第127回 放送と青少年に関する委員会

第127回 – 2011年11月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第127回青少年委員会は11月22日に開催され、10月16日から11月14日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、中高生モニター報告及び今年度の調査・研究の発表及びシンポジウムの出席者等について審議した。

議事の詳細

日時
2011年11月22日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、今月の視聴者意見の概要等について報告を受けた上で、審議対象となる番組はなかった。

中高生モニターについて

11月のテーマは「報道・情報・ドキュメンタリー番組」の企画書作りで、27人から報告が寄せられた。
まず、報道・情報系の番組では、中高生たち10代の知りたい情報が少ない、難しい問題を分かりやすく解説してくれる番組が少ないのでそうした番組を作りたい、もっと世界のニュースに目を向けてほしいという提案などが、9人から寄せられた。次にリポートの多かった企画がスポーツの分野で、7人から提案が寄せられた。なかでも、なでしこジャパンの活躍から、女子2人からサッカー番組の企画が寄せられた。また、政治討論番組や視聴者参加型の討論番組の企画も4人から届いた。東日本大震災関連では、復興関連のキャンペーン番組や、学生と記者で作るドキュメンタリー番組の提案も寄せられ、そのほか、ユニークな地域おこし企画も寄せられた。

【委員の主な所感】

  • 中高生が参加できる番組が少ない現状から、自分たちが参加したいという気持ちの現れた企画が多かった。また、面白い、センスのあるネーミングのタイトルには感心させられた。
  • インターネットやSNSなど、テレビと多様なメディアを組み合わせるという若々しい発想が面白かった。原発事故以降、科学的な分野への関心も高く、専門家と非専門家の溝を埋めたいという企画も特徴的だった。
  • ニュース・情報・ドキュメンタリー番組の企画というのは、中高生にはあまりひきつけられるものが少ないテーマだったかも知れないが、青少年にもっと社会的な問題に目を向けさせるような番組作りが、放送局に求められているようにも感じた。
  • 自分に関心のあるテーマばかりを求めているようで、食べ物を例にとると口当たりのいいものばかりを食べるのではなく、たまには硬いものを食べて栄養のバランスをとることが必要なように、難しい問題に挑戦することも大切だと思う。
  • 世界に目を向ける企画の一方、地域に密着した企画、関心のあるスポーツ企画、政治問題など分からないことを解説してほしいという企画など、やや社会問題に対する考え方がバラバラな印象だったが、どの企画にも共通して視聴者参加をうたっているのが印象的だった。
  • 世界が見えにくくなっている時代を反映して、若者たちはもっと世界が見えやすくなるような番組が見たい、作ってほしいという要望が強かった。そんな中で、対話型・参加型の企画を考えた人たちは、その考え方をぜひ伸ばしていってほしい。
  • 報道という社会問題を何ヶ月かトレーニングした成果からか、東日本大震災を取り上げた高校2年生男子の企画はすぐにも実現しそうで、何人かの人たちは非常にいいセンスを持っていると感じた。反面、気になる傾向がひとつある。それは「受け身思想」だ。分かりやすさ、見ていてさわやか、くだいたニュースなど、「心地よいもの」「抵抗を感じずスンナリ入るもの」は身にならないと思う。自分の頭で考えて、方向性を見いだすことを心がけてほしい。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント。

企画1.『希望の光を映すということ』 (仙台・高校2年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)
先月のニュースで、若者のテレビ離れが深刻化していることを知りました。これからの社会を担う存在である私たちは、より多くの「世界」を見なくてはなりません。しかし、テレビを通した間接的な接触では感情移入に限界があったり、簡単に目を背けたりすることもできます。ならば、直接若者を被災地に連れて行こうではないか、このような考えのもとで、今回私は東日本大震災をテーマにしたドキュメンタリー番組を企画してみました。
この番組のいちばん重要な趣旨は、「学生による情報発信」です。確かに被災地復興の様子を見学したり、地元の人からお話をうかがったりしますが、彼らが得た情報や感情といったものを地元へ持ち帰り、学校や公民館などで後日発表するという活動を、震災を報道した記者たちと行います。これまで見てきた東日本大震災のドキュメンタリー番組では、そのほとんどが「被災者を取材する」、もしくは「東日本大震災の発生メカニズムや津波被害」などでした。
私の企画においてはそれらを逸脱し、「学生と記者」が番組の主人公となるのです。この番組の目的は、若者のテレビ離れを防ぐだけでなく、「メディアの存在」を再び理解してもらうことでもあります。 さらに私が番組内で求めたいことは、「学校で震災を深める活動を行う」ということです。もちろん記者たちも参加します。彼らはきっと学生たちの考える「震災」に驚くに違いありません。「地震の予知に関する研究を将来してみたい」とか、「自分が親になったら子どもに東日本大震災のことを話したい」など、社会を明るくする希望の光が当たり、いっぱいに広がっているのです!
生徒と記者の交流を描いた作品は、「今」を伝えるだけでなく、視聴した学生、出演した学生が「未来」と向き合うようになり、同時に記者の使命、テレビの使命を改めて考え直すことのできる重要な機会を、気づかないうちに与えているのではないでしょうか。

【TBSテレビ 報道局『報道の魂』担当プロデューサーの感想】
この番組案に興味を覚えました。テレビを「社会に開かれた存在」にするための、いくつかの方法論を提示しているからです。
まず「学生と記者が一緒に被災地を回り、彼らを主人公に番組化する」という点がよい。「被災地そのもの」ではなく「被災地を回った側」を軸にすることで、これまでと違った震災報道が可能になるという発想はなるほどと思いました。取材した側の人間性が問われる番組、ともいえるからです。
また「学校や公民館で、被災地取材の成果を発表する」という点もよい。番組という枠を超えて、人々に直接語りかけることで、生の反応が返ってくる場が出来上がるからです。普段、私たちテレビ屋は、こうした経験をなかなか出来ていないのが現状です。
総じて、テレビは「享受するもの」ではなく逆に「利用するもの」という考えのもと、この企画書は書かれており大変に好感が持てました。

◆ 企画2.『フィロソフィア』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】(抜粋)
自分が疑問に思う「科学の分野」のことを自分が番組に参加して解決していく。だから、家族で参加とか、友だちで参加とかもできるし、幼児から大人までだれでも見てくれる。
キャスターにはタモリさん、解説者には池上彰さんや大学の先生、専門家などを起用する。
【内容】

  • 身近な疑問を募集する。
    (例) ・畑の向こうで走っている車がどうして止まって見えるのか?
        ・救急車の音は通りすぎるとどうして変わるのか?
        ・遊んでいるのと勉強とで1時間の長さがどうして違うのか?
  • それを実験しながら、分かりやすく説明する。質問してきた人が番組のスタッフと一緒に実験したり、リポートしたりする。そのときの内容がよく分かる専門家や、池上彰さんとかに解説してもらって、納得してもらう。
  • おまけとして、中世ラテン科学やイスラーム科学の錯覚とかをひとつずつ紹介していく。

◆企画3.『10代の10代による10代のための討論会』 (神奈川・中学3年女子)

【ねらい】(抜粋)
日本は先進国としては若者の投票率が大変低いです。それは若者が政治に関心がないことの表れです。これからの日本を担っていく私たち子どもに堅苦しいイメージの”政治”に少しでも興味を持てるよう中高生向けの政治・国際情勢についての番組を作りたいと思います。
【内容】
キャスターにはパックンを起用、解説は大谷昭宏さんにお願いします。スタジオには中高生を数人呼び、大谷さんに解説してもらったあとに討論会のような形で生の意見を出し合ってもらいます。見る側も、自分と年の近い子たちが意見を述べているので分かりやすいと思います。それによって自分の考えを持てると思います。
放送時間は家族が揃う夕食時間帯がいいと思います。その時間にこの番組を放送すれば自然と食卓の話題にもなり、話題にもついていくことができ自分の意見も言えるのではと思います。

◆企画4.『世界のNewsに目を向けて』(茨城・中学2年女子)

【ねらい】(抜粋)
私が考えている番組は、小学生以上の若者たちに世界のニュースを知ってもらおうというもので、放送時間帯も小中学生に負担をかけない19:45~20:50を考えました。生放送で、キャスターには村尾信尚さんを起用。解説者は政治、経済、国際、社会、科学、文化、スポーツなどの専門家を考えています。
【内容】
内容は、海外のニュースを誰もが見ても分かりやすく報道する番組で、また、面白いニュースや深刻なニュースまで報道する番組です。私は、パソコンで海外のメディアを見ます。けれど、日本では海外の大きなニュースしか報道されていません。内容によってはあっさりと終わってしまうニュースがあります。しかし、私は「あっさり」と終わらせたくないのです。だからこそ、詳しく説明してほしいために、この番組を企画しました。

◆企画5.『阪堺電鉄に乗ろう♪~地域と共に元気を取り戻そう~』(大阪・中学3年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)
私の大好きな阪堺電鉄は、大阪に残る唯一の「ちんちん電車」です。しかし、いつも、廃止の話が絶えない会社です。そこで、こんなプランを考えました。(1)視聴者から阪堺電鉄の再生につながる、計画やイベントを募集→(2)阪堺電鉄へプレゼンテーションする→(3)タレントを利用して、採用された計画・イベントの準備から開催までをレポートする。
ただ、タレントを使った単発イベントだけでは、瞬間的な効果に終わるので、「阪堺電鉄ファン」をつくりだすことを目標とする必要があります。阪堺電鉄には、国内現役で最古の電車が走っています。これは、もう、一番の「売り」なんです。乗っているだけで、癒されます。また、沿線には、通天閣、住吉大社などの観光ポイントがある他、昭和の香りを感じられる町並みがあちこちに見られます。地元の中小企業や商店も巻き込んで、自治体からも援助が出るような長期的な計画が実行されていく様子まで、取材を続けます。阪堺電鉄が観光電車としての面を確立するということは、大阪や堺の町おこしになるのではないかと思います。キャスターには浜村淳さんか石原良純さん(鉄道ファンだから)。取材者には笑福亭鶴瓶さんか桂小枝さんを考えています。

【日本テレビ 報道局『NEWS ZERO』担当プロデューサーの感想】
力作揃いで、思わず唸ってしまいました。『フィロソフィア』は番組の完成形が目に浮かびましたし、『10代の10代による10代のための討論会』や『世界のNewsに目を向けて』には、中学生としての問題意識を感じました。こういう企画書を読むと、選挙権の年齢をぐっと引き下げた方が日本のためになるのでは?とさえ思います。
視点として「面白いな」と感じたのは、『阪堺電車に乗ろう♪~地域と共に元気を取り戻そう~』です。テレビは全国放送だけではありません。地域密着、町おこし…テレビをツールとして自由に操る発想に、新しい可能性を感じます。
一方、全ての企画書を読み終えて思ったのは、「テレビは若い世代の期待に応えられているか?」ということでした。企画書からは今のテレビ番組に対する批判や不満も多く読みとれます。私が担当する『NEWS ZERO』は若い世代にきちんとメッセージを届けられているかどうか?みなさんに聞いてみたいと思いました。

◆企画6.『任せて!日本は僕らが変える』 (東京・高校1年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)
私は未だに政治の仕組みがよく分かっていません。”与党””野党”など小学校から習って来たけれど、それはほんの表面的な部分だけであって、ニュースを見ていても分からないことがたくさんあります。高校生になってから改めて勉強するのもいいと思いますが、私は小学生の時から政治を詳しく学べる番組に出会っていたら、ニュースの見方も変わっていたと思うので、以下の番組を提案します。
番組のテーマは、「今の日本の政治について」です。しかし、基本的な仕組みが分からない子どもがほとんどだと思うので、「ザ・ニュースペーパー」の方々にコント風に演じてもらい、そのVTRを見た後、解説者と爆笑問題にいろいろと突っ込んでもらう。あと、町や学校で小学生に「現在の日本についてどう思うか?」などの質問をし、将来の日本を担う子どもたちのさまざまな意見をインタビューする。スタジオには小学生を5~6人呼んで、自由な感じの雰囲気で意見を言ってもらい、キャスターの爆笑問題のお2人とともに考えます。

【フジテレビ 情報制作局『東日本大震災特別番組』担当プロデューサーの感想】

今回は「報道・情報・ドキュメンタリー番組」ということで、大別すると「ニュースを分かりやすく」、「専門家を呼んで詳しく」という内容の企画書が多く寄せられていました。世の中の動きに関心を持つからこその企画、興味深く読ませていただきました。
その中で、目を引いたのは『任せて!日本は僕らが変える』です。この番組企画も、「ニュースを分かりやすく伝えよう」というものの一つですが、タイトルに企画者の心意気が伝わってきます。既存のニュース・情報番組を、もっと分かりやすく、こうしたら見てもらえる等の企画が多かった中、この企画は「こうしたい」という思いが伝わってきます。小学生に特化している内容なので、実際に制作するには難しい点もあるかもしれません。それでも、「任せて!」「変える」のように、制作者の「こうしたい」思いを持ち続ける、番組制作の原点が表れていると思います。

◆企画7.『真実の時間』 (静岡・中学3年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)
本当は犯人ではないのに容疑をかけられたり、犯人のように大げさに過去を暴いて報道されたりするのをよく見かけます。一度犯人のようにされてしまうと、本当はやっていなくても、どうしてもそういう目で見てしまうし、容疑が晴れても実はこの人が…と思ってしまうことが、私は多々あります。きっと私以外にもそう思っている人もいるのではないでしょうか?ですから、報道で真実を曲げたり、大げさにして伝えたりしないために、この企画を考えました。
まず、実際に事件など起こったと見られる現場に取材に行き詳しく調べます。また、容疑者をよく知っている人にインタビューしたり、現場の目撃者にもよく話を聞いたりします。できれば、容疑がかかっている人に直接インタビューすることができれば本音も聞けるし、容疑者の証言に矛盾があれば気づきます。また、現場に行くときには犯罪に詳しい専門家や心理学者に同行してもらい、その状況で人間ならどう行動するかも解説してもらえばより分かりやすいと思います。
マツコ・デラックスさんと安住紳一郎さんをキャスターに起用します。選んだ理由は、マツコさんは偏らず何事にもはっきり言うところがいちばんです。この番組はより真相に近づくこと、見ている人にいかに本当のことを、できればありのままに伝えることが重要なので、偏ったことを言わないマツコさんがキャスターなら良いと思いました。安住さんはてきぱきと進めて全体をまとめるのが上手なので、見ている人に分かりやすく説明してくれると思ったからです。また番組はできれば生放送で、視聴者からファックスなどで意見も聞けたらいいと思います。

【テレビ朝日 報道局『報道ステーションSUNDAY』担当プロデューサーの感想】
『真実の時間』…大変骨太な意義のある企画だと思います。無実であるのに犯罪者として扱われてしまった可能性のある人物について、一つ一つ事実を検証して真実に迫っていくことは、テレビがやらなければならない重要な役目です。その番組キャスターにマツコ・デラックスさんをキャスティングしたのが、大変いい目の付け所だと思いました。バラエティ番組などの鋭いコメントで人気の高いマツコさんですが、発言を丹念に聞いてみると、弱者の側に立って社会の問題を指摘するコメントが数多くあります。マツコさんとタッグを組むのが実力派アナウンサー・安住紳一郎さんというのもいい狙いです。また、事件の現場にこだわって、専門家とともに取材し真実に近づくという姿勢も大切なことだと思いました。こうした志を持った方と、将来テレビ制作の現場で出会うことができたら嬉しいですね。

◆企画8.『こんなのはじめて!オモシロNEWS』(東京・中学3年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)
最近のニュース・報道番組はすべてが似たような感じで、一つだけでいいような気すらします。あんなにいっぱいニュース番組があるんだったら、一つくらいふざけていてもいいと思い、考えた企画です。
コンセプトは、学校から帰ってきた学生たちが見て、ちゃんとタメになりながらも笑って疲れが吹き飛ぶような番組です。しかし、ふざけすぎだと思われても嫌なので、主に大人たちが通常のニュースを見る時間とはあえてズラして午後6時台・30分に設定しました。
番組では、通常のニュース番組ではなかなか取り上げないような”ふざけたニュース”を思い切りクローズアップしたり、あちこちの番組でも取り上げたりしているようなニュースでも、ツッコミどころがあったら”ツッコむ”番組です。キャスターは三谷幸喜さんを起用します。三谷さんはトークが上手く、知識量もありアドリブに対応でき、あらゆる人と接することが得意だと思ったので向いていると思いました。三谷さんがゲストも巻き込んでハチャメチャする気がするので、解説者には茂木健一郎さんを招き、三谷さんを押さえたり、正しい情報を伝えたりするのに適任だと思い選びました。

◆企画9.『THE BUNKA NEWS』(大阪・中学1年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)
私が企画するニュース番組は日本の文化だけでなく世界中の文化などを取り上げる総合バラエティー&”為になる”教養系の番組です。例えば、日本でいえば沖縄のエイサーダンスなど、日本に住んでいてもごくわずかな人にしか知られていない文化はたくさんあるはずです。文化を通して見えてくる経済や科学など、大人も子どもたちも見ることができて楽しい番組にしたいです。
最近なんでもかんでもパソコンで調べたら分かるといわれているけど、私たちは何を調べたらいいのか分かりません。興味を持つことができる、手助けをしてくれる番組を要望します。放送は土曜日の午前9時から60分でどうでしょう。キャスターにはみのもんたさん、アシスタントに夏目三久さんかABCの島田大アナウンサーを考えています。

【NHK 制作局『クローズアップ現代』担当チーフプロデューサーの感想】
『こんなのはじめて!オモシロNEWS』と『THE BUNKA NEWS』は、普段ニュースでは取り上げられない日々の出来事を、テーマを絞って伝える点が、個性的で面白いと思いました。
既存のニュース番組は、キャスターや出演者の人選、取材の切り口などが番組の個性を形成していますが、どの出来事をニュースとして取り上げるかの判断は大きく異なりません。金太郎飴のようなラインナップに、物足りなさを感じている人も多いのではないでしょうか。取り上げるニュースそのものの定義を問い直す2つの番組提案は、一視聴者として是非見てみたいと思いました。

[企画総評]
【テレビ東京 報道局プロデューサーの感想】
中高生企画は様々な工夫が凝らしてあり興味深く読んだ。特に「自分が考えるための番組」「自分が発信する番組」等、”当事者”感の強い企画に好感を持った。ただ、既視感のある企画が多い。もしかして、テレビで放送した同趣旨の番組は中高生に見られていないために、新企画として出てきてしまったのではないか。それならまだしも、テレビ自体が中高生に見られてないのではないのか…。総評するつもりが図らずも自分が考えこむ機会となった。

調査・研究について

2012年2月10日(金)に開催を予定している本年度の調査発表及びシンポジウムについて、事務局よりパネルディスカッションの出席者等の説明があり、委員会として了承した。

2011年10月に視聴者から寄せられた意見

2011年10月に視聴者から寄せられた意見

リビアのカダフィ大佐の血まみれの遺体映像や、中国の2歳の子供が車にひき逃げされ見捨てられていたシーンなどには、「報道の大切さはわかるが、伝え方を工夫してほしい」などの意見もあった。 記者会見で原発の除染水を政務官が飲んだことについて、飲ませたほうも飲んだ方も異常だとの批判があった。

10月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,337件で、9月と比較して667件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール69%、電話26%、FAX 3%、手紙ほか2%。性別は男性70%、女性26%、不明4%。年代は30歳代34%、40歳代24%、20歳代16%、50歳代 15%、60歳以上 8%、10歳代 3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は477件【35局】であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、38件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

10月の視聴者意見は1,337件と前月より667件減った。秋の改編にともなう長時間の特別番組への苦情や、海外からのニュース映像に関連した報道への意見などが多かった。
リビアのカダフィ大佐の血まみれの遺体映像や、中国の2歳の子供が車にひき逃げされ見捨てられていたシーンなどには、「報道の大切さはわかるが、もう少し伝え方を工夫してほしい」などの意見もあった。
記者会見で原発の除染水を政務官が飲んだことについて、飲ませたほうも飲んだ方も異常だとの批判があった。
“セックスレス”をテーマとした朝の情報番組には、賛否両論多くの意見が寄せられた。タブー視せず、取り組むことは良いことだと評価する声がある一方、朝の時間帯にはふさわしくないとの批判もあった。
バラエティー番組では、店の構えは汚いけれど味はおいしいという店を紹介するコーナーで、出演者の発言が老店主を馬鹿にしているようで不愉快だとの批判があった。
ラジオに関する意見は30件、CMに関する意見は20件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は129件で、前月より20件ほど減少した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が44件、次いで性的表現に関する意見が26件、残虐シーンに関する意見が11件と続いた。
低俗・モラルに反するとの意見および性的表現に関する意見については、複数のバラエティーやアニメ番組に対する批判意見が散発的に寄せられた。
残虐シーンについては、深夜アニメに対して「残虐でグロテスクな描写があまりに過激だ」とする批判意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • リビア関連のニュースが沢山流れている。重要なニュースであることは理解出来る。だがその放送の仕方に疑問を感じる。カダフィ大佐がどうやって殺されたか、誰が殺したか、その説明に血まみれのカダフィ大佐や、大佐に拳銃を突きつけている兵士の映像を流すことは本当に必要なのか疑問だ。朝や夕方は子どもも見ている可能性も大きい。映像の与える影響力の大きさを考えて流してほしい。今回の放送の仕方は、本来のテレビのあり方から逸脱しているように感じる。
  • 各放送局でカダフィの尋常ではない残虐な映像が流れている。突然、強制的に目に入るため、そのたびに心臓が苦しくなる。子どもたちにも良い影響があるとは思えない。どんなに大きなニュースであっても、そこから何が起こるか想像力を働かせてほしい。インパクトを与えることがすべてなのだろうか。このような映像が繰り返し流されるなら、ニュースさえ安心して見ることができなくなる。
  • 「中国の2歳の子どもが車にひかれるシーン」の映像が流れた。あまりに衝撃的でショックを受けた。テレビで放送するには不適切な映像だったのではないか。そのことをテレビ局に伝えたところ、「映像に関しては一定の配慮をした」と言われた。一体どこに配慮したのか、まったく分からない。
  • 福島県内1件、県外全国から6件の家庭の1週間の食材を調査したところ、福島県内の家庭からはセシウムが検出されなかったにもかかわらず、他県からは微量ながらセシウムが検出されたことを報告していた。福島県1件というサンプル抽出には何の科学的根拠もない。国民を馬鹿にしているのか。科学的根拠もないままに、都合のいい結果だけを報道する。国民の正しい理解を妨げる報道内容で、憤りを感じる。戦前の日本を思い出させるような、公平さを欠く報道姿勢だ。
  • 政府・東電対策室の記者会見で、原発での除染水を政務官が飲むというシーンがあった。その行為自体ではなく、報道姿勢に疑問がわく。「売り言葉に買い言葉」でこうした行為をする政務官がおかしいという報道だったが、問題はその場にいた記者の態度だ。 「安全というなら飲め」と責め立てたうえで、いざ飲んでみたら「それで証明になるのか」と騒ぎ立てていた。あの記者たちはいったい何をしたいのか。単なるいじめにしか見えない。その行為を容認・擁護する報道の姿勢には疑問を感じる。
  • テレビを見ていて不思議に感じたことがある。東日本大震災後に東京電力福島原発から出た放射線量を計っていた「SPEEDI(スピーディ)」のことがまるで報じられない。今でも可動し線量測定を行っているはずなのに、どこの局でも報じない。誰かが口にしようとした途端に、さえぎるような番組もある。天気予報と同じように放射線量も日々報道するべきだと思う。
  • 長野県で見つかった白骨遺体の特集について、報道に偏りが見られる。被害者が性転換した人物であるが故にか、以前の容姿と最近の容姿を何度も重ね合わせたり、同級生の感想についても以前から女性的な面があった等の報道をしたりと、殺害された事件とは関係のない報道が多い。被害者の風俗プロフィール写真や以前の写真を放送する意味があるのだろうか。被害者のプライバシーが無視されている。面白おかしく興味本位に報道しているだけで、事件の真相には全く関係ない。
  • 「世田谷で高放射線量の値が確認された」との報道は、福島県に住んでいる者としては、全国ニュースとして報道すべきことなのか疑問だ。福島原発の影響ではなく、床下のビンが原因とのことだ。報道には注意してほしい。「2.7~3.3マイクロシーベルトで高線量の値」と報道されたが、その程度は福島県では当たり前に庭先で計測される。そんな中で、小さな子ども達が日常を暮らしている現実を正しく報道してほしい。雨樋を除染して出た土を、6~7マイクロシーベルトの値が出ているにもかかわらず、庭先に置いておかなければならない福島の現状こそ報道してほしい。

【番組全般・その他】

  • 番組改編期の長時間特番はやめてほしい。3時間以上の特番が多すぎるし、中身のない番組ばかりだ。春と秋の改編期と夏の長時間特番、更に年末年始の長時間特番はやめてほしい。レギュラー番組の繰り下げや、一部地域ではローカル番組による特番の短縮放送も迷惑だ。
  • “セックスレス”がテーマだった。もう少し、性というものが与える影響を考えた番組作りはできないのか。人間にとって夫婦間であれ、性交渉は子どもが生まれ、大きな責任と多くのお金をかけて成人までしばりがかかる行為だ。「性交を生殖以外で捉えることは考えが狭い。ふれあいの行為」というゲストや一般に見られる考え方は誤っている。世の中は、ティーンエージャー女子向け雑誌からネット、テレビまで性情報が氾濫している。恋人でも夫婦でも性交しなければおかしいような価値観を醸成している。覚悟のない性交が育児放棄や虐待、しつけもできない親を生み出している。行為には結果がともなうという想像力がなく、簡単にこういう行為をしていることは、メディアが主導する安直なセックス情報が原因だ。
  • “店は汚いけれど味はうまい”という店を紹介する企画で、85歳の女性が経営する店に、芸人と女優たちが訪れカレーや焼そばを食べていた。店主に対する発言や態度がとても非常識で、不快だった。出された食事に対して「味が薄い」「水っぽい」などと連呼し、ただ店の評判を貶めるようにしか感じられなかった。一生懸命作った料理をバカにするのは失礼だ。夫婦の気持ちを考えると心が痛んだ。BPOへ意見しても何も変わらないかも知れないが、このような不快な思いをする番組がなくなることを願う。
  • 出演者の発言にピーという”自主規制音”を用いることが多い。何を意図してこのピー音を使用するかは分からない。視聴者に対しては失礼なことだ。広く電波を使って放送している以上、公共のものだ。その場にいる出演者やお客という限られた者のみ内容を知り得るということは公平ではない。放送する以上は隠してまで放送する必要はない。出演者の人権や尊厳を侵すものならば使用やむなしと思うが、それなら編集段階でカットするべきだ。
  • 放送で多用される「効果音」について意見を言いたい。まず、緊急地震速報と紛らわしいものは使わないでほしい。また、あらゆるジャンルの番組で不必要な擬音が目立つ。たとえば、動物番組で子犬が乳を飲む時「グビグビ」、子猫がヨチヨチ歩きする時には「ピョコピョコ」という擬音が使われるが、これらは不要だ。「動物」がテーマなのに、なぜ自然のままの映像と音声でやらないのか。今の放送関係者はコンピューターゲーム出現後に生まれ、騒音の洪水の中で育った世代なので、「静寂」という状態に耐えられず、「音」がなければ番組が成り立たないとでも思い込んでいるのだろうか。
  • 4時間半の特番だった。バラエティー番組のほとんどが、何らかの「ハラスメント」を含む、低俗なものであることは承知している。ただ、学力を試して序列をつけ、最低点をとった者に「××バカ」と烙印を押し、笑い物にするという番組は不愉快だ。この番組は、勉強を得意としない人に対して、侮蔑とからかいが露骨だ。笑っていいのだろうか。勉強が得意な人もいれば不得意な人もいる、勉強に存分に打ち込める家庭環境にあった人もいれば、貧困や暴力等、劣悪な家庭環境のため、勉強に打ち込むことができなかった人もいる。
  • 自然災害や寒暖差の大きい日が多いこともあるが、天気予報で、ただ天気を伝えるだけでなく、「台風がこういう進路をとって風の動きがこうなるから偏西風がこうなって寒気の動きが」と天気の仕組みを、素人でも分かりやすく解説してくれる気象予報士が増えた。気象の仕組みや知識が身につくので、災害時や気温の急変時以外でも継続してもっと色々教えてほしい。
  • この番組に限ったことではないが、ほぼ毎日、子役の女の子の話題をとりあげている。義務教育中の彼女が平日の昼間にイベントを行っていることを堂々とメディアで流していることに疑問を感じる。学校を休んで芸能活動することを容認して良い訳はなく、せめてメディアでの報道は控えるべきではないのか。

【ラジオ】

  • 私の住む大分は被災地から遠いということもあり、テレビのローカルニュースでは被災地の様子が十分に伝えられていない。私は出勤する前のひと時、ラジオ番組を聞いて有益な情報を得ている。たとえば被災地産の米の安全性について分かりやすい説明があり、安心できた。今後もためになる情報を提供してもらいたい。こうしたラジオ番組の良さを知らない人が多いことはとても残念だ。
  • 「手術などの時、医師に金を包むか包まないか」というテーマについて、女医を招き話していた。この女医は「断ると患者がショックを受けるので、気持ちとして金を受け取っている」と発言した。要するにこれは「袖の下=賄賂」の話である。賄賂を正当化するような発言は許せない。リスナーからのメールやFAXではすべて「袖の下」という表現がされていたのに、女医はこの言葉を一切用いず「受け取ってやっている」かのような態度だったので腹が立った。医師が金を受け取ることが当然であるかのような放送はやめてほしい。

【CM】

  • ハンバーガーの新商品CMが不快極まりない。生理的に受けつけず苦痛を感じる。CMの本来の目的を逸脱し、販売促進以外の別の目的があるように勘ぐってしまうほどひどい。CMを見てここまで嫌悪感を抱くことは今までなかったが、精神的苦痛に対する損害賠償を本気で考えたくなるほどの、ひどいものだ。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • トーク番組のレギュラーMCに小学一年生の子役タレントが加わったが、番組内容からして不適切ではないか。新婚の女性タレントらが夫婦生活について語るなど、下ネタのオンパレードだ。今の子はませていると言われるかもしれないが、そういう大人と一緒に出演するのはいかがなものか。子どもにふさわしくない番組で、とまどったりはずかしがったりすることを狙っての起用なら明らかな間違いだと思う。
  • アニメで葬式のシーンがあったが、子どもがすごく気持ちが悪いと言って今でも怯えている。常軌を逸したひどすぎる下ネタ、性描写、死者への侮辱行為など、夕食時のアニメとは思えない内容だった。大人の私でも不快だ。
  • たまにテレビをつけると、殺人事件を扱う番組が多いことに驚く。ニュースなら仕方がないが、ドラマなどでも殺人事件がないと話を作れないのか。子ども向けのアニメで毎回殺人事件が起こっているものもある。発想の貧困さ、創造力のなさを感じる。このような安易な殺人事件の乱用が、子どもに殺人事件は身近に起こる日常の出来事と思い込ませてしまうことになる。子どもが起きている時間はもう少し夢のある放送にしてほしい。

【性的表現に関する意見】

  • セックスレスをテーマにした情報番組の企画。基本的に真面目なスタンスなのだろうが、表現がかなり過激で、放送自体も青少年に悪影響を与えるような内容だった。特に時間帯が午前なので、子どもが見ていたり、病院や官公庁などではテレビがついていることもある。このような放送はその場の雰囲気を悪くしてしまう。深夜帯やBSで放送するなどの配慮をしてほしい。
  • 子どもも一緒に見ていた情報番組のランキングコーナーで、性行為描写のある映画のDVDを紹介していた。昼間から紹介しないといけない情報ではないと思う。見ていて不快だ。映画の宣伝でもそうだが、子どもがテレビを見ている時間に普通にセックス映像を流すのはやめてほしい。
  • 最近の深夜アニメは卑猥なものが多い。いやらしい発言が出たり、女性が下着を見せたり、何かと不愉快だ。また、これらのアニメに未成年の声優が多く見られる。いくら人気や実力があるとはいえ、このようなアニメに出演させることは不適切だ。何らかの制限が必要ではないか。

【残虐シーンに関する意見】

  • 深夜アニメだが、あまりにも猟奇的な殺戮、惨殺シーンの連続だった。また、最後は主人公をすべての人間が騙していたというオチで、しかも「続きは映画で」で終わった。あまりにひどい猟奇シーンと茶番的な内容で不愉快極まりない。モザイクなどはあったが、いくら深夜とはいえ、地上波のアニメとしてとても一般向けとは思えない。
  • リビアのカダフィ大佐死亡の報道について。ニュースでも死亡直前の映像を流していたが、このあと死亡したという情報も併せて考えると気分が悪くなった。事実だからいいという意見もあると思うが、見たい人はネットで見ればいい。子どもには見せたくないと思うが、あのように映像を垂れ流されては、見ないようにすることのほうが困難である。

【いじめに関する意見】

  • バラエティー番組の特番で運動神経の悪い芸人にスポーツをさせて、上手くいかない様子を笑いものにしていた。運動神経の悪さは先天的な資質が大きく影響しており、本人の努力によって改善できる幅が小さい。本人にはどうしようもない運動神経の悪さをバカにする企画は、倫理的に許されない。学校で運動の苦手な子どもをからかったりイジメたりするきっかけになるのではないか。
  • バラエティー番組の冒頭で、お笑い芸人が、最終学歴が中卒であることを侮辱するような発言をした。色々な事情があり中卒で頑張っている方々に対し、そういった侮辱的な発言は無礼であり、言葉の暴力だ。子どもの社会においてもいじめを芽生えさせることになりかねない。

【喫煙に関する意見】

  • 人気のアニメだが、メインのキャラクターの一人がタバコを吸うシーンが多い。この作品は小学生から社会人まで人気があるが、中学生や高校生がタバコに興味を持つような内容はやめていただきたい。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 9月に寄せられた意見で「K-POPアイドルがお尻を振るのは猥褻だ」といったものがあったが、全くそうは思わない。多くの学校の運動会で子どもが真似るなど、健康的でわかりやすいダンスであり、非難するようなものではない。好き嫌いはそれぞれあると思うが、「猥褻で不謹慎だから放送するな」という言いがかりのような意見はやめてもらいたい。
  • 「子どもに悪影響」「子どもが起きている時間にやるな」という意見が多い。子どもはテレビでなくても、周りの友達や大人などからも悪い影響を受けることがある。ドラマでは時に「復讐は悪いこと」といったメッセージを伝えるために殺人シーンがあったりもするし、テレビが100%悪いとは思わない。

【CMに関する意見】

  • 最近、パチンコCMは台から企業イメージに変わったから許せるとしても、競艇と競輪のCMはモラル違反だと思える。ギャンブルを軽い遊びのようなイメージにして、競輪と競艇をすすめている気がする。朝から夜まで、子どもが見るような時間帯にもギャンブルのCMを放送することは規制してもらいたい。

第177回 放送と人権等権利に関する委員会

第177回 – 2011年11月

委員会運営上の検討課題

10月の苦情概要 ……など

先月に引き続き委員会運営上の課題について検討し、事案審理において双方の当事者から直接事情を聞くヒアリングのあり方について議論した。

議事の詳細

日時
2011年11月15日(火) 午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員会運営上の検討課題

委員会運営上の課題の一つであるヒアリングについて検討した。ヒアリングは書面と資料による審理を踏まえ、申立人と被申立人である放送局の双方から直接、詳しい事実関係や主張の内容を尋ねるもので、同じ日に個別に行われている。
この日の委員会では、過去の事案審理を通じて当事者から出されたヒアリングに関する意見や要望について事務局から報告した後、堀野委員長が「双方に納得感を持ってもらうことと迅速な審理との調和をどう図るかだ」と問題提起し、各委員が自由に意見を述べ提案を出し合った。
この結果、事案によっては、書面審理の際に委員会で明らかになった論点を示すなど委員会の問題意識がより明確に伝わるよう改善を図る方向になった。
このあと、BPOホームページからダウンロードできるようにする新しい苦情申立書の書式について検討した。前回の委員会で受けた指摘に基づく修正案を事務局から提示したが、申立書に記入してもらう苦情内容について名誉毀損だけでなくプライバシーの侵害など複数例を示したほうがよいとの意見があり、さらに検討することになった。

10月の苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・19件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回は12月20日(火)に開かれることになった。

以上

第54回 放送倫理検証委員会

第54回 – 2011年11月

航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組

第54回放送倫理検証委員会は11月11日に開催された。
ある民放局のバラエティー番組で、航空便があるのに陸路を延々と旅をして、ヒマラヤ山麓の街を紹介したのは、秘境を強調するヤラセではないかという視聴者意見が寄せられた。討議の結果、演出の技法には何か釈然としない思いは残るが、放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。
9月22日に「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」を発表してから2度目の委員会になった。この間多くの局の番組審議会で取り上げられ、また民放連小委員会との意見交換会もあった。1ヵ月半の間に示されたNHK、民放各局の対応内容や考え方を事務局がまとめて全委員に報告した。

議事の詳細

日時
2011年11月11日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員

航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組

インドのヒマラヤ山麓に住むたったひとりの日本人女性を訪ねて、女性タレントがニューデリーから陸路をバスやジープを乗り継ぎ、テントに泊まる苦難の旅の末に、55時間かけて秘境に住む女性を探しあてるバラエティー番組。
ところが、女性が住む街とデリー空港の間は1時間余りの航空便で結ばれており、番組がそのことに言及していないのは、秘境を強調するためのヤラセではないかという視聴者からの意見が寄せられた。
最近の審議事案に「離島の実情」を不適正に伝えた番組があり、その中でも航空便の就航が言及されていなかったことから、この審議事案との比較検討も含めて議論が交わされた。その結果、演出の技法としては釈然としない思いも残るが、離島事案のように直接の被害者がいるわけではなく、制作手法として放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • 利用者の多い少ないは別にして、陸路のコースがあるわけだし、何でもかんでも最短距離を行かなくてはいうことではないだろう。情報バラエティー番組としてとくに問題はない。
  • この番組は、ヒマラヤ山麓に暮らす日本人女性の生活を紹介するというより、彼女を訪ねていく過程に主眼を置いて制作したと思う。そこにある程度の演出があってもいいのではないか。
  • 最近の審議事案の場合は、不適正な伝え方が目立ち、放送で誤解や被害を受けた人もいたが、この番組ではそういうことはなさそうだ。
  • 本来はモチベーションがないタレントに、ひとりの女性を探させようとするから、情報番組として成立させるため無理な苦労をさせることになる。日本人女性が陸路で行ったかどうかわからないのに、追体験、追体験と言っているのも、何かいやな感じがする。
  • 放送倫理に違反しているとは言わないが、現地までの定期航空便があることを種明かしする作り方があったのではないか。無理に隠さなくてもそれが、オチになって、面白かったのではないか。
  • 一妻多夫制は、現在は行われていないのに、今も存続しているような誤解を与えるという視聴者の指摘もあったが、文化・習俗としての影響が残っていると考えれば、さほどの問題ではないのではないか。

以上