第150回–2020年7月
テレビ朝日『スーパーJチャンネル』を審議
8月下旬以降に委員会決定を通知・公表へ
第150回放送倫理検証委員会は7月10日に開催された。
委員会が6月30日に通知・公表した琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
2月13日に通知・公表したTBSテレビの『消えた天才』映像早回しに関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含む取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
委員会が3月31日に通知・公表したNHK国際放送の『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見への対応報告が当該放送局から書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承し公表することにした。
スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人という不適切な演出をしたとして審議中のテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』について、担当委員から意見書の再修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、8月下旬以降に当該放送局への通知と公表を行うことになった。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして、5月の委員会で審議入りしたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、同番組を購入して放送した複数の局から提出された報告書及び当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも順次報告を求めることとしたが、その経過報告を踏まえて議論を行い、討議を継続することとした。
フジテレビと産経新聞が合同で行った世論調査のデータの一部に架空入力があり、それを基にしたニュースが合計18回放送されたことについて、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議を行った。委員からは厳しい意見が相次ぎ、再発防止策についての追加報告を待ち、併せてチェック体制などについてさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。
1. 「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」の通知・公表について報告
琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやって来た〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!~自分に合った資産形成を考える~』の2つのローカル単発番組について、委員会はいずれの番組も視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められ放送倫理違反があったと判断し、6月30日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などを報告した。
通知と公表の概要は、こちら。
2. TBSテレビ『消えた天才』映像早回しに関する意見への対応報告を了承
2月13日に通知・公表した、TBSテレビの『消えた天才』映像早回し加工に関する意見への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の社内周知や6月にBPO委員を招いてリモート形式で実施された研修会の状況等に加え、再発防止への取り組みとして、「放送倫理の向上を図るため、定期的に社内勉強会を行う」「素材段階でのチェックを強化する」「“密室”でのVTRチェックを禁止する」「スタッフを孤立させない組織作りを行う」などが記されている。
担当委員からは、上記研修会の様子や、研修の内容が受け止められて再発防止への取り組みが行われていることなどが報告され、適切な対応が行われているとして、当該報告を了承して公表することにした。
TBSテレビの対応報告書は、こちら(PDFファイル)。
3. NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見への対応報告を了承
3月31日に通知・公表した、NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見(委員会決定第34号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、今回の問題を受けて2019年6月6日に公表した再発防止策の徹底を、放送に関わる全職員およびNHKの放送系の関連団体に改めて求め、経営委員会・国際放送番組審議会に報告したことが記されている。また、委員会決定を受けた新たな再発防止策として、取材した内容の真実性や利害関係者かどうかの確認などについて、出演者側の承認を取る内容になっている「出演等承諾書」を導入したことなどが記されている。
委員からは、「委員会決定を受けた後の局としての方策についての記載が乏しく、局として意見書を具体的にどう生かそうとしているのか分からなかった」という意見が出された一方、「番組制作に直接関わった人たちが、委員会決定をどう受け止めたのかについて、とても詳しく書かれていることは評価できる」「放送現場では意識や対応の変化が出てきていると書かれている。意見書の内容が伝わり、現場が受け止めているのであれば評価できる」「新型コロナウイルスの流行が本当に落ち着いた時点で、意見交換の機会が持てることを望みたい」などの意見が出され、概ね適切な対応がなされているとして、報告を了承して公表することにした。
NHKの対応報告書は、こちら(PDFファイル)。
4. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議
テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から示された意見書の再修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、8月下旬以降に当該放送局へ通知して公表することになった。
5. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議
フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今回の委員会では6月末から7月上旬にかけて当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告された。次回委員会では意見書の骨子案が提出される見込みである。
6. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議
秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとして、討議を継続していた。
今回の委員会では、その経過報告を踏まえ、さらに討議を継続することとした。
7. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について討議
フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月までの14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約17%に当たる約2500サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えて架空データを作成しデータを作成していたとしている。
委員会では、「社会の意見分布を知る一番の手掛かりは世論調査だ。不正な世論調査結果に基づいて18回ものニュースが放送されたことは、その時々の世論に影響を及ぼした可能性を否定できない」「世論調査は国民にとって重要な判断材料であり、不正の有無についてチェックされることなく放送されていたことは深刻な問題だ」「放送、新聞が行うすべての世論調査の信頼性を揺るがす由々しき事態だ」などの厳しい意見が相次ぎ、「民放連放送基準『(32)ニュースは事実に基づいて報道し公正でなければならない』に抵触する疑いがあるのではないか」との意見も出された。そのうえで、局からの再発防止策についての追加報告を待ち、併せて管理体制、納品されたデータのチェック方法などについてさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。
以上