第129回 放送と青少年に関する委員会

第129回 – 2012年1月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第129回青少年委員会は1月24日に開催され、12月13日から1月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に、バラエティ1番組について視聴し審議したほか、1月に寄せられた中高生モニター報告及び2月のテーマ等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年1月24日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

1. フジテレビ『ザ・ベストハウス123』(1月11日放送)について

「浮気現場に突撃!男と女の修羅場最凶衝撃映像20連発」という企画について、視聴者から「20時台に卑猥な映像が放送され、子どもに不適切」等の意見が寄せられ、番組を視聴の上審議した。

【委員の主な意見】

  • アメリカでは、14才以下は見ないようにと指定されている番組であるはず。そのことを認識した上で制作に当たったのか。
  • 他の企画は興味深く見たが、この企画は映像や言葉の性的な表現が見られ、この時間には不適切。
  • 短時間の放送なら視聴者の嫌悪感も違ったかもしれないが、長時間にわたって20本ものストーリーを見せられるとうんざりする。
  • 興味深い企画を分断する形で、この企画が挿入されている。その企画を見たいと思ってみている視聴者は、間に性的な映像を見せられ不快に思うはず。

以上の審議の結果、委員会としては番組の制作プロセスや企画意図等について、次回委員会で制作担当者など当該局からの説明を受け、引き続き審議を行うこととした。

2. 津波や大震災映像の取り扱いについて

3月11日の東日本大震災から1年を迎え、各局で特別番組等が編成されることに関して、委員より委員会として「地震や津波の画像をむやみに流すことは、PTSDを引き出して子どもらに負の影響を与えるので、そのことに配慮した映像使用や注意喚起を呼びかけるべき」との提起があり討議した。そのことの重要性は認識するものの、震災の大きさを忘れないよう国民に伝えていくということはマスコミの責務であり、委員会として事前に規制ととられかねない意見を出すことには慎重であるべきとの判断から、各放送局の自主性にゆだねることとした。

中高生モニターについて

12月~2月まで「ドラマ・アニメ番組」のジャンルを取り上げている。1月のテーマは、最近面白そうと思って見たドラマ・アニメ番組の中から、期待はずれだった番組、面白くなかった番組について率直な感想や意見を求め、27人からリポートが寄せられた。
ドラマについては21人が17番組(重複あり)について報告が寄せられた。そのなかで4人から意見が寄せられた番組は『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系列)で、「ストーリー展開が分かりづらくつまらなかった」「1回見て面白くなかったので2回目は見ないことにした」などが主な意見だった。また、『花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス~2011』(フジテレビ系列)には3人から「2番煎じでつまらなかった」などの意見が届いた。そのほか、韓流ドラマの日本版『美男ですね』(TBS系列)、韓国の人気女優を起用した『僕とスターの99日』(フジテレビ系列)も「盛り上がりに欠けた」「『冬のソナタ』に似ている」といった意見が寄せられ、そのほか、『大河ドラマ 江~戦国の姫たち~』(NHK)、『南極大陸』(TBS系列)、『DOCTORS~最強の名医』(テレビ朝日系列)などに、批判的な意見が寄せられた。

  • 「最近見ていたドラマで嫌いになったものは、ほとんどすべてです。なぜこんな回答かというと、ほとんどが原作のあるものになっているからです。原作ものならプロデューサーの苦労も努力もないだろうと思います。『家政婦のミタ』にはいい脚本家がいて評判になりました。そこで、です。僕は、ドラマは予定調和によって構成されたタダの劇ではなく、展開が波乱に満ち、ときに笑いもあり、次回が気になるような作品であってほしいと思っています」。   (愛知・中学3年男子)
  • 「私は日本テレビの『理想の息子』にジャニーズが3人も出ていることが気になります。歌手を主にしているアイドルの演技は正直うまいとは思いません。ドラマの視聴率狙いで、有名な俳優さんや女優さんを起用しているのでしょうが、無名の人でも与えられた役にどれだけなりきれるか、それがドラマの良さではないでしょうか」。(東京・高校1年女子)
  • 「『花ざかりの君たちへ~2011』は、前作を見ていた人間としては登場人物たちに対する思い入れがあって、新しい俳優陣たちがそのイメージを壊す、また”完コピ”でまったくオリジナリティーが無い、見るにたえないもので終わってしまいました」。(東京・中学2年女子)
  • 「『花ざかりの君たちへ』のリメイク版を作るなら、前作のイメージを吹き飛ばすくらい、ぶっとんだものを作ってほしかったです」。(東京・中学1年女子)

アニメには5人から4番組についての報告が寄せられ、なかでも『ドラえもん』(テレビ朝日系列)には、「昔は面白かったのにマンネリ化している。ストーリー展開がつまらなくなった」という意見が2人から寄せられた。

  • 「『ドラえもん』といえば四次元ポケットから出てくる”道具”だと思うのですが、原作や過去の放送を見ている限りは、ドラえもん自身が場と状況をわきまえて道具を出すべきか判断していたように思います。しかし、昨今の放送では”本当にこれでいいのか”と思えるほど、道具を出す頻度が増えており、それがのび太の成長を妨げているのではないかと思うと、子どもたちの目にはどう映っているのだろうと考えてしまいます。やはり、原作者がどんな意図で描いたかを考えながら、制作する必要があると思います」。 (東京・中学1年男子)

そのほか、ドラマでは地方局4局が共同制作している『歌セラ』(東北放送で視聴)というシリーズや、チバテレビなどで放送されたアニメ『神様のメモ帳』についての意見が寄せられ、「意欲的ではあるが何を描きたいのか分からない」、「スタートは面白かったが終わりに近づいて雑になった」という意見も寄せられた。

【委員の主な所感】

  • 最近のドラマ・アニメは原作のマンガを映像化したものが多く、原作を読んでいたモニターたちは期待して番組や映画を見るが、原作のイメージに合わない絵柄や、オリジナリティーが失われた番組が多いことに批判的な意見を寄せていることが印象に残りました。
  • モニターの皆さんが、期待はずれだった番組、嫌いな番組をリポートにまとめるのは難しいことだということを再確認しました。そんな中で、アイドルや旬の役者・タレントたちが出演していても、必ずしも中高生の皆さんたちが見たい番組ではないという意見に注目しました。オリジナル作品の少ないことと合わせて、今のテレビ界の抱えている課題でもあると思います。
  • 最近のドラマ・アニメ番組は、原作のアニメ化や実写化など数多く、原作のイメージを壊してほしくないという思いから、もっとオリジナル作品を作ってほしいというモニターの意見には、放送局も耳を傾ける余地があるのではないだろうか。
  • 原作をアニメ化することによって本来の作品の良さが失われている場合が多いと感じている人がかなりいると感じた。また、ドラマについては、有名なタレントを使って視聴率を上げるのではなく、無名でも本当に役をこなせる役者を起用すべきだという鋭い意見があったが全く同感である。
  • 原作のマンガが好きで、アニメやドラマを見た場合イメージが違うとがっかりするという意見が多くありました。また、マンガとアニメは違うのだから二つを比較するのは気が引けるとの感想もありました。しかし見方を変えて、この違いが実は面白いということに気がついてもらいたいのです。つまり、原作は一つなのに、紙に描かれた文字と絵からなるマンガは、映像や文字や音楽を含んだテレビとどう違うのだろう、そう考えるとそれぞれのメディアがどのような特性をもっているかが分かってきます。例えば、同じ原作で、小説、ラジオ、アニメ、ドラマなど表現の形が違う作品を分析すると、テレビというメディアについてより深く理解することができて、メディアリテラシーの学びにつながるのではないでしょうか。

「今月のキラ★報告」(神奈川・高校1年女子)

私が見て期待外れだったと思ったアニメは、『ゆるゆり』(テレビ東京で視聴)です。このアニメの原作は漫画です。私は以前から漫画の方を読んでおり、アニメ化するということで楽しみにしていました。しかしアニメは期待外れでした。
まず、キャラクターの絵が全く可愛くなかったです。漫画はキャラクターのゆるゆりの絵がとても可愛く、その点が一番の魅力です。しかしアニメを一目見て、絵が可愛くなかったのでとても残念に思いました。また、声優さんの声も声質はキャラクターに合っていたので良かったのですが、声優さんが皆台詞を棒読みしているような感じで、私はあまり感情移入することができませんでした。もとから漫画にもそれほど白熱したシーンがなく、ただキャラクターが日常を楽しく過ごしているさまが描かれているだけなので、声優さんもあまり感情を込めて読むことができないのかもしれません。しかし、本当にとってつけたような声を聞いて、唖然としました。
アニメ化されると聞いたとき、可愛いキャラクターが可愛く動いて、可愛い声で喋るのだと期待していたので、とても期待外れでした。ストーリーも漫画のものをところどころいじってアニメにしただけで、アニメを見ての”お得感”はあまりなく、また漫画のストーリー自体があまり面白い訳ではないので、見ていてとても退屈に感じました。30分がとても長く感じられました。
最近の深夜アニメはライトノベルや漫画をそのままアニメにしただけ、というものが多いと思います。それが成功している場合もありますが、多くの場合は原作と比べると、期待外れとなってしまう場合が多いと思います。アニメを放送するとよい宣伝になり、お金が儲かるということもあると思いますが、もう少しアニメの質・見応え感を考えて制作してほしいなと思います。
また、深夜だということもありますが、下品なアニメが多いと思います。そのようなシーンがないアニメの方が少ないのではと思います。別にそのようなものをアニメに求めていない人にとっては、そのようなシーンがあるととても不快な気持ちになります。また、そうだからこそ多くの人は深夜アニメに対し反感を抱いているのだと思います。深夜アニメの中には、見ていて感動するような作品も沢山あります。もう少し全体的に深夜アニメの質を上げて、今反感を抱いている人にもアニメを楽しんでもらえるようになればいいのにと思います。

【委員会の推薦理由】

原作の漫画がアニメ化された時に感じる違和感について言及し、安直な作りのアニメでは視聴者の心をとらえることができないことに言及していることは、最近のアニメへの警鐘として評価できる内容でした。また、深夜アニメの質についての言及も、青少年が深夜アニメをどのように見ているのか、ということをうかがわせていることも、興味深く読むことができました。

◆ 「中高生モニター会議」の開催について

3月18日(日)正午から、BPOのある千代田放送会館で2011年度「中高生モニター会議」を開催する。テーマは、「私の見たいテレビ、作りたいテレビ」で、グループに分かれて番組企画を作成する。

2012年度中高生モニター募集について

2012年度の中高生モニターの募集を1月23日(月)から開始した。募集人数は30人を予定。締め切りは2月24日(金)、当日消印有効。

2011年12月に視聴者から寄せられた意見

2011年12月に視聴者から寄せられた意見

年末特番編成に対する不満意見が多く、特に長時間化するバラエティー番組に対しては、芸人たちの内輪話が多いなどの批判が集中した。歌番組やスポーツ番組での”生番組風”演出についての疑問も多く寄せられた。

12月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,097件で、11月と比較して30件減少した。
意見のアクセス方法の割合はメール73%、電話23%、FAX2%、手紙ほか2%。性別は男性72%、女性24%、不明4%。年代は30歳代33%、40歳代26%、20歳代16%、50歳代14%、60歳以上7%、10歳代4%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は508件【30局】であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、20件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

12月の視聴者意見は1,097件と前月より30件減った。昨年同時期と比べると意見数に大きな変化はないが、ここ3ヵ月で見ると減少傾向にある。電話によるアクセスが減って、メールが増えた。
意見内容では、年末特番編成に対する不満意見が多く、特に長時間化するバラエティー番組に対しては、面白くもない芸人たちの内輪話が多いなどの批判が集中した。歌番組やスポーツ番組での”生番組風”演出についての疑問も多く寄せられた。金正日総書記死去のニュースには、報道の姿勢を質す意見があった。福島第一原発事故関連では、政府の”収束宣言”に対する批判意見があった。放射線による食品への影響を調べた食卓調査番組への関心も高かった。ドラマでは長く続いた時代劇の終了を惜しむ声があった。ラジオに関する意見は18件、CMに関する意見は14件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は81件で、前月より40件ほど減少した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が26件、次いで視聴者意見への反論・同意が10件、いじめに関する意見が8件と続いた。
低俗・モラルに反するとの意見については、複数のバラエティー番組に対し「青少年の教育上良くない」「子どもへの配慮が足りない」といった批判意見が寄せられた。視聴者意見への反論・同意については、「青少年の教育上悪影響だ」とする意見や、主にアニメに対する批判意見への反論が寄せられた。いじめに関する意見については、バラエティー番組におけるお笑い芸人やタレントの言動に対する批判意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 北朝鮮の金総書記死去という大ニュースがあったのに、民放各局は、普通にお笑い番組などを続け、合間に報道のアナウンサーが出てくるという対応だった。ある局はドラマの宣伝ばかりで、ある局はいつもどおりの馬鹿笑い番組。ふざけた姿勢は報道機関なのかどうか疑う。みんな公式発表的なものばかりが見たいわけではない。様々な伝え方があり、そこに民間放送の意味がある。報道機関の使命を放棄して、目先の視聴率稼ぎに走った放送局は、恥を知るべきだ。
  • “ものまね紅白”と銘打ったコーナーで、明らかにブータン国王夫妻を侮辱する物真似が堂々と放送されていた。普通なら仕方ないと苦笑いで済ませられる内容だが、今回の放送はあまりにひどく、とても見過ごせる内容ではない。ブータンの国王夫妻、またブータン国民を馬鹿にする行動だ。わざわざ被災地に来て励ましてくれたブータン国王に対して、侮辱するような物真似をするとは腹立たしい。面白さを追求するにしても、節度というものがあるはずだ。
  • 朝の各民放局の番組では、芸能ネタが多い。ニュースは合間に少しだけ伝えている。朝はこれから出掛けなくてはいけない人が多い。それなのに芸能ネタばかりとはどうかと思う。芸能はもうちょっと遅い時間帯でワイドショーという形で十分だ。芸能に時間を使うならもう少しニュースや全国各地の話題に時間を使ってほしい。
  • メディアは個人情報をどういう風に考えているのか。浅田選手のお母さんが亡くなったことで、空港にまで押しかけたり、実家にまで行ったりしている。今に始まったことではないが、人の不幸であれニュースになるのなら個人情報は乱用してもいいのだろうか。「取材活動は自粛してください」と出ているにもかかわらず、強引に押しかけるのはどうかと思う。
  • 柔道オリンピックの金メダリストが、教え子の10代の女性に対する準強姦容疑で逮捕された。本人はあくまでも「合意だった」と弁明し、容疑を否認している。被害者が訴えなければ事件は闇に葬られていた可能性もある。そもそも指導者が未成年者に酒を飲ませること自体、違法行為ではないのか。被疑者の言い分だけを一方的に重視し、「過去の栄光」ばかりをクローズアップするよりも被害者の心情に配慮することがメディアの責任ではないのか。
  • 試合終了後、歓喜の輪に加わっているバルセロナのメッシ選手を特設ブースに強引に呼びつけ、明石家さんまが、「老後はどうする?」などという、侮辱的な質問をして、選手を怒らせていた。大変不愉快で、日本人として顔から火が出るほど恥ずかしい気持ちになった。選手を呼び出す局の傲慢さにも呆れる。選手に謝罪すべきだ。
  • 最近のスポーツ中継は、ライブのふりをして録画編集し、流していることが多い。視聴者を欺いている。放送時間やCMの入れ方、インタビュー等を自分たちでいいように流したいのかもしれないが、それはライブ放送ではない。2、3元中継でもなく明らかに録画放送である。スポーツ中継をバラエティー化したり、関係ない芸能人を出演させたりすることは、やめてほしい。ただ自局の視聴率のためだけに行われているとしか思えない。
  • 情報番組などで、ボードに貼った新聞の記事を読み上げながらニュースを伝えるコーナーがある。その際、記事のほとんどを紙で隠し、少し読むごとにペラッ、また少し読んではペラッというふうに、いちいち紙をはがしながら読みすすめることが多い。ここぞという箇所であればそれも効果的であろうが、ほぼ全面に紙が貼られている場合が多いため、かえってニュースのポイントが分かりにくくなっている。「紙はがし」が悪いとは言わないが、使う箇所を絞り、メリハリのあるニュース解説を心がけてもらいたい。
  • 各局の情報番組で多用されている手法だが、紙をめくる時に「ジャーン」、ボードを指す時に「チャリーン」という具合に、地震速報と紛らわしい擬音が流れる。私はこの音を聞いた瞬間、神経も体も硬直してしまい、とても疲れる。私だけかと思っていたが、様々な年齢の知人も同じことを言っており、私だけが過敏というわけではないようだ。震災後、皆が警報や速報にぴりぴりしているのだから、少なくともしばらくの間はこうした演出はやめてほしい。

【番組全般・その他】

  • 生放送のように見せかけたやらせの件。これは明らかに問題がある。放送局側では通常の演出の範囲内と考えているようだが、屁理屈にすぎない。「生放送でお送りしています。Gスタジオの○○さーん」の呼びかけに答えたのは、録画なのだ。「演出の範囲内」「録画部分にはLIVE」等、指摘のあった部分を正当化し、問題とも思わない感覚がすでに異常だ。マスコミは偽情報を一般視聴者に信じこませることができる。これは危険なことだ。
  • 新聞各紙でも取り上げられている、擬似生中継の問題について。収録映像を使ったことについては、どうしても出てほしい出演者のスケジュール上仕方のないことだとは思う。ただ、それをあたかも生中継の一部として放送したこと、またこれを演出の一部とコメントを出したテレビ局の姿勢は問題がある。当該アーティストは同時刻に自らのコンサートを開いている。調べればすぐわかることにもかかわらず、収録時に参加者に口止めまでしていることは問題ではないか。収録なら収録で、そう伝えればいいだろう。わざわざ嘘をつく理由がわからない。これを演出の一部と認めるなら、テレビ制作とは何でもありになってしまう。
  • 「王国アメリカを脅かす2大おバカ国登場!」のコーナーでロシアの悪戯投稿ビデオが放送されていた。悪戯内容があまりにもひどく、「面白い」の一言で片づけてしまうには、見る側からすれば気分が悪くなる内容だった。「面白い」の一言で、何でも放送していいという風潮があるようだが、テレビ局には放送倫理という概念はないのか。このような不快な放送を垂れ流すだけの放送局に、放送差し止め等の厳しい処罰がないことも、何をやっても許される的な発想になっているのではないか。
  • 番組終了直前のCMの前に「この後お買い物対決」とテロップが出てCMに入った。しかしCMが明けると番組のエンドロールが流れ番組は終わってしまった。「お買い物対決」は次回の放送内容だったらしい。この番組に限ったことではないが、視聴者を引っ張るために紛らわしいテロップを出す手法にはウンザリだ。やめてほしい。
  • 音楽番組と銘打っていることが信じ難いほどの音響の悪さで、がっかりした。番組の途中までは、環境が悪い中でどのアーティストも一生懸命歌っていて、好感を持って視聴していたが、嵐の方々が2回目にパフォーマンスした際の明らかな音響トラブルに関して、子ども達は「これは公開イジメか」とまで言っていた。音楽番組で音響が機能しないということは、歌手が歌える環境ではなかったということだ。制作に責任を負うはずの番組側が、視聴者に対して何の説明もしないことはおかしい。
  • 同じような場面で、まったく同じ音楽を耳にすることが多い。たとえば家などをリフォームしたり、掃除したりした後には「劇的ビフォーアフター」の曲。空港や飛行機が映ったときや航空会社の話などはドラマ「GOODLUCK」の曲がほとんどだ。それだけ印象が強いのだろうが、あまりに同じ曲を使いすぎではないか。最近ではここでこの曲が流れるなと想像できてしまうし、ほとんどその通りになる。それが番組制作者の狙いなのだろうか。こんな小さなことにこだわることがくだらないのか、それともこれほどまでに印象に残る曲を作った作曲家をすばらしいと言うべきなのか。
  • 民放のバラエティー番組で、芸人同士が裏話で盛り上がると、話のあちらこちらに「ピー音」がかぶせられることがある。芸能人の個人名を消すためだと思うが、視聴者をかやの外に置いて内輪だけで騒ぐとは失礼だ。視聴者に聞かせたくないのであればプライベートな場で盛り上がれば済むことだ。

【CM】

  • CMに日本人宇宙飛行士の映像が使われているが、企業のCMにJAXA職員が出るのは問題がある。出演料などが今後の宇宙開発に役立てられるというプラス面は理解できるが、問題はお金の行方ではない。宇宙飛行士の滞在実現のためには、これまで莫大な国家予算が投じられている。いわば国を代表してプロジェクトに参加している人物が、一私企業のイメージアップに貢献することが、果たして公正なことと言えるのか。

【ラジオ】

  • 放送された内容は犯罪だ。女性はいつでも強姦されたいと思っているという趣旨の発言は看過できない。「『信じている』と女性が言う理由は、『性交がしたいという意味なんだ!』」という発言は、公共の放送でするべきではない。直ちに、このコーナーは廃止すべきだ。これは犯罪を助長、肯定しているようなものだ。柔道の金メダル選手が「合意だった」と言っていることと同じだ。これで自分の娘が強姦されても文句は言わないのか。被害者を出したらどうするのか。性犯罪を肯定する発言をしたのだから放送は直ちに中止すべきだ。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • バラエティー番組で双子の兄弟をとりあげているが、最初に出てきた時は家の中でやんちゃしているというレベルだったが、外やスーパーなど他の人がいる場所で服を脱いだり、周囲の客や店に迷惑をかけている。それをネタにするのは不愉快だ。何にせよ子どもの度が過ぎた行為をネタにすることは良くない。
  • ある男性タレントが年上の芸人の頭を叩いていた。芸歴も浅い若手なのに、先輩の方々を叩いていた。彼は以前放送された別の番組でも、目上の女性の頭を叩いていた。どういう神経で、事務所はどういう教育をしているのかと憤慨した。若い子達の礼儀の悪さを助長するような行為はやめていただきたい。
  • 深夜のバラエティー番組の視聴者プレゼント企画に10歳の子どもが参加していた。「電話なのでOK」としていたが、小学生が夜中の時間帯に起きて、番組に電話とはいえ出演することはどうかと思う。生放送だ。番組スタッフが判断するべきだったのではないか。その子が今回商品を獲得したことを友達に話し、友達も夜中に起きれば商品がもらえると思うかもしれない。テレビは大きな影響力をもっているので、大人がしっかりと子どもを守ってあげてほしい。

【いじめに関する意見】

  • 芸人の顔の特徴を他の出演者が言っていたことで、私の娘が同様の顔の特徴でいじめを受けている。最近のテレビは、そういうことを言いっぱなしにする所があり、子ども達もそれを見ることにより人の欠点を言っても罪悪感にとらわれず、平気で言うようになってきている。大人はスルーできることでも、できなくて悩んでいる子ども達がたくさんいることを心にとめて番組作りをしてほしい。
  • バラエティー特番の終盤の罰ゲームに心底あきれた。湯を張った大鍋の上からしゃぶしゃぶ肉を持ったタレントをワイヤーで吊り下げ、肉だけでなく人間ごと湯につけたり吊り上げたりを繰り返すいじめそのものの企画だった。小学生の子どもも一緒に見ていたが嫌がって泣き出した。今年は震災があって絆の大切さがしっかり認識されたはずだが、一部のテレビ関係者にはそれが分かっていないのだろうか。

【性的表現に関する意見】

  • 子どもが見られる時間帯であるにもかかわらず、ラブホテルでの性行為のシーンが放送されていた。この回のみならずDVシーンや性行為を匂わせるシーンが何度もある。ドラマは放送時間帯を深夜にするなど青少年への配慮をしてほしい。
  • バラエティー番組のコントで女性芸人が下品な言葉をつかっていた。小さな子は分からないかもしれないが、アニメ映画終了後の土曜の23時といえば子どもが夜更かししていてもおかしくない時間帯だ。この番組はほとんど見たことがなく、この時初めて見た。ネットで検索すると下ネタが多いとのこと。18禁か何かに指定しても良いのではないか。

【要望・提案】

  • かつて、ドラマの小道具に使われたバタフライナイフに刺激され、少年が中学校で教師を殺害するという事件があった。当時は大きく問題になったが、最近はそのことも忘れられ、暴力的表現の多いドラマが増えているようだ。こうしたドラマは子どもたちのいる日中にも再放送されるなど問題が多いので、「残虐表現の排除」「日中は放送しない」「冒頭で『暴力的な表現が含まれています』等表示する」「ドラマと類似した犯罪の被害者に配慮する」等の対策が必要ではないか。

【暴力シーンに関する意見】

  • ドラマの番組宣伝の中に、登場人物がナイフを振り回す場面があった。小学生の孫が見てしまい、「ナイフって怖いね」と漏らしていた。このような場面を含むドラマ自体どうかと思うが、番組宣伝用にわざわざそうした場面を選ぶのも非常識だ。

【殺人シーンに関する意見】

  • 殺人事件を扱うドラマだが、殺人シーンがリアルで生々しい。先週は包丁が死体に突き立てられていた。生々しいシーンは子どもの潜在意識に刻まれてしまうし、ドラマで殺人を見慣れてしまうことも恐ろしい。そうしたシーンが過激にならないようにしてほしい。

【虐待に関する意見】

  • バラエティー番組で、ゲストの元プロレスラーが「息子を叩くことがある。あくまで脳みそを揺らさないように。その加減は私は得意だ」と語っていた。冗談っぽかったが、本当なら由々しきことだ。そもそも子どもへの虐待は犯罪だし、話のネタにしても我が子を叩いている等の言説は看過しがたい。彼女に限らず我が子への体罰をネタにして話すタレントは多く、それを平気で流すテレビ局も疑問だ。

【差別に関する意見】

  • 健常者と障がい者の壁をなくして一緒に笑おうというバラエティー番組の企画らしいが、ステージには健常者と障がい者が立ち、健常者が障害のある人を馬鹿にするような場面は不快である。番組に出演している障がい者は状況を理解した上で出演しているからいいだろうが、この番組を見た子どもが、近くにいる障がい者をバカにするようなことをしたら、それは差別になる。障害をネタにした笑いは必要ない。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 猟奇的なシーンの多かった深夜アニメに対し「不愉快」「一般向けではない」という批判があったが、一般向けでないからこそ深夜に放送されていることを理解すべきではないか。日中やゴールデンタイムに放送されているものなら、たまたまそれを目にして不快な思いをすることもあるだろうが、深夜番組に関しては”そういうもの”だと割り切るべき。

【CMに関する意見】

  • スマートフォンのCMで、爪が長い女性が出てくるがちゃんと爪を切ってほしい。学校で子どもに爪を切るように指導しているが、ああいう人を出すと子どもが長い爪にあこがれるのではないか?長い爪は衛生的にもよくない。

第179回 放送と人権等権利に関する委員会

第179回 – 2011年1月

委員会運営上の課題

委員会に対する放送局からの要望 ……など

先月に引き続き、苦情申立書の受理について検討し、とりまとめを行った。在京・在阪放送局に対する聞き取り調査で出た放送人権委員会への意見や要望について議論した。

議事の詳細

日時
2011年 1月17日(火) 午後4時~6時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、山田委員

委員会運営上の課題

前回の委員会に続いて申立書の受理に関する検討を行い、苦情や申立書が事務局に寄せられた場合の対応の仕方を取りまとめた。これによって、申立書の受理からヒアリングを含めた審理、決定の通知・公表に至る委員会運営全般にわたる検討作業をひと通り終えることになった。
一連の作業を通じ、委員会審理における(1)ヒアリングの改善、(2)事務局による資料収集と委員会の判断に基づく当事者への開示、等が固まった。
なお、苦情申立てを簡便化する一環として、BPOホームページより申立書の書式をダウンロードできるよう作業を進めている。

委員会に対する放送局からの要望

BPO事務局が行った在京・在阪放送局への聞き取り調査(「2011年12月議事概要」を参照)で、放送局側から出された「委員会決定」に関する要望について議論した。
「委員会決定」について局からは、決定文の長さや表現の難しさを指摘する声があがった。また決定のポイントをまとめた要約を出してほしいという要望も出された。一方、申立人と局とが対立関係に立ち、名誉毀損等の権利侵害を扱う委員会としての性格上、法的な用語の使用や、表現の難しさはやむを得ないとする声もあった。
この日の委員会では、事務局がまとめた資料をもとに決定文の「長さ」、「表現上の特徴」、「全体の構成」、「放送への視点」等の論点について各委員が意見を述べた。そのうえで、申立人の苦情にはきっちり答えるという委員会の任務を改めて確認すると共に、決定文の分かりやすさについては改善の余地があるという認識の下、表現上の工夫や論点の整理・絞り込みに、より留意することで一致し、具体的には次の案件からそのような問題意識を持って対処していく中で改善を図っていくことになった。また委員会が要約を出すかどうかについては意見が分かれた。
来月は放送倫理をテーマに議論し、放送倫理上の問題に関する判断のカテゴリーについても検討を行う。

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・21件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 一般視聴者対象のBPO認知度調査の結果について事務局より報告した。
  • 来月行われるNHKへの訪問について事務局より実施の概要を説明した。
  • 次回委員会は2月21日(火)に開かれることになった。

以上

第56回 放送倫理検証委員会

第56回 – 2012年1月

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

テレビ東京『ありえへん∞世界』の対応報告書について ……など

第56回放送倫理検証委員会は1月13日に開催された。
まず、前回の委員会で継続討議となった、原発事故による放射能の食事に与える影響を検証したNHKの情報番組『あさイチ』については、主に12月15日の放送の内容を元に検討したが、放送倫理上の問題はなかったとの結論に達した。
委員会が昨年9月末に出したテレビ東京『ありえへん∞世界』に関する「意見」について、当該局から提出された対応報告書を検討、委員会はこれを了承し、公表することにした。
放送局がBPOの活動についてどのように受け止めているかなどについて、在京、在阪の民放テレビ局およびNHK併せて12局とAM民放ラジオ3局を対象に聞き取り調査を行った結果を、事務局から報告した。
また、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、新たに5局から報告があった旨、対応報告書を元に事務局から説明を行った。
なお、あと数局から提出の意思表示があることから、1月末に対応報告書の取り纏めをすることになった。

議事の詳細

日時
2012年 1月13日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、水島委員

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

10月17日にNHKの情報番組『あさイチ』で「放射能大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査」と題して、全国7家族を対象に、一週間の食事に含まれる放射性物質の量を調査、分析した結果を放送した。
放送後、視聴者から放送されたデータについて誤りを指摘され、当該局は、11月24日の同番組の中でその時点までに判明した間違いについて謝罪、訂正した。更に12月15日には同番組でほぼ同量の時間を割いて、間違いの原因、わかりにくかった部分の説明、更に新たな情報の放送を行った。
今回、委員会は3回の放送の視聴と当該局から提出された複数の報告をもとにし、特に12月15日の放送を中心にして討議を行い、説明が足りないところはあったとしても、放送倫理の問題ではないとの結論に達し、審議として取り上げないことになった。

【委員の主な意見】

  • ずっとさかのぼっていけば、測定器の調整不足でグラフが ずれているのにその実験をやったことそのものが問われるかもしれないが、少なくとも12月の放送では11月の反省を踏まえて、11月に感じた疑問は解消されているので、これで良かったのではないかと思う。
  • スペクトルのずれという間違いがあったことは事実 であり、そ れが分からなかった ことが正当化されてよいのかどうかが問題。
  • 当該局に責任を問えるかという問題だが、それは無いだろう。
  • 科学番組をたくさん作ってきた人間として、科学的に厳密な番組というのはものすごく難しい。受け手の許容量を遥かに超える 水準で説明しないと厳密な 説明はできない。科学番組は、少なくとも放送にのせうる水準 にするためには、誰かがどこかで丸めなければ出来ない。この番組は問題ないと思う。
  • 説明が足りないところがあったとしても、これは放送倫理の問題ではないように思う。

テレビ東京『ありえへん∞世界』の対応報告書について

テレビ東京は、『ありえへん∞世界』に関する意見書に対して、社内における再発防止策を報告書にまとめ、12月22日に委員会に提出した。委員会はテレビ東京が経営面での制作体制の点検を含む様々な角度からの見直しが必要としたこと、さらに、本事案の演出が過失でなく故意であると意見書で指摘されたことを重く受け止めている点を評価して、この報告書を了承することにした。(対応報告はこちらに掲載)

その他

■ 在京・在阪局への聞き取り調査

BPOでは、昨年9月から10月にかけて、放送局がBPOの活動についてどのように受け止めているかなどについて、在京、在阪の民放テレビ局およびNHK併せて12局とAM民放ラジオ3局を対象に聞き取り調査を行った。
この調査は、各委員会運営の参考に資することを目的としたもので、各委員会の調査役らによるプロジェクトチームが、各局のBPO連絡責任者や放送現場の責任者に直接面談する形がとられた。その結果がまとまり、この日の委員会に報告された。

調査結果は、

  • BPOに対して持つイメージや各委員会の意見書の周知方法など、BPOの活動全般に対する受け止めや対応
  • 公表する意見書をはじめとして各委員会への放送局からの意見、要望の2つに大別して、調査役からそれぞれ具体的に説明が行われた。
    これを受けて委員からは、さまざまな意見が出されたが、放送局側から出された要望に対しては、各委員会でそれぞれ対応できるものと、他委員会を含めてBPO全体として考えるものとがあり、今後も引き続いて議論を重ねることにした。

以上