2014年1月28日

日本テレビ『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』2013年12月31日放送 審議入り

青少年委員会は1月28日開催の第153回委員会で、昨年大晦日の18時30分から24時30分に放送された『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』について、番組を視聴した上で討論。「お尻の中に粉を入れ、他の人に吹きかけるシーン」「お尻でロケット花火を受け止めるシーン」「赤ちゃんに扮した男性のオムツ交換をして局部を露出したシーン」など、それぞれ局部は映像加工されているものの、放送基準に照らして問題があるのではないかなどの意見が出され、審議入りを決めた。

東京メトロポリタンテレビ、サンテレビ
アニメ『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』審議入り

青少年委員会は1月28日開催の第153回委員会で、上記番組を審議の対象とすることを決定した。
アニメ『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』には、「22時台の中高生が視聴してもおかしくない時間帯で、女子高生が自慰行為をするなどの性表現のあるアニメが放送されている」などの視聴者意見が多数あった。委員会は番組を視聴の上、討論し、審議入りを決定。当該番組は制作委員会による制作であるが、22時台に放送を編成した東京メトロポリタンテレビとサンテレビを審議対象の局とした。

第205回 放送と人権等権利に関する委員会

第205回 – 2014年1月

宗教団体会員事案の通知・公表の報告
大阪市長選関連報道事案の対応報告書…など

「宗教団体会員からの申立て」事案の通知・公表の概要を事務局が報告した。「大阪市長選関連報道への申立て」事案で、朝日放送から提出された対応報告書について検討した。

議事の詳細

日時
2014年1月21日(火)午後4時~6時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「宗教団体会員からの申立て」事案の通知・公表の報告

委員会に先立ってこの日行われた本事案に関する「委員会決定」の通知・公表の概要を事務局が口頭で報告した。【詳細はこちら

2.「大阪市長選関連報道への申立て」事案の対応報告書

本事案で「勧告」として「放送倫理上重大な問題あり」の決定を受けた朝日放送から、対応と取り組みをまとめた報告書(2013年12月24日付)が委員会に提出された。
報告内容について意見が出され、次回委員会でさらに検討のうえ対応を決めることになった。

3.「匿名インタビュー、モザイク処理の在り方」

報道・情報番組における匿名インタビューやモザイク処理について、事務局がまとめた各局のルールやガイドラインに関する資料(海外放送局を含む)を説明し、それもとに各委員が意見を述べた。事務局がさらに調査し、次回委員会で議論を継続することになった。

4.その他

次回委員会は2月18日に開かれる。

以上

2014年1月21日

「宗教団体会員からの申立て」事案の通知・公表

放送人権委員会は1月21日、上記事案について通知・公表を行い「本件放送の公共性・公益性を高く評価するものであるが、申立人のプライバシーへの十分な配慮があるとは言えず、放送倫理上問題があると判断する」との「見解」を示した。

[通知]
通知は、午後1時からBPO会議室で行われた。三宅弘委員長と起草を担当した市川正司委員、田中里沙委員が出席、申立人本人と被申立人であるテレビ東京の報道局次長ら3人に対し、三宅委員長が決定文のポイントを読み上げ、説明を加えた。
決定について申立人は、「私の立場等も十分に検討した上で、丁寧かつ慎重に審理していただいたことが分かりました。人権侵害については、少し残念なところはあるのですが、放送倫理上の問題という観点から、プライバシーについて問題があるという判断は、十分考慮していただいた内容かと思います」と述べた。また、テレビ東京は「公共性・公益性が高いことを認めていただいたのは大変ありがたいが、我々もこれまでになく丁寧にやった上でのことなので、もう少し決定を読み込んだ上で、意見などを書くこともあるかと思います。我々にとって非常に勉強になる例なので、携わる者全員に、もう一度、徹底して勉強の材料にして、これを次の良い報道につなげていきたいと思います」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館の2階ホールで記者会見を行い、「委員会決定」を公表した。22社50人が取材した。
会見では三宅委員長が委員会決定に沿って委員会の判断や考え方などを説明し、記者からの質問を受けた。

(質問)
申立人は再放送をしてくれるなと申し立てているが、委員会の決定は「プライバシーに配慮した放送を要望する」と書いてあるだけだ。再放送については「放送局の判断」ということなのか。
(三宅委員長)
そうだ。「再放送をしてくれるな」と言うことは、表現の自由にも関わる。そこまでは立ち入っていないということだ。

(質問)
委員の間で、プライバシー侵害かどうかという判断が分かれたということだが、概ね拮抗していたのか。
(三宅委員長)
拮抗していた。

(質問)
テレビ東京は申立人に対して、全く取材の許可を得ていなかったのか。
(三宅委員長)
放送された映像や、ヒアリング等で確認した限りでは、そうだった。
承諾を取れるような対象だったのかどうか、という点はいろいろあると思う。場合によっては承諾がなくても、本人が特定出来ないようなボカシのかけ方をすれば、放送された内容を公共性・公益性の観点から検討して、プライバシー侵害かどうかを判断することになる。
今回の判断は、申立人を知る者には特定出来るのではないかということを前提として、承諾を得ずにカウンセリングの内容や手紙の内容を放送している点について判断をした。本件では本人の承諾がないが、公共性・公益性はかなり高く認めた。その上で、放送倫理の問題として、いろいろなことを考えた結果、もう少し配慮があるべきではなかったかと判断した。

(質問)
今回の事案に則して考えれば、人物が特定出来ない状況で放送すれば、カウンセリングや手紙の内容を放送しても放送倫理上問題がなかった、という判断になっていたのか。
(三宅委員長)
カウンセリングと手紙の点はリアリティを持たせる手法としては有効だと思うが、それを追求すればするほど、本人のプライバシーの部分に入って行くので、プライバシーとの関連が非常に難しいところがある。公共性・公益性が高いから、1分程度の映像が出ても許されるのではないかという意見から、心の中に入って行くという形式的な観点から言えば、それはやはりプライバシー侵害ではないかという意見まで、委員の中でも、プライバシーについての理解の仕方に幅がある。
映像を作る側の観点だけではなく、映される側、放送される側の観点からも考えて、知られたくないと思う範囲を慎重に判断して行かなければならない。今回は特にそういう点を、読み取ってもらいたい。
最近は、テレビ放送で終わるのではなく、それがネットに流れたりする。そのことで、二次的被害が生じてしまうというメディアの状況の中で、テレビの映像なり放送がどのように使われるのか、ということも配慮しながら、プライバシーの侵害の問題を議論して行かなければならないという点では、非常に難しい。
我々としては、取材段階できっちり特定して取材してほしい。あまり顔なしで取材してほしくないというのは何度も言っているが、放送をする時には、心の機微に触れるものであればあるほど、特定されないような表現方法を採ることで、脇を固めることが大事なのではないか、ということを、このケースでは考えさせられた。
(市川委員)
「特定できなければ問題はない、という理解なのか?」、という点については、仮定の話なのでちょっとお答えしがたい。
ただ、本件で問題にしている「本件放送部分」というのは、カウンセリングを外から隠し撮りしたところと、私信の公表という2つの部分で、もし特定出来なかったとしても、申立人本人にとっては自分が話したことだということが理解出来るので、そのことが放送されること自体を保護すべき利益だと考えるという見方も当然あり得る。そこでの問題性は、議論される可能性はあると思う。
(田中委員)
この放送は、ごく普通の若者がなぜ入信していくのか、というところに焦点を当てており、ごくごく普通の若者を表現するための素材が、いくつか提示されたわけだ。委員会の判断は、この素材を総合していくと特定につながるのではないかということであり、こういう情報の扱いについては今後検討しなければいけない時期に来ているのではないかと審理の過程で感じた。

(質問)
論点のところに「隠し撮り、隠し録音の取材手法とその放送の当否」が放送倫理上の問題としてあがっているが、取材方法については特に今回の判断の中では示していないという理解でよいのか。
(市川委員)
そうだ。隠し録音、隠し撮りが、どういう場合に許容されるか、されないか、についての判断をしているということではなく、むしろ取材対象としてのカウンセリングの部分に踏み込んで撮影した点での問題性を指摘した。
(三宅委員長)
付け加えると、従前の決定では、隠しカメラ、隠しマイクは、原則として使用すべきでなく、例外として使用が許されるのは、報道の事実に公共性・公益性が存在し、かつ、隠しカメラ、隠しマイクによる取材が不可欠の場合に限定されるべきである、という基準がある。今回はそれを前提として、問題の部分の放送の仕方を議論したということだ。

(質問)
当事者の承諾を得ていないと隠し録音ではないかという気もするが、今回のケースは事前に承諾が得られるような状況ではなかったということもあり、通常の場合とは違うということか。
(三宅委員長)
先程言った基準から言えば、例外的な場合ということがあり得るし、公共性・公益性に高い評価をしていることからすると、プライバシー侵害の点からどうかという点で、掘り下げて行けば、かなりいろいろな問題で議論出来るとは思う。しかし、その辺は従前の基準に照らして、あまり問題ないということで、深めてはいないということだ。

(質問)
論点の中に、「具体的な被害はあったか」とあるが、具体的な被害というのは、放送を見た人によって申立人が特定され、それが広まる可能性があったということか。
(三宅委員長)
プライバシー侵害かどうか、その違法性が阻却されるかどうかという点はあるが、他人に知られたくない自分の内面を知られてしまったという点が、具体的な被害と言えば被害であろうと思う。

(質問)
本人が何を考え、なぜ入信しようとしたかは、当人の内面に踏み込まない限り分からないのではないか。カウンセリングの隠し撮り、私信を使ったこと自体が、本来は保護すべき利益という考え方もあるとのことだが、その点をもう少し説明してほしい。
(三宅委員長)
本件放送の一番大事な点は、若者が何を考え、なぜ入信しようとしたのか、というところだから、そこを取材することは、必要なことだと思う。だから、隠し撮りとか隠し録音のような点を批判しているという決定内容ではない。そのことは理解されたとして、どういう形で放送するのかというところに、難しい点がある。今のネット社会におけるテレビの利用のされ方という点から、表現手法にかなり気を配ってやっていく必要が今後は出て来ると特に強く思っているので、その辺を考慮した。

(質問)
プライバシー侵害として白黒つけるためには、本人に対する救済の必要性が高いかどうか、という議論があったということだが、もう少し詳しく必要性についてどう判断したのか説明してほしい。
(三宅委員長)
放送の公共性・公益性が極めて高い放送なので、プライバシー侵害として違法だという判断をするかどうかという点が非常に難しく、委員会では意見が一致しなかった。ただし、放送倫理の問題として、こういうことを局側に望む、という点では意見が一致したので、その限りで本人を救済したという結果になった。本人に対する救済の必要性との関係は、公共性・公益性との兼ね合いでバランスをとるということだ。

以上

第78回 放送倫理検証委員会

第78回–2014年1月

弁護士から詐欺事件の被害者として紹介された人物が実は被害者ではなかった、日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

他局の取材音声を無断で受信して番組に使用していた、鹿児島テレビのローカル番組についての審議 次回委員会までに「意見」を通知・公表へ

「対決内容が編集で偽造された」ことが判明したフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議

第78回放送倫理検証委員会は1月10日に開催された。
1月8日に委員会の意見を通知・公表した昨年の参議院選挙にかかわる2番組事案について、記者会見での質疑や当日の報道などが報告され、若干の意見交換を行った。
ネット詐欺の被害者として放送された人物が、実はネット詐欺専門の弁護士から紹介された、当時の所属事務所の事務員だったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』について、担当委員から提出された意見書再修正案をもとにさらなる意見交換が行われ、次回委員会で意見の集約をめざすことになった。
他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し放送に使用していた鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、一部手直しをした案を作成し、特に異論がなければそれを委員会の意見とすることが了解されたので、次回委員会までに意見を当該局に通知し、公表の記者会見を行うこととなった。
「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発し、番組が打ち切られたフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(2013年10月20日放送など3本)の審議が始まり、ヒアリングに向けての論点の整理や、3本の対象番組をどう扱うかなどについて、意見交換が行われた。

1.2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見の通知・公表

対象となった2番組は、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党の比例代表選挙立候補予定者だった太田房江元大阪府知事の選挙準備活動を紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、自民党の比例代表の渡邉美樹候補が著名経済人としてVTR出演していることに気づかず、投票日当日の午前中に放送したテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)。
1月8日、当該の2局に対して、委員会決定第17号の意見書を通知し、続いて公表の記者会見を行った。当該局の当日のテレビニュースの報道を視聴したあと、委員長や担当委員から記者会見での質疑などが報告され、若干の意見交換が行われた。

2.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介されたが、実は被害者ではなかったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演したネット詐欺専門の弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったのではないかと審議の対象とした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
担当委員から、前回までの委員会の議論を取りまとめた「意見書再修正案」が提出され、さらなる意見交換を行った。その結果、事案の取材から放送に至る過程での問題点や、問題発覚後の対応などについて、ほぼ論点が整理されたが、意見書としてまとめるにはなお説明を付加する必要もあるとして、さらに意見書案を修正したうえで、次回委員会で審議することになった。

3.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用していた、鹿児島テレビの2つのローカル番組についての審議

鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』(6月29日放送)で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部の活躍ぶりを、選手を激励する監督の声を交えて放送したが、監督の声は他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったという事案。
担当委員から、前回までの委員会の議論を踏まえた「意見書修正案」が提出された。その結果、問題の背景には、音声の窃用が電波法59条に違反することを知らなかった取材ディレクター個人の過失だけでなく、地方の放送局が抱える構造的な課題もあるということで意見がほぼまとまったが、構成等について手直しの要望もあったので、それを踏まえた修正案を作成し、その案に対して特に異論がなければそれを委員会の意見とするということで意見の一致を見た。次回委員会までに、当該局への意見の通知と、公表の記者会見が行われる見通しである。

4.「対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議

フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚、当該局は社内調査の結果ほぼ指摘どおりであるとして、番組を打ち切った事案。
前回の委員会で、上記番組のほか、同じような問題があったと当該局が認めた、2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて スペシャル』についても審議の対象とすることになり、当該局から、これら2本の番組についても詳細な報告書が提出された。
委員会では、1月中旬から始まるヒアリングに向けて、担当委員のメモをもとに論点を整理したほか、新たに提出された報告書を踏まえて3本の番組をどのように取り扱うかについても意見交換を行った。

以上

2013年度 第52号

「宗教団体会員からの申立て」に関する委員会決定

2014年1月21日 放送局:株式会社テレビ東京

見解:放送倫理上問題あり
テレビ東京が2012年12月30日に放送した報道番組「あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~」において、番組で紹介された男性が、公道で隠し撮影された容姿・姿態が放送されたほか、カウンセリングにおける会話や両親に宛てた手紙の内容が公にされるなどプライバシーを侵害されたとして、謝罪と今後二度と当該番組を放送しないと誓約するよう求めて申し立てたもの。
放送人権委員会は審理の結果、1月21日に「委員会決定」を通知・公表し、「見解」として本件放送には放送倫理上問題があるとの判断を示した。

【決定の概要】

 テレビ東京は、2012年12月30日午前1時25分から午前2時25分まで、『あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~』と題する番組で、オウム真理教の後継団体であるアレフの活動状況と、新たにアレフの信者となった若者らの様子をローカル放送した。番組は、申立人をアレフの信者であると紹介しつつ、申立人の顔に一定のボカシをかけながら、申立人が特定の地方都市の国立大学を放送の年に卒業したこと、年齢や出身地方を説明し、その大学を想起させる大学の構内や学部名の入った門柱の映像、実家付近の駅周辺の映像、卒業式らしき場で友人たちと写る写真などを放送した。また、申立人が実家で、アレフ脱会のカウンセラーからカウンセリングを受け、思春期の悩み等から信仰に至ったことを話す状況をカウンセラーのみの了承のもとで隠し録音し、音声を変えたうえで放送し、さらに、申立人が両親に送った私信の映像を流しながら、信仰に対する考え方を書いた部分のナレーションによる朗読を挿入するなどした。
委員会は、申立人から本件放送によってプライバシー権などを侵害されたとの申立てを受けて審理し、「見解」に至った。決定の概要は以下の通りである。
委員会は、アレフの危険性についての疑惑などに関係する調査報道を行う本件放送の公共性・公益性を高く評価し、今、なぜ若者がアレフに入信するのかを明らかにすることを目的とした本件放送の申立人に関する部分についても同様に公共性・公益性を認めるものである。
しかし、本件放送においては、申立人の顔に一定のボカシをかけ、申立人の声を機械的処理により変換したものの、年齢、出身地方や出身国立大学のある都市の情報、出身大学を想起させる構内や学部名の入った門柱の映像、実家付近の駅周辺の映像、卒業式らしき場での友人と写った写真などの情報を放送の中で順次示した。このため、申立人を知る一定の者には、本件放送の対象が申立人であると特定できることとなっている。
このように本件放送の対象が申立人であると特定できる状況下で、申立人が脱会カウンセラーとの間で脱会に関するカウンセリングを受けている場を、カウンセラーのみの了承のもとで隠し録音して放送し、申立人が両親に宛てた手紙を両親から提供を受けて放映しながらその内容をナレーションで朗読して放送し、申立人の思春期の心情や信仰に至る経緯を語る部分を明らかにしたことは、申立人の承諾なく私生活の領域に深く立ち入るものであり、申立人のプライバシーへの十分な配慮があるとは言えない。この放送部分の内容がプライバシー権の侵害に至るものであるか否かについては委員の意見は一致しなかったが、この放送部分に放送倫理上の問題があることで委員の意見は一致した。
いかに本件放送部分に高い公共性・公益性が認められるといっても、申立人と特定しうる状況下において、カウンセリングを受ける場や、両親に宛てた私信などの申立人の私生活の領域に、申立人の承諾なく踏み込んだ放送を行うことは、申立人のプライバシーへの十分な配慮があるとは言えず、放送倫理上問題があると判断する。
委員会は、本件放送の公共性・公益性を高く評価するものであるが、本件放送部分は、その放送目的を追求するあまり、申立人のプライバシーに対する十分な配慮があるとは言えない結果となったものであり、テレビ東京に本決定の主旨を放送するとともに、今後、プライバシーに配慮した放送を要望するものである。

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2014年1月21日 第52号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第52号

申立人
宗教団体会員の男性
被申立人
株式会社テレビ東京
苦情の対象となった番組
『あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~』
放送日時
2012年12月30日(日)午前1時25分~2時25分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.本件放送は、申立人のプライバシー権、肖像権を侵害するものであるか
    • (1)申立人をアレフ信者であるとして、脱会カウンセリングの模様の隠し録音の内容と、私信の映像・内容などを放送したことと、申立人のプライバシー権
    • (2)商店街を歩く申立人、帰省時の申立人の撮影・放送と肖像権
    • (3)本件放送は申立人本人を特定しうるものであったか
    • (4)公共性・公益性とプライバシー権侵害の判断について
  • 2.本件放送の放送倫理上の問題について
    • (1)申立人の特定可能性への配慮
    • (2)カウンセリングの隠し録音と両親への私信の撮影・朗読の問題点
    • (3)本件放送の公共性・公益性により本件放送部分が許容されるか
    • (4)アレフの団体としての取材拒否、申立人の両親の承諾との関係

III.結論

IV.番組の概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2014年1月21日 決定の通知と、公表の記者会見

放送人権委員会は1月21日午後1時からBPO会議室で、上記事案の「委員会決定」を通知し、その後、午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き公表した。報道関係者は22社50人が出席した。
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2014年5月20日 委員会決定に対するテレビ東京の対応と取り組み

2014年1月21日に通知・公表された「委員会決定第52号」に対し、テレビ東京から局としての対応と取り組みをまとめた報告書が4月18日付で提出され、5月20日の第209回委員会で検討された。
委員会では、「題材に高い公共性・公益性があるとしても、放送内容によっては放送倫理上問題ありとされることを認識してほしい」との意見なども述べられた。

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目 次

  • 1.委員会決定後の対応
  • 2.社内での報告と周知
  • 3.決定についての検討内容等
  • 4.むすび

2014年1月8日

2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見の通知・公表
(関西テレビ『スーパーニュースアンカー』およびテレビ熊本『百識王』)

上記委員会決定の通知は、1月8日午後1時から千代田放送会館7階BPO第一会議室で行われた。委員会から川端和冶委員長、水島久光委員長代行、渋谷秀樹委員の3人が出席し、関西テレビからは常務取締役ら3人、テレビ熊本からは報道編成制作局長ら2人が出席した。
まず川端委員長が「委員会として非常に残念だったのは、3年前の決定第9号の事案とほとんど同じ問題点についての事案であったことだ」と述べたうえで、選挙の公平・公正性をゆがめたと認められることから、委員会は2つの番組にそれぞれ放送倫理違反があったと判断したことを通知した。そのうえで「なぜ同じような問題が起こってしまったのかを、皆さんによく考えてもらわないと、選挙のたびにまた繰り返されるのではないかという危機感を委員会はもっている」と指摘し、「選挙の重要性から考えて、テレビ放送がこれをゆがめてはならないという原点を、皆さんにしっかり意識していただいて、今後の制作を進めてほしい」と要望した。
これに対して関西テレビは「今回の事案を深く反省して、意見書も参考にしながら今後の体制を構築していきたい。考え続けることがもっとも重要だという指摘もあるので、委員会の眼差しに応えられるように頑張っていきたい」と述べた。またテレビ熊本は「今回の事案を大変重く受け止めており、この決定を今後の報道・制作に活かしていきたい。この大失態を次に活かすべく全社的に取り組んでいく」と述べた。

この後、午後1時45分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には27社49人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介した。そのなかで川端委員長は2つの番組をともに放送倫理違反とした委員会の判断について説明したうえで「3年前の委員会決定第9号や昨年4月の委員長コメントを公表しているにもかかわらず、またこのような問題が起きたことがもっとも重要だと委員会は考えた。そこで、今回の意見書では、どうすればいいかという点を2つの提言で示すことにした。他の放送局もこの意見書をよく読んで、参考にしてほしい」と述べた。
続いて渋谷委員が「放送における選挙の公平・公正性は抽象的でわかりにくいので、『こころの秤』という提言を書いた。仮に特定の候補者だけを放送したら、有権者である視聴者の心の中にどのようにゆがみを起こすかを、具体的に想定して考えたらどうだろうかという趣旨だ」と述べた。
また水島委員長代行は「報道局だけでなく、全ての放送にかかわる人たちに、これを機会にもう一度、選挙と放送の関係をしっかり考えてほしいと願って、秤やサッカーの比喩も取り入れて意見書を書いた」と述べ、今回のことがあったからといって、選挙に関する番組制作を避けようとするのではなく、むしろ視聴者に選挙に関する多様で豊富な情報を、いかに提供できるかを考えていってほしいとコメントした。
記者との質疑応答では「BPOとして、再発防止のために、次の国政選挙の前にあらためて注意喚起するような考えはあるか」との質問に対して、川端委員長は「放送倫理検証委員会は、放送された番組のなかの具体的な問題に対して、意見を申し上げるところであり、次回の選挙の前に注意を促す通知を出すような立場にはない。ただ、具体的な事例があればそれを契機に、談話やコメントを出すことはありうるだろう」と答えた。さらに、選挙に関する番組を制作する際には、選挙の公平・公正性を害しないかどうかをよく議論してほしいし、その材料として意見書を是非活用してほしいと述べた。また、関西テレビの同じ番組が、連続して審議の対象になったことについても質問があり、水島委員長代行は「たしかに同じ番組ではあるが、問題の原因は全く別のところにあった。関西テレビに構造的な問題があるとは感じていない」と答えた。

2013年12月に視聴者から寄せられた意見

2013年12月に視聴者から寄せられた意見

「特定秘密保護法案」などの重要法案審議に国会中継が少ないなどの批判意見。女性芸人の海外での過激アトラクションのロケが危険すぎるとの意見など。

2013年12月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,318件で、先月と比較して10件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール76%、電話22%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性67%、女性30%、不明3%で、世代別では30歳代33%、40歳代22%、20歳代18%、50歳代15%、60歳以上9%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は625件【32局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、18件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

特定秘密保護法が可決・成立したが、国会中継が少なかったといった声や、報道番組や情報番組で批判ばかりしているといった声などが寄せられた。
また資金提供問題で都知事が辞任したが、資金提供を受けたほかの人物もいるのに、報道の矛先が彼にばかりに向かうのは、一種の「叩き」ではないかといった意見も寄せられた。
海外ロケで女性芸人たちに過激なことをやらせていたが、一歩間違えれば大事故につながるといった非難の声などが寄せられた。
また恒例の年末編成に対して、通常の番組を放送するべきだといった意見が寄せられた。
ラジオに関する意見は32件、CMについては36件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は101件で、前月より60件減少した。
今月は「表現・演出に関する意見」が29件、「低俗、モラルに反する意見」が14件、次いで「いじめ・虐待に関する意見」と「性的表現に関する意見」が8件と続いた。
「表現・演出に関する意見」では、バラエティー番組の中でタレントに離婚届にサインをさせたことに対し、「離婚を軽々しく扱っていて不愉快だ」「子どものことを考えているのか」という内容の意見が複数寄せられた。
そのほか、年末にスペシャル版などが多く放送されたバラエティー番組について、多くの意見が寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 臨時国会の中継があまり放送されていない。今国会は日本版NSC、社会保障改革プログラムなど重要な法案審議が目白押しな上に、特定秘密保護法という国の根幹に関わる法案が審議されているにもかかわらず、放送されていない。問い合わせても「ご意見としてうかがいます」と言われるだけで、中継しない理由を明確に答えない。公共性のある情報を提供する義務を負う報道機関として責務を放棄することと同義だ。ある種の疑念を抱かざるを得ない。

  • 特定秘密法案に反対する輩ばかりクローズアップしていた。賛成派も多数いるにもかかわらず、その人たちは登場させず、あたかも国民の大多数が反対であるかのような編集をしていた。更に、その番組の中に登場していた一般人にインタビューをするシーンがあったが、その人物は反対派NPOの代表だ。放送局側は当然、この人物を知っているわけだし、明らかに偏向報道を助長させる意図で登場させたとしか思えない。こんなことが許されて良いのか。

  • ニュースキャスターが同じ番組の中でスポットCMに出ている。局アナではないにしろ、そのようなことは前代未聞だ。放送倫理に反している。タレントをニュースキャスターに使うほど視聴率がほしいテレビ局なのか。ニュースの信ぴょう性すら疑いたくなる。

  • ニュース番組でツイートを流すのだが、明らかにおかしいものを表示させている。例えば、「○○さんこんばんは」であったり、まじめなニュースをやっている最中に絵文字を使ったツイートを表示させていたりする。こういうツイートを表示させることはやめていただきたい。

  • 内閣の支持率等のアンケートを報道しているが、電話によるアンケートしか行っていないことは、問題ないのか。テレビ・ラジオ・電話などは概ね50代以上の方が利用しており、40代以下はインターネット・スマートフォン・タブレットなどを使用している。また、それらを合算した普及率は少なくとも50%、は超えている筈だ。したがって、今後の世論調査はインターネット・スマートフォン・タブレットなども活用するべきだ。

  • 知事の5000万円の資金提供問題を都議会が追及する場面が報道されたが、この報道からは資金提供自体が問題なのか、借用書がないことが問題なのか、それともそれ以外が問題なのか、全く理解できない。資金提供の流れでどういうことが起こっていたとしたら違法であるのか、明確な報道がなされていない。何となく知事の様子や借用書の体裁が「怪しい」から「これは追及しなければ」という雰囲気さえ感じる。確かに政治資金や選挙に関し違法行為を政治家がしていたとすれば、報道機関はこれを追及するべきであるし、民意も同じであろう。しかし、違法性が明確に視聴者に伝えられない中で追及している状況があるとすれば、それは単なる「叩き」でしかない。現在の知事の表情を画面を通じて見ると、明らかに尋常ではなく、このままでは病気や死に至るのではないか。報道機関には人をそこまで追い詰めるだけの「力」があることを念頭に置いて、報道のあり方を考えてほしい。

  • 連日、都議会から追及される都知事の話題を取り上げているが、そもそもこの件はある組織絡みで出てきたニュースである。他にもその組織絡みの問題を抱えた議員がいるではないか。なぜ都知事の話題だけにスポットを当てるのか。テレビは偏ることなく、色々な側面からニュースを伝えるべきだ。

  • ツイッターで、悪ふざけをしている写真を投稿した人間を非難することはともかく、野球選手や大学教授など、口を滑らせてツイッターが炎上した人まで、あたかも犯罪者のように晒し者にすることはいかがなものか。抑止のために、炎上行為に加担したりせず、犯罪行為などを見かけたら警察や管理者に通報するように呼びかけるべきではないのか。他のSNSでも、炎上行為に便乗することはマナー違反だ。なぜ、それをマスコミはもっと報道しないのか。

  • 衆議院議員を辞職した元県知事について盛んに報道していたが、いかにも都知事選出馬ありきの話題に終始していた。まだ都知事は辞任していないのに、世論を誘導するような危険な報道はやめてほしい。

  • 街の声で公務員のイメージは「楽をしている」「クビにならないから」といった意見を流していた。家に帰ってニュースを見ている公務員の方々を苛めるような放送をして何が楽しいのか。こんな放送を認めることは、サービス残業が当然だという風潮を作りかねない。私企業のサービス残業問題、いわゆる「ブラック企業」の批判もできなくなる。その論法であらゆる公益企業もそのような批判に晒される危険がある。

  • 容疑者のプロフィールを報道するときに「派遣社員」と表現することがある。どうして「会社員」と言わないのか。正規社員を「会社員」と表現し、派遣と区別するが、なぜなのか。派遣社員だから罪を犯す、派遣社員は信用のできない犯罪を起こしやすい人と報道機関は見下しているのか。

  • 「日本メディアこそが取り上げるべき事件だ」「日本の芸能界は本当に汚い。女性の夢を奪うのか」――これは、日本のミスインターナショナルが「芸能事務所幹部にいやがらせをされた」と訴えた問題への海外の記者の反応だ。疑惑の段階だが、普通であれば大々的に報道されるだろう。しかしこれがあまり報道されないのは、「男性が芸能事務所の幹部であるため」ともいわれている。マスコミはこのように、報道したくないものは「報道する価値がない」という建前で国民から隠す。「大事件ではない」「確実ではない」と理屈はあろうが、報道しないことが不自然なケースも多い。この件は海外では大きく報道されている。日本のマスコミも正しく報道し、いやがらせや脅迫を容認しない風土をつくるべきである。相手によって対応を変えているのはおかしい。

【番組全般・その他】

  • 女性芸人4人が海外で過激なアトラクションを強引にやらされていた。橋の欄干に立たせ、背中に火を付け、そこから川に飛び込ませる。訓練を受けたスタントマンがやるようなことを素人にやらせるのか。また高温に設定したサウナ小屋に4人をおしこめ、クレーンで高く吊り上げる。我慢できなくなった者から川に飛び込むなど、心臓麻痺を起こしてもおかしくない状況で、彼女たちの苦痛に満ちた表情や仕草をおもしろがる演出だった。子ども達や家族と一緒に見られる番組だったのに、過激ないじめを見せられた思いだ。

  • "ひな壇にお笑い芸人が並ぶバラエティー番組"は、身内で喜んで騒いでいるだけで、面白くもなんともない。昔の芸人は、自分の芸で笑わせた。こんな"ひな壇話術"ではなく、真の芸で見せてほしい。また、最近は余りにも日本の時代劇が少なくなっている。若い人たちの多くは、大げさな顔付や大声を出す韓流のような表現こそが演技だと勘違いするのではないか。日本の時代劇は、抑えた声、静かな声で演技することが本来の演技だったはずだ。これからは、時代劇を増やして、"ひな壇方式のバラエティー"はなくしてほしい。奥ゆかしい日本人の心が取り戻されることを願っている。

  • 最近のテレビ番組は「ホームページ」や「ツイッター」などで意見を募集することが当たり前になっているが、インターネットや携帯電話を持たない人の意見は無視するのか。郵送やFAXの意見や情報も並行して募集するべきだ。

  • ボクシングの王座統一選で、負けたら「王座陥落」と説明し、危機感を煽ったが、負けたにもかかわらず「王座防衛」という、番組の説明と違う結末になった。翌日の会見によると、事前の「ルールミーティング」で、負けでも「防衛」できると決まっており、本人も承知していたそうだ。陣営が知っていて、中継の放送局が知らないはずがない。負けても防衛すると知りながら「負けたら王座陥落」と、危機感を煽ったのは詐欺に近いのではないのか。

  • 片田舎の数軒のみがメニューのひとつとして出しているものを、県民誰もが食べている郷土料理であるかのように錯覚させる内容だった。20年も前からこのあたりに勤めているが、そんな料理は見たこともない。不愉快だ。同じようなことが別の回でもあった。たった1軒のみが扱っているものを、県民全員が愛しているような誇大な放送が行われていた。

  • 開局55周年記念で「55時間テレビ」と題してスペシャル番組を連日多数放送しているが、一部の番組が録画できないという不具合が生じている。これは、DVDデッキの機種によって正確な番組名を把握できず、予約録画などが難しくなっているためではないのか。他局の「24時間テレビ」などではこのようなことがあったとは過去に聞かない。年の瀬が近づいており、年末年始は長時間番組が多く放送されるので、各局気をつけてほしい。

  • アメリカで起きた事件を流すコーナーで、警察官が一般市民を殴り殺したときの防犯カメラの映像を放送していた。映像は白黒ではあるが鮮明で、音声(殴る音や、助けを求める声や悲鳴)も生々しく、見た後から吐き気と頭痛が起きた。あそこまでの暴力的な映像を、朝の情報番組で流す必要はあるのか。あまりにもやり過ぎだ。不特定多数の人間が見ていることを考えてほしい。

  • 男性芸人が肛門に指を入れられて性的興奮を感じるかどうかを試していた。よつんばいになって大きな声で叫んでいた。深夜番組とはいえ、あんなおぞましいことを公共の電波にのせるなら、そのうち男性同士や男女のセックスも放送しそうだ。

  • 一般の男性をゲストに呼んで、タレントたちが彼らの「今まで交際した人数当てクイズ」なるゲームをしていた。年齢や職業、出身校、果ては容姿まで見て、「この人は多そう」「この人は少なさそうだ」と言い合うことはいかがなものか。揚げ句には一人の男性に向かい「この人は絶対0人だよ」などと、ひどい意見を述べていた。決めつけも甚だしく、内容自体もくだらない。こんな番組を作ったスタッフの神経を疑った。タレントたちの笑い声も不愉快でしかなく、怒りを覚えた。

  • 北国の温泉から中継があった。「気温はマイナス1度」と伝えたすぐ後のことだった。雪の中、リポーターは衣服を脱いでリポートを始めた。早く温泉に浸かりたいと言うリポーターに対し、司会者はその様子を楽しむかのように、あれやこれやといじり始めた。寒さに震えている相手を、である。しかも一度温泉に浸かった後で、もう一度(温泉から)出てリポートするように言っていた。度を越えた"いじり"は、番組のための"味付け"ではなく"悪ふざけ"にすぎない。

  • 東京出身の女性の地方都市での奮闘記に、たくさんの人たちが励まされたと思う。家族や結婚、仕事について、考えさせられた。押しつけられることなく胸に温かい感情が湧いた。できればもっと長い時間の特集をしてほしかった。

  • タレント夫婦の「離婚」を笑いのネタにした。女性タレントは明らかに嫌がっているのに、番組内で離婚届に判を押させるという暴挙だった。彼女がずっと出演している番組なので、「いや」と言えないことを逆手に取った卑劣な行為である。例え、数日後に離婚届に判を押すという約束を夫婦間でしていたとしても、衆人環視の中で、さらには公共の電波に乗せるということはあまりにもひどい。見るに堪えなく、不快な気持ちにさせられた。

  • 埼玉県民を面白おかしくいじるような内容だった。最初はネタとして笑って許せたのだが、最近はエスカレートしてきている。今回は「東横線・副都心線の直通でオシャレな街に田舎者の埼玉県民が入ってくる」と、県民に対し害虫のような扱いだ。ここまで蔑むことが出来るものなのかと驚いた。他県の視聴者は面白のかもしれないが、埼玉で生まれ育った私としてはとても不快だ。番組の影響かはわからないが、街中やSNSでも埼玉県民を馬鹿にする発言や書き込みも多く見られるようになった。今後、埼玉に限らず、様々な都道府県民を馬鹿にするコーナーはやめてほしい。

  • フィギュアスケートのソチオリンピック代表選手6名が決定したが、ある選手ばかり特集し、男子優勝者と2位の選手にはほとんど触れなかった。メダルが期待できる2人を無視した内容で、まるでその3位の選手が優勝したかの番組構成に憤りしか感じない。優勝者と準優勝者をおざなりにした内容は決して許せない。

  • 年末になり通常の番組を打ち切って、特別番組が放送されるようになった。せめて27日(金)までは通常の番組を放送するべきだ。毎週楽しみにしている番組に代わり、くだらない芸人が出演する下品で低俗な番組が多くなる。これからお正月過ぎまでこの状態が続くかと思うと不愉快だ。

  • 男性タレントが、突如「この話を聞いた人(視聴者)は、霊がドアをノックしにくるので、その際、一切声を出さず、心の中でとある呪文を唱えなければ、その人に不幸が訪れる。実際、自分も話を聞いたときにノックがあり、思わず声を出してしまった友人は、とんでもない不幸にみまわれた」という話をした。何の前触れもなく、聞いた人が不幸になる、というような話を公共の電波で流すことは、例え冗談でも不愉快だ。マンションなど、隣の部屋をノックするなどのイタズラも出ている。世間には不安神経症を患っている方、一人暮らしで心細い方など、いろいろな事情の方がいる。気をつけてほしい。

  • 年末のバラエティー番組だが、低温花火を芸能人に打ち付ける場面があった。花火は簡単に子どもでも手に入るものだ。このような行為は、低温花火だから安全なのか。果たして、笑いとは危険を投げかけたときのリアクションで取るものなのか。火花が出るものが顔に当たった場合、例えば目に入ったらどうなるのか。それでも安全と言えるのか。安全な花火はこの世の中にあるのか。このような番組が全ていらないとは思わないが、もう少し演出を考えるべきだ。

【ラジオ】

  • タイについての観光番組だった。タイは政情が不安定だが、この日の番組では、現地在住の方に電話を繋いで「今、どんな状況ですか?」と聞いていた。しかし、その状況は、どう考えていても当日とは違ったものだった。事前に録音したものだったのだろうか。それなら、電話で「今の状況」を聞くという演出はおかしいのではないだろうか。この週は、特に状況が刻々と変わっていて、テレビなどでは生中継で現状を伝えていたから、違和感があった。政治的に混乱している国の情報は、たとえ観光番組でも正しく伝えてもらいたい。

  • "今日が何の日なのか"を解説するコーナーで、日本が国連に復帰した日について「大きな戦争をしでかした日本が、国際社会に復帰した日」というコメントをしていた。このような個人の考えを言うことはいかがなものか。「戦争をしでかした」という発言は、自虐史観に基づくものであり、放送法の「中立性」に反するのではないか。特定の思想を刷り込もうとしていると言われても仕方がない。

【CM】

  • CMの途中で出て来るバニーの格好をした中年のおじさんを差して「変態」と言うのがすごく不快だ。中高年の人や、中高年の人のコスプレを馬鹿にしたような内容が気になる。誰が何を着ようが、犯罪になる格好でないなら勝手だと思う。ウケ狙いにしても、差別的だ。

  • 携帯ゲームのCMが最近やたらと放送される。子ども向けの番組でも放送している。朝から晩までずっと放送している局もある。最近は携帯ゲームなどで無料のはずが高額の料金を請求されるトラブルが増えており、消費者センターも注意を呼び掛けている。このようなCMは深夜だけにしてほしい。

青少年に関する意見

【表現・演出に関する意見】

  • タレントに離婚届を書かせるという企画は見ていて不愉快だった。結婚ならまだしも、離婚を番組のネタにして、しかも笑いをとるためにということはいかがなものか。「役所に出していないのだから」や「所詮番組のネタだから」などのレベルではない。子どもでも見る番組だ。離婚届を書くということが、笑いやゲームのようなイメージを植え付けかねない。

  • 「世界の怖い話」を集めたスペシャル番組を見たが、青少年の恐怖や不安を煽る番組は徹底的な検証をすべきである。このような番組により、オカルトめいた宗教に興味を持つ人々もいるだろう。オウム事件をマスコミは忘れないでほしい。

  • 料理の金額を推理し、負けた人が全額を払うという企画は、賭け事と何が構造的に違っていると言えるのか。子ども達が成長していく過程の中で、こうした軽々と賭け事を楽しむ映像を身近に感じることは、公共の放送としての基本姿勢に疑問を持つ。

【低俗、モラルに反する意見】

  • 各局とも「景気回復」という浮ついた話題ばかりが目立つ。この番組の特集では、景気回復で中古の高級ブランドが売れる様子などを映していた。ある女性が全く同一の高級バッグを8個も買い取り業者に持ち込み、50万円近い現金を受け取ったが、「このバッグは水商売でお客さんから貰ったものだ」と平然と言っていた。敢えて同じバッグをねだったらしい。このような特殊な方法で安易にお金を手にする様子を放送することは、青少年に対して楽をしてお金は儲けられるという印象を与えるので有害だ。

【動物に関する意見】

  • ドラマの中で、金魚鉢を割るシーンがあった。まさか生きた金魚が本当に入っているとは思わなかったが、その直後に床をペタペタしている金魚の姿があった。昼間、子どもも見る可能性がある時間帯の演出としていかがなものか。

【要望・提言】

  • テレビドラマの新作が発表されたが、また刑事物だ。午後の再放送から夜まで、殺人事件の起こる刑事ドラマばかりだ。刑事物のアニメもあり、死体を見ない日はない。こんなテレビドラマの状況は正常なのだろうか。「しょせんテレビドラマ」といってしまえばそうかもしれないが、こんな状況で育つ青少年の今後が心配だ。もう少しドラマで扱う職業に変化をつけて、死体の出ないドラマを多く制作してほしい。

【危険行為に関する意見】

  • バラエティー番組で、芸人と女優が、釣った魚を屋外でフライにするシーンがあった。熱い油が入っている鍋に、魚を勢いをつけて投げこんでいた。もしコンロのガスに引火したらどうするのか。子どもも見ている番組であり、危険極まりない。キャンプ場や河原で悪ふざけして真似したらどうするのか。

第17号

2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見

2014年1月8日 放送局:関西テレビ、テレビ熊本

審議の対象となっていたのは、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党の比例代表選挙立候補予定者だった太田房江元大阪府知事の選挙準備活動だけを紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、自民党の比例代表選挙の渡邉美樹候補が著名経済人としてVTR出演している企画を、参議院選挙投票当日の午前中に放送したテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)の2つの番組です。
放送と選挙の関係について、委員会は3年前の意見(委員会決定第9号)や、昨年4月の「委員長コメント」でも注意喚起を呼びかけてきました。それにもかかわらず、選挙にかかわる同様な問題が再び生じたことを、委員会は重く受け止めて、審議を行ってきました。
今回の意見で、委員会は、この2つの番組について、選挙の公平・公正性を損なう放送倫理違反があったと判断しました。その上で、選挙に関する放送倫理違反の問題の再発を防ぐために、放送業界全体において共有してほしい事柄として、「こころの秤(はかり)をイメージしよう」「組織や陣形を整えよう」などの提言を盛り込んでいます。

2014年1月8日 決定の通知と公表の記者会見

通知は午後1時から千代田放送会館7階BPO第一会議室で行われた。
また、午後1時45分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には27社49人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
詳細はこちら。

2014年4月11日
【委員会決定を受けての関西テレビとテレビ熊本の対応】

標記事案の委員会決定(2014年1月8日)を受けて、当該の関西テレビとテレビ熊本は、それぞれの対応と取り組み状況をまとめた報告書を当委員会に提出した。
4月11日に開催された委員会において、両局の報告書の内容が検討され、了承された。

関西テレビの対応

全文pdf

目 次

  • 1.委員会決定の報道
  • 2.委員会決定内容の周知徹底
  • 3.オンブズ・カンテレ委員会と番組審議会への報告
  • 4.再発防止に向けた取り組み
  • 5.おわりに

テレビ熊本の対応

全文pdf

目 次

  • ◇委員会決定後の対応
  • ◇選挙の公平・公正性に関するBPO研修会の開催
  • ◇具体的対策の実践強化
  • ◇今後の会社全体の取り組みについて
  • ◇弊社の意識改革として