明示されていないことは大きな問題だ。
  • まるで、政党の持ち込み番組ではないか。
  • アメリカでは不偏不党の枠が取り払われている。それをどう考えるべきか。
  • 放送局として、編成権や主体性の放棄につながるのではないか。
  • 放送局の自律は、MC(司会者)やキャスターの存在に託されるのではないか。
  • 反対意見があればお寄せ下さいというテロップ表示を流せば、一方に偏すると言うことを避けたと見なせるのではないか。
  • 不毛な機械的公平性議論は避ける必要はある。

終了しているボクシングの試合を試合前のように伝えたTBS『Nスタ』スポーツコーナー

夕方の報道番組『Nスタ』(2月1日放送)のスポーツコーナー『こちら運動部』で、直後に当該局が放送するボクシング世界タイトルマッチを前に、試合の見所などを、スタジオと会場で事前に収録したVTRで放送した。しかし、実際には、試合はこの放送の30分近く前に結果が出ており、視聴者に誤解を与えかねない放送になった。
当該局からの報告書では、放送までの経緯が説明され、更に社内での議論の結果、今回の放送は生で進行している番組の中では視聴者に誤解を与えた表現であり、避けるべきだったと結論している。また今後の対応について、生番組における、競技が終了しているスポーツ番組の告知については、番組宣伝コーナーを設けるなどが示された。
委員会ではこの放送を番組宣伝と考えるかどうか、意図的に誤解させるメッセージがあったのではないかなどの意見が出されたが、事案の重さと、当該局の認識の仕方、今後の対応への姿勢から審議入りしないことに決定した。

【委員の主な意見】

  • 嘘をついたわけでもないし、ある意味番組宣伝として捉えれば、どうなんだろう。お金をかけて独占放送権を買っているわけだから。
  • スポーツ中継を種明かしして、これはディレイですといわれて結果がわかっているものを見ても面白くない。
  • 次から番組宣伝をしますということが明示されていれば問題はない。
  • 意図的に誤解させるメッセージがあったことは否定できない。しかし大きな問題ではないということもできる。
  • 過剰な臨場感を期待させるために、余計な勇み足をしている。
  • 報道のニュースの枠内であったということが問題だ。

「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」を受けて当該4局から報告書

2010年12月2日に行われた標記事案の委員会決定を受けて、当該4局はそれぞれの対応と取り組み状況をまとめた報告書を、当委員会に提出した。
この日の委員会において4局の取り組みが検討され了承された。
4局の報告はこちら。

以上