第91回 放送と人権等権利に関する委員会

第091回 – 2004年8月

審理要請案件

委員会決定を受けてのテレビ朝日の「改善報告」について…など

審理要請案件

1.「警察官ストーカー被害者報道」

愛知県の女性から6月に申立書が提出された案件で、内容は「3月6日に警察に被害届を出した際に名古屋テレビからインタビュー取材を受けたが、『放送では顔は出さないでほしい』と言ったにもかかわらず顔出しでニュースなどで放送され、権利侵害された」というもの。これに対し名古屋テレビは、「申立人から積極的な事前の接触があって取材したもので、取材過程で警察官の不当行為を決然と告発するという強い意志を感じ、本人の意思を確認した上で顔出し放送に踏み切った」と主張している。
放送人権委員会は7月の委員会で、当該局に話し合い継続の意向がなお残されていたことから、双方にさらなる話し合いを斡旋していたが、その後のやり取りでも”顔出し放送”応諾の事実認識に関する双方の主張に大きな隔たりがあることなどから、委員会では話し合いがつかない状況にあると判断し、審理に入ることを決めた。

2.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」

この案件は、6月に栃木県のセミナー運営団体から、「4月に放送された報道番組で、犯罪行為があったことを前提とするような断定的もしくは誘導的な報道をされたために、人権や名誉を著しく傷つけられた。当該局に報道の訂正と取消・謝罪を求めたが、当該局からは『十分な取材に基づくもので、問題はない』と回答された」というもの。
7月の委員会で、「申立人と放送内容の具体的な関係がはっきりせず、また人権や名誉を傷つけられた具体的な記載がなく、申立内容が不明」として、本案件を不受理と決定し、その旨を委員長名の文面(7月27日付)で申立人代理人に送付していた。
委員会で今後の取り扱いについて協議した結果、申立書不受理の通知後も申立人からなんら意思表示もないことから、次回委員会までに、新たな申立てを行う意向があるかどうか申立人に確認することにした。

3.「政治的公平を求める民主党の申立て」

7月に民主党から、山形テレビが3月に放送した自民党山形県連制作の持ち込み番組『どうなる山形!~地方の時代の危機~』に対して「”政治的公平”を定めた放送法に反し、民主党の権利を侵害したものだ」とする申立てがあり、7月の委員会で検討した結果、「委員会の苦情取扱基準(申立人資格の適格性および苦情取扱対象)に照らし、本案件を審理対象外とする」ことを決定し、その旨を委員長名の文面(7月26日付)で申立人側に送付している。
委員会では、事務局から「その後申立人代理人に問い合わせたが、特に反応がなかった」との報告を受けて協議し、当該案件はこれで一件落着と判断して検討を終えることにした。

委員会決定を受けてのテレビ朝日の「改善報告」について

6月4日に委員会決定を通知・公表した「国会・不規則発言編集問題」(放送人権委員会決定 第23号)に対して、テレビ朝日から飽戸弘委員長宛に8月11日付文書で、改善策と具体的な取り組みに関する報告があった。

放送人権委員会は報告内容を検討した結果、委員会が指摘した”視聴者への説明対応”に加え、7項目にわたる”改善策”を講じたことを評価し、了承した。

なお、委員会では、この当該局の改善報告とそれに対する委員会の評価、了承についてBPO報告に掲載することにした。

「政治的公平を求める民主党の申立て」

総務省は情報通信政策局長名で6月22日、テレビ朝日と山形テレビに行政指導、民放連に協力要請をし、この中で、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』(2003年9月15日放送分)に関して、総務省が、同社からの報告とともに、当該番組に対する放送人権委員会「委員会決定」(6月4日に通知・公表)の主要部分を引用し、それを根拠に厳重注意と再発防止措置を要請したことについて、放送人権委員会として重大な問題との認識の基に、委員間で意見交換をした。

最後に、飽戸委員長が、「これは放送人権委員会、BPOの活動にとって重要な問題であるので、各委員の意見を事務局で整理・集約し、清水委員長に報告、今後『三委員長・理事長会談』などしかるべき場で検討をお願いすることにしたい」と発言、これを了承した。

人権に関する苦情対応(7月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・2件

その他

「次回放送人権委員会を9月21日午後4時から開くことを決め閉会した。

以上