2015年10月27日

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』赤ちゃん育児教室企画に関して審議入り

青少年委員会は10月27日の第174回委員会で、上記番組について審議入りを決定した。対象となったのは、テレビ東京が2015年9月12日25時15分から30分間放送したバラエティー番組『ざっくりハイタッチ』の「赤ちゃん育児教室企画」。視聴者から「赤ちゃん育児教室と題し、芸人が裸におむつ着用で寝転がり、そのおむつを脱がせたりしていた。若者に人気の芸人が出演する番組で下品なことを公共の電波で流すことはひどい」などの意見が寄せられ、委員会では、番組を視聴したうえで討論した。
その結果、「男性出演者のおむつ交換シーンについては、2014年4月に"委員会の考え"を公表し問題点を指摘している。今回も問題にせざるを得ない」「番組がどのような経緯で企画・制作・放送されたのか知りたい」などの意見が出され、審議入りすることを決めた。
委員会では、近く質問状を当該放送局に送って回答を求め、次回委員会から実質審議に入ることにしている。

第225回放送と人権等権利に関する委員会

第225回 – 2015年10月

「謝罪会見報道」事案、「大喜利・バラエティー番組」事案の審理…など

佐村河内守氏が申し立てた「謝罪会見報道」と「大喜利・バラエティー番組」の2事案を集中的に審理するため、ほぼ3年ぶりに臨時委員会を開催した。その結果、両事案の「委員会決定」案を了承し、通知・公表を11月中旬にも行う運びとなった。

議事の詳細

日時
2015年10月13日(火)午後4時~9時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
委員会では、第4回起草委員会での検討を経て修正された「委員会決定」案を審理し、了承された。これにより、「委員会決定」の通知・公表を11月中旬にも行う運びになった。なお、一部の委員は結論が異なる少数意見を書くことになった。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
本件の「委員会決定」文はこれまでの検討でほぼ固まっていたが、この日の委員会で最終的に了承された。これにより、前項の「謝罪会見報道」事案とあわせて11月中旬にも「委員会決定」の通知・公表を行う運びになった。

3.その他

  • 10月5日に山形で開催された県単位意見交換会について、事務局から報告するとともに、その模様を伝える地元局のニュース番組の同録DVDを視聴した。
  • 本年度中に開催する地区単位意見交換会(九州・沖縄地区)を2月3日に福岡で開催することが決まった。
  • 次回は10月20日に定例委員会を開催する。

以上

第97回 放送倫理検証委員会

第97回–2015年10月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』ほかを審議…など

第97回放送倫理検証委員会は10月9日に開催された。
NHK総合の『クローズアップ現代』とその基になった『かんさい熱視線』の"出家詐欺"報道について、前回委員会の議論を盛り込んだ意見書の修正案が担当委員から提出された。内容や表現をめぐって意見交換が行われた結果、大筋で了解が得られたため、表現を一部手直ししたうえで、11月上旬にも当該局への通知と公表の記者会見をすることになった。

議事の詳細

日時
2015年10月9日(金)午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)は、寺院で「得度」の儀式を受け法名を授けられると、家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用した"出家詐欺"が広がっていると紹介した。
この番組で、多額債務者に"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張しているのに対して、当該局は「事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないと判断したが、『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」とする報告書を公表している。
前回の委員会で意見書原案に対して示された意見や議論を盛り込んだ「修正案」が、担当委員から提出された。"出家詐欺"の相談場面の実態はどのようなものだったのか、取材・制作の手法としてどのような問題点があったのか、2つの番組でいずれも局内のチェックが機能しなかったのはなぜか、などの論点について、詰めの議論が交わされた。また、放送の自主的自律的な是正のあり方についての委員会の考えが的確に織り込まれているかをめぐって意見交換も行われた。その結果、大筋で了解が得られたため、細部の表現などを手直ししたうえで、11月上旬にも当該局への通知と公表の記者会見をすることになった。

2.委員会運営規則の一部見直しについて検討

審議や審理に入る前にその適否を議論する「討議」についての規程を設けるなど、委員会の運営規則を現状に即した形に一部見直すべきではないかという委員会の意向を受けて、準備作業を始めた事務局から途中経過が報告された。
意見交換の結果、今年度じゅうに作業を終えることをめざして今後本格的な検討に入ること、委員会のなかに相談窓口となる委員を置くことなどが了承された。

以上

2015年9月29日

意見交換会(福岡)概要

◆概要◆

青少年委員会は、「視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての機能」を果たす役割を担っています。その活動の一環として、在福岡放送局の皆様との相互理解を深め、番組向上に役立てることを目的に、9月29日にRKB毎日放送6階特設会議室で「意見交換会」を開催しました。福岡地区では初めての開催、14時半から18時まで意見交換が行われました。
BPOからは、汐見稔幸・委員長はじめ7人の委員全員と濱田純一・理事長が参加しました。放送局からは、NHK、RKB毎日放送、九州朝日放送、テレビ西日本、福岡放送、TVQ九州放送、エフエム福岡、CROSS FM、ラブエフエムの9局から、BPO連絡責任者、制作・報道・情報番組関係者など41人が参加しました。
意見交換会は2部構成で行い、緑川由香・委員の進行により、第1部では(1)BPOや青少年委員会に対する質問・要望、(2)地元制作番組を視聴した感想と課題、などについて意見交換しました。
第2部では(3)子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮、(4)ネット情報の取り扱いについて、(5)ネットリテラシーを含むメディアリテラシーへの取り組み、などについて意見交換しました。

【第1部】

●=委員、○=放送局出席者

(1)BPOや青少年委員会に対する質問・要望

  • ○BPOの意義は理解しているが、最近すぐ視聴者がBPOへ訴えるということが多く、放送局側は萎縮してしまう。
  • ●たくさんの視聴者がいる中で、たったひとりの意見にでも現場はびびる傾向にある。しかし、満足している人は意見をよこさないものだ。あまり意識しすぎる必要はなく、テレビ・ラジオには王道を歩んでほしいと思っている。
  • ○ネットの盛り上がりと視聴率がリンクするかどうかは分からない。福岡ではネットで騒がれるような番組は無く、意識したことは無い。
  • ●BPOと言えば、権力からの直接的な規制を防ぐために自主規制を各局に求めているとの印象があるようだが、青少年委員会は少し違った形の活動もしている。個人情報やプライバシーの保護など世の中の価値観が変わってきているケースについては局側にあらためて考えてもらうことを求めているが、一方で、スポンサーの確保は難しいかもしれないが、青少年のためにいい番組が広がることを応援していきたいとも思っている。「見解」などを丁寧に読んでもらえれば分かるが、過剰な規制を求めているわけではない。また、明確な解決策はないが、批判が局に届くことで放送局が萎縮してしまうことについて模索する場を設けることも大切なことだと思っている。
  • 〇他の委員会に比べて青少年委員会は印象が薄い。視聴者が人生を変えることができるような良い番組をプッシュして存在感を出してほしい。
  • ●調査研究も青少年委員会の使命の一つなので、具体的に影響を受けた内容を局側に伝えられるように子どもたちの声を引き出していきたい。
  • ●中高生モニターが毎月のモニター報告の中でドキュメンタリー番組に感銘を受け千字以上も感想を寄せてきた。全力で作った番組は必ず伝わる。自信を持って制作してほしい。

(2)地元制作番組を視聴した感想と課題

各局から地元制作の青少年におすすめするテレビ・ラジオ番組が合計11番組寄せられ、委員が全ての番組を前もって視聴し、感想や意見などを述べた。

<提出された番組一覧>

  • NHK福岡放送局『きん☆すた』 ~祭りへGO!第二弾!~
  • RKB毎日放送『みんなの青春のぞき見TV TEEN!TEEN!』
    ~ピースさんぽ&早良高校水球部~
  • RKBラジオ『スマスマE-KIDS』 ~室見小学校の着衣水泳~
  • 九州朝日放送『アサデス。』
  • KBCラジオ『KBCラジオ特別番組「憲法で巡る日本の旅」』
  • テレビ西日本『華丸・大吉のなんしようと?』 ~中川家と直方市をぶらり!~
  • 福岡放送『ナンデモ特命係発見らくちゃく!』 ~天国からのラブソング~
  • TVQ九州放送『土曜の夜は!おとななTV』
  • エフエム福岡『小澤俊夫 昔話へのご招待 特別編~子どもの成長を見つめて』
  • CROSS FM『Challengeラヂヲ』
  • ラブエフエム『月下虫音』(げっかちゅうね)

【第2部】

(3)子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮について

  • ●子どもが性的被害にあった場合や顔写真の扱いなど表現に関してと、子どもの取材において保護者の同意をどこまでとるかといったような取材時の配慮の2つに分類できる。
  • ○子どもへのインタビューにおける保護者への同意については、過去にトラブルがあった。それ以降、シビアな事件・事故についてはその場で保護者の同意を取り、いない場合には電話で確認を取るようにしている。トラブルを起こした時には、いくつものチェックポイントで見逃されてしまった。ただ、取材の現場がシビアに問題意識を持っていないとうまくいかない。
  • ○当社では原則として保護者に許可を取るようにしている。しかし現場ではなかなかうまくいかないことがある。取材後に「やはり出さないでほしい」と言われればもちろん出すことはしない。
  • ●課外活動の紹介でも、名札にモザイクをかけてほしいとの要望があったとアンケートにあったが。
  • ○悩むことが多い。ケースによって出す必要があるかどうか考えている。性的被害などについては、被害者の顔と名前を出した場合は被害内容に踏み込めない時もある。悩ましいのは、他局がどういう対応をしているかだ。柔道の授業中に大外刈で生徒が死亡した事故では学校名は出さなかった。この場合、各社で対応が分かれた。マニュアルはあるが、線で引いたように判断はできない。自殺した生徒の場合、その時は名前を出さなかったが、のちに卒業証書が渡される時に保護者から写真を出してほしいと言われたこともあった。
  • ○佐世保の事件の時には初動から取材したが、学校から保護者に取材を受けなくてもいいとの連絡があり、ますます周辺取材が過熱し長引いた。また、ネットでは既に被害者の名前などの情報が出ていた。当社は顔写真などを放送するのは控える判断をしたが、ネット上で容疑者関連の写真、情報が大量に流布しており、既存メディアの「配慮」が実質的にはあまり意味をなさなくなっていることをあらためて認識した。もちろんネットと放送で判断が違うのは当然だが、違和感もあった。ただ、性的被害についてはよほどの必要性がある場合以外は出さない。
  • ○性的被害について警察からは報道しないよう強い要請があったが、事件の再発防止には必要な情報だと判断し、遺族に対しても手紙でこちらの意図を伝えた上で報道した。遺族との信頼関係を作った上で報道に臨む姿勢が重要ではないか。
  • ○特に決まったルールがあるわけではないが、事案ごとに判断している。実名・匿名を判断するためにも取材が必要だ。公務員が性犯罪で逮捕された際に、その施設の外観映像を使うかどうかについて、被害者がいつまでいたのか、何人くらいいたのかなどの情報が無いと判断が難しい。三重県朝日町の事件では、容疑者が捕まっていない段階で警察がチラシを配ったが、被害者が匿名になっていた。
  • ●警察が情報を出さなくなっている印象があるが、どうなのだろう。
  • ○十数年前から警察は被害者の名前を出さない傾向がある。被害者から名前を出さないでほしいと要望があったからのようだが、ある社が「警察が発表したから」と答えたケースが引き金になったようだ。
  • ○福岡県警はまだ情報を出している方だ。交通事故の場所でさえ出さない警察もある。
  • ●海外では情報を出さないとそれがニュースになるのだが。
  • ●2013年、暴風雪の中、娘をかばいお父さんが亡くなった北海道暴風雪事件では、生き残った少女にインタビューが殺到した。視聴者からも報道の在り方に関して多くの意見が寄せられた。青少年委員会で各局に確認したところ、ある局は放送終了後も関係を継続していた。叔母が取材を許可していたが、少女も応援してくれた全国の人にお礼が言いたいという考えを持っていた。報道する意義があるかないか、ということと、本人や家族に対する取材側の配慮が大変重要だと考える。
  • ○深夜の学生向けの番組宛てに自殺予告のファックスが届いた。個人名は特定できなかったが、番組ナビゲーターが放送で思いとどまるように呼びかけ、翌朝、教育委員会を通して個人を特定し自殺を思いとどまらせることができた。ラジオはナビゲーターとリスナーの距離が近いので、おそらくナビゲーターに助けを求めたのだと思うが、どう対応すれば良いのか悩んだ。同じようなことが多発したらどうしようかと考え「命のダイヤル」の紹介をした。逆に犯罪予告などが来ることも考えられる。
  • ●やはり、番組のパーソナリティーと視聴者の距離の近さ、信頼関係が重要ではないか。今の青少年は本音を家族や友達にも明かせず一人悩んでいることも多い。放送がその中高生の心を開かせることに役立ち、相談窓口になるとすれば、素晴らしいと考える。ただ、メディアが信頼されていない現状もあり、それが取材の難しさに繋がっている。

(4)ネット情報の取り扱いについて

  • ●ネット情報の裏付けをどうしているか、ネット上のサイトを番組内で紹介することの影響について、の二つの論点が考えられる。
  • ●大人たちは知らない人が多いだろうが、今、学生たちの間では「はじめしゃちょー」がYouTubeでとても人気がある。「はじめしゃちょー」は見ている人たちの手の届く範囲の話題、日常的な話題を毎日アップしている。ネットとマスメディアの情報流通の質の違いを感じる。若者たちは、テレビよりYouTubeの方が面白いと感じているのだろう。時代の変わり目なのだろうか。マスコミもネットに依存しすぎている。現象を紹介しても「自分たちが作ったものでは無い」とのエクスキューズをしている。
  • ●ネット上の刺激的なサイトを紹介した番組について視聴者意見が多く寄せられたので議論した。紹介された映像がかなり過激だった。やったら危険だと思う映像もあった。こういった映像を現場でどう判断して放送したのか疑問が生じた。また、IS(いわゆるイスラム国)関連では、子ども番組を差し替えて報道特番にした時にも多くの意見が寄せられた。ISが発信する情報を使わざるを得なかった状況はあったし、速報性ももちろん大切だが、映像の与える衝撃性や信憑性の確認など、どの程度検討が加えられたか疑問だった。ネットは無法地帯であるので、放送する側が考えないといけない。
  • ●総務省の行なった"テレビとネット"に関する調査によれば、10代のテレビの情報への信頼度はネットに比べて相対的に高い。ネットの情報がテレビで取り上げられた瞬間に「格上げ」される。あそこまでやればテレビで取り上げられるんだと考える人もいるだろう。そういった状況であることを意識して扱ってほしい。
  • ○真実性の判断は各現場で行っている。ラジオではネットは重要な情報源だ。ラジオでは信頼関係が強すぎて、青少年の悩み相談になってしまっている面もある。近い人に吐露できない青少年から連絡がある。青少年の一生を変えてしまいかねない状況でもあり、スタッフの悩みも大きい。しかし、解決はできないまでも一端を担っているとの自負はある。
  • ○子どもはネット耐性があると思う。良い悪いは別として、ネットとテレビでは世界観が違う。幸い、担当番組では情報を検証する時間もある。

「インターネット上の情報や映像を番組で利用する際に配慮している点」について、事前アンケートに以下のような回答が寄せられている。

  • YouTubeなどの映像を使う場合には、担当者の部長の許可が必要。
  • インターネットには多くの嘘が書き込まれている。そのことを前提に制作にあたっている。基本的には裏付けのない情報は使用しない。また必要に迫られネットの発言を紹介する場合は、コメントで断定的な表現を避けるなど、配慮している。
  • サイトの情報はあくまでも参考か、情報をとる取っ掛かりとして認識している。その上でその情報を基に、最低でも3つ以上は別の情報ソースを探し確認する。またその情報ソースもできるだけ公の機関が出しているものを選択する。ネットや電話を介して、できるだけ人にも直接取材をし、情報の整合性を確認する。
  • ネット上の情報や映像をそのまま利用することはない。必ず権利者や情報発信者に確認と承諾を得た上で放送に使用している。ただし突発的な事件事故などで事後承諾をお願いしたケースは過去にあった。
  • 権利処理や情報の真贋確認はもちろんだが、あくまで"○○のサイトによる"というエクスキューズのテロップやナレーションを入れるようにしている。

(5)ネットリテラシーを含むメディアリテラシーへの取り組みについて

このテーマについては、メディアと法の関係を長く研究してきた立場から、濱田純一・理事長が話をした。
日本にメディアリテラシーという概念が入ってきた時には"メディアを批判的に読み取る"という文言から"文句をつけること"と理解され、放送局側からも目の敵にされた。それから比べると現在は放送局側も社会もこの概念をよく理解するようになった。法律的な観点から言えば、放送が与える影響が大きいから規制すべきだということになるが、メディアリテラシーが身に着けば少々変な情報を流しても大丈夫とのロジックも出てくる。
どういう形でメディアリテラシーが養われるかは広い目で考える必要があると思っている。各局の協力でテクニカルな面は理解が進んでいるが、それだけではないと思う。自分の周りにいる人たちが、メディアというものをどういう風に見ているのか、メディアが自分の身近なところにどういう風に関わっているのか、そういったところを見聞きすることから育ってくると思う。皆さんがお作りになった番組を視聴させていただいたが、身近なところを取り上げている。実はそのことが、子どもたちのメディアリテラシーを養っていくことに繋がっていくのではないかと思う。身近なところに視聴者がいると思って番組を作ることがメディアリテラシーに役立つことになる。それはメディアに対する「信頼」ということに繋がってくる。メディアを知ることにより「信頼」するようになる、そういう構造をどうやって作っていくかがとても大事なことだ。
ネット情報をメディアが伝える時に"どういう判断で伝えようとしているのか"が視聴者に分かるかどうかが、とても大切だと思う。自分たちの判断の基準、マニュアルを作るのは大切なことだと思うが、視聴者はどう受け止めてくれるのか、どう理解してくれるのかという視点を持つことが必要で、それもメディアリテラシーの一環として議論していく必要があると思う。

  • ●ネット上の議論では、メディアリテラシーという言葉が悲しいくらいに感じられない。「マスゴミ」という言葉を使う人は、きっとメディアリテラシーが低いのだろう。同時にマスコミの言っていることは100%正しいと思っている人もメディアリテラシーが高いとは思えない。その間で、どうしたら健全な疑問を問い続けられる心持ちを維持できるのか、考えさせられる。インターネットのメディアリテラシーとテレビのメディアリテラシーは根っこのところでは繋がっているのではと感じる。
  • ●青少年委員会の議論のスタートは視聴者意見だ。最近の視聴者意見の傾向として、ネットで煽られた人からの意見が一斉に寄せられることがあるが、当委員会では視聴者意見の量だけで判断しているのではない。ネット上で騒がれていることに惑わされることは無いので、局側は、過度に萎縮する必要はない。

【まとめ】

最後に、汐見稔幸・委員長からまとめの言葉があった。
局を超えて同じテーマで議論する機会は少ないと思う。これが良いきっかけになってくれればと思う。子どもを取材する時にどういう原則が必要なのかについて、こういう基準であらねばならないということではなく、ケースバイケースで対応しながら、これで良かったかどうかを吟味していくことが大切だ。
子どもの顔は出さないということが当たり前のようになっているが、あまり強くこだわらないでいただきたい。報道の自由は大切だし、事実はできるだけ正確に詳しく伝える必要がある。もちろん犯人が捕まっていないのに被害にあった人の友達を顔出しで取材することは慎んでいただきたいが、特に、ポジティブな場面で顔を映すことに対してあまり神経質にならないでほしい。3.11の際にはリアルな現場を報道しなかったが、過去の映像が恐怖を呼び起こすこともあるので、事前に注意文言を出すなどの配慮を求めたことがあるが、各局が積極的に協力してくれた。子どもが人間として育つことを支えている報道ということを考えると、子どもが関わる事件・事故を扱う時の難しさもあることを認識しておいてほしい。
ネットとの関係をどう作っていくかについては、まだ宿題だなと思った。今は、テレビがネットに押されている印象がある。私はネットで情報を見てもテレビでもう一度見たいとか、ドラマはテレビとか、バラエティーはやはりテレビと思っている。テレビはテレビでしかできない、ラジオはラジオでしかできないということがたくさんある。それぞれの強みを議論してほしい。
今日のキーワードは「信頼」だったと思う。「話す」は放すに通じる。「語る」は人と人が結びつくこと。今の時代「語る」文化が少なくなってきている。「語る」ことをしないと人と人が結びつかず、「信頼」も生まれない。ネットではできない「語る」ことのメリットをテレビやラジオは大切にして深めていってほしい。
青少年委員会は、どうあれば良いか模索のさなかである。問題がある時に指摘するだけでは他の委員会とあまり変わらなくなってしまう。視聴者との回路になること、視聴者が何を願っているかを掴んでいくこと、若い人が期待している番組を一緒に模索していくことをミッションとしている。例えば、一年間で一番感動したという番組を青少年たちに選んでもらって、ディスカッションしてみたい。また、今年は、高校生と直接議論する場も設けた。
これからも、青少年委員会に要望があればどんどん言ってほしい。叱咤激励してほしい。今日はありがとうございました。

以上

第173回 放送と青少年に関する委員会

第173回–2015年9月29日

男性グループが出演する深夜のバラエティー番組について、当該放送局からの資料提出を受け、これ以上の討論は必要ないとの結論に至り、討論終了…など

9月29日に第173回青少年委員会を、RKB毎日放送の会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、7月16日から9月15日までに寄せられた視聴者意見について討論しました。そのほか、8月、9月の中高生モニター報告、新規の調査研究、今後の予定について話し合いました。
なお、委員会の後、NHKを含む福岡の放送局9局の関係者41人と"子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮について"などをテーマに意見交換会を開催しました。
次回は10月27日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年9月29日(火) 正午~午後2時00分
場所
RKB毎日放送第6会議室
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

● "ロシアンルーレット"と称して、1つにだけ五寸釘が隠されている10個の紙袋を、1つずつ手のひらで勢いよく上から押し潰していくというマジック企画の、男性グループが出演する深夜のバラエティー番組について、当該放送局からの資料提出を受け、これ以上の討論は必要ないとの結論に至り、討論終了としました。委員から、「今回の件はやり過ぎであったことは間違いないが、ギリギリの線で冒険をしようという"チャレンジ精神"は評価したい」との意見がありました。

●「海外の少年が関わる事件で、その様子を少年自身が動画サイトに投稿した。それを番組で紹介した時に、顔や名前をそのまま出していた。問題ではないか」との視聴者意見に関して、委員からは「国内で罪を犯した少年は顔を隠すが、海外の事件では顔や名前を出す場合もある。海外の出来事を、日本の放送でどのように取り扱うのか丁寧に議論する必要がある」との意見がありました。

●放送前にSNSで「街でスカウトしたちょっとムチな女子高生に、番組ディレクターが愛のムチを打つ番組です」などと告知した番組に対し、視聴者から「出演者や視聴した子どもたちを傷つけ、すべての女性をバカにしたものだ」などの意見がありました。委員から「番組内容に問題はないが、告知の方法に工夫が必要ではなかったか」などの意見がありました。

●その他、委員から「芸人を痛めつけ笑いを取る番組について、出演者同士の一定の約束事はあるのだろうが、見ていておふざけの度が過ぎているように感じる時がある。制作者と視聴者の間に感覚のズレがあるのではないか」などの意見がありました。

中高生モニター報告について

8月の中高生モニターは、「テレビ局が薦める『青少年へのおすすめ番組』視聴の感想」というテーマで書いてもらい、26人から報告がありました。『青少年へのおすすめ番組』は、毎月テレビ局が、自社で放送する青少年に見てもらいたい番組を自主的に選んで、BPOの公式ホームページ上に掲載しているものです。
『戦後70年特別番組 櫻井翔&池上彰 教科書で学べない戦争』(日本テレビ)については、10人のモニターが感想を寄せてくれました。「教科書よりもテレビの映像と音声で分かりやすく戦争について知ることができました。70年前の戦争は両親も知らないので一緒にテレビを見て、とても勉強になりました。私は櫻井君も池上さんも好きな上に、クイズ方式で進められたので、とても楽しく学べました」(宮城・中学3年女子)。「戦争関係の番組は悲惨な内容が多そうだし難しそうだし見るのを避けていた。でも、嵐の櫻井君が司会なので大丈夫かなと思い見てみる気になった。」(福岡・中学2年女子)。「司会の2人の人選からして若者向けに作っているかなと思い見てみた。お金をかけて制作しているという印象が一番残った。特攻船を実際に再現する、櫻井君が戦地で遺骨を探す旅をするなど。それはそれですごいが、逆に戦争の怖さが伝わってこなかった。また〈若者=戦争に関して無知〉という図式を前提にしているのも疑問。一般の若者がもっと参加し、学んだり議論できるような番組内容にするとか、テーマを絞り込んで二度と戦争を起こしてはいけないという強いメッセージを残すような作りの方が良かったのでは」(東京・中学3年男子)。
『所さんの世界のビックリ村!』(テレビ東京)には、賛否両論が集まりました。「地球のすごさ、過酷さを再発見できた。世界中の見聞を身近に、気軽に、しかも多数の人に広げられるのはテレビならではと、実感した」(埼玉・中学3年男子)。「2時間は長すぎて途中で飽きた。所さんがもっと面白いことをたくさん話すのかと思って見たが、そうでもなく残念」(東京・中学1年女子)。「私的には好みの番組だったが、CMの長さと多さにはうんざり。チャンネルを変えてしまった人もいるのでは」(兵庫・中学1年女子)。
地方局制作の番組についての報告も寄せられました。『部活応援プロジェクト しゃかりき』(テレビ神奈川)…「取材した学校の部員のありのままの姿がのぞけるのは楽しいが、内容が時系列順に淡々と進み過ぎ。もっと感動するところ、面白いところに特化して編集した方が見応えがあり、キー局にも対抗できるのでは」(埼玉・高校1年男子)。『第45回北海道中学校バスケットボール大会』(テレビ北海道)…「各学校のことをよく調べていて試合中も選手のコメントやチームの特色を紹介していた。また解説も分かりやすくバスケの試合を初めて見た僕でも楽しめた。ただ、決勝戦だけの放送だったので、大会の好プレー集などをやればもっと面白いかなと思った」(北海道・中学3年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】「なんでこんな番組をおすすめするんだ」と厳しい意見を書いているモニターもいたが、何本かの番組から選ぶ、というふうに、報告にある程度の枠をはめられると、いつもの月より深く番組を見ているのがよく分かった。総体的に作り手の情報をしっかり受け止めている報告が多かったと思う。個別でいえば、8月という月だけに終戦や特攻隊などに関する番組、またローカル局制作の地方の学校の部活に関する番組がおすすめ番組リストに挙げられていたが、作り手の意図をよくモニターが汲み取り、読み応えある報告を書いていた。

  • (福岡・中学2年女子)『戦後70年特別番組 櫻井翔&池上彰 教科書で学べない戦争』(日本テレビ/福岡放送)。戦争中の生活や音楽、食生活にも触れており、戦地に向かう兵隊さんの笑顔のフィルムなど、今まで遠い昔の話と思ってイメージできなかった戦時中の日本人が私たちと変わらない普通の人たちだったんだなと正直驚きました。戦争を体験した人が高齢になり亡くなっていく中、真実を知る人の生の言葉が聞けるのはもう最後になるのかもしれない、と思うと若い人たちにもできるだけ見てもらえる番組を作ってもらいたいです。

  • (神奈川・高校1年女子)『部活応援プロジェクトしゃかりき』(テレビ神奈川)。部長1人が後輩を引っ張っていき、活躍するということで、周りの人へのインタビューも交えながらとても分かりやすかった。地元の高校の部活動がクローズアップされるので、高校を選ぶにあたってもとてもいい番組だと思った。

●【委員の感想】7月の報告の後、モニターへは番組を褒めるだけでなく、どんどん批判してほしいと言ったが、さっそく効果が表れたようだ。

  • (埼玉・高校1年男子)独立局制作の番組は、内容や話題は面白そうなのに、いざ実際に見るとなぜか物足りなさを感じる。一方、キー局はひな壇やグルメなど見飽きたと感じるくらい内容は同じものばかりである。

  • (山梨・高校2年男子)先日、某テレビ局の番組内でテレビ業界の危機をテーマに芸人が議論するコーナーがあり、僕もファンであるTEDが掛け合わされた企画だったので、まじめに討論するのかと思ったら、プレゼンの終盤でどの芸人も必ずふざけてオチを作っていました。純粋にがっかりしました。バラエティー番組とはいえTEDを扱う以上は真剣な討論、プレゼンを見せてほしかったです。[事務局注:TEDとはアメリカの非営利団体。TEDトークと呼ばれるあらゆる分野における最先端の人々のプレゼンテーションの動画を世界に無料配信している。2012年4月からはNHK Eテレの『スーパープレゼンテーション』で、その動画講義のいくつかを日本語字幕付きで放送し、講義内容で印象に残る英文の紹介や、講義の効果的なやり方を解説している]

●【委員の感想】テレビ局側は真摯に中高生の批判を受け止めると同時に、どういうものを現在中高生が求めているのか是非、毎月の中高生モニター報告から読み取ってほしい。

  • (埼玉・中学1年女子)テレビ局自身が推薦する青少年へのおすすめ番組はどれも面白そうでなくて、選ぶのに困った。同じジャンルの番組がいくつもあったので、もっと番組のバリエーションを増やしてほしい。

  • (神奈川・中学2年男子)夏休みの番組はフジテレビの『FNS27時間テレビ』などありましたが、時間の無駄です。内容をもっと考えて制作してほしいです。ただ、時間を埋めている番組にしか思えません。なかでも車を破壊するなんて、あってはならないことです。恥ずかしいです。

●【委員の感想】数人のモニターが、長い間テレビに出演しているベテランのタレントを手厳しく批判している。

  • (京都・高校2年男子)『高校野球100年の真実~心揺さぶる真夏のストーリー』(朝日放送)。僕は司会をやったタレントが好きではない。この人は滑舌が悪いので話の内容が聞き取りにくいし、話す内容があまり面白くない。たくさん司会をできる人はいると思うが、なぜこの人に決めたのかが理解できない。日曜の『サンデーモーニング』(TBS/毎日放送)の司会者も滑舌が悪く、コメンテーターや解説者の話を聞く時に、次に言うことを考えているのか、話を聞いていない様子で適当に相づちだけしているように見える時がある。

意見交換会(守山)について

  • 10月30日に立命館守山中学校・高等学校(滋賀県守山市)で開催する、高校生と放送局担当者と青少年委員会委員の三者による意見交換会について、準備状況の報告が事務局からありました。この意見交換会は、青少年が視聴する番組の向上に資するため、青少年のテレビ・ラジオに対する日頃からの思いを放送局関係者や委員に直接話してもらおうという初の試みです。

  • 高校1年生と2年生およそ320人、朝日放送のテレビ制作、報道、ラジオ制作の各担当者とアナウンサー、それに青少年委員会から汐見委員長、最相副委員長、稲増委員が参加します。司会は稲増委員と朝日放送のアナウンサーが担当します。

調査研究について

  • 調査担当の菅原委員から提案のあった「青少年のテレビに対する行動・意識の形成とその関連要因に関する横断的検討」を軸に、検討を始めることにしました。

今後の予定について

  • 11月24日に"インターネット情報の取り扱いについて"をテーマに今年度2回目の在京テレビ局との「意見交換会・勉強会」を開催します。内容について話し合われ、今回は研究者の講演を交え、川端委員が司会をすることになりました。

2015年9月に視聴者から寄せられた意見

2015年9月に視聴者から寄せられた意見

参院本会議で可決・成立した安全保障関連法案について、与野党の攻防や反対デモなどを報じた番組に対して、さまざまな意見。茨城県鬼怒川の洪水被害で取材体制のあり方や、行政の不手際を攻め立てる報道に、批判の声など。

2015年9月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,795件で、先月と比較して467件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール75%、電話23%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性73%、女性25%、不明2%で、世代別では40歳代28%、30歳代26%、50歳代19%、20歳代15%、60歳以上10%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。9月の通知数は916件【55局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

安全保障関連法案が参議院本会議で可決・成立したが、与野党の攻防や反対デモなどを報じた番組に対して、さまざまな意見が寄せられた。
茨城県鬼怒川の堤防が決壊し、洪水被害をもたらしたが、取材体制のあり方や、行政の不手際を攻め立てる報道に、批判の声が寄せられた。
ペルー人容疑者による殺人事件があったが、犯人がナイフを振り回すショッキングな映像を放送したことに対して、意見が寄せられた。
ドラマの中で、拉致被害者救出のシンボルであるブルーリボンを悪徳代議士役につけさせたことに対し、あまりに不適切な演出だといった意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は66件、CMについては33件あった。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は68件で、「視聴者意見への反論・同意」が増加した前月(141件)から、73件減少した。
今月は、「暴力・殺人・残虐シーン」と「性的表現」がともに13件と最も多く、次に「言葉」「低俗、モラルに反する」がともに8件、「表現・演出」が7件、「いじめ・虐待」が5件と続いた。
「暴力・殺人・残虐シーン」は、報道番組での衝撃的な映像の扱いに関する意見が多く寄せられたほか、アニメ番組の残虐シーンに関する意見も目立った。
「性的表現」については、CMやバラエティー番組の演出に関する意見が多かった。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 安全保障法案が参議院本会議で可決・成立した。各局の報道を見ていると、野党寄りの偏向報道ばかりだ。公正・公平な報道ができない姿勢に疑問を感じる。

  • 「安保法案」が佳境に入っている。テレビで報道することは大切だ。しかし各局とも、反対派の意見ばかりを取り上げ、まるで日本国民全てが法案に反対しているかのように報道している。「SEALs」の学生の主張を長時間にわたって紹介するなど、最たる例だ。まさに世論誘導に等しい。

  • 安全保障法案について、過剰な報道が見られる。マスメディアは本来中立的立場をとるべきだと考えているが、安全保障法案の反対派の人数の多さ、過激な行動などを主に取り上げ、本来の安全保障法案の議論の中身に関して視聴者へ提供する様子が全く見られない。また、賛成派の人達への報道が反対派と比べて驚くほど少ない。私は安全保障法案賛成と言っているわけではないが、マスメディアとは視聴者に公平な目で考えさせることが本来のあり方だと思う。表面的な報道ばかりではなく、もっと中身に踏み込んでほしい。

  • 総理を迎えてのトークコーナーで、コメンテーターが、「安保法案が廃案にならないよう国民に説明をしてほしい」とコメントした。これだけ多くの国民が反対の意を表している中で、安保法案を応援しているかのようだった。バラエティー番組に出演してくれた総理へのサービストークかもしれないが、国民感情や意識が高い時だけに、発言には注意していただきたい。

  • 総理を出演させて一方的に安保法制の必要性などを語らせていた。法案については、国民の大多数と法律の専門家からも憲法違反だとの指摘があり、国会で野党が追及しているところだ。しかし政権は、戦争を抑止して国民の生命と財産を守るためには必要なのだ、と論理性のない主張を展開している。政権の宣伝のために「社会の公器」を政治利用させたといわれても仕方がない。

  • 男性司会者が、現在国会で審議中の安保関連法案に対し「メディアとして法案廃案を訴え続けるべき」との発言をした。メディアは公平・中立な報道をする義務がある。政党が言うならまだしも、メディアがそんなことを言っていいのか。不用意な発言に憤りを覚える。

  • 安保法案反対に偏った報道をしているように見える。「強行採決」などと事実でない表現を使い、反対派の行うデモを大きく取り上げるなど明かに偏っている。賛成派の意見や賛成派によるデモも報じるべきだ。デモの人数や参加者の主張だけが民意でない。「説明不足」などと報じているが、メディアが安保法案について詳しく説明したことなどあったのか。

  • 「安保法案に対する海外の反応」と言いつつ、中国の反応しか紹介していない。中国の反応が海外の反応を代表した意見なのか。東南アジア、アメリカ、ヨーロッパの反応も入れるべきだ。結果として賛成派の意見を黙殺する偏向報道となっている。

  • 一国の総理がこのような思想の偏った番組に出演することは異常である。また安保法案反対派を出演させず、「左翼くん」なる反対派を揶揄するキャラクターを登場させてバランスを取ったつもりかもしれないが、あまりにも稚拙だ。偏向報道と言わざるを得ない。

  • 左派のゆるキャラと番組出演者の対峙となり、全員が右派で、左派の意見を論破して喜んでいるという、中間派の私さえ違和感を覚える内容だった。面白ければなんでもありの関西ローカルらしい番組だったが、気分が悪かった。

  • 鬼怒川堤防決壊で救助を待っている人達を上空から撮影していたが、報道のヘリが邪魔で、救助ヘリが行きにくいのではないか。実況も事実だけをたんたんと伝えるなら良いが、リポーターやコメンテーターの中身のない発言に辟易した。3.11の震災、広島の土砂災害などの時も同じだった。こういった緊迫した事態のときほどスクープを狙うのではなく、救助の邪魔にならないように、報道のありかたを考えていただきたい。

  • 災害が起こると、必ずといっていいほど「行政の不手際」が報道される。しかも、鬼の首を取ったかのような論調である。確かに判断ミスや不手際は生じることもあるかもしれない。しかし、現場は精一杯の対応をしている。地震や災害の時に、対応に忙しい役場に真っ先に電話をかけてコメントをとろうとするくせに、自治体を糾弾するかのごとき報道は如何なものか。

  • 鬼怒川堤防決壊状況の伝え方が過熱していた。まるで芸能人の追っかけのように、被災している方をアップでとらえたり、自衛隊が助け出す様子を見て大げさにコメントしたりしていた。テレビ画面では、民放のヘリが自衛隊のヘリに接近しているかのようだった。災害時の報道なのに、各局視聴率を取ろうとしているのか。

  • 常総市の鬼怒川堤防決壊での洪水被害だが、報道番組を始めワイド系の情報番組で、はやくも行政サイドの対応が悪かったせいだという追及がされている。しかし気象庁が特別警報をだした時点で非常事態であることは、住民も知っていた筈だ。なかにはスマホなどで、のんびりと濁流を撮影していた者もいるという話ではないか。そうしたことをすべて棚上げして、行政だけを犯人に仕立て上げることは、マスコミの横暴に他ならない。

  • 「オリンピックエンブレム使用中止問題」を取り上げていた。その中で出演者一同が、デザイナーを非難していた。デザインについては"今回のようなケースも有り得る"とする肯定的な考え方と、"デザイナーとしてのあり方に問題がある"とする否定的な考え方の両方がある。"パクリである"とはっきりしたわけでもない。デザイナー本人や家族は、今回の件で"言われなき中傷"に相当傷ついているのではないか。ひとりの人間をおとしめるような放送はするべきではない。ただひとつ救いだったのは、女性の司会者が、公平な立場できちんとまとめていたことだ。

  • 東京オリンピックのロゴのデザインを扱った放送は過剰だ。過去に制作したデザインや写真が、他者のコピーかもしれないと疑われても仕方がないが、人格そのものを否定するような放送は如何なものか。個人をバッシングするような放送は、テレビを使ったイジメそのものだ。

  • JR沿線で起きた連続放火事件の話題で、使われたと思われる発火装置の作り方を説明していた。材料はペットボトル、ティッシュペーパー、それに針金といったごくありふれたものばかりで、簡単に組み立てられることを説明していた。ほとんどの視聴者はそれを見ても真似しようなどとは思わないだろうが、中には興味を引かれる者が出るかもしれない。そういう危険があることを踏まえて番組制作をしているのだろうか。

  • 携帯カメラのような画像の悪いカメラで中継している場面をよく見かけるが、そうした安易なカメラでの中継はやめてほしい。画質が急に悪くなったり、映像が乱れたりする。緊急時以外は、正規の中継カメラを使用するべきだ。

  • キャスターが、放火の容疑者の写真をみて「日本人なのかな?」という発言をしていた。使われた容疑者の写真は、鼻が高く彫りが深い容貌に見えたが、それを見ただけで「日本人なのか」という発言をするのは差別的だ。蔑視的表現に気が付いていないとしたら、今後留意するべきだ。

  • 阿蘇山の噴火が報道されているが、騒ぎ過ぎだ。私は熊本市内で観光旅館を営んでいるが、昨日から予約のお客さんからの問い合わせやキャンセルが相次いでいる。「噴火したといっても熊本市内全域に灰が降るわけではなく、観光に何ら支障はない」と、心配するお客さんには説明するのだが、簡単には納得してもらえない。「ニュースで大変だと言っているのだから」とキャンセルされることも多い。この程度の噴火でいたずらに不安を煽る報道はやめてほしい。

  • 「埼玉・熊谷で母娘など4人死亡、男の身柄確保」のニュースがトップで報道された。私は妻、子ども達と一緒に見ていたのだが、犯人が包丁で自分の手首を切りつけ、建物外壁に血痕が付くほど血しぶきが出ている映像と2階の窓から犯人が落ちていく姿の映像が、いきなり流された。しかも同じ映像が何回も放送された。視聴者からの投稿映像だったが、そういったショッキングな映像を修正するわけでもなく放送する神経が分からない。遅い時間なので、小さい子の目に入ることはないと思うが、同じ映像は朝のニュースでも流れると思う。ショッキングな映像はそのまま流すか否か、きちんと判断していただきたい。

  • 視聴者の投稿映像を募集しているが、事故や災害時の映像を「スクープ」と称して受け付けることは不謹慎ではないか。視聴率至上主義のいやらしさを感じて気分が悪い。先日、事故現場に遭遇した際、救急や警察が到着するまでの間、負傷者に声を掛けたり交通整理をしたりと多くの人が協力している中、ずっと無神経にスマホでムービーを回し続けている者が数人いた。事故を心配する素振りもなく、ひとしきり撮影すると笑顔で去って行った。腹立たしいことこの上ない。そんな「人の心を持たない」者の撮った映像も、「スクープ映像」として受け取るのか。

  • 看護師殺害事件で、被害者のツイッターが非公開状態であるらしいのに、放送していることに違和感がある。その人に関わる情報なら見境なく流していいのだろうか。例え取材としてツイッターの情報を入手していたとしても、報道すべき情報とそうではない情報は区別するべきだ。被害者にプライバシーはないのか、昨今の報道のあり方が不安になる。

  • 介護施設での利用者への虐待に関する報道で、繰り返し「虐待映像」を流すのは如何なものか。介護の場に身を置いている方々への社会的理解や環境が整備されていない中で、異常な映像を刷り込むような放送は、更なる差別意識を植え付けることになる。このような報道が、他の介護施設に勤める職員に対する社会的評価も下げる要因になっているのではないのか。介護職員の給与は一般社員の平均給与額よりも下回っていると言われている中で、介護に携わる人々のモチベーションを下げるようなことは慎んでいただけないか。実際に現場に携わっている方々の真の姿を紹介し、行政が描く介護の理想と現場の実情がどれだけ乖離しているかということを問題提起することが重要なのではないか。

【番組全般・その他】

  • ドラマの中で悪徳政治家役の人物がスーツの襟に拉致被害者救出活動のシンボルである"ブルーリボンバッジ"を付けていた。リアリティーを追求しての演出なのかもしれないが、ドラマという娯楽性の高い番組で小道具として軽々しく利用されたことに不快感を覚えた。拉致被害者の家族の方達はどう感じただろうか。あまりに安易な演出ではないのか。

  • ドラマの中で、犯罪行為をする悪徳代議士が、ブルーリボンバッジを胸につけて登場している。拉致問題に対し真摯に行動することを示すブルーリボンバッジを貶める行為であり、悪意しか感じられない。国民と拉致被害者、救う会を馬鹿にしている。

  • スポーツの大会なのに、テレビで3択クイズに投票させ、毎日50万円、大会期間中2千万以上の金をばら撒くやり方は、賭博行為以外の何ものでもない。かつてバレーボーラーの1人だった立場として、純粋にスポーツを楽しませることのできないテレビ局が情けない。選手達もいい気分はしないはずだ。視聴率が良ければいい的な発想をやめるべきだ。

  • 多くの外来語が放送で使われている。日本語に置き換えられない場合を除き、外来語の使用は極力避けるべきだ。特に高齢者にとって、報道番組は社会との大切な接点であるのに、外来語のせいで理解しにくくなっている。

  • 同性愛者への差別と偏見を助長するような内容で、同じ同性愛者として不快だった。今回は外国の"ハッテン場"とよばれるゲイの施設を紹介していたが、「ゲイはいかにセックスするのか」というデリケートな問題を矮小化しておもしろおかしく取り上げていた。理解のためどころか、誤解しか生まない。

  • 小学生役の子役に「おっぱい」と連呼させている。それが保健的な意味合いではなく、ただおもしろおかしくはやし立てるだけだった。小さな子どもに言わせるべき言葉だとは思えない。もっと朝のドラマらしく粛々とした内容にできないものか。

  • 災害等が発生すると、それらを連想させる場面がある映画やアニメ等が放送自粛されたり、内容を一部削除して放送することが多い。過剰な自粛ではないのか。表現の自由は最も尊重されるべきことであり、「放送自粛」によって歪められてはならない。

  • 欧州のある地方の旅番組を見た。とても素晴らしい内容だったので行ってみたくなり、旅券を準備した。放送した内容は録画しているので、それ以上の情報を得たいと思い局に電話をしたところ、不誠実な対応をされた。視聴者が行きたくなるように誘導しておきながら、その町に行くための詳しい情報を教えないということは理解できない。

  • 「大人のためのバラエティー情報番組」と銘打っているが、低俗な週刊誌のような内容で、下品なだけだ。天気予報では背景が女性のグラビア映像であったり、信じられないほど破廉恥で不快な内容だった。大人のための番組だから、卑猥な内容でもいいということはおかしい。

  • 女性お笑い芸人のお尻にグミを当てるという内容だった。Tバックを履いていて、しかもお尻のアップがあり、とても下品だった。時間帯的にもまずいのではないのか。笑いのためなら何をしてもいいとは思わない。

  • 祭りに来ていた海外の大統領に、男性芸人がアポなしで短時間の会談をした後、2人で写メを撮るというものだった。自爆テロにも狙われている緊張感のなかで真剣に公務を行っている大統領に対し、まったく非常識な企画だ。よくやったと共感を覚えることもない。「JAPAN」と書いたプラカードを掲げて、日本からのテレビであることを強みにごり押しした感じだった。同じ日本人として申し訳なく、不愉快だった。

  • 幼女・少女の誘拐事件が頻発しているこのご時世に、11歳の少女を誘拐する犯人の手口から、どのように洗脳していくかを詳細に再現したドラマを放送することは如何なものか。娘にどうしたら誘拐犯等から身を守れるかを教え、頭を悩ませている最中、このような犯人の犯行を煽る番組内容に怒りを覚えた。

【ラジオ】

  • "道路交通情報"で、番組の司会者が、担当者を「○○ちゃーん」と呼びかけていた。せめて「さん」づけ程度にするべきだ。

  • パーソナリティーとリスナーによる電話トークのコーナーがある。この日の放送で男性リスナーと電話がつながり、冒頭で「今何をしているの?」と問いかけると、男性は「車を運転中」と答えた。パーソナリティーは驚く様子もなく、平然と10分余り会話を続けた。運転中の電話は危険であるとして禁止されているはずだ。以前別の番組でも同様のことがあったが、その時のパーソナリティーは「それはだめです」と断り、電話を切った。それがまともな対応だ。

  • パーソナリティーの1人がミュージシャンの食事会にAV女優等を呼んで開催したことを話していた。いくら深夜帯とはいえ、AV女優のことを話す必要はない。話に出てくるミュージシャンやタレント全員にプライベートのことを話す了承をとったのか。AV女優との食事会の話を聞いて、その会に参加したとされるミュージシャンやタレントのファンは不愉快に思うはずだ。

【CM】

  • ジーンズのCMを見だが、女性を抱え上げて、男性がお尻を叩き、叩かれた女性が「あ~ん」と言う。男性が女性を叩くだけでも不快なのに、更にあえぎ声のような声だった。不愉快で仕方がない。

  • 「過払い金を取り戻そう」と呼びかけるCMが多くて不快だ。テレビでも放送されているが、ラジオで流れる頻度といったらその比ではない。昼夜の区別もなく絶えず耳に入ってくる。どうにかならないものか。

青少年に関する意見

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 子ども向け番組の直後に放送された報道番組で、刃物を持った殺人事件の容疑者や血だらけの壁が映されていた。子ども向け番組の終了後しばらくの間は、過激な映像などを放送しないでほしい。

  • 子どもが視聴する時間帯のアニメ番組での残虐な描写が多いと感じる。制作者はドラマと違い、アニメだから青少年への影響が少ないと考えているのだろうか。

【「性的表現」に関する意見】

  • 深夜のバラエティー番組で「育児教室」と称し、男性お笑いタレントを赤ちゃん役としておむつ交換をしていた。モザイクはかかっているものの性器が露出しており、割り箸でつまむシーンもあった。また、セクシーな格好をした女優が母親役となり、赤ちゃん役のお笑いタレントをマッサージするシーンでは、お笑いタレントの性器が反応したことを他の出演者たちが笑って見ていた。集団で性的ないじめをしているようで不快だ。子育てはとても大変なことであり、性的なことや下品なことに結び付けて放送してほしくない。

【「言葉」に関する意見】

  • 芸能人の乱れた言葉遣いが気になる。語尾に「させていただく」をつける人が多く、違和感を覚える。テレビから耳に入ってくる言葉を子どもはすぐに覚えて使用する。もう少し視聴者を意識して発言してもらいたい。

【「低俗、モラルに反する」との意見】

  • 旅番組で、出演者が会計前の商品を食べてしまうシーンがあった。「後で払う」と言ってはいたが、してはいけないことだ。法を順守し、ルールをきちんと守ってこそ楽しめる番組であり、猛省と再発防止を求める。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組でのどっきり企画がひどかった。打ち合わせや収録と称してお笑いタレントを呼び出し、ラーメンや熱湯をかけるシーンがあり、皮膚が赤くなった人もいた。中高生のいじめや虐待が減らない中、このような悪ふざけを真似する人が出てくるかもしれない。笑いや視聴率のためとはいえ、悪ふざけが過ぎるのではないか。不快なら見なければいいとの意見もあるだろうが、やっていいことと悪いことの区別はしてもらいたい。