第86回 放送と人権等権利に関する委員会

第86回 – 2004年3月

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

「国会・不規則発言編集問題」審理…など

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

委員長が起草委員を指名し、ヒアリングに入る。

◆申立人側ヒアリング:出席者 申立人、および申立人代理人

まず、申立人が「事実と全く違うセクハラ教師を印象付けるために生贄的な構成にして貶めた放送であり、憤りを感じている」と述べ、ヒアリングに入った。

委員からの主な質問は以下のとおり。

  • 申立人側の主張が全く取り上げられなかった理由として局側は、申立人代理人が匿名を希望したので出さないほうが良いと思ったと言っているが、何故匿名を希望したのか。
  • 番組のどの部分が名誉毀損なのか
  • この番組で申立人が誰か判ってしまったか
  • 現在は復職しているのか
  • 停職6か月の裁決についてどう思っているか。
  • 教壇復帰が実現していないのは、この放送があったからか。等々。

最後に申立人代理人から「何故14日の放送の直前になって、10月10日に申立人に取材を申し込み、13日になって代理人弁護士に電話取材がきたのかについて、局からはいまだに説明が無い。説明責任を果たして欲しいと思う」との意見陳述があった。

◆被申立人側ヒアリング:出席者 北海道文化放送 報道局長、報道部長

冒頭、UHBが「事実経過で誤った点、申立人側の主張を最初の放送で十分伝えられなかった事などに対し、非常に残念に思う。しかし10月14日の放送は名誉毀損、人権・プライバシーを侵したとは思っていない。道教委、人事委にUHBが文書で働きかけをせよという要求は絶対のめない」と述べ、ヒアリングに入った。

委員からの主な質問は次のとおり。

  • ワイセツ教師をなくそうというキャンペーンの素材としてこの件を取り上げたことに問題があったのではないか。
  • 申立人側の主張が、取材には応じているが、全然放送されなかった。誤解と混乱があったからとのことだが、申立人側の主張を入れると番組が成り立たなくなったのか。
  • 制作日数はどのくらいか
  • 人事委の裁決を批判し、教育委員会の決定を支持するのが正しいという視点で作ったのか
  • 頬にキスはセクハラにも刑罰法規にも抵触しないなど人事委員会の裁決内容を報道したか。
  • コーナータイトルや最初の事例映像、それにキスというコメントなどでセクハラ的行為をしているという印象を視聴者に与えるとは考えなかったか。
  • 教育委員会の処分から人事委員会の裁決までの期間を間違えて放送したが、訂正が遅れた理由は何か。

ヒアリング終了後委員長から各委員に「ヒアリングの結果を踏まえて最終的なご意見を伺いたい」との要請があり、それぞれが意見を述べた。

以上の審理を踏まえ、起草委員に論点を整理してまとめて貰うことになった。

「国会・不規則発言編集問題」審理

最初に当該番組の問題個所と、テレビ朝日のお詫びのビデオを視聴したあと、事務局から論点整理の説明があった。

「編集」について、申立人は意図的捏造だと主張、テレビ朝日はあくまで思い違いによる誤りであった、オリジナルテープではなくダイジェスト保存版を基に編集したのが原因だと主張。

「謝罪」について、テレビ朝日はニュースステーションで藤井議員に反論の場を提供したのをはじめとして何度も丁寧にお詫びしており、さらに社内処分もしたと主張、一方申立人は「一方的な謝罪は納得出来ない」としている。

以上の説明の後審理を行った。そして起草委員を選出し4月の委員会でもう一度議論を行い、5月にヒアリングを行う予定とした。

苦情対応(2月)

◆人権関連の苦情〔19件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・8件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・11件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

事務局から業務報告会に提出する報告書内容の説明があり、続いて個別苦情の対応が報告された。

  • 幼稚園児インタビューに対する苦情
    前回委員会で検討した結論「もう少し話し合いの余地があるのではないか」との内容を双方に伝えた。しかし局側から「すでに誠意を持って交渉に当り、その結果謝罪文を受理してもらったと受け止めている」との返事が来た。申立人側からもその後動きが無いので見守ることにする。
  • ストーカー事件被害者のインタビューを顔出しで放送されたとの苦情
    愛知の女性からの苦情。警察官のストーカー行為の被害者が取材された際に「顔を出さないで下さい」とお願いしたにもかかわらず、顔出しで放送された。局側は「そのように聞いていない」としており話が食い違っている。両者の話し合いが行われたがまだ結論は出ていない。

以上につき放送人権委員会として「斡旋」としたいと事務局が提案、委員会はこれを了承した。

理事会報告

事務局から2回行われた理事会の内容が報告された。 2月の理事会では、藤井議員の案件を含む自民党からの2件の審理申立てについてのBPOの回答書をまとめ、理事長名で自民党幹事長宛てに出した。その後自民党からの動きは無い。

3月の理事会では、16年度のBPOの事業計画と予算、BPO規約と3委員会の運営規則の改訂、それに青少年委員会の委員の交代が議題だった。放送人権委員会の運営規則では、議決方法の改正が認められ4月1日から実施となった。しかし、他の提案部分についてはもう少し議論をしてということで継続審議となった。

その他

事務局内の異動について紹介があり、挨拶があった。また事務局から業務報告会の予定、当委員会の来年度の開催日はこれまで通り第三火曜日であること、青少年委員会が19日「子供向け番組に対する提言」を発表し会見するという予定が報告された。6時45分閉会。

以上

第85回 放送と人権等権利に関する委員会

第85回 – 2004年2月

「国会・不規則発言編集問題」

中学校教諭修正処分報道…など

国会・不規則発言編集問題」

まず、事務局からこの1か月間の経緯が報告された。内容は、「テレビ朝日と藤井議員との間で話し合いはなかった。事務局に藤井議員の代理人弁護士から『もう信頼関係が崩れているので話し合いは無理。審理を要望したい』との意思表示があった。この点をテレビ朝日に伝えたところ,答弁書を提出する旨の回答があり、2月17日に答弁書が提出された」

これを受けて委員会は、両者の話し合いは相容れない状況になっていることが確認されたとして審理入りする事を決めた。次回委員会では、当該番組等のビデオ再視聴や、論点について意見を交わすなど本格的な審理を行うことにした。

中学校教諭修正処分報道

双方から反論書・再答弁書など双方の文書が出揃い、事務局が主な論点について以下のように説明した。

申立人は、「自分の主張が全く取り上げられず、また裁決を曲解し予断と偏見に満ちた報道で名誉が毀損され、職場復帰が妨げられる恐れがある。 誤って報道した部分について取り消し放送をし、その旨を処分者である教育委員会などに文書で提出せよ」と要求している。

これに対して被申立人の北海道文化放送(UHB)は、「本質的に本件報道が申立人の名誉毀損や人権侵害に当るとは考えていない。申立人が指摘した部分については、教育委員会の再審請求が却下されたニュースを扱った12月の放送でほとんど修正できたと考える」と答えている。

更に申立人は反論書で「放送内容は新聞のラテ欄とホームページ等からして、セクハラ教師と印象付けたことは明らかだ。リポーターが学校の建物前でコメントしており、学校が特定出来てしまう。女性キャスターのコメント『やっていることも処分も許しがたい気がしますね』、『被害者の心の傷が癒えないまま,あと半年でこの教諭は教壇に戻ってきます』等が職場復帰を許さないという局の決意表明だ」などと主張。

これに対しUHBは、再答弁書で「新聞ラテ欄やホームページと放送内容は矛盾していない。建物をぼかして特定できないようにしている。停職6か月の処分は確定しており、匿名を前提に教師としてあるまじき行為と論評することは報道の範囲内である。女性キャスターのコメントは女性の観点から意見を述べているもので、女性の感想なり意見を封殺するつもりはない。市民の知る権利に答える企画であった」と主張している。

事務局からの説明を受けて、審理に入ったが、各委員の判断を明確化するまでには至らなかった。そこで事務局が問題点を整理した一覧を各委員に送り判断を求め、その結果を踏まえて起草委員の選任を委員長一任とした。また次回委員会では双方を招いてヒアリングを行うことになった。

テレビ山口からの「改善策」報告

民放連加盟各社はBPO発足に当り「BPO各委員会から問題を指摘された場合、具体的な改善策を含めた取り組み状況を3か月以内に委員会に報告し、委員会が報告に対して意見を述べ、BPOが報告と意見を公表することを了承する」との申し合わせをしている。これに基づき昨年12月の「山口県議選事前報道」の委員会決定を受けたテレビ山口から報告書が提出された。

事務局から報告書内容について説明を受けて議論した。その結果委員会は報告書内容を高く評価することで一致した。その旨を文書でテレビ山口に通知するとともにBPO報告にも掲載することを確認した。

検討案件

前回「放送人権委員会運営規則」について議論した内容を事務局が整理し、その内容を確認した。

委員会の考え方を理事会に提案し検討してもらう。

苦情対応

◆人権関連の苦情〔22件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・10件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・12件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・2件

この中で以下の苦情への対応を事務局が報告した。

  • 「自分は欠陥住宅とは判断していない」との苦情・・・今年度7件目の斡旋解決
    双方がようやく直接会って話し合った結果、欠陥住宅についての認識の差異があり、事前にその溝を埋めておくべきだったことを双方が確認、局側が今後の企画に協力要請を約束して解決した。
  • 「幼稚園児インタビュー番組」への苦情の申立て
    『お父さん、お母さんにやめてほしいこと何だ』という質問に幼稚園児の娘が『お父さんとお母さんの喧嘩。お父さんが叩くの。(お母さんは?)泣いた』と答えそのまま実名入りで放送された親から苦情申立てがあった。
    放送局側は「すでにお詫びの文書を出しており、これ以上話し合いは出来ないので放送人権委員会で判断してほしい」とビデオを送ってきた。
    ビデオを視聴し意見を交わした結果、「もう少し話し合って欲しい」と当該局に伝えることになった。

その他

事務局から「放送人権委員会運営規則については理事会で議論する予定で,その結果は次回の委員会で報告すること、また1月25日の東京新聞の記事に対してBPOが抗議したこと」などの報告があった。

最後に次回3月16日の委員会はヒアリングを行うので1時間早め午後3時開始を決めて議事を終了した。

以上

第84回 放送と人権等権利に関する委員会

第084回 – 2004年1月

「国会・不規則発言編集問題」

「人事委員会教諭修正処分報道」審理開始を決定…など

「国会・不規則発言編集問題」

12月の委員会で審理対象事案として受理したものの、当該局側に「話し合いを継続したい意向」が強くあったため、様子を見ることにしていた本事案について、当該局から「先月以降の交渉経緯」が提出された。内容は次の通り。

「局の面会要請に自民党側はなかなか応えなかったが、1月14日に局側と党幹部が面会した。しかし、党側からはっきりした回答や意向は示されなかった」

これを受けて協議した結果、双方に話し合い継続の可能性があるかないか意思確認を行い、その結果次第では2月の委員会で審理入りを決めることになった。

「人事委員会教諭修正処分報道」審理開始を決定

北海道の教育公務員が、代理人の弁護士を通じて申立ててきた事案について、審理事案とするかどうか検討した。まず、事務局が事案の概要を報告。その内容は、以下の通り。

当時15歳の女生徒の頬にキスをしたほか、二人でドライブや食事に行き、合鍵も渡して自宅に生徒を招くなどしたとして、懲戒免職処分を受けた元中学校教諭が、人事委員会に処分が重過ぎると不服を申立て、人事委員会は「教育公務員としてふさわしくない行為だが、事情を調べてみるといわゆるセクハラではなく、処分も重すぎる」として停職6か月に修正する裁決を下した。これに対して教育委員会は再審を請求した。

この件を03年10月北海道文化放送がローカルニュースの特集で取り上げた。新聞のテレビ欄は「生徒にキスを迫った教師の信じられない行為に親も激怒。処分は妥当か。スクールセクハラの驚くべき実態」となっていた。 番組を見た申立人は「人事委員会の裁決はおかしいという論調であり、私的制裁を加える放送である。事実関係も間違っており、申立人の主張が全く取り上げられていない。名誉を毀損され、職場復帰を妨害された」として取り消し放送と、取り消したことを人事委員会、教育委員会に文書で告知するよう要求した。

これに対して北海道文化放送は「教育委員会が再審申立てをするのは極めて異例なことで、ニュース価値があると判断した。決してこの処分を不当なものとして放送したのではない。申立人の主張を出さなかったのは、代理人弁護士に取材した際『放送で自分の名前を出さないで欲しい』という極めて稀な申し入れがあったためである。本件放送によって傷つかれたとするなら大変遺憾なことで、話し合いで解決を図りたい。また再審請求に対して結論が出た段階で修正放送するという考えを伝えた。そして12月17日再審請求が却下された時のニュースでは、明らかな間違いの訂正と、申立人側の主張などを十分反映した放送をしており、ほとんどが修正出来たと考える。しかし、放送局が教育委員会、人事委員会に放送に影響されないようにと求める文書を送れという要求はのめない」と主張している。

以上の概要報告の後、当該局から提出された放送ビデオを視聴し、この事案を審理するかどうか検討した。その結果、話し合いはすでに決裂しており本事案を審理することを決定した。

これにより、本事案は、2月の委員会から本格的な審理に入ることになった。

規約・運営規則について

事務局から「昨年7月BPOになって以来懸案となっている規約・運営規則等の見直しについて、検討し来年度から新しい運営規則にして行きたい」との説明があった。これを受けて委員会では問題提起されている「政治的公正・公平」といったテーマが放送人権委員会として裁定できる問題なのかという点も含め、運営規則の見直しについて議論した。来月の委員会でも引き続き検討を続けることになった。

12月の苦情対応概要

BPOに寄せられた12月の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔20件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

この中で以下の苦情への対応を事務局が報告した。

  • ニュース番組で、「家族の脱北を放送されたため、残る家族の脱北に失敗した」との苦情
  • 情報番組で、「自分は欠陥住宅とは判断していない」との苦情
  • 教養番組で、「成績表などがテレビで放送され、息子が不登校になった」との苦情
  • バラエティー番組で「・ゴミ屋敷・を取り上げたコーナー」への苦情

以上の報告、について委員会は了承した。

その他

事務局から今後の予定として、BPOの理事会、評議員会や年次報告会などの日程や内容が報告され、議事を終了した。

以上

第83回 放送と人権等権利に関する委員会

第083回 – 2003年12月

「山口県議選事前報道」の総括

「視聴率問題」三委員長・理事長会見の報告…など

「山口県議選事前報道」の総括

12月12日に行われた申立人・被申立人双方に対する委員会決定の通知と記者会見の模様について事務局から説明があり、この中で、下関市在住の申立人宅に出向いて通知した調査役から次のような報告があった。 「決定を伝えた後、申立人は『委員会の皆さんがこぞって決定して頂いたので大切に承ります』と言っていたが、『当該局は、決定内容を放送するだけで回復措置は取らないのか』と問うなどだいぶ不満のようだった」

次に、テレビ山口から提供された「委員会決定」の主旨を伝える同局のニュースのVTRを視聴した。委員からは、「当該局の対応は”放送倫理上問題”と見出しに取るなど、かなりきちっとしている」「裁判所の判決ニュースなら放送されないケースもあるが、放送人権委員会決定はニュースなどで各局がその内容を放送する。これは重要なことだ」などの意見があった。

委員会は、3か月後に当該局から報告を求めるなど放送倫理に対する今後の取り組み方を見守ることにした。

「視聴率問題」三委員長・理事長会見の報告

12月11日に行われた「視聴率問題」に関する三委員長・理事長による記者会見の模様について事務局から次のような報告があった。

「記者会見では、まず、青少年委員会の原寿雄委員長が『この視聴率操作事件を個人的な問題に終わらせずに、放送界の構造的な問題と捉え、これを契機に視聴率についての改善・改革への要求を起こしてもらいたい』と述べた。また飽戸委員長は『視聴率は本来の役割を越えて使われていて、それが視聴率競争や番組の劣悪化ひいては放送倫理の問題に繋がっている。視聴率の使い方が間違っている』と述べた。清水理事長は『BPO三委員会の21人の有識者委員が、視聴率についてどういう意見を持つかを踏まえて、三委員長による見解と提言という形で意見の集約が可能となった。各委員会のどこにも属さない重要な問題について今回初めてこういう形で具体化できた』と経緯を説明した。

また質疑に応えて『提言の相手は、広告界・代理店・制作会社・視聴者のほか新聞・雑誌など他メディアも含むなど多方面にわたっている』『視聴質については、各局・各番組で共通するものがあればそれが一番だ』『誤差を無視するなど視聴率の使い方が間違っている』などと三委員長が答えた」

この後、民放連が会長の諮問機関として設置した「視聴率等のあり方に関する調査研究会」について、委員として参加した飽戸委員長が12月15日の初会合の模様などを説明した。

検討案件

12月11日に自民党からBPO事務局にFAXで送られてきた2件の審理要請案件を事務局が説明、審理対象とするかどうか検討した。また、”ゴミ屋敷番組”に対する苦情申立人からの再要望についても検討した。

  • 「不規則発言を恣意的に編集」との申立について
    03年9月15日放送のテレビ番組で、同月20日の自民党総裁選挙に立候補した藤井孝男議員が97年2月の衆院予算委員会で不規則発言、いわゆるヤジを飛ばしている資料映像が使われたが、「恣意的な編集作業で『拉致問題に消極的』との印象を一般視聴者に与えるもので、悪質な選挙妨害であるとともに名誉も毀損された」と同議員が代理人弁護士を通じてBPO=放送倫理・番組向上機構に申し立ててきた。
    当該局は、10月6日の同番組の中で「誤った印象を視聴者に与える結果となり、お詫び申し上げます」という趣旨のコメントを放送したが、申立人側は「一方的な釈明放送で、承知できない」としている。
    本件を当該局に連絡したところ、局側からこれまでの交渉経緯概要と併せて当該VTRが事務局に寄せられ、委員会で当該部分を視聴した。
    この後、本事案を審理対象にするか否かについて検討した結果、申立人は公人とはいえ個人であること、また係争中ではないことなどから審理要請を断わる理由はないという意見が大勢を占め、この申立てを受理することとした。
    しかし、放送局側に話し合いの意向もあることから、双方の間で交渉が可能かどうかを見守り、次の委員会(04年1月20日開催予定)で審理入りについての最終結論を出すことになった。
  • 「政治的公正・公平に反する番組」との申立てについて
    申立ての内容は「03年11月4日のニュース番組で、『民主党菅政権の閣僚名簿』と民主党が選挙戦術として打ち出している『マニフェスト』について約30分間にわたって放送したが、これは放送法の”政治的に公平であること”や自社の番組基準に違反することは明らかだ。しかも当該放送は、選挙期間中に民主党一党だけのPRを行うものであり、申立人の権利を侵害している」というもの。
    委員会で検討した結果、本件申立ては自民党の安倍晋三幹事長名でなされ、”党”が主体であることがはっきりしていることから、放送人権委員会運営規則の「苦情申立人は、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人」に該当せず、放送人権委員会の審理事案にはならないという結論に達し、審理対象外とすることとした。
    これを受けて、飽戸委員長は「本件申立てについては、BPOとして検討することになるだろう」と述べた。
  • 「”ゴミ屋敷番組”への対応に再要請」
    大阪の精神科医が、”ゴミ屋敷番組”には「人権侵害の疑いがある」と抗議していた問題で、放送人権委員会はこれまでの検討内容と考え方をまとめた文書を10月22日付で精神科医と当該局に送ったが、その後、同精神科医から11月20日付けで「意見と要望」という文書が送られてきたため、これについて検討した。この中で精神科医は、申立てを審理対象とするよう再度検討してほしいと要望する一方、放送人権委員会での審理対象を当該本人のみに限定しないよう提言している。
    委員会で検討した結果、10月22日付けの送付文書で述べた「苦情申立人が直接の関係人でないため審理対象とならない」との結論が放送人権委員会の最終決定であることを再確認した。
    ただ、審理対象の基準についての提言については、本件も一つの契機になって運営規則の改正も視野に入れながら議論を始めようとしていることなどを事務局が精神科医に伝えることにした。

11月の苦情対応概要

BPOに寄せられた11月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔13件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・8件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

この中で、次の斡旋解決事案を報告した。

7月に大阪にある精神科の医療団体から事務局に寄せられた苦情で、その内容は「ドクター・ハラスメントを扱った報道番組に会員の精神科医が取り上げられたが、患者からの一方的な取材によるものだった」というもの。

医療団体と放送局側が話し合った結果、今後、精神科医療について懇談の場を設けることなどで合意した。

今年度6件目の斡旋解決である。

その他

12月11日に開かれたBPOの評議員会の模様を事務局が説明した。

また、次回の定例委員会を1月20日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上

第82回 放送と人権等権利に関する委員会

第082回 – 2003年11月

「山口県議選事前報道」の審理

三委員長・理事長会談の報告…など

「山口県議選事前報道」の審理

全委員から本事案に対する見解を文書などで出してもらい、それを基に起草委員会がまとめた「委員会決定」の最終原案を委員会に提出、この内「委員会の判断」部分を事務局が読み上げた後、意見を交換した。

その結果、文言や字句を手直しした最終案を作成し、全委員の承認を得た上で、12月12日に申立人と被申立人に通知し、記者発表して公表することになった。

また、委員会決定に関する少数意見の掲載方法について、今回は委員名を明示することとし、今後はその都度、検討することに決めた。

三委員長・理事長会談の報告

10月30日に開催したBPO発足後初の三委員長・理事長会談で、BPO全体の活動のあり方について意見交換し確認したことについて事務局から次のような報告があった。

同会談では「3委員会のどこの審議にもそぐわない苦情・意見などが多く寄せられている。放送人権委員会と青少年委員会は、扱うテーマが特化していて審理の幅に自ずと限界があるが、この2委員会になじまないものはすべて放送番組委員会というのも無理がある」という見方が大勢を占めた。その上で、今後「放送倫理の根幹に触れる問題については、できるだけ各委員会が現行の枠にあまりとらわれずに議論し、それを各委員長が取りまとめて三委員長・理事長会談で話し合う。そこでBPO全体としてどう対応するかを決めていく」ことを確認した。

これに関連して、飽戸委員長が「放送人権委員会が扱うことができる事案・案件の範囲は、その性格から、かなり限定されている。今後放送人権委員会で審理するテーマを広げたほうがいいか、広げなくてもいいか、また広げるとするとどういう形で広げたらいいかなどについても議論して頂きたい」と述べた。

日本テレビ”視聴率操作問題”で意見交換

まず事件の概要について事務局から説明があった。報道された事件の概要は次のとおり。

「41歳のプロデュ-サ-が、調査会社に依頼してビデオリサ-チ社のモニタ-世帯を特定し、日本テレビの番組、特に自分の番組を見てくれるよう工作した。工作資金は番組制作費の水増しなどで捻出、使われた費用は875万円だった。当該プロデューサーは、視聴率獲得を重視する会社の方針を取り違え、視聴率獲得のためには何をやってもよいとの独断の下に行った」

この問題が、前記2の三委員長・理事長会談で取り上げられ、BPOとしても各委員会できちんと議論するなどして対応することになり、本委員会でも意見を交わした。

委員からは以下のような意見等が出た。

  • 番組を評価する場合の最も重要な唯一の指標が視聴率だが、その意味を超えて使われすぎている。
  • 関東地区のサンプル数600で、視聴率20%の場合誤差は±3%という実態を無視した使われ方をしている。
  • 広告会社の肥大化や制作会社いじめが、問題の背景にあるのではないか。
  • 人権問題が絡んでいるわけではないから、放送人権委員会としては拡大解釈しても検討しようがない。
  • 視聴率を上げようとセンセーショナルな番組を作ろうとして、人権侵害が起こったりするという観点で、放送人権委員会につながって来るのではないか。
  • 視聴率は、放送会社の業績に直結するなど経済問題と密接につながっているため、「放送倫理」で判断したり捉えたりしにくい。
  • 視聴率問題にテレビ局自身が危機感を持たない限り、新しい方策は出てこない。かなり悲観的だ。
  • せめて、視聴率と視聴質の2本立てで対応できないものか。
  • 放送メディア全体、特に民放連が中心になって防止方策を講ずるべきだ。
  • 個人の行為云々と言うより、テレビ界の構造的問題がこういう形で出てきたと思う。基本的には、放送界が自分たちで改善策を作り、公表すべきだ。

こうした意見を事務局でまとめ、飽戸委員長から上記会談に報告していただき、BPO全体としてどう対応していくかを検討することになった。

札幌・意見交換会 報告

10月24日に札幌で開催した「放送人権委員会委員と放送事業者との意見交換会」について、事務局から「具体的な事例等を題材に活発で有意義な意見交換ができ、ありがとうございました」と報告があった。  
この意見交換会の模様を放送した地元局のニュースを視聴した。

10月の苦情概要

BPOに寄せられた10月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔15件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・10件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・3件

この中で、次の斡旋解決案件が事務局から報告された。 「インタビューに応えて、娘とのトラブルを話したところ、再現映像で話の内容をねじ曲げられ、私自身も悪者にされた」という苦情が寄せられた。 苦情申立人は、当初謝罪や番組での訂正を要求していたが、放送局側の担当者と話し合った結果、「怒りも収まった」と言う事で決着した。

今年度5件目の斡旋解決である。

その他

次回の定例委員会を12月16日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上

第81回 放送と人権等権利に関する委員会

第081回 – 2003年10月

「山口県議選事前報道」のヒアリングと審理

斡旋事案等について…など

「山口県議選事前報道」のヒアリングと審理

被申立人のテレビ山口から、報道制作局報道部長と業務局編成業務部長の二人がヒアリングに出席した。冒頭、テレビ山口側は「選挙報道ということで公益性もあり、まじめに選挙を捉えて報道したつもりだ。そうした姿勢で取り組んだという点をご理解いただきたい」と述べ、ヒアリングに入った。

主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 「いずれも落選」というスーパーは申立人にとっては厳しい表現だ。このスーパーを出す必要があったのか。

A: 普段からコメント内容はできるだけスーパーで補足している。その際、文字数は極力短く、見てすぐわかるようにという観点から「当選に至らず」ではなく「落選」を選んだ。

Q: 告示直前の時期ということで、マイナスの影響を及ぼすという可能性は考えなかったか。

A: マイナスの可能性は考えなかった。

Q: 最後に写真が出て、「落選」とのスーパーがかかると何らかの制作意図があるように感じるがどうか。

A: 意図はない。最多立候補と紹介したのでその結果も伝えるのが当然と考えた。

Q: 「当選に至らなかった」と「落選」の意味は同じと捉えていたのか。

A: 社会通念上は同じと捉えていた。

Q: 青い矢印をつけて「落選」という強調の仕方はどうか。

A: 絶対必要とは思わないが、私どもが通常採っている表現手法だ。

Q: 撮影した写真の使用目的について十分説明したかどうか。

A: 個別の番組名までは説明していないが、「選挙報道に使うため撮影させてください」とお願いした。

Q: 番組の最後にこの話題を持ってきたのは、制作者として視聴者を楽しませたいとの思いがあったのではないか。

A: 視聴者を楽しませるなら別の作り方をした。この企画は純粋にデータを提供したいというものだった。

(ヒアリング所要時間は約50分、被申立人側が退席した後、審理を続行)

10月3日に開かれた起草委員会の検討概要を飽戸委員長が報告し、起草委員が検討内容を説明した。

起草委員会の検討内容やヒアリングの結果などについて、各委員が意見を述べ合うなど1時間半にわたって本事案を審理し、次回委員会までに詰めの作業を行うことになった。

斡旋事案等について

事務局から、対応した3事案について報告があり検討した。

  • 「息子の学校生活が取材報道され不登校に」との苦情を検討
    高校生の母親から寄せられた案件について事務局から説明があった。内容は、「息子の学校生活などが放送され、その影響で不登校になった」というもの。当該局の対応を含めて検討した結果、委員会として、息子さんへの影響も十分考慮しながら解決を目指して、双方に働きかけていくことになった。
  • 「”ドクハラ”報道に精神科医から斡旋の申し入れ」を検討
    精神科診療所団体の幹部から、「ドクター・ハラスメントに関する報道番組で、会員の医師が取り上げられたが、患者からの一方的な取材によるもので納得できない。今後このような問題が再発しないよう、放送人権委員会に、当該局との話し合いを斡旋してほしい」との申し入れがあった。検討した結果、委員会は斡旋に入ることに問題はないと判断し、当該局に「苦情連絡票」を送付し、対応を求めることにした。
  • “ゴミ屋敷”番組に関する送付文書を決定
    精神科医が、ゴミをため込んだ家の住人にゴミを片付けるよう働きかける番組に対して「人権侵害の疑いがある」と抗議していた標記案件については、前回の委員会で検討した結果、これまでの委員会の検討内容と考え方をまとめた文書を苦情申立人と当該局双方に送付することにしたが、その文案を了承し、委員長名で出す事にした。
    送付文書の概要は、まず結論として「委員会は、苦情申立人が直接の関係人でないため審理対象とならないと最終的に決定した」ことを伝えた上で、「精神科医の問題提起は、放送と人権、特に精神障害の可能性のある人々への人権侵害の問題に示唆を与えるもの」として重く受け止め、「精神障害の可能性のある人々を笑い者にしていないかという点についても慎重に検討した」。また「放送人権委員会としては、苦情申立ての間口を広げようとしたが、この案件によってそこまではいかなかった」というもの。

9月の苦情概要

BPOに寄せられた9月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔17件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・4件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

札幌・意見交換会について

10月24日に札幌で開かれる「放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会」の詳細等について事務局から説明があった。

放送人権委員会からは飽戸委員長ら5名の委員が、また、地元放送局からは8局35人が参加する予定で、地元局の報道現場などから寄せられた具体的なテーマについて意見を交換することになっている。

その他

最後に、次回の定例委員会を11月18日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上

第80回 放送と人権等権利に関する委員会

第080回 – 2003年9月

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理

「ゴミ屋敷番組に精神科医が抗議」について…など

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理

事務局から、申立人と被申立人(テレビ山口)双方のこれまでの主張対比の説明があり、次いで論点別に各委員が意見を述べあった。主な意見は以下のとおり。

■肖像権の侵害について

  • 本人が無理やりその意思に反して写真を撮られたとは考えられない。
  • 当人は、開票速報などに使う写真と理解していたところ、自分が意図していなかった番組で使われた点を問題にしているのではないか。

■「落選」は虚偽報道か、放送時期に問題はなかったか?

  • 社会通念上、当選者以外は「落選」と報道され、誰もそれに疑念を持たず、社会も受け入れている。
  • 「繰り上げ当選資格者を落選というのは虚偽報道」との主張は誤認であり、社会通念に反する。
  • 放送時期が問題。「当選に至らなかった」は事実の報道として受け取れるが、「落選」というのはマイナスイメージだ。

■その他

  • 「名誉感情」の問題として本人が受け止めるのはもっともなことだが、名誉感情に対する不法行為責任まで問えるかとなると難しい。
  • 番組構成上、最後に「いずれも落選」を持ってきたのは意図的であり、本人を貶めているという印象は否めない。
  • 法律違反や不法行為の問題ではないが、「もう少し報道というのは気を付けたほう がいい」ということではないか。
  • 選挙報道でこのような表現までも放送倫理上問題があるとなると、「政見放送」のような窮屈な放送しかできなくなるのではないか。
  • 選挙の情報はできるだけ多角的に提供されるべきで、立候補した結果の情報も有権者の関心に応えるものであろう。
  • 人身攻撃を目的とした報道であれば、公益性を欠くことになる。本人は「この番組は私を標的に作られたものだ」と主張しているが、そう認定できるかが鍵だ。

この後、起草委員2名を決め、次回までに「委員会決定」の草案を作成することになった。また、次回10月の委員会では、関係者を呼んでヒアリングを行うことを決めた。

「ゴミ屋敷番組に精神科医が抗議」について

ゴミをため込んだ家を訪れ、片付けるように働きかける番組に、大阪の精神科医が抗議している件を先月に次いで検討した。

この件について委員会は、現行の放送人権委員会運営規則上、精神科医には申立人としての適格性に問題があること、住人が精神障害者か否か確認しにくいこと等を指摘していた。

この日の委員会では、人権侵害の可能性がある番組の場合、申立人がいなかったり申立人としての適格性を欠いていても、従来より間口を少し広げて、放送人権委員会の審理対象になり得る方向を探れないかという観点から、改めて検討を加えた。

その結果、ゴミ屋敷の住人を笑いの対象にしているとの指摘はあるが、当該番組はバラエティ-番組なりに全体的に公益性を踏まえた演出がなされていることなどから、この事案をもっていきなり放送人権委員会審理の間口を広げるには難しいとの意見が大勢を占めた。

委員会では、これまでの検討過程で出た意見などをまとめて、抗議してきた精神科医と当該放送局に送り、理解を求めることとした。

“苦情・権利侵害申立ての手続き”について

「苦情申立て」から「権利侵害申立て」までの手続きマニュアルを事務局が説明。 概要は次のとおり。

まず、BPOに寄せられる苦情等の中から、名誉・信用・プライバシー等の権利侵害と思われる苦情を放送人権委員会関連苦情として取り出す。

その苦情を、(1)審理を求めているのか、(2)話し合いを斡旋してほしいのか、(3)単に放送局に伝えてほしいのか、(4)それ以外の単なる相談かに分類。

次に、前記(1)(2)については、ア:局側の対応が不誠実または不十分の場合、イ:話し合いが継続中の場合、ウ:局側への接触がない場合に分けて、アとイのケースは当該局に「苦情連絡票」を送り、”苦情受理”とする。双方に話し合いを勧め、話し合いがついたケースを”斡旋解決”とする。話し合いが相容れない状況と判断した段階で、「権利侵害申立書」を提出してもらい、審理事案とするかどうか委員会に諮る――という段取り。審理入り以外に話し合い(斡旋)継続、審理対象外との判断もある。

以上の説明を委員会も了承した。

委員会決定についてNHKからの報告

放送人権委員会が今年の3月に委員会決定した「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」に関して、8月26日NHKから「委員会決定に対する取組状況」について報告があった。

この報告を受けた飽戸委員長が概要を説明。 委員会で飽戸委員長は、「一番肝心な点は、放送人権委員会決定を受けてNHKが申立人に最終的にどう対応したかということだが、NHKは『当該番組に関して別途進行中の裁判に放送人権委員会決定の内容が利用される可能性があり、申立人に対する最終的な対応は裁判の進行をもう少し見たうえで決めたい』としている」と補足、委員会も了承した。

8月の苦情概要

BPOに寄せられた8月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔21件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・3件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・18件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

人権関連の苦情の中で次の案件が事務局より報告された。

▽「自動改札機の開発を取り上げた番組」への抗議

京都の元会社員から、自動改札機誕生を取り上げた教養・ドキュメンタリー番組に対し抗議があった。その概要は次のとおり。

「磁気切符開発(磁気記録の技術開発)の経過を描く番組中で、真実が歪曲された。真の開発者の名誉を守るために、当該放送局らに訂正と再発防止を求めたが誠意ある回答は得られなかった」

この案件について委員会は、当該局に元会社員との話し合いを求めることにした。

(当該局に「苦情連絡票」を送付)

その他

事務局から、放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会を10月24日(金)札幌で開催することになった旨の報告があった。

最後に、次回の定例委員会を10月21日(火)とし、最初に「山口県議選事前報道」事案のヒアリングを行うことを申し合わせ、議事を終了した。

以上

第79回 放送と人権等権利に関する委員会

第079回 – 2003年8月

7月の苦情対応状況

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理要請申立て…など

7月の苦情対応状況

7月1日のBPO発足から、6月までと比べて、寄せられた苦情等の集約の仕方が変わった点を事務局が説明した。

BPOに寄せられた7月1か月間の苦情・意見は次のとおり。

◆件数 1215件=内訳

  • 人権関連の苦情 55件
  • 番組関連の苦情  319件
  • 青少年関連の苦情  239件
  • BPOへの問い合わせ  92件
  • その他(心因性含む)  510件

◆人権関連の苦情〔55件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・17件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・38件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・3件

この後、個別の苦情内容の概要が説明され、その中で、「患者からの一方的な取材のみに基づく放送で、医師が非難された」という苦情が紹介されたが、このケースは、本人の医師が”表面に出たくない”という事で、”相談”という段階に留まっているとの説明があった。

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理要請申立て

まず、事務局から本件事案の概要が報告された。その内容は、以下のとおり。

今年4月の山口県議会議員選挙に立候補した男性が申し立ててきた対象番組は、テレビ山口が3月25日に放送した夕方のローカルニュース番組の中の「統一地方選挙企画シリーズ・県議選なんでも一番」。これまでの県議選のデータの中から最年少当選者や最年長当選者、最多当選回数者、最多得票者など何でも1番を伝えた後に、申立人が最多立候補者として実名・顔写真付きで紹介された。その時の放送コメントは「合わせて12回出馬していますが、いずれも当選にいたっていません」で、また画面スーパーで「いずれも落選」と表示された。

この報道に対し、申立人は「選挙前に落選12回との報道は、”この人は投票しても役立ちそうにない”と選挙民を誘導することになり、選挙妨害である。 自分は繰上げ当選資格者であり断じて落選者ではない。虚偽報道で名誉を毀損された。

また、放送された写真は、自宅の外壁前で故意に撮ったもので、それを無断で使われ、肖像権の侵害だ」と主張している。

これに対しテレビ山口は、「落選12回という表現は事実に基づいた内容で、申立人の選挙ポスターなどにも記載されており、本人が隠したかった内容とは思えない。申立人が訴えた山口地方法務局人権擁護課からは『今回の報道は名誉毀損や人権を侵害したとまでは言えない』との見解が出ており、違法性はない」と主張している。また写真については「選挙用の顔写真を各社一緒に撮影した時に当社の担当が休みでいなかった為、後日、本人の了解を得て自宅前で撮ったもの」と説明している。

この後、当該局から委員会に提出された放送済みビデオを視聴し、この事案を審理するかどうか検討した。その結果、双方の主張は相容れない状況になっていると判断できることなどから放送人権委員会運営規則第5条の「苦情の取り扱い基準」に該当しているとして、本事案を審理することを決めた。

なお、この日の委員会では以下のような意見があった。

  • 法定得票数を確保しているから落選ではないと申立人が主張している点はいかがか
  • このケースは、申立人の名誉感情を害されたという問題と、報道によって選挙結果に不利に作用したかという問題の二つに大別されるのではないか。
  • 選挙情報を伝えることは、国民の知る権利に報道機関が応える当然の責務であり、これと名誉感情が害されたかどうかのどちらが優先するか吟味する必要がある。
  • 告示前という時期の放送としてはどうか。

本事案については、次回委員会で論点整理を行うなど、本格的な審理に入ることになった。

苦情対応事案について

事務局から、斡旋解決事案と審理等再検討要請への対応、それに苦情申し入れ案件についての報告があり、意見交換した。

  • 「写真の無断使用に苦情」=斡旋解決
    8月1日に大阪の男性からBPOに寄せられた苦情で、その内容は「6月に放送された、精神障害者の社会復帰を目指す番組の中で、仲間と一緒に自分が写っている8年前の写真が断りもなく使われた。その後、仲間とは立場や考えが変わり、一緒の写真を使われて非常に迷惑している」というもの。
    事務局では、当該局に「苦情連絡表」を送る一方、苦情申立人に放送局側との話し合いを勧めた。
    その結果、局側が、無断での写真使用を陳謝する謝罪文を出し、決着した。
    本件は、今年度4件目の斡旋解決事案となった。
    なお、委員から「このケースを含めて斡旋解決事案を今後の教訓として生かし、蓄積していく為にも、謝罪文や合意文書を、出来れば当事者から取り寄せておくことが望ましい」という意見が出、今後検討していくことになった。
  • 審理等再検討要請に理事長名文書=報告
    去年6月に高校教諭が痴漢容疑で逮捕されたニュースで、学校名を実名で放送されたことに対して、当時のPTA会長が「教育的配慮に欠ける」と放送人権委員会に申し立てたが、放送人権委員会は審理対象外とした件で、今年7月元PTA会長から新組織BPOで再検討してほしいとの要請があった。BPOで検討した結果、理事長名の文書を元PTA会長に送り、理解を求めた。
    文書の概要は、「再検討要請を7月の放送人権委員会に報告し、BPO内にある放送番組委員会で扱えないかなどを検討した。しかし、番組委員会は苦情処理機関としての性格付けがなされていないので、直ちにこの問題を検討・審理するのは難しい。また、指摘された匿名か実名かの問題も、今、BPOが一つの方向を放送局側に押し付けるわけにもいかない。今後、各委員会のあり方などを検討していく中で、こうした問題にも取り組んでいくので、ご理解願いたい」というもの。
    委員会は以上の報告を了承した。
  • 「”ゴミ屋敷”番組に精神科医が抗議」=報告
    ゴミをため込んだ家を訪れ片付けるよう働きかける番組に、大阪の精神科医が抗議し、「放送人権委員会で検討して欲しい」と要請してきたケース。精神科医が指摘する点は、「取材対象の屋敷の住人は精神障害の可能性があるが、そういう人達を了解を得ずに取り上げると、人権侵害につながったり、障害者差別を助長する恐れがある」、また「こうしたゴミ屋敷問題の解決は、行政など公的機関が当たるべきで、何の権限もないテレビ局が直接解決に当たるのは許されるのか」という内容で、「番組は生活の奇妙さや異質さを強調して笑いを取ろうとしており、問題だ」としている。
    これに対し、精神科医が事務局に送ってきた当該局の返答文書によると、放送局側は「ゴミ屋敷問題を取り上げ放送することには、公共性・公益性がある。住民が精神障害者である可能性を前提にした議論は差し控えたい」と述べている。
    このケースは、現行の放送人権委員会運営規則では、精神科医に申立人の資格がないこと、住人が障害者か否か確認しにくいことなどから、放送人権委員会の審理対象にはなりにくいものの、テレビ番組の本来あるべき姿を考える素材を有していることから、引き続き委員会で検討することになった。

そ の 他

事務局から以下の3点について説明・報告があった。

  • 法律専門調査役を採用
    放送人権委員会の機能強化等を目的に、若手弁護士(30歳)を法律専門調査役(非常勤)として9月1日から採用する。苦情・審理事案などについて法律面でのアドバイスを求め、委員会にも出席してもらうことになる。
  • BPO事務局と在京放送事業者との意見交換会
    9月中にも開催して、今抱えている課題などについて意見交換し、BPO事務局からの要望も伝えたい。
  • 放送人権委員会委員と北海道地区担当者との意見交換会
    委員が現地に出かけて、その地域の放送局の担当者等と意見交換を行う。
    今回は10月下旬に札幌で行う予定。

最後に、次回の定例委員会の開催予定を9月16日(火)午後4時からと申し合わせ、議事を終了した。

以上

第78回 放送と人権等権利に関する委員会

第078回 – 2003年7月

BPO(放送倫理・番組向上機構)発足とその後の状況について

苦情対応について…など

BPO(放送倫理・番組向上機構)発足とその後の状況について

7月1日のBPO発足後の状況等について事務局から以下のような説明があった。 「BPOがスタートして約2週間、視聴者からの意見・苦情はかなり増えている。放送について何かを言う場が出来たと受け止められているのではないか。BPOは、苦情処理等に当たって、放送局寄りとか反放送局の姿勢とかではなく、第三者性を追求していく必要があると考えている。来年3月を目途に各委員会のあり方を考えていくが、清水理事長も1日の記者会見で『テーマによって特別委員会の設置なども検討する必要がある』と話していた」

これに関連して委員から「放送人権委員会の審理で、放送倫理に比重をという方向性が議論されているが、一方、放送番組委員会の目的は”放送倫理のあり方について見解の発表、提言を行う”となっている。委員会相互の調整等も検討事項として踏まえておく必要がある」という意見があった。

苦情対応について

6月の放送人権委員会としての苦情対応について事務局から以下のとおり報告があった

◆件数 293件=内訳

  • 人権侵害に関連する対応  6件
  • 番組や局への苦情に対する対応  87件
  • 業務や資料請求への対応  42件
  • その他(一般苦情18件など)  158件

次に、7月の新体制(BPO)になってからの苦情対応について次のような説明があった。

「7月1日から委員会前日の14日までの苦情件数は770件、中でも2日は160件の苦情等が寄せられ、電話を取りきれない状態だった。この内、人権関係は一般的ケースも含めて33件だった。また、長崎の少年による幼児殺害事件については、『加害者少年の顔写真にモザイクをかけてまで放送する必要があるのか』といった意見や抗議が複数あった」

また、新たにまとまった斡旋解決2事案と苦情受理事案が報告された。

  • 「リフォーム番組で悪質業者の烙印」との抗議=斡旋解決
    前回の委員会で説明した事案。その後、当該局のプロデューサーと苦情申立人が話し合った結果、放送局が遺憾の意を表明、この映像は再使用しないことで合意した。本年度2件目の斡旋解決事案。
  • 「ドラマの台詞で、ショートステイを”姥捨山”に喩えた」苦情=斡旋解決
    父親を老人ホームで介護してもらっている男性から、「ドラマの台詞の中に”ショートステイ(老人ホーム)は姥捨山”という表現があった。放送局に差別ではないかと抗議したが、問題はないとの返事だった。放送人権委員会で何とかならないか」との苦情があった。当該局に苦情内容を伝えたところ、後日、苦情申立人から「担当プロデューサーとの話し合いで、その台詞の部分は再放送しないなど納得できる回答があった」と連絡してきた。当該局に確認した上で、本年度3件目の斡旋解決事案。
  • 「離婚した前妻だけへの一方的取材で事実無根」の抗議=苦情受理
    男性から「離婚した前妻が取材を受け、放送では離婚理由はドメスティック・バイオレンスと伝えていた。事実無根で、私への取材は一切なかった。局側に抗議したら『迷惑がかかったのなら申し訳ない』という程度の回答で納得できない」という苦情が寄せられた。当該局に内容を伝え、本年度5件目の苦情受理事案とした。

こうした報告に対し、委員から「放送人権委員会に苦情が伝えられると、それを知った当該局が苦情申立人との話し合いを促進する場合があるようだが、それはいいことなのか疑問だ」という意見があった。

苦情申立て検討案件

最近、事務局に寄せられた苦情・要望の中からいくつかを選んで検討・意見交換した。

ア)「性同一性障害」報道

性同一性障害を取り上げた番組に対し複数の苦情・抗議が寄せられた。「番組における不適切な表現によって、性同一性障害者として生きている自分たちの生活空間を根底から揺るがされた。障害当事者の人権を無視した放送に抗議する」と訴えている。

こうしたケースでは、申立ての資格はあるのかなどについて意見を交わした。主な意見は以下のとおり。

  • 直接の当事者ではないが、広い意味では当事者か。
  • 放送内容が性同一性障害者の社会的評価を低下させるようなものであったかどうかに関わってくる。そういう趣旨で申し立ててきたら、資格はないとは言えないと思う。
  • 取材に応じた人は苦情を言っていないようだが、そのずれはどう考えたらいいのか。
  • 差別一般は固定しづらいところがあると思うが、そういう意識がなくても結果としてその差別、そしてその集積としての構造が出来上がってきたというのは、社会の事実だから、そこには気を付けねばいけないと思う。
  • これは、差別問題というより表現に対する不満ではないか。

イ)再検討要請案件

去年6月、高校教諭が痴漢容疑で逮捕されたニュースで、「学校名を実名で放送したのは生徒に対する教育的配慮に欠ける」と同校PTA会長から放送人権委員会に申し立てたがあったが、放送人権委員会は、”申立人は直接の利害関係人”との運営規則から判断して、PTA会長は申立人としての要件を欠くとして審理入りしなかった。この件に関連して、7月に新組織BPOの発足を新聞記事で知った当時のPTA会長から、「新組織では、この案件について何らかの対応が可能か再検討してほしい」との要請があった。

  • あちこちで問題になっているケースだ。匿名だったらいいのかとなると、匿名は匿名でよその学校と間違えて噂が流れてしまうということもある。
  • 放送局は、公共性とか事件の重大性などをすべて考慮に入れて判断し、実名か匿名かを決めている。それでもなおかつ問題が起こってくるということだ。
  • 生徒のためにどう配慮するかは正に倫理の問題だ。各放送局が考えながらやっているとは思うが、局任せにしていて外れるところがあったら、こういう第三者機関が意見を表明することが必要かなと感じる。
    この件については清水理事長と事務局で対応方を考え、後日委員会に報告することとした。

このほか、新聞等で報道された放送局の”やらせ問題”について事務局から説明があり、意見を交換した。

そ の 他

事務局からBPO規約と改訂放送人権委員会運営規則について説明・報告があった。 変更点は、「委員長と委員長代行の選び方を、従前の委員の互選から代行は委員長の指名に変えた」ことで、運営規則については大きな変更はない。

最後に、次回の定例委員会の開催予定を8月19日(火)午後4時からと申し合わせ、議事を終了した。

以上

第77回 放送と人権等権利に関する委員会

第077回 – 2003年6月

「放送倫理・番組向上機構」設立について

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」の配付について…など

「放送倫理・番組向上機構」設立について

7月1日発足のBPOについて事務局から概略以下のように説明があった。

「3委員会の機能は変らない。変るのはこれまで放送人権委員会と青少年委員会に分かれていた視聴者窓口を1本化したこと。また、委員会に指摘されたことが放送現場の中でどういう形で生かされたかを放送局が委員会に報告することになった」

これについて委員から次のような質問や意見があった。

  • 「改善策を含めた取り組み状況を委員会に報告する」という点だが、何か月以内に報告するなどの大筋は決まっているのか、それとも局側におまかせか
  • 特に決めてはないが、委員会で指摘・要望すればそれに沿う形になるのではないか
  • 「委員会決定」をただ放送して終わってしまうだけでなく、「決定」を現場に周知徹底してもらい、さらに現場や関係者が勉強会や討論会を開いて「今後こういうふうにしていこう」というような合意を得るところまで進めてほしい
  • 放送人権委員会は苦情・紛争の処理機関か、それ以上の紛争のあり方について社会的使命を果たす役割も負うのか
  • 苦情処理、紛争解決以外のところで、社会的弱者を虐げる放送がなされている時、人権侵害だから申立てがあろうがなかろうが、遺族がどう考えていようが、そこまで踏み込んでいくことも委員会の使命の1つなのか
  • 基本的には苦情処理に徹することだが、新機構に対する視聴者の声の量と質を見ながら委員会の性格や事務局の機能を考えていく必要はあると思う
  • 重大な人権侵害や社会的に放置できない案件の場合、取り上げるかどうかについて弾力的に議論していくことも必要ではないか
  • 具体的なケースが出てきたら、その時点で対象枠を少し広げられそうか否か議論していただければと思う

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」の配付について

出来上がった『放送人権委員会の判断~6年間の記録』を6月中旬にBROの会員各社を中心に配付したことが事務局から報告されるとともに、「委員会審理事案の積み重ねに合わせて改訂版を出す事になるが、何時頃になるかについては未定」との説明があった。

委員から、「表現の自由等を扱う弁護士グループの人権委員会の部会に、早速この冊子を配ったところ、非常に好評だった」との報告があった。

苦情対応について

5月の苦情対応について事務局から以下のとおり報告があった。

◆件数  250件=内訳

  • 人権侵害関連と思われるものへの対応  4件
  • 番組や局への苦情に対する対応  60件
  • BRO業務や資料請求への対応  29件
  • その他(一般苦情11件など)  157件

このうち、内規に基づく「人権侵害関連事案」の対応と処理は次のとおり。

  • 「リフォーム番組で悪質業者の烙印」との抗議 ‥受理
    抗議は、放送された当事者の息子からで「悪質リフォーム業者の特集番組で、父がリフォームした家が『欠陥住宅』として取り上げられた。放送に当って父への取材は一切なく、住宅の持ち主の話だけで番組は作られていた。番組を放送した局に抗議したら、制作したのは東京のキー局だと言われ、制作局に抗議したが、『欠陥住宅だから放送しただけ』との回答に留まっている。この放送で父は悪質業者の烙印を押されてしまい、仕事にも支障をきたしている」というもの。
    具体的な話し合いがまだ行われていないこともあって、この事案を今年度3番目の受理事案として、双方の話し合いを見守ることとした。
  • 「県議選前の不公正な報道で名誉毀損」との抗議 ‥既受理
    前回5月の委員会で報告した事案。その後、抗議者と放送局側の間で文書のやり取り等が続いており、もうしばらく様子を見ることとした。
    これに関連して、前回、委員から「選挙前の公正な報道について以前、郵政省から文書・通達が出ていたはずだが・・」との質問があった。これについて「調べた結果『当落報道はきちんと正しく放送すること』との通知はあったが、選挙前の報道についての通知・通達等は確認できなかった」と事務局から説明があった。

次に、受理事案や今後の審理の進め方等について委員から以下のような意見があった。

  • 「リフォーム番組」のケースを審理するした場合、放送人権委員会として、欠陥住宅かそうでないかの調査をすることになるのか
  • 証拠による事実認定が委員会の査能力から見て難しい場合は、審理対象にはならないのか
  • 委員会には調査・捜査権がな、事実認定は難しいが、事実確認できなければ審理対象として取り上げないというケースはなかった
  • 事実を判断するのではなく、番の印象の方を判断する場合もあるのか
  • それもあるし、番組の作り方、送の仕方が対象になることもある
  • 当該番組の視聴や関係者の話どから判断して、申立人の主張を評価できる根拠があれば、審理に入ることができるのではないか
  • 審理のスピードアップのために、早めに当該放送テープを視聴できないか
  • 放送テープの取り扱いにつては、審理入りを決める段階の前に、放送テープの提供を求めるのは行き過ぎではないか
  • 放送テープの提出を早めるよう要請することは、どうしても「検閲」というような意識が生まれる恐れがあるのではないか
  • 第三者機関の設置は、言論の自由を守ることになるのか、逆に制約することになるのか見極めは難しいが、視聴者からも放送事業者からも等距離でいくことが、適度の信頼を得て上手く機能すると思う

そ の 他

事務局から以下の項目について説明・報告があった。

  • 6月18日開催の新機構設立準備会と理事会、あわせて新理事長記者会見について
  • 7月1日、BPO発足と理事長・3委員長記者会見等について

最後に、次回の定例委員会を7月15日(火)午後4時から開催することを確認し、議事を終了した。

以上

第76回 放送と人権等権利に関する委員会

第076回 – 2003年5月

苦情対応について

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」について…など

苦情対応について

事務局から以下のとおり報告があった。

◆件数  230件=内訳

  • 人権侵害関連と思われるものへの対応  5件
  • 番組や局への苦情に対する対応  64件
  • BRO業務や資料請求への対応  24件
  • その他(一般苦情19件など)  137件

このうち、内規に基づく「人権侵害関連事案」の対応と処理は次のとおり。

  • 「白装束集団とは無関係」との宗教法人からの抗議 ‥斡旋解決(今年度第一号)
    宗教法人GLAの代理人弁護士から「白装束集団と関係あるような放送をされたが無関係、申立てをしたい」という要請があった。当該局にこの内容を伝え、双方が話し合った結果、「今後の報道に当っては最大限注意する」ということで決着した。
  • 「県議選前の不公正な報道で名誉毀損」との抗議 ‥受理
    県議選告示前のニュースで、最多当選者や最高得票者が紹介されたが、この中で最多落選者として実名、写真入で放送された立候補者から「選挙の公平さが害されただけでなく、名誉・信用が毀損された。場合によっては放送人権委員会に申立てたい」との抗議があった。
    抗議者は、選挙管理委員会や人権擁護委員会にも問題提起しており、当面は、受理事案として今後の当該局との話し合いで解決する余地があるかどうか見守ることになった。これについて委員から「選挙前の公正な報道について以前、郵政省から文書・通達が出ていたはずだ。事務局で調べておいて欲しい」との要望があった。
  • 「待ち伏せ取材で人権侵害」朝鮮総連元幹部からの抗議 ‥未受理
  • 「ナンパ隠し撮り」に16歳少女が抗議 ‥未受理
  • 「詐欺まがい商法」の報道で人権侵害の抗議 ‥未受理

以上3件については、当該局との話し合いがなされていなかったり継続中であることなどから未受理としているとの現況報告があった

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」について

前回に次いで、事務局から、取りまとめの経緯と掲載内容の一部手直しなどが報告され、次いで

この冊子の取り扱い方などを協議した。

委員の主な発言は以下のとおり。

  • 冊子の後段に、これまで放送人権委員会が判断を下した事案の概要と委員会判断の要旨を付けた方が判りやすい
  • 当該局が○○と伏字になっているが、実名又は放送局A等としたほうがいいのではないか
  • 局名をそのまま出すと、事例集としては強すぎるのではないか
  • 放送現場にいる人にこの記録を是非読んでほしい。積極的に公開、配付すべきだ

協議の結果、今回の「放送人権委員会の判断~6年間の記録」は、局名は原案通り○○と伏字にし、後半部分の事案の概要と委員会判断の要旨を付記することになった。また、各放送局に広くいきわたるよう積極的に配付することになった。

そ の 他

事務局から以下の項目について説明・報告があった。

  • 2003年5月発行のBROとしては最後の「BRO年次報告書」の内容
  • 4月23日のBRO主催シンポジウムと録画放送(NHK教育テレビ)について
  • BRO告知スポットの2002年度放送実績調査結果

最後に、次回の定例委員会を7月15日(火)午後4時から開催することを確認し、議事を終了した。

以上

第75回 放送と人権等権利に関する委員会

第075回 – 2003年4月

委員長、委員長代行の決定

「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」委員会決定の総括…など

委員長、委員長代行の決定

大木専務理事から、「去る2月27日の初会合で、新委員長に飽戸弘委員、同委員長代行には竹田稔委員と堀野紀委員が互選され内定している」ことを報告・確認した上で委員に諮ったところ、全会一致でこれを承認。正式決定した。

その後、新委員全員による記者会見を別室で開催し、午後5時、飽戸弘委員長の司会で委員会を再開。

「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」委員会決定の総括

事務局から、標記「委員会決定」の概要と通知・公表(記者発表)の模様、および、「委員会決定」を報じた放送・新聞の対応を報告するとともに、NHK広報局が発表した「放送人権委員会決定に対するコメント」を紹介。NHKが「委員会決定」の主旨を放送したVTRを視聴し、委員間で意見交換した。

意見交換ではまず、この事案の審理にあたった飽戸委員長と、五代、渡邊両委員から、それぞれ「委員会決定」に関する説明があった後、委員から次のような意見が出された。

  • この委員会決定を受けて、今後、NHKは具体的にどのような取り組みをするのか。
  • NHKの受け止め方は、”自浄努力はいたしますけれども”と言って切り抜けているような感じで、少し虚しさを感じる。
  • 委員会決定の受け止め方や後の処理について、当該放送局に対して委員会としてコメントできるのか。

「放送人権委員会判断基準」について

事務局から、前委員会からの申し送り事項である「放送人権委員会の判断 ~ 6年間の記録」に関する、取りまとめの経緯と掲載内容などを報告。続いて、委員長と、原案作成を担当した渡邊委員から説明があった後、今後の取り扱いについて検討した。

その結果、次回(5月)の委員会で再度、委員の意見を確認した上で、今後の取り扱いを決定することとした。

苦情対応について

事務局から、3月の苦情対応件数と対応概要について、以下のとおり報告した。

◆件数  258件=内訳

  • 人権侵害関連と思われるものへの対応  3件
  • 番組や局への苦情に対する対応  53件
  • BRO業務や資料請求への対応  33件
  • その他(一般苦情22件など)  169件

このうち、内規に基づく「人権侵害関連事案」の対応と処理は次のとおり。

■ 「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」

〔議題2参照、3月31日に委員会決定を通知・公表〕

  • 「バラエティー番組で無断撮影・放送され名誉毀損」との抗議、斡旋解決・・・昨(2002)年8月に放送された大阪のテレビ局のバラエティー番組に対して、大阪在住の主婦から、「スーパーで買い物をして出てきたところを女性アナウンサーに声をかけられたが、急いでいたので断った。しかし、この時に撮られた映像が断りもなく、『大阪のおばちゃんはこんなに怒っている』という音声とともに、アップにした顔に”怒りマーク”が付けられて放送された。放送局に抗議したところ、放送局は今年1月の検証番組で一方的に謝罪放送をしたが、自分としては同じ番組での謝罪を要求しており、納得できない」と抗議があった。当該テレビ局に抗議の趣旨を連絡し対応を要請した結果、3月22日に当該番組内で謝罪放送が行われ、解決した。

[昨年度8件目の斡旋解決]

続いて事務局から、「2002年度の事務局対応件数と人権侵害関連20事案の処理状況」について報告・説明し、若干の意見交換を行った。

そ の 他

事務局から以下の項目について説明・報告した。

  • 第3回BROシンポジウム”放送の自由と自律 ~ 放送倫理確立への道”を開催〔4月23日(水)13:30~17:00、千代田放送会館2階ホール。シンポジウムの模様は5月3日のNHK『土曜フォーラム』で放送される予定〕

最後に、次回の定例委員会は5月20日(火)午後4時から開催することを確認し、議事を終了した。

以上