第80回 放送倫理検証委員会

第80回–2014年3月

対決内容が編集で偽造されたフジテレビの『ほこ×たて2時間スペシャル』について審議、4月1日に委員会決定の通知・公表へ

「全聾で被爆2世の作曲家」とされている佐村河内守氏の作品が別人のものと発覚した問題ついて討議。放送実績のある在京局5局に、新たな映像提供を求め、次回も討議を継続

第80回放送倫理検証委員会は3月14日に開催された。
3月5日に通知・公表を行った日本テレビの『スッキリ!!』「弁護士の"ニセ被害者"紹介」に関する意見について、記者会見での質疑や当日の報道などが報告され、若干の意見交換を行った。
「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発し、番組が打ち切られた、フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて』(2013年10月20日放送ほか2本)について、前回委員会での議論を反映させた意見書修正案が担当委員から提出された。意見交換の結果、委員会としての意見の集約がほぼ図られたとして、4月1日の通知と公表を目指すことになった。
"全聾で被爆2世の作曲家"とされている佐村河内守氏の作品が、別人のものだったことが発覚した問題について、NHKおよび在京民放キー局から提出された佐村河内氏を扱った番組のデータと、2013年3月に放送されたNHKスペシャルを視聴した意見をもとに討議を継続した。その結果、さらに6本の番組について当該局に映像の提供を求め、それを視聴したうえで次回に討議することになった。

議事の詳細

日時
2014年3月14日(金)午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題

出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、是枝委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員

1.日本テレビの『スッキリ!!』「弁護士の"ニセ被害者"紹介」に関する意見を通知・公表

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演したネット詐欺専門の弁護士から紹介された当時の所属法律事務所の職員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったのではないかと審議した事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
3月5日、当該局に対して、委員会決定第19号の意見を通知し、続いて公表の記者会見を行った。当日夜のテレビニュースや翌日の当該番組の報道などを視聴したあと、委員長や担当委員から記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2.対決内容が編集で偽造されたフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議

フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚し、当該局はその事実を認めて、番組を打ち切った事案。
同じように不適切な演出問題があったと当該局が認めた2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて スペシャル』についても審議の対象とすることになり、前回の委員会では、関係者に対するヒアリングなどをもとにした意見書の原案が議論された。
今回の審議では、前回の議論を踏まえた意見書の修正案が担当委員から示され、委員会の判断として、何をどのように指摘するのかなどをめぐって踏み込んだ議論が交わされた。その結果、意見の集約がほぼ図られたとして、4月1日に当該局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

3.「全聾で被爆2世の作曲家」とされている佐村河内守氏の作品が別人のものと発覚した問題の放送責任などについて討議

全聾で被爆2世の作曲家とされている佐村河内守氏の作品が、別人のものだったことが発覚したことから、同氏をドキュメンタリーなどで紹介した番組の放送責任などについて、討議を継続した。
NHKおよび在京民放キー局からは、佐村河内氏を扱った23本の番組のデータが提出され、NHKからは、NHKスペシャル『魂の旋律~音を失った作曲家』(2013年3月31日放送)の映像と、放送に至る経緯をまとめた報告書が、あわせて提出された。
NHKスペシャルについての議論の過程で、さらにいくつかの番組についても内容を見たうえで議論を進めるべきだということで意見が一致したので、放送実績のないテレビ東京を除く在京各局に対して、佐村河内氏を扱った6本の番組の映像提供を新たに求めることになった。
その内訳は、TBSテレビが2本、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビが1本ずつで、委員会は次回も討議を続ける。

以上

第79回 放送倫理検証委員会

第79回–2014年2月

鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」に関する意見の
通知・公表

弁護士から詐欺事件の被害者として紹介された人物が実は被害者ではなかった、日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

「対決内容が編集で偽造された」ことが判明したフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議

第79回放送倫理検証委員会は2月14日に開催された。
2月10日に意見を通知・公表した鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」事案について、記者会見での質疑や当日の報道などが報告され、意見交換を行った。
ネット詐欺の被害者として放送された人物が、実はネット詐欺専門の弁護士から紹介された、当時の所属事務所の事務員だったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』について、担当委員から最終的な「意見書案」が提出された。意見交換の結果、全員の一致が得られたため、3月上旬に当該局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発し、番組が打ち切られたフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(2013年10月20日放送など3本)について、関係者へのヒアリングを踏まえた意見書の原案が、担当委員から提出された。
毎日放送の情報番組『せやねん!』で紹介したダイヤモンド詐欺が、2日前に讀賣テレビの報道番組で放送された特集の内容の一部を、無断で引用したものと判明した。他社の取材成果を無断で使うのは問題だが、映像や音声をそのまま使用したわけではないこと、当該局がすみやかに謝罪・お詫び放送を行い、相手局側も謝罪を受け入れていることなどから、審議の対象としないことになった。
“全聾で被爆2世の作曲家”とされている佐村河内守氏の作品が、別人の作品だったことが発覚した問題について意見を交換した。その結果、まず各局でどんな番組が放送されていたかを把握するため、NHKおよび在京民放キー局に佐村河内氏を扱った番組のデータを求めるとともに、NHKに対しては、去年3月に放送されたNHKスペシャルの映像提供と放送に至る経緯の報告を要請することになった。

1.鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」に関する意見を通知・公表

鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(2013年6月19日、8月7日放送)と週末の番組『チャンネル8』(同6月29日放送)で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部の活躍ぶりを、選手を激励する監督の声を交えて放送したが、監督の声は他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったという事案。
2月10日、当該局に対して、委員会決定第18号の意見を通知し、続いて公表の記者会見を行った。当日夜のテレビニュースの報道などを視聴したあと、委員長や担当委員から記者会見での質疑などが報告され、意見交換が行われた。

2.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介された人物が、実は被害者ではなかった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演したネット詐欺専門の弁護士から紹介された当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして審議入りした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
担当委員から、最終的な「意見書案」が提出され、さらなる意見交換を行った。その結果、放送倫理違反とまでは言えないという判断を意見として公表することで、全員の一致が得られ、表現の細部の修正は委員長に一任された。当該局への通知と公表の記者会見は、3月5日に行われる予定。

3.「対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議

フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚、当該局は社内調査の結果ほぼ指摘どおりであるとして、番組を打ち切った事案。
上記番組のほか、同じような問題があったと当該局が認めた2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて スペシャル』についても審議の対象とすることになり、1月中旬には関係者に対するヒアリングが行われた。
委員会では、ヒアリングを踏まえて、担当委員から意見書の原案が示され、取材・制作の過程で何が起きたのか、その背景にはどんな課題や問題点が潜んでいたのかなどについて、説明も行われた。意見交換の結果、ほぼ論点は整理できたとして、担当委員が委員会の審議をふまえて意見書の修正案を作成し、次回委員会での意見の集約を目指すことになった。

4.他局番組の内容の一部を無断で引用していた毎日放送の『せやねん!』についての討議

毎日放送の情報番組『せやねん!』(2013年12月7日放送)は、「今週の気になるお金」のコーナーで最近被害が急増している特殊な詐欺について特集した。その中で取り上げたダイヤモンド詐欺は、2日前に讀賣テレビの報道番組『かんさい情報ねっとten.』で放送された特集「モクゲキ~ダイヤモンド劇場型詐欺」の詐欺手口や被害金額などの情報を、無断で引用していたことが判明した。
担当した構成作家やチーフ・ディレクターは、讀賣テレビの特集がすでに多くのメディアで報道された「周知のもの」と思い込み、またチェック役のチーフ・プロデューサーらも、その情報源を確認していなかった。
鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」事案との比較検討を含めて、意見が交わされたが、他局が取材した映像や音声をそのまま放送したわけではないこと、当該局は速やかに相手局とその取材協力者に謝罪してお詫び放送を行い、その了解を得ていること、さらにチェック体制の見直しや研修会の開催などの再発防止策を講じていることなどから、委員会は、この事案は審議の対象としないと決めた。

[委員の主な意見]

  • 相当に具体的で詳細な情報であるのに、これが広く知られている周知の事実だと思い込んで、問題意識もなくそのまま使ったという弁明は、成り立たないのではないか。

  • 他局の取材成果を無断で使ったという点では、鹿児島テレビの事案に似ているが、映像や音声そのものを使用したわけではないことや、電波法違反という公法違反ではないので、無断で使われた局が謝罪を受け入れて問題にしないとしていることの法的な意味が違うことは、考慮するべきである。

  • 最近の情報番組では、スタジオ内のボードなどに、どこまで裏付け取材ができているか分からない情報やアイデアが、安易に使われたり引用されたりしているように感じる。この問題の根底や背景には、そのような現実があるのではないか。

  • 審議入りの必要はないと思うが、他局の取材成果を無断で使うケースが相次いで起きたことはホームページやBPO報告に記載して、放送局に警鐘を鳴らすべきだろう。

5.「全聾で被爆2世の作曲家」とされている佐村河内守氏の作品が別人の作品と判明した問題の放送責任などについて討議

全聾で被爆2世の作曲家とされている佐村河内守氏の作品が、別人の作品だったことが発覚した問題について、関連する報道なども参考にしながら佐村河内氏を取り上げた番組の放送責任について議論した。その結果、番組を見ないまま議論をしても具体性に欠けるため、まずNHKおよび在京民放キー局に、佐村河内氏を扱った番組のデータの提出を求めることを決めた。
そのうえで、NHKに対しては、NHKスペシャル『魂の旋律~音を失った作曲家』(2013年3月31日放送)の映像の提供と、放送に至る経緯の報告を要請することになった。

以上

第78回 放送倫理検証委員会

第78回–2014年1月

弁護士から詐欺事件の被害者として紹介された人物が実は被害者ではなかった、日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

他局の取材音声を無断で受信して番組に使用していた、鹿児島テレビのローカル番組についての審議 次回委員会までに「意見」を通知・公表へ

「対決内容が編集で偽造された」ことが判明したフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議

第78回放送倫理検証委員会は1月10日に開催された。
1月8日に委員会の意見を通知・公表した昨年の参議院選挙にかかわる2番組事案について、記者会見での質疑や当日の報道などが報告され、若干の意見交換を行った。
ネット詐欺の被害者として放送された人物が、実はネット詐欺専門の弁護士から紹介された、当時の所属事務所の事務員だったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』について、担当委員から提出された意見書再修正案をもとにさらなる意見交換が行われ、次回委員会で意見の集約をめざすことになった。
他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し放送に使用していた鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、一部手直しをした案を作成し、特に異論がなければそれを委員会の意見とすることが了解されたので、次回委員会までに意見を当該局に通知し、公表の記者会見を行うこととなった。
「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発し、番組が打ち切られたフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(2013年10月20日放送など3本)の審議が始まり、ヒアリングに向けての論点の整理や、3本の対象番組をどう扱うかなどについて、意見交換が行われた。

1.2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見の通知・公表

対象となった2番組は、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党の比例代表選挙立候補予定者だった太田房江元大阪府知事の選挙準備活動を紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、自民党の比例代表の渡邉美樹候補が著名経済人としてVTR出演していることに気づかず、投票日当日の午前中に放送したテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)。
1月8日、当該の2局に対して、委員会決定第17号の意見書を通知し、続いて公表の記者会見を行った。当該局の当日のテレビニュースの報道を視聴したあと、委員長や担当委員から記者会見での質疑などが報告され、若干の意見交換が行われた。

2.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介されたが、実は被害者ではなかったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演したネット詐欺専門の弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったのではないかと審議の対象とした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
担当委員から、前回までの委員会の議論を取りまとめた「意見書再修正案」が提出され、さらなる意見交換を行った。その結果、事案の取材から放送に至る過程での問題点や、問題発覚後の対応などについて、ほぼ論点が整理されたが、意見書としてまとめるにはなお説明を付加する必要もあるとして、さらに意見書案を修正したうえで、次回委員会で審議することになった。

3.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用していた、鹿児島テレビの2つのローカル番組についての審議

鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』(6月29日放送)で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部の活躍ぶりを、選手を激励する監督の声を交えて放送したが、監督の声は他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったという事案。
担当委員から、前回までの委員会の議論を踏まえた「意見書修正案」が提出された。その結果、問題の背景には、音声の窃用が電波法59条に違反することを知らなかった取材ディレクター個人の過失だけでなく、地方の放送局が抱える構造的な課題もあるということで意見がほぼまとまったが、構成等について手直しの要望もあったので、それを踏まえた修正案を作成し、その案に対して特に異論がなければそれを委員会の意見とするということで意見の一致を見た。次回委員会までに、当該局への意見の通知と、公表の記者会見が行われる見通しである。

4.「対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議

フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚、当該局は社内調査の結果ほぼ指摘どおりであるとして、番組を打ち切った事案。
前回の委員会で、上記番組のほか、同じような問題があったと当該局が認めた、2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて スペシャル』についても審議の対象とすることになり、当該局から、これら2本の番組についても詳細な報告書が提出された。
委員会では、1月中旬から始まるヒアリングに向けて、担当委員のメモをもとに論点を整理したほか、新たに提出された報告書を踏まえて3本の番組をどのように取り扱うかについても意見交換を行った。

以上

第77回 放送倫理検証委員会

第77回–2013年12月

「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発
フジテレビ「ほこ×たて 2時間スペシャル」(2013年10月20日放送)の審議入りを決定

参院選関連の2番組、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本『百識王』
2014年1月上旬にも「委員会決定」を通知・公表へ

第77回放送倫理検証委員会は12月13日に開催された。
今夏の参議院議員選挙をめぐって、選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議対象となっている、関西テレビのニュース番組とテレビ熊本の情報バラエティー番組について、担当委員から前回の委員会での議論を踏まえた意見書修正案が提出された。意見交換が行われた結果、表現の細部の修正などを委員長に一任して、2014年1月上旬にも当該局に委員会決定を通知し、公表することになった。
ネット詐欺の被害者として放送した人物が、実はネット詐欺専門の弁護士から紹介された、当時の所属事務所の事務員だったことが問題になった日本テレビの情報番組『スッキリ!!』についても、担当委員から意見書修正案が提出された。委員会では、取材から放送に至る過程をどう判断すべきかなどについて、さらに意見交換が行われ、担当委員が次回委員会に再修正案を提出することになった。
他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し放送に使用していた鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』について、担当委員から意見書の原案が提出された。意見交換の結果、議論の成果を加味した修正案を次回委員会に提出して、意見の集約をめざすことになった。
「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発し、番組が打ち切られたフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(2013年10月20日放送)について、前回に続いて討議を行った。委員会が求めた詳細な報告書が当該局から提出され、意見交換の結果、真剣勝負を標榜した番組を信じた視聴者の信頼を裏切ったとして審議入りが決定した。審議対象には、同様な問題があったと当該局が認めている他の2回の放送分も含まれる。

1.参院選関連の2つの番組、関西テレビの『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本の『百識王』についての審議

一括して審議の対象となっているのは、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党の比例代表選挙立候補予定者だった太田房江元大阪府知事の選挙準備活動を紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、自民党の比例代表選挙の渡邉美樹候補が著名経済人としてVTR出演している企画を、参議院選挙投票当日の午前中に放送したテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)の2つの番組。
前回までの委員会の議論などを踏まえた「意見書修正案」が担当委員から提出され、同様な問題が今後さらに繰り返されないための委員会の提言部分などについて意見交換が行われた。
その結果、表現の細部の修正は委員長に一任して、委員会の意見とすることが了承され、2014年1月上旬にも、当該局への通知と公表の記者会見が行われることとなった。

2.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介されたが、実は被害者ではなかったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演したネット詐欺専門の弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして審議入りした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
担当委員から、当該局の関係者に実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を整理した「意見書修正案」が提出された。
委員会では、これまで裏付け取材が不十分だとされた事案との比較で、専門家である弁護士の紹介を信じたことなど、事案の取材から放送に至る過程に過失があると断定することの是非や問題発覚後の対応などをどう判断するかなどについて、さらに質疑や意見交換が行われた。
その結果、今回の議論を踏まえた再修正案を担当委員が作成し、次回委員会に提出することになった。

3.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用したことが問題になった鹿児島テレビの2つのローカル番組についての審議

鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部の活躍ぶりを紹介した。その際、選手を激励する監督の声をあわせて10か所で約2分間放送したが、これは他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったことが判明した事案。
担当委員から、取材ディレクターやカメラマン、音声マンなどに実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を踏まえた「意見書原案」が提出された。
委員会では、音声の窃用が電波法59条に違反することを取材ディレクターが知らなかった事情や、問題が起きた背景に地方の放送局ならではの課題があるのではないかという点などをめぐって、意見が交わされた。
その結果、議論の成果を加味した修正案を担当委員が次回委員会に提出して、意見の集約をめざすことになった。

4.対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』について討議し、審議入りを決定

フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚、当該局は社内調査の結果ほぼ指摘どおりであるとして、番組を打ち切った事案。
前回の委員会では当該局が提出した報告書をもとに議論が行われたが、さまざまな意見が出され、継続討議になっていた。委員会が出した質問書に対し、当該局は改めて詳細な報告書を提出、これをもとに意見交換が続けられた。
その結果、真剣勝負を標榜した番組である以上、それを信じて番組を見ていた視聴者の信頼を裏切ったと言わざるを得ないとして、審議入りすることを決めた。
委員会は上記番組のほか、同じような問題があったことを当該局が認めている、2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて 2時間スペシャル』についても審議の対象とする。

【委員の主な意見】

  • ていねいな番組作りをしないとバラエティーとしての妙味や面白さは出ないはずなのに、最後は編集でなんとかしようという安易な考えになっているのは問題ではないか。
  • 斬新で面白い番組として評価されていたものを、ひとつのコーナーがぶち壊したとすれば残念だ。
  • 無茶な番組を作らざるを得なくなった時の判断ミスが、結果として番組の信頼を失い、番組打ち切りという最悪の結果になってしまった。
  • バラエティーは演出があって当然良いが、今回は「不当表示」だと思う。
  • 真剣勝負が売り物で、視聴者のほとんどはそれを前提に見ているのに、そうではなかったというのはやはり演出の枠を越えており、信頼を裏切ったと言わざるを得ないだろう。

以上

第76回 放送倫理検証委員会

第76回–2013年11月

「対決内容を編集で偽造」フジテレビ『ほこ×たて2時間スペシャル』について討議

参院選関連の2番組、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本『百識王』、「意見書原案」を基に審議

「弁護士紹介の被害者は"関係者"」日本テレビ『スッキリ!!』、「意見書原案」を基に審議

「他局の取材音声を、無断受信して使用」鹿児島テレビ2つのローカル番組、局のヒアリングを基に審議

第76回放送倫理検証委員会は11月8日に開催された。
委員会が今年8月に出した関西テレビ『スーパーニュースアンカー』「インタビュー映像偽装」に関する意見について、当該局から提出された対応報告書を了承し、公表することにした。
今夏の参議院選挙をめぐって、選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議対象となっている、関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(ネット選挙解禁に関する特集企画で、特定の比例代表立候補者だけを紹介)とテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(投票日当日の放送に、比例代表候補者がVTR出演)の2つの番組について、担当委員から意見書の原案が提出された。意見交換の結果、次回委員会までに担当委員が修正案を作成して、意見の集約をめざすこととなった。
ネット詐欺の被害者として放送したが、実は被害者ではなく弁護士から紹介されたその事務所の事務員であったことが問題となった日本テレビの情報番組『スッキリ!!』についても、意見書の原案が提出された。当該局へのヒアリングとこれまでの委員会での議論を踏まえて問題点を整理したもので、弁護士から、担当した事件の被害者と紹介されたことは、本人確認や被害事実の存在についての裏付けとなるのかという点などについて長時間にわたる意見交換が行われた。次回委員会までに、担当委員が修正案を作成する。
他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し放送に使用していた鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』について、担当委員からヒアリングの概要が報告され、意見交換がなされた。
フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて2時間スペシャル』の出演者が、「対決内容が編集によって偽造された」と告発し、当該局側もこの指摘をほぼ認めて番組の打ち切りを決めた事案について、討議を行った。その結果、ロケや編集の過程についてさらに確認したい点や疑問点が出てきたこと、当該局の報告によるとこのスペシャル番組以外にも類似のケースが見つかっていることなどから、委員会は、次回委員会までにより詳しい報告書の提出を求めることにして、討議の継続を決めた。

1.関西テレビ『スーパーニュースアンカー』「インタビュー映像偽装」に関する意見の対応報告書についての審議(了承)

関西テレビは、『スーパーニュースアンカー』の「インタビュー映像偽装」に関する意見(委員会決定第16号)を受けて、社としての再発防止策を報告書にまとめ、10月28日、委員会に提出した。
それによると関西テレビは、▽報道に携わる記者やカメラマンなど個々人のノウハウや経験を高めるため、勉強会や事例研究会を随時開催するほか、報道局の指針や見解をまとめた「報道通信」を作成すること▽世代間のコミュニケーションを活性化させるため、記者やデスクの相談窓口になる報道局専任部長を新たに配置して、取材から放送に至る諸問題の解決にあたることなど、多様な改善策にすでに着手している。
委員会は、当該局が「不適切な映像」と考えていたものが、委員会に「許されない映像」の放送であったと指摘されたことについて十分に反省したうえで、信頼回復のための取り組みが幅広く進められているとして、この報告書を了承することにした。

2.参院選関連の2番組、関西テレビの『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本の『百識王』についての審議

一括して審議の対象となっているのは、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党の比例代表選挙立候補予定者だった太田房江元大阪府知事の選挙準備活動を紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、自民党の比例代表選挙の渡邉美樹候補が著名経済人としてVTR出演している番組を、参議院選挙投票当日の午前中に放送したテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)の2番組である。
担当委員から、2つの放送局の関係者に実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を踏まえた「意見書原案」が提出された。
委員会が、3年前から選挙をめぐる放送の公平・公正性について、意見書や委員長コメントを出して警鐘を鳴らしてきたにもかかわらず、同様な問題が再び起きたことを重視して、原案では、2つの番組の問題点などを指摘するとともに、今後こうしたことがさらに繰り返されないための提言などが盛り込まれた。委員による質疑や活発な意見交換の結果、担当委員が意見書の修正案を作成し、次回委員会でさらに議論を重ねて、意見の集約をめざすことになった。

3.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介されたが、実は被害者ではなかったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演した弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして審議入りした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
当該番組の取材ディレクターやプロデューサー、情報カルチャー局の幹部などあわせて11人を対象に実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を踏まえて、担当委員から「意見書原案」が提出された。
委員会では、原案をもとに、「専門家の取材はどうあるべきか」「弁護士の紹介であることは、その内容を信じる理由となりうるか」などを主な論点にして、踏み込んだ意見交換が行われた。
その結果、委員会で示されたさまざまな意見を盛り込んだ修正案を担当委員が作成し、次回委員会で議論を続けることになった。

4.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用したことが問題になった鹿児島テレビの2つのローカル番組についての審議

鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』(6月29日放送)で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部を紹介した。その際、選手を激励する監督の声をあわせて10か所で約2分間放送したが、これは、他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったことが判明した。前回の委員会から審議を継続した事案。
関連会社から派遣されたディレクターは、他局が監督に着けてもらったワイヤレスピンマイクの音声を、カメラマンと音声マンに傍受するよう指示し、その音声を自局取材の音声のように使用して放送していた。電波法59条は、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して窃用することを禁じている。
11月初旬、当該番組の取材ディレクターやカメラマン、音声マンのほか、鹿児島テレビのコンプライアンス責任者など、あわせて6人を対象にヒアリングが実施され、その概要が、担当委員から報告された。
「ディレクターはなぜ他局の音声を窃用したのか」「取材した3人に違法だという認識はあったのか」「放送前のチェック機能が働かなかったのはなぜか」「放送局や関連会社ではどのような社員教育や研修が実施されていたのか」などについて詳しい説明があり、委員の間で意見交換が行われた。
その結果、事実関係はほぼ明らかになり論点も整理できたとして、次回委員会に担当委員が意見書の原案を提出することになった。

5.「対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて2時間スペシャル』についての討議

「矛盾する両者の真剣勝負」を売り物にするフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて』は、2012年の民放連賞でテレビエンターテインメント番組の最優秀賞を受賞していた。
10月20日に放送された2時間スペシャル番組の中の「スナイパー軍団対ラジコン軍団」について、ラジコンカーを操作した出演者が、放送3日後に所属する会社のウェブサイトに「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発し、問題が発覚した。
この出演者は「ラジコンカーの対決で、実際の対戦相手が異なっていた」「実際には、最初に対決したラジコンボートが3連勝して勝負は決していた」「過去の放送でも対決相手のタカやサルについて、番組スタッフから演出に協力させられた」などと指摘した。
これを受けて当該局は、ロケ担当ディレクターや番組のチーフプロデューサー、それに制作会社の幹部などを対象に内部調査を実施した結果、出演者の指摘をほぼ認め、「視聴者の皆様の期待と信頼を裏切る行為が確認された以上、真剣勝負を標榜している番組の継続は不可能」として、番組の打ち切りを決めた。
委員会は、当該局から提出された報告書をもとに討議を行い、「バラエティー番組なので一定の演出はあるにせよ、それが限界を超えているかどうか」「視聴者は真剣勝負をどの程度前提にして、この番組を視ていたのか」など、さまざまな意見が出された。また、当該局がこのスペシャル番組以外にも類似のケースがあったことを認めているため、詳細を確認するべきだとの指摘もあった。
委員会では、当該局宛ての質問書を作成し、ロケや編集過程での疑問点を中心に再度報告を求めて、討議を継続することになった。

【委員の主な意見】

  • 素材となる映像を自分たちが作ったストーリーに沿って編集でまとめたもので、これを演出といえるのだろうか。まるでドラマを作っているように感じられる。
  • ここまで編集で対決の内容を変更してしまうことは、この番組のコンセプトからしても、企画として成立しないと思う。
  • バラエティー番組では、勝負といってもかなり演出がほどこされていることは昔からあると思うが、少なくとも出演者に納得してもらうことが前提だろう。今回の事案は相当にひどいのではないか。
  • 実際にはなかった対決を編集で作ってしまうことは、やはり問題だ。
  • バラエティー番組に演出はつきものなのだから、いまさら委員会があれこれ言うのは難しいという気もする。
  • 視聴者はこの番組の対決をどこまで真剣勝負として見ていたのだろうか。それによって、視聴者の信頼を裏切ったかどうかの見方が変わるだろう。
  • 報告書が短時間に作成されたこともあってか、もっと確認したい点や疑問点もある。さらに詳細な報告書の提出を求めて議論したほうがいい。

以上

第75回 放送倫理検証委員会

第75回–2013年10月

「他局の取材音声を、無断受信して使用」鹿児島テレビ2つのローカル番組審議入り決定

参院選関連の2番組、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本『百識王』、局のヒアリングを基に審議

「弁護士紹介の被害者は"関係者"」日本テレビ『スッキリ!!』、局のヒアリングを基に審議

第75回放送倫理検証委員会は10月11日に開催された。
今夏の参議院選挙をめぐって、選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議入りした、関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(ネット選挙解禁に関する特集企画で、特定の比例代表立候補予定者だけを紹介)とテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(投票日当日の放送に、比例代表候補者がVTR出演)の2つの番組について、担当委員からヒアリングの概要が報告された。
弁護士から紹介されたネット詐欺の被害者が別人だったのは裏付け取材が不備だったためとして、前回の委員会で審議入りした日本テレビの情報番組『スッキリ!!』についても、当該局に対するヒアリングの概要が報告された。
高校の男子新体操部を紹介した鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』で、他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し使用していたことが判明した。無線通信を傍受して使用することを禁じた電波法に違反する疑いもあり、なぜこうした不正な取材が行われたのか、審議入りして関係者へのヒアリングを行うことになった。

議事の詳細

日時
2013年10月11日(金)午後5時~8時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

1.選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議入りした参院選関連の2番組、関西テレビの『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本の『百識王』

インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党から比例代表選挙の立候補予定者になっていた太田房江元大阪府知事だけを紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、参議院選挙投票当日の午前中に放送した番組の「大企業のトップが持つ手帳」というコーナーで、自民党の比例代表選挙の渡邉美樹候補がVTR出演していた、テレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)の2つの番組を、前回の委員会で一括して審議の対象とすることとした。
10月初旬、2つの放送局の関係者あわせて10人を対象にヒアリングが行われ、その概要が、担当委員から報告された。
関西テレビの『スーパーニュースアンカー』については、「選挙に関連する特集企画の中で特定の立候補予定者だけを取り上げることについて、担当していた記者やデスクたちは、その放送が選挙の公平・公正性に影響を与える可能性について、どう認識していたのか」「民放連の放送基準をどう理解していたのか」などについて、ヒアリングの結果を踏まえて議論が交わされた。またテレビ熊本の『百識王』については、「なぜ、放送前のチェックの際に、候補者の出演に気づかなかったのか」について、社内でのチェック体制や立候補者情報の共有状況なども含めて審議された。
今回の議論をふまえて、次回委員会では、担当委員が意見書の原案を提出し、さらに議論を深めることになった。

2.弁護士が紹介した詐欺事件の被害者が別人だったのは、裏付け取材が不備のためとして審議入りした日本テレビの『スッキリ!!』

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演した弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして、前回の委員会で審議入りした事案。
10月初旬、当該番組の取材ディレクターやプロデューサー、それに情報カルチャー局の幹部やコンプライアンスの担当者など、あわせて11人を対象にヒアリングが実施され、その概要が、担当委員から報告された。
「なぜ被害者の人物を特定する質問を十分に行わず、免許証などによる本人確認をしなかったのか?」「なぜ被害事実の存在についての裏付け取材をしなかったのか?」「被害者を本物と信じたのはなぜか?」「弁護士を信用した背後にどんな事情があったのか?」「弁護士の紹介であることは、その内容が信じられる合理的な理由となるのか?」などを中心に、詳細で具体的な報告に基づく活発な議論が行われた。また、担当部局が異なるとはいえ、当該局で続発した類似事案の反省と教訓から講じられた再発防止策などについての説明もあった。
その結果、事実関係はほぼ明らかになり論点も整理できたとして、次回委員会に担当委員が意見書の原案を提出することになった。

3.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用した鹿児島テレビの2つのローカル番組

鹿児島テレビは、高校総体をめざして練習に励み、見事に出場を果たした鹿児島市内の高校の男子新体操部を、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』(6月29日放送)で紹介した。その際、練習する選手を激励する監督の声もたびたび放送されたが、あわせて10か所で約2分間紹介された監督の声は、他局の取材音声を無断で受信・録音したものだった。
取材したのは関連会社から派遣されたディレクターで、他局が監督に着けてもらったワイヤレスピンマイクの音声を、共同取材のような感覚で、カメラマンと音声マンに傍受するよう指示していた。監督との人間関係が築けていなかったため、自局のワイヤレスピンマイクも着けてもらうよう依頼できなかったという。電波法59条は、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して窃用することを禁じている。放送局が取材で使うワイヤレスピンマイクの周波数は一定の範囲内に限定されており、チャンネルを切り替えると容易に傍受できる構造になっている。
委員会は、不正な方法で取材したうえ、それを放送で使用したことは悪質で、放送倫理上も許されない行為であるとして審議の対象とすることとし、まず、ディレクターら関係者へのヒアリングを行うことになった。

【委員の主な意見】

  • 監督との人間関係が築けていなかったということだが、監督からは正式に許可を得て取材しているのだから、どうしてその時にピンマイクを着けてほしいと頼まなかったのか、理解に苦しむ。
  • このディレクターの手法は、明確な違法行為と言わざるを得ない。取材者としての職業倫理にも関わる問題だけに、どのような社内教育が行われているのかを確認する必要があるのではないか。
  • カメラマンや音声マンは、ディレクターの指示に疑問を感じながらも結局は反論することなく指示に従っている。現場の力関係の中では、それは間違いだということは難しいのだろうか。
  • その気になれば誰でも簡単にできそうなことだけに、なぜ不正な行為が行われたのかをきちんと検証するべきだ。そのためには、関係者へのヒアリングも実施する必要がある。
  • 当該局は総務省へ報告し総務省の調査も行われているようだが、委員会は、それとは関係なく、あくまでも放送倫理の問題として議論を進めていくべきだろう。

以上

第74回 放送倫理検証委員会

第74回–2013年9月

参院選関連2番組を一括して審議入り
(1)関西テレビ『スーパーニュースアンカー』
(2)テレビ熊本『百識王』

「弁護士紹介の被害者は"関係者"」審議入り 
日本テレビ『スッキリ!!』

8月2日に意見書を通知・公表した関西テレビの「インタビュー映像偽装」事案について、当日の報道等の反応を確認し、若干の意見交換を行った。
7月に実施された参議院選挙に関連する2つの番組について、放送の公平・公正性の観点から議論が交わされた。関西テレビのニュース番組は、ネット選挙解禁に関する特集企画で特定の比例代表立候補予定者だけを紹介し、しかも参院選の公示予定日の1か月前を切った時点で放送した。テレビ熊本が投票日当日に放送したバラエティー番組には、比例代表候補者がVTR出演していた。委員会では、選挙の公平・公正性を守るよう要請した3年前の意見書や今年4月の委員長コメントの趣旨が活かされなかったことが指摘され、一括して審議の対象とすることになった。
日本テレビの情報番組で詐欺事件の被害者として放送された人物が、被害者ではなく、番組に出演した弁護士が所属していた法律事務所の事務員だった。委員会は、番組のスタッフが弁護士の紹介というだけで必要な裏付け取材を怠ったことについて、審議することとした。

議事の詳細

日時
2013年9月13日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

1.関西テレビの『スーパーニュースアンカー』「インタビュー映像偽装」に関する意見を、通知・公表

関西テレビのローカル報道番組『スーパーニュースアンカー』の特集企画で、大阪市職員の兼業について証言した情報提供者の映像を取材スタッフを使って偽装し、新聞報道で発覚するまで3か月余りも視聴者に説明していなかったとして、審議入りした事案。
8月2日、当該局に対して意見(委員会決定第16号)を通知し、続いて公表の記者会見を行った。事務局からの報告のあと、当該局の対応、当日のテレビニュースや新聞記事等の反応を確認しながら意見交換を行った。また、担当委員を講師として当該局で開かれた研修会について、委員からの報告があった。

2.関西テレビのニュース番組のネット選挙特集企画で、特定の比例代表立候補予定者だけを紹介

関西テレビが6月10日の夕方に放送したローカルニュース番組『スーパーニュースアンカー』で、7月の参議院選挙から解禁されるインターネットでの選挙運動を特集企画として取り上げた。この中で、候補者サイドの取り組みの例として、自民党から比例代表選挙の立候補予定者になっていた太田房江元大阪府知事を、インタビューを交えて約2分間紹介した。
民放連の放送基準第12項は、「選挙事前運動の疑いがあるものは取り扱わない」と規定し、その解説文のなかで、公示(告示)の1か月前を目安とするよう指摘している。参議院選挙の公示予定日の7月4日まで、すでに1か月足らずとなっていた。放送後、当該局の報道局内部から疑問の声があがり、1週間後の同番組内でお詫び放送を行った。
委員会では、民主主義の根幹である選挙について、放送の公平・公正性の確保に努めるよう、3年前に出した「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」(委員会決定第9号)や、今年4月に公表した委員長コメントなどで繰り返し指摘してきた。しかし、それが放送現場に十分浸透していないことが明らかになったことから、審議の対象とすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • ネット選挙の解禁をわかりやすく、面白く伝えようとするあまり、選挙に関する報道は公平公正にやるべきだという基本中の基本が、いつの間にか忘れられていたのではないか。

  • 3年前の意見書では、当該局だけでなく、各局でも参考にして役立ててほしいとの思いから、選挙の意義まで丁寧に記載している。それにもかかわらず同様なミスが繰り返されるということは、第三者機関として当委員会が活動してきたことが、役立っていないということになるのではないか。

  • 選挙の取材をするなら、まずは選挙の仕組みをきちんと勉強してほしい。記者のレベルが低下しているということなのだろうか。

  • 企画の提案から取材・編集の過程で、放送の公平・公正性に問題があることを誰ひとり指摘せず、放送されてしまったことは何を示しているのか。報道の現場で何の議論もなかったとしたら、問題は深刻だ。

  • 問題は、放送が公示日の1か月前を越えるかどうかではなく、放送基準でいう「選挙事前運動の疑いがあるものは取り扱わない」に抵触するかどうかという原則が、きちんと理解されていないことにある。マニュアル的に、公示日まで1か月程度ならいいだろうという思考方法では困る。

  • 同じような過ちが繰り返されることを心配して、参議院選挙を前にした今年4月に「委員長コメント」を出して注意喚起をおこなったのに、全く活かされていないことが残念でならない。

  • テレビは影響力が強いのだから、選挙の公平性を保つためには、もっと細心の注意を払わなければいけないという感覚をもってほしい。

3.テレビ熊本が参院選投票日に放送したバラエティー番組に、比例代表選挙の特定候補者がVTR出演

テレビ熊本は、参議院選挙投票日(7月21日)の午前9時30分から10時まで放送したバラエティー番組『百識王』で、各界の著名人たちのユニークな手帳活用法を紹介したが、この中に、自民党の比例代表選挙候補者の渡邉美樹氏が約2分間VTR出演していた。
この番組はフジテレビが制作したもので、関東エリアでは、渡邉氏が立候補表明をする前の4月16日に放送された。この番組を購入したテレビ熊本は、放送前に担当者がチェックしたが、渡邉氏が候補者であることに気がつかなかった。候補者の情報は報道セクションでは把握されていたが、全社的な情報共有はされていなかったという。
委員会は、この事案についても、放送の公平・公正性が確保されていなかったとして、関西テレビの事案と一括して審議の対象とすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • 民主主義の根幹をなす選挙、とりわけ国政選挙について、放送局の人間である以上は、報道セクションに直接関係していなくても、どの政党からどんな候補者が立候補しているかの情報は知っておく必要があるのではないだろうか。

  • 話題になった候補者のひとりだから、きちんとテレビや新聞に目を通していれば、報道以外の人であってもチェックできたと思うのだが。

  • この番組は、何年間も東京より3か月遅れで放送しているとのことだが、今の時代に3か月も時期がずれると、番組のテーマや、出演者の服装・季節感などに違和感はないのだろうか。

  • キー局の放送から3か月後の放送となったのは当該局の事情であり、番組を制作して販売したキー局には責任はないと考えるべきだろう。

4.日本テレビの情報番組が特集した詐欺事件の被害者は、同じ番組に出演した弁護士の法律事務所の事務員

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』が、昨年(2012年)2回にわたりインターネット詐欺を特集した際、その被害者として出演し、詐欺の手口や被害の実態などを語った男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演した弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だった。
昨年の2月29日放送の「悪質出会い系サイトの実態」には女性の被害者が、6月1日放送の「サクラサイト商法に注意」には男性の被害者が、顔を出さずに声も変えて登場した。この2つの特集は、別のディレクターが担当したが、いずれもこの番組に出演した同じ弁護士からの紹介だったため信用して、裏づけ取材や、人物の身元確認をきちんとしないまま出演させていた。
被害者として取材を受けた2人の話す内容が、具体的で詳細だったため、番組のほかのスタッフも被害者ではないことに気付かないまま放送してしまったという。
今年の7月になって、出版社からの取材があり、日本テレビ側が弁護士に面談して確認したところ、弁護士は虚偽の紹介をした事実を認めて謝罪した。日本テレビは7月19日、放送の誤りを認め、詳細なお詫び放送を行った。
委員会は、真の被害者ではない別人を、ただ弁護士の紹介だけで信用し、必要な裏づけ取材を怠り、しかも2回にわたって放送したことは放送倫理上問題があるとして、審議の対象とすることにした。

【委員の主な意見】

  • 取材が容易ではないテーマの専門家を探すとき、安易にネットでの検索や知人からの紹介に頼っており、取材者としての基本を知らなすぎる。

  • 専門家を探すように指示した現場の上司は、具体的にどのような指導をしたのか。指導の役割をきちんと果たせる人はいるのだろうか。

  • 専門的な分野について、専門知識に基づいて、一般の人にうまく説明できる適切な人物を探す能力、そのために人脈を形成しておく能力が欠けていると言えそうだが、現場の人にそれを求めるのは難しいのだろうか。

  • ある弁護士が信頼できるかどうかは、弁護士事務所のホームページがどのようなつくりになっているかが参考になる。過去の実績を誇示するなどして顧客を誘っている場合には、無条件に信用しないほうがいいかもしれない。まっとうな弁護士なら売り込みばかりのホームページは作らない。

  • 情報番組が扱える範囲というものを、もう少し考えてもいいのではないか。専門性が高い問題を扱うのは、制作現場の厳しい現実を考えると、ハードルが高すぎるのでは。

  • 弁護士は業務上、クライアントの本人確認をやらざるを得ないから、取材者は、被害者の身元について弁護士から十分確認できたはずである。しかし、そのチェックを怠っていたため、こうしたことになってしまった。

  • 過去にも類似した例があった。こうした問題が繰り返されるのは、特定の局に固有の問題なのか、それとも放送局全体に共通する問題なのか。

以上

第73回 放送倫理検証委員会

第73回 – 2013年7月

映像の偽装が発覚した関西テレビの報道番組『スーパーニュースアンカー』、意見書を通知・公表へ

第73回放送倫理検証委員会は7月12日に開催された。
関西テレビの報道番組で情報提供者の映像の偽装が明らかになり、審議入りした事案について、担当委員から前回委員会の議論を踏まえた意見書修正案が提出された。活発な意見交換が行われた結果、表現の細部の修正は委員長に一任して委員会の意見とすることが承認された。8月早々にも、当該局への通知と公表の記者会見が行われる。

議事の詳細

日時
2013年7月12日(金)午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、是枝委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

■ 映像の偽装が発覚した関西テレビの報道番組『スーパーニュースアンカー』、意見書を通知・公表へ

関西テレビのローカル報道番組『スーパーニュースアンカー』の特集企画で、大阪市職員の兼業について証言した情報提供者の映像が取材スタッフを使って偽装された映像であったうえ、新聞報道で発覚するまで3か月余りも視聴者に説明していなかったとして、審議入りした事案。
前回委員会での議論を踏まえて担当委員が作成した「意見書修正案」をもとに、委員の間で活発な意見交換が行われた。
「なぜ問題の映像が撮影されたのか」「なぜ社内のチェックが機能せず放送されてしまったのか」「なぜ視聴者に対する速やかな説明がなされなかったのか」の3つのステージごとに、字句の修正や論点の最終確認などが行われた結果、表現の細部の修正は委員長に一任して委員会の意見とすることに委員全員の了承が得られた。
この「意見」は、委員会決定第16号として、8月早々にも当該局への通知と公表の記者会見が行われる。

以上

第72回 放送倫理検証委員会

第72回 – 2013年6月

映像の偽装が発覚した関西テレビの
『スーパーニュースアンカー』、意見書原案を審議

第72回放送倫理検証委員会は6月14日に開催された。
関西テレビの報道番組で情報提供者の映像の偽装が明らかになり、審議入りした事案は、担当委員から意見書の原案が提出された。当該局への聴き取りとこれまでの委員会での議論を踏まえて問題点を整理したもので、長時間にわたる意見交換が行われた。次回委員会までに担当委員が修正案を作成、意見の集約をめざす。

議事の詳細

日時
2013年6月14日(金)午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、是枝委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

映像の偽装が発覚した関西テレビの『スーパーニュースアンカー』、意見書原案を審議

関西テレビのローカル報道番組『スーパーニュースアンカー』の特集企画で、大阪市職員の兼業について証言した情報提供者の映像を取材スタッフを使って偽装し、新聞報道で発覚するまで3か月余りも視聴者に説明していなかったとして、審議入りした事案。
当該局の担当記者・カメラマン・撮影助手や、対応策を協議した報道局幹部などあわせて14人を対象に実施した聴き取りと、前回までの委員会の議論を踏まえて、担当委員から「意見書原案」が提出された。
原案では、「なぜ問題の映像が撮影されたのか?」「なぜ社内のチェックが機能せず放送されてしまったのか?」「なぜ視聴者に対する速やかな説明がされなかったのか?」の3つのステージごとに課題や問題点が整理され、委員による質疑や意見交換は2時間近くに及んだ。
その結果、次回委員会までに担当委員が委員会での議論を踏まえた修正案を作成し、次回委員会の場でさらに議論を深めて、意見の集約をめざすことになった。

以上

第71回 放送倫理検証委員会

第71回 – 2013年5月

映像の偽装が発覚して審議入りした関西テレビの
『スーパーニュースアンカー』、ヒアリング結果を報告

選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビの
バラエティー番組、「委員長コメント」を公表

第71回放送倫理検証委員会は5月10日に開催された。
関西テレビの報道番組で、情報提供者の映像の偽装が明らかになり、前回委員会で審議入りした事案。担当委員からヒアリングの結果が報告され、意見交換が行われた。その結果、事実関係はほぼ判明し論点も整理できたとして、次回委員会までに担当委員が意見書原案を作成、委員会の場でさらに議論を深めることになった。
フジテレビのバラエティー番組で、選挙期間中の現職知事の映像が約10秒間放送された事案に関連して、全放送局に選挙の公平・公正性に万全を期すよう要請する「委員長コメント」が、4月26日、BPOのホームページに公表されたことが報告された。

議事の詳細

日時
2013年5月10日(金)午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、是枝委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

1.映像の偽装が発覚して審議入りした関西テレビの『スーパーニュースアンカー』、ヒアリング結果を報告

関西テレビのローカル報道番組『スーパーニュースアンカー』の特集企画で、大阪市職員の兼業について証言する情報提供者の映像として放送されたものが、実際には取材スタッフを使った偽装映像であったうえに、新聞報道で発覚するまで3か月余りもその事実を視聴者に説明していなかったとして、前回の委員会で審議入りした事案。
当該局の担当記者・カメラマン・撮影助手・編集マンなど取材から放送に至る担当者のほか、事情が判明したあと対応策を協議した報道局幹部、さらに広報やコンプライアンスの担当者など、あわせて14人を対象に16時間にのぼるヒアリングを実施したことが、担当委員から報告された。
「なぜ問題の映像が撮影されたのか?」「なぜ社内のチェックが機能せず放送されてしまったのか?」「なぜ視聴者に対する速やかな説明がされなかったのか?」などを中心に、詳細で具体的な説明が行われた。また、当該局で6年前に起きた「あるある問題」の反省や教訓が、生かされているかどうかについての報告もあり、委員の間で活発な質疑や意見交換が展開された。
その結果、事実関係はほぼ明らかになり論点も整理できたとして、次回委員会までに担当委員が意見書原案を作成、委員会の場でさらに議論を深めることになった。

2.選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビのバラエティー番組『VS嵐』、「委員長コメント」を公表

千葉県知事選挙(2月28日告示・3月17日投票)さなかの3月7日、フジテレビのバラエティー番組『VS嵐』で、森田知事の映像が約10秒間放送された事案。前回の委員会で、審議入りはしないものの各局に対する注意喚起を兼ねて「委員長コメント」を公表することを決めたが、4月26日、BPO放送倫理検証委員会のホームページにアップされた。
この委員長コメントは、『VS嵐』の事案で浮き彫りになった問題点をあらためて指摘した上で、全放送局に対して「選挙の公平・公正性を守るという意識を高めること」と「選挙の公平・公正性を守るために必要なチェックの仕組みがきちんと構築されているかどうかを再点検すること」を要請するもの。委員会では、事務局から公表の事実と新聞報道など委員長コメントへの反響が報告された。

以上

第70回 放送倫理検証委員会

第70回 – 2013年4月

"内部告発者"のモザイク映像が別人だった
関西テレビの『スーパーニュースアンカー』を審議入り

知事選挙期間中に候補者映像を放送のバラエティー番組
審議入りせずも、各局に注意喚起の「委員長コメント」公表

第70回放送倫理検証委員会は4月12日に開催された。
5人の新委員を迎えて、新しい任期が始まる委員会となったため、冒頭、委員の互選による委員長の選任が行われ、川端委員長の留任が決まった。また、川端委員長の指名により、委員長代行に小町谷委員(留任)と水島委員(新任)が就任することになった。
関西テレビの報道番組で、内部告発者のモザイク映像として放送されたものが別人を使って撮影したものであったことが、新聞報道で明らかになった。告発者本人から一切の撮影を拒否され、取材スタッフの後姿を撮影していたという。取材担当者は放送前にこうした事情を上司に報告していなかった。また、事情が判明した後も、当該局は3か月以上、視聴者への説明やお詫びなどを行っていなかった。委員会は、取材・制作の手法にも、放送後の対応にも、放送倫理上の問題があることは明らかだとして、審議入りすることを決めた。
フジテレビのバラエティー番組で、選挙期間中の現職知事の映像が約10秒間放送された。過去の映像を総集編的にまとめて紹介する中に、昨年11月、知事がこの番組に出演した時のものが含まれていた。制作担当者には選挙期間中であることの認識がなく、局内のチェックも機能しなかった。委員会は、選挙の公平性・公正性に万全を期すよう求めた3年前の意見書の趣旨が徹底されていないとして、審議入りはしないものの、「委員長コメント」をBPOのホームページなどに公表し、各局にも注意を喚起することとした。

議事の詳細

日時
2013年4月12日(金)午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、是枝委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員

1.内部告発者の映像が別人だった関西テレビの『スーパーニュースアンカー』

関西テレビの夕方のローカル報道番組『スーパーニュースアンカー』は2012年11月30日、「大阪市職員 兼業の実態」と題した特集企画で、兼業の実態を証言する"内部告発者"のインタビューを放送した。その際、音声は告発者本人の声にボイスチェンジを施したものだったが、映像は取材スタッフの後姿にモザイクをかけて偽装したものだった。告発者本人が、自分の体が少しでも映ることを拒んだためだという。
この撮影は、担当記者の判断によって行われたが、放送まで10日以上もあったにもかかわらず、デスクや編集責任者など上司への相談や報告はなく、内部チェックは機能しなかった。
放送終了後に取材スタッフからの通報で問題が表面化したあと、報道局だけでなく、社内のコンプライアンス担当者の会議などでも、問題点を探り再発を防ぐための議論は行われたが、視聴者への説明やお詫びは何ひとつなされなかった。当該局によると、告発者を守るために不適切な手法を取ったが、告発者本人の声を伝えた報道の内容や趣旨に偽りはなかったためだという。視聴者への説明やお詫びが行われたのは、2013年3月13日に新聞報道がされたあとで、放送から3か月以上が経過していた。
委員会は、取材・制作の手法にも、放送後の対応にも、放送倫理上の問題があることは明らかだとして、審議入りを決めた。

【委員の主な意見】

  • 問題点は大きく言うと2つ。なぜそういう映像が作られ、チェックが働かずに放送されてしまったのか?なぜ誤りを犯した後の自主的・自律的な是正の措置が取られなかったのか?

  • 兼業している人がいました、だけではなく、兼業者が存在する理由や背景に何が潜んでいるのかを伝えるのが、報道本来の使命やありかたなのではないか。そこから先にある、重要な問題に触れられていない。

  • この内部告発者は、なぜ告発を決意したのだろう。そこにはどんな気持ちや状況があったのかも知りたいが、それにも触れられていない。

  • 声は内部告発者本人なのだから、映像は別人でもいいということが、報道の世界で通用するはずがない。たとえモザイク掛けであれ、本人が話していることが、報道の『信頼性』につながる。この手法は誠実ではない。

  • 果たして取材対象を守るために替え玉を用意するような場面だったのか?無理にそれらしい映像を作らなくても、代わりの映像や手法はいくらでもあるはずだ。

  • やはり、映像と音声がそろってこその『報道』だろう。この事案が審議入りしたほうがよいと思う理由は、放送後の対応があまりに悪すぎるということもある。実は音声も作ったのではないか?という疑いすら持たれかねず、報道そのものに対する信頼性を失わせかねない。

  • 6年前、この局で起きた「あるある問題」の重い教訓は、現在も本当に根付いているのか。疑問を持たざるを得ない放送後の対応だ。

2.知事選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビのバラエティー番組『VS嵐』

千葉県知事選挙(2月28日告示・3月17日投票)は、現職の森田健作知事が再選を果たしたが、選挙期間中の3月7日、フジテレビのバラエティー番組『VS嵐』で約10秒間、森田知事の映像が放送された。総集編形式で1年間の嵐メンバーの好プレー珍プレーを紹介した中に、昨年11月に出演した森田知事の映像が含まれていたもの。視聴者から指摘があるまで、制作担当者は放送日が千葉県知事選の期間中であることや、森田知事が立候補していることを認識しておらず、局内のチェックも機能していなかった。
委員会では、放送エリア内の千葉県知事選挙について、フジテレビの社内で情報の共有や注意喚起が行われていなかったことを危惧する意見が相次いだ。また、3年前に委員会が出した「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」(委員会決定第9号)で、選挙は民主主義社会の根幹であり、公平性・公正性に万全を期すよう求めた趣旨が、放送現場に徹底されていないことを懸念する指摘もあった。最終的には、再放送の映像であり、短い時間の放送なので、審議入りしないことになったが、今年が参議院議員選挙の年であり、各局に対する注意喚起を兼ねて、何らかのメッセージを発するべきだとの意見で一致した。BPOのホームページなどに「委員長コメント」として公表する。

【委員の主な意見】

  • 千葉県に住んでいる番組制作スタッフは、ひとりもいなかったのか?それとも県知事選挙に関心が全くなかったのか?

  • 放送時間はわずかだが、「知事ボール」という声が聞こえるのは気になった。

  • 番組の制作スタッフは、嵐のメンバーの面白いシーンを集めることしか考えていなかったということだろう。

  • 千葉県知事選の立候補者について、社内で注意喚起していないのは、キー局としてはお粗末だ。放送エリア内の知事選ぐらいは、ちゃんとチェックしてほしい。

  • 3年前の委員会決定でも、芸能人の候補者に関する、今回とよく似た事案があって警鐘を鳴らしたが、その教訓が生かされていない。

  • あのときの事案では、投票日当日に12分以上も候補者を放送していたので、それよりは罪が軽いといえるだろう。

  • 審議入りすべき事案とは考えないが、今年は参議院議員選挙の年でもあり、 各局に対してのメッセージは発したほうがいい。

■委員長コメント

フジテレビは千葉県知事選挙の選挙期間中であった本年3月7日に放送したバラエティー番組『VS嵐』で、知事選に立候補中の森田知事の映像を使用した。これは昨年11月に放送された回に「チーム千葉」の一員として出演していた森田知事の映像が総集編で使用されたものであるが、「知事ボール」と名付けたボールを使ってゲームを行い、それを「チーム千葉」の法被を着た森田知事が応援するという映像なので、森田氏と千葉県知事を強く結びつけるものであった。このようなことになったのは、番組制作者も編成担当者も、千葉県知事選挙の選挙期間中であり森田氏が立候補していることを全く失念し、視聴者から指摘されるまで気づかなかったためである。
この番組は、民放連放送基準第2章(12)の解説で「立候補者及び立候補予定者の出演は公示(告示)後はもちろん、少なくとも公示(告示)の1ケ月前までには取りやめることが望ましい」とされていることに明白に違反しており、実質的にも選挙の公平性を害するおそれがあったことは明らかであろう。
委員会は、「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」(委員会決定第9号)で、候補者がリポーターとして出演する旅番組を投票日当日にBSジャパンが放送したことを審議の対象とした。一方、今回の番組では候補者の露出時間が約10秒であり、投票日当日に約12分にわたってリポーターとして出演し続けたBSジャパンの事例とは放送倫理違反の程度が著しく異なること、当該局が、地方を含むすべての選挙について編成部と報道局が連携して選挙予定と立候補が想定される人物について制作現場へ情報提供する体制を構築し、制作現場でもキャスティングに際して立候補の予定を可能な限り確認することとされたこと、ガイドライン「選挙立候補者などの番組出演に関する注意事項書」が作成され、バラエティー制作センターの全プロデューサーと全編成部員を対象とする講習会が開催されたことなど、再発防止策が徹底されたことから、審議の対象とはしないこととした。
しかしながら、在京キー局で千葉県知事選挙の選挙期間中であることを全く意識しないで番組が制作され、誰もチェックしないまま放送されたということは、放送の現場で、民主主義の根幹を成す選挙の公平・公正性を守ることの重要性についての意識が低下しているのではないかと疑わせるに十分な事態である。今年は参議院議員選挙の年であり、しかもこの選挙はこの国の方向性を決定的に左右する重要な選挙になると思われる。前述した委員会の意見書で述べたように「代議制民主主義制度において選挙が公平・公正に行われることはその統治の正統性を担保する唯一無二の手段であり、民主主義の根幹を成すきわめて重要なものである」ので「選挙にかかわる番組制作・放送における公平・公正性を徹底」することが絶対に必要である。委員会は、この機会にあらためて全放送局に対し、選挙の公平・公正性を守るという意識を高めることと、選挙の公平・公正性を守るために必要なチェックの仕組みがきちんと構築されているかどうかを再点検することを要請しておきたい。

以上