TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見の通知・公表
上記委員会決定の通知は1月11日午後2時からBPOで行われた。委員会からは小町谷委員長、西土委員、高田委員長代行の3人が出席。TBSテレビからは報道局担当取締役ら4人が出席した。委員からは、内部告発者に寄りかかった安易な取材が行われていたこと、内部告発者が使わないでほしいと頼んだ映像を放送してしまったこと、編集作業の場に担当ディレクター以外の第三者がおらず放送前のプレビューも有効に機能していなかったこと、経験が浅くチームで唯一番組制作会社の所属だった担当ディレクターには細やかな指示や気遣いが必要だったのではないか、といった指摘があった。これを受けてTBSテレビの報道局担当取締役から「今回の事態は痛恨の失敗だと真摯に受け止めている。再発防止策を精査し更にアップデートして取り組んでいきたい。今後、強く正確な調査報道をしていくことで失われた視聴者の信頼を取り戻したい」という発言があった。
その後、午後3時から記者会見を開き委員会決定を公表した。会見には30社から47人が参加した。はじめに小町谷委員長が意見書のポイントを説明した。その中で、内部告発者の保護は放送局の責任において行われるべきもので、十分な時間をとって内部告発者の置かれた状況を把握し、身元がばれないよう対策を講じなければならないが、今回の場合、内部告発者の同意に依存して映像の見た目を優先した形で取材が進められており、内部告発者に寄りかかった安易な取材姿勢だったと考えていると述べた。次に、内部告発者が使用を控えてほしいと頼んだ映像を、約束を失念して放送してしまっており、情報源の秘匿を第一に考えていれば起こりえない失策を犯していたと指摘した。さらに、取材を担当したディレクターがひとりで映像編集を行ったため、事前の映像チェックが十分ではなく、放送前の最後の砦としてのプレビューも十分機能していなかったことを問題視した。最後に、担当ディレクターが報道での取材経験がほとんどなく、また、チームで唯一番組制作会社所属のメンバーだったことについて、引け目を感じなくて済むように細やかな指示や気遣いをしていれば、今回のような、結果にこだわり焦るあまり配慮を欠くような事態を避けることができたのではないかと述べた。
続いて西土委員が「内部告発者の言質に寄りかかる取材は、放送局の責任の所在を曖昧にする点で大きな問題をはらんでいる」と指摘した。そして「場合によっては、放送局が内部告発者に責任を転嫁するようなことになりかねない。この点において、今回の放送は、放送全般に対する国民の信頼を危うくする危険性があったのではないか」と述べた。高田委員長代行は「内部告発しようと思っていた人たちに、二の足を踏ませてしまったのではないかという点で、放送局にとって痛恨の失敗だった。不正や不祥事が噴出している今ほど調査報道が必要とされている時代はない。当該局のみならず放送業界全体で、今回の失敗から教訓を得てより素晴らしい報道を続けてもらいたい」と述べた。
このあとの質疑応答では、「内部告発者の身元がばれたことを問題としたのではなく、身元がばれたと強く疑われる状況を招いたことを問題視しているのか」という質問が出た。これに対して「公共の電波に乗せて伝える以上、身元がばれてしまった極めて高い可能性が生じた時点で、放送倫理上の問題が生じると考える」と答えた。「当該番組を放送した後、内部告発者から身元がばれそうだと連絡があった際、担当ディレクターの様子はどうだったのか」という質問に対しては、「担当ディレクターは、放送後も内部告発者とはコンタクトが取れていたので、とんでもないことが起きてしまったという程の重要性を感じていなかったようだ」と答えた。
以上