第159回 放送と人権等権利に関する委員会

第159回 – 2010年3月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の和解報告 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の実質審理が始まった。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の和解について事務局より報告した。3月10日に行われた「拉致被害者家族からの訴え」事案の通知・公表について事務局より報告した。

議事の詳細

日時
2010年 3月16 日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

長野県在住の被害者遺族から申立てのあった本事案の実質審理に入った。
申立ては、テレビ朝日が、2008年12月23日に『報道ステーション』で放送した、特集「身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」に対して行われたもの。
申立人は、「両親の嫌がらせが殺害動機であるとの放送内容は事実ではない。また、放送は『嫌がらせを行った人物』『常識のない人物』として、両親の社会的評価を著しく低下させるもので、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらに、子供である申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
これに対しテレビ朝日は、「決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなく、謝罪、訂正放送が必要な事実誤認もなかった」と反論している。
委員会では、テレビ朝日から提出された放送同録を再度視聴した後、取材や番組の構成等について意見を交わした結果、次回委員会においても、さらに審理を重ねることとした。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の和解報告

本事案は2月18日にBPO会議室で堀野委員長立ち会いのもと、申立人と被申立人のフジテレビが出席して和解の手続きがとられ解決した。
事務局が当日の様子とホームページやBPO報告で和解成立を伝えたことを報告した。
(和解内容の詳細は2009年度 仲介・斡旋解決事案をご参照ください)。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の通知・公表の報告

本事案の「委員会決定」の通知と公表が3月10日に行われた。
事務局よりその概要とテレビ各社の放送対応および新聞記事をまとめた資料を配付し、以下のとおり報告した。また、当該局であるテレビ朝日が報じた当日夕方のニュース番組の同録DVDを視聴した。

通知には堀野委員長と、起草委員を務めた樺山委員長代行および坂井委員の3人が出席し、申立人である「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」と被申立人であるテレビ朝日とが同席する形で行われた。
(決定内容の詳細は「委員会決定」の項、決定第43号をご参照ください)。
通知の後、両当事者から個別に質問を受け、意見や感想を尋ねた。
家族会の飯塚代表は「謝罪が不適切と判断していただいたが、国民に分るような謝罪の仕方とはどういうものか、もっとやっていただきたかった」と述べた。増元事務局長は、田原発言全体については「言論の自由の範囲内」とした判断を「残念だ」と述べた。一方、テレビ朝日は「決定を真摯に受け止め、今後に生かしていきたい」と述べた。
この後、記者会見で「委員会決定」の内容を公表した。会見には26社64人が集まり、テレビカメラ6台が入った。
昨年6月に申立書を受理してから通知・公表までに9か月を要した点について、堀野委員長は「申立て内容が重大であり、また『名誉毀損やプライバシーの侵害以上に、最も重大な人権侵害』という主張をどう理解するかなど、論点についての意見統一にも時間がかかった」と説明した。
樺山委員長代行は、「BPOで扱ってきた事案の中でも極めて難解で、被害者の救済と言論の自由とが正面衝突したケースだった。それだけに長い時間をかけて議論した」と述べた。
坂井委員はポイントを3点挙げ、「1つ目は言論の自由の大切さであり、異論を受け入れる寛容さが必要だという点だ。2つ目は言論の自由を前提としても他人を傷つける言い方はまずいということだ。それは表現の自由を足元から崩す行為になる。3つ目は謝罪の問題だ。商品に欠陥があった場合、マスメディアは企業の社会的責任を厳しく問うが、メディアで誤りがあった場合も同じで、謝罪の気持ちはちゃんと伝わるようにやるべきだ」と述べた。
記者からは「特に難しかった点はどこか」という質問が出た。
堀野委員長は「生死不明の家族について『生きていない』と言われて精神的苦痛を受けた時、どのような権利がどの程度害されたといえるのか。名誉やプライバシーの侵害などとは次元の違う問題だったことだ。この点については名誉毀損等の余地ありとした三宅委員の補足意見がある。もう1点は政府の方針に疑念を生じさせたとか、救出運動を妨害したなどの申立てが、直接、人権に係る問題ではなかったことだ。所轄外といえば終わる話だが、ひいては拉致被害者の生命にもかかわる重大な人権侵害という主張なので、きっちり答えようということになった」と答えた。
通知と会見を受け、当該局であるテレビ朝日は夕方のニュース番組『スーパーJチャンネル』で、全国ネット枠で決定内容を報じるとともに、改めて社としてお詫びした。(当該番組の『朝まで生テレビ!』では、3月26日の放送で決定内容を詳しく伝え、「決定を真摯に受け止め、今後も放送倫理に十分配慮した放送に努めて参ります」と述べるとともに、重ねて社としてのお詫びを放送した。)
このほかの在京民放テレビキー局およびNHKは、10日夕方から夜にかけてのニュース番組や翌11日朝の生活情報ワイド番組で、全国ネット枠で伝えた。
新聞各紙は自社サイトで速報したのをはじめ、11日付けの朝刊紙面で一斉に報道した。

2 月の苦情概要

2 月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・52件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事務局から、(1)総務省が在京民放テレビ5局を対象に女子中学生自殺報道について調査しようとした問題、(2)総務省の「今後のICT分野における国民の権利保障等のあり方に関するフォーラム」の動向、(3)3月5日に国会に提出された放送法改正案の概要――の3点について報告した。
  • 次回委員会は4月20日(火)に開かれることになった。

以上

第158回 放送と人権等権利に関する委員会

第158回 – 2010年2月

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理 ……など

「拉致被害者家族からの訴え」事案の「委員会決定」修正案について審理した。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の 審理が行われ、本事案の和解に向けた動きについて堀野委員長より報告があり了承された。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の本格的な審理は次回以降に持ち越された。

議事の詳細

日時
2010年 2月16日(火) 午後4時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

前回の委員会審理を受けて起草委員が手直しした「委員会決定」修正案が、2月11日の第2回起草委員会での検討を経てこの日の委員会に提出された。
委員会では時間をかけて詳細な検討が行われた。この結果、修正案は基本的に了承され、一部表現の手直しをしたうえで持ち回り委員会により最終了承される見通しとなった。また、委員のひとりが補足意見を書くことになった。
本事案は2009年4月24日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者でジャーナリストの田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ「生きていないことは外務省も分っている」などと発言し、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から「最も重大な人権侵害」との申立てがあったもの。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理

本事案は2009年7月17日のフジテレビ「FNNスーパーニュース」の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。
同年11月に審理入りし本年1月までヒアリングを含め3回の審理を行ったが、堀野委員長は、本件事案は人権侵害を訴えるものでなく 放送上の表現や編集の仕方が問題になっていた事案である ことから、和解による解決が望ましいとして今月の委員会に提案し了承を得た。これによって、本件は委員会の和解斡旋で解決する運びになった。
放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したものだが、申立人は、放送内容は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反するものだったとして、謝罪などを求めてきた。これに対してフジテレビは、「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張してきた。
(2月18日に申立人と被申立人の間で和解の手続きがとられ、本件は解決した。詳しくは仲介・斡旋解決事案の項をご参照ください)

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から、放送内容が事実に反し、亡くなった両親への敬愛追慕の情を侵害され、申立人自身の名誉も毀損されたと申立てがあった。
昨年12月の委員会で審理入りを決定、今月の委員会では他の事案との関係もあって、申立人から提出された「申立書」および「反論書」、被申立人から出された「答弁書」および「再答弁書」等の書面についての説明にとどめた。
次回の委員会以降、本格的な審理を行う予定である。

1月の苦情概要

1月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・39件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 放送法の研究を目的として2007年9月にスタートしたBPO放送法研究会での討議の成果が、このほど『放送法と表現の自由~BPO放送法研究会報告書』としてまとまった。事務局より報告した。
    なお、同研究会は所期の目的を果たし既に解散している。
  • 次回委員会は3 月16 日(火)に開かれることになった。

以上

第157回 放送と人権等権利に関する委員会

第157回 – 2010年1月

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理 ……など

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の当事者に対するヒアリングと審理が行われた。「拉致被害者家族からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理し、内容を一部手直しのうえ来月の委員会で再度検討することになった。このほか、「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案で「勧告」を受けたTBSから、「委員会決定」後の対応報告が提出された。

議事の詳細

日時
2010年 1月19日(火) 午後3時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理

この事案は2009年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
今月の委員会ではヒアリングとその後の審理を行った。
ヒアリングで申立人は「最初から最後まで『元気ある温泉地を撮らせてもらいたい、頑張っているところを撮らせてもらいたい』ということだけで、一言も『再生』という言葉は聞かなかった。あるひとつのストーリーがあって、それに私たちが話したことの部分、部分をつなぎ合わせて当てはめたような形の放送になっていると思った。報道番組に結果的に傷つけられた。バラエティー番組とは違ってきちんとしたことを伝えるべき報道番組で、そういう放送をしていいのか」などと述べた。
フジテレビからは報道局の担当者3人が出席し「口頭の説明や文書によって、企画の意図が正確に伝わっていたことは明らかだと考える。不況に立ち向かい、再生に向かって頑張っている姿を描くという当初の企画意図は放送まで一切変わっていない。頑張った結果、温泉街が活気に溢れているか、宿泊客数が伸びているかについては実際に取材した印象やデータなどをそのまま放送した。ただ、結果的に取材に協力していただいた方々に不愉快な思いをさせてしまったのは残念で、今後より細かい神経の遣い方をしていきたい」などと述べた。
ヒアリングのあと審理したが、次回2月の委員会でもさらに審理を続けることになった。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

前回の委員会で「委員会決定」の方向が固まったのを受け、起草委員が「委員会決定」案をまとめた。これを1月7日の起草委員会で検討しこの日の委員会に提出した。
審理の結果、「委員会決定」案に大筋では異論は出なかったものの、一部内容と表現の手直しが必要との結論となり、来月の委員会で再度修正案を検討することになった。
本事案は、2009年4月24日のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』で司会者のジャーナリスト田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分っている」などと発言したことについて、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から「最も重大な人権侵害である」として申立てがあったもの。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から申立てがあり、先月の委員会で審理入りが決まった。
この日の委員会では、これまでに提出された申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」に基づいて、本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。
放送は、2008年11月に長野県上田市で老夫婦が隣人に殺害された事件を取り上げ、狭い私道を挟んで住む被害者と加害者の、車による通行をめぐるトラブルが直接の原因となったが、そもそもは明治時代に行われた精度の低い測量に基づく公図の境界線が曖昧で複雑なことも一因ではないかとしている。
この放送について申立人は「両親の長年に亘る嫌がらせが殺害の動機との内容は事実ではない。放送は両親の社会的評価を著しく低下させるものであり、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらに子供である申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
これに対しテレビ朝日は、「番組は決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなくまた、謝罪、訂正が必要な事実誤認もなかった」と反論している。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案でTBSから対応報告

本事案で重大な放送倫理違反があったとして昨年10月30日に勧告を受けたTBSは、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめ、1月12日に委員会に提出した。事務局からその内容について報告し了承された。
(TBSの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第41号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

12月の苦情概要

12月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・50件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 来年度の委員会日程について事務局より報告し、定例の委員会を本年度と同じく毎月第3火曜日に開催することで了承された。
  • 3月25日にBPO年次報告会が開かれることになり事務局より報告した。
  • 次回委員会は2 月16 日(火)に開かれることになった。

以上

第156回 放送と人権等権利に関する委員会

第156回 – 2009年12月

「拉致被害者家族からの訴え」事案のヒアリングと審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理 ……など

「拉致被害者家族からの訴え」事案のヒアリングと審理が行われ、「委員会決定」案の起草に入ることになった。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理の結果、1月の委員会で当事者へのヒアリングを行うことが決まった。審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年 12月15日(火) 午後3時~7時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「拉致被害者家族からの訴え」事案のヒアリングと審理

本事案は、2009年4月24日のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』で司会者のジャーナリスト田原総一朗氏が横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分っている」と発言したことについて「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から最も重大な人権侵害と申立てがあったもの。
この日は双方の当事者に対するヒアリングとその後の審理が行われた。ヒアリングは午後3時過ぎからBPO内会議室で行われた。申立人である家族会側から4名、被申立人のテレビ朝日側からは3名がそれぞれ出席し、申立人側、被申立人側の順で約1時間ずつ行われた。
申立人は質問に対し「大事な命が連れ去られ、何も分らない日々が20年続いた。親としてはどこかで必ず生きていると信じて命がけで頑張ってきた。そういう中で田原さんの発言があった」、「田原氏の発言は公共の電波を使って被害者が生きていないと印象付けるもので救出運動への妨害であり、被害者の帰国を妨げることによって彼らの人権をも傷つけるものだ」などと述べた。
これに対し、被申立人は「生放送中の事前に想定していない発言であり直ちには判断がつきかねた。発言内容の事実関係や経緯を確認するため、放送後、田原氏から複数回にわたり聞き取りを行うなどした。そのうえでテレビ朝日として確認できていないことが放送されたとの認識の下、5月29日の当該番組でお詫びした」と述べた。
ヒアリング後も審理を行った結果、「委員会決定」の方向が大筋で固まった。起草委員が決定案をまとめ、次回委員会でその内容を検討することになった。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理

この事案は本年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
前回11月の委員会で審理入りして今月も審理を続行し、申立人の旅館の温泉街ともう一方の温泉地の旅館の取り上げ方などをめぐって意見を交わした。そして、1月の委員会でヒアリングを実施することになった。

審理要請案件

テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から申立てがあった。
申立人は「両親の長年にわたる嫌がらせが、殺害の動機との放送内容は事実ではない。また、本件放送は、両親を”嫌がらせを行った人物””常識のない人物”としてその社会的評価を著しく低下させるものであり、両親への敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらにそのような両親の子供として、申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
委員会は申立人から提出された「申立書」及び「関連資料」、被申立人から出された「交渉経緯と見解」「同録DVD」等をもとに審理入りするかどうかについて協議した結果、次回委員会から実質審理に入ることとした。
放送は、2008年11月に長野県上田市で老夫婦が隣人に殺害された事件を取り上げたもの。被害者と加害者は狭い私道を挟んで住んでおり、車による通行をめぐるトラブルが原因となったが、そもそもは明治時代に行われた精度の低い測量公図によって曖昧で複雑な境界線を生じさせたことも一因ではないかと伝えた。
テレビ朝日は上記申立て内容に対し、「番組は決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなく、また、謝罪、訂正放送が必要な事実誤認もなかった」と反論している。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記の仲介・斡旋解決事案について報告し、了承された。

「夫の死亡ニュースに際し、息子の名前をスーパーされた」との訴え

四国のテレビ局が2009年7月、ニュース番組で元参議院議員の死亡ニュースを報じた際、画面に息子(現職衆議院議員)の名前を40秒間スーパーで入れるというミスを犯し、4分後に同じ番組内で訂正・お詫びを放送した。
この放送について、死亡した議員の家族から、「訂正放送をすればそれで放送局の責任は免れるのか、葬式を前に悲嘆にくれている家族に多大な精神的ショックと混乱を与えておきながら何の説明もお詫びもない」との苦情が放送人権委員会に寄せられた。
委員会では、当事者に対する謝罪のあり方が問題とされているケースであることから、当該局に対して、まず家族に誠意を持って説明するなど当事者間での話し合いを勧めた。
その後、当該局が家族へ話し合いを申し入れたところ、対応の遅れなどの経過説明を求められたため、ミスの発生から訂正にいたるまでの経緯と「関係者への連絡が遅かったという批判を謙虚に受け止めたい」とのお詫びを記した文書を役員名で送付した。
これに対し、家族は丁寧な説明を受けたとして、この「説明・お詫び」を受けいれることにし、その旨当該局に伝えた。また、放送人権委員会堀野委員長宛てに手紙を寄せ、問題が解決したことを連絡するとともに、被害者の立場から「誤報の影響が予想される場合は少しでも早く当事者に連絡していただくことを放送局側に要望したい」と述べている。

(放送2009年7月 解決12月)

11月の苦情概要

11月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・15件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・ 92件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 12月2日福岡で開かれた「放送人権委員会委員との意見交換会」について事務局より報告した。
    当日は9人の委員全員と事務局からも9名が出席、九州・沖縄地区の各局からは31社・86名が参加し、意見交換会では過去最高の参加者数となった。また、取材も8社8名の記者とテレビカメラ4台が入り、当日夕方から夜にかけてのテレビ各局の地元ニュースや翌朝の新聞で会の模様が報道された。
    参加者への事後アンケートでは、多くが委員との直接の意見交換を有意義だったとしているが、ディスカッションにもう少し時間が欲しかったとの声もあった。個別のテーマでは、モザイクや顔なしなど最近の「匿名映像」の多用について、報道の信頼性の観点からあくまでも実名報道・モザイクなしを原則とすべきだとする委員の意見に励まされた、議論が有益だったとする声が相次いだ。
    また、この種の会合をもっと頻繁に、各地で開いてほしいとの要望もあった。
    なお、予想を越える参加者数となったため、会場が狭かったとの声も多く聞かれた。
  • 事務局より以下の件について報告した。
    12月11日にTBSで「委員会決定」についての研修会が行われ、堀野委員長が「保育園イモ畑」事案と「割り箸」事案の決定内容について説明し、制作・報道の現場スタッフなどと意見を交換した。局側から200名近くが参加した。
  • 11月26日に東京で開かれた「BPO第1回事例研究会」について事務局より報告した。
  • 次回委員会は2010年1月19日(火)に開かれることになった。

以上

第155回 放送と人権等権利に関する委員会

第155回 – 2009年11月

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理 ……など

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理が行われ、来月の委員会で当事者へのヒアリングを実施することが決まった。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の実質審理が始まった。このほか、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案で勧告を受けたTBSから「委員会決定に対する対応と取り組み」が提出され、事務局から報告した。

議事の詳細

日時
2009 年 11月17日(火) 午後4時~7時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、山田委員

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

この事案は2009年4月24日深夜と5月29日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に重大な人権侵害と放送倫理違反があったとして、拉致被害者の家族で組織する「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から申立てがあったもの。田原氏は4月24日放送の上記番組で横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。
この日の委員会では先月に続き、 (1)田原氏の発言内容についてどう判断するか、(2)放送局側の対応と責任についてはどう考えるか、の2点を中心に各委員が意見を述べ、突っ込んだやり取りを交わした。この結果、来月の委員会で申立人、被申立人の双方に対するヒアリングを実施し、それぞれの主張について詳しく尋ねた上でさらに議論を深めることとなった。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理

この事案は本年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。前回10月の委員会で審理入りが決まり、今月から審理を開始した。
放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
委員会では、事務局が双方から提出された書面をもとにまとめた論点を説明した後、番組の趣旨と放送内容をめぐって意見を出し合った。
次回の委員会も審理を続ける。

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案でTBSから対応報告書

本事案で重大な放送倫理違反があったとして今年8月7日に勧告を受けたTBSは、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめ、通知から3か月後の11月6日に委員会に提出した。事務局からその内容について報告し了承された。

(TBSの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第40号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

「委員会決定」の通知・公表についての報告

(1) 「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案

10月30日に行われた上記事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局から、その概要とTBSをはじめとしたテレビの放送対応及び新聞記事の資料を配布し、報告を行った。またTBSが『みのもんたの朝ズバッ!』(当該番組)で決定内容の報告とお詫びを放送した同録DVDを視聴した。

(2) 「派遣法・登録型導入報道」事案

11月9日に行われた上記事案の通知・公表について、事務局から、その概要を次のとおり報告し、これを受けたテレビ各局の放送内容及び新聞記事をまとめた資料を配付した。

通知の席で今回の決定について申立人は、「派遣切りなど現状の雇用不安については、1985年の派遣法成立には何も問題がなかった。今日の事態を招くことになったのは、その後の99年の原則自由化、2004年の製造業への解禁などによる。自分たちの主張を認められなかったのは残念だ」と述べた。
これに対し堀野委員長は、「公の立場にある人への判断であり、本人にとってはきついものになったとは思う。しかし、決定についての批判・論争は大いにやって然るべきだと思う」と語り、委員会決定は決して一方的なものでなく、意見交換することが大切だとの考えを示した。

またこの決定を受け、当該番組のテレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』は、11月15日の番組の最後の部分で、これについて約2分間伝えたが、委員会ではこの同録DVDを視聴した。

10 月の苦情概要

10 月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・ 5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・ 77件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事務局より下記のとおり報告し了承された。
    九州・沖縄地区のBPO加盟各社を対象に12月2日福岡で開かれる「放送人権委員会委員との意見交換会」への出席者が32社・86名となった。当日は放送人権委員会の活動と役割について堀野委員長が基調スピーチを行うほか、取材・放送に係わる人権や放送倫理上の問題について、各局報道・制作現場関係者と放送人権委員との間で討議を行う。
  • 次回委員会は12 月15 日(火)に開かれることになった。

以上

第154回 放送と人権等権利に関する委員会

第154回 – 2009年10月

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理 ……など

「割り箸」事案の「委員会決定」の内容が固まり、10月30日に当事者へ通知し、会見で公表することが決まった。「派遣法」事案の「委員会決定」案について審理し、大筋で了承された。「拉致被害者家族からの訴え」事案の実質的な審理が始まった。このほか、審理要請案件の審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年10 月20 日(火) 午後3時 ~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

東京在住の勤務医とその家族から申立てのあった「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案は、10月7日に開かれた2回目の起草委員会で検討された「委員会決定」案について、その内容が報告され、取りまとめに向けての意見が交わされた。その結果、若干の修正はあるものの、大筋として了承を得たのを受け、10月30日に申立人、被申立人双方に対する通知及び公表を行うことを決定した。
この申立ては、TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月12日に放送された割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたものである。

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについて、起草委員会が策定した「委員会決定案」をめぐって、審理が行われた。 この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したもので、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、元労働次官と経済学者、当時の労働省事務官の3人が「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込んだなどの表現を多用し、派遣切りなどの雇用不安を産みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで4回の委員会では、双方から出された文書や放送同録、当時の資料などで審理を続け、先月には申立人・被申立人を呼んで、個々に事情を聴取するヒアリングを行った。 これら審理を通じて、この事案の判断について各委員が意見を述べ、それをもとに起草委員会が「委員会決定案」をまとめ、この日の委員会に提出した。
委員会では、この「委員会決定案」を巡り審理を続けた結果、大枠では了承されることとなった。しかし一部に文章の加筆・修正も提案されたことから、これらを踏まえた「第2次決定案」を起草委員会がまとめ、今後持ち回りの委員会で了承を得る運びとなった。
なお、持ち回り委員会で了承が得られた場合は、11月上旬にも、この「決定」の通知・公表を行う方針も決めた。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

8月の委員会で審理入りが決まっていたものの、事案が重なったことなどから実質審理が延びていた。今月の委員会から本格的な審理に入った。
申立人である「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」は、2009年4月24日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」と発言したことについて、「人の生死に関する安易な発言は、名誉毀損以上に最も重大な人権侵害である」とし、テレビ朝日に田原発言の撤回と謝罪などを求めている。これに対し、テレビ朝日は「社として確認できていない内容が生放送され、家族や関係者にご不快の念を抱かせ、視聴者の方々の誤解を招いた」として5月29日の上記番組内で謝罪している。
この日の委員会では、改めて本事案の主な論点について確認した後、(1)田原氏の発言内容についてどう判断するか、(2)局側の対応と責任についてはどう考えるか、の2点を中心に各委員がひとりひとり意見を述べた。
次回の委員会では、さらに突っ込んだ議論を交わすことになった。

審理要請案件

本年7月17日のフジテレビ「FNNスーパーニュース」の放送をめぐって宮城県の温泉旅館の女将が事実に反する内容だったと申し立てた。委員会は審理入りするかどうかについて審議した結果、申立ては運営規則が定める要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
放送は、不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、フジテレビに対し謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基づく事実を伝えたものです」と主張している。
来月の委員会から審理が開始される。

仲介・斡旋解決事案

事務局より以下の件について報告し、了承された。

「インタビューの編集により誤解を招いたとの訴え」事案

在京テレビ・キー局が2009年6月、ニュース番組で放送した”地方空港の開港”をめぐるニュース特集で、取材を受けた地元企業の社長が、インタビューの肝心な部分が削除されたことにより、名誉を侵害されたとしてその回復を訴え、放送人権委員会に苦情を寄せた。
訴えの内容は、「国内線が決まっていないのは残念だ。しかし、国際線の乗り入れが決まっているので心配していない」とインタビューで答えたが、その前半部分だけ放送され、開港を期待している地元企業の仲間に対し、自分があたかも開港に悲観的な意見の持ち主のように放送され誤解を招いたというもので、当該局に対し、名誉回復措置をとるよう要望していた。
委員会では、当該局に対し、被取材者と誠意を持って話し合うよう勧めていたところ、9月末になって、報道局長名で「説明とお詫び」の文書を出すこととなり、話し合いで決着することになった。
この文書の中で当該局は、「被取材者の考えを十分に汲み取った放送をできなかったことを申し訳なく思っています」と述べている。

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・ 64件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • BPO加盟各社を対象に11月26日に開かれる第1回「BPO事例研究会」のテーマが決まった。当日は、「事実確認のあり方」と「訂正放送のあり方」をテーマに2件の事案を取り上げる。事務局より報告し了承された。
  • 次回委員会は11月17日(火)に開かれることになった。

以上

第153回 放送と人権等権利に関する委員会

第153回 – 2009年9月

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

「派遣法」事案の当事者に対するヒアリングと詰めの審理を行った。「割り箸」事案の審理では「委員会決定」案の内容について検討した。また、「拉致被害者家族からの訴え」事案については本格的な審理に向け、論点の整理を行った。このほか仲介・斡旋解決事案についての報告があった。

議事の詳細

日時
2009年 9月15日(火) 午後3時20分~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、 小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについて、申立人・被申立人からのヒアリング(事情聴取)を個々に行い、これを受けての4回目の審理が行われた。
この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したもので、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、元労働次官と経済学者、当時の労働省事務官の3人が「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと盛り込んだ』などの表現を多用し、派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで3回の委員会では、双方から出された文書や放送同録、当時の資料などにより審理を続けて来たが、9月15日には申立人・被申立人を呼んで、個々に事情を聴取するヒアリングを行った。
ヒアリングではまず申立人の3人が出席、「インタビューの切り貼りなどによる捏造」と「『ひっそりと盛り込んだ』などの表現で、元労働次官と経済学者の2人を個人攻撃した」という2点を中心に主張した。
一方、被申立人のテレビ朝日・朝日放送からは、番組プロデューサーやチーフディレクターら4人が出席した。そして「申立人ら多くの関係者の取材を通じ、多角的に検証し事実を基に放送したもので、インタビューの切り貼りという指摘も当たらず、事実の捏造などは行っていない。また「登録型」がいつの間にか派遣法に盛り込まれた様子を『ひっそりと』と表現したもので、申立人を個人攻撃しているものではなく、論評の範囲内と考える」と主張した。
委員会はヒアリングの後、最終判断の方向付けを協議、「委員会決定」案の作成作業に入ることを決めた。次回委員会ではこの「委員会決定」案について検討される見込み。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

9月1日の起草委員会でまとめられた「委員会決定」案が提示され、審理を行った結果、数カ所にわたって修正を加える必要があるとの結論に達し、再度、次回委員会で「委員会決定」修正案を基に審理を行うこととなった。
この申立ては、東京都在住の勤務医とその家族から、TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月13日に放送された、割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたものである。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

この事案は、2009年4月24日深夜と5月29日深夜に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から申立てがあったもの。
申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」は既に提出されていたが、前回の委員会の後、「答弁書」に対する申立人側の「反論書」と、「反論書」に対する被申立人側の「再答弁書」が提出され、双方の主張が出揃った。
これを受け、この日の委員会では本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記の仲介・斡旋解決事案について報告し、了承された。
「匿名を要求したのに実名放送された」との訴え 在京テレビ・キー局が2009年4月に放送した”介護保険”をめぐる報道番組で、取材された人(東京在住)から、「匿名を求めたのに実名が放送されたため、世間に知られたくなかった母親の病状が明るみに出てしまった」とテレビ局に抗議があった。
テレビ局は、「母親の映像を出さないことを了解した時点で、顔出し取材に応じ介護の実態を話してくれた長女の実名を出すことは、承認されたものと思って放送した」と釈明した。しかし長女は納得せず、謝罪と再放送の際は匿名にするよう求めた。
テレビ局は3日後に再放送を行ったが、その際、名前の部分を平仮名に変えただけで放送したため、長女はさらに憤慨し、誠意ある謝罪と、映像を再び使用しない約束を求め、放送人権委員会に訴えた。 放送人権委員会では、テレビ局に対し、被取材者を傷つける意図がなかったことや、その取材のあり方、放送のあり方について誠意を持って説明し、納得してもらうよう話し合いを勧めていた。この結果、9月に入って、テレビ局から相手方に対し下記の内容の文書が示され、長女もこれを納得、この事案は解決した。
文書で示された内容は、このような問題の再発防止のため、1)取材協力者に対し、撮影取材が始まる前に番組の趣旨を十分説明する。2)実名か匿名かの事前確認を徹底する。3)苦情に対しては取材担当者レベルでなく、速やかに責任者を集めて真摯に検討し、責任者が直接誠意を持って説明する。の3点となっている。また、テレビ局は、番組の再放送に当たっては、取材協力者の了解なしには行わないことも約束した。

(放送2009年4月 解決9月)

8月の苦情概要

8月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・11件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・ 103件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

事務局から以下の報告が行われた。

  • BPOの各委員会が公表した「見解」や「勧告」の内容について、テレビ・ラジオ会員各社に理解を深めてもらい、日々の放送活動に生かしてもらうことを目的に、新たに「BPO事例研究会」がスタートすることになり、事務局より報告した。 11月26日に第1回が開かれる予定。
  • 次回委員会は10月20日(火)に開かれることになった。

以上

第152回 放送と人権等権利に関する委員会

第152回 – 2009年8月

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案のヒアリングと審理

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理 ……など

「割り箸」事案の当事者に対するヒアリングと詰めの審理を行った。「派遣法」事案は論点を絞り込んで審理し、次回委員会でヒアリングを実施することになった。このほか、「拉致被害者家族からの訴え」事案については事務局から資料説明を行った。

議事の詳細

日時
2009年8月18日(火) 午後3時~8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案のヒアリングと審理

この申立ては、東京在住の勤務医とその家族から訴えてきたもの。TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月13日に放送された割り箸事故をめぐる判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると主張している。
審理入りしてから6回目となる8月18日の委員会において、申立人、被申立人(TBS)から直接意見を聞くヒアリングを行った。申立人側は、医師本人は事情があって出席せず、家族3人が出席した。一方、TBS側は担当プロデユーサーら3名が出席した。
席上、申立人は「本番組でTBSが設定した事実関係は、民事裁判の判決の事実認定と著しく齟齬するので不正確である。このことは判決要旨をよく読んでいないことに起因する事実誤認、もしくは担当医師や病院を痛めつけるための一部捏造である」と述べた。これに対し、TBSは「今回の放送は医療現場と、患者が求めている医療について、いろいろな問題を抱えている中、その一端をしめす例として割り箸事故を取り上げた。裁判の対象となった医師あるいは病院に対して、何らかの攻撃をする意図は元々ない。また申立人が指摘している事実認定の部分については、判決要旨をベースにVTRを構成したもので誤りはない」と主張した。
ヒアリング終了後、審理を行い、「委員会決定」案の作成作業に入ることとした。次回委員会では、「委員会決定」起草案を基にさらに審理を重ねる予定である。

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについての3回目の実質審理が行われた。
この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したが、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、当の元労働次官と経済学者らが「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込んだなどの表現を多用し、2人が派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで2回の審理で、各委員の意見がほぼ出そろったことから、この日の審理では、起草委員がまとめた「論点整理」に基づき、申立人が強く主張している、「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りした捏造報道であり、派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込み、派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃された」という点などについて検討した。 この結果、次回委員会で双方へのヒアリングを行い、問題点を詰めることになり、起草委員によってヒアリング項目の策定を急ぐことになった。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

2009年4月24日深夜と5月29日深夜に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下、「家族会」)から申立てがあり、8月4日の委員会で審理入りが決まった。18日の委員会までにテレビ朝日より「答弁書」が提出されたが、この日は他事案の審理もあり、事務局からの資料説明のみとし、実質審理を次回に持ち越した。
4月24日の上記番組で、田原氏は拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。この発言について、家族会は「根拠なく2人を生きていないと発言した。人の生死についての安易な発言は、名誉毀損やプライバシーの侵害以上に重大な人権侵害である」などと主張し、田原発言の放送での撤回と謝罪などをテレビ朝日に求めている。
これに対し、テレビ朝日は「答弁書」で、「社として確認できていない内容が生放送され、拉致被害者のご家族や関係者にご不快の念を抱かせたこと、視聴者の方々の誤解を招いたことをまことに申し訳なく存じている。そのため、5月29日深夜に、当社、および田原氏の謝罪を放送した」としている。

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の通知・公表

上記事案の「委員会決定」を8月7日に通知・公表したが、その概要とテレビ対応および新聞記事についての資料を事務局が配付し、当該局であるTBSが決定内容を伝えたニュース番組と『サンデージャポン』(当該番組)のビデオを視聴した。堀野委員長は「TBSの放送は大変ていねいだった。記者会見では熱心な質問が出て、新聞でも多くのスペースを割いて報道された。4月から新体制になった委員会の最初の決定として、良かったのではないか」と述べた。

その他

次回委員会は9月15日(火)に開かれることになった。

以上

第151回 放送と人権等権利に関する委員会

第151回 – 2009年8月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

6月29日に続いて臨時の委員会開催となった。8月7日に通知・公表が行われる「保育園」事案の「委員会決定」について最終確認が行われた。「割り箸」事案と「派遣法」事案の実質審理が行われ、「割り箸」事案では次回委員会でヒアリングが行われることになった。また、審理要請案件「拉致被害者家族からの訴え」について審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年8月4日(火) 午後3時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

本事案の「委員会決定」の通知・公表が8月7日に行われることになり、その最終確認が行われた。
本事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを、2008年10月19日のTBS『サンデージャポン』で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
* 8月7日、TBSに対し、重大な放送倫理違反があったとして、「勧告」が通知された。「委員会決定」の全文はこちらへ。)

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

本事案は、東京都在住の勤務医とその家族から、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害されたと申し立てられたもの。
8月4日の委員会では、番組の同録DVDを改めて視聴し、起草委員から提出された論点整理を基に、特に放送倫理上の問題点などについて審理を行った。次回、8月18日の委員会では、申立人、TBS双方に対するヒアリングを行い、直接意見を聞き、さらに審理を進めることとした。

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、この事案の審理入りが5月の委員会で決まっていた。この間、審理事案が多いことや申立人の都合などにより当事案の審理が遅れていたが、この日は6月委員会に次ぐ2回目の実質審理を行った。
この中では、申立人が強く主張している、「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りした捏造報道であり、派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込み、派遣切りなどの雇用不安を産みだした犯人だと攻撃された」という点などについて検討した。
この結果9月15日の委員会で双方へのヒアリングを行い、問題点を詰めることになった。

審理要請案件~拉致被害者家族らからの訴え

この案件は、2009年4月24日と5月29日に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の拉致問題についての発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下、「家族会」)と、その支援団体である「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(以下、「救う会」)から申立てがあったもの。
8月4日の委員会では、申立人から提出された「申立書」および「関連資料」、テレビ朝日から提出された「交渉の経緯と局の見解」、「関連資料」ならびに「番組同録DVD」をもとに、本件申立ての審理に入るかどうかを慎重に検討した。この結果、本件を家族会からの申立てとして審理に入ることを決定した。
4月24日放送の上記番組で、田原氏は北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「二人が生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。これに対し、家族会と救う会はテレビ朝日と田原氏に対し、「何の根拠もなく2人を生きていないと発言した。人の生死についての安易な発言は、名誉毀損やプライバシーの侵害以上に重大な人権侵害である」と抗議した。テレビ朝日と田原氏は文書と5月29日放送の上記番組とで謝罪し釈明したが、申立人らは納得せず、その後も双方の間で話し合いの場が持たれたが決着がつかなかった。

7月の苦情概要

7月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・45件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 放送人権委員会では、放送人権委員とBPO加盟各局との間での意見交換会を、毎年各地区で開いているが、今年は九州・沖縄地区の放送局を対象に、福岡で12月2日に開くことが決まった。事務局より報告し、了承された。
  • 『放送人権委員会判断基準 追補2009』がこのほど発行され、事務局より報告した。去年6月に発行された『BRC判断基準2008』に続くもので、2008年4月から2009年3月までに審理した4事案について示した判断基準をまとめた。サイズはB6変型版で71ページ。新たに「テレビ番組の文字情報によるインターネット配信」などの判断基準が盛り込まれている。加盟各社に配布するほか、入手希望の方には郵送料実費負担で頒布する。 (詳しくはトピックスへ)
  • 次回委員会は8月18日(火)に開かれることになった。

以上

第150回 放送と人権等権利に関する委員会

第150回 – 2009年7月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

「保育園」事案の審理の結果、本事案の「委員会決定」が大筋で固まった。また、「割り箸」事案の実質審理が行われたほか、「徳島・土地改良区横領事件報道」事案で、今年3月に勧告を受けたテレビ朝日のその後の対応について報告があった。「派遣法」事案の審理は、次回委員会に持ち越しとなった。

議事の詳細

日時
2009年7月21日(火) 午後3時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

6月29日のヒアリング後に発足した起草委員会での検討を経た「委員会決定」案が提案された。審理の結果、大筋で了承され、委員長と起草委員で一部修正のうえ、持ち回り委員会によって最終決定することになった。また、一部委員は決定理由などについて補足意見を書く意向を示した。
本事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを、2008年10月19日のTBS『サンデージャポン』で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

本事案は、東京都在住の勤務医とその家族から、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害されたと申し立てられたもので、7月の委員会では申立人からの「反論書」「反論書補充書」、TBSからの「再答弁書」を受けて、5月の委員会に引き続き、判決報道のやり方として適切であったかどうか、公正さに欠ける点があるのかどうか、などについて実質審理を重ねた。
次回委員会では、さらに論点をまとめて審理を進めることとした。

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の当該局対応

上記事案で重大な放送倫理違反があったとして、今年3月30日に「勧告」を受けたテレビ朝日は、その後の対応と取り組みを取りまとめた報告書を委員会に提出した。事務局より報告し、了承された。
(テレビ朝日の報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第39号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

仲介・斡旋解決事案の報告

事務局より下記案件について報告し、了承された。

「引ったくり事件の被害者が取材を拒否したのに実名報道された」と抗議

2009年5月24日、在阪の民放テレビ局が、ニュース番組の中で、引ったくり事件の被害者を実名で報道した。この放送内容について、被害にあった女性は、「事件後、取材に来た記者に対して”プライバシーに関することなので取材はお断りします”とはっきり言ったのに、ニュースで、実名、職業、年齢などのプライバシーが報道され、多大な精神的苦痛を受けた。犯人はなお、逃走中だ」と局に訴えた。 
これに対し、当該局は、「取材拒否を実名報道拒否とは受け止めなかった。事件報道では実名報道が原則」と説明したが、女性は納得せず、局側の謝罪を求めて放送人権委員会に苦情を申し立ててきた。事務局では、当該局に対し、女性に納得してもらえるよう説明するなど話し合いでの解決を勧めた。
双方で話し合った結果、7月13日に当該局担当者が女性宅を訪ね、「お詫び」の文書を提出した。これにより問題は解決を見た。「お詫び」の内容は、(1)取材を拒否した被害者の真意を汲み取り、実名報道の適否についてより慎重に対応すべきだった。(2)今後は、被害者から匿名を希望された場合には、その理由と事件の重大性などを比較考量し判断していくなどというもの。
事務局からの問い合わせに対し、女性は、「プライバシーを侵された怒りは消えませんが、改善策を含めたお詫びがあったことを前向きに受け止め、これで解決とします」と述べている。

その他

次回委員会は8月4日(火)に臨時で開かれることになった。

以上

第149回 放送と人権等権利に関する委員会

第149回 – 2009年6月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案のヒアリングと審理

「派遣法・登録型報道」事案の審理 ……など

当面する事案の審理を迅速・的確に行うため、10年ぶりに臨時の委員会が開かれ、「保育園」事案のヒアリングと審理が行われた。この結果、「委員会決定」の起草の方向がほぼ固まった。また、「派遣法・登録型導入報道」事案の論点整理、審理要請案件についての審議等が行われた。

議事の詳細

日時
2009年 6月29日(月) 午後3時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案のヒアリングと審理

本事案の当事者に対するヒアリングを実施した。
この事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
番組は2008年10月19日放送のTBS『サンデージャポン』。ヒアリングには申立人と、被申立人であるTBSから担当プロデューサーら3人が出席し、それぞれ1時間ずつ実施した。
申立人は「次から次へ事実と異なることを放送された。園児たちの映像は前日に撮影されたのに、あたかも行政代執行の当日、私が現場に並べさせ盾にして抵抗したかのような放送だった。『せめて保育園なら子どもを第一に考えて欲しかった』というコメンテーターの発言は、子どもたちをあずかる私たちの仕事に対する最大の侮辱だ。訂正放送はされたが、私の意向はまったく無視された。」と述べた。
TBS側は「初めて映像を見たコメンテーターが間違った認識で議論を展開してしまった。ナレーションやテロップで日付を明示し、コメンテーターや一般視聴者が勘違いしないようにすべきだった。また、コメンテーターとの事前の打ち合わせが足りず、発言の間違いに気づかなかった放送中の進行管理体制にも問題があった。訂正放送では申立人の要望に沿って訂正・お詫びし、名誉は回復されたと考える」と述べた。
ヒアリング終了後は審理を続け、「委員会決定」の方向がほぼ固まった。3名の起草委員が決定案を起草し、次回の委員会で検討することになった。

「派遣法・登録型報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、4月の委員会で審理入りが決まった。
この日の委員会では2回目の審理を予定していたが、他事案の審理や申立人の事情もあり、今回は実質審理を見送った。このため委員会は、事務局からの簡単な「論点整理」の報告と、今後のスケジュールの検討に止めた。
この結果、次回の7月委員会で本格的な審理を行い、8月の委員会でヒアリングという方向で進めることになった。

審理要請案件について審議

「宗教団体からの訴え」について審議した結果、審理対象外と決定した。
この申立ては、「在京の民間放送局が2009年1月29日のニュース番組で、事実ではない事項を放送し、当団体の名誉・信用を不当に毀損したので、放送法に基づき視聴要請をしたにもかかわらず、当該局は何も対応をせず、事実上拒否している。委員会で、当該局に対し視聴させるよう勧告して欲しい」というもの。
委員会では、委員会運営規則の第5条(苦情の取り扱い基準)は、放送された番組の内容を審理対象とすると規定していることから、本件のような視聴請求は審理の対象外であると結論付け、この旨、申立人に通知することになった。

その他

次回委員会は7月21日(火)に開かれることになった。

以上

第148回 放送と人権等権利に関する委員会

第148回 – 2009年6月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「派遣法・登録型報道」事案の審理 ……など

先月に引き続き、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理を行った。また、「派遣法・登録型導入報道」事案の実質審理が始まった。

議事の詳細

日時
2009年 6月16日(火)  午後3時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

前回に引き続き審理を行った。この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。番組は2008年10月19日放送のTBS「サンデージャポン」。
この日の委員会には、申立人の「反論書」とTBSの「再答弁書」が提出された。前回の審理をふまえ、名誉毀損はあったか、番組の性格を考慮すべきか、訂正放送は十分だったかなどの各点について、意見の集約に向けて審理した。
次回6月29日の委員会では、申立人、TBS側双方に対してヒアリングを実施することになった。

「派遣法・登録型報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の「サンデープロジェクト」の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、この事案の審理入りが4月の委員会で決まり、今回の委員会で初めて実質審理を行った。
はじめに、申立人・被申立人双方の主張をまとめた論点整理を行い、その後各委員がこの事案についての大まかな感想や意見を述べた。
その中では、「番組は熱心な調査報道である」という感想の一方、「言葉の使い方や映像の出し方はどうだったか」と言った声もあり、これらの意見を受け、次回委員会では議論の筋道を立て、委員会決定に向けて更なる審理を進めることになった。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理について

本事案は、東京都在住の勤務医らから、08年2月にTBSのニュース情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が医師の名誉を侵害したなどとして申立てがあったもの。申立人から提出される「反論書」、これに対するTBS側の「再答弁書」の提出を受け、6月の委員会で審理を続ける予定であったが、「再答弁書」が6月末に提出されることから、今回の委員会では実質審理は行わず、7月の委員会より審理を再開することとした。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・ 2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・83件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6月29日(月)に開催し、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の当事者に対するヒアリングが行うこととした。

以上

第147回 放送と人権等権利に関する委員会

第147回 – 2009年5月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

3件の審理事案のうち、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案と「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の実質審理が始まった。「派遣法・登録型導入報道」事案については、事情により今月は審理を見送った。

議事の詳細

日時
2009年5月19日(火) 午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

先月の委員会で審理入りが決まり、今月から実質審理が始まった。
この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
番組は2008年10月19日放送のTBS「サンデージャポン」。「申立書」によると、子どもたちが並んでいる映像は行政代執行前日の記者会見で撮影されたもので、この映像をもとにコメンテーターらが「無理やり並べさせられてかわいそう」などとストーリーを展開させており、ねつ造以外のなにものでもなく、訂正放送も全くおざなりだとしている。そして、具体的な事実誤認とコメンテーターの誤った発言に触れた訂正放送と名誉毀損の具体的内容に触れた謝罪の放送などを求めている。
TBSは審理入りの決定を受けて「答弁書」を提出し、この中で「理事に直接謝罪し、事実誤認に関しては、訂正・お詫び放送を行ったことから当社としては意を尽くしたつもりでおります。」としている。当日の委員会では、同録ビデオを改めて視聴したあと、各委員がビデオ部分とコメンテーターによるスタジオトーク、訂正放送について意見や感想を述べあった。
委員会は、申立人の「反論書」とTBSの「再答弁書」の提出を受けて、6月の委員会も審理を続行し、その次の委員会でヒアリングを行うことを決めた。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

先月の委員会で審理入りが決まり、今月から実質審理が始まった。
申立ては、東京都在住の勤務医らから、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故をめぐる判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、信用を失墜した。さらに申立人本人及びその関係者に事前に取材することもなく、一方に偏った不公平な報道であると訴えてきたもの。これに対しTBSは、医療事件をめぐる刑事判決と民事判決を比較しながら、医療機関には「最善の注意」を果たしてもらいたいとの観点から放送したもので、名誉を毀損したとの認識はない。また、医師側への「事前取材」がなかったとの指摘については、刑事と民事の判決を比較するに際しては必要不可欠なものとは考えてはいないと反論している。
委員会では、まずTBSから提出された同録ビデオを視聴した上、医師側から提出された「申立書」とTBS側から出された「答弁書」をもとに論点を整理し、議論に移った。この日の議論では、番組全体の内容と論調、スタジオでのゲストやコメンテーターの論評などについて意見が交わされた。この結果、申立人側から提出される予定の「反論書」、これに対する被申立人側からの「再答弁書」の提出を待ち、次回委員会でさらに論点を絞って審理を進めることとなった。

「派遣法・登録型報道」事案 審理日程の検討

この事案については先月の委員会で審理入りが決まったが、申立人側の事情を考慮して今月は審理を見送ることとし、今後のスケジュールについてのみ検討した。
なお、「サンデープロジェクト」はテレビ朝日と朝日放送の共同制作であることから、この事案の当該局はテレビ朝日と朝日放送の2局とすることになった。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・71件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 「徳島・土地改良区横領事件報道」事案で、「重大な放送倫理違反」という「委員会決定」(3月30日に通知・公表)を受けたテレビ朝日で、5月14日に決定内容についての研修会が行われ、講師を務めた三宅委員長代行及び事務局より報告があった。
    この研修会は「委員会決定」に対する局側の理解を深めてもらうとともに、局の現場の声を聞いて意思疎通を図る目的で開かれた。当該番組である『報道ステーション』のスタッフなど約80人が参加し、三宅委員長代行がパワーポイントによるレジュメを示しながらわかりやすく解説し、質問や疑問に答えた。三宅代行は「新しい試みであり今後の参考にしてほしい」と報告した。
    報告を受けて堀野委員長は「『委員会決定』は局が姿勢を変えたり、考えたりしていく始まりであり、今後はこうして欲しいという趣旨からも、この試みを続けていく意味があると思う」と語った。
  • 次回委員会は6月16日に開かれることとなった。また、6月29日に臨時の委員会を開くことを決めた。

以上

第146回 放送と人権等権利に関する委員会

第146回 – 2009年4月

委員長代行の指名

審理要請案件 ……など

堀野新委員長の下で初の定例委員会が開かれ、委員長代行に樺山、三宅の両委員が指名された。続いて、3件の審理要請案件について協議し、いずれも審理入りが決った。次回委員会から実質的な審理に入る。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年4月21日(火)午後4時~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、 小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員長代行の指名

冒頭、堀野委員長が、委員長代行に樺山委員(印刷博物館館長・新任委員)と三宅委員(弁護士・再任委員)を指名し、2人もこれを受諾した。堀野委員長は「再任委員と新任委員、法律家と非法律家という観点で選ばせていただいた」と語った。
この後、新体制のスタートに伴う委員会冒頭の撮影取材が行われ、新聞・テレビ各社から計14社・26名が集まり、スチールカメラ9台、テレビカメラ7台が入った。

審理要請案件

3件の審理要請案件について、それぞれ「申立書」と、局側から提出された「交渉の経緯と見解」及び「番組同録ビデオ」をもとに協議した。この結果、3件とも審理入りが決定し、次回委員会から実質的な審理に入ることとなった。

  • 「派遣法・登録型導入報道」事案

    この事案は、テレビ朝日『サンデープロジェクト』が、2009年2月1日および8日の2回にわたって特集した「派遣法誕生」の放送内容をめぐるもので、委員会で協議の結果、申立ての要件を充たしているとして、5月の委員会から実質審理に入ることを決定した。
    この特集では、最近の雇用破壊・派遣切りの原点が「派遣法」の制定にあり、特に「登録型」導入に問題があったとしているが、この番組の中で、「法制定を積極的に進めたのは元労働事務次官と元大学教授の2人であると名指しで個人攻撃され、名誉・信用を侵害された」として、両名らが訂正及び謝罪の放送を求めて申し立てた。
    これに対しテレビ朝日は、「特集は、不安定雇用の原因とされる『労働者派遣法』を検証する企画であった。特に見直しの検討も言われる「登録型」について、その成立の過程と問題点を指摘したもので、この問題を放置してきた「行政の不作為」についても検証している。決して、当時、法の制定に関わった方々を個人的に糾弾するものではない」と反論している。

  • 「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案

    東京在住の勤務医らから申立てのあった「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案について協議した結果、申立ての要件を充たしているとして、5月の委員会から実質審理に入ることを決定した。
    申立ては、2008年2月にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたもの。
    これに対しTBSは、医療事件を巡る刑事判決と民事判決を比較しながら、医療機関には「最善の注意」を果たしてもらいたいとの観点から放送したもので、名誉を毀損したとの認識はないと反論している。

  • 「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案

    この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。委員会で協議の結果、本件についてはBPOの放送倫理検証委員会で討議された経緯があるものの、申立ては要件を充たしているとして審理入りを決めた。
    番組は2008年10月19日放送のTBS『サンデージャポン』。「申立書」によると、子ども達が並んでいる映像は行政代執行前日に撮影されたもので、この映像をもとにコメンテーターらが「無理やり並べさせられてかわいそう」などとストーリーを展開させており、ねつ造以外のなにものでもなく、訂正放送も全くおざなりだとしている。そして、具体的な事実誤認とコメンテーターの誤った発言に触れた訂正放送と名誉毀損の具体的内容に触れた謝罪の放送などを求めている。
    TBSは「理事に直接謝罪し、説明不足はあるものの、事実誤認に関しては訂正・お詫び放送を行ったことから当社としては意を尽くしたつもりでおります」としている。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・149件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 3月30日に行われた「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の「委員会決定」の通知と公表について、決定を受けての当該局・テレビ朝日『報道ステーション』での報道や新聞各紙での記事掲載について、事務局より報告があった。
  • 次回委員会は5月19日(火)に開かれることとなった。また、事案が重なっていることから、迅速・的確に審理を行うため、6月以降、定例委員会に加え、必要に応じて臨時の委員会を開くことを決めた。

以上