2023年7月18日

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」通知・公表の概要

[通知]
2023年7月18日午後1時からBPO会議室において、曽我部真裕委員長と事案を担当した二関辰郎委員長代行、松田美佐委員、補足意見を書いた水野剛也委員、少数意見を書いた國森康弘委員が出席して、委員会決定を通知した。申立人本人と代理人弁護士、被申立人のあいテレビ(愛媛県)からは番組プロデューサーら3人が出席した。
曽我部委員長がまず、「本件番組には人権侵害は認められず、放送倫理上も問題があったとまでは言えない」という委員会の判断を示したあと、今回は申立人の心情を深刻に受けとめた結果、「問題点の指摘と要望」という形で委員会の考えをまとめたと伝えた。
申立人の「番組内での他の出演者からの下ネタや性的な言動により羞恥心を抱かせられ、放送によってイメージが損なわれ、人権侵害を受けた」という主張については、本件の特徴として、他の出演者の言動が番組内に限られており、視聴者に見られることを意識したやりとりで特殊な場面と考えられ、通常のセクハラの判断基準とは異なるという見解を説明したうえで、本件では、①放送局が申立人の意に反していたことに気づいていたか、あるいは、気づいていなかったとしても気づくことはできたと言えるかどうか、②深夜バラエティー番組として許容範囲を超える性的な言動があり、あるいは、申立人の人格の尊厳を否定するような言動があったと言えるかどうか、という基準を採用したと述べた。それに照らすと、①について、あいテレビが当時気づくことは困難であり、②については、委員の中には番組内での性的な言動は非常に悪質だという意見はあったものの委員会で一致は見られず、最終的には、人格の尊厳を否定するような言動があったとまでは言えないとした。また、申立人が番組プロデューサーに悩みを打ち明けたあとの放送対応については、申立人が問題だと指摘した部分は放送しなかったという経緯があり問題があるとまでは言えないとした。これらを総合して判断した結果、人権侵害は認められなかったと説明した。
さらに、放送倫理上の問題に関しても人権侵害の判断と同様に、問題があるというのは妥当ではないとの結論に至ったと伝えた。
ただし、あいテレビに問題点として指摘される部分がなかったかというとそうではなく、要望として大きく取り上げたと伝えた。言動が繰り返され、言われた側の役割が固定化し、放送を通じてそれを公開されることは内心で意に反していると考える申立人を極めてつらい立場に追い込んだ。今後、あいテレビはそのような状況を招かないよう環境整備に努めること、また、ハラスメントに対する人々の問題意識が高まってきた今日において、本件番組で指摘されたような表現が放送するのに適当だったか否かをよく考えてほしいこと、そして、フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、他の出演者との関係性、男性中心の職場におかれた女性の立場というジェンダーの視点に照らしても申立人は圧倒的に弱い立場に置かれていたことが明らかで、放送局としては降板するほどの覚悟がなくても出演者が自分の悩みを気軽に相談できるような環境やジェンダーに配慮した体制を整備する必要があること、そのうえで、日頃から出演者の身体的、精神的な健康状態につねに気を配り、問題を申告した人に不利益を課さない仕組みを構築するなど、よりよい制度を作るための取り組みを絶えず続けること、という要望が付いたと説明した。さらに、ジェンダーバランスが適切にとれていれば下ネタや性的な言動が本件番組ほどになされることはなく、申立人に対する性的な言動への歯止めがかけられた可能性があったことも指摘した。
最後に、要望は直接的にはあいテレビが対象であるが、本件を契機として、放送業界全体が自社の環境や仕組みの見直しを行い改善に努めてほしいと伝えた。
続いて二関委員長代行が、「放送人権委員会決定における判断のグラデーション」に基づき、あくまでもグラデーション上の人権侵害や放送倫理上の問題というカテゴリーに照らすならば、問題があるとまでは言えないと判断した旨説明した。そして、今回の委員会決定の「問題点の指摘と要望」の部分が異例の長文であることに触れ、あいテレビに問題がなかったわけではないと述べた。あいテレビに対して、自社で設置した相談窓口が本当に機能しているのかをきちんと検証してほしいと要望した。
松田委員は「本件で申立人に向けられ、放送された性的な言動は悪質であり、放送を控えるべきであった」と個人の思いを伝えた。しかし一方で、表現内容だけを取り上げて問題ありとすることについては、「表現の自由」の観点から謙抑的であるべきだという委員会の判断に賛成だと述べた。そして、あいテレビに対し、表現によって誰かを傷つける可能性にもっと意識を向けてほしいと要望したうえで、「なぜ、申立人の悩みに気づけなかったのか」「なぜ、申立人は悩みが外部に伝わらないよう振る舞わざるをえなかったのか」と問いかけ、放送業界全体に、さまざまなジェンダー構造上の問題に対して社会がよりよい方向に向いていくための取り組みを求めたいと述べた。
次に、補足意見を書いた曽我部委員長がその内容を説明した。放送業界全体にジェンダーの観点から考えてもらうため、放送とジェンダーに関する近年の状況について紹介したと伝え、ジェンダーに関する偏見を再生産するのではなく率先して社会の多様性を番組に反映していくこと、そのための組織の整備を行うこと、自主的な取り組みを進めてほしいことを述べた。
同じく補足意見を書いた水野委員が「あいテレビには申立人との関係が良好だという思い込みがあったように見える」と述べ、人の心のうちは外からはうかがい知れないということを肝に銘じ、放送局は職場環境の見直しに取り組んでほしいと伝えた。
続いて、少数意見を書いた國森委員が「ハラスメントとは、気づいているか否か、あるいは、悪気があるか否かということとは関係なく、相手に苦痛や不快、不利益を与えること、あるいは相手の尊厳を傷つけることであって、その観点から、本件では人権侵害があったと考えている」と述べ、その論拠を説明した。「一般社会でハラスメントにあたるものが番組内で許されるはずはなく、申立人と性的な要素を過度に結びつけて描いている表現は非常に悪質。ましてや本人が下ネタや性的表現に同意をしていない、番組制作のあり方に納得をしていない、スタッフや共演者に不信が募る、という状況では一層深刻なハラスメント被害にあたる」とし、今回の表現が問題ないと捉えられれば、ハラスメントは今後も助長され、番組制作の現場でも一般社会でも被害はなくならず、苦しみ傷つく人が増えるだろうと述べた。
この決定を受け申立人は「残念という言葉しかない。不満だ。あいテレビが“要望で済んだ”と受け取ってしまうことが心配。長年、苦痛を訴えてきたのは事実。あいテレビが気づかなかったから今回の判断になった、と言われたことはショックである」と述べた。
あいテレビは「真摯に受け止めている。今回の申立てを受け、相談しやすい環境を作るために、現在、組織的に動いている」と述べた。

[公表]
午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見し、委員会決定を公表した。放送局と新聞社、民放連合わせて25社1団体から36人が出席した。テレビカメラの取材はTBSテレビが代表取材を行った。曽我部委員長がパワーポイントを使いながら、決定の結論とそこに至る考え方を説明した。特に、結論部分にある「問題点の指摘と要望」の内容について強調し、もっとも時間をかけ、丁寧に説明した。
二関委員長代行は「本当に難しい事案で、委員の間でさまざまな議論が交わされた。申立人と被申立人の言い分が食い違う中での審理となったが、委員会は証拠調べや証人尋問等をするわけではない。双方から提出された資料に基づいて認定していった結果が今回の判断の骨格となっている」と補足した。
松田委員は「本件番組を視聴して驚き、あきれ、気分が悪くなった。理由は番組内での性的な言動やからかいが、女性である申立人に対して、その人格と絡める形で向けられたものであったからにほかならず、これまで自分が経験してきた、さまざまな場面で受け流すことを暗黙のうちに要請されたからかいを想起させられ、非常につらかった。しかし一方で、表現内容だけを取り上げて問題があるということは表現の自由の制約につながりうることも理解しており、謙抑的であるべきという多数意見に賛同している。放送局は、『気がつかなかった』で済ませずに、自らの表現がどういう可能性を内包しているかをもっと意識して制作を行ってほしい」と述べた。
続いて、曽我部委員長が委員会決定における補足意見と少数意見の位置づけを説明したうえで、自身の補足意見の内容について説明した。要望でも取り上げたジェンダーバランスの観点から、「放送業界は全体として、社会に存在する偏見をただ再生産するのではなく、社会の多様性を番組に反映し促進していけるよう組織を整えるために自主的な取り組みを進めることが期待されている」と述べた。
水野委員は、「申立人の苦痛は非常に深刻なのに、あいテレビはまったく気づいていなかった。その乖離に非常に戸惑った。あいテレビには、申立人とはなんでも言い合える関係であるという過信があったようだ。心の内は外からうかがい知ることはできないことを肝に命じておくことが重要である」と述べた。
國森委員は、「多数意見では構造的な問題点を指摘した上で、今後のよりよい制度作りに向けた取り組みを放送局に対して要望し、また、放送業界全体における改善も期待している。その点においては賛同している」と前置きしたうえで、「ただ、ハラスメントとは本人の意図とは関係なく、その言動が相手を困らせ傷つけるものであるという観点から、本件には人権侵害があったと考えた。審理対象期間外であるが、背中のファスナーを他の出演者から下ろされるようなシーンなどもあり、申立人が性を売りにして世を渡るような人物であるかのように、過度に人格に性的な要素を結びつけてイメージを損なった。本人も性的な表現に同意や承諾をしておらず、かなり悪質だ」と、結論に至った理由を説明した。

<質疑応答>
(質問)
申立人、被申立人双方の受け止めは?
(曽我部委員長)
申立人は委員会決定に不満だと述べた。放送局に苦痛を何度も伝えてきたのに委員会決定にそれが反映されていないというのは事実認定としておかしい、というのが申立人の言い分。本件の問題の深刻さに委員会が一定の理解を示しているというのはわかるが、結論として問題がないというのはあいテレビのやり方を認めることになってしまうと懸念していた。あいテレビは、委員会決定を真摯に受けとめていることと、体制についてはすでに一定の見直しを行い、相談体制やジェンダーバランスに関しても社内の意識を高め取り組みを進めていることをコメントした。

(質問)
2022年3月に番組が終了したことは本件と関わっているか。
(曽我部委員長)
大いに関係している。2021年11月に申立人が番組プロデューサーに悩みを伝え、降板すると申し出た。番組は開始当初から出演者3人でやってきたため申立人だけが降板するのではなく、番組自体を終了しようという判断となった。

(質問)
これを機に、委員会や委員長として、深夜番組について何か意見を出すようなことは考えているか。
(曽我部委員長)
民放連、あるいはNHKの放送基準には性的な表現についての規定があり、それに則って番組は作られている。委員会として「ここまでは許される、ここからはNGだ」ということを一概に言うということは難しく、行わない。

(質問)
あいテレビのジェンダーバランスについて、考査体制の点からお考えがあれば。
(曽我部委員長)
今まで女性が0だったのを1人入れたからもうそれでよい、というのではなく、実質的にジェンダーバランスが確保されるような、そういう体制を目指すことが重要だと思う。

(質問)
あいテレビは、申立人に対して謝罪を行ったか。
(曽我部委員長)
きちんとした形で謝罪したということにはなってない。
(二関委員長代行)
本人があいテレビ側との接触を嫌がったこともあり、コミュニケーションがお互い取れないような状態で現在に至っていると理解している。

(質問)
本件番組の表現について、あいテレビは現在どのような認識でいるのか。
(曽我部委員長)
まったく問題がないという言い方ではなかったが、ただ、番組は6年間続いており、基本的には他愛のないトークが繰り広げられる中で時々下ネタや性的な言動があるということで、「全体を見てほしい」ということを強調していた。

(質問)
少数意見の中に、申立人がプロデューサーへの不満等を伝え、それに対して、プロデューサーから「真意確認」というメール返信があったという記述があったが、多数意見ではまったく触れてはいない。これは委員会として、客観的な証拠として確認できなかったということか。
(二関委員長代行)
客観的に判断できる範囲で判断したというのが多数意見のスタンス。少数意見で言及しているが多数意見では言及していないのは、そのメールが資料として提出されてないからであり、そのため特に触れていない。
(國森委員)
委員会に証拠を提出することは義務付けられず、委員会では証拠調べはしないという制約がある中で、何に重きを置くかということを考えた。記述内容は具体的で信憑性があるとみた。双方の主張に争いのない部分で判断するというより、争いのある部分にこそ申立人が訴えたい問題があるのではないか。今回は、さまざまなものを犠牲にして訴えた申立人の方に重きを置くべきだと思った。

(質問)
「真意確認」というメールの資料提出を、例えばあいテレビに求めるような対応はできなかったのか。
(曽我部委員長)
例外的な場合を除き、基本的に委員会が資料提出を求めることはない。今回は求めていない。

(質問)
本件について人権侵害や放送倫理上の問題を判断するうえで先例やガイドラインはなかったという理解でよいか。
(曽我部委員長)
本件で直接参照できる先例やガイドラインがあったとは認識していない。そのため、委員会でどういう枠組みで判断するのかということを相当議論した。
(二関委員長代行)
ハラスメント関連の法律や厚労省のガイドラインなどは職場環境を害する言動を広く含むものとしてセクハラを定義したセクハラ防止のためのルールであるため、本件には当てはまらないと委員会で議論し、独自の基準を立てた。パワハラなどに関する実際の裁判例なども参考にした。

(質問)
少数意見で、申立人のファスナーを他の出演者が下ろすことなどの記述があったが、あいテレビが気づけたかということとは別に、そのようなシーンを放送することは性加害と視聴者に受けとられかねず、その点で人権侵害とは考えられなかったか。
(曽我部委員長)
当該シーンは背景事情として考慮しているが、直接の審理対象ではない。職場で行えば犯罪だと思うが、番組の場合、演出なのかどうかということがわからない部分がある。当時の申立人のブログ等では積極的に本件番組を宣伝していたし、ファスナーのシーンも比較的肯定的にブログに書いていた。そこからすると、あいテレビは気づかなかっただろうというのが委員会の考えである。他方で、行き過ぎた性的表現を放送するということ自体は、もちろん、放送基準の問題が発生するが、問題か否かの判断は一概にはできない。
(二関委員長代行)
申立人は、お尋ねのシーンの収録時にカメラを向けられてニコニコしている自分の写真を、自分からブログにアップしており、委員会ではこのシーンの位置づけが曖昧だと議論し、申立てから遡って1年以内の放送ではなく審理対象でもなかったので多数意見では触れなかった。

以上

第185回

第185回–2023年7月

NHK『ニュースウオッチ9』について審議

第185回放送倫理検証委員会は、7月14日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員が作成した資料をもとに議論した。今後は当該番組の関係者に対してヒアリングを行っていく。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、当該放送局から提出された報告書と番組CDを踏まえて議論した。その結果、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するため、討議事案としてさらに議論を継続することとした。
タマネギの糖度を紹介する特集で数値をねつ造した鹿児島読売テレビの情報番組『かごピタ』について、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて討議したが、一連の訂正とお詫びの放送や再発防止策等を受け、今回で討議は終了し審議の対象としないこととした。
6月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論した。

議事の詳細

日時
2023年7月14日(金)午後6時~午後9時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKの『ニュースウオッチ9』は、ワクチン接種後に亡くなった遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
同番組は5月15日に「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演したが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族であるとの説明はなく、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」と紹介するにとどまった。
今回の委員会では、担当委員から企画の提案、取材、編集、試写などの各段階において、詳細な疑問点と問題のある可能性が提示され、議論した。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日から1月29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
番組最終回の放送翌日、聴取者からBPOに「特定政党のキャッチフレーズをそのままタイトルにした番組で、ゲストはこの党の政治家と決まっており、内容は党の活動や今後の取り組みを紹介し宣伝することに尽きる。特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」という趣旨の意見が寄せられた。
これを受けて委員会では報告書と番組CDの提出を当該放送局に求めた。報告書によれば、2022年11月末に広告代理店から番組企画の打診があり、社内で検討。同年12月に統一地方選まで2カ月を逆算し、空いている放送枠を確認して収録した。放送期間は2023年1月12日から1月29日に決定したという。また、すべての回でゲストが特定政党から公認を受けた立候補予定者であり、番組CDで放送内容を聴取すると、立候補予定者の議会や地元選挙区などでの活動実績や抱負、経歴などが紹介されていた。委員会は、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から、番組を討議事案としてさらに議論を継続することとした。

3.鹿児島読売テレビ『かごピタ』について討議

鹿児島読売テレビは2023年2月24日に、情報番組『かごピタ』内でタマネギの糖度について約13分半にわたる特集を放送した。その後6月14日に地元地方紙が数値のねつ造等を報じ、同日当該放送局からも自主申告があったため委員会は報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書によれば、新タマネギと普通のタマネギの糖度の違いを糖度計で比較した映像を流したが、普通のタマネギについては、タマネギを使わずに砂糖水を計測した数値を紹介。新タマネギについては加熱した場合の糖度を表示していたものの、計測時の現場では値が高く出過ぎたと判断し、水を加えて数値を低くして放送したという。
当該特集について3月に、業務委託をしている制作会社のスタッフから「納得がいかない」旨の相談を当該放送局の社員が受け、調査したところ数値のねつ造・改ざんが明らかになった。番組担当者は「インターネットで調べた一般的な数値に近づけるために行った」などと説明している。番組では3月31日に、不正確なところがあったとして内容の訂正とお詫びをしたが、糖度を偽ったことについては全く説明がなかった。
6月14日の地元紙報道を受けて、6月16日の同番組で「砂糖水を使って数値を『ねつ造』したこと」、「水を加えて数値の『改ざん』をしたこと」、「3月31日の訂正とお詫びの放送で『誤った計測方法について伝えていなかったこと』」の3点を認めて放送し、改めて謝罪した。
当該放送局は、タマネギの糖度の数値についてねつ造・改ざんを把握したにもかかわらず、3月のお詫び放送ではその旨の説明を全くしておらず、地元紙報道を受けてようやくねつ造・改ざんを認め謝罪したのであって、放送倫理が内発的に遵守されるべき点からは問題があると言わざるを得ない。もっとも、再発防止の対応策として、番組プロデューサーに報道経験者を加えることや取材における留意事項を記載したチェックシートを新たに導入したこと、また、研修会の実施、番組審議会で審議されたこと等が示されていることを踏まえ、委員会での意見を議事概要に掲載した上で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

・数値を変えたという、事実と異なる内容を放送したことは放送倫理違反と言えよう。類似事例では『発掘!あるある大事典Ⅱ』があるが、その番組はかなりの構造的な問題点や、繰り返し改ざんがされていたというような案件であり、それと比較して提出された報告書以上の事実が出てくるとは思われず、恒常的なものとは認められないだろう。
・初回(3月31日)のお詫び放送では、数値改ざん等には触れておらず新聞報道後に、初めてねつ造・改ざんの事実を2回目のお詫び放送の中で伝えた。この報道がなければそのままになっていたのではないか、という点では猛省してほしい。
・事後的な是正も一定程度なされていると考えられ、再発防止策も報告されている。

4.6月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

6月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能人の不倫の問題をめぐって、本人たちの自筆の手紙や交換日記を映したり、内容を報道したりすることはプライバシーの侵害ではないかといった批判的な意見が多数あったことや、歌舞伎俳優の自殺ほう助事件に関して、睡眠薬の種類、量、その方法などについて詳しく報じるのはあきらかに過剰であり、WHOの自殺報道ガイドラインに抵触し、視聴者の自殺を助長するのではないかといった疑問を呈する意見などが事務局から報告され、議論した。

以上

第318回

第318回 – 2023年7月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」通知・公表…など

議事の詳細

日時
2023年7月18日(火)  午後4時 ~ 午後5時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」通知・公表

審理入りしていた「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」について、委員会決定第79号として、申立人と被申立人双方への「通知」と「公表」記者会見を、委員会当日に行った。今回の委員会では委員長と事務局からその様子が報告された。

2.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

3.その他

事務局から今年度開催予定の意見交換会について報告した。

以上

2023年度 第79号

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」に
関する委員会決定

2023年7月18日 放送局:あいテレビ(愛媛県)

見解:要望あり(補足意見・少数意見付記)
申立ての対象は、あいテレビが2022年3月まで6年間放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組に出演していた女性フリーアナウンサーが、番組内での他の出演者からの度重なる下ネタや性的な言動によって羞恥心を抱かせられ、そのような番組を放送されたことでイメージが損なわれたとして、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと申し立てた。あいテレビは、番組の内容は社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はないと反論していた。委員会は審理の結果、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまでは言えないと判断した。そのうえで、制作現場における構造上の問題(フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、ジェンダーバランスの問題)に触れ、あいテレビに対して職場環境や仕組みを見直し改善していくための取り組みを続けるよう要望し、また、放送業界全体に対しても注意を促した。

【決定の概要】

申立人はフリーアナウンサーであり、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで6年間にわたって週1回放送した深夜バラエティー番組『鶴ツル』(「本件番組」)に出演していた。申立人は、番組内での他の出演者からの下ネタや性的な言動により羞恥心を抱かせられ、放送により申立人のイメージが損なわれたとして人権侵害と放送倫理上の問題を理由に本件を申し立てた。申立人は、放送開始当初その悩みをあいテレビに伝えたと主張するのに対し、あいテレビは、番組の趣旨を十分理解して申立人は出演していたと主張し、申立人が悩んでいたこと自体を否定する。
決定の概要は以下のとおりである。
本件番組における性的な言動によって長年悩んできたという申立人の主張は真摯なものである。ただし、そのことに関連して放送局に責任が認められるためには、本件番組が申立人の意に反していたことに放送局が気づいていたか、あるいは気づかなかったことに過失が認められる必要がある。この点、2021年11月に申立人が自己の番組降板を伝えつつ本件番組に関する悩みを本件番組のプロデューサーに伝えた際の録音反訳があり、プロデューサーがその時点で申立人の悩みを初めて知って驚いたことがわかる。このことから、あいテレビは同年11月に初めて申立人の意向を知ったと考えられる。それ以前にあいテレビに過失があったかを検討するに、申立人自身が、仕事として引き受けた以上アナウンサーの矜持として悩みが人にはわからないようにしたと述べていることや、申立人の番組関係者へのメールやブログからは、本件番組に対する積極性や好意的評価が少なくとも外見上窺われることから、あいテレビに過失があったとは言えない。
2021年11月以降について検討すると、あいテレビは、申立人から悩みを伝えられて直ちに下ネタをやめるよう他の出演者に伝え、収録時に申立人が不快と伝えた部分は放送しない措置をとるなどしており、あいテレビの対応に問題があったとは言えない。
さらに、本件番組で仮に深夜バラエティー番組として社会通念上許容される範囲を超えた性的な言動があり、あるいは申立人の人格の尊厳を否定するような言動があれば、申立人の意向に関するあいテレビの認識にかかわらず人権侵害が成立しうる。この点、本件では、下ネタや性的な言動が申立人に向けられていた場合がある点を特に問題とする複数の意見があったが、表現内容に着目して放送局の責任を問うことは表現の自由に対する制約につながりうるので、人権侵害ありとの判断には謙抑的であるのが妥当である。本件番組では眉をひそめたくなるような言動もあるが、人権侵害に当たる言動があったとは認められない。
以上から、本件番組において申立人に対する人権侵害があったとは認められない。
放送倫理上の問題の有無としては、まず、民放連の放送基準に照らして表現に着目した検討を行う。本件番組は、一般に子どもや青少年が視聴しない深夜の時間帯の放送であり、トークショーとしてその場の演出として出演者間でやりとりをしている事情に照らし、表現に着目して放送倫理上問題があると判断するのは控えるのが妥当である。
本件番組では、回を重ねるごとに出演者間で相手に対し「ここまで言っても許されるだろう」と考える範囲が広がっていき、申立人に対する下ネタや性的な言動も、冗談として言う分には許されると他の出演者が考える範囲が次第に広がったと認められる。そうすると、この問題は、個別具体的な言動について放送倫理上の問題として取り上げるより、制作現場における構造上の問題として捉えるのが妥当である。
また、出演者の身体的・精神的な健康状態に放送局が配慮すべきことは社会通念上当然であり、配慮が欠けていれば放送倫理の問題になりえる。この点、あいテレビは、申立人から悩みを打ち明けられて前述の措置をとるなどしている。したがって、放送倫理上の観点から問題があったというほど、あいテレビについて出演者への配慮に欠けていたとは言えない。
以上より、本件において放送倫理上の問題があるとまでは言えない。
最後に、制作現場における構造上の問題について要望を述べる。フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、男性中心の職場におかれた女性の立場というジェンダーの視点に照らし、本件において申立人は圧倒的に弱い立場にあった。しかし、あいテレビは、申立人が構造的に弱い立場にあるという視点を欠いていた。あいテレビに対しては、降板するほどの覚悟がなくても出演者が自分の悩みを気軽に相談できる環境や職場でのジェンダーバランスなどの体制を整備したうえで、日ごろから出演者の身体的・精神的な健康状態に気を配り、問題を申告した人に不利益を課さない仕組みを構築するなど、よりよい制度を作るための取り組みを絶えず続けるよう要望する。
ここでの指摘事項は放送業界全体に共通する面があり、放送業界全体が、本事案を自社の環境や仕組みを見直し改善していくための契機とすることを期待する。

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2023年7月18日 第79号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第79号

申立人
女性フリーアナウンサー
被申立人
株式会社あいテレビ
苦情の対象となった番組
『鶴ツル』(毎週火曜日 午後11時56分~午前0時11分)
(2016年4月5日放送開始、2022年3月29日放送終了 全304回)
放送日
2021年2月9日
2021年3月23日
2021年4月20日
2021年5月4日
20211年6月1日
2021年8月3日
2021年8月31日
2021年12月21日

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1. 放送の概要と申立ての経緯
  • 2. 本件放送の内容
  • 3. 論点

II.委員会の判断

  • 1.本件の特徴
  • 2.人権侵害の有無
  • 3.放送倫理上の問題の有無

III.結論と要望

  • 1.結論
  • 2.問題点の指摘と要望

IV.補足意見及び少数意見

  • 1.曽我部真裕委員長の補足意見
  • 2.水野剛也委員の補足意見
  • 3.國森康弘委員の少数意見

V.放送概要

VI.申立人の主張と被申立人の答弁

VII.申立ての経緯および審理経過

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2023年7月18日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2023年7月18日午後1時からBPO会議室で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。詳細はこちら。

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2023年6月に視聴者から寄せられた意見

2023年6月に視聴者から寄せられた意見

芸能人の不倫の話題を伝える際に、その私信とされるものの文面が詳しく紹介されたことなどに意見が寄せられました。

2023年6月にBPOに寄せられた意見は 1,773件で、先月から 808件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 83% 電話 16% 郵便・FAX 計1%
男女別(任意回答)は、男性35% 女性24% で、世代別では 40歳代 24% 50歳代 23% 
30歳代 21% 60歳以上 15% 20歳代 13% 10歳代 1%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、6月の送付件数は746件、38事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から12件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

芸能人の不倫の話題を伝える際に、その私信とされるものの文面が詳しく紹介されたことなどに意見が寄せられました。ラジオに関する意見は27件、CMについては5件でした。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は70件で、前月から6件減少しました。
今月は「表現・演出」が26件、「報道・情報」が17件、「要望・提言」が8件、それに「性的表現」と「危険行為」がそれぞれ4件ずつと続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 横浜市の路上殺人事件について「犯行直前に被害者宅近くで不審な人物が目撃されていた」ことを伝える際、被害者宅や事件現場の位置関係を示す衛星写真が使われた。被害者宅が特定できる大きさで町名も示されていた。行き過ぎだと思う。

  • 暴力団組員がマンション内で逮捕されたニュースで、逮捕の端緒となった通報をした住民の住戸と、組員らが使用していた住戸との位置関係が分かる表現があった。通報者が報復されたらどう責任を取るつもりなのか。

  • 子どもの虐待に関するニュースで「亡くなった子どもが首輪をされ、つながれているのを見た」という近隣の人のインタビューがあった。自殺に関するニュースで相談機関を案内するように、子どもの虐待に関するニュースでこどもの人権110番のような相談先や通報先を案内してはどうか。心当たりのある人がアクションを起こすことで救える命があるのではないだろうか。

  • 陸自射撃場内での銃撃のニュースで、献花に訪れた近隣の小学生くらいの子どもの「自衛官は手を振ったら振り返してくれる(親しみを感じる)」という声を伝えていた。このケースで子どもにインタビューする必要はあったのか。

  • 芸能人の不倫の話題で、当事者がノートなどでやりとりしていた私信とされるものの文面を具体的に紹介していた。本人の承諾なく公表していいのか。家族の人生もある。子どもたちがからかわれたりいじめを受けたりしないかも心配だ。

  • 夕方のローカル情報番組に「謎の人」が「乱入」し、気象情報が放送されなかった。キー局のバラエティー番組の企画で「謎の人」はその出演者だった。地元では先日、浸水被害があったばかり。こういう企画は非常に迷惑だ。いわゆるドッキリのために多くの視聴者を巻き込まないでほしい。

  • テレビの情報番組で紹介された「新タマネギの糖度」が、実際には砂糖水の糖度だったことを新聞報道で知った。放送局の情報はインターネットよりも信頼できると思っていただけに驚きを通り越して、そんな放送局なのかと呆れた。

  • ニュースをランキング形式で扱うことについて。災害に遭った人、事故で亡くなった人、殺された人がいる、そういったニュースにまで順位が付けられるのは心が痛む。

【バラエティー・教養】

  • お笑い芸人がブロワーの風を至近距離で相方の口に当てながらクイズのヒントを言わせていた。落ち葉や塵(ちり)を空気で吹き飛ばすための器具であり、取り扱い説明書には「人に向けない。事故の原因になる」とある。危険だと思う。

  • 視聴者プレゼントの応募に必要なキーワードが「#もうホタテ食べません」で、一時Twitterのトレンドキーワードになっていた。ネガティブキャンペーンにもなり得るのでよく考えて放送してほしい。

  • 北海道で「幸せを呼ぶ白い動物」白いエゾシカを探す企画。「縁起がいい」という理由として「鹿島神宮の祭神が白鹿に乗っていた」という言い伝えを紹介していたが、アイヌ文化にはアイヌ文化のエゾシカの位置づけがある。無理に日本文化とこじつけて「幸運の生き物」と紹介していたのは問題だと思う。

  • いわゆるドッキリで、コンビ芸人の一方に「相方が倒れて意識が戻らない。命の危険がある」とウソを伝え、動揺して泣いたりする様子を隠し撮り。親しい人の生死を心配する感情を娯楽にするのはいかがなものかと思う。

  • 番組内で野生のノビルを食べていた。ノビルはヒガンバナやスイセンなど毒のある植物と混生していることがある。このリスクも伝えてほしかった。

  • 2時間番組のサブタイトルが「○○(大手外食チェーン名)SP!絶対食べるべき○○メニュー」。一企業の宣伝のような番組が多いと感じる。

【ラジオ】

  • パーソナリティーはマーケティングセミナーの主宰者、ゲストは受講者。ゲストが「受講した結果、2週間で2,000万円を売り上げることができた」など受講を勧めるような内容だった。ラジオ番組としてどうなのか。

  • ラジオ番組のパーソナリティーが人的被害の出た大雨に触れ、「(前回までの放送で)『見に行くな』って言ったのに…流されちゃったおじいちゃん、いたし」などと笑いながらコメント。心ない発言だと思う。

  • 18:55に大きな地震があった。震源地、地震の規模、津波の有無などが知りたくて地元局をつけっぱなしにしていたが、地震情報が始まったのは19:12ごろだった。最大震度5弱の地震でこの姿勢はさすがにないと思う。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • オムニバスドラマのなかで、自宅をテーマパークにし、父母と長女が拘束した長男(若手サラリーマン)を、訪れた客にチェーンソーで傷つけさせる猟奇的なアトラクションの設定があった。子どもが見るゴールデン帯の番組としては非常識なものだ。大人の私でさえ気分が悪くなった。

  • バラエティー番組で、マジシャンが口に入れた小さい飴を左目から出す手品を披露した。子どもが真似たら危険だろう。「真似をしないで」というテロップを入れるべきだと思った。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 芸能人の不倫の話題を取り上げた午後のワイドショーで、週刊誌が報じたという交際相手との「交換日記」の内容を読み上げていた。地上波の番組で日記の内容を公表する必要があるのか。番組がいじめに加担しているようで不快だった。

  • 夜の報道番組の不登校特集で、発達障害の児童が実名で紹介された。この子の将来を考えたとき、たとえ保護者の同意があったとしても、実名や顔を報じるのは不適切だと思う。

【「要望・提言」】

  • バラエティー番組に東京大学の学生だけが出演。東大だけがよいと思わせるもので、一部の家庭で「教育虐待」につながらないか心配だ。どの大学にも価値はあるというメッセージを同時に打ち出してほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • ドキュメンタリー番組が相撲に取り組む高校生の兄弟に密着。自宅での入浴シーンがあったが、男児への性的配慮に欠ける。男の裸だけを軽んじて放送するのはいかがなものか。

【「危険行為」に関する意見】

  • バラエティー番組で、プロの女子バレーボール選手が、自陣の前衛にいる男性タレントの背中にサーブの球を当てるドッキリがあった。手加減していただろうが、危険なことだ。誤って後頭部にも当てていたが、本当に危ないと思う。子どもが学校で真似たら、取り返しのつかない事故になる。

第258回 放送と青少年に関する委員会

第258回-2023年6月

視聴者からの意見について… など

2023年6月23日、第258回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、5月後半から6月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見の中から、バラエティー番組のドッキリ企画などについて意見を交わしましたが、「討論」に進むことはありませんでした。
6月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近見たドラマについて」でした。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年6月23日(金) 午後4時00分~午後6時00分
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

5月後半から6月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画で、プロの女子バレーボール選手が自陣の前衛にいる男性タレントの後頭部にサーブの球を当てたことについて、「手加減していたかもしれないが、非常に危険だと思う。子どもが学校で真似たら大変なことになる」などの視聴者意見がありました。
担当委員は「背中に当てるはずが、2回、頭に当ててしまった。確かに『危ないな』とは思うし、ほめられたものではないが、委員会で取り上げるまでではないだろう」と述べるなど、「討論」に進むことはありませんでした。
また、大手芸能事務所の創業者(故人)による男児の所属タレントへの性加害の問題が長らく報道されなかったことについて視聴者意見が多く寄せられましたが、担当委員は「放送局全体の信頼を考えたときに、今後の対応が大きな課題になる」という見方を示しました。別の委員は「子ども自身に男児の性被害の知識がなく、被害を自覚できないケースもあり、教育現場で教えていかなければならないだろう」と指摘しました。子ども番組の監修者を務めたことのある委員は「番組制作において、徐々に、包括的な性教育の一環として、『男女を問わず体のプライベートなゾーンは他人に触らせない』『嫌なことは嫌と言っていい』などをベースにされるようになってきている」などの説明がありました。全体として意見が出尽くし、「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

6月のテーマは「最近見たドラマについて①」で、25人から合わせて17番組(うちラジオ1番組)への報告がありました。およそ半数のモニターが録画または見逃し配信で視聴していました。
「自由記述」では「SNSで番組の予告を投稿してくれるので、興味を持つ機会が増える」などの意見が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では『偉人の年収 How much?』(NHK Eテレ)を最も多い8人が取り上げ、「使命感や達成感が偉人を動かしたことが分かり、人生における価値観を考えさせられた」などの感想が寄せられています。

◆モニター報告より◆

【最近見たドラマについて】

  • 『だが、情熱はある』(日本テレビ)
    • (オードリーの若林さんと南海キャンディーズの山里さんの)2人がどういう道のりで芸人になり、芸人として売れるためにどういう努力をしてきたかを交互に映して対比しているのが面白い点だと思います。そうすることで2人の努力の相違点や共通点を分かりやすく知ることができ、とても関心を持てたし応援したくなりました。(中学2年・女子・愛知)

    • とにかく俳優さんの演技が素晴らしく、漫才のシーンは漫才として笑ってしまったくらい同じ空間に引き込まれました。現役のお笑い芸人さんが色々な役で出演していて、キャスティングや細かいところまで芸人さんへのリスペクトが伝わってきます。今、若い人は作り込まれていないドラマを求める傾向があり、台本が本当にあるのかと思わせられるようなこのドラマは、俳優さんはもちろんスタッフさん全員が同じ意思をもって作品を届けていることが伝わってきます。(高校3年・女子・北海道)

  • 『ラストマン-全盲の捜査官‐』(TBSテレビ)
    • 主人公のFBI 捜査官が日本に来て事件の捜査をするということ自体、今までにはないような設定で斬新で面白いなと思いました。作り手がどのような思いで作っているのかを考えながら見てみると、今までと違った視点でドラマを見ることができ、面白かったです。(中学3年・男子・広島)

    • 私はまだSNSをやっていないが、いつかSNSを始めたときに誰かを傷つけてしまったり傷ついたりするかもしれないので、すごく気をつけていきたいと思った。(中学2年・女子・東京)

  • 『わたしのお嫁くん』(フジテレビ)

    このドラマはコミカルでマンガのような展開でおもしろく、現実ではありえないキャラやストーリーが痛快だ。取り上げているテーマは、従来は女性が家事で男性が仕事という既成概念をくつがえす社会派なものである。男女の役割が逆転しているからおもしろいテーマになりうるのだが、これは今までの日本社会が男女の役割を固定しすぎていたからこそ新鮮に映るのだと思う。私が大人になるころには主夫も増え、このテーマはおもしろい題材にならないかもしれない。(中学1年・女子・福岡)

  • 『FMシアター「桜は、散らない」』(NHK-FM)

    FMシアターは毎回とても物語に引き込まれます。今回の物語は高校生の話でしたが、演劇部の2人は苦しい状況でも逆風に負けずに頑張っていて、くじけないことの大切さを学びました。自分もこんな情熱的な高校生活を送りたいと思いました。(高校1年・男子・群馬)

  • 『月読くんの禁断お夜食』(テレビ朝日)

    いろいろなことで悩んでいるときにこのドラマを見ると、そよぎさんみたいに頑張るぞ!と思えます。ドラマのなかで出てくる料理はどれも美味しそうなので、放送局でサイトを作っていつでも見られるようにしておくといいのではないかと思います。(中学1年・女子・島根)

  • 『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ)

    知的財産といってもたくさんの種類があることに驚いた。ドラマのなかで出てきたことばなどをすぐに公式ツイッターアカウントで説明してくれるため、理解しながら視聴することができた。(高校3年・男子・神奈川)

  • 『墜落JKと廃人教師』(毎日放送)

    自殺という重いシーンから始まるのですが、テンポ感やコメディ要素によって最後まで明るい気持ちで見ることができました。自殺がテーマの作品は、“自殺はいけない”“悲しむ人がいるからダメ”といった、いかにも道徳という感じのものが多いと思うのですが、この作品は“1日ぐらい遅らせてもいいじゃないか”“なにかやり切ってからでもいい”といったように一概に自殺を止めるような道徳の授業感がなく、逆に心に響きやすいと思いました。(高校1年・女子・茨城)

  • 『ペンディングトレイン』(TBSテレビ)
    • このドラマについてたくさんの人が次の回や今後の考察をしたり、ツイッターに考察を載せていたりする。このように日本全国でネットを通して盛り上がるドラマはいいなと思った。島などで大がかりな撮影をしているので、6ヵ月ぐらい放送してもいいのではないかと思います。(高校1年・女子・北海道)

    • それまで無人島のような場所で過ごしてきた(ワープした電車の)乗客たちは、現代に戻ってお店でご飯を食べたり、家で生活したりすることに感動していました。当たり前のことだと思っていても、決してそれが普通だと思ってダラダラしてはいけないと考えさせられました。ワープすることは実際にはないかもしれないですが、ネットの恐ろしさは実際のものだと思います。日々の生活に感謝し、ネットには気をつけたいと思いました。(中学3年・女子・福岡)

  • 『風間公親 教場0』(フジテレビ)

    木村拓哉さん演じる指導員が、指導される刑事に見切りをつけようとするときに交番勤務になってもらう旨のことを言っていますが、実際に交番勤務の警察官はいい気分ではないだろうなあと思います。刑事になれずに交番勤務をしていると視聴者が勘違いしないだろうか、と思いました。(高校3年・女子・京都)

  • 『王様に捧ぐ薬指』(TBSテレビ)

    悩みながらも誠実な姿を見せて2人で乗り越えるなかで、2人の間柄がさらに良くなっていくのがこのドラマを見る中で1番の喜びだ。幸せな感情と緊迫な瞬間がハイスピードで入れ替わり、忙しすぎて目が離せない。退屈しない展開が繰り広げられているのが見ていてとても楽しい。(高校2年・女子・愛知)

【自由記述】

  • 最近ドラマやバラエティー番組がYouTubeやツイッターなどのSNSで予告やオフショットを投稿していて、若い人が興味を持つ機会が増えるのでとても良いなと思います。(高校1年・女子・茨城)

  • 情報番組で画面の隅のほうに視聴者の声としてつぶやかれたコメントが流れることがありますが、あれは何のためにあるのでしょうか。つぶやく意味が分からず、気になります。(高校2年・男子・山形)

  • 初めてラジオドラマを聴きました。本と同じような感じかなと思っていましたが、まったくそんなことはなく本当に面白かったです。想像力を働かせることができるからです。ラジオドラマのよさをみんなに知ってほしいと思いました。(中学3年・女子・滋賀)

  • 中学生のときよりリアルタイムでテレビを見る時間が減った。通学や授業・部活の時間が長くなり、(帰宅後も)あっという間にゴールデンタイムが終わってしまう。そこで最近はTVerなどの見逃し配信をよく活用している。ここ2~3年で無料配信の番組量が増え、より便利になったのがとてもありがたい。週1回の番組を2話連続で見られると前回の内容を思い出したいときにもう1回見ることができるので、1週間の見逃し配信期間を10日や2週間に延ばしてもらえたらさらにうれしい。(高校2年・女子・愛知)

  • テレビの番組は視聴率で評価されていますが、TVerなどで見逃し配信されており、私もクラブで定時に見られなかった番組は見逃し配信を利用しています。見逃し配信は視聴率には含まれないと思うので、視聴率で番組を評価するのはおかしいのではないかと思います。(高校3年・女子・京都)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『偉人の年収 How much?』(NHK Eテレ)
    • 一般的に偉人についてはその人が何をしたかとか、その人が生きてきた歴史をひも解くことが普通だが、偉人の年収というお金から半生を知るのは新しいと思いました。その時代のお金を現代風に例えることで分かりやすくなるのも良いと思いました。(高校2年・女子・東京)
    • 伊能忠敬の人生と偉業について年収をキーワードに深く知ることができた。歴史に残る偉業を成し遂げたのに対して年収は低くて驚いた。お金には換算できない使命感や達成感が動かしたのだと思った。人生における価値観を考えさせられた。今と当時を中継しているようなコントめいた演出がおもしろかった。(中学1年・女子・福岡)
    • 番組名にある年収(を伝えること)が目的ではなく、歴史の教科書だけでは収まらないこまかい知識や新しい考え方を学べるとてもよい番組だった。(高校2年・男子・山形)
  • 『LOVE HOKKAIDO』(北海道テレビ)

    ひとつの観光地を取り上げるのではなく、現地のいいところや人とのつながりを紹介していて大好きな北海道の魅力が伝わってうれしいです。アジアを中心に海外でも放送され、番組のホームページも英語や中国語表記に対応していることを知り、グローバルなとても良い取り組みだと思いました。(高校3年・女子・北海道)

  • 『日本に憧れ日本に学ぶ~スティーブ・ジョブズものづくりの原点~』(NHK BS1)

    スティーブ・ジョブズやアップル製品と日本の文化の意外な関係性が分かって驚いた。この番組を見て、日本の陶器などの技術をさらに知りたくなった。(中学3年・女子・広島)

  • 『サザエさん』(フジテレビ)

    タラちゃんの声優さんが変わってしまったので、まだ少し違和感がありました。番外編(知り合ったわけや家族関係)をやってほしいです。(中学1年・女子・千葉)

  • 『高校生のじかん』(九州朝日放送)

    早口言葉という身近な話題が番組になっていて新鮮だった。年代が近いこともあって共感しやすく、テレビ離れが進む若者にも理解を得られすい番組だと思った。(中学2年・男子・東京)

◆委員のコメント◆

【最近見たドラマについて】

  • 『わたしのお嫁くん』という番組に対して『社会が男女の役割を固定しすぎていたからこそ新鮮に映る番組だ』という感想があった。男女の役割についての考え方は、数十年前から比べるとかなり変わってきたと思っていたが、中学生には今も変わらずに固定観念があると映っているのだと思い、考えさせられる意見だった。

  • SNSに潜むリスクの面に言及したモニターが多かったが、SNSの問題は子どもたちも日ごろ向き合っている切実な問題なのだと改めて思った。

  • 自殺を扱ったドラマについて「道徳っぽさがなく心に響いた」という感想があり、考えさせられた。自死に関する報道でいえば、日本の放送局は免罪符的に相談窓口を一律に紹介するが、それによって憶測を呼び、いたずら電話で窓口がパンク状態になるというデメリットのほうが大きくなっている。一律にやるのではなく、よく考える必要があると思う。

【自由記述について】

  • 番組の放送中、なぜ画面に視聴者のつぶやきを流すのかという意見があった。番組としては双方向性を意識しているのかもしれないが、他人の意見が次々と入ってくると自分の考えが左右されそうになることもあり、そういうところが気になる若い人もいるのだろう。

  • 「週1回の番組を2話連続で見られるよう見逃し配信期間を延ばしてほしい」という声があった。放送局側の事情があって難しいだろうが、前編・後編があれば一気に見たいという気持ちは分かるし、いわゆるサブスクに親しんだ世代にはとくにそうした要望はあると思う。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • サザエさんの番外編の放送を望む声があった。かつて番外編を見た記憶があるが、確かに今の中学生にサザエさん一家の人間関係はすぐ理解できないかもしれないので、改めて番外編を放送すれば興味を持たれるかもしれないと思った。

今後の予定について

次回は7月25日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上