第187回–2023年9月
NHK『ニュースウオッチ9』について審議
第187回放送倫理検証委員会は、9月8日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員からヒアリングの内容と意見書の原案についての報告があり、次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の修正案を作成することになった。
1月12日放送のTBSテレビの報道番組『news23』において、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、職員やその家族が不必要な契約を結ぶ”自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、内部告発した職員が退職に追い込まれたとの週刊誌報道やテレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢が問題だという視聴者の声がBPOへ寄せられ、委員会は、取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした結果が報告された。今後は意見書の原案の作成を進める。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するために7月の委員会で討議入りし、今回の委員会には当該放送局から番組審議会の議事録等が提出され議論したが、さらに討議を継続することとした。
証言の一部を誤解して放送した報道情報番組について、当該放送局から提出された報告書を基に議論した。
8月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。
1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議
NHKの『ニュースウオッチ9』(5月15日放送)は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの内容と意見書の原案についての報告があった。委員から組織的な問題をより照射する方向性の意見などが出され、次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の修正案を作成することになった。
2.TBSテレビ『news23』について審議
TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。委員会は、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした結果が報告された。委員からは「内部告発者を取材する際は高いレベルの取材源の秘匿が求められる。今回は最終的にそれが徹底できなかった。なぜ徹底できなかったのかについて意見書では説明を尽くすべきだ」「今回BPOが一石を投じたことによって、調査報道に対する取り組み方を抜本的に改めようとか、調査報道の取材にもっと力を入れようとか、いい方向へ進んでいくのであれば、本事案を問題化したことが放送業界にとってプラスになると思う」といった意見が出た。これらを踏まえて今後は担当委員が意見書の原案の作成を進める。
3.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議
大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日~29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
7月の委員会で、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から討議入りした。今回の委員会には、当該放送局が8月に臨時開催した番組審議会の議事録と現状報告等が提出され議論した結果、今後の対応等をまとめた報告書の提出を待つこととし、引き続き討議を継続することにした。
4.証言の一部を誤解して放送した報道情報番組について議論
報道情報番組で販売店の元店長の証言をVTRで放送した後に、関係先の企業から事実と異なる点を指摘され、テレビ局が後日お詫びした。当該放送局から委員会に提出された報告書によると、改めて調査した結果、証言の一部を番組側が誤解していたことが判明し、また事前に関係先に対する確認取材を行っていなかったことも分かった。関係先へは当該放送局の幹部が説明とお詫びに行き、理解を得られたという。委員会では、相手先にとっての不利益な情報を放送するにあたり、報道の基本である裏付けや確認取材を怠ったことは、にわかに信じがたい事である等の非常に厳しい意見が出た一方で、事実関係を速やかに解明し関係先へも対応していることから、現時点では委員会が調査をする必要性までは認められないとし、議事概要で取り上げるにとどめ、議論を終えた。
5.8月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告
8月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能事務所創業者による性加害問題について、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の記者会見と、当該事務所が設置した外部の専門家による「再発防止特別チーム」の調査結果公表があり、さまざまな意見が多数寄せられたこと、その中にはBPOに対応を求めるも意見が含まれていることなどについて事務局から報告があり、BPOの審議には、規約・委員会規則による制約があることなどの議論を行った。
以上