第236回放送と人権等権利に関する委員会

第236回 – 2016年6月

世田谷一家殺害事件特番事案の審理、STAP細胞報道事案の審理、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の審理、審理要請案件の取下げ報告…など

世田谷一家殺害事件特番事案の「委員会決定」案を検討し、STAP細胞報道事案を引き続き審理した。また、在熊本の民放2局を対象にした事件報道に対する地方公務員からの申立てについて実質審理に入った。前回委員会で審理要請案件として検討した生活保護ビジネス企画に対する申立てについて、取下げ書が提出されたため事務局から報告した。

議事の詳細

日時
2016年6月21日(火)午後4時~8時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「世田谷一家殺害事件特番への申立て」事案の審理

対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送を受けて入江氏は、テレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。このため入江氏は、委員会に申立書を提出。「テレビ的な技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びにテレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
これに対しテレビ朝日は、サファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張している。
今月の委員会では、6月6日の第1回起草委員会を経て委員会に提出された「委員会決定」案を審理した。その結果、第2回起草委員会を開催して、次回委員会でさらに検討を続けることになった。

2.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
前回委員会で行った被申立人のヒアリングを受けて、委員会から送った追加質問に対する回答書等がNHKから提出された。今回の委員会では、この回答書も含めた双方のヒアリングの結果を踏まえ、各委員が意見を述べた。次回委員会までに起草担当委員が集まって議論を整理し、次回委員会で引き続き審理することになった。

3.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案の審理

4.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ)事案の審理

対象となったのは、テレビ熊本と熊本県民テレビが2015年11月19日に放送したニュース番組で、地方公務員が準強制わいせつ容疑で逮捕された事件についてそれぞれ報道した。この放送に対し、同公務員が委員会に申立書を提出、放送は事実と異なる内容であり、フェイスブックの写真を無断使用され、初期報道における「極悪人のような報道内容」により、深刻な人権侵害を受けたとして、謝罪文の提出などを求めた。
これに対しテレビ熊本は、「現職の公務員による事案であり、社会的影響は極めて大きいと考え、取材を重ね事実のみを報道した」として、また、熊本県民テレビは、「報道は正当な方法によって得た取材結果に基づき客観的な立場からなされたもの」として、それぞれ人権侵害はなかったと反論している。
委員会は4月の定例委員会で2局に対する申立てについて審理入りを決定したが、熊本県を中心に起きた地震被害への対応等に配慮しつつ審理することにしていた。その後両局から答弁書、申立人から反論書が提出されたのを受けて今回委員会から実質審理に入った。委員会では、事務局が申立人と被申立人2局それぞれの主張を整理して説明し、委員から意見が示された。今後、両局の再答弁書の提出を待って論点整理を行う方針を確認した。

5.審理要請案件:「生活保護ビジネス企画に対する申立て」 ~取下げ~

5月の定例委員会で審理要請案件として検討したが、その後、事務局の斡旋で申立人と被申立人が改めて話し合いを行った。その結果、双方が合意に達し、申立人から6月15日付で取下げ書が提出された。委員会では、事務局から一連の経緯について報告した。

6.その他

  • 委員会が秋に予定している県単位意見交換会について、事務局が概要を説明し、今後詳細を詰めるとになった。

  • 次回委員会は7月19日に開かれる。

以上

第105回 放送倫理検証委員会

第105回–2016年6月

委員会発足10周年 記念シンポジウム開催へ

第105回放送倫理検証委員会は6月10日に開催された。
2007年5月に発足した委員会の10周年にちなんだ事業やイベントについて意見交換が行われ、記念のシンポジウムの年内開催に向けて、テーマの設定やパネリストの人選などが議論された。

議事の詳細

日時
2016年6月10日(金)午後5時~8時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.委員会発足10周年 記念シンポジウム開催へ

2007年5月に発足した委員会がことし5月から10年目に入ったことから、10周年にちなむ事業やイベントなどができないか検討してきたが、年内の開催を目標に記念のシンポジウムを実施することになった。
委員会では、発足10周年にふさわしいシンポジウムのテーマは何か、パネリストの人選をどう進めていくか、入場者の対象をどのように想定するか、会場としてふさわしい場所はどこかなどの点について幅広く意見交換が行われ、次回の委員会でさらに内容の詰めを行うことになった。

■ 委員会運営規則の一部改正 6月1日付で施行

4月の委員会で議決された「放送倫理検証委員会運営規則」の一部改正案が、5月31日に開催されたBPO理事会で承認され、6月1日付で施行されたことが、事務局から報告された。
また、この改正に伴い、BPOと加盟各社との間で取り交わしている「放送倫理検証委員会に関する合意書」も、委員会運営規則改正との整合性を図るために一部改訂されたこともあわせて報告され、了承された。

以上

第235回放送と人権等権利に関する委員会

第235回 – 2016年5月

STAP細胞報道事案のヒアリングと審理…など

STAP細胞報道事案のヒアリングを行うため臨時委員会を開催し、被申立人から詳しく事情を聞いた。

議事の詳細

日時
2016年5月31日(火)午後4時30分~10時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「STAP細胞報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
熊本地震の報道対応のため延期していた被申立人のヒアリングを行うため、この日、臨時委員会を開催した。なお、申立人のヒアリングは4月26日に臨時開催された第233回委員会で行われた。(申立人のヒアリングについては第233回委員会の「議事概要」参照
ヒアリングには、被申立人のNHKからSTAP細胞問題を取材してきた科学担当記者や番組担当者ら7人が出席した。
まず、番組の制作意図としてNHKは、「当時はSTAP細胞の存在や、その正体がES細胞なのかどうかも確定していなかった。STAP問題は真相が明らかにならないまま、幕引きが図られる恐れがあった。こうした状況の中、この問題をしっかり検証し再発防止への一助となっていくことがジャーナリズムの重要な役割と考えた」と述べた。
さらに「調査報道なので、1歩1歩、1つ1つ事実を掘り起こして、あの時点で私たちが事実としてつかみ、そして客観的にも紹介できると思ったもので、これはやはり提示しておくべきではないかと判断したものについて番組の中で触れた」「当時は、まだ、それが、いわゆるオフィシャルな形で事実だと言われていない中での取材でありながら、今となってみれば、実際のところ蓋を開けてみると事実だったことは、たくさんある。それだからこそ、最大限の注意を払って制作した」と説明した。
番組が若山教授の言い分に偏っていて公平ではないと申立人が主張していることについては、「様々な疑問を申立人と若山教授のいずれにも向けて取材を続けてきた。常に若山教授が述べていることに矛盾はないか、どこまで客観的に証明できるかを念頭に置いて取材を進めた。ES細胞の混入の可能性について、申立人、若山教授、いずれの考えもそれぞれきちんと伝えている」と述べた。
申立人がマウスの取り違えの可能性に触れずにES細胞混入を指摘したと主張する点については、「番組では若山教授が語った『僕の方に何か間違いがあったのか』というコメントを紹介している。これは若山教授がマウスを渡し間違えたか、と言っているわけだ」「若山教授の歯切れの悪い様子もそのまま伝えており、どちらとも断定していない番組にきちんとなっている」と述べた。
申立人が、視聴者に伝わったのは申立人によるES細胞の窃盗疑惑である、と主張している点については、「盗んだかどうかはわからないが、ファクトとして留学生のES細胞がそこにあったことを伝えた」「番組では、アクロシンが入ったES細胞の話はいったん終わって次の新たな事実について述べるとコメントし、新たな話を始めるとの意図をもって映像も理研の外観を出した」「この部分は時間としてはつながっているが、科学的な側面と管理状況の側面を並立させて見せている」と主張した。
実験ノートの番組での使用について申立人が著作権侵害だと訴えている点についてNHKは、「実験ノートは報道のための利用であり、著作権侵害には当たらない」「多くの人間が閲覧して吟味することを目的として作成されているものなので、本来、著作者人格権の公表権の行使が予定されている著作物ではない」などと主張した。
笹井教授とのメールの公開については「当該のメールは理研の調査委員会に提出された公の資料で、笹井教授本人が実験における自らのかかわりを説明するために提出したものだ。一連のSTAP細胞の件では、発表されたことが二転三転することも多々あり、その中で我々が重要と考えたのはとにかく事実を提示することだった。メールのやり取りは笹井教授が論文作成に確かに関わっていた明確な証拠だ」と述べた。
番組で専門家として紹介した人たちが論文の疑義を指摘した点について、「明らかに科学的におかしいとわかるところをどうやってピックアップするかについて長時間ディスカッションした」「集まってもらった専門家は、それぞれ学会の中での役を務めているような人たちで、ひとつひとつの図について点数のようなものを付けて、その上での最終的な結果が番組で紹介したものだ」と説明した。
申立人が、NHKの強引な取材によって怪我をさせられたと訴えている点については、「怪我をさせた、させないに関わらず、迷惑をかけたという認識は変わっていない。しかしながら、申立人の主張には事実と異なる部分がいくつもあり、その点については複数の映像や取材スタッフの証言をもとに再度確認して説明した」など、詳しく考えを述べた。

2.その他

  • 4月の定例委員会で審理入りが決まった「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)と同(熊本県民テレビ)に関連して、熊本地震の被害状況等について事務局から報告し、6月の委員会で実質審理入りすることが決まった。

  • 次回は6月21日に定例委員会を開催する。

以上

2016年5月に視聴者から寄せられた意見

2016年5月に視聴者から寄せられた意見

交通事故の際の運転者の病歴についての報じ方や、女子中学生が電車に飛び込み自殺したニュースに関して、配慮を求める声。中国人のマナーなどを取り上げた番組について、一部の人の行為が中国人全体の習慣であるかのように受け取られかねない内容だった、との批判など。

2016年5月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,273件で、先月と比較して396件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール71%、電話27%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性66%、女性31%、不明3%で、世代別では40歳代28%、30歳代26%、50歳代18%、20歳代17%、60歳以上9%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。5月の通知数は569件【48局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、17件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

熊本地震の報道に関して、引き続き意見が寄せられた。
交通事故の際の運転者の病歴についての報じ方や、女子中学生が電車に飛び込み自殺したニュースに関して、配慮を求める声が寄せられた。
中国人のマナーなどを取り上げた番組について、一部の人の行為が中国人全体の習慣であるかのように受け取られかねない内容だった、との批判が寄せられた。
"不倫問題"で活動休止中の女性タレントが出演した番組に関して、さまざまな意見が寄せられた。
ラジオに関する意見は40件、CMについては26件あった。

青少年に関する意見

5月中に青少年委員会に寄せられた意見は74件で、前月から3件減少した。
今月は、「表現・演出」が19件と最も多く、次に「危険行為」が8件、「性的表現」が7件と続いた。
「表現・演出」では、出演者が刺青をしていたことや、海外の"どっきり企画"を紹介する番組について意見が寄せられた。
「危険行為」では、先月に引き続き、バラエティー番組で、ミニトマトをかまずに何個口に入れることができるかを競っていたことについての意見が目立った。
「性的表現」では、夕方のバラエティー番組で、アシスタントの女性に卑猥な言葉を言わせたことなどについて意見があった。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 地震災害現場から中継の際に、報道する側の人間だけがヘルメットをかぶっている。つなぎの作業着を着ているリポーターもいる。安全上必要なのだろうが、住民が防護用具などをつけていないのに、リポーターやカメラマンのいでたちには違和感を覚える。

  • 熊本地震に対して各国から支援の手が差し伸べられているが、申し出た国によって伝え方に差があるようだ。アメリカからの支援については大々的に伝えるが、アジア諸国からの支援についてはあまり取り上げられていない。厚意については、区別なく伝えるべきだ。

  • 神戸での自動車事故のニュースで、「容疑者にてんかんの持病はない」との説明があった。この病気が原因であったのなら、この情報も必要だろう。だが、なぜ早い段階で、「てんかん」を患っていたかどうかについて触れなければならないのか。私もこの患者だが、程度は人それぞれだ。表現一つで当事者や家族を悲しい思いにさせることを考えていただきたい。

  • 「てんかん患者」が起こした交通事故がワイドショーやニュース番組で報じられるが、この病気について知識のない視聴者に偏見を植え付けることになっていないか。患者団体「日本てんかん協会」に中傷の電話が殺到したことがある。患者は、不可解な職場の配置転換や解雇、求職先からの門前払いなどの不利益を受けている。条件がそろえば誰でもかかる病気であり、症状にかなりの個人差がある。視聴者がこの病気に関して正しい知識を持てるように、番組で取り上げていただきたい。

  • 女子中学生2人が都内の駅で電車にはねられて死亡したニュースを伝えていた。飛び込み自殺したと見られるとしながら、実名で報道していた。「速報」ではあったが、扱いは適切だったのか。遺族の心情を考えると胸が痛む。

  • 都内の駅で2人の女子中学生が電車に飛び込んで自殺する出来事があったが、娘を亡くしたばかりの母親にマイクを向ける取材には疑問を覚えた。事故や犯罪に遭われた人の家族に対しては、本人達が望まない限りそっとしておいてあげるべきだ。どのような気持ちでいるのかは十分想像できるからだ。

  • 常磐道でバスと乗用車が正面衝突し、車を運転していた母と6歳の女児が亡くなる事故があったが、その直後に自宅にいた遺族(ご主人)にインタビューしていた。「亡くなったお二人に言葉をかけてあげるならば?」などというデリカシーに欠ける質問をしていた。涙をこらえ気丈に答えていたご主人がふびんでならない。

  • ニュース番組で、中国で起きた交通事故を紹介していた。横断歩道で子どもが車にひかれ、体の上をタイヤが乗り越えた。横たわったその子のところに人々がかけ寄る映像で、「命に別状はなかった」との説明があったが、そもそも命に別状がないのであれば、取り上げる必要性はあったのだろうか。ショッキング映像を集めた番組ならば見るかどうかを判断できるが、ニュースでこのような映像を流すのは如何なものか。

  • 未成年が事件を起こした時に、少年の自宅や学校の周辺などで取材を行っているが、その少年が容疑者であるということを広めているようなものではないか。再犯の防止や更生の観点からも疑問に思う。

  • 沖縄で起きた女性遺体遺棄事件で、コメンテーターが「日米関係は、これぐらいでは傷つかない」と発言し、司会者も訂正しようとしなかった。人が殺されているのに、「これぐらいでは」とはどういう神経なのか。沖縄の人達の心を傷つけたはずだ。それに、日米関係にも大きな影響が出ている。

  • マンションの女性コンシェルジュが俳優夫妻の部屋に侵入した事件について、各局が大きく取り上げて容疑者を実名で報じていた。単に住居に侵入しただけの軽微な事件なのに、これを実名報道するというのならば、ほとんどの住居侵入事件について実名で伝えなければならなくなるだろう。話題性や被害者の知名度によって容疑者の扱いが変わるのはおかしい。

  • 保育士不足問題を追う中で、複数の認可保育園を運営する企業を取り上げていた。だが、同社のある保育園をめぐっては、運営体制に問題点があるとして、区議会でも取り上げられている。この企業を紹介したのは適切だったのだろうか。

  • 「自閉症スペクトラム障害」と少年事件の問題を追った番組を見た。私は施設で心理士をしているが、"自閉症スペクトラム=犯罪を行う"かのような偏見が誤りであることを伝える番組で、感心して見ていた。しかし、「児童自立支援施設」の入所児童を取材した場面で、「不良行為をするおそれのある少年達を自立させる施設」と説明していた。これには、厚労省の定めた「家庭環境その他の環境上の理由」という同施設の入所規定が抜けており、家庭の事情により入所している児童たちも、何らかの"触法"をしたと思われかねない。施設から学校に通う児童に対して、偏見を生むおそれもあるのではないか。

  • 各局でオバマ大統領の広島訪問を伝えている。歴史的な出来事かもしれない。しかし、若者や国民の多くは「アメリカの大統領が初めて広島に来た」と騒いでいるだけで、真珠湾攻撃から広島・長崎に原爆が落とされるまでの経緯について理解しているのだろうか。この機会に、当時のことを丁寧に説明する番組があっても良いのではないか。

【番組全般・その他】

  • "不倫問題"で芸能活動を休止していた女性タレントが番組に出演していたが、テレビに復帰させるのは早過ぎではないか。最低限、質疑応答ありの記者会見を開き、きちんとしてから出演させるべきだ。視聴者やファン、仕事関係者に対して筋を通していないと思う。

  • 朝からタレントの"不倫問題"を面白おかしく騒ぎ過ぎだ。彼女が政治家であるならともかく、タレント活動をする一人の女性として、出演できなくなった今の状況は気の毒だ。不倫によって視聴者の誰かに迷惑をかけたわけでもない。プライベートな問題をネタに叩くことはやめるべきだ。

  • "不倫騒動"で出演を休止していた女性タレントを番組で復帰させたが、事前収録した情報が放送前に流れることで、騒動を視聴率稼ぎに利用したのではないか。話題になれば不倫さえも利用するのか。

  • 日本に住む中国人や中国人観光客によるマナー問題を再現VTRなどで紹介し、スタジオの在日中国人50人が意見を述べていた。中国人のマナーをめぐるトラブルについては、これまでも日本のテレビで報じられるたびに、ネットを通じて中国国内でも「あり得ない」「海外に恥をさらさないでほしい」などと、批判の声が上がっていた。日本に暮らす中国人はなおさら、一部の人によるそのような迷惑行為に怒っている。しかし、この日出演した中国人達の発言から伝わってくる内容は、"日本にいる中国人にはマナーの悪さに問題を感じていない人が多い"というものだった。番組は中国人の考えを正しく伝えていない。

  • マナーの悪い中国人を取り上げ、ほとんどの中国人が非常識であり、マナー違反が中国では当たり前であるかのように伝えていた。マナーの悪い人は実際にはごく少数であり、私の周りの在日中国人は日本人の偏見を無くすため、人一倍マナーを守って生活している。その努力が番組で踏みにじられたように感じた。中国人も多数出演し、そういった行為について意見を述べていたが、編集され、おかしな発言ばかりが放送されたのではないか。

  • 日本に来て5年になる。初めてテレビ番組に対して非常に怒りを覚えた。どの国にもマナーが悪い人はいるはずだが、ごく一部の中国人による事例を取り上げ、中国人全体の習慣であるかのような編集や演出があったと感じた。番組は誇張・歪曲されており、ルールを守って日本で暮らしている大多数の中国人への偏見が助長されるのではないか。

  • 鳥を蹴ったら死んでしまった、というエピソードを笑い話にしていて胸が痛んだ。犬や猫ではなく、鳥などの小動物だったら笑い話にしても許されるのか。

  • 世界の"衝撃映像"を集めた特集だったが、UFOが出現する動画などがいかがわしかった。作られた映像や、事実が確定していない情報を流していたと感じた。いい加減な内容の番組は放送すべきでない。

  • 大学OBのタレント・有名人によるクイズ対抗戦で、出演した法曹関係者が「東大以外は専門学校」と、専門学校をさげすむ発言をした。私の娘は専門学校で、国家試験合格のために勉学に励んでいる。差別的発言が流され、不愉快だった。

  • 両目の間の距離が長い"魚顔"の人は視野が広いかどうかを検証しようと、街頭でそのような顔立ちの人に声をかけ、実験参加を要請する企画があった。結局、タレントで実験することになったが、人の容姿を引き合いに出し、能力を試すような演出は如何なものか。

  • 大型トラックに乗りこんだ男性タレントとスペシャルゲストが、ドライバーと一緒に国道1号線を駆け抜ける企画だった。沿道の食堂やお店、観光情報などとともに、トラックドライバーの意外と知られていない仕事ぶりや魅力も紹介されていた。ドライバーのイメージ向上にも繋がると思う。続編を期待している。

  • 終電を逃した人の家について行くという番組だが、それぞれの人生ドラマがあり、それを聞いて胸打たれる人、勇気をもらった人もたくさんいるのではないか。多くの人に是非見てもらいたい。

  • 各局の女性アナウンサーが多数出演した番組で、あるベテラン女性アナウンサーが、若い女性アナウンサーに向かって「社会情勢を理解してニュース原稿を読んでいるのか?」「報道番組をやっていたなどと言えるのか?」などのコメントを投げかけていた。タレントと一緒に騒いでいる"女子アナ"にはウンザリしていたところだ。よくぞ言ってくださった。

  • 自身の政治資金問題が浮上した知事のあだ名をテレビ投票で決めていた。「ハゲ暴れ牛」「巻き添えさん」「ねずみ男」「ケチ事」の4択で、どれもひどいものだった。投票の結果、「ケチ事」になり、出演者が笑っていた。あだ名を視聴者に投票してもらって決めるという神経を疑う。

  • 高齢の父親が「最近、プロ野球中継が以前より少なくなった」と嘆いている。なかなか外へは行けないので、テレビ中継だけが楽しみのようだ。CSでは専門チャンネルもあるらしいが、受信契約する余裕はない。地上波でも衛星放送でも構わないので、プロ野球中継を増やしていただきたい。

  • バラエティー番組では、これでもかというぐらいにテロップが出る。色、形、大きさなど、やりたい放題だ。全部不要とは言わないが、あまりにも過剰だ。NHKですら民放の後を追っている。テロップの氾濫を不快に感じる者は私だけではないだろう。

【ラジオ】

  • DJがリスナーと一緒に世界中のさまざまな問題について考えるとともに、社会活動をしている企業や団体、人物にスポットを当てるという番組だ。その最終回を聴きながら泣いてしまった。ラジオを聴いて泣くなんて初めてのことだ。こんな良質な番組のスポンサーや協力した企業、団体の名前は一生忘れないだろう。

  • この番組では「うんこ」や「けつ」などの下半身ネタが多すぎではないか。最近は他番組でボツにされたとされる視聴者からの投稿を読み上げていたのだが、その内容がまた、品がなかった。

  • 「リスナー参加型番組」として、リスナーと話したりメールを読んだりするのだが、同じリスナーからのものが多く面白みに欠ける。他の人からもメールを募集するなど幅を広げていただきたい。

【CM】

  • ゴキブリなどの駆除剤のCMを食事の時間帯に流されるのは、気分が良くない。スポンサーあってのテレビであることは分かるが、時間帯に配慮していただきたい。

  • なぜ、消費者金融のCMが多いのか。借金を推奨しているようで気になる。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 音楽番組に複数のバンドが出演したが、刺青をしている人が目立った。一部の人は服で隠していたが、そのまま映っている人が多く、不愉快になった。スポーツ選手などにも刺青をしている人が増えているが、すべての日本人が刺青を容認しているわけではない。外国とは宗教や文化が異なるので、快く思わない人の方が多いのではないか。子どもたちに悪影響を与えないよう、刺青を隠して出演させるなど、制作側が配慮すべきだ。

  • 海外の"どっきり企画"を紹介する番組を見た。ターゲットをエレベーターに閉じ込めて電気を消し、生きたカエルやネズミを投げ入れるいたずらをしていたが、場合によっては犯罪として立件されかねないような企画だと感じた。視聴率を取るためにはどんなことをしてもいいのか。不愉快だし、教育上も不適切だ。

【「性的表現」に関する意見】

  • 夕方のバラエティー番組で、出演者がアシスタントの女性に卑猥な言葉を言わせたり、公営ギャンブルについて話したりしている。時間帯を考え、もっと子どもの視聴に配慮してほしい。

  • ゴールデンタイムのバラエティー番組で、出演者が性風俗産業について話をしていた。子どもと一緒に見ていた家庭も多いと思われる。配慮が欠けているのではないか。

【「差別・偏見」に関する意見】

  • 子どもたちに人気のバラエティー番組で、"罰ゲーム"として、同性愛者が多く集まると言われている地区でロケをする企画があった。同性愛者を貶め、偏見を助長するような言動もあり、「同性愛者は笑いの対象にしても良い」との差別意識を与えかねない。番組を見た性同一性障害や同性愛などのLGBT(性的少数者)の人たちは傷ついただろう。学校でのLGBTへのいじめが国際的にも大きな問題となっているなか、このような企画を行うべきではない。

第181回 放送と青少年に関する委員会

第181回–2016年5月24日

視聴者意見を中心に意見交換…など

2016年5月24日に第181回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席し、まず、4月16日から5月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、5月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は6月28日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年5月24日(火) 午後4時30分~午後7時20分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

  • 「出演者が、"ミニトマトをつぶさずに何個まで口に入れられるか"というゲームをしていた。危険だし、子どもが真似をしたらどうするのか」という視聴者意見について、委員からは「無理に食べさせられたのではなく、自分のペースで口に入れていた。息が苦しくなることも無く、子どもが真似をすることも無いだろう。どちらかというと無邪気に楽しんでいる雰囲気だった。問題は無いだろう」との意見がありました。

  • 「『イブアイしずおか』(静岡放送)で毎週木曜日に放送されている"3丁目の昭和"は、県内各地に残る歴史遺産や職人技、老舗、アナウンサーと地元住民との交流を通じて楽しみながら郷土の歴史を学ぶことができ、子どもたちの勉強にもなる素晴らしいコーナーだと思う」という視聴者意見があり、参考のために静岡放送の協力を得て、2015年10月15日放送分を視聴し、意見交換しました。委員からは、「地元局のアナウンサーが、昭和の面影を探しながらそこに住む人たちとふれあうというローカル局ならではの良さがあった。昭和の歌謡曲を流しているのは雰囲気が出ていた」「地元の人でも知らないことを紹介するのは面白いと思った。少し冗長に感じたが、そのゆるさが良いのかもしれない」「アナウンサーが"いつも見ているよ~"と声をかけてもらっていた。地域に愛されている番組なのだなと思った。でも紹介していたシャッター商店街は悲しい感じがした」「子どもたちにもためになる情報がたくさんあった。再編集して子どもたちが見られる時間帯に放送してはどうか」「古いものを探しているだけで、昭和に対する熱意が足りないと感じた。昭和から何が見たいのか曖昧になっていて作る側の意図が見えてこない。制作費など厳しい条件は理解できるが、そこは情熱で"発見の喜び"を表現してほしい」などの意見が出ました。汐見委員長は「地方局で、お金や人が足りない中で、昔の良いものを探して町の再発見をする企画としてなかなかうまく出来ていると思った。今後の頑張りに期待したい」と感想を述べました。

中高生モニター報告について

32人の中高生モニターにお願いした5月のテーマは、「最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想」でした。また「熊本地震に関する報道について」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。29人から報告がありました。
「報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想」では、複数の番組について書いたモニターや、ジャンル分けの難しい番組への報告もありますが、おおよそ報道番組について6人、情報番組について10人、ドキュメンタリー番組について13人、その他の番組について3人から報告がありました。取り上げたテーマは違うものの、『NHKスペシャル』(NHK総合)には5人から、『報道ステーション』(テレビ朝日)と『ドキュメント72時間』(NHK総合)には、それぞれ3人から報告がありました。NHKの番組を取り上げたのは13人、BS放送の番組は4人から、ラジオ番組では『JAM THE WORLD』(J-WAVE)について1人から報告がありました。地元局制作の番組では、九州の話題を取り上げる『なるほど 実感報道ドドド!』(NHK総合)、北海道の情報番組『いちおし!モーニング』(北海道テレビ)、広島の夕方の情報番組『テレビ派』(広島テレビ)についての意見がありました。
「熊本地震に関する報道について」では、迅速な報道について評価する一方、被災者への取材のあり方に疑問を投げかける報告が多く見られました。「被害報道」と「注意喚起」のバランスが不十分という意見や、支援物資の状況やボランティアについての情報が少ないこと、取材ヘリコプターの騒音について、取材する側のマナーの問題などについての指摘がありました。
「青少年へのおすすめ番組について」では、『はじめてのおつかいSP』(日本テレビ)、『日曜ファミリア戦闘中』(フジテレビ)にそれぞれ2人から報告がありました。

◆委員の感想◆

【最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想について】

  • 視聴者としての意見だけではなく、制作者の考えを意識してリポートを書いている人が複数いた。モニターになったばかりなのに鋭い視点だなと驚く一方、素直に番組を見てほしいとの気持ちも持った。

  • がんと闘いながらプロ棋士を目指した青年を追った『ザ・ノンフィクション 生きて~天野貴元30歳~』(フジテレビ/東海テレビ)のリポートがあった。報告内容も詳細で、番組を視聴した後に、自らインターネットなどを使って主人公について調べ上げるなど、番組の選択を含めて興味深いリポートだった。

  • 難関校を受験する小学生に密着した番組や、一流の指導者が子どもたちにレッスンする番組など、モニターと同世代の人たちに関する番組について、「見ているうちに、頑張れ!合格してほしい!という気持ちになった」「私たちだけではなく、親世代にも見てほしい」など素直な感想が寄せられた。

  • 観光バスの事故について取り上げた『NHKスペシャル』(NHK総合)についての報告では、番組内容を自ら分析し、原因や対応策の必要性など、社会に対しての問題提起にまで踏み込んでいて感心した。

  • 報道番組についての報告では、放送における公平・公正を誤解しているかのような意見もあった。インターネットサイトでの意見などを鵜呑みにしている面があるのかもしれない。政治的公平性と報道の自由については、青少年にも理解できるよう、放送局側が努力し、丁寧に説明していく必要があろう。

  • 番組の内容だけではなく、字幕の大きさやモザイクなどの映像処理、番組中に画面で流されるツイートの表示の仕方などに言及した報告もあった。具体的な指摘がされており、放送局にも参考になるのではないか。

【熊本地震に関する報道について】

  • 被災地からの情報を全国に流すだけではなく、被災地に向けて、被災地が元気になるような番組や被災地の人に役立つ番組を放送してはどうかとの意見があった。これからは、技術的にもそうしたことが可能になってくると思われる。新鮮な良い指摘だ。

  • SNSの情報によって一部の避難所に救援物資が集中してしまった現実を踏まえ、放送を通じて現状を伝え、そのギャップを埋めることはできないのかとの指摘があった。

  • 報道自体についての感想ではなく、インターネットやSNSで入手した情報を基に放送局を非難している面も見られた。

  • 取材体制や方法などについては、放送局側もしっかりと検証する必要があろう。その上で、報道する必要性などについて、あらためて視聴者に理解を求めていかなくてはならない。

◆モニターからの報告◆

【最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想について】

  • 『ボクんちの中学受験奮闘記~超難関校を目指せ!笑いと涙の200日』(BS日本)難関校を目指す小学生に密着してその努力の様子を撮影した番組でした。家庭での勉強の様子や塾での先生とのやり取りまで放送されていて、受験は勉強だけでなく、自分の弱さや欠点に気づき、それを克服して人間として成長していくものだと気づかされ、見ごたえがありました。いろいろなタイプの受験生がいて、心の葛藤も感じられ、見ているうちに頑張れ!合格してほしいと応援する気持ちになりました。受験するしないにかかわらず、同世代の目標にむかって頑張っている人を見ることで、自分も頑張ろうとやる気をもらえる番組なので、ぜひいろいろな人に見てもらいたいと思いました。(宮城・中学1年・男子)

  • 『NHKスペシャル そしてバスは暴走した』(NHK総合)バス運行会社イーエスピーは、適性検査で「死亡事故を起こしかねない」という判定が出ていた運転手を採用したのはおかしいと思う。運行管理者は契約書を使用しないで交渉などをしていただけでもびっくりなのに「そういうのをやるべきなんだよね、普通は」だなんて他人事すぎるなーと正直思う。番組の編集については、字幕がていねいに分かりやすく詳細につけられていたため良かったと思う。顔に大きめにモザイクがかかっていたのは、一人一人のプライバシーを尊重する気持ちが表れており、たいへん良い。更に、変声が加わるともっと良いと思った。新聞記事(雑誌などでも)を番組内に取り入れると信憑性が増し、視聴者の脳裏により鮮明に物事を焼き付けられるとともに事故の重大さを伝えることができるのではないだろうか。タイトルも「これ見たい!」というように見る人を引き付けられるベストのタイトルだと思う。(石川・中学2年・女子)

  • 『奇跡のレッスン』(NHKBS1)は、元トップアスリートや、トップアスリートを育てる人が出演しています。私ははじめ、その人たちの教え方は厳しいのではないかと思っていました。でも実際に見てみると、トップアスリートでなくても取り組めるようなことがたくさんありました。番組の中で、自分のプレーに自信の持てない子がいました。そのコーチは、プレーの上手なやり方を教えるのではなく、その子に基礎を徹底することや、自分を信じること、強い心で戦う姿勢について教えていました。そのコーチの言葉は、その子だけでなく、私たちが何かをするとき、どんな分野であっても大切なことだと思います。学校の先生や、私たち中高生のみならず、私たちの親世代の大人など、もっとたくさんの人にこの番組を知って、見てもらいたいと思います。(岡山・中学2年・女子)

  • 『JAM THE WORLD』(J-WAVE)学校から帰宅するとテレビのニュース番組を見る機会がないので、月曜日から金曜日の20時からということもあり宿題にとりかかりながら、この番組を聴いています。番組の初めに今日起きた主要なニュースがあり、曜日ごとに異なるパーソナリティーが、ニュースに対して簡単にコメントをしたり、話題のニュースを掘り下げたりするコーナーが幾つかあるのですが、その中でも私が好きなのは、番組の最後に、テレビでは取り上げられることが限りなく少なくなった東日本大震災での被災者や被災地で支援活動をしている人に生電話する"HEART TO HEART WE ARE ONE"という企画です。私は横浜育ちで、阪神淡路大震災も新潟中越地震・東日本大震災それから先日の熊本地震が起きても、そんなに影響なく学校へ行けています。知ることのない現在の状況を現地の人や支援する人たちの声を毎日聞ける貴重な企画だなと思いました。(神奈川・中学3年・女子)

  • 『ザ・ノンフィクション 生きて~天野貴元30歳~』(フジテレビ/東海テレビ)この番組を僕は途中から見たのですが、生きていることについて考えさせられました。この番組の主人公は天野貴元さんという方です。天野さんは将棋がとても大好きな方です。天野さんは人生の途中で舌ガンが見つかります。そして番組の最後ではお亡くなりになります。天野さんはガンと闘いながらも大好きな将棋の大会などに出たりしますが、どんどん痩せて弱っていく天野さんを見るのが僕は辛かったです。天野さんの一日一日にカメラマン一人で密着取材していました。普通の番組のようにナレーションが入るわけでもなく、音楽が流れるわけでもない生々しい天野さんの生活にリアルさがあり、なんだか不思議な感じでした。世の中にはとてもたくさんの人がいて、みんながみんなそれぞれの違う人生を送りますが、僕がいつも通りに生きていたら天野さんのような方には出会わないだろうと思うと、この番組を見てこんな生き方もあると知ることができて良かったと思います。僕はそのあとも天野さんのことが気になり少し調べました。そしたら、天野さんのSNSが出てきました。そのSNSの投稿は亡くなる数日前で止まったままでした。なんだかとても悲しくなりました。最後の投稿はとても天野さんらしい強い心を持った文章でした。そのSNSにはドキュメンタリーを見た方々の感想がたくさん送られていました。この番組を見て何か感じた人がたくさんいて嬉しかったです。愛知県では夜遅くに放送していましたがもっと早い時間に放送してたくさんの方に見てほしいと思いました。特に見る予定もなく途中からにも関わらずチャンネルを止めて見入ってしまうほどこの番組には何か感じるものがあると思いました。(愛知・中学3年・男子)

  • 『報道ステーション』(テレビ朝日/朝日放送)で取り上げられるニュースの内容は良く、基本的には事実に基づいて報道されているように感じるが、問題も感じる。一つは、朝日新聞の論調が色濃く反映されている点である。テレビ(特に地上波)は誰もが自由に見られるものであるにもかかわらず、非常に偏った報道をしているように感じる。例えば普天間基地問題。基本的には基地建設反対派の意見しか取り上げない。賛成派を取り上げたとしても、微々たるものである。このような偏った主張ばかり取り上げていると、いま社会問題について勉強をしている我々中高生がその主張に洗脳されてしまうことを危惧している。報道番組の意義、中立な報道とは何なのか。再確認が必要だと感じている。(兵庫・中学3年・男子)

  • 『ニュース7』(NHK総合)今日はこのようなニュースがあったというのが、途中から見ても一目でわかるのが良い。また最近は、難解ではあるけれども重要なニュース用語について、小欄で解説を加えてあることもあり、今後こういった解説が増えてくると、視聴者にとって距離の近いニュース番組になると思う。敢えて注文をするならば、番組の冒頭に、「ラグビー日本代表 歴史的勝利」と大きく見出しをつけ、「お、今日はこれがトップニュースか」と思わせておきながら、最初のニュースは「荒れた天気 大雨」みたいなことがしばしばある。トップニュースは、何がどうであれ最初にやる、とメリハリをつけた方が良いような気がする。30分という時間の中で、必要なことを必要なだけ伝えるという姿勢は見事。日本唯一の年中無休のニュース番組として、大いに期待している。(京都・高校1年・男子)

  • 『テレビ派』(広島テレビ)広島県を中心とした情報番組で、私が毎日見ている好きな番組です。月~金にかけ数多くのコーナーを放送していて、毎日見てもあきない番組だと思います。頭の体操や視聴者参加型の企画、また、カープ情報や最新の健康法など、これこそまさに"情報番組"だなと思える番組です。この番組の場合、毎回の放送で必ず生中継のクイズ"街かど脳トレ"を街中でやっていて、『テレビ派』と言えば"脳トレ"だよねと言えるような代表的なコーナーを持っていることが多くの人に認知してもらえる理由だと思います。ローカル番組ならではだが、地域の話題にもとても素早く注目していて、視聴者の意見や情報と上手につきあっていることが、見ていて安心できる番組になるのではないかと思います。ここ最近の情報番組や報道番組などは、堅苦しく、ニュースや情報だけを伝えていては視聴者は見ないので、各番組が試行錯誤を繰り返しているのだなぁと常日頃思うところです。(広島・高校2年・女子)

  • 『ドキュメント72時間』(NHK総合)この番組は、1つの場所を72時間連続で撮影・取材し、その中で見えてくる人間模様を観察する番組です。いままであまり見たことのない斬新な手法で、放送時間も約30分と長すぎず、とても見やすい番組です。今回私が視聴した5月6日の放送では、東日本大震災から5年となる3月10日~3月12日の3日間、仙台にある食堂の様子を取材していました。「震災から5年、食堂を訪れる人はなにを思うのか?」というテーマでした。地元の人や会社の営業マンはもちろん復興工事の作業員も多く利用していました。そんな中でたくさんの人間模様がみえてきました。食堂ということで、食べることに焦点がおかれていました。ある女性は「震災直後は、家にあるお菓子などしか食べられず、3日後にやっとおにぎりを食べ、米ってこんなにおいしかったのかと感じた」という言葉はとても印象的でした。私たちは「食べる」ことをあたりまえのように感じていますが、「食べる」ことは決してあたりまえではないことを強く感じました。また、その女性は「こんなことがあったけれどもそんな気持ちは忘れてしまった」とも言っていました。5年という月日は短いようで長いのです。しかし、「地震・津波の怖さ」「食べるありがたさ」など忘れてはいけないことはたくさんあると思います。3月11日、この食堂にはいつもと変わらない光景が流れていました。復興も進み、日常生活を取り戻している今、何を考えて生きていけばよいのかをこの番組で感じることができたと思います。(山口・高校2年・男子)

  • 『とくダネ!』(フジテレビ)僕はこの番組を学校に行く前の最初の5分間しか見られないのだが、初めの時間帯に「思わず笑ってしまうニュース」を取り上げることがある。この時間の他の番組のトップニュースや他の時間帯の番組では、最初に暗いニュースを取り上げることが多くなっているが、この番組は「どうでもいい」ようなニュースを取り上げてくれるため、学校に行く前に暗い気持ちにならず、明るい気持ちになれるので良いと思う。(東京・高校3年・男子)

【熊本地震に関する報道について】

  • 地震が起き2週間が過ぎ、問題になっていることがあります。それは、ボランティアに参加希望している方々が、申し込みをせずに勝手に来てしまい混乱を招いていることです。しかし、テレビは、このことばかり取り上げ、頑張って命懸けでボランティア活動をしている方々の努力を紹介していません。ただ、自分も被災しているのに食料や寝具の配給を手伝っている小学生・中学生・高校生の頑張りをよく報道しています。このようなことは被災者も、同じ日本国民も安心することができる素晴らしい情報だと思います。(東京・中学1年・女子)

  • 避難所によって支援物資の量が違い、ある所ではたくさんのおにぎりが廃棄されているのに、別の避難所ではわずかな物資しか配られないというニュースを見て、被災者全員が同じように食事ができるよう、きちんと状況を把握して対応するにはどうしたらいいのだろうと考えさせられました。せっかくボランティアをやりたくて訪れたのに、やることがなくて帰るしかない人が多い状況が発生しているので、行く前に募集人数や締め切り状況などをリアルタイムで共有できるようなシステムがあればいいのではないかと思いました。(東京・中学2年・男子)

  • 私自身、広島の土砂災害を体験したが、報道関係の人たちは正直言って大変迷惑だったのを覚えています。救助隊の人たちが生存者を探しているにも関わらず、ヘリコプターの音で声は全然聞こえてこないし、道は取材の人たちで一杯だし、救助隊の人たちも「ヘリの音で生存者の声がいっさい聞こえない。これでは救助の邪魔だ」と言っていたのを思い出します。どのような対応がいいのかは分かりにくい問題ですが、災害時の報道には気を配ったほうが良いと思いました。(広島・高校2年・女子)

  • アイドルグループ「嵐」が熊本の民放4局から一斉にメッセージを送ったことについて、普段はライバルである4局が協力して今回の地震からの復興に当たっているのだと強く感じました。(埼玉・高校2年・男子)

  • 熊本の様子を伝えるのは大事だと思いますが、あんなにたくさんの記者の人たちが行く必要があるのかなと思いました。私は震度5強の地震を体験しました。とても怖かったですが、テレビでよく報道されるのは熊本ばかりでそれ以外はあまり報道をしないのは違うんじゃないかと思います。(大分・高校3年・女子)

  • "生放送中に男性が乱入し放送を妨害する"というツイートが話題になったが、その男性は「(テレビ局の)車が邪魔で道路をふさいでいる」などと主張していたという。この例に限らず、「被災地に来る記者の態度・行動が悪い」といったことはよくあげられている。せっかく「現在の状況・現場を即座に全国に伝えられる」という利点があるのに、被災者の感情を害してまで「被災者はかわいそう」という視点で報道するのはおかしいと思う。ただ「悲惨・かわいそう」な様子に注目させるのではなく、正しく現場を伝え全国の人が被災地について考えるきっかけにしてほしい。(東京・高校3年・女子)

【おすすめ番組について】

  • 『はじめてのおつかい』(日本テレビ)毎回、とても楽しみにしています。いつも見ていて、知らない子なのにいろいろ心配してしまいます。今回見たのでは、子どもが生まれてからの1,515日をすべてビデオに撮っていた家族がいて、とてもすごいと思いました。(東京・中学1年・男子)

  • 『戦闘中2016 ~アスリート天下統一戦~』(フジテレビ/北海道文化放送)久しぶりにこの番組が放送されていたように感じます。今までの『戦闘中』は、バトルロイヤル形式で広いエリアの中だったのですが、今回は「アスリート天下統一戦」。小さいお題を何個かクリアするだけでした。個人的には、TBSテレビの『SASUKE』に似たところがあるかなと思いました。「クロノス社」のストーリーが全く入っておらず次回の予定などもなかったので「いつやるのか」が分からず次回を見逃してしまいそうで心配です。ストーリーをもっとからめるともっと面白くなると思いました。(北海道・中学2年・男子)

  • 僕は5月4日放送の『アイ・アム・冒険少年』(TBSテレビ)を視聴しました。今回の番組の中では、渡辺直美が人喰いザメとのツーショット写真を撮ったり、トレンディーエンジェルが危険な場所で漫才をするなど、色々な芸人が様々な挑戦をしていました。その中で一番印象に残ったのは、ジャングルポケット斎藤の「実験少年」で、有名ステーキ店の大食いチャレンジメニューをアフリカのサバンナに置いたら、動物が勝手に食べてクリアできるのではないか?というチャレンジでした。実際に撮影している檻の間近で、野生のライオンが大きなステーキ肉3枚をあっという間にたいらげる姿は本当に迫力がありました。野生のライオンが檻の中の人間に興味を示して檻の周りをグルグル歩き回る様子を見て、やはりライオンは肉食動物なのだなと改めて思い知らされました。(東京・中学2年・男子)

青少年へのおすすめ番組について

4月の中高生モニターで、テレビ局が薦める「青少年へのおすすめ番組」についての報告を求めたところ、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK教育)に対して「放送時間は約30分と、忙しい月曜日の夜には適した放送時間だと思いました。放送内容は、新しい勉強法ということで"動画"と組み合わせるというのは、中高生には「見ていて面白い」内容だったと思いました。橋本環奈さんや、大関れいかさんなど、出演者は中高生にはウケが良いでしょう」など好意的な意見が多かったため、NHKの協力を得て、委員全員で4月4日放送の番組を視聴し、意見交換をしました。

『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK教育)
中・高校生向け勉強番組『テストの花道』がリニューアル。勉強法のノウハウをユニークな動画にまとめて、新しい(ニュー)勉強法(ベン)=「ニューベン」として提示。【出演】城島茂(TOKIO)・橋本環奈 ほか(BPOウェブサイトより)

委員からは「今の中高生は、こういう形で勉強しているのだろうか。私は内容が頭に残らなかったが、ネット情報などをうまく使って記憶を定着させていく方法は、すごく新鮮に感じた」「勉強の新しいやり方を紹介するコンセプトは面白い。同世代のタレントも出演しているので、中高生を引き付けるのだろう」「面白く見させてもらった。ただ"6秒動画"で英語の新しい勉強法を紹介していたが、私の世代になるとなかなかついていけなかった。イケメンが古文でささやく動画はよく分かって好意的に見た。女子高校生が双子ダンスで生物を取り上げていたが、今の流行なんでしょうね。でもあれで勉強と言われると難しいものがあるが、こんな勉強法がやがて広がっていくのかもしれませんね」「自分が受験生だった頃には勉強はつらいものでしかなかったが、こんな風に勉強を楽しんでやれるのは羨ましい」などの意見が出ました。

今後の予定について

  • 6月8日に新潟で開催するNHKを含む在新潟テレビ・ラジオ7局との意見交換会について、事務局から事前アンケートの内容報告などがありました。
  • 9月12日に広島で開催予定の意見交換会について、事務局から進行状況の報告がありました。
  • 「夏休み関東地区中高生モニター会議」について話し合いました。年度末に予定している「中高生モニター会議」以外に、中高生モニターから直接意見を聞く場として、夏休みにモニター会議を開催できないかとの提案があり、8月3日に関東地区の中高生モニターを対象にした「夏休み関東地区中高生モニター会議」を開催することにしました。担当は最相副委員長で、内容を検討していくことにしました。
  • 調査研究について、お茶の水女子大学と2年間の受託研究契約を締結したとの報告が事務局からありました。

2016年6月1日

「放送倫理検証委員会 運営規則」の一部改正を6月1日付で施行

放送倫理検証委員会で、昨年から検討を重ねていた「放送倫理検証委員会 運営規則」の一部改正が、5月31日に開催されたBPO理事会で承認され、翌6月1日付で施行された。
改正の内容は、委員会運営の現状に適合させるために、審議や審理に入る前にその適否を議論する「討論」という手続きと、審議の際にも行っている「ヒアリング」を運営規則に明文化したもので、今年4月の放送倫理検証委員会で改正案が議決されていた。(改正後の運営規則はこちら)
なお、この改正に伴い、BPOと加盟各社の間で取り交わしている「放送倫理検証委員会に関する合意書」も、一部改訂された。

2016年5月16日

「自転車事故企画に対する申立て」事案の通知・公表

[通知]
5月16日(月)午後1時からBPO会議室で坂井眞委員長と二関辰郎委員が出席して本件事案の決定の通知を行った。申立人と、被申立人のフジテレビから編成制作局担当者ら4人が出席した。
坂井委員長が決定文のポイントを読み上げ、「フジテレビは、申立人に対して番組の趣旨や取材意図を十分に説明したとは言えず、本件放送には放送倫理上の問題がある」との「見解」を伝えた。
申立人は「放送倫理上問題があることは当然だと思う。今後、フジテレビは被害者遺族を取材する場合は最大限配慮をして欲しい。問題がうやむやにされかねないので、委員会は細かくチェックをして欲しい」と述べた。フジテレビは「決定を真摯に受け止めて、より良い番組作りを目指していきたい。出来る再発防止策はすでに進めているつもりだが、決定を読んでさらに対策をいろいろ講じて委員会に報告したい」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見をして、決定を公表した。
20社32人が取材した。テレビの映像取材はNHKがキー局を代表して行った。
坂井委員長が決定の判断部分を中心に説明し、委員長名で書いた補足意見については「決定の結論部分に『社内及び番組の制作会社にその情報を周知し』と書いたが、いわば委員会を代表してその解説をしたと理解していただきたいと思う。これまで、委員会のヒアリング等の場に制作会社の方が出てくることはなく、今回もそういう機会はなかったが、今回、問題となった部分を担当したのは制作会社のプロデューサーだったので、特に付言をした」と述べた。
二関委員は「番組の趣旨とか取材意図をどこまで説明するかは結構難しい問題だと思う。ただ、本件の場合は、そもそも申立人が交通事故で母親を亡くした遺族であり、かつ、交通事故被害者のために支援活動をしている人で、局側はそういう人だと分かった上で接近して取材をしたという経緯もある。それにもかかわらず、内容的に事故被害者に全然配慮しないドラマが既にできていた段階で、そのことを説明しなかったという本件における個別の事情という部分がある。これからどういう番組を作ろうかという、まさに手探り状態でやっている段階では、取材対象者にこういうものができますと、きちんと説明できない場面も当然あろうかと思う。そこはケースバイケースでの判断で、本件においては説明すべきだったと委員会として判断した」と述べた。

主な質疑応答は、以下のとおりである。

(質問)
そもそも当たり屋を扱うことを制作サイドは決めていたにもかかわらず、インタビューする相手に伝えていなかったというのは、自転車事故の遺族のインタビューは、やっぱり今回の番組にふさわしくないのではないかという後ろめたさみたいなのもあったのではないか?
(委員長)
特にヒアリングで後ろめたさ云々という話はなかった。ただ、決定にも書いたように、局の方も申立人の抱く番組イメージと齟齬が生じるのではないかと考えたとおっしゃっている。それを、後ろめたさと言うかどうかだと思うが、そうであれば、伝えておけば良かったということは、決定に書いたとおりである。
特に放送内容もほぼ固まっていて、最後に申立人にインタビューをされているわけだから、で、あれば、「実はこういう内容なんだけれども」と伝えておけば、こういう問題は起きなかっただろうと。なぜそうしなかったのかは、よくわからない。局の方は台本を渡そうと思ったけれど断られたとおっしゃるし、申立人は、いや、そういう提案受けたことはないとおっしゃっておられるので。
(質問)
今の話を聞くと、口頭で「実は当たり屋が出るんです。当たり屋がテーマなんです」と言わなかったのは、それを言って、相手から「じゃあ、インタビューは受けません」と言われると、もう放送日も決まっているし、内容は変更できないとなると、ちょっとまずいという制作サイドの思いがあったのではないかと思うが?
(委員長)
そういう経緯があるのかどうかは、ヒアリングでも確定しようがない。ただ、事実としてどうだったかは確定のしようがないが、もっと突っ込んで言えば、台本を見せる見せないの話が今回の1番の問題というのではなく、そもそも台本を見せなくてもドラマの内容を口頭で話すことはできたでしょうということだ。口頭で取材の意図や番組の趣旨の説明が出来たのに、そこが落ちている。その問題性は、台本を見せる見せないに関わる事実の確定の必要性とは関係がない。言えば済んだことを言わなかった、それはやっぱり放送倫理上の問題がある、ということで足りるということです。
ヒアリングでいろいろ聞いたが、局の方は、申立人のインタビューはどうしても使わないといけないというわけではないと主張されていた。それが嘘か本当かを追求する場ではないが、そう言われてしまうと釈然としない部分は残りますね。

(質問)
繰り返しになるが、当たり屋という設定を申立人に説明しなかったことについて、フジテレビから説明はあったのか?
(委員長)
そこは、台本を見せようと提案したけれど断られたので、もうそれ以上は進みませんでした、というところで終わっていたと思う。ですから、説明方法の1つとして台本まで見せるんだと。それは、あまりないことだと私は理解しているが。
(二関委員)
もう1つ言うとすると、決定文の12ページのところ、「説明をしなかった理由として、フジテレビは自転者事故の悲惨さを伝える部分で申立人インタビューを使わせてもらいたかったが、インタビュー場面は本件ドラマ部分とは別の部分であることに加え、本件ドラマは当たり屋をメインテーマにしたものではないことから」との理由を言っている。それに対して委員会は、「確かに情報部分とドラマ部分が切り分けられているのは、それはそのとおりだけれども、しかし・・・」ということと、「当たり屋がメインかどうかは問題ではないでしょう」ということを、別のところで判断している。
(委員長)
だから、切り分けているというのが、フジの1つの主張だと思うが、同時に申立人が抱く番組イメージと実際の放送との間に齟齬が生じることを懸念したともおっしゃっていて、そこは必ずしも同じ方向ではないと思う。切り分けられるから大丈夫だが、そうはいっても齟齬が生じるかもしれないと心配した、だから、台本見せましょうかと言いました、だけど、断られました、というところで終わっているという感じですかね。
(質問)
つまり、懸念はあったから台本を見せようという提案はしたが、見せなくてもいいと言われたので、フジとしては一応その懸念は解消されたというか、それで話は終わったということか?
(委員長)
フジは情報部分とドラマ部分は切り分けてあり、申立人が当たり屋であるかのような、同類であるかのような誤解は生じない構成だと思うので、説明の必要性はないと思ったが、でも、懸念もしたので台本を見せましょうと言ったが、断られたという主張だった。

(質問)
つまり、台本を見せる見せないは、さておいて、番組趣旨を何らかの形で説明する必要があった、そこに今回の問題が集約されると理解していいか?
(委員長)
これは私のあくまで個人的理解ですけれど、時には台本を見せることもあるかもしれないが、取材をする相手、インタビューを受ける方に台本まで見せるということは、そうはないんじゃないかと私は理解している。
フジは、申立人がやってらっしゃることは分かっていて、だから取材に行っている。自転車事故でお母様を亡くされて辛い目に会われ、それで支援活動も一生懸命されておられると。そうすると、コミカルに、ちょっと誇張して、「現実にあり得ない」と決定文にも書いたが、しかも、被害者だけれど本当は被害者ではないという内容のドラマを放送したら、申立人がちょっと抵抗を感じるんじゃないかというのは、そんなに理解するのが難しい話ではない。台本を見せなさいとか、見せなかったのがいけないとかいう話ではなくて、「そこを説明すれば、こういう問題は起きなかったですね」というのが、やっぱり根っこじゃないかと思う。
もっと言ってしまうと、結局、これはバラエティーと言われているが、現実に起きたいろいろな事件や事故の被害者であったり心に痛みを持った人を取材して、単なる番組の素材として扱っちゃったら、こういう問題は起きますねということではないか。そういう立場の人の気持ちや心に配慮して、ちゃんと趣旨を説明しないといけないんじゃないか。台本を見せる見せないというより、被取材者の心情に配慮して「こういう番組なんです」と、ちょっと説明すればよかったはずで、それは台本を見せるより、私の理解ではハードルがずっと低いはずです。

(質問)
制作会社の担当者から直接ヒアリングをするという機会は、これまで1回もなかったのか?
(委員長)
放送倫理検証委員会はシステムが違っていて、もっとたくさんの方から、もっと時間をかけて、担当の委員の方が出向いて聞くというシステムをとっているので、制作会社の方から事情を聞くということはある。ただ、我々の委員会では、これまではない。ただ、それはやってはいけないということでもないし、制作会社側にヒアリングを受ける義務があるわけでもないと思う。
ただ、今回あえてこういうことを書いたのは、やはり事実関係を聞きたいときに、特に今回は問題になった説明の部分を担当されたのが制作会社のプロデューサーで、局の方がヒアリングに来ても事実関係を体験として語れないので、そういう機会が必要な場合は、そのようなヒアリングがあった方がいいのかもしれないと考えた。
(質問)
やっぱり制作会社の人からもヒアリングで話を聞きたいと、この補足意見が加わったということか?
(委員長)
補足意見の下敷きにあるのが、決定文の最後の「社内及び番組の制作会社にその情報を周知し」という部分で、これは委員会全体の意見なので、補足意見というのはちょっと適切な表現ではないかもしれないが、このように書いた趣旨を委員長が補足意見で説明したと理解していただければと思う。
決定の一番のポイント、放送倫理上問題ありとしたのは制作会社のプロデューサーがどういう説明をしたかに尽きているわけなので、その部分については特に言っておきたいと補足意見を書いたということです。

(質問)
制作会社のプロデューサーにはヒアリングに出席を求めなかった、あるいは、出席できなかったということか?
(委員長)
今回、委員会から「この方をヒアリングに連れてきてくれ」とは言っていない。我々の委員会の審理の仕方は、申立書と答弁書、それから反論書と再答弁書、関係資料を出していただいて、ヒアリングをして審理をして決定文を書いている。これを裁判の手続きみたいにとにかく精密にやろうとすると、毎回話すことだが、時間ばかりかかるという話になるのでそれはしない。そのような限界の中でやっていることなので、ある意味手続き的にはやむを得ない部分もあるかなと思う。
ただ、実際、バラエティー番組や情報番組は制作会社が関わるケースが非常に多く、だとしたら、事実関係が問題となる場合は制作会社にヒアリングをするという機会があってもいいのかなと。特にこれまで頼んだが断られたとか、そういう話ではないが、事案によってはあってもいいのかなと思う。

(質問)
局に入っている制作会社は非常に多いが、補足意見の最後に出てくる制作会社というのは、本件放送に関わった制作会社を指しているということでいいのか?
(委員長)
基本的にはそういう文脈である。本件は特にそこの問題があったのでと理解いただければと思う。

以上

2016年1月28日

石川県内の放送局と意見交換会

石川県内各局と放送倫理検証委員会の委員との意見交換会が、1月28日に金沢市内のホテルで開催された。6局から46人が参加し、委員会側からは升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員の4人が出席した。放送倫理検証委員会の意見交換会を石川県で開催したのは初めてである。今回は直近の事案である「NHK総合テレビ『クローズアップ現代』“出家詐欺”報道に関する意見」を中心に意見が交換された。
概要は以下のとおりである。

まず第1部の冒頭で、この事案を担当した升味委員長代行が、「問題となったブローカーと多重債務者の相談場面は、視聴者に大きな誤解を与えたとして重大な放送倫理違反を指摘したが、記者は取材対象者に寄りかかってこの場面を作り上げ、裏付け取材も全くなかったなど、NHKが定めるガイドラインに大きく反していた。隠し撮り風の撮影方法や、多重債務者を追いかけてのインタビューも、この相談場面が真実であるかのように見せるために使われており、放送倫理上の問題があった」と、意見書のポイントについて説明した。
参加者からは、「どこまでがやらせなのか、取材者としてその境目を考えさせられる事案だった。そもそも許容される演出とはどのようなものなのか、しっかりと問い直す必要を感じた」などの発言があった。これに対し、渋谷委員から「視聴者がだまされたと思うかどうかがポイントではないか。視聴者の信頼が大事だということを念頭において判断すれば間違いないのでは」という意見が出され、岸本委員からも「今回の委員会の検討の一番の特徴は視聴者がどう見たのかであり、意見書も視聴者の視点から番組がどう見えたかで一貫して書かれている。これは、やらせの定義から入っては、欠け落ちてしまう視点ではなかったか」との発言があった。
また、参加者からは、「このような問題が起こるのは、記者の職責の幅広さと影響力の大きさがある。我々のような小さな局でも、記者が企画、取材、構成、編集、放送と、最初から最後までやるという重い責任を負っているので、どこかで歯止めが必要となる。それは、記者個人の資質ともいえるが、嘘は書かない嘘はつかないという倫理観ではないか」との意見も出された。
続いて、憲法学者の立場から、渋谷委員が放送法をどう考えるかについて、「放送法第一条には、放送法の目的は、放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること、とある。条文の読み方として大事なのは、放送法の究極目的は放送による表現の自由を確保することであり、政府の介入はこれに真っ向から反することになる。また、放送法の目的規定に適合するように条文を読んでいくと、放送法第四条は放送局が自らを律する倫理規定ということになる。他方、放送法は、政府機関、所轄官庁には放送内容に干渉してはいけないという義務を課している」と解説した。
最後に、升味委員長代行からの「意見書の『おわりに』に『放送に携わる者自身が干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる』とあるように、放送に携わる人がきちんと発言を続けるという姿勢を持っていただきたい」というメッセージで、第1部は終了した。
続いて第2部では、「インターネットと報道のあり方を考える」のテーマで、インターネットの情報にどう向き合っていくべきかについて意見が交換された。スマートフォンに代表されるスマートデバイスの発達で、個人がいつでもネット上に情報を発信できる時代となり、テレビのニュースでは、視聴者提供の事故現場の生々しい映像や、フェイスブックからの容疑者や被害者の顔写真が日常的に使われている。
しかし、その一方で、便利さの裏に潜む危険性として、SNSからの顔写真や映像の取り違えが発生している。その具体的な事例や各局のネット情報使用の判断基準などが報告されたあと、ジャ
ーナリストの斎藤委員からネット情報とどう向き合っていくべきかについて次のような問題提起があった。「軽井沢スキーバス転落事故で新聞やテレビが被害者のフェイスブックの写真を使っていたが、ネット上で被害者のカタログを作っていた一般人がいた。その時に感じた違和感は、いつの間にかマスコミが素人と一緒のレベルになっているのではないか、というものだった。テレビも新聞もネットと共存しているというより、単にネットに飲み込まれているのではないか。メディア全体の信頼性が著しく低下していると思っている。何年か前にも高速バスの大事故があったが、その時も規制緩和の問題などその背景への取材が明らかに薄かった。限られた人手とお金でマスコミは何を取材するべきか、という問題を考える契機としてほしい」
これに対し、参加者から「斎藤委員が指摘されたように、事件事故を伝えるためにその写真が本当に必要かを判断し、遺族や関係者の理解と信頼関係を得たうえで、しっかりとした基準と意味をもって使うことが必要だと再確認した」との発言があった。
最後の第3部として、BPOに対する質問と意見のコーナーとなり、昨年9月に放送倫理検証委員会に加わった岸本委員から、ヒアリング、意見書の起草は委員がすべて行うこと、委員会は時間で打ち切ることはなく、決定は全会一致で行うこと、などの説明があった。さらに、「放送に携わる者を守る確かで唯一の基準は、視聴者がどう受け止めるかとの観点を常に持つことではないかと申し上げたが、もうひとつ皆さんを守るものは、放送事業に関する法律への理解と歴史的な経緯への理解だと思う」との意見が出された。
「アメリカではFCC、英国ではOfcomという独立行政機関があるが、BPOという形の方が優れている面があれば教えてほしい」との質問に対して、升味委員長代行は「BPOという存在は確かに独自のもので、世界では独立行政機関が監督するケースも多いが、独立行政機関といっても政治との軋轢はあり、自律を守るためには課題もある。BPOは日本モデルと呼ばれるが、それなりの評価は得ているのではないか。ただし大事なのは、今後も放送局とBPOが自律的な対話ができるかで、お互いに意見を交換することで、もっと自律の意味は出てくると思う」との見解を述べた。
以上のような活発な議論が行われ、3時間30分に及んだ意見交換会は終了した。

今回の意見交換会終了後、参加者からは、以下のような感想が寄せられた。

  • 「クロ現問題」についての具体的なやり取りをする中で、改めて放送人としての自律、私の場合は入社して日が浅いので自立することが大切だなと感じた。やらせの定義や、自主自律、大きくはジャーナリズムのあり方…考え及んだこともない観点、分かっているつもりになっていた事を考えるいい機会になった。具体的には、写真取り違えから派生してSNS上の写真を使うことの是非についての斎藤委員の発言が特に印象に残っている。論点として安易にSNS上の写真を使うことでプロが素人と同じ事をしてどうなのか?というものだった。この観点はネット社会との競合でテレビが淘汰されないためにも、今後重要な視点になってくるように思う。結果としてSNS上の写真を使用する場合があっても、そこに至る信頼関係を築く過程の大事さを知った。これは普段制作現場にいる私にとっても、取材対象者と関係を築いて信頼を得るという点では通ずるというふうに感じた。

  • 今私はドキュメンタリー番組を制作しています。その取材にあたり、今回の勉強会で2つの指針を得ました。1つは、やらせと演出を区別する物差しは「視聴者がだまされたと思うかどうか」だということ。視聴者の受けるイメージと取材過程がかけ離れるのを防ぐためには、取材制作のプロセスを客観的な視点で検証することが必要不可欠だと思いました。そしてもう1点は、取材当初に立てた見立てに縛られないこと。クローズアップ現代では「京都の事件が広がったら面白い」という番組の方向性が生まれ、出家詐欺のブローカーがいるという前提のもと、趣旨に合う人を探し始めたところから取材がおかしくなったように見えました。最初の見立てにとらわれず、現場で起きたことに疑問を持ちその感覚を信じる姿勢でありたいと感じました。

  • いわゆる演出とやらせの境界線とはとの疑問に「線を設けることで免罪符を与えることにもつながる」との答えをいただき、納得することができました。取材対象者がそれはやらせでは?という疑問を持った時点でそれはやらせであり、演出ではない。やはり取材現場の判断、意識、あらゆるものが常識という尺度の元、研ぎ澄まされなければならないと肝に銘じることができました。

  • 普段、BPO報告での委員の皆さんの発言や意見を文字として見て感じていた印象が、随分変わりました。「BPOの存在が制作現場を委縮させている」といった指摘は間違いであり、あくまでも視聴者の視点に立ち意見を述べられていることが、委員の皆さんの真摯な態度、発言から伝わってきました。改めて、放送の「公共的使命」を自覚して、放送内容の向上を目指していかなければと強く感じさせられました。

以上