第93回 放送と人権等権利に関する委員会

第093回 – 2004年10月

「警察官ストーカー被害者報道」事案のヒアリングと審理

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討…など

「警察官ストーカー被害者報道」事案のヒアリングと審理

◆ 申立人側ヒアリング

(出席者)申立人 愛知県在住の女性

冒頭、申立人が、持参したメモに基づいて「メディアは、表現の自由を前提にあげさえすれば、一市民の生活を犠牲にすることが許されるのか、はなはだ疑問に思う。犯罪被害者という特異な立場において侵害された権利をあえて主張することは、社会全体の利益につながるのではないか」と述べ、その後、委員との質疑応答に入った。

◆ 被申立人側ヒアリング

(出席者)被申立人 名古屋テレビ放送 3人

冒頭、被申立人側から「申立人との間で見解が異なっている点について、改めて意見を述べたい」として、次のような陳述があった。

「提出した補強資料に記したとおり、3月5日の深夜に申立人本人が情報提供の電話をしてきたことは間違いない。本人からの連絡がなければ、本件を当社が知ることはできなかった。

顔出し放送の了解に関しても、記者とカメラマンの記憶に不自然な点はなく、当社の主張は妥当なものであり、警察という権力を持つものが重大な犯罪行為をなしたということを、申立人が勇気を持って糾弾するという、その真摯さを担保する意味からも、顔出しの放送が相応しいと判断した」。

この意見陳述後、委員との質疑応答を行った。

■ ヒアリング後の審理

申立人・被申立人双方へのヒアリング終了後、審理に入った。

前回(9月)の委員会までの審理および前記ヒアリングの結果を踏まえ、まず起草委員が申立人の主張3点(人格権侵害、放送倫理違反、過剰取材)について、「委員会の判断」部分の原案を説明した。

この原案に対し、委員から、一部表現の追加・訂正意見が出され、各委員は概ねこれに賛同。さらに、モザイク使用の是非、映像の使用量、”2ちゃんねる被害”の扱いなどについて意見が交わされた。

協議の結果、もう一度、次回委員会で最終的な詰めを行った上で「委員会決定」を決定し、12月上旬に通知・公表することを決めた。

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討

事務局から、以下の3件の苦情案件について、その後の経緯を報告した。

1.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件

栃木県のセミナー運営団体から、「犯罪行為があったことを前提にするような報道をされ、人権や名誉を傷つけられた」とする苦情申立てが6月にあったが、9月になって、内容を一部手直しした申立書が再送付されてきた。9月の委員会で検討し、新たな申立内容での双方の話し合いを要請していたが、その後、申立人と当該放送局の間で話し合いが行われているようだ。
放送人権委員会では、暫くの間、その推移を見守ることにした。

2.「文化財遺跡発掘関連報道」案件

大阪府の男性から、「文化財遺跡の発掘について取材を受けたが、答えた内容と放送された内容が違い、事実関係を捏造され、事件屋扱いされた」との苦情が8月に寄せられた案件で、9月の委員会で検討し、双方に話し合いを要請していた。その後、10月に入って申立人と当該放送局との間で話し合いが行われたが、双方の主張に隔たりがあり、不調に終わっている。
放送人権委員会として「申立書」の提出を求め、それを待って、審理入りするか否かの検討を行うことにした。

3.「ヘリコプター・オーナーから名誉毀損」との苦情案件

大阪府の会社社長(男性)から、「ヘリコプターのオーナーとして取材要請に応じたが、虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」との苦情が10月に届いた。当該放送局では、番組を紹介するインターネットのHPで訂正する措置を採ったが、この訂正の仕方に苦情申立人は納得していない。
放送人権委員会では、双方に対し、さらに話し合いを続けるよう要請することにした。

斡旋解決事案の報告

事務局から、10月初旬に苦情があった「盲導犬の世話を巡り、名誉を傷つけられた」という沖縄県のペット美容室経営者(男性)からの苦情について、事務局が誠意を持って話し合いを要請したところ、再度、双方による話し合いが行われ、解決したものと認められると報告した。
放送人権委員会ではこれを了承し、今年度初の斡旋解決事案とした。

「総務省の行政指導に関する三委員長声明」について

委員長から、「9月21日に『三委員長・理事長 会談』を開き、放送人権委員会の委員会決定が引用された総務省の行政指導に関して”BPO三委員長声明”の形で意思表示を行うことを決めた。放送人権委員会各委員の意見は、その場で詳しく紹介した。それらの意見をベースに声明原案を作成している」と、その後の経緯を紹介。続いて事務局が、「この”三委員長声明”案を基に各委員会で再度議論し、その結果をまとめ、最終的に11月11日に『三委員長・理事長 会談』を開催して声明内容を確定し、公表する段取りになっている」と説明した。

委員長と各委員からは、「中身の大部分に放送人権委員会委員の意見が反映されている。あとは表現やワーディングの問題だけだ」などの意見が出され、結局、「特別なことがあれば後日、事務局宛にメモで提出いただくとして、原則的に三委員長・理事長の判断に一任する」ことで了承した。

人権に関する苦情対応状況(9月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・14件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・5件

放送人権委員会委員との意見交換会の開催について

懸案となっていた「在京局・BPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」を11月16日午後4時から、千代田放送会館7階会議室で開催することに決定。したがって、次回委員会は、この意見交換会に引き続いて、同日午後5時30分から開催することとし、閉会した。

以上