第125回 放送と青少年に関する委員会

第125回 – 2011年9月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第125回青少年委員会は9月27日に開催され、7月16日から9月13日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に、長時間番組の中の未明から早朝にかけて放送されたコーナーについて視聴し審議した。また、9月に寄せられた中高生モニター報告及び10月のテーマ等について審議したほか、今年度に取りまとめて公表する予定の調査・研究についての報告が行われた。

議事の詳細

日時
2011年 9月27日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

フジテレビ『FNS27時間テレビ』(7月23日~24日放送)
27時間テレビ中、24日未明から早朝にかけて放送された、女性の下半身にハケ状の物を回転させるいわゆる”ハケ水車”企画について、視聴者から「卑猥な描写や言動で夏休み中の子どもには見せられない内容」等の意見が寄せられ、番組を視聴の上審議した。

【委員の主な意見】

  • 『27時間テレビ』はフジ系列のステーションイメージを高めるブランド力のある番組であったはず。特に今年は被災地復興をテーマに掲げていたはずなのに、こういう企画が放送されることは理解に苦しむ。
  • テレビの現状は、3月11日の大災害を経験するとともに、地デジ化開始当日を迎え、今後どういう方向に進むのかという事が問われている時。制作者はどういう認識でこの企画を制作、放送したのだろうか。
  • かつて、テレビの深夜枠の性的表現について国会で議論され規制の声があがり、番組自粛の動きがあった。このような放送がそういう窮屈な状況をまねく恐れがあることを危惧する。
  • 視聴者は早朝の時間帯にこういう放送を流すことに強い憤りを持っている。夏休みで青少年が見ている可能性が高いという倫理的問題等を自覚しているのか問いたい。
  • 一般的に番組が男性の大人の目線で作られていて、制作者に女性や子どもの視点が欠けていることから、今回のような番組が制作されることになる。
  • かなり昔には深夜帯では裸を出したりするもっとどぎつい番組がたくさん放送されていた。それに比べると、裸でもなく水着でもなく、顔も隠していて配慮しているようにも見えるが、それが逆に覚悟なしでやっているようなすっきりしない印象を受ける。
  • 女性から見たら不快だろうと思うが、中身的にはぜんぜんリアリティーはなく、笑える部分もある。何をもって問題とするかは難しい。

以上の審議の結果、委員会としては番組の制作プロセスや企画意図等について、次回委員会で制作担当者等当該局からの説明を受け、引き続き審議を行うこととした。

中高生モニターについて

9月のテーマは、報道・情報・ドキュメンタリー番組の中から「いつも見ている好きな番組」について、どんな情報に関心が高いのか、どんな内容や構成に好感を抱いているのか、また、司会者やキャスターのどんなところに魅力を感じるかなど意見を求め、29人から報告が届いた。
まず朝のニュース・情報番組については12人から9番組について意見が寄せられた。複数回答があった番組は『めざましテレビ』(フジテレビ)が3人、『ZIP!』(日本テレビ)が2人で、学校へ出かける前の朝の忙しい時間帯に「テンポよく」「手短にニュース」を知ることができると同時に、エンターテインメント的な要素を含んだ番組が好まれていた。

  • 「私は家から学校が遠いのでゆっくり見られるわけではないのですが、『めざましテレビ』は、政治、芸能、スポーツと幅広いジャンルの最新情報をしっかり伝えてくれるので、とても役に立ちます。そしてメインキャスターの大塚さんをはじめ、皆さんがとても仲が良さそうなのが伝わってきます。ほかにも、『ココ調』というコーナーでは、今どきの若者のことだとか、どうでもいいようなことを調べていて朝から笑ってしまいます。」(高校2年・女子)
  • 「私が好きな番組は、『ZIP!』です。『ズームイン!!朝!』から毎朝、どんなに忙しくても10分は見るようにしています。報道番組はメインの司会者が気に入るかどうかで見ていました。新しい試みとして曜日ごとにメインの司会者が変わる、という点があります。最初のうちは慣れない生放送で、大丈夫なの?という風に感じましたが、徐々に慣れていって上手く噛み合うようになってきた今では、バラエティー番組に近い感覚で見ることができます。」(高校2年・男子)
  • 「最初は親が『NHKニュースおはよう日本』を見ているので私もなんとなく見ていたのですが、最近では毎朝これを見ないと一日が引き締まりません。この番組のいいところは、1つ1つのニュースが簡潔にまとめられていて、短時間で核心が伝わってくるのです。私は毎朝忙しいので30分ぐらいしか見ることができないのですが、それだけでもしっかり時代について行けます。」(高校1年・女子)

そのほか意見が寄せられた番組は、『ズームイン!!サタデー』(日本テレビ)、『みのもんたのサタデーずばッと』『サンデージャポン』(TBS)、『やじうまワイド!』(テレビ朝日)、『あさイチ』(NHK)『知りたがり!』(フジテレビ)。
次に、夕方から夜の報道番組には12人から9番組について報告が寄せられた。複数回答のあった番組は『報道ステーション』(テレビ朝日)が6人、『情報7daysニュースキャスター』(TBS)が2人だった。リポートからは、その日一日(もしくは一週間)に起きたたくさんのニュースを的確に伝えてくれると同時に、キャスターたちが硬軟おりまぜた明確なメッセージを伝えてくれる番組が好んで視聴されている傾向がうかがえた。

  • 「僕がいつも見ている番組は『報道ステーション』です。まず、古舘さんはひとつひとつのニュースに力・熱を入れて視聴者の方々に伝えているのが分かります。大震災の特集では、古舘さんが宮城の気仙沼市に行って現場から中継していて、その中で最も印象に残った言葉は『テレビで見るよりも実際に見る方がもっと被害が大きい』と伝えていて、テレビでは隅々までは伝えられないけど、古舘さんの言葉でホントに被害が大きいというのが伝わってきました。」(中学3年・男子)
  • 「私がこの番組が好きなのは、今国民が最も関心のある事柄を真っ先に取り上げ、それに対して真っ向から向かい合っているところです。国民が今何を望んでいるか、何を知りたいのか、政治、経済、教育、文化、スポーツ、芸能等どの分野も網羅して報道してくれるので、いつも満足して見ています。また、反対に歴史の狭間で忘れ去られた事も、敢えて時間をかけて取材し、埋もれていたことを知らせてくれます。さらに、父から聞きましたが、古舘さんが全盛期の頃のプロレス番組を担当されていたとか。実況中継をされていたことがあるだけに、歯切れが良く、知りたいことをズバリと言える能力を身につけておられ、安心して見ていることができます。」(高校2年・女子)
  • 「私が『情報7daysニュースキャスター』を好んでいる理由として、”バラエティー要素を含んでいる”ことがあげられる。ビートたけしがボケ、隣にいる安住アナがぴしゃりと締めるツッコミは、場面転換においてとても切り替えの良いものとなっており、”笑わせすぎない”ところが魅力的な番組だ。ビートたけしの発言が不謹慎で、クレームがくるのではないかと思う場面もあり、笑いが”過度”な部分もあるが、私たちやそれ以上の年齢の方たちにとっては十分面白い。子どもたちはもっと社会を知るべきだ。早すぎるということはない。自分の周りしか知らない彼らに、まだ見たことのない世界を見せること。それがテレビの役目であり、”社会を知る”大人へと育て上げる”教育者”でもあるのだ。」(高校2年・男子)

そのほか意見の寄せられた番組は、『クローズアップ現代』(NHK)、『NEWSZERO』『Going! Sports & News』(日本テレビ)、『スーパーJチャンネル』『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』(テレビ朝日)、『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)。
ドキュメンタリー番組には6人から5番組について意見が寄せられた。リポートの傾向は、さまざまな人物や事象に”密着”して真実に迫ろうとしている番組に強い関心が持たれていて、複数の意見が寄せられた番組は『情熱大陸』(毎日放送)だった。

  • 「私が今回見た『情熱大陸』は、発生から半年がたった東日本大震災について取り上げ、被災地の宮城県石巻市にある石巻日日新聞に密着取材していました。震災当日、津波によって浸水、漏電し機械類などすべてSTOPしてしまったので、もちろん印刷することなどできませんでした。しかし翌日から『壁新聞』を書き始めたのです。私はそのことに対して、驚きと尊敬を同時に感じました。家族の安否も分からないなか、情報を伝えるためにいろんな場所を取材する。それも翌日からです。本当にすごいなと思いました。石巻日日新聞社の方たちや被災者の方たちの生の声がとても多く、震災に直接は関係なかった私でも、とても考えさせられるものがありました。」(中学2年・女子)

そのほか意見の寄せられた番組は、『ダーウィンが来た!』『BS世界のドキュメンタリー』(NHK)、『カンブリア宮殿』(テレビ東京)、各局で放送される『警察24時』だった。

【委員の主な所感】

  • 時代のすう勢か、エンターテインメント系のニュース・報道番組がよく見られているのが今回の特徴で、もっと掘り下げた報道を求める声が少ない印象だった。
  • 報道番組にコメントがあった方がいいという意見と、コメントが要らないという2つの意見に注目した。『報道ステーション』を見ているという報告が多かったのは、深刻な話題が多い今日、大量の情報を分かりやすく解説してほしいという時代を反映していると感じた。
  • “分かりやすくて面白い”番組が好まれている傾向が強く、分からないけれど”なぜなんだろう”という疑問符のついたリポートが少なかったことが惜しまれた。
  • 『情報7daysニュースキャスター』について2人から報告が寄せられたが、ビートたけしの発言や役割を評価している意見は意外だった。我々から見ると彼の話は要らないと思うのだが、中高生が評価しているところに世代間の感覚にズレがあることがよく分かった。
  • 生真面目に伝えるニュースより、バラエティー化したニュース番組がよく見られている傾向が数多く目についたが、『おはよう日本』について書いてくれたリポートでは、さまざまな情報を簡潔にストレートに伝えてくれる番組がいいという意見には同感である。

「今月のキラ★報告」(東京・高校2年女子)

私がドキュメンタリーで見ている好きな番組は、『BS世界のドキュメンタリー』です。
NHKで放送されているこのドキュメンタリー番組は、海外で制作されたものを日本語に翻訳して放映しています。ドキュメンタリーの制作国は統一されているわけではなく、その時々にあった内容のものが毎回取り扱われています。今月は9.11テロが起こって10年目なのでそのことが中心に取り扱われています。
私が、この番組を好きな理由は、(1)海外で制作されたものをそのまま取り扱っていること、(2)翻訳の仕方、(3)司会者がいない、の3点です。
まず、海外で制作されているものを取り扱っているということが、私の中では非常に大切な点です。日本国内にいる以上、新聞やTVなど私の周りには常に日本の価値観が渦巻いています。海外でとらえている視点に触れるということは日常的にありません。そのなかで、日本独自制作のものではなく、海外制作のドキュメンタリーに日本語で触れることができるというのは大変貴重な機会だと思います。なので、そのまま丸ごと海外制作のものを放映してくれる番組というのは、日本においても、私たちにおいても必要不可欠なものだと思っています。
また、番組の翻訳の仕方が工夫されているように感じます。実際の英語の音声に被せて翻訳する場面と、字幕による翻訳で使い分けられていました。字幕の部分には、感情をあらわにしている人々の肉声がそのままこちらに伝わってくるようにされているのです。すべてナレーターの方に吹き替えられているのものでは、迫力やその人の思いなど伝わってこないものもあるので、きちんと使い分けられているのには好感が持てました。
最後に、この番組には司会者、というものがいません。つまり、このドキュメンタリーについてのコメント等が一切無いということです。私としては、ドキュメンタリー後に司会者の方から番組についてのコメントがあると、やはりその考えに偏ってしまうように感じています。コメントが無い方がもっとそのドキュメンタリーを見て思ったことに対して制限がかけられずに、ふくらませることができると考えているので、司会者なしで、ドキュメンタリーだけを流すというこの番組の構成を私は気に入っています。

【委員会の推薦理由】

日本の価値観だけでものごとを判断するのではなく、海外の情報をストレートに伝えてくれる番組を見て考えようという、”複眼”でものを見ようという姿勢が高く評価されました。また、外国語の伝え方について、字幕とコメントの違いを的確に分析していることも高評価の理由です。これからも”良い眼”を磨いて報告してくれることを期待します。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者及び一般視聴者を対象とした調査について、担当委員よりその分析及び関連等の概要が報告され、調査報告発表までの日程等について協議が行われた。

第175回 放送と人権等権利に関する委員会

第175回 – 2011年9月

委員会運営上の検討課題

「大学病院教授~」事案に関連する要望の取り扱い …….など

委員会運営上の課題について検討を重ねた。「大学病院教授からの訴え」事案に関連して寄せられた要望の取り扱いについて協議し、委員会としての見解を通知することになった。

議事の詳細

日時
2011年 9月20日(火) 午後4時~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員会運営上の検討課題

事務局による資料の収集・調査のあり方を手始めに2月の委員会から継続的に検討を行い、その後、苦情申立ての受理から委員会での審理、「委員会決定」の通知・公表に至る委員会運営の全般にわたって議論を重ねている。
今月の委員会では、申立人と当該放送局から提出される書面と資料の取り扱い等を中心に意見を交わした。両当事者から事情を聞くヒアリングについても、次回以降検討することにしている。

「大学病院教授~」事案に関連する要望の取り扱い

「大学病院教授からの訴え」事案に関連して、医療問題にかかわる或る団体から寄せられた文書の取り扱いについて協議した。
文書は「委員会決定」の内容について異論を述べ、訂正を求めるとともに、議事録の公開を要求するものであった。
これについて委員会では、当委員会が放送事業者が自ら設置した第三者機関であって、放送によって人権侵害を受けたとする当事者からの申立てに基づいて当該放送事業者との間の具体的紛争を処理するという性格上、当事者以外の団体や個人からの質問や批判に対して見解を示したり、回答することは適当ではないとの見解で一致、また議事録については、インターネットのホームページに掲載している議事概要をもって議事録としていることを確認した。
委員会では上記趣旨の文書をこの団体に送付し、理解を求めることになった。

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・‥73件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 10月4日に広島で開かれる中国・四国地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会について事務局より報告した。当日は9人の委員全員が出席し、放送局側との間で人権や放送倫理上の課題について意見を交わすことにしている。(追記:BPO加盟14社・63人が出席して予定通り開催された)
  • 次回は10月18日(火)に開かれることになった。

以上

2011年8月に視聴者から寄せられた意見

2011年8月に視聴者から寄せられた意見

岩手県産の米をプレゼントするという企画で、誤って「怪しいお米」「セシウムさん」などのダミーのテロップが23秒間流れた。被災者の気持を逆なでする非常識な内容だとして多くの批判意見が寄せられた。タレントの島田紳助が引退に際し、暴力団と芸能界の関係について、多数の批判が寄せられた。

8月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は2,705件で、7月と比較して262件減少した。 意見のアクセス方法の割合はメール72%、電話26%、FAX1%、手紙ほか1%。性別は男性72%、女性26%、不明2%。年代は30歳代35%、40歳代26%、20歳代19%、50歳代9%、60歳以上6%、10歳代4%。

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は969件[46局]であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、27件を会員社に送信している

意見概要

番組全般にわたる意見

8月の視聴者意見は2,705件と前月より262件減少した。 原発事故の影響で、農作物や魚介類などへの放射能汚染が懸念される中、岩手県産の米をプレゼントするという放送中に、誤って「怪しいお米」「セシウムさん」などのダミーのテロップが23秒間流れた。視聴者から被災者の気持を逆なでする非常識な内容だとして多くの批判意見が寄せられた。
暴力団会長との交際などを理由に、タレントの島田紳助が引退することになった。暴力団と芸能界の関係について、視聴者から多数の批判が寄せられた。
菅首相の退陣を受けて行われた民主党代表選挙は決戦投票の結果、野田佳彦氏が海江田万里氏を破り、新首相に選ばれた。選挙の模様を中継する際に誤った情報が放送され、投票行動に影響したのではないかとの苦情があった。
東北の被災地をめぐる意見では、支援に来ていたボランティアをテレビ局が自局のお笑いイベントのために使ったとして非難する意見が多かった。また、被災地陸前高田の松を京都五山の送り火の薪として燃やそうという企画をめぐって、行政サイドの対応が二転三転したことから多くの視聴者から批判があった。
ラジオに関する意見は41件、CMに関する意見は75件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は132件で、前月より50件ほど減少した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が49件、次いで視聴者意見に対する反論・同意が24件、性的表現に関する意見が14件と続いた。
低俗・モラルに反するとの意見については、情報番組のメインキャスターの発言に対し「暴力団などの“闇社会”の勢力を肯定、擁護している」との批判意見が集中的に寄せられた。視聴者意見に対する反論・同意については、主に深夜アニメへの批判に対して、家庭教育の重要性や保護者の役割を説く意見が寄せられた。性的表現に関する意見については、アニメやドラマ、バラエティー番組などに対して「過剰な性的表現が不適切だ」などの批判意見が散発的に寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 不謹慎きわまりない内容のテロップについて、東海テレビは謝罪文の中で「操作ミスによる送出が原因」としているが、問題なのは操作ミスではなく、あのテロップの内容だ。東海テレビは「担当者の認識不足とともに、番組プロデューサー、ディレクターのチェック・管理体制の甘さがあったことを深く反省する」としているが、これも論点がずれている。あのテロップは当該番組関係者全員の本音が露出してしまったもので、テレビ放送事業者としての資格に欠ける。
  • 東北の人間として、「怪しいお米セシウムさん」騒動に怒りを覚える。日頃、東海テレビのスタッフが陰で被災地を笑いものにしていることがよくわかった。リハーサルの時点で不謹慎だと叱る人はいなかったのだろうか。リハーサルで使用したものが流れてしまったミスに対してではなく、そのような意識を持った人がメディアを担っていることが不快だ。
  • 「セシウムさん」テロップに代表されるように、放送に携わる人間の「低い倫理観」が問題だ。各放送局でも今回の件は問題だと報道しているが、彼らにとっての問題は、電波で流れてしまったことであり、低い倫理観そのものではない。あのような言動は内部では特別なものではなく日常的なものなのだろう。今までずっとまじめだったのに、たまたま最初の”おふざけ”が、放送されてしまったなどということはありえない。周りの人間が知らなかったはずもない。
  • 一番問題だと思うのは、マスコミ関係者の”おかしな意識”が表に出たことだ。神妙な顔をして悔やみを述べても、その裏では被災された方々、風評被害にあわれた方々を嘲笑い、番組のネタにと思って番組を作っているのではないかということだ。風評被害を食い止める側の放送局がやってはいけないことであり、多くの人々が視聴するものを作っているという意識が希薄だ。誰も聖人君子ではないが、せめて人並みの神経と気遣いを持つべきだ。
  • 検証番組を見たが、テロップを作成した張本人は言い訳ばかりだ。岩手県民への謝罪が一言もなかった。この検証番組を放送して東海テレビは果たして良くなるのか。僕は良くならないと思う。汚名返上には気の遠くなるような長い年月を要することをしっかり自覚してほしい。
  • 被災地支援のボランティアの方にタダで会場設営をさせたと知り、怒っている。テレビ局に問い合わせたところ「南三陸町へ企画を提案し、賛同いただけたため」という説明だった。本当に失礼な話だ。本来、こうした会場設営や現場の誘導スタッフは、予算を組んで、それなりの金額で発注するものではないのか。その人件費をケチって、タダで済ませようとしたとしか思えない。もし本当に、被災地の復興を思っての番組であれば、被災地の人間に仕事を発注し、正しく人件費を支払うべきだ。
  • なぜ暴力団と関わりがあった島田紳助をそこまで擁護するのか?暴力団は一般社会の敵ではないのか。以前から週刊誌等で取りざたされていたにもかかわらず、司会者として起用していたテレビ局は問題だ。「今、引退するのはもったいない。これほどの人物がテレビ界から去るのはいかがなものか」。いったい、テレビ局の存在意義はどうなっているのか。まるでテレビ局自体が暴力団の存在を認めているように思える。民放テレビには本当に呆れた。
  • 司会者が、島田紳助の引退について「みなさんも、闇社会の人に助けてもらうことがあるはずだ」と社会常識とはかけ離れた発言をしていた。反社会勢力に対する認識が甘すぎるし、もしかしたら発言者自身も連中とかかわりがあるのではないかと思わせる口ぶりだった。

【番組全般・その他】

  • 「大阪のオカンあるある」と題して、大阪オカンのよくある行動を紹介していた。しかし、その内容が首をかしげるものばかりで、一緒に見ていた家族も「これはあり得ない」と口をそろえて言っていた。数年前に血液型性格分類の番組が問題視され、徐々に減少していったと聞いた。現に今では同種の番組はほとんど見られない。血液型はダメだが、県民性は許されるということか。どちらも根拠が不透明で差別や偏見を助長するものだと思う。
  • 終戦記念ドラマスペシャル「この世界の片隅に」を見た。戦争で友人を次々と失い、同居していた幼い子まで爆撃でなくしてしまうところを見て、胸が詰まる思いだった。友人を大切にすることの大切さや、平和のありがたさを改めて考えさせられた。毎年この時期になると終戦記念企画と称したドラマが増えるが、このような番組は8月に限らず随時放送すべきだ。悲劇が繰り返されないよう、私たちはニュースなどで社会の動きを知り、今何をするべきか学ぶ必要があると思った。
  • 人力でペダルを漕ぎ、プロペラを操作するタイプの飛行機を用いた大会だが、見ていてとても感心した。番組内で被災地の大学が紹介されたときには、会場内の人々から応援メッセージが沢山放送されていて、まるで震災復興の象徴になるような特別番組だった。
  • 7~8人である店の料理、又はある企業の冷凍食品の1位から10位を当てる番組。出演者がどの食品も最上級の言葉で褒めることに違和感がある。味覚は人それぞれであるのはわかるが、レンジで加熱した冷凍のから揚げを、それがさも一般の中華料理店の味をしのいでいるというような表現はいかがなものか。食べてみたがおいしくなかった。
  • お笑いタレントが着ぐるみで動物に接近するというものだったが、ライオンやハイエナ、ゾウに接近し、本当に危険だった。シマウマの格好をしたタレントにスタッフが「死んだふりをしろ」と言い、ハイエナが襲ってきた。着ぐるみの足は食いちぎられ、設置したカメラには牙が刺さるほどの穴だった。誰も助けず自力で逃げた。次はゾウの着ぐるみを着てゾウに接近、足を取られ転倒。そこへゾウが近づく。踏みつぶされそうになり、自力で逃げる。番組を作った人は馬鹿かと思った。一歩間違えば死んでもおかしくない。それを見て馬鹿笑いするタレント。これに倫理があるのか。
  • 大勢のアーティストを出演させておきながら、内容は全部「日本の名曲200」というもので、過去のビデオだった。いっさいアーティストの生歌がなかった。新聞や宣伝などでは、アーティストが実際に歌うようなことを言っておきながら、番組構成はビデオ。視聴者をだましたようなものだ。歌も歌わずビデオだけ見せられたアーティストにも大変失礼だと思う。
  • コンビニやファミリーレストランに芸人が集まり様々な食品を食べたり、クイズをしたりする番組が急増した。番組の面白さや、良し悪しはともかく、ただの店のコマーシャルにしか見えない。放送法には、「対価を得て広告放送を行う場合には、その放送を受信する者がその放送が広告放送であることを明らかに識別することができるようにしなければならない」とある。言い換えれば、企業からテレビ局に金銭を支払っているのなら「広告」に該当するため、バラエティーではなく広告番組であることを明示してほしい。毅然たる処置を取るべきだ。
  • 地デジ移行からこのかた、見たいようなテレビ番組がない。制作費の縮小、視聴率至上主義。テレビ離れが進んでいるから、視聴者の心をぐっと掴んで離さないような番組をどんどん世に出してほしい。一番忸怩たる思いをしているのは、良質な番組を作りたいと、頑張って仕事をしている人達だろう。そういう人たちを応援したい。
  • 地デジに完全移行したにもかかわらず、番組の品質向上が見られない。バラエティーやお笑い系が大半を占めており、高画質・高音質のハード性能を生かした番組が少なすぎる。もっと魅力ある番組をお願いしたい。
  • 地デジ化されたが、肝心のテレビ番組は相変わらずくだらない内容ばかりで、以前と少しも変わらない。高齢者や視覚障害者、低所得者をおいてけぼりにしてまで、地デジ化することに意味があったのだろうか。このままの放送を続けていれば、視聴者に見放される日もそう遠くないと思う。
  • クライマックスやこれからという時に必ずCMが入る。大変見苦しい。視聴率を上げたい気持ちは分からなくもないが、きっちり見せてからCMを入れても変わらないと思う。「まだまだ続く」「この後すぐ」等の後は次週への予告だったり、最後の締めだけのことがほとんどだ。次週の予告なら予告でかまわないではないか。最近のテレビは「しっかり見せる」ということへの配慮が欠けているように感じる。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 芸能人の引退報道の中で、キャスターが「一般人も闇社会の人間に助けてもらっているはずだ」などと暴力団を擁護するような発言をした。暴力団撲滅に社会が向いている中、夏休みで子どもも見ている時間帯に公共の放送でこの発言は問題があると思う。芸能界では一般的にそのようなことがあるのかもしれないが、「みなさん」と一括りにされることには憤りを感じる。
  • 高級料理の値段を当て合い、最下位の人間は食事代を全額支払うというバラエティー番組中の企画のゲストに、小学生の子役タレントが出演した。この子役タレントが最下位になっても保護者と称した別のタレントが払う特別ルールが採用されていたが、いくら子役本人が支払わないとはいえ、小学生に高額の料理をオーダーさせ、実際に食事させるという行為はきわめて非常識だ。番組を見た同世代の子どもの金銭感覚がマヒしてしまうのではないかと心配である。
  • インターネット上の掲示板で違法薬物取引がなされているという報道番組の特集の中で、隠語の解説があたかも違法薬物の取引の仕方を説明しているようだった。注意を促すつもりだろうが本末転倒だ。今は夏休みで好奇心で薬物に手を染めかねない若者も多い。このような報道をする放送局はモラルに欠ける。
  • バラエティー番組で人類滅亡説などを取り上げることがあるが、未来を諦める子どもが出てくるのではないか。以前放送したものと同じような内容だし、不安を煽って何が楽しいのか。この話題についての番組は良くないと思う。

【性的表現に関する意見】

  • 深夜からゴールデンタイムに移ったバラエティー番組だが、番組の大半は性についての話題だ。専門家からの意見や芸能人の話が全体を盛り上げているが、子どもには過激すぎて見せられないし、出演者の発言やテロップについて子どもに聞かれても答えられない。深夜ならいいと思うが、もう少し考えて放送すべきだ。ためになる話題もあるので見たいのだが、性についての話題になると家族がしらける。
  • たまたま見たアニメだが、モザイク処理はされていたものの、人型をした怪物の男性器を見せるシーンがあり、夕方の時間帯の番組内容としては非常に不適切だ。子どもという視聴年齢層も考えれば不快極まりない。

【危険行為に関する意見】

  • 危険だが面白い映像を紹介するバラエティー番組で、映像の途中に「危険なので真似しないでください」とテロップが出ていた。注意テロップを出すくらいなら、始めから放送しないか、子どもが見ない時間に放送するべきではないか。または、番組が始まる前に注意テロップを出すべきではないか。見てからでは遅い。子どもに悪影響を与えるような放送はしないでほしい。

【編成に関する意見】

  • 子どもも視聴するであろう番組は、青少年の寝る時間に配慮し午後9時以降には放送すべきでない。メディアや社会全体が子どもや家庭のあり方に配慮することが必要ではないか。
  • 性的、暴力的表現が過剰なドラマ。深夜枠であることを考慮すれば問題はないのかもしれないが、この番組の宣伝では性的なシーンなどが毎回のように使われていて、その上夏休みでもあるこの時期に昼間の再放送までしている。録画しなければ子どもが見る機会の少ない深夜と違い、簡単に視聴することができる時間帯に、このような表現が盛り込まれている作品を放送することは問題がある。

【表現・演出に関する意見】

  • テロップについて。日本語は冗長になりやすいため、端的にまとめたテロップはわかりやすくて良いと思うが、最近は「一字一句をテロップ化する」ことが多い。リモコン一つで字幕放送を表示できるので、冗長な文章をテロップにする必要はないのではないか。子どもの正しい日本語のセンスが磨かれないのではと危惧する。

【言葉に関する意見】

  • 近年、芸人などの影響により日本語が汚されている。「ヤバイ、メッチャ、マジかよ、リアル」などがよく使われているようだ。これを見ている少年少女が真似をして、言葉遣いも乱れてくる。

【殺人シーンに関する意見】

  • 2時間ドラマや刑事ドラマで、リアルに表現された殺人シーンが多過ぎる。先日も、子どもが刑事ドラマの殺人シーンについて話していた。子どもの好奇心を助長し、現実へ発展しないとも限らない。殺人ドラマではなく、心温まる感動ドラマを放送してほしい。

【マナーに関する意見】

  • スタジオ収録や生番組等の出演者で着帽が散見されるようになった。建物中では脱帽することは社会人としてのマナーだと思う。番組の制作者側に意識が欠如している。子どもへの教育上問題もあるだろう。マナーに反することは、たとえ出演者のキャラとしても自粛するべきではないか。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 子どもに見せたくないという価値観のもとに表現を萎縮させようとする意見が目立つ。子どもが見ると困るものは外に出れば溢れているが、それら全てのものに対し「規制すべき」と言うのか。子どもが不意に見てしまったら、親がちゃんと家庭で説明することが教育だろう。大人になった時、様々な困難に対処できる強さを身に付けるという点からも、不健全なものからただ隔離する方が子どもの未来を阻害しうることを理解すべきだ。
  • ドラマの主人公が暴力団に所属しているキャラだからといって、それだけで「暴力団を美化している」「番組を見た青少年が暴力団に加入して犯罪でも起こしたら放送局はどう責任を取るのか」などというのは余りに短絡的かつ幼稚だ。まともに育った青少年ならドラマひとつで暴力団に加入しない。暴力団に加入するような人間に育てたのは保護者だろう。

【CMに関する意見】

  • 公開直前のホラー映画の宣伝を最近よく見るが、小学生の子どもが見て脅えていた。恐がって夜は親のそばから離れない。私も今日初めて見たが、やっぱり恐くて見てしまったことを後悔した。見る側は宣伝を選べないのだから、もっと配慮があっても良いのではないか。
  • 私が子どもの頃は、パチンコCMなど深夜にしか流れていなかった。しかし最近は昼間からゴールデンタイムにまで及んでいる。5歳の息子にも「これはなあに?」と聞かれる始末。明らかにモラル違反だ。CMを流す時間帯の規制をすべきだ。

第52回 放送倫理検証委員会

第52回 – 2011年9月

日本テレビ「ペットビジネス最前線」の対応報告書について

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』 ……など

第52回放送倫理検証委員会は9月9日に開催された。
まず、5月31日に通知・公表した日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見に対して当該局から提出された対応や取り組みについて報告書を検討した。委員会はこれを了承し、ホームページ等で公表することにした。 3回目の審議となったテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』は、担当委員から提出された意見書案について議論し、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。不適切な字幕テロップが放送された東海テレビの『ぴーかんテレビ』については、当該局から提出された検証報告書等をもとに、取り扱いについて議論した。その結果、委員会としては初めての「提言」を公表することにした。

議事の詳細

日時
2011年 9月 9日(金) 午後5時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、是枝委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ「ペットビジネス最前線」の対応報告書について

日本テレビは、「ペットビジネス最前線」報道に関する意見について、どのような対応や取り組みを行ったかを報告書にまとめ、8月29日に委員会に提出した。
委員会としては、日本テレビが、「バンキシャ虚偽証言放送」以降に取り組んできたコンプライアンスの推進策などが組織の隅々まで浸透していなかったと反省し、より踏み込んだ対応策を打ち出したことを評価して、この報告書を了承することにした。(対応報告はこちらに掲載)

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

僻地紹介シリーズの第2弾として「南大東島」を取り上げ、サトウキビ農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ、村から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。
担当委員から意見書案が提示され、それに基づいて検討を行った結果、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。
(委員会決定第13号はこちらから)

不適切な字幕テロップが放送された東海テレビ『ぴーかんテレビ』について

東海テレビの情報番組『ぴーかんテレビ』で、「怪しいお米」「汚染されたお米」「セシウムさん」と不適切な表示のなされた字幕テロップが23秒間放送されたという事案。
各委員には、事前に東海テレビの検証番組のDVDと検証報告書を配布し、また、メールによる意見交換を行った上で、議論した。
現象としては、単純な誤操作による放送事故ではあるが、不適切な字幕テロップの送出により放送が与えた影響は無視できないうえ、事故の背景にある制作現場の問題は、委員会の意見書がこれまでくり返し指摘してきたことであるから、BPO規約23条に基づく「提言」をとりまとめ、公表することにした。(提言はこちら)

【BPO規約】

  • 第23条
    放送倫理検証委員会は、第4条第1項第2号に定める事業を行うほか、必要に応じて構成員に対し、第3条に定める目的達成のため、放送番組や放送倫理のあり方についての提言を行う。
  • 第3条
    本機構は、放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とする。

【主な委員の意見】

  • 大騒ぎになっていることは核心ではないと思うが、非常に不適切なテロップが23秒間流れたのは事実だから、その原因と結果について委員会は何か言わなければならないのではないか。
  • BPOがなにもしなかった場合、「検証番組を放送したからもういいんだ」ということになり、それでこの営業拡大路線というものが追認されていく感じになる。
  • 何らかの過失で重大な誤った放送がなされた場合にも倫理違反なのかどうかを議論すべきだ。
  • 一つの倫理問題ととる場合、放送倫理という文脈で問えるのか、社会一般的な倫理問題として問うべきか。
  • 経営合理化の問題であって、倫理の問題というよりどうやって番組をちゃんと組み立てていくかの問題だと思う。
  • 事故の背景にある現場のゆとりのなさ、コミュニケーションの不在、研修が効果を上げていないことは、これまで委員会が指摘してきた共通の問題。この際、規約23条の提言が適切ではないか。

以上