2020年4月8日

北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見の通知・公表

北海道放送に対する上記委員会決定の通知は、新型コロナウイルスに関連する緊急事態宣言の発令を踏まえ、4月8日午後1時30分に、電子メールにて実施した。

これに対して北海道放送は、「当社が2019年7月3日(水)に放送した『今日ドキッ!』内のニュースについて、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会から放送倫理違反の指摘を受けたことを重く受け止めています。意見書では、参議院比例代表選挙の公示前日に、特定の候補のみを取り上げて放送したことは、『選挙報道に求められる公平・公正性を損なっており、放送倫理に違反する』と指摘しています。当社は意見書に真摯に向き合い、再発防止に取り組み、より良い選挙報道の実現に向けて一層の努力をしてまいります。」とのコメントを、自社のホームページに掲載した。

また公表については、同日午後2時30分にBPOのウェブサイトに委員会決定の全文を掲載することにて実施し、記者会見の開催は見合わせた。広報を窓口に質問を受け付けたが、4月15日時点で質問は寄せられていない。

以上

第35号

北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見

2020年4月8日 放送局:北海道放送

北海道放送は参議院選挙公示前日の2019年7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。委員会は9月、放送の内容が他の立候補予定者との公平・公正性を害し放送倫理違反となる可能性があり、制作に当たってこれまで委員会が指摘してきた諸問題が検討された形跡がないなどとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りした。
審議の結果、委員会は、比例代表制度では自分の住む都道府県に関わりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本件放送は公示日の前日に約5分間にわたって特定の立候補予定者のみを取り上げて視聴者に強く印象づけるような編集をし、有権者に誤解を与え比例区の投票行動を歪めた可能性があるとして、選挙報道に求められる公平・公正性を害したことが、放送倫理に違反していると判断した。

2020年4月8日 第35号委員会決定

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目 次

2020年4月8日 決定の通知と公表

通知は、2020年4月8日午後1時30分に電子メールにて行われ、午後2時30分からBPOのウェブサイトに委員会決定の全文を掲載して公表された。なお記者会見の開催は見合わせた。
詳細はこちら。

2020年12月11日【委員会決定に対する北海道放送の対応と取り組み】

委員会決定 第35号に対して、北海道放送から対応と取り組みをまとめた報告書が2020年12月7日付で提出され、委員会はこれを了承した。

北海道放送の対応

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目 次

  • 1.委員会決定の報道と社内周知について
  • 2.問題の確認と対応について
  • 3.委員会決定と社内アンケートの実施
  • 4.番組審議会への報告と審議
  • 5.再発防止に向けて
  • 6.BPO放送倫理検証委員会との勉強会
  • 7.おわりに

2020年3月に視聴者から寄せられた意見

2020年3月に視聴者から寄せられた意見

世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルスについて、各国や日本国内の状況を報じた番組への意見など。

2020年3月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,766件で、先月と比較して302件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール78%、電話20%、郵便 1%、FAX 1%。
男女別は男性68%、女性31%、不明1%で、世代別では40歳代29%、50歳代22%、30歳代22%、60歳以上16%、20歳代9%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。3月の通知数は延べ888件【52局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、28件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルスについて、各国や日本国内の状況を報じた番組への意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は82件、CMについては27件あった。

青少年に関する意見

3月中に青少年委員会に寄せられた意見は87件で、前月から4件増加した。
今月は「表現・演出」が33件、「報道・情報」が15件、「要望・提言」と「その他」が7件、「低俗、モラル」が6件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 新型コロナ感染拡大の影響で、トイレットペーパーやティッシュペーパーの品不足が連日放送されている。放送では、デマであることも、在庫は潤沢にあるとのコメントもされているが、その背景に流れる画像は、大型店などにおける空っぽの棚ばかりが強調されている。視聴者に飛び込んでくる印象は、言葉より画像の方がはるかに強烈に残る。それを見ればやはり、「買いに行かねば…」と走ってしまう人たちがいるのではないか。デマによる異常な状態を鎮静化するには、映像の扱いも慎重にした方がいい。

  • 報道と現実社会の隔たりがひどい。全国的に学校が休校となり、外出を我慢している子どもたちが多いのに、ごく少数の繁華街で遊ぶ子どもたちを取材、マスクを買い占める高齢者やパチンコに興じる高齢者は一切報道しない。放送全体の信頼度が低くなっている。今はネットで相互発信できる時代。報道が不自然であればあるほど、視聴者の怒りは増していく。

【番組全般・その他】

  • 新型コロナについて、冷静な対応を呼びかけるべきマスコミが、無責任に不安をあおり続けている。全国一斉休校要請以前は、「対応が遅い、小出しで緩い」と批判していたが、休校要請が出た途端、「唐突で影響が大きすぎる」と批判している。マスコミが権力の監視役なのはその通りだが、一貫性がなく、無責任に何でも批判ありきというのは違うと思う。特に、ワイドショーなどで、医学や法律などの専門知識がないタレントに、安易にコメントさせるべきではない。間違った情報が拡散されており、危険に感じる。

  • 朝の番組を見た。新型コロナの流行で閉塞感が漂う中、現状できていないことばかりを並べて、不安をあおる内容が多過ぎる。政府、行政が行っている対策が分かりにくくても、死亡者が少ないことをもっと評価してもいいのではないか。未知のウイルスなのだから、手探りになって当たり前だ。今どんな対応をしているのか、現場の奮闘の取材に時間をかけて、国民に誇りを持たせてほしい。この番組は、以前は、考え方を広げる上で役に立ったが、今は、日本をおとしめようとする番組にしか見えない。他国と比べ、欠点ばかりをずっと指摘し続けるのは、子育てなら虐待だ。自信をなくし、精神的に悪影響を及ぼすと思う。すでにある事実やデータを、挙げ連ねて文句をいうのは誰でもできる。視聴者への影響を考えながら、メディアにしかできない仕事をしてほしい。

  • 飲食店の取材をしていた。リポーターはこれ見よがしに、店に入る前、「マスクをします」とアピールして入店。しかし、店側は、していたマスクを外してインタビューに答えた。厨房に立つスタッフもマスクを顎にずらして調理していた。この店のスタッフは、取材時以外マスクはしていないのではないか。マスクをして接客する店が取材したいのであれば、そういう店を取材すればいい。していない店を取材するのであれば、それもそうすればいい。コロナに関する状況は、いわゆるパニックで、そこには意見の相違があって当然だ。マスクについても、それぞれの見解があるのだから、それをそのまま伝えた方がいい。取材対象の意図しない状況を、放送局、つまり自社のコンプライアンスに合わせて放送するのはどうかと思う。

  • 日本での爆発的な感染拡大は目の前に迫っている。国民の自由と権利に縛られて後手に回り、弱腰にならざるを得ない政府の対策は、結果として国民生活をさらに固く縛り上げることになるのは目に見えている。そうなると、個人の意識と自己制御に死活がかかってくることになるが、その源になる情報が散逸的でまとまりに欠け、国民が同じ方向を向くことができない。マスクは必携とも不要とも言われたり、若い人たちが重症化しないという認識の下で遊び回っていたり、症状がないからと無自覚でウイルスをばら撒いている感染者がいたりと、人が本当に向くべきところが正しく認識されていない。病院がパンク状態になったら、後は人知を超えた力を当てにするしかない。国民に正しい認識と手段を授けてもらえるよう、また、切実に注意喚起を促すよう、各局合同で統一の時間に、コロナ関連の情報番組を放送するよう検討してほしい。

  • 世界では、政治家もきちんとマスクをし、感染を予防しようと全力で努めている国がたくさんあるのに、なぜ日本では、いつまでたっても変化が見られないのか。テレビの出演人数を制限、街頭インタビューをやめ、ネット投稿などにする。一ヵ所にたくさんの人が集まらないよう心がける、外の映像は景色などに制限し、外出意欲をそそるような店やレジャーについての放送をやめ、楽しく家で過ごす方法や最新グッズ、新たな時代の形など、限られた環境の中で、いかに楽しく有意義に過ごしてこのピンチを乗り切ることができるか、視聴者の気持ちを汲んだ内容に変更するのは難しい事なのか。「みんな同じなのだ」と気持ちを強く持てるような放送のあり方を検討してほしい。目に見えないウイルスに危機感を感じ、様々なことを犠牲にし、自らを律している視聴者がいることをきちんと実感してもらいたい。

  • バンジージャンプのできない芸人を集め、誰かが飛ぶまで帰らせず、食事もさせず、真冬の寒い中で過ごさせる。また、別の芸人が催眠術をかけられ、あられもない姿でいる様子も放送されていて、そこでチャンネルを替えた。新型コロナの問題や、東日本大震災から9年目など、それらを理由に自粛を求めるのではない。こういう時こそバラエティー番組を見て、気分を変えようとする人たちも多いだろう。だが、この番組を見て、誰が幸せになるというのか。震災で大変な思いをした人、自宅勤務を強いられている人、休校の影響を受けている人、そういった人たちが、これを見て良い気分になるとは到底思えない。

  • 土曜夜のバラエティー番組を見た。鈴や瓶の音が鳴らないようにミッションをクリアする企画。不謹慎でもなく、人を傷つけるものでもなく、何より騒々しい番組ばかりの中で、静寂が際立つ素晴らしいものだった。大相撲やプロ野球の無観客試合で、実際の競技音に注目が集まるという時流ともあいまって、臨場感があふれていた。これからの民放局における番組制作の可能性を見直すいい機会になった。

青少年に関する意見

【「報道・情報」に関する意見】

  • 新型コロナウイルスを扱う情報番組で小中学校の休校を取り上げているが、記者が家庭に上がって子どもや親をインタビューしている。記者は、自分は大丈夫と思って接触しているのか。陰性を確かめているのか。直接インタビューし、家に上がり込むとは何のための自粛なのか分からない。

【「要望・提言」】

  • 休校による子どもたちの自宅待機を知りながら、日中帯に新型コロナウイルスの不安をあおるような番組を繰り返し放送している。今こそ子どもたちのための放送に努めるべきではないか。各局輪番で、常に一番組は子ども番組の放送をお願いしたい。

【「言葉」に関する意見】

  • “クラスター”という言葉を“集団感染”という意味で使っているが、本来は“集団”という意味の単語だ。休みでテレビを見ている子どもたちがクラスターを集団感染という意味と間違って覚えてしまわないか心配だ。日本語に集団感染という言葉があるのだから、わざわざ英語を使う必要もない。

2020年 4月7日

2020年 4月7日

BPO業務の一時休止についてのお知らせ

BPOは、新型コロナウイルス感染拡大防止のための政府の緊急事態宣言および東京都の緊急事態措置要請を受け、同措置の期間中、3委員会の運営を含む業務を原則として休止いたします。なお、視聴者電話の受け付けは休止しますが、メール、ファクス、郵便は受け付けます。

第223回 放送と青少年に関する委員会

第223回-2020年3月

視聴者からの意見について…など

2020年3月24日、第223回青少年委員会をBPO第1会議室で開催し、6人の委員が出席しました。(1人は、所用により欠席)
委員会では、2月16日から3月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
人間・悪魔・天使などが同居する架空の世界の風俗店を男性主人公が渡り歩く深夜のアニメ番組について、「性的なアニメで、子どもが見たらどうするのか」「ただ下品で過激であるだけでなく、女性をモノ化している」などの意見が、寄せられた件について、委員全員が番組を視聴して、「討論」しました。その結果、議論の内容を議事概要に掲載することにより、「討論」を終了することになりました。
3月の中高生モニターのリポートのテーマは、「1年間で最も印象に残った番組について」でした。26人から報告がありました。モニターからは、ニュース番組でのアフガニスタンでの中村哲医師殺害の報道について「『外国人はおろか、現地の人間ですら近づかないような部族に、用水路の工事への協力を求めに行くと、少し怖そうな首長が出てきて“あなたにすべてお任せします。あなたのような人が来てくれただけで我々はうれしい”と言われた。そういうところの首長こそ優しかったりする』という中村医師の寄稿した内容が読み上げられて、少し目がうるみました。内戦があるような場所でも心温まる、ただの人と人との交流があったこと、そして写真という情報は場面場面を切り取るからこそ効果がある、ということが強く感じられた」、地球の神秘を描いたドキュメンタリーシリーズについて「日本にいても感じられない地球の壮大さを感じることのできる世界の場所など、ワクワクする映像が多いのがこの番組の魅力です。複雑なシステムが偶然重なり、そして奇跡が重なってできたこの星に、私たちが文明を築き上げ、こうして生活していることのすごさを実感します。しかし、文明を発展させすぎたからこそ地球を壊してしまっている人類が『地球にとっての脅威』と語られていました。私たちが環境問題を知り、取り組むことがいかに大切かわかりました」、川崎殺傷事件の報道について「メディアはもっと放送する内容を取捨選択し、本当に必要な情報だけを伝えてほしい、と思いました。さらに取材する際には、取材される側の立場にいったん立って、負担にならないか、考えてから取材をしてほしいです。守るのが当たり前、やるのが当たり前のことがされていないのではないでしょうか」、“交換殺人ゲーム”をテーマにしたミステリードラマについて「ドラマが話題を生むには内容はもちろん、キャスティングも重要なのだと改めて思いました。しかし、最近思うことは、ドラマのチェインストーリーなどが、有料の動画配信サービスでしか見られないことが増えている気がします。…有料であるという点から、動画配信サービスを利用していない人も多くいると思います。誰でも見ることができるテレビドラマのカタチが変わりつつあるのだなと実感しています」などの意見が寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
次回は、4月28日に定例の委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2020年3月24日(火) 午後4時30分~午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員

視聴者からの意見について

架空の世界の風俗店を男性主人公が渡り歩く深夜のアニメに対して、「深夜帯とはいえ未成年の目に触れる危険性も高く、性風俗店を肯定的に描いたり倫理上問題がある」「地上波での放送に危機感を覚える。未成年も予約しての視聴可能だ」などとの意見が寄せられた件について、委員全員が番組を視聴したうえで、委員会で「討論」を行いました。
委員からは次のような意見が出されました。

  • *設定がよくないというのはあるが、表現としては別に際どいところはないという感じがする。子どもには“大人向けだから見ちゃいけないんだよ”という程度の会話が家庭で行われればよいのではないか。

  • *アニメに対するリテラシーの問題。決して品のいい話ではないが、子どもに悪影響とは、何がどう悪影響なのかよく分からない。子どもも録画で時間を超えられるが、見ようと思うから見るのであって、見たって何も感じないのではないか。どこまでそれをテレビだからと制約するのかという問題だと思う。

  • *女性蔑視と受け取られかねないから駄目なのではなく、そのスタンスが古く一面的で横暴なところがあり、これは時代には即さない。しかし性という問題について人間を越えたところで描こうとしており、意外と深い発展のあり得るテーマではあると思う。総論的には表現の自由としてこういうものは守ってもいいと思う。

  • *このアニメをテレビの公共の電波に乗せることを考えると、深く議論すべき問題かと思う。ただ青少年委員会の話題ではないと感じる。

  • *放送時間も含め、このアニメの作りが子ども向けではないということがはっきりしているので、青少年委員会で扱うのは難しいと思うが、放送基準の第1章・人権の(4)「人身売買、売買春は肯定的には取り扱わない」ということに関しては、よく考えたほうがいいのではないか。

  • *コミカルに描かれているのでいやらしいという感じはあまりしないが、売買春を肯定的に取り扱っている気がする。人間でない、アニメの世界とは言いながら、ある程度人間社会を象徴している。青少年委員会が取り扱うことではないと思うが、大人向けのアニメの表現についても十分に考えてもらいたいと感じる。

この件は、委員会で出された意見を議事概要に掲載することをもって、「討論」を終了することとなりました。

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした3月のテーマは、「1年間で最も印象に残った番組について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で26人から報告がありました。
「1年間で最も印象に残った番組について」では、1人で複数の番組を挙げたモニターもおり、全部で24番組への報告が寄せられました。複数のモニターが取り上げたのは『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)と『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)の2番組で、それぞれ2人が記述しています。また、特定の番組ではなく、印象に残った事件報道について書いたモニターもいました。
「自由記述」では、先月に続き、新型コロナウイルスへの不安や心配、報道への疑念や信頼性について綴ったモニターが10人いました。
「青少年へのおすすめ番組」では、6つの番組に対する意見が寄せられました。複数のモニターが取り上げたのは4番組あり、『CDTVスペシャル!卒業ソング音楽祭2020』(TBSテレビ)を5人が、『ハートネットTV「あいまいな喪失~震災9年 消えぬ葛藤~』(NHK Eテレ)を4人が、『NHKスペシャル「“奇跡”の子と呼ばれて~釜石 小中学生の震災9年~』(NHK 総合)と『BS1スペシャル 絶望から希望のTOKYOへ~“難民アスリート”たちの挑戦~』(NHK-BS1)をそれぞれ2人が取り上げています。

◆委員の感想◆

  • 【1年間で最も印象に残った番組について】

    • 東日本大震災についてのドラマを見たモニターのレポートを読んで、震災当時幼くて震災のことを覚えていない子どもたちや震災を経験していない子どもたちが、番組を見て追体験という形で記憶や経験を繋ぎ、考えていくというのは良いことだと思った。

    • 学校の授業でドキュメンタリーを見たことがきっかけとなって、その後、そのドキュメンタリーについてネットで調べているうちに別の良質な番組に出会って…ということを書いたモニターがいた。そういうルートがあったのかと今更ながらの発見で、なんだか嬉しい気持ちになった。

    • 『金曜ロードSHOW!「リメンバー・ミー」』(日本テレビ)の感想に、「辛い時も皆で力を合わせれば乗り越えられるんだと明るい気持ちになりました。フィクションの映画ではあるけれど、世界が危機にあるときだからこそ、このハッピーエンドが身に沁みた」とあった。若い人は希望ということがすごく大事なんだなと思った。

    • 『日曜THEリアル!・居場所をください~限界密着・・・壊れていく子どもたち~』(石川テレビ/フジテレビ)を見て、「反面教師と呼んでいいのか分からないけども、他人事ではないと思いました。学ぶべきことが随所に見られました」という感想が寄せられた。「もし自分がそうだったら」と重ね合わせることで生き方を考えることができたという点で意義深いドキュメントだったのだろう。制作者にもそのことを伝えたい。

  • 【自由記述】

    • スタジオなどにお客さんがいなくてリアクションが返って来ないことで、バラエティー番組の出演者のモチベーションが下がっているということをモニターが記述していた。やはりお客さんは大事だと思う。コロナウイルスのこの経験は、いろいろな意味で、テレビ業界に検証すべきことを突き付けていると感じている。

◆モニターからの報告◆

  • 【1年間で最も印象に残った番組について】

    • 『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)番組の内容はほぼ毎回考えさせられるテーマが多い。これだけでは番組が重い空気になってしまう。だが、チャーミングな人形やその周りの工夫されたセットが雰囲気を和らげている。インタビュアーの聞き方も、うまくゲストの意見や考えを聞きだせていて素晴らしいと思う。全体として面白く、勉強になるものが多い。だが、やや大人向けの内容の物もある。そういったテーマである場合は冒頭に明確に教えてほしいとは思う。録画の技術が発達し、深夜に放送していても人形の見た目から子どもが誤解して視聴する可能性があるためだ。(東京・高校1年・男子)

    • 『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)この番組の企画はどれも見ていて「誰がこんな企画思いつくんだろう」と思うくらい変わったアイデアのものばかりで見ていて毎回面白いです。「モンスターアイドル」という企画があって、とても印象に残っています。その企画の中で、視聴者に結果を委ねるようなイベントもあってとても面白かったです。(兵庫・中学1年・女子)

    • 『奇跡の星』(NHK Eテレ)理科の授業時間にNHKの他のドキュメンタリーを見てそれをインターネットで調べたところ、この番組が別に出てきて興味をもち、全シリーズを視聴しました。地球の外に出ると当たり前にあるものが何一つ当たり前の存在ではないことに気づく、という内容の話を覚えています。空気、酸素、植物、水、大地など、普段暮らしていて存在が当たり前なもののありがたさ、尊さ、大切さを感じました。また、日本にいても感じられない地球の壮大さを感じることのできる世界の場所など、ワクワクする映像がとても多いのもこの番組のシリーズの魅力です。複雑なシステムが偶然重なり、そして奇跡が重なってできたこの星に、私たちが文明を築き上げ、こうして生活していることの凄さを実感します。しかし、文明を発展させすぎたからこそ地球を壊してしまっている人類が、「地球にとっての脅威」と語られていました。私たちが環境問題を知り、取り組むことがいかに大切か分かりました。夜比較的遅い時間に放送されるのが少し難点ですが、この番組を通して日々の考え方や世界の見方、科学や地学、物理への捉え方が変わります。理科が苦手な私でもその美しさに引き込まれるように見たこのシリーズは一番印象に残っています。(福岡・中学3年・女子)

    • 『いだてん』(NHK 総合)それまでの大河とは一風かわったものであり、“落語”の要素をうまく織り交ぜながら、話が進んでいく様は、全く飽きがこず、楽しむことができた。特に感動したのは、10月13日の回である。戦時中の話で、“落語”“オリンピック”だけでなく“命”も取り入れられた話だった。この回は「いだてん」の中で1つの鍵となっていた、と言っても過言ではないと思う。1年間で最も印象に残った素晴らしい話だった。(東京・中学2年・女子)

    • 『オオカミ少年』(TBSテレビ)ドラマ好きの私にとってドラマのメイキングシーンやNGカットなどドラマの作られている雰囲気を垣間見られるのはとても気になり、今後このような番組が増えるといいなと思いました。(東京・高校1年・女子)

    • 『あなたの番です』(日本テレビ)ドラマが話題を生むには内容はもちろん、キャスティングも重要なのだと改めて思いました。しかし、最近思うことは、ドラマのチェインストーリーなどが、有料の動画配信サービスでしか見られないことが増えている気がします。『あなたの番です』ではヒントとなる物語がhuluでのみ配信されていて、有料であるという点から、動画配信サービスを利用していない人も多くいると思います。誰でも見ることができるテレビドラマのカタチが変わりつつあるのだなと実感しています。こういった面から、『あなたの番です』を今年度見たドラマの中で一番印象に残ったドラマに挙げます。(石川・高校2年・女子)

    • 『知らなくていいコト』(日本テレビ)このドラマは多様な状況の人をたくさん映しているなと思いました。1人1人が少なくとも1つは心に苦しみを抱えているように見えました。だけどそれを外に見せないようにしている姿が毎週、私の頭に残りました。人はそれぞれ違う人生を歩んでいてそれぞれ感じ方も違うけれど、その人が言った言葉の奥には何か本当に言いたかったことが隠されているのかもしれないと思いました。だからこそ、自分も深く考えてから言葉にしようと思いました。相手がもしきついことを私に言ったとしても、言葉を聞いてすぐに落ち込むのではなく考えてから言われたことを吸収しようと思いました。(兵庫・高校1年・女子)

    • 『ラグビー ワールドカップ2019』(日本テレビ)初めて見たため、ルールはわからなかったのですが、一言で言うと非常に感動しました。結果はベスト8という快挙を達成しましたが、その裏には血の滲むような努力があったことは言うまでもありません。日本代表の言葉に「誰も勝つと思ってないし、誰も接戦になるとも思っていない。誰も僕らがどれだけのものを犠牲にしてきたか知らない。勝利を信じているのは僕たちだけ。」というものがありました。この言葉を聞いた時、私は涙が出てしまいました。このように言えるのは本当に努力をしてきたからであり、またその努力が試合の中でも感じられたから、日本中が感動したのだと思います。(奈良・高校3年・男子)

    • 『金曜ロードSHOW!「リメンバー・ミー」』(日本テレビ)この1年は本当にいろいろなことがある1年だったなと思います。今年に入って新型肺炎の流行も始まり、卒業式も短縮。とてもおめでたい気持ちにはなれない時に見たこの映画は、私の心を温めてくれました。辛い時も皆で力を合わせれば乗り越えられるんだと、明るい気持ちになれました。フィクションの映画ではあるけれど、世界が危機にある時だからこそ、このハッピーエンドが身に染みたのかな、と思います。暗いニュースであふれている時だからと暗い気持ちでい続けずに、面白い番組や明るい番組で笑顔になれる現在のテレビは素敵だな、と強く感じました。(佐賀・高校3年・女子)

    • 『報道ステーション』(テレビ朝日)中村哲さんの追悼コーナーが印象に残っています。新聞に寄稿した内容が読まれる時や中村さんの半生、アフガニスタンでの活動内容などの紹介がなされる時に、背景に中村さんの様々な写真が流れていて、その写真は水路を作る少年と話しているものだったりできあがった学校をうれしそうに眺める横顔だったりと、内戦で大変であろう日本から遠く離れた場所で当たり前に時には楽しそうに過ごしている中村さんとアフガニスタンの人々を切りとったものでした。何気なく、『ドクターX』の 後に流れで見ていたのですが、少し怖そうなアフガンの部族の首長(?)と並んで立っている中村さんの写真が流れた時、「外国人はおろか、現地の人間ですら近づかないような部族に用水路の工事への協力を求めに行くと、少し怖そうな首長が出てきて、“あなたに全てお任せします。あなたのような人が来てくれただけで我々はうれしい”と言われた。そういうところの首長こそ優しかったりする」というような寄稿の内容が読み上げられて、よくわからないけれど少し目がうるみました。内戦のような場所でも心温まる、ただの人と人としての交流があったこと、そして写真という「情報」は場面場面を切りとるからこそ効果がある、ということが強く感じられた、そんな番組でした。(福岡・中学2年・女子)

    • 『微笑む人』(愛媛朝日テレビ/テレビ朝日)恋愛ドラマやコメディードラマは確かに見ていて面白いし、見ることで元気がもらえます。しかし、今回のような社会派ドラマではドラマを通じて色々と考えさせられるものがありました。このドラマからは人間とは簡単に言葉で表すことのできない複雑な存在だというメッセージを感じ、これは身に染みるところがあると思います。(愛媛・高校2年・女子)

    • 『FIBA バスケットボールワールドカップ2019 日本 vs アメリカ』(フジテレビ)バスケは世界で広く行われているスポーツにもかかわらず、日本ではあまり人気がなく、日本のプロリーグもここ3、4年で“Bリーグ”という統一リーグがやっと発足したばかりです。去年、八村塁さんがNBAドラフト1巡目9位指名されたことで、一気にバスケ人気が出たとして、その頃からバスケに関連するトピックをテレビで見かけるようになりました。フジテレビさんがワールドカップの日本代表戦をゴールデンタイムの生中継で放送してくださいました。感謝しかありません。(埼玉・高校1年・男子)

    • 『日曜THEリアル!・居場所をください~限界密着・・・壊れていく子どもたち~』(石川テレビ/フジテレビ)反面教師と呼んでよいのかわかりませんが、この番組の内容は他人事ではないと思いました。学ぶべき教訓が随所に見られました。いろんな人に見てもらいたい番組だと思いました。(石川・高校2年・男子)

    • 『きのう何食べた?』(テレビ東京)今回最も印象に残った番組を選ぶのはすごく難しくて、たくさん考えました。ドラマもたくさんあったし、お笑いも第七世代が凄く頑張っていたので悩みましたが、やっぱりこれかな…!と思いました!きのう何食べた?は、料理を作るシーンが本当に美しくおいしそうで今までのドラマにはなかった感じがしました。シロさんがしゃべりながらご飯を作っていくのが印象的で、私が料理をする時も真似をしたりしていました。恋愛のお話なのにクリーンで見やすく、笑って泣けて、本当に楽しくて終わってほしくないドラマでした。(神奈川・高校1年・女子)

    • 『TBCテレビ60周年記念ドラマ「小さな神たちの祭り」』(北海道放送/東北放送)東日本大震災のその後がテーマとなったドラマだったのですが、とても感じるものがありました。震災によって一人生き残った主人公の葛藤や家族に対する思い。「自分だけ幸せになってもいいのか」それに対する「死んだ人は生きている人の幸せを願っている」というセリフがとても印象に残りました。(北海道・中学2年・女子)

    • 番組ではないのですが、川崎市で起こった殺傷事件についての報道が1年間で最も印象に残りました。この人たちはこんなにメディアに囲まれて負担ではないだろうか、などと考えるようになりました。1年間、ニュースを意識して見るようになり、メディアはもっと放送する内容を取捨選択し、本当に必要な情報だけを伝えてほしい、と思いました。さらに取材する際には、取材される側の立場にいったん立って、負担にならないか考えてから取材をしてほしいです。守るのが当たり前、やるのが当たり前のことがされていないのではないでしょうか。(神奈川・高校1年・女子)

  • 【自由記述】

    • ニュースをつけると、大体どのチャンネルもコロナのニュースを報じています。世界中がパニックになっている今、不安をあおるような内容ばかりではなく、正しい予防の仕方や、マスクやティッシュの買いだめをしないなど、正しい情報を伝えて欲しいです。(東京・中学1年・女子)

    • 今、ニュースはどれを見ても新型コロナウイルスの話題で持ち切りです。大変な問題なのでその情報を早く、様々なニュース番組から得られるのは良いな、と思いました。(兵庫・中学1年・女子)

    • 最近はコロナとかでスポーツ系も中止になっちゃうし学校も休校でつまらないです。テレビを見る時間が増えた。(千葉・中学1年・男子)

    • コロナウイルスの影響により無観客でバラエティー番組や音楽番組を収録することが増えています。『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)では、(MCの)マツコさんや村上さんが「お客さんがいないとモチベーションも下がり、リアクションも返って来ず、心が折れそうだ」とおっしゃっていました。(群馬・高校1年・女子)

    • コロナについてのテレビ局の報道が偏っている。「治った人数を報道しない」「明らかに専門家ではない人間がコロナについて語っている」など。同じことを何回も繰り返すことで人間は刷り込まれてしまいます。どうかもうこのような報道はしないでほしい。(島根・高校1年・女子)

    • 私が住んでいる県にも感染は広がり、学校は休校になりました。予定されていた、私にとって最初で最後の部活の全国大会も中止になりました。周りには、人生に一度しかない修学旅行や卒業式を行えなくなってしまった人、楽しみにしていたライブやイベントが中止になってしまった人がたくさんいます。みんな、やり場のない怒りを感じていると思います。SNSの力は強く、デマ情報が拡散し、トイレットペーパーの買い占めや、マスクをめぐっての争いなど、私たちの生活の中で何かがゆっくりと壊れて言っているような感じがしています。混乱した状態の中で、冷静になって行動することは難しいことだと思います。一人一人が落ち着くことがコロナウイルスに勝つ最短の道だと、私は思います。(石川・高校2年・女子)

    • 『東日本大震災9年 関連特番 “死者ゼロ”を目指せ~デジタル新時代の
      情報発信とは~』(NHK 総合)私が小6のときに私の住む地域で震度6弱の地震がありました。幸い死者は出ず、大きな被害はあまりありませんでしたが、それでも少し恐怖はありました。だからテレビや防災無線から流れる“情報”はすごく頼りになり安心できました。私がこの番組で気になったことは災害時にできる情報の空白地帯についてです。情報の空白地帯はその地域が外部に情報を発信できない時などにできるそうです。そういう地域をなくすためのひとつの方法にメディアどうしの連携があるそうです。もし事前に局ごとの連携があればもっと広い地域の情報を得ることができます。それぞれのメディアに合った方法で情報のニーズに答えてほしいです。(鳥取・中学3年・女子)

    • 『恋はつづくよどこまでも』(TBSテレビ)というドラマは、ドラマで視聴率を獲得しやすい医療ものと恋愛ものを組み合わせ、視聴者がより満足できるように原作を変えているところもあり、需要と供給がつり合っていると思いました。(東京・高校2年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ハートネットTV「あいまいな喪失~震災9年 消えぬ葛藤~」』(NHK Eテレ)「いないけどいる」「故郷であって故郷でない」住人の言葉がとても心に残りました。行方不明者であってまだ亡くなっているとはわからない。でも戻ってこない現実と向き合わなければいけない。津波によって町の風景が変わってしまった故郷。でもそれは確かに自分の故郷。もしこれが自分だったら、そのようなことも考えることができました。(北海道・中学2年・女子)

    • 『ハートネットTV「あいまいな喪失~震災9年 消えぬ葛藤~」』(NHK Eテレ)大切なものを突然失った喪失感をぬぐい切れないことに共感しました。私も同じ立場に立った時一歩を踏み出せるようになれたらいいなと思いました。(石川・高校2年・男子)

    • 『CDTVスペシャル!卒業ソング音楽祭2020』(TBSテレビ)学校が休校になって、イベントも中止になったりする中、このような番組があると良いなと思いました。(神奈川・高校1年・女子)

    • 『CDTVスペシャル!卒業ソング音楽祭2020』(TBSテレビ)コロナウイルスの影響で卒業式を行うことができなかった人達に、変わりに卒業式をどうぞ‼という熱意が伝わってきました。私の好きなアーティストの曲も聴くことができ、とても良かったです‼(広島・高校2年・男子)

    • 『NHKスペシャル「“奇跡”の子と呼ばれて~釜石 小中学生の震災9年~」』(NHK 総合)大切な人を失った悲しみや辛さ、残された自分が生きていく意味、やるべき使命などを考えながらそれでも何とか前を向いて生きていこうという思いが伝わってきました。もしこれが自分だったらと考えさせられました。(愛知・中学2年・女子)

    • 『BS1スペシャル「絶望から希望のTOKYOへ~“難民アスリート”たちの挑戦~」』(NHK-BS1)困難に打ち勝つことの大変さ、そして乗り越えた先にはさらに強くなった新しい“自分”がいると感じました(神奈川・高校2年・女子)

調査研究について

担当の中橋委員より、調査研究(「青少年のメディアリテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関して、進捗状況について報告がありました。

今後の予定について

  • 2020年度の中高生モニターのメンバーが決定したこと、月別のテーマの予定について事務局より報告がありました。

以上