休会

8月の委員会は例年通り休会したが、中高生モニターについて持ち回りで審議した。8月に寄せられた視聴者意見については9月委員会で審議する。

1. 中高生モニターについて

8月のモニター報告のテーマは、「大震災関連」「原発事故関連」の特集番組、もしくは「大震災・原発事故」を扱った通常の報道番組の中から番組を見て、何を感じたか、何を考えさせられたか、自分ならどう行動するかなどの感想を書いてもらい、26人から報告が届いた。

いちばん報告の多かった番組は、フジテレビ系列の『金曜プレステージ わ・す・れ・な・い~東日本大震災155日の記録~』で7人からリポートが届いた。

  • 「津波の映像はよく目にしましたが、ここまでまとめられた映像は見たことがなく驚きました。たくさんの地点からの映像を時系列ごとに放送していて、三陸海岸がどのように津波に襲われたのかがよく分かりました。東北地方に住む自分は、震災発生当初停電によりテレビを見ることができなかったので、地震発生時の情報カメラの映像はあまり見たことがありませんでした。また、津波で家族を失った方、危機一髪で津波から助かった方のドキュメンタリーは心に響くものがありました。改めて日本に震災が多いこと、そしてその震災から立ち上がってきたこと、『日本は負けない』ということが感じ取られました。」(中学3年・男子)

  • 「驚いたのは宮古市の津波は最初20センチだったのが、その数分後に10メートルの堤防を超える大きさになったことです。誰がそんなことが起こると想像したでしょうか?頑丈な堤防が一瞬で壊れてしまう自然の恐ろしさをまざまざと見せられました。1台のカメラがとらえた一人から『津波はまったく静かで音がしなかった』と言っていたのが不思議でした。それは堤防があったからだと言っています。堤防は津波を遅らせたり、抑えたりすることができるけど、逆に言うと、いつ津波が襲ってくるのかが分からないので堤防も良し悪しなんだと思う。私は津波にあったことがないし見たこともないが、この映像を後世まで伝えて、恐ろしさを伝えていかなければならない。それが私たちの使命なのではと感じた。」(中学1年・女子)

  • 「いろいろな場所のカメラが撮影した津波の映像を順番に流して、とても分かりやすかったです。一般の人が撮影した映像もあり、とても近くに津波が来ていることが分かりました。また、堤防は避難する時間を稼いでくれるが、堤防の下からは波の高さが見えないため、逃げ遅れる可能性もある、ということが分かりました。津波は跳ね返り、あちこちから戻ってきた津波が重なって、より高さを増すことにも驚きました。それをCGで説明していたことはとても分かりやすかったです。時々、こういう番組があるといいと思います。未来に語り継いでいくには映像が一番良いのだな、と思いました。」(中学2年・男子)

  • 「次々に流れる津波・地震の映像を見ると、心がえぐられているような感覚になりました。そして私が知らなかったこともたくさんありました。その中で、日本人の冷静さやマナーの良さを知ることができました。電車の全線復旧までわずか49日というのは過去最速の記録だそうで、それを聴き、すごく嬉しく感じました。日本人は強いと思います。日本人として誇りに思います。」(中学3年・女子)

  • 「千年に1度といわれるぐらい稀な大地震が東日本を襲い、それに続いて起きた大津波で、現在わかっているだけで、死者・行方不明者2万人以上、まさに未曾有という言葉で表現される大惨事。放送中、宮古市職員が思わず、言い放った『終わった、すべてが終わった』というように、まさに『この世の終わり』に匹敵するほどの大きなものでした。当時設置されていた19台のカメラが見た大地震・大津波の全容を通して多くのことを学ぶために放送されたものだと思いました。また、今回の災害を通して『人は人の記憶を生かすことができる。それがどんなつらいことであっても…』の言葉にあるように、大惨事を通してこの経験を次に生かすのが残されたものの使命であるということも痛感しました。」(高校2年・女子)

  • 「映し出されている人々が発する言葉がところどころ胸にささり、2時間という長い番組でしたが飽きることなく見ることができ、充実した内容だったと思います。具体的にどんな言葉が胸にささったかというと、視聴者が撮った津波の映像の後ろに入っている被災者の方々の叫び声です。『死にたくない』『もう終わった』『(津波を)止めてくれ』という言葉はそれだけで考えさせられるものがありますが、その声が震えていたり、本当に諦めの気持ちが伝わってきたりして、今までテレビで見て知っていた以上に被災者の方たちの心の傷を知らされました。始まってしばらくして、『生々しい津波の映像を流すのでストレスを感じる人は見ないで下さい』という注意が流れ、私はこんな思いをしてまで伝えるべきことなのかなと少し疑問に思いました。また、津波について科学的に分析・検証できていてその完成度は高かったですが、具体的な津波に対する対策法は述べられておらず、すこしもの足りなかったです。」(高校1年・女子)

次に4人から報告が寄せられたのは、NHK『BS世界のドキュメンタリー シリーズチェルノブイリ事故25年 永遠のチェルノブイリ 被ばくの森はいま』である。

  • 「チェルノブイリの原発事故で、周りの環境が崩れ、今も立ち入り禁止ということは知っていたが、ここまでひどいものとは知らなかった。放射線は雲となって流れて行き、世界各国へと散らばっていった。原発周辺は森となり、動物がかなり増えていた。しかし、どの動物も被ばくしていて、体内にセシウムがあったり、奇形だったりしていた。これが人間に起こったと思うと、ゾッとする。20年以上たった今でも、放射線障害を訴える子どもがいることにはびっくり。放射線が恐ろしいものだと再び認識した。」   (中学1年・男子)

  • 「この番組を見た印象は『怖い…』ということです。原発事故から25年たった現在のチェルノブイリは、かつて人間が生活していた場所には見えない自然の地へと変わっていました。人間が居なくなった静かなその場所は動物たちにとっては"楽園"となりましたが、皮肉なことに世界中の研究者たちにとっては放射能が生物に及ぼす影響を研究するのに絶好の場所にもなりました。その映像がなんともいえない…悲しい世界に見えました。私はこの番組を見て"原発の是非"について考えさせられました。チェルノブイリに住んでいた人々は25年たった今も、元いた場所に帰れていません。そして福島原発から30キロ圏内の人々もまた、5ヶ月たった今もまだ戻れるメドはたっていません。長い間住んできた場所を急に離れなくてはならなくなり、友だちとも離ればなれ…福島の人々のことを思うと胸が痛みます。かといって危険なので仕方はありませんが、チェルノブイリの森のようにならないように政府には少しでも早く福島の人々が元の生活に戻ることができるようにしっかりとしてもらいたいと思いました。」  (中学3年・女子)

  • 「福島原発事故と同じ史上最悪の事故である、このチェルノブイリ原発事故の現在の状況や長年にわたる調査結果を見ることによって、動植物に与える影響、人体に及ぼす影響について理解を深めることができたと感じています。元々自然界に存在しない放射性物質セシウム137とストロンチウム90はカリウムやカルシウムと科学的性質が似ていることから、植物が誤ってそれらの放射性物質を自らとりこんでしまうというのです。内部被ばくした植物でも人が食して良い部分などは分かっているようですが、野生動物には分かるはずもありません。その影響は植物を食べる草食動物、肉食動物など、食物連鎖の繋がりで人間にも影響を与えていくことになると思われます。人間が作り出したものは、周り巡って、私たち自身にも影響を与える結果になる事例の一つだと思います。今後、農業のことなどチェルノブイリから多くのことが学べると思います。それを利用して、これからの放射線との付き合い方も見えてきやすくなるのではないかと思っています。」(高校2年・女子)

3人から報告の寄せられた番組は、日本テレビ系列の『NNNドキュメント 天国のママへ~届け、いのちの鼓動~』(ミヤギテレビ制作)である。

  • 「この番組の主人公は石巻市に住む8歳という年齢で母親を津波で亡くした少女です。少女の母親は仕事が忙しかったため、2人はなかなか一緒に居られなかったそうですが、週に2回、母子で一緒に太鼓の教室に通っていました。その太鼓教室こそが、2人を繋ぐものでした。本当はお母さんと一緒に出る予定だった年に1回のお祭りの日の晴れ舞台。当日の舞台には、"お母さん"の分まで懸命に太鼓をたたく少女の姿がありました。母という大事な存在をなくしたにもかかわらず、懸命に生きる少女に、私は勇気をもらいました。」(中学1年・女子)

  • 「母一人、祖母一人の家に育った女の子が母を亡くしたということは、想像できないくらい辛くて、幼い女の子にとっては一人ではどうしようもできない不安でいっぱいだと思います。そんな女の子を周りが支えてあげる、学校でも特別扱いせず前と同じように接することで、徐々に自分も頑張ろうという気持ちが生まれたのだと感じました。だから、幼い子どもが家族を亡くしても、『かわいそうに』とか『頑張ってね』などの言葉はあまりよくないと思います。そのような言葉だと"孤独"を感じてしまうような気がするからです。"被災者"にはさまざまなケースがあります。もっと個別的にこういう生活を送っている人もいるし、また違った生活を送っている人もいるのだと報道した方が、真実を伝えられるのだと思いました。」(高校1年・女子)

日本テレビ系列の『24時間テレビ』で取り上げられた震災報道について報告が2人から寄せられた。

  • 「私は真矢みきさんが取材した『ガレキの中の小さな花屋さん』を見ました。地震が起きた後、どこのお店より早く店を再開した花屋さんに来る人は、ほとんどが津波で亡くなった人への花を買いに来る人でした。取材の様子を見て『よく悲しんでいる人に取材できるな。酷いな』とそのとき私は思いました。そこまでして取材しなくてもいいのでは?と思う一方で、この大災害を忘れかけていた自分がいることに気づきました。大震災のその日から悲しくて苦しくて、涙も流せないほど傷ついている人がいるという現実から、私は逃げていました…。しかしこの放送を見て、消えることのない悲しみにくれている人々がいるのだと痛感しました。そして、この事実を永遠に覚えておかなければいけないのだと分りました。」(高校1年・女子)

テレビ朝日系列の『報道ステーション』の特集コーナーについても2人から報告が寄せられた。

  • 「この番組では、最近の建物について注目していました。地震が起きると細かくS字形に揺れる構造にしたり、建物の地価に大きなバネのようなものを仕込んで地面が揺れてもバネが揺れを吸収したりして、被害を減らそうという工夫されていました。先日、学校で『原発は本当に必要か』という討論会をしました。最近、テレビで福島原発の大変な状況ばかりを見ているので、『要らない』『原発以外のもっと安全な方法で電気を作り出せるのではないか』という意見が多い中で、『今回の大地震が起きたからそう考えるけれど、もしあの地震がなかったら原発はあってもいいのではないかと自分たちは思っていたはず…』という意見が出され、今まで自分は『原発は要らない』としか思わなかったけれど、改めて考えさせられる意見でした。」(中学1年・女子)

NHK『ゆうどきネットワーク』の特集コーナーへの意見も寄せられた。

  • 「福島原発事故で暮らしを奪われた福島県相馬市の2つの家族を取り上げていました。最初の家族は夫婦と子ども3人が群馬県片品村に避難している一家である。3月から狭い避難所で暮らしていた一家に、『8月末にこの避難所を閉鎖する』という通知が…。家が放射能で危険だから、我慢して窮屈な避難所暮らしをしていた人に対する扱いがひどすぎる。『この国は正気か?』と思いました。もう1つの家族は、親子2人で運送業をしていた家族です。津波によって得意先も流されてしまい、運送業が続かなくなっていました。国から仕事を紹介されたりするのかと思いましたが、現実は甘くないみたいです。結局、娘さんがパートを掛け持ちしてお父さんを食べさせていくことになりました。お父さんも仕事をしたがっていましたが、年齢的に無理なのです。この番組を見て、『国』というものの無力さをとても感じました。」(中学3年・男子)

そのほか、NHKの『追跡! A to Z スペシャル 福島第一原発作業員に何が?』、『ETV特集 アメリカから見た福島原発事故』、テレビ東京の『ガイアの夜明け』の特集コーナーについての報告が寄せられたほか、3人から震災報道全般についてのリポートが寄せられた。

【委員の主な所感】

  • 今月の報告には、モニターの皆さんの「自分は何ができるか」という真摯な問いにあふれていました。今回の大災害を、テレビで報じられた「一過性の出来事」にとどめず、自分の問題として受け止め、自分にできることを具体的に模索しており、痛みを共にしようとする姿勢に、優しさを感じました。

  • 全体的にやや感想文レベルに止まっているリポートが目立っていました。日常生活から紡ぎだされる問題意識、被災地や原発事故で避難生活を余儀なくされた住民への想像力、「森を見てから木を見る」眼、具体的で分かりやすい根拠から導き出される自分なりの結論・感情などがリポートの中に表現されているかがポイントだと考えます。

  • ドラマやバラエティーですと見る側に「作りもの」という意識が強く働き、モニター報告も番組に対する批評や評価が前面に出やすいのですが、今回のようなドキュメンタリーの場合は、番組の作り方ではなく、そこで示されたことがらに対する感想が中心になりがちですが、批判精神にあふれた優れたリポートもありました。ドキュメンタリーなどのノンフィクションに関しては、何を取り上げ、それをどう描いたか、という制作者の視点を考えるとよいのではないかと思いました。

  • 未曾有の大震災や原発問題に関する特集番組を見ての感想だったこともあり、多くの皆さんが自分のこととして受け止めて自分なりの意見をまとめてくださってよかったと思います。もう一歩進めて、制作者が何を意図してその番組を制作したのかを推察し、自分だったらもっとこういう番組にしたという意見があると面白かったかなと思います。

  • 3月12日に福島原発で水素爆発が起ったことは、将来10年、20年、30年後にどうなるか?モニターである中学1年から高校2年の皆さんの人生とピッタリ合致して、この問題を意識する、しないに関らず背負い続けることになります。皆さんは一方的にテレビの報道を見ているだけでは、何がホントで、何がウソかの判断が下せないと思います。物事は自分の目で見たこと、聞いたことと比べることからすべては始まると思います。『複眼』で見つめることを心がけてください。

「今月のキラ★報告」(宮城・高校2年男子)

「彼らだけここにいて私だけどこかに逃げるのは嫌。同じ空気を吸って同じ季節を感じて生活したい」、船越の漁師は語る。
大震災から5ヶ月が経過し、大震災関連の特集番組が増える一方、通常の報道番組ではほとんど大震災関連の報道をすることがなくなった。とはいえ、いつまでも「東日本大震災」を伝え続ける訳にもいかない。常に新情報を届けなくてはならない報道番組は、時間の経過とともに震災情報を減らしたり、もしくはその番組の中で特集として取り上げたりするようになる。だから「いつの間にか震災情報が減ったなぁ」と私たちに感じさせるテレビは、私たちの震災に対する気持ちの薄れを見事に反映しているものだと言えるだろう。
さて、私が今回視聴した番組は仙台放送の『ともに』である。震災後定期的に放送され、東北の震災関連の情報を主に伝える生放送番組だ。冒頭の文章は、被災した漁師の言葉である。家族を津波で亡くし、漁をするための船や道具なども失ってしまった彼は船越に残り、仲間の漁師とともに漁業の復興に取り組んでいる。そこで私が驚いたのは、手作業で漁具を修復していたことである。もちろん、船がなければ漁をすることができないが、漁具も不可欠なものだ。特に、東北の復興に当たって重要視されるのが「漁業」であるにもかかわらず、国や地方自治体の対応が遅れ、漁師同士が船や道具の貸し借りをしているのが現状である。
番組を通して感じたことは「復興は全然していない」、そんな当たり前ともいえる言葉に尽きる。報道番組は「新情報」、そして「変化」を求めている。震災から数ヶ月たてば、状況の変化が見られないため、人々の「努力」を映し出そうとする。私の視聴した番組『ともに』も、被災者の「努力」や「心情の変化」を伝えている。それは「寄り添う」番組だ。私はとても大切なテーマだと思うが、現状を伝えることも忘れてはならない。例えば、原発作業員の話を聴く場面が多いが、原発の状況を「振り返る」ことも必要なのではないだろうか。東日本大震災を忘れないために…。
番組の最後に、被災地の少年野球チームが兵庫県に招待されたことが紹介されていた。震災後、被災地の生徒が他県や海外に招待されるといったニュースをよく見るが、私にはその趣旨がよく理解できない。「励ます」ということなのだろうか。私はそれよりも「地域との交流」を重視すべきだと考える。それに、平等性に欠けている。被災地見学やボランティア活動をして子どもや若者中心に「経験」をさせ、「将来の幅」を広げることが大切なのではないだろうか。東日本大震災(の経験)を生かすために…。

【委員会の推薦理由】
常に新しい情報を提供し続けなければならない報道番組の宿命を論じ、また時間の経過とともに、被災者の努力や心情の変化というような番組を提供する必要性を鋭く指摘していた。また、被災地の子どもたちを県外や海外に招待するよりも、被災地以外の子どもたちが被災地にやってくることの方が重要であるという意見も、被災地で暮らしているからこそ感じる指摘で、評価に値すると考える。

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2011年7月に視聴者から寄せられた意見

2011年7月に視聴者から寄せられた意見

女子ワールドカップサッカーで、「なでしこジャパン」が米国を破り優勝、「感動した」との声が寄せられたが、帰国後のテレビ取材で、選手たちにくだらない質問が多いなどの批判も。夏の長時間特番では、ひとりの芸人に全員がバスケットボールを投げつけるといういじめが酷いという意見も多数。

7月にメール・電話・FXA・郵便でBPOに寄せられた意見は2,967件で、6月と比較して1,433件増加した。 意見のアクセス方法の割合はメール80%、電話18%、FAX1%、手紙ほか1%。性別は男性71%、女性27%、不明2%。年代は30歳代32%、20歳代28%、40歳代18%、10歳代9%、50歳代8%、60歳以上5%。

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。7月の通知数は1,642件[51局]であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、45件を会員社に送信している。

意見概要

番組全般にわたる意見

7月の視聴者意見は2,967件と前月より倍増した。地上波テレビ放送は24日、岩手、宮城、福島の被災三県を除いてデジタル放送に完全移行し、58年に及ぶアナログ放送は終了した。1日から始められたアナログ放送残日数の表示テロップについて、「字が大きすぎる」と抗議の声が多く寄せられ、「地デジ難民を出すな」などの苦情や意見があった。
東日本大震災をめぐっては、新しく復興担当相に松本龍氏が就任したが、宮城県知事らへの暴言問題で10日もたたずに辞任した。原発問題では、「九州電力の玄海原発やらせメール事件」が発覚し、原子力安全・保安院のあり方をめぐって多くの批判意見があった。稲わらを食べた牛から放射性セシウムが検出された。全国的に食の安全に対する懸念が高まり、多くの意見があった。
女子ワールドカップサッカーで、「なでしこジャパン」が米国を破り優勝した。深夜の中継放送であったが、多くの視聴者から「感動した」との声が寄せられた。帰国後のテレビ取材で、選手たちにくだらない質問が多いなどの批判もあった。
夏の長時間特番では、ひとりの芸人に全員がバスケットボールを投げつけるといういじめが酷いという意見や、芸人たちの卑猥なシーンが見苦しいなどの意見があった。また、バラエティー番組では、せっかく作ったドミノをわざと崩して、悲嘆する顔を笑うドッキリカメラに非難の意見が多かった。
ラジオに関する意見は36件、CMについては35件の意見があった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は178件だった。7月末に放送されたバラエティー特番に対し集中的に意見が寄せられたため、前月より50件ほど増加した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が58件、次いでいじめに関する意見が39件、性的表現に関する意見が37件と続いた。
低俗・モラルに反するとの意見については、バラエティー番組を中心に、多数の番組への批判意見が散発的に寄せられた。いじめに関する意見については、バラエティー特番の中の1コーナーで、1人のお笑い芸人に対してボールを投げつけるなどの行為が「いじめを助長する恐れがある」などとする批判意見が寄せられた。性的表現に関する意見については、同特番の別のコーナーで、女性が動くハケの上にまたがる場面があり、「性的表現が過激であまりに不適切だ」などの批判意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 福島県から出荷された牛の肉から、国の暫定基準を大きく上回る放射性セシウムが検出された。原因は原発事故発生以来屋外に放置されていた稲わらを、牛の餌として与えていたためだが、屋外の稲わらは、福島県のものだけでなく、宮城県や岩手県の稲わらにもセシウムがあるということだった。そうなるとわらだけでなくて野菜にも当然、セシウムが含まれていると考えられる。放射能汚染の検証結果は、あまり報道されていない。報道機関は単に政府の発表を待っていて、発表のあったものだけを報道しているのではないか。独自の調査、報道をして、国民の不安に応えるべきではないのか。
  • 報道で、「風評被害」という言葉をよく使うが、汚染された牛が確認されたことは事実であって、これにともなって買い控えが増加し生産者が被害を被ったとしても、風評被害にはあたらないのではないか。物事を深く考えない者が、単純に報道の言葉を乱用し「風評被害」という言葉を使う場面が多々見受けられる。
  • 牛の飼い主が悪いように報道されているが、飼い主も福島第一原発の事故がなければ何の問題もなかった。このような事態になった本当の原因は、「福島第一原発の人災事故」である。このことを報道機関はもっと報道すべきだ。今回の牛肉問題の本当の責任者は東京電力であることを前面に報道しなければならない。真実の見えない報道機関は不要だ。
  • 私は24日以降「地デジ難民」になった。今はラジオを聞いているが、60年前の生活を強いられているようだ。テレビ局は「地デジ難民」を放置せず「地デジ難民」の状況を検証すべきではないか。「地デジ」に変わっても、新聞の番組欄を見る限り、あいかわらずくだらない番組ばかりだ。「地デジ」に変えた意義を教えてほしい。
  • 7月1日から、地上アナログ放送全チャンネルで、画面左下に大きく「アナログ放送終了まで○日」と大きく表示されるようになったが、字幕スーパーなどが見えなくなってしまう。映像を大きく遮り、視聴の障害になるほどの告知を入れることは、強引すぎるのではないか。脅迫されているようで、嫌な気分になった。
  • 地デジ終了のカウントダウン数字が画面に出ていて番組の字幕が読めない。我が家には難聴の家族がいるので字幕が読めないと困る。
  • 松本復興担当大臣による、宮城県知事に対する暴言のあとの、マスコミへの「書いたらその社は終わり」との一連の発言に関して、一様に報道が遅い。週明けに報道したところも「おそるおそる」のコメントしかできなかった。そのあとで、野党側からの猛抗議や全体的に「おかしい」との気運になったところで、次々とわかったような「反松本」的なコメントをしていた。仮に業務を差し止められようが、はじめから覚悟を持って、正義と真実を貫かなければ、本来の使命を果たしたとはいえない。後からなら何とでも言える。

【番組全般・その他】

  • 「なでしこジャパン」のワールドカップ優勝は久しぶりの明るい話題で嬉しい。何度も、もう駄目かなと諦めかけたが、粘り強くくらいついていく選手の背中に、とても勇気づけられた。PK戦の前の選手の笑顔や、試合後にアメリカの選手と互いに讃えあっている姿に感動した。スポーツは素晴らしい、最後まで諦めないことは大切だと改めて思った。
  • 「なでしこジャパン」の選手の素顔に迫るという内容が多いが、「地元の肉屋で豚肉を買う」や「沢庵買った」など、誰でもそれくらいするだろう。練習場で室内の様子を隙間から覗き見するなど、やり過ぎである。過度なストーカー取材でマスコミがプライベートを晒せば、視聴者がそれに群がって観光地化し、選手の生活や練習に支障をきたす。
  • 「なでしこジャパン」のメンバーを並べ、「彼氏はいますか?」と質問し、マルとバツの札で答えさせていた。ひどいセクハラ行為だと感じ、とても不快だった。その後も「彼氏がほしいか」や「メダリストはもてるか」といった話を延々と続けていく低俗さにがっかりした。疲労の中、長い時間そういった内容に付き合わされている彼女たちを気の毒に思った。
  • ドミノ倒しの企画はひどい。人の情熱を茶化して、馬鹿にして笑わせたい意図で作られたのか。それが作られたものであったにしても、やらせだったにしても、もっと質の良いモノが作れないのか。それこそ、これを企画したひとの顔が見てみたい。この企画を見て笑うことが、今の日本人の一般的な感性なのだろうか。
  • バスケ合コンで、一人の芸人に全員がバスケットボールをぶつける場面は、見ていて本当に不快だった。”笑い”って何なのか。これを見て誰が笑うのか。いじめを助長しているとしか見えなかった。
  • 人間としてやってはいけない笑いのとり方(人を傷つける)をしている。やられている本人は芸人だが、笑顔ではなかった。人を傷つけて笑いをとろうとすることは、やめた方がいい。
  • 朝、目を覚ましてテレビをつけた。そこでは、3人の女性が水着のようなものを着て、馬のようなものに乗っていたのだが、まるでポルノ映画のような内容だった。詳細は恥ずかしくていえない。このような内容をテレビで放送することはおかしい。問題だと思う。
  • 最近のクイズ番組は、視聴者が楽しめない。レベルの高いクイズを、難関高校の生徒や高学歴芸能人など知識のある者が、能力を自慢し合っているように演じているだけで、視聴者が入る余地がない。昔は参加者も一緒になって考え楽しんだものだが、今の番組は事前に打ち合わせて答えをいうものばかりで、クイズではなく回答者を「凄い」と見せかけるだけになっている。問題を、たった数文字読み上げただけで回答者がすばやく答えてしまうパターンもあり、見ている側は興ざめだ。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 新番組のドラマだが、主人公が暴力団に所属しており、各シーンで暴力団関連の用語などが登場する。まるで暴力団を美化しているとしか思えない。この番組を見た青少年が暴力団に加入して犯罪でも起こしたら放送局はどう責任を取るのか。放送局としての姿勢を問う由々しき事態だ。
  • 料理上手な少女が出演するバラエティー番組で、少女が創作料理を作り、料理に合うお酒も紹介していた。未成年にもかかわらずお酒の味についてコメントをしていたが、飲まなくとも舌と鼻だけで味が分かるらしい。番組を見た子どもが真似をするかも知れず、結果として子どもに飲酒への興味をそそらせる内容となっている。極めて問題だ。
  • 子ども番組だが、大人に失礼な言い方を勧める歌や、大人の下品を子どもに笑わせる場面があったり、人気ドラマの替え歌が下品だったり、教育上あまり良い内容ではない。問題があるコーナーはやめてもらいたい。

【いじめに関する意見】

  • 出演者がバスケットをする特番中のコーナーで、特定の芸人に対し他のメンバーがボールをぶつけていた。試合を中断した後も同じ展開を続けていた。特別な番組なのに視聴者に単なるいじめを見せるとは、深夜とはいえ夏休みで多くの子も見ているだろうに何を考えているのか。学校で同じことをする子どもが現れてもおかしくない。毎年楽しくこの番組を見ているだけにとても残念だ。

【性的表現に関する意見】

  • 特番の中で朝5時頃の内容だったが、女性が男性の性器を思わせる車のようなものに乗り、性交を連想させるようにもだえていた。早朝の放送で子どもが見ていないだろうが、このような品位に欠けた内容を地上波で放送するべきではないし、ここまで堕落したのかと愕然とした。
  • 深夜のバラエティー番組でお笑い芸人とそのファンが交際している様子が紹介されたが、その中に猥褻な行為が含まれていた。番組の出演者には未成年の少女もいた。青少年の健全な育成のためにもこのような放送は慎んでもらいたい。

【言葉に関する意見】

  • あるタレントが先輩の出演者や解説者にまでふざけたタメ口を使っていて気分が悪くなった。他の番組でも同様だ。他の出演者は注意をしているのだろうか。子どもがあのような態度を真似したらどうするのか。放送局のモラルも疑わざるを得ない。視聴者への配慮をもっと考えてほしい。
  • クイズ番組で人名を答える筆記問題があったが、筆順がおかしいものが多く、子どもから「なぜ筆順が違うのに正解になるの」と質問され困った。子どもが見ている時間帯のクイズ番組では、筆順の解説も必要ではないか。

【表現・演出に関する意見】

  • 子どもとバラエティー番組を見ていたら、景色がぐるぐると回る映像が流れた。自分と子どもは気分が悪くなり乗り物酔いのようになった。友人にも、程度の違いはあるものの類似の状態になった人がいたようだ。事前に注意を促すわけでもなくいきなり映像が流れたので、今後注意してほしい。

【暴力シーンに関する意見】

  • 特撮ものの番組で、大の男が女性に暴力を振るうシーンがあった。作戦とはいえ、着ぐるみならともかく生身の人間でこのようなシーンを流すのは不愉快だ。子どもが見る時間帯の番組として相応しくない。

【残虐シーンに関する意見】

  • 各局が放送しているアニメには過激なシーンが多い。血を流すなどして死亡しても「時間を戻せば生き返る」など、安易に再生できてしまうものが多い。これでは子どもの死に対する意識が鈍感になってしまうのではないか。

【食べ物に関する意見】

  • 情報番組の料理コーナーで、タレントが自慢するように食わず嫌いを強調していたが、作っている人にも生産者にも食材にも失礼だ。大の大人が食わず嫌いを自慢するようでは、「食わず嫌いが大人」と思う子どもが出る。子どもに悪影響だ。

【非科学的な事柄に関する意見】

  • 動物の気持ちを言葉にすることができるとする女性が、飼い主に動物の気持ちを伝えるというコーナーだが、問題ではないか。動物の気持ちはコミュニケーションをとっていれば確かにわかるが、それをわざわざ心をえぐるような言葉に変換して演出することはスピリチュアルそのものだ。このような番組は子どもに見せられない。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 深夜アニメへの苦情が視聴者意見として掲載されているが、ほとんどが的外れな内容やこじつけに近い苦情である。単にアニメ番組が嫌いだから苦情を送っているとしか思えない。本当に青少年のことを考えて意見を送っているのか疑問である。BPOはアニメ番組に対する苦情をもっと慎重に扱うべきだ。
  • 「深夜アニメは子どもに見せなければいい」というナンセンスな意見があるが、録画機の性能が向上しており誰でも簡単に録画できる環境だ。現状では規制はないことも考慮すべきだ。

【CMに関する意見】

  • お酒のCMで、イルカショーのイルカの中から男性が出てくるところを見て子どもが泣いてしまった。大変ショックを受けたようだった。イルカが大好きな子どもの夢を壊すようなCMは放送しないでいただきたい。