2022年1月18日

「宮崎放火殺人事件報道に対する申し立て」通知・公表の概要

[通知]
2022年1月18日午後1時からBPO会議室において、曽我部真裕委員長と事案を担当した鈴木秀美委員長代行、水野剛也委員、少数意見を書いた二関辰郎委員長代行が出席して、委員会決定を通知した。申立人本人と、被申立人のNHKからは宮崎放送局長ら2人が出席した。
曽我部委員長がまず、「本件放送には人権侵害も、放送倫理上の問題もないというのが結論です」と委員会の判断を示したあと、「ただし今回は、放送倫理上問題があるとする少数意見がついています」と決定の全体像を伝えた。  
申立人の「兄にも何らかの非があるかのような表現によって兄の尊厳が傷つけられ、ひいては申立人の人格的利益をも侵害した」とする主張については、委員会は敬愛追慕の情の侵害の主張と捉え、裁判所の判断基準に則って総合的に判断した結果、許容限度を超える人権侵害はなかったとの判断に至ったと説明した。
また「何らかの金銭的なトラブル」との表現を使ったことについて、被申立人であるNHKは、複数の捜査関係者に裏づけ取材を行った上で警察の認識として伝えており、さらに2人が死亡した住宅火災は放火殺人事件である可能性が高まったとするニュースには高い公共性と十分な公益性があるため、放送倫理上の問題もないと判断したと述べた。
ただし「トラブル」など、多様に受け取られる可能性のある言葉は、使用するにあたり注意が必要だろうと付け加えたこともあわせて説明した。
続いて水野委員が、申立人に対し、「トラブル」など、放送で日常的に使われる言葉について、多様な受け止め方があることを示し注意喚起できたことはこの申し立ての意義があったと受け止めてほしいと述べた。
鈴木委員長代行は、人格的利益の侵害については、裁判所の判例に基づいて一般の視聴者の普通の視聴の仕方で放送全体を見て判断するので、こういう結論になったが、委員9人中2人が、放送倫理上問題ではないかとの少数意見を示しており、私も考えさせられたと述べた。
次に委員長が、「委員会全体としての判断とは別に、委員個人が異なる意見を述べるのが少数意見です」との説明を行った上で、二関委員長代行が少数意見について説明した。
二関委員長代行は、人格的利益の侵害という法的責任に関する判断については、最高裁判所の考え方に従って一般的な視聴者の視点で捉えるのが正しいが、放送倫理上の問題を考えるにはその基準を用いない方が妥当な場合がある。次々に変化していくテレビの画面について、受動的な視聴者とは異なり、放送局は予めそれらを準備する立場なので、それがどのような受け止め方をされるかを、十分に考えた上で番組を作るべきだと思う。その上で「2人の間に何らかの金銭的なトラブルがあった」という表現を考えると、この表現によって、容疑者が何の落ち度もない被害者を一方的に殺害したわけではなさそうだな、と一部の視聴者に受け止められる可能性のある放送になっていたと言える。容疑者の過去の同種前科に触れない配慮をしたのは一つの見識だが、その配慮をするのなら、同様に被害者の人権への配慮があって然るべきだったのではないか。そういったことなどから放送倫理上の問題があったのではないかと考えたと説明を行った。
この決定を受け申立人は「長い時間と多くの労力をかけていただき感謝します」と発言したあと、NHKの報道姿勢と視聴者対応に対する強い不満を表明した上で、「裁判所の判決のような決定で、もっと放送倫理的な方向に振って欲しかった」との意見を述べた。
NHKは「放送したニュースに問題はないとの主張が認められたと受け止めています。今後も人権に充分配慮しながら報道していきたい」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見し、委員会決定を公表した。放送局と新聞社、民放連合わせて19社1団体から27人が出席した。テレビカメラの取材は当該局のNHKが代表取材を行った。通知と同じく、曽我部委員長が決定の結論とそこに至る考え方を説明した上で、最後に記した注意喚起について、「トラブルという言葉は、最近意識してニュースを見るようになったが、非常によく使われている。場合によっては思わぬ受け取られ方をすることもあるので、決まり文句や常とう句のようなものとして、安易に用いないようにする必要があろう」と付言した委員会の思いを述べた。
水野委員は、今回の決定は「問題なしの見解」であり、これまでに17件の同種の見解が出ているが、その中で少数意見がついたのは初めてである。その理由は「トラブル」という言葉の幅が大変広いからで、委員のなかでも異なる意見があった。送り手側が特段の意味を込めなくても、そうではない受け取り方をする人が一定数いることを意識した方が良いと述べた。
鈴木委員長代行は、当事者2人がともに死亡し真相が分からない中で、申立人は警察や報道機関がなぜもっと調べてくれないのか不満を持ちながら、自ら調査していた。8か月後にようやく真相に迫る報道があるのかと期待していたところ、自分は聞いたことがない兄にも非があるかあるかのような報道がなされ、期待が裏切られたと感じたのではないか、と申立ての背景を紹介した。
二関委員長代行は、「何らかの金銭的なトラブル」という言葉の受け止め方について、「トラブル」はそれだけを取り出すと確かに曖昧で中立的ではあるが、「2人の間に何らかの金銭的トラブルがあった」と言う場合は、2人ともそのトラブルの存在を認識している場合を指し、どちらか一方がその存在すら認識していない場合は含まないのが一般的ではないだろうか。その結果、本件は被害者が気づかないうちに金銭がとられるなどの一方的な犯罪行為ではなく、被害者である申立人の兄がよほど恨みを買うようなことをしたのではないか、と一部の視聴者が受け止める可能性があるものになっていたと考えられる。放送局にはそこまで考慮した高度な倫理性が求められるのではないかと、放送倫理上の問題ありとした少数意見を説明した。

<質疑応答>
(質問)申立人、被申立人双方の受け止めは?
(曽我部委員長)
申立人は、BPOに対しては審理への感謝を表明した上で、判断内容については「裁判所のような判断であり、もう少し放送倫理に踏み込んだ判断をして欲しかった」と述べた。放送局に対しては、強い言葉で批判を述べた。その背景には、2人が亡くなる重大な事件であるのに長い間続報がなく、8か月たってようやく報道された内容は、警察の発表通りで期待外れなものだったということがあると思われる。
NHKは、「主張が認められ感謝すると共に、今後も人権に配慮した報道をしていきたい」と述べた。

(質問)以前はよくあったような報道内容だが、報道機関に対する社会の見方が変わってきたというような議論は審理の中であったのか?
(曽我部委員長)
その点を直接議論はしなかったが、委員の問題意識、認識としてはあったと思う。今回のケースは広く社会の耳目を集めるものではなかったが、事件報道の観点からいうと重要な問題提起をするものだと考えている。事件報道の実務に関し、今まで当たり前だと思われていたことについて、全国の放送局や新聞社に考えていただきたい題材を提供するケースだったというのが、委員の共通認識だと思う。

以上

第167回 放送倫理検証委員会

第167回–2022年1月

NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について討議

第167回放送倫理検証委員会は1月14日に千代田放送会館でオンラインを併用して開催された。
11月の委員会で審議入りしたテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について、当該放送局に対して行ったヒアリング等を踏まえ、担当委員から意見書の原案が提出された。
字幕に不確かな内容があったNHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀬直美が見つめた東京五輪』について、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論した。その結果、事実関係や放送に至った経緯等に不明な点があるため、より詳細な報告書の提出を求めるとともに、討議事案としてさらに議論を継続することとした。
手製の筏を漕いで無人島から脱出を図りその所要時間を競う企画を放送した民放テレビ局の番組について、不適切な演出が行われたと週刊誌が報じ、BPOにも視聴者意見が寄せられたことについて、委員会は番組を視聴したうえで意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2022年1月14日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室およびオンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. テレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について審議

テレビ朝日は情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』の2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるパートにおいて、番組側が作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。同パートでは、番組の前半で当日のテーマを視聴者に伝え、放送中に番組ウェブサイトなどで受け付けた質問を番組終盤で紹介し、出演した専門家らが答えていた。また視聴者から受け付けた実際の質問を使用する場合も、文章に手を入れ表現を修正したケースでは、クレームを避けるためとして投稿者の属性を書き換え架空の属性で放送していたという。
11月の委員会で、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論誘導にもつながりかねず、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、当該局から提出された追加報告書やヒアリングの内容を基に前回の委員会で交わされた意見を踏まえ、担当委員が作成した意見書の原案が示され、議論が行われた。
次回の委員会では、意見書の修正案が提出される予定である。

2. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について討議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京五輪』の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と放送局のホームページで公表し謝罪した。
番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀬直美さんら映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。
放送後、視聴者から問い合わせがあり、NHKが男性に再度確認したところ、男性はデモに参加する意向があると話していたものの、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論を行った。委員からは、報告書に記されている内容だけでは、取材時および放送に至る過程での確認作業が適正に行われたかどうかがわからない、字幕で紹介された男性の発言内容など事実関係に不明な点が多い、などの意見が相次いだ。議論の結果、委員会は、深刻な事案である可能性があるとして討議入りを決め、当該局に対し放送に至った経緯等について質問を行うとともに、改めて詳細な報告書の提出を求め、それを踏まえて議論を継続することにした。

3. 民放局が放送したバラエティー番組について意見交換

手製の筏を漕いで無人島から脱出を図りその所要時間を競う企画を放送した民放テレビ局の番組について、船が筏をけん引するなど不適切な演出があったとする週刊誌報道があり、また、BPOにも視聴者からの意見が寄せられていたことから、委員会は番組を視聴した上で意見交換を行った。
委員からは「番組の最後に『安全に配慮して撮影しています』と小さくクレジットがしてあった。牽引はやむなくやっていることで、面白おかしくするためにやっているわけではないということだろう」「このタイプの番組で最も気を遣うのは出演者の安全確保だ。それを否定すると他の同種の番組が作れなくなるのではないか」という意見があった。
一方で、「出演回数の多いお笑いタレントを番組内のスターとして育てているのは理解できる。ただ、参加者同士の競争という体をとっておいて、3組のうち2組がリタイヤし、残った筏を船で牽引して成功させるというのはやりすぎだ」「少年少女に語り掛けるコーナーを設けるなど、この番組は子供向けの感動的な物語風の作りになっている。それだけに、今回船による牽引が行われたことは罪深いのではないか」という声もあがった。
その上で「週刊誌報道をきっかけに、番組を見る人に筏は牽引されていることがあるということがわかってしまった。今後自浄作用が働くのではないか」「そういう番組作りだとわかって楽しんでいる視聴者も沢山いると思う。幻滅する人は見なくなるだろう。この番組の扱いに関しては、そうした視聴者の判断に委ねるべきだ」として議論を終えた。

4. 12月に寄せられた視聴者意見を議論

12月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、大阪のクリニック放火殺人事件や女優の急死の取り上げ方等に関して事務局から概要が報告されたが、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの意見はなかった。

以上

2022年1月21日

2022年 1月21日

まん延防止等重点措置実施に伴う視聴者電話応対業務について

BPOは、新型コロナウイルス感染拡大防止のためのまん延防止等重点措置が、事務局がある東京都に実施されたことを受けて、次のとおり対応いたします。

  • 期間中はテレワークを推進し、視聴者からの電話応対時間を短縮します。
    視聴者意見電話受付時間 平日 11:00~12:00 および 13:00~16:00
  • 郵便物とメール、ファクスは通常通り受け付けます。

なお、今後の感染状況によっては、電話受付を休止することがあります。

第300回放送と人権等権利に関する委員会

第300回 – 2022年1月

「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」委員会決定の通知・公表を報告…など

議事の詳細

日時
2022年1月18日(火)午後4時~午後5時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、水野委員

1. 委員会決定第77号「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」通知・公表

審理入りしていた「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」について、委員会決定第77号として、申立人と被申立人双方への「通知」と「公表」記者会見を、委員会当日に行った。今回の委員会ではその様子が報告された。

2. その他

事務局から現時点での申立て状況などを報告した。

以上

2021年度 第77号

「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」
に関する委員会決定

2022年1月18日 放送局:NHK

見解:問題なし(少数意見付記)
NHK宮崎放送局は2020年11月20日の『イブニング宮崎』で、男性2人が死亡した宮崎市内の住宅火災の続報として、放火殺人の可能性があり、2人の間に「何らかの金銭的なトラブル」があったかのように伝えた。これに対し、被害者の弟が、兄にも原因の一端があったとの印象を抱かせるものであり、兄の尊厳を傷つけたとしてNHKに対し謝罪を求める申立てを行った。NHKは取材を基に客観的な事実を伝えていると反論していた。
委員会は、審理の結果、人権侵害はなく、放送倫理上の問題もないと判断した。

【決定の概要】

 委員会は、以下のとおり、本件放送には人権侵害も、放送倫理上の問題もない、と判断する。
 まず、申立人は本件放送について、事件の被害者である兄にも非があるかのような「何らかの金銭的なトラブル」という表現を使ったことなどで兄の名誉を毀損し、ひいては申立人の人格的利益(敬愛追慕の情)をも侵害した、と主張している。
 しかし、「何らかの金銭的なトラブル」は、それ自体を単体でとらえれば申立人のような受けとめもできようが、兄に何らかの非があったとはっきりと伝えているわけでも、強く示唆しているわけでもなく、それ以外の部分を含め一般的な視聴者の普通の見方をすれば、本件放送が全体として社会的評価を明らかに低下させるわけではない。
 「何らかの金銭的なトラブル」に言及したこと自体も、当事者である兄と容疑者がすでに死亡しており背景がつかみにくい状況で、複数の捜査関係者への取材で一定の裏づけをとったうえで警察の見方として伝えており、また兄と容疑者の関係性や放火の動機につながる情報を警察がどう認識しているかは報道の一要素であるため、不適切とはいえない。
 そして、2人が死亡した火災が事故ではなく、放火殺人事件である可能性が強まったことを報じる本件放送には、高い公共性があり、その目的にも十分な公益性がある。
 以上の事情を総合すると、きわめて不可解、残酷な形で突然、肉親を失った申立人の大きなショックを考慮しても、本件放送は許容限度(受忍限度)を超えて申立人の敬愛追慕の情を侵害してはいない。
 申立人はまた、「何らかの金銭的なトラブル」という表現をめぐる放送倫理上の問題として、①兄にも非があると示唆すること、②遺族である申立人はまったく聞いたことがないのに、警察への取材に依拠し、申立人に確認をせず放送で使用したこと、を主張している。
 しかし、①については、すでに指摘したように本件放送を全体として見れば、兄に何らかの非があったとはっきりと伝えているわけでも、強く示唆しているわけでもなく、②についても、兄と容疑者がともにすでに死亡していること、複数の捜査関係者への取材で確かめたうえで、両者間に「何らかの金銭的なトラブル」があったという警察の認識として伝えていることなどから、放送倫理上の問題があるとはいえない。
 ただし、一般論として、「トラブル」のように、立場や文脈や視聴の仕方により多様に受け取られる可能性のある言葉は、事件報道の常とう句、決まり文句のようなものとして安易に用いることのないよう、留意する必要があろう。

全文PDFはこちらpdf

2022年1月18日 第77号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第77号

申立人
宮崎県在住の男性(事件被害者の弟)
被申立人
日本放送協会(NHK)
苦情の対象となった番組
『イブニング宮崎』(宮崎放送局ローカルニュース)
放送日
2020年11月20日
放送時間
午後6時10分~7時のうち番組冒頭約2分間

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1. 放送の概要と申立ての経緯
  • 2. 本件放送の内容
  • 3. 論点

II.委員会の判断

  • 1.申立人の人格的利益(敬愛追慕の情)の侵害
  • 2.放送倫理上の問題

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

全文PDFはこちらpdf

2022年1月18日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2022年1月18日午後1時からBPO会議室で行われ、午後2時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。詳細はこちら。

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2021年12月に視聴者から寄せられた意見

2021年12月に視聴者から寄せられた意見

大阪ビル放火殺人事件について、取材や報道のあり方を問う意見が多数寄せられた。

2021年12月にBPOに寄せられた意見は1,652件で、先月と比較して702件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール84%、電話14%、郵便・FAX 各1%。
男女別は男性45%、女性26%で、世代別では40歳代25%、30歳代23%、20歳代18%、50歳以上16%、60歳代9%、10歳代5%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送事業者を特定したものは、当該事業者のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は837件【51事業者】であった。
このほか、放送事業者を特定しない放送全般への意見の中から19件を抜粋し、全会員事業者に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

女優の急死や大阪のクリニック放火殺人事件について、取材・報道のあり方を問う意見が多かった。また、いわゆる「ドッキリ」でタレントに心理的な負担を与えるような企画にも多くの意見が寄せられた。
ラジオに関する意見は53件、CMについては5件あった。

青少年に関する意見

12月中に青少年委員会に寄せられた意見は84件で、前月から68件減少した。
今月は「いじめ・虐待」が26件、「表現・演出」が16件、「低俗、モラルに反する」が8件、「暴力・殺人・残虐シーン」が6件、「性的表現」「編成」が4件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 大阪ビル放火殺人事件で亡くなられた方々の名前、年齢、職業、住所の一部までも放送した。被害者の多くは心療内科の患者だ。ここまで詳しく報道しないといけない理由は何なのか。

  • 女優が急死した件の報道。お骨を抱いたままご両親が涙ながらに会見されたのは娘を荼毘に付した直後だ。そこまで追いかけなければならないのか。

  • 女優が急死した件の報道で、メディア各社が悩みの相談窓口を紹介している。私はうつ病の経験があり、ほとんど全ての相談窓口に電話をかけたことがあるが、つながらないし24時間相談を受け付けているところはない。一方で自殺衝動は24時間いつ起こるか分からない。今回の件は報道すべきでなかった。報道によって気持ちが揺らぎ相談窓口に電話をかけた人は、つながらないことでさらに絶望してしまうと思う。

  • コロナ重症患者の取材企画。長期入院することになったという患者について伝えたが、ワクチンを接種していたのか?マスクは?基礎疾患の有無は?などの要因については一切説明がなく、ひたすら「大変だった」、「後遺症が重い」と恐怖感をあおるばかり。あまりにもひどい番組だ。年老いた家族がひどくおびえ、「もう家から出ない」と言い出した。

  • 民放の在東京のキー局は関東1都6県をカバーするはずなのに、新型コロナウイルスの新規感染者数はいつも東京都の分だけを報じていて、ほかの6県の分は全く扱わない。自分のように東京都以外の関東6県に住んでいる人はインターネットやNHK、独立U局でしか新規感染者数の情報を得られず、不便で不公平だと感じる。

  • イベントのアルバイトスタッフの話。アルバイト先経由で依頼を受けて「後ろから撮影」という条件でコロナ対策のニュースの取材に応じた。カメラが正面からも撮影していたが、首から下を撮影したものと思っていた。しかしその日の夕方、知人からの連絡で、代表で撮影した局とは別の局のニュースに自分の顔が出ていたことを知った。画像はSNSでも拡散。県を通じて抗議した結果、「映像は削除した」と伝えられたが、SNSはそのまま。

  • いわゆる「撮り鉄」の迷惑行為を報じるニュースで、撮影する撮り鉄たちの映像に「ここは私有地、ここからの無許可撮影は禁止されている」というナレーションがついていた。私はその場所で撮影した経験が数回あるが、地元の方から「みなさんゴミは持ち帰ってくださいね」という呼び掛けを一度聞いた程度。その場所で撮影された写真がTwitterに載せられて鉄道事業者の「いいね」がついたこともあり、何の問題もない場所と認識していた。私もマナーの悪い撮り鉄がいることを憂えているが、せっかくの批判も正しく行われなければ説得力を失ってしまう。

  • 回転寿司店でコンベア上の小皿が何かに引っかかって止まり、後続の皿が渋滞して、数皿がレーン外に落下したという出来事を全国ニュースとして伝えていた。映像はSNSにアップロードされた動画。こんなこと、一々ニュースで取り上げるようなことなのか。マスメディアの職場放棄でしかない。

【番組全般・その他】

  • 東京五輪の公式記録映画の制作過程を追ったドキュメンタリー番組で、男性の映像とともにテロップで「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と伝えた。テレビ局が団体名、金額、経緯など重要な情報をほとんど何も提示せずに、特定の主張を放送することが許されるならば、デマを生みかねない。

  • メインパーソナリティーが番組内で「70年以上にわたってこの国に浸透してきた、いわゆる『アカ』、共産党系の思想やら行動やらをずっと支援しているグループがこの国には何万人といる。それが皆、活動している。そいつらに巻き込まれて日本がまた悲惨な運命をたどらないように僕は祈っている。皆さんもそれは忘れないでください」と発言。"アカ"というレッテルを貼り、その人たちの人権をないがしろにしていた時代を思い起こさせるようで恐ろしい気がした。

  • 情報番組で皇族の結婚を取り上げた際、結婚相手の「身体検査」についてスタジオでトークしていた。「昔は一般の人たちの結婚でも近所への聞き合わせがあった」という話題も出て、視聴者に「皇室に限らず自分の子どもが結婚する時には『身体検査』が必要」と思わせかねないという印象を受けた。身元調査を肯定するような内容が放送されとても不愉快。差別を助長するようなことはやめてほしい。

  • 情報番組で衆院選での自民党の「裏金」問題を扱った際、コメンテーターとして出演していたお笑い芸人が「対立候補はいくら(裏金を)払ったのか知りたい」と言っていた。許される発言ではない。

  • 視聴者が投票によって出演タレントの行動を決める企画。投票の選択肢は、目上の共演者にふざけた態度で接するなど相手をさらに怒らせるものばかり。出演タレントも見ているわれわれ視聴者も、みんなが嫌な気持ちになる企画だった。

  • バラエティー番組で極端な過食をしても太らない人たちと、その体の特性などを紹介した。今、摂食障害に苦しんでいる人の行動に悪影響を及ぼしたり、健康な人が摂食障害を患うきっかけになったりする可能性がある。自分が摂食障害だった当時の辛い思い出がよみがえる内容だった。このような特集は誰にも良い影響を与えないと思う。

  • 数人の高齢者による早押しクイズ。老人の認知能力の低下、いわゆる「ボケ」を笑いの対象にしており不快。

  • 芸人が自分の実家の墓所に仲間を招き、「クリスマスパーティ」と称してプレゼント交換をしたり、全員で太鼓を叩きながら踊ったりする様子を放送していた。われわれの先祖も眠る墓地でよくもまあやってくれたと憤りを感じる。たしかに沖縄には親戚が墓所に集まって飲食する習慣があるが、それを面白おかしく笑いに変えて放送するのは不謹慎で迷惑行為だと思った。

  • 動物番組の内容が「かわいい」だけでは安易なペット購入を招き飼育放棄などにつながる。動物番組内で「飼うならきちんと面倒を見られるかよく考えてから」などと表示するというルールを作ってもいいと思う。テレビ局は社会的責任を負っている。外来種問題など、負の側面についても報道すべき。

  • 「秩父で寿司探し旅」とうたっておきながら、実際に訪れていた場所は秩父地方とは全く無縁だった。このようなやり方はよくないと思う。

  • 母親と高校生の息子の連続ドラマを毎回泣き笑いしながら見た。こんな風に子どもと向きあって子育てができていれば、もっと子どもたちを豊かにできただろうという反省や後悔もあった。家族でこのようなドラマを見る時間こそが今の時代に必要なのだと思う。若者たちが直面する課題も毎回織り込まれていた。SNSで若い方の評価も高く、「感動して号泣した」などの意見も多い。良いドラマは世代を超えて愛されるのだと安心した。愛と笑いに満ちたドラマを今後も期待する。

青少年に関する意見

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • たまたま娘がテレビを点けた時に見たのだが、アイドルが怒られるドッキリの対応を生放送中にスマホ投票で決められる企画で、まだ若い男の子たちにパワハラかモラハラか、というドッキリの内容、見ていてとても心が痛み、辛くなった。他のメンバーの顔が青ざめて行く様子は可哀想で、現在ハラスメントや倫理が重視される令和の時代にこのような企画を生放送で通してしまう番組制作者の方々に疑問を抱いた。モノの消費のように、アイドルの子たちを扱ってはいけないと思う。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 無人島でお金をかけずに自給自足の生活をするという企画といっていながら、大量の物資を持ち込んでいるのは大嘘もいいところではないか。子どもにも嘘をついてもいいと誤解を与えるのでやめてもらいたい。

【「低俗、モラルに反する」】

  • 女優が亡くなった時の両親の記者会見のニュースについて。骨壷を持ち、涙を流しながらも頭を下げる両親にフラッシュがたかれる映像は非常にショッキングであり、夕方のニュースという子どもも映像を目にする機会のある時間帯の番組で、配慮のない放送の仕方だったのではないか。心身ともに疲弊している両親への無遠慮な質問、非常に不快であった。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 19時台に、ナレーションで「これからショッキングな映像が流れます」と一言。すぐに女性の顔のドアップ。その女性はすでに顔に赤い血液や亀裂が入っており、その後すぐに目から下の皮膚が剥がれ落ちて中の筋組織が見えるといった映像が流れた。フェイクだとしても子ども達も見るような時間帯に流す映像ではなかった。21時より前は全年齢が見られるような映像にすべきではないか。

【「性的表現」に関する意見】

  • 頑張る子ども達に密着し、その姿を紹介してくれる素晴らしい番組なのだが、小学生が入浴しているところに入り、インタビューする映像が流れた。はたして、プライベートな空間にまで密着する必要があったのか。児童を狙った犯罪が多く発生している昨今、配慮が足りない。

【「編成」に関する意見】

  • 深夜に放送している低俗・下品な番組を日曜日の真っ昼間に関西で再放送している。内容と共に放送時間帯を考慮するべきだと思う。

第241回 放送と青少年に関する委員会

第241回-2021年12月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議…など

2021年12月20日、第241回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、6人の委員が出席しました。
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について引き続き審議しました。
前回までの当委員会での勉強会や放送局との意見交換会を踏まえて検討を続け、次回以降は原案を起草して議論することにしました。
11月後半から12月前半に寄せられた視聴者意見には、お笑い芸人を落し穴に落としたまま長時間放置するドッキリ企画に対して、「真似をして子どもが倉庫などに鍵をかけたまま同級生を閉じ込めて帰ってしまうイジメなどに発展しないか心配」「芸人が合意していたと局側は言うだろうが、力の弱い芸人はそれに対して反論はできない」などが、また、愛犬の目の前に用意されたご馳走を我慢させるバラエティー番組に対して、「犬を猛烈に睨みつけ、強制的に餌を食べさせないように仕向けている」「怒号により制御させるのは虐待だ」などが寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見について議論しました。
また、前回の委員会で、ある県のマスコットキャラクターが主人公のアニメ番組で、その幼い主人公が叔父と一緒に競輪場に行き、競輪の賭け方について詳細に説明される内容に対し、放送局の制作体制や考査について問い合わせることとした事案は、当該放送局からの報告を踏まえて議論しました。
12月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。33人から報告がありました。モニターからは、(月)~(金)ベルトの朝の情報番組について、「少し憂鬱な朝に楽しくなるような情報を提供してくれるのはありがたいです。また、暗い報道をするコーナーもありますが、その報道に対して議論をすることがないので淡々と進み、すぐ明るいコーナーに戻ります。どんよりした気分を引きずることがないので、朝の時間にぴったりだと思っています」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、1月25日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2021年12月20日(月)午後4時30分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について引き続き審議しました。
前回までの当委員会での勉強会や放送局との意見交換会を踏まえて検討を続け、次回以降は原案を起草して議論することにしました。

視聴者からの意見について

11月後半から12月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
「お宝さがし」というニセ企画で呼んだお笑い芸人を落とし穴に落としたまま長時間放置するドッキリ企画について、「真似をして子どもが倉庫などに鍵をかけたまま同級生を閉じ込めて帰ってしまうイジメなどに発展しないか心配」「芸人が合意していたと局側は言うだろうが、力の弱い芸人はそれに対して反論はできない」などの視聴者意見が寄せられました。
委員からは、「あきらめずに繰り返し挑戦して脱出に成功するシーンも含まれており、共感や感動を感じられるような場面も見受けられる」という意見があった一方で、「出演者が納得ずくでやっていることは小学校の高学年ぐらいだと理解できるかもしれないが、幼児には困難では」「瞬間の痛みを笑うのではなくて、何度も何度も脱出に失敗する様をみんなで楽しんで見ているようなシーンは、子どもの発達において悪い影響を与える可能性があるのではないかという気がする」「単純に真似るのではなく、逆にゲーム性を分かった上で、相手はこう言えば傷つくと理解して使うこともあり得ると思われ、心配だ」などの意見が出されました。審議中の「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」中の一例として検討することとし、この番組単体で討論・審議などに進むことにはしないことにしました。
飼い犬の目の前に肉を用意し、飼い主の子どもが3分間「待て」を強要する躾もの企画や、飼い主の子どもと犬がペアになり横に様々な肉料理が並べてある直線コースに食欲を我慢してゴールする企画について、「犬を猛烈に睨みつけ、強制的に餌を食べさせないように仕向けている」「怒号により制御させるのは虐待だ」などの視聴者意見が寄せられました。
委員からは、「餌を食べてしまう犬を強制的に止めているようなことはなく、動物虐待とまではいえないように思う」「こうした視聴者意見が寄せられることも放送局は受け止めて欲しい」という意見が出され、議論は終了しました。
前回の委員会で、ある県のマスコットキャラクターが主人公のアニメ番組で、その幼い主人公が叔父と一緒に競輪場に行き、競輪の賭け方について詳細に説明される内容に対し、放送局の制作体制・考査について問い合わせることとした事案は、当該放送局からの報告を踏まえて議論され、これ以上検討する必要がないということになりました。

中高生モニターについて

35人の中高生モニターにお願いした12月のテーマは、「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。いつものように「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」についての欄も設けました。33人から報告がありました。
「最近見たニュース・報道・情報番組について」では、全部で21番組について報告がありましたが、中でも複数寄せられたのは6番組でした。『THE TIME,』(TBSテレビ)に6人から、『めざましテレビ』(フジテレビ)に3人から、『ZIP!』『news zero』『シューイチ』 (いずれも日本テレビ)、『WBS』(テレビ東京)の4番組にそれぞれ2人から感想が寄せられました。
「自由記述」では、今月のテーマに関連した記述が多く見られ、「朝の忙しい時間帯にいかにしてニュースをわかりやすく伝えるかという工夫、制作者の努力を知った」「グルメや施設紹介などロケコーナーが増えてきているように感じている。嬉しい」など、前向きな感想が寄せられています。また、ドラマへの意見や感想、要望も多数ありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『理想本箱~君たちのガイドブック~』(NHK Eテレ)と『サンドウィッチマンと芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)をそれぞれ8人が、『女芸人No.1決定戦 THE W 2021』(日本テレビ)を2人が取り上げています。また、先月の「青少年へのおすすめ番組」の中から、『奇跡のレッスン「小説 重松清 きみの近くに物語はある」』(NHK-BS1)について感想を寄せたモニターが3人いました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 『THE TIME,』(TBSテレビ)ネット局と中継する朝の番組というのは久しぶりに見た気がする。「中継でさまざまな地方とつなぐことで、知らない場所について知ったり、地方局のアナウンサーに出会えたり、いろいろな新しい発見ができる」という内容を記述したモニターがいて、地方の人は、地方からの発信でその地方が注目されることをうれしく感じるのだろうと思った。

    • 『THE TIME,』(TBSテレビ)今どき全国を中継でつなぐという番組はあまりないため、この番組はちょっと斬新なのかもしれない。そういうところが今の子どもたちにウケている、評価されているというところが面白い。

    • ニュースにおいては事実がはっきりわからないまま報道されることも多い。勝手な解釈をせず、さまざまな情報を分析しながら読み取っていくことが必要だが、そういうメディア・リテラシーに関することについて記述したモニターがいて興味深かった。

  • 【自由記述について】

    • 報道について、「テレビはインターネットとは違う独自性を考えなければいけないのではないか」という問題意識を書いたモニターがいた。テレビとインターネットは同じような内容が多いと感じ、テレビの報道はインターネットの誹謗中傷や週刊誌と変わらない部分があると疑問を呈している。デジタルネイティブといわれる世代が、インターネットとテレビをどのように区別して視聴しているのか、とても興味深い。もっと深掘りして聞いてみたいと思った。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『理想本箱~君たちのガイドブック~』(NHK Eテレ)何人ものモニターがこの番組を挙げていた。「死にたいと思ったときに読む本」など、テーマごとにいろいろな本を紹介する番組だというが、「説教くさくない」「考えさせる」「本の続きを読んでみたいと思う」などの感想が寄せられており、面白い番組と受け入れられていた。

    • 『奇跡のレッスン「小説 重松清 きみの近くに物語はある」』(NHK-BS1)モニターの感想を読んで、「当たり前のことなどない」「今を懸命に生きることが大事」など、コロナ禍の中で死生観や人生観のようなことを考えている子どもたちが多いのだなと感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 『THE TIME,』(TBSテレビ)「LIVE NEWS」として画面の左下に常時ニュースがあり、途中から番組を見始めた人にもしっかりと今知りたいニュースを報道していて良いと思いました。(中学1年・男子・岩手)

    • 『THE TIME,』(TBSテレビ)この番組はコメンテーターがいなくてニュースの内容がすっと頭に入ってきた。コメンテーターがいないからこそ一つのニュースにかける時間が短くなり、多くのニュースを取り上げることができるが、一方で、専門的な詳しい内容までは報道できないという面もある。しかし私は、コメンテーターがいなくて多くの情報を得られるほうがいい。ほとんどの番組でコメンテーターがいる中で、いない番組もあるという今の状況が、多くの人のニーズに合っていいと思う。(中学2年・男子・神奈川)

    • 『THE TIME,』(TBSテレビ)この番組の最大の見どころは全国からの中継だと思っています。朝から日本のいろいろなところを見て知ることができ、今はなかなかいろんなところに行けませんが行った気になったり、ここに行きたいという目標も見つけられたりします。(中学3年・女子・奈良)

    • 『THE TIME,』(TBSテレビ)この番組で私が好きなコーナーは「列島リアルタイム中継」です。地域の食べ物や観光スポットなどが紹介されているので、話題性もあるし、ちょっとした旅行気分にもなれるので、見ていてとても楽しく感じます。(高校2年・女子・奈良)

    • 『めざましテレビ』(フジテレビ)「今朝知りたい芸能情報」をたくさん知ることができる番組だと感じます。なんとなく寂しさを感じる朝には、このくらいあっさりとしていて、なおかつキャストさんの笑顔や楽しさを感じられるこの番組がぴったりだと思います。朝から楽しくテレビを見てご飯を食べて学校に行く日は、やはり1日が楽しかったりします。心のケアにもつながる番組ですね!(中学2年・女子・埼玉)

    • 『めざましテレビ』(フジテレビ)めざましドラマ「めぐる。」はすごく心が温まるドラマで、朝ほっこりとした気持ちになれる。2週間といわず、ずっと続けてほしいと思う。(中学3年・女子・京都)

    • 『シューイチ』(日本テレビ)オミクロン株への備え方が取り上げられていました。1人の専門家ではなく、2人の異なる医療の専門家、日本ワクチン学会の理事、アメリカ国立感染研究所の先生の意見が紹介されていました。1人の専門家に話を聞き、結論を提示している番組を見ることもあった中で、このように複数に話を聞いて、ひとつの結論を導いていたのが、説得力があると思いました。週替わりで出てくるコメンテーターは、弁護士、医師、経済ジャーナリスト、教育評論家、元スポーツ選手、タレントなど、さまざまな職種の方がいるので、自分ではわからない立場の意見を知ることもできます。(中学1年・女子・東京)

    • 『ZIP!』(日本テレビ) 少し憂鬱な朝に楽しくなるような情報を提供してくれるのはありがたいです。また、暗い報道をするコーナーもありますが、その報道に対して議論をすることがないので淡々と進み、すぐ明るいコーナーに戻ります。どんよりした気分を引きずることがないので、朝の時間にぴったりだと思っています。(高校2年・女子・神奈川)

    • 『news zero』(日本テレビ) すごいスピードでニュースが流れるので流し見ができない番組だと思った。1日の最後、ニュースのおさらいにはいいかもしれない。スタジオのコメントがほぼなかったので出演者がもったいないと思った。(高校2年・男子・愛知)

    • 『news zero』(日本テレビ) 真珠湾攻撃からちょうど80年という節目の日に近かったので特集がありました。元日本軍兵士の方が、教科書では学ぶことのできない開戦までの経緯や魚雷を発射したときの心情を初めてテレビで明かしてくださり、涙が止まりませんでした。また、取材に行った櫻井翔キャスターの踏み込んだ質問により、当時の状況を深く知ることができたと感じました。(高校3年・女子・福岡)

    • 『WBS』(テレビ東京)視聴するのは今回が初めてだった。視聴者層が時間に追われている社会人であるからか、一つ一つのニュースの要点だけがよく伝わる構成になっており、非常にテンポよく番組が進んでいった。番組開始後、いの一番に消費者物価指数を見せられたときは多少面食らったが、それほど難しいグラフや指数は用いておらず、またニュースの補足としてデータを活用するので、一つ一つのニュースに割く時間が短いにもかかわらず、得られる情報量は他番組のそれより多かった。ニュース自体も経済という観点に特化しているため、普通のニュース番組では見られないような内容のものが見られ、僕自身が政治・経済に興味があるのもあってか、とても楽しめた。(高校1年・男子・東京)

    • 『ニュースウオッチ9』(NHK総合)字幕がとても多く、若い人から高齢者まで理解しやすくなっていた。シンプルなデザインのテロップも見やすかった。(中学2年・男子・長崎)

    • 『Nスタ』(TBSテレビ)イラストやマーク、文字、テロップがシンプルで、気が散ることなくニュースに集中できるのでとても良いなと思いました。(中学3年・女子・富山)

    • 『サンデーモーニング』(TBSテレビ)「風をよむ」というコーナーでは、あまり目にしないような社会的弱者に寄り添った特集や日本で浮き彫りにならない世界の問題などが、かなりの割合で取り上げられている。現代に生きる私たちが知っておかなくてはならない内容ばかりで、若者もこういった特集を見るべきだと思った。最近の情報番組では、ネットや若者の人気に寄り添った内容があまりにも増えているように思う。もちろんそれもあっていいと思うが、ネットで自ら調べないような、テレビだからこそ知ることのできる社会問題や世界の実情を発信していくことも大切なのではないだろうか。(高校1年・女子・京都)

    • 『ニュース 地球まるわかり』(NHK総合)海外に行くこともできず、国内の経済に気を向けがちなので、インドのスラム街の子どもたちなど、海外の様子を見ることができ、少しパンデミックで閉鎖的だった自分の思考を開くことができました。このような国際情勢をわかりやすく取り上げる番組に加え、幅広い年代の視聴者が見る定時のニュースでも、今以上の一定の割合で国際ニュースを取り上げてほしいと思います。(高校3年・女子・静岡)

  • 【自由記述】

    • 朝の忙しい時間にテレビでニュースを伝えるのは難しいと思う。視聴者はいろんな事をしながらなので、テレビをずっと見ていられないからだ。だけど、いろんなテレビ局がいろんな人に情報を伝えるためにいろんなことをしているんだなと思った。テレビ局の努力が伝わってきた。現代はインターネット上のメディアでもニュースを見ることはできて便利だけど、これからもテレビ局には頑張ってほしいと思う。(高校1年・男子・群馬)

    • 最近、芸能人や話題の人のプライベートにまで踏み込んだような、ネットに寄せた内容が多いな、と感じる。ついつい見てしまうのだが、時折、コメンテーターが想像の域で本当のことのように話し、執拗な取材で傷ついているという報道を知ると「やっている事はインターネットの誹謗中傷や週刊誌と変わらないのでは?」とさえ思ってしまった。裏付けの取れた情報ならともかく、それを大きく事実のように報じることは、テレビはある程度で留めておくほうが良いのではないかと思う。(高校1年・女子・京都)

    • 最近、テレビの企画とYouTubeで見る企画が似ていると思うことがあった。私はこのことに関してネガティブな印象は抱いていない。YouTubeと似た企画をテレビでもやることで多くの人の関心を集めることができる上に、テレビの規模でYouTubeの企画をやればより面白いものが作れると思うからだ。また、最近この逆のパターンもよく目にする。テレビとYouTubeという利用者が多くて同じような需要のあるもの同士、企画が似ることは双方にとって良いことだと思う。(高校1年・女子・埼玉)

    • 番組によっては、加害者の親族のコメントや被害者の名前や写真を出しているので、その家族がとても気の毒で心配だ。(高校2年・女子・埼玉)

    • 最近地震が多いのは不安だけれど、落ち着いて話すアナウンサーやその周りのディレクター、カメラマンの作る報道で少し安心することができる。また情報番組でどのように備えることができるのかなどを知って、自分で備えていけば安心できるので、テレビの報道で安心を得られているのだなと痛感する。また一方で、『NHKスペシャル「パラレル東京」』など地震についての番組でその脅威について学ぶことができるので、テレビは災害のさまざまな面を伝えているなと感じる。(高校2年・女子・東京)

    • 今までたくさんのドラマを視聴してきましたが、その中でも恋愛ドラマについて思ったことがあります。それは、どの恋愛ドラマも女性目線のものが多いということです。視聴者は女性が多いことはわかりますが、男性目線の恋愛ドラマも新鮮で面白いのではないかと思います。(中学3年・女子・富山)

    • NHKの朝ドラ『カムカムエブリバディ』は、受験生である自分にとって英語の勉強になるかなと気楽に見始めたのですが、日本の戦前戦後の過渡期の時代、どれだけ多くの国民が犠牲になり人生を変えられたのかと思いを馳せ、自分はなんて平和な時代に生きているのだと感謝の気持ちが溢れてきます。これから三代に渡って物語が展開するとのことで、ますます目が離せません。(高校3年・男子・長崎)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『理想本箱~君たちのガイドブック~』(NHK Eテレ)私たち10代が感じている悩みや不安などに答える一冊を見つけてくれるものでした。今回のテーマが「もう死にたいと思ったときに読む本」と聞いてドキッとしました。私たち10代は死にたいと思ってしまうことがある人が多い年代であり、問題にもなっています。そんな私たちの救いになると思いました。(高校2年・女子・静岡)

    • 『理想本箱~君たちのガイドブック~』(NHK Eテレ)青少年の悩みに破天荒に答える本、スクールカーストの中でもがく主人公を通して自分自身の価値を考えさせる物語本、悲しみそのものについてのエッセイなど多様なジャンル、しかもあえて自殺をメインに取り扱ったわけでない本を選んだのは驚きだった。どの本も説教くさくなく、番組内での劇や、朗読のおかげで本の雰囲気がつかめるので、本をあまり読まない昨今の青少年でも本にとっつきやすい形になっていた。(高校1年・東京・男子)

    • 『理想本箱~君たちのガイドブック~』(NHK Eテレ)紹介方法が最も印象的だった。「映像の帯」と呼ばれる部分である。帯というと、大抵この世で本にしかついていないものだが、「映像の帯」は映像という形式をフル活用して、ある本ではドラマのように、またある本では舞台のように作中の世界が描かれていた。本という単体だとテレビには向かないメディアと、テレビの本業である映像とがうまく掛け合わせて作られていて、これは「テレビ番組にしかできないこと」なのではないかと感じた。(高校3年・女子・東京)

    • 『サンドウィッチマンと芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)私たち世代のさまざまな博士が出てくる番組です。みんな個性的な趣味を持っていて面白いです。同じ世代なので刺激を受けるし、勉強にもなります。(中学3年・女子・奈良)

    • 『サンドウィッチマンと芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)今回のテーマは昭和の家電。まだ生まれていないのにも関わらず、詳しすぎる人たちにたくさんのことを教えてもらった。“子どもが大人に教える”前代未聞の番組で、斬新で、毎回見たいと思わせてくれる魅力があると思う。(高校1年・女子・京都)

    • 『サンドウィッチマンと芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)家電を通して、いかにすごいスピードで家電(おそらく日本全体も)が成長したかがわかりました。中には失敗といえるものもありましたが、昔の人の発想力の素晴らしさを感じました。(高校1年・女子・東京)

    • 『女芸人No.1決定戦 THE W 2021』(日本テレビ)ほとんど知っている芸人だが、年1回の勝負ネタがここで見られるのがうれしい。煽りVの曲もセンスがいいので見どころである。せっかく豪華な審査員がいるのでもっとネタについてのコメントを見たいと思った。(高校2年・男子・愛知)

    • 『奇跡のレッスン「小説 重松清 きみの近くに物語はある」』(NHK-BS1)当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではないということが心に響いた。コロナウイルスが流行し始めてからよく言われていることだが、今この瞬間が当たり前ではないということを言われ、改めて自分が死ぬまでの一瞬一瞬悔いなく生きることは難しいが、気持ちだけでも楽しむ気持ちを持って生きていきたいと思った。(中学2年・男子・神奈川)


以上