第87回 放送と人権等権利に関する委員会

第087回 – 2004年4月

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

「国会・不規則発言編集問題」審理…など

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

3月31日の起草委員会を受けてまとめられた委員会決定案について、起草委員から説明があった。また申立人の名誉が回復されているかどうかという視点で、改めて昨年12月17日に放送された続報ビデオテープを視聴した。それを受けて意見交換が行われ、委員会決定案の表現について数か所の修正を確認し、少数意見は後日提出してもらうことにして本件審理を終了した。

このあと、委員会決定の通知・公表について、5月14日(金)午後1時から申立人と被申立人双方に通知,2時から公表記者会見することを決めた。

以下、意見交換の主な内容。

  • 多岐にわたる申立ての論点を4つに大きく絞って判断することにした。
  • 当該放送局が軽率だった点、全体から受ける印象からも問題があること、また取材対象者との意思疎通が不十分であったために余分にトラブルを招いたこと、以上の点は全て賛成だが、権利侵害とまではいえないのではないか。放送倫理上は問題だが。
  • もう少し権利侵害だとはっきり表現したほうが委員会の判断としてわかりやすい。
  • 12月のビデオテープを見ても本人に対するお詫びになっていない。
  • 続報という形で本件番組に誤りがあったものを正しく知らせるというのも訂正の1つのあり方ではないか。
  • 人権侵害の部分については「訂正します」とは一言も言っていない。

「国会・不規則発言編集問題」審理

前回の審理以後、各委員が文書で提出した意見をもとに起草委員会が作成した第一次草案が提示され、起草委員から説明があった。またテレビ朝日がなぜ本件放送のような内容になったかを検証した番組のビデオテープを視聴した。それを受けて、特に謝罪についての双方の主張をどのように「委員会決定」に反映させるのか、処分の要求をどう判断するか、オリジナルテープの「ダイジェスト保存版」を基にした編集の問題点を具体的に取り上げるのかなどについて意見が交わされた。

また申立人からのテレビ朝日「再答弁書」閲覧要求について検討した。その結果「新しい重要な部分が記載されている場合は委員会で検討してケースバイケースで見せてもよい。ただし反論は1回限りに限定すべきで、今回はヒアリングの場で反論して欲しいとの条件を付けたい」との考えで一致した。

委員会は、起草委員会を連休明けに開くこと、次回委員会(5月18日)でヒアリング(事情聴取)を行うことと決めた。

以下、意見交換の主な内容。

  • テレビ局の対応には一般人に対するものと大きな差がある。
  • 処分要求について委員会が答える必要があるのか。
  • 人権救済と放送のあり方という視点に絞った姿勢で臨むべきだ。

苦情対応(3月)

◆人権関連の苦情〔22件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・15件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・1件
事務局から個別苦情申立てについて報告され、対応について検討した。

  • ストーカー被害者として顔出しで放送されたとの苦情
    すでに苦情として前回の委員会で受理して斡旋に入っており、2度ほど話し合いが行われたが、申立人は裁判を考えているようなので、当分、推移を見守ることにした。
  • 幼稚園児へのインタビューが父親を傷つけたとの苦情
    事務局が苦情申立人の夫人と連絡を取り、申立人の要求である「放送による謝罪」は何を詫びるかということを具体的に触れなければならないので、本件の場合はかえってお子さんのためにならないのではないかと伝えたところ、やや怒りもおさまったようだとのこと。当該放送局はすでに「謝罪文」を申立人に手交しており、新たな動きがなければ一応解決したと判断したいとの事務局の報告があった。
  • 自動改札機誕生をめぐるドキュメンタリー番組で審理申立て
    04年4月5日付けで、審理の申立てがあった事案で、申立人の主張は、「他人や他社が開発者に成りすまして番組に登場し、真の開発者達の誇りを傷つけた」というもの。
    上記事案について当委員会は、放送人権委員会の審理事案とするか否かについて審議した。以下、意見交換の主な内容。
  • 申立人の主張は、放送による人権侵害とは別の次元のものだ。
  • 人権侵害には当たらないのではないか。放送人権委員会では事実認定ができない。
  • 番組では、申立人が出演しているわけではなく言及もされていない。人権侵害と認定するのは困難だ。
  • 審理対象外とすることに異存はない。放送人権委員会運営規則第5条(5)に定める「放送による権利侵害」に当たらないということでいいのではないか。
  • 放送人権委員会の審理事案と性格をことにすると同時に、当委員会の限界をはるかに越えているので正しい判断ができない。

以上に基づき、当委員会は、委員全員(8名)の一致で、本事案を「審理対象外」とすることを決定、上記意見を集約して文書化し、委員長名で申立人に「連絡」することとした。

業務報告会の報告・その他

事務局から、3月23日に行われた業務報告会についての説明と、放送人権委員会運営規則の中で「議決の方法」について改訂が行われ4月から実施されたことの報告があった。

以上