第124回 放送倫理検証委員会

第124回–2018年3月

"裁判の被告として別人の映像を4回にわたり放送"毎日放送の『ニュース』を討議
"モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送"東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議など

毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真を放送した際、撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたなどという誤ったエピソードを伝えたことに関し、委員会は事実の裏付けを取らなかったことや写真のキャプション内容を見落としたことは問題だとしながらも、再発防止のための対応策が取られているなどとして、討議を終了した。
裁判所に入る被告の映像を取り違えて、全く別人の映像を被告として4回にわたって放送した毎日放送のニュースについて、当該放送局の報告書をもとに討議した。その結果、毎日放送は、誤って放送された人に謝罪するため、この人を探し出す作業を続けていることから、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。
東海テレビのニュース番組『みんなのニュースOne』で覆面座談会の模様を放送した際、一部モザイクが未処理のまま放送が行われたことについて討議が行われた。委員会はモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

議事の詳細

日時
2018年3月9日(金)午後5時15分~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した
毎日放送『教えてもらう前と後』を討議

毎日放送は、1月9日に放送したバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真の撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたと伝えたエピソードなどに誤りがあったとして、1月23日に訂正放送を行うとともに、番組ホームページでも訂正と謝罪をした。
前回の委員会では、「写真の撮影時期の誤りよりも、ご成婚前の撮影を前提としてありえないエピソードを伝え、それにコメントを加えたことが問題だ」といった意見が相次ぎ、制作の経緯などについてさらに詳しく聞くために、当該放送局に追加の質問を行うとともに、誤った情報が書かれていたという書籍の部分のコピーの提出を求めて、討議継続となった。
今回の委員会では、書籍に書かれた内容の裏付けをきちんと取らなかったことや、写真に添えられたキャプションには撮影時期がご成婚後であり、場所も違うことが書かれていたのに、それに十分な注意が払われなかったことは問題だとしながらも、放送法による訂正放送がなされるとともに再発防止のための対応策が取られ、また宮内庁とも話し合いをして了解を得ているとして、討議を終了した。

2. 裁判の被告として全く別人の映像を4回にわたって放送した
毎日放送の『ニュース』を討議

毎日放送は、去年12月に開かれた元神戸市議会議員の政務活動費詐欺事件の初公判を報道する際、3人の被告のうちの1人としてただの通行人とみられる全く別人の映像を放送した。この誤った映像は、その後の論告求刑公判や判決の報道の際など、合わせて4回放送された。2月に視聴者からの指摘で誤りに気づいた後、訂正放送を行うとともに、ホームページで訂正と謝罪をした。
当該放送局の報告書によると、神戸地方裁判所の正面玄関で取材していたカメラマンが撮影した映像に、被告のほか、通行人とみられる全く別人も写っていた。翌日朝のニュースに向けて映像を編集している過程で、担当記者は、この別人の静止画が被告であるかどうかの確認を求められた際、持っていた顔写真と少し違うとは思ったものの、「写真と実際は違う」と自分を納得させて「大丈夫です」と答えたという。また撮影したカメラマンも、誰を撮影したかなどを記載するキャプションに、映像全体として「神戸市議入廷」と書いただけで、どの部分が誰の映像であるか特定をしていなかった。
委員会では、「被告人ではない人を被告人として4回も放送したことは軽視できない誤りだ」「誤って放送された人が特定できていないので、謝罪もされていないのは問題だ」など厳しい意見が相次いだ。
毎日放送は、誤って放送された人を見つけて謝罪するため、撮影した時刻と同じ時間帯に、同じ場所で通行人を目視で確認する作業を続けていることから、委員会は、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。

【委員の主な意見】

  • 映像の取り違えはこれまでもあったが、4回も放送されることはなかった。
  • 担当記者の経験が浅いとはいえ、放送されたニュースを見ていないのには驚いた。カメラマンも見ていないということで、理解できない。
  • 間違って放送された人は、被告本人とよく似ているが、結果的に無関係な人を被告としてしまったことは罪深い。誤って撮影された人を特定して、きちんと謝罪できるか、しばらく様子をみたい。
  • 具体的な再発防止策が取られてはいる。

3. モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送した東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議

東海テレビは2月23日に放送したニュース番組『みんなのニュースOne』で、「働き方改革」をテーマにした座談会を放送した際、経営者や医師など5人の出演者との約束で顔にモザイクをかけるべきところ、一部未処理のまま放送したため、番組の中でお詫びをして、出演者にも謝罪した。
この問題について委員会では、「なぜ特定のシーンだけモザイクが未処理のまま放送されたのかがよくわからない」として、シーンの一部にモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論の内容も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 約束したモザイク処理がされないと、番組に出演した方が経営する企業の評判を落とすことにもつながりかねない。
  • 今後の取材協力者が得られなくなるかもしれないという、放送人にとって大きな問題であるはずなのに、その危機感が報告書からは読み取れない。
  • 時間が間に合わないから放送で使わないという判断もあったはず。
  • 番組審議会や当該放送局が作っている第三者機関による審議を見守りたい。

以上

第123回 放送倫理検証委員会

第123回–2018年2月

毎日放送『教えてもらう前と後』皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した特集を討議など

2月8日に、当該局への通知と公表の記者会見を行ったフジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
皇后陛下の肖像写真の撮影時期や撮影のエピソードに誤りがあったとして訂正放送を行った毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』について、1月の番組と訂正放送を改めて視聴し、当該放送局の報告書をもとに討議した。その結果、当該放送局に、誤った情報の"ネタ元"とされる資料の提供を求めるとともに追加質問を行い、次回の委員会でさらに討議することとなった。
1月25日、沖縄地区の各放送局と委員会との意見交換会が、那覇市内で開催された。

議事の詳細

日時
2018年2月9日(金)午後5時00分~6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. フジテレビ『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見の通知・公表

フジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見(委員会決定第28号)の当該放送局への通知と公表の記者会見が、2月8日に実施された。2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者として別人の映像を放送したのに続いて、翌8月にも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、刑事事件の容疑者に関する最もセンシティブな情報に関して、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして、10月の委員会で審議入りしていた。
委員会は、事実に反する報道で誤った情報を視聴者に伝えた2つの特集は、放送倫理基本綱領や日本民間放送連盟放送基準に抵触し、放送倫理違反があったと判断した。そのうえで、2つの特集の制作過程においては、何度も誤りに気づいて修正するチャンスがあったにもかかわらず見逃されてしまったことを指摘、放送現場に、改めて刑事事件報道の原則を再確認するとともに、番組スタッフの連携の力をさらに高めるよう求めた。
委員会では、委員会決定を伝えたフジテレビのニュースと当該番組を視聴し、委員長や担当委員から、通知の際のやりとりや記者会見の内容などが報告された。

2. 毎日放送『教えてもらう前と後』皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した特集を討議

毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』は、1月9日に放送した皇后陛下の肖像写真の撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたと伝えたエピソードなどに誤りがあったとして、1月23日に訂正放送を行うとともに、番組ホームページでも訂正と謝罪を行った。
当該放送局の報告書によると、番組では、写真は陛下が皇太子時代の昭和32年に撮影され、「女ともだち」と題して「宮内庁職員組合文化祭美術展」に出品されたなどと紹介したが、実際に撮影されたのはご成婚後の昭和38年で、写真撮影と美術展出品をめぐるエピソードも根拠がないものだった。放送中に視聴者から指摘があり、事実確認を行った結果、誤りが判明したという。
毎日放送は宮内庁に謝罪するとともに、総務省近畿総合通信局に報告し、1月23日の同番組で訂正放送を行った。
委員会では、「写真に添えられたキャプションを見れば時系列的に矛盾していることがわかったはず」「写真の撮影時期の誤りよりも、ご成婚前の撮影を前提としてありえないエピソードを伝え、それにコメントを加えたことが問題だ」「訂正放送の内容や番組ホームページに掲載された謝罪文では、視聴者に何が問題だったのか全く伝わっていないのではないか」など、厳しい意見が相次いだ。
委員会では、訂正放送のあり方や制作の経緯について詳しく調べる必要があるとして、当該放送局に追加の質問を行うとともに、誤った情報の"ネタ元"とされる書籍など関連資料の提出を求め、次回委員会で引き続き討議することになった。

【委員の主な意見】

  • 写真撮影の時期と経緯が正しいものであることを確認した上で作られなければならない番組であるのに、肝腎の写真の入手がスタジオ収録の前日までできないまま制作が進められていたというのには驚く。
  • 誤った撮影時期を伝えたという点では単純なミスだが、そのミスをもとに、ご婚約前に承諾を得て撮影したとか、「女ともだち」というタイトルで美術展に出品したというフィクションを放送してコメントを加えている。
  • 写真の誤使用よりも、伝えた事実に誤りがあったことが問題だ。
  • エピソードが間違っていたことについて、間違った箇所を明示しての訂正やお詫びがないのは問題だ。

3. 沖縄地区の各放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会開催

1月25日(木)沖縄地区の放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、那覇市内で開催された。委員会が沖縄地区の放送局と意見交換会を開催したのは今回が初めてである。意見交換会には琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ、ラジオ沖縄、FM沖縄、NHK沖縄放送局の6局から24人が出席した。委員会からは川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員が出席、BPOの濱田純一理事長が同席した。なお意見交換会は、双方が率直な意見を述べることにより、相互の理解を深めるという趣旨から、非公開で行われている。
意見交換会の前半は、昨年12月14日に委員会が公表した東京メトロポリタンテレビジョンの『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見書について、後半は、基地問題に関連してインターネット空間で出回っている沖縄ヘイトやデマ情報に地元の放送局がどう向き合っているのかをテーマに活発に意見が交わされた。
意見交換会では、『ニュース女子』の意見書ついて、まず川端委員長から委員会決定のポイントの解説が行われたあと質疑に移った。特に、委員会が独自に行った現地調査について各局から質問や意見が相次ぎ、調査に赴いた担当委員を中心に詳しく説明するとともに活発な議論が展開された。また、米軍ヘリから小学校や保育園に部品が落下した問題をめぐり、学校や教育委員会に誹謗中傷の電話が相次いだことについて、各局とも複雑な県民感情を慮って放送するか否か迷ったり悩んだりしていることが具体的に報告され、参加した委員からは沖縄の放送現場の葛藤が聞けて非常に有意義な意見交換になったと感想が述べられた。この他、高速道路で起きた玉突き事故に絡んで、米軍兵士が日本人を救助したのに沖縄のマスコミはこの美談を無視して報じないと一部全国紙が非難した件について、当時のニュース映像を視聴した。「継続取材をしているが、そんな事実は確認できない」「県警も否定している」など現場の報告や意見が相次いだ。予定の時間をオーバーして活発な意見交換会となった。

以上

第122回 放送倫理検証委員会

第122回–2018年1月

2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビ『とくダネ!』の審議など

昨年12月14日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った、東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見について、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。
委員会が昨年10月に出したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見について、当該放送局から提出された対応報告書を了承し、公表することにした。
刑事事件の容疑者に関するセンシティブな情報の間違いが2件続いたことから審議入りしているフジテレビの情報番組『とくダネ!』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が示された。委員会で意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、一部の表現について手直しをしたうえで、2月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

議事の詳細

日時
2018年1月12日(金)午後5時00分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見の通知・公表

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見(委員会決定第27号)の当該放送局への通知と公表の記者会見が、昨年12月14日に実施された。2017年1月2日放送の当該番組の特集は、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などと伝えた情報や事実について裏付けが十分であったのか、いわゆる「持ち込み番組」なので、放送内容をチェックする放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして、2月の委員会で審議入りしていた。委員会は、制作会社が制作して持ち込んだ本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと判断した。
委員会では当該放送局のニュースを視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2. TBSテレビ『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見への対応報告書を了承

昨年10月5日に委員会が通知公表した、TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見(委員会決定第26号)への対応報告書が、12月下旬、当該放送局から委員会に提出された。
報告書には、意見書内容の社内周知のため18回にわたり少人数のセミナーを開催したこと、その真意をより深く理解するために検証委員会の担当委員を招いた勉強会を開催したこと、そして、番組制作スタッフ一人ひとりの人権意識向上への取り組みなど、意見書で指摘された課題についてひとつひとつ改善を図っていることが記されている。
委員会では、勉強会に出席した委員からの報告などをもとに意見交換を行い、少人数の多数回セミナーなど、局の対応が適切であるとの意見がだされた。その上でこの対応報告書を了承して公表することにした。

3. 2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビ『とくダネ!』の審議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者として全く別の男性の映像をインタビューも含めて放送し、謝罪した。翌8月には、放送した時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。委員会は10月、刑事事件の容疑者の映像と処分内容という最もセンシティブな情報について、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして審議入りを決めた。
委員会では、前回委員会で意見書原案に示された意見や議論を踏まえた意見書の修正案が担当委員から提出され、内容や表現をめぐって意見交換が行われた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、2月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

以上

第121回 放送倫理検証委員会

第121回–2017年12月

2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビの『とくダネ!』を審議など

フジテレビの情報番組『とくダネ!』で、刑事事件の容疑者の映像と処分内容という最もセンシティブな情報についての間違いが2件続いた事案について、担当委員から、ヒアリングの結果を踏まえ作成された意見書の原案が示され、意見交換が行われた。今回の議論を受けて、担当委員がさらに検討を加えた意見書の修正案を作成し、次回の委員会で意見の集約を目指すことになった。

議事の詳細

日時
2017年12月8日(金)午後5時00分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビの『とくダネ!』を審議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者として別の男性の映像をインタビューも含めて放送し、謝罪した。翌8月には、放送した時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。委員会は10月、刑事事件の容疑者の映像と処分内容という最もセンシティブな情報について、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして審議入りを決めた。
委員会では、担当委員から、ヒアリングで明らかになった点や先月の委員会で出された意見を踏まえた意見書の原案が示された。原案について「広く放送現場に伝わる内容の意見書にしたい」「どうしてミスが起きたのか、もう少しわかりやすくできないか」など、表現や構成についての意見交換が行われた。今回の議論を受けて、担当委員がさらに検討を加えた意見書の修正案を作成し、次回の委員会で意見の集約を目指すことになった。

以上

第120回 放送倫理検証委員会

第120回–2017年11月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』を審議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、担当委員から、前回の委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。内容や表現をめぐって意見交換が行われた結果、大筋で了解が得られたため、一部手直しをしたうえで、12月14日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報についての間違いが2件続いたことから前回委員会で審議入りしたフジテレビの情報番組『とくダネ!』について、担当委員から、3日間にわたって行われた制作担当者などへのヒアリングの報告と意見書の構成案の説明があり、意見交換が行われた。次回の委員会で意見書の原案が提出される。

議事の詳細

日時
2017年11月10日(金)午後5時00分~8時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXが制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、検証を深める必要があるとして、制作会社に文書によるヒアリングを行うとともに、担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。
委員会では、前回の意見書原案に示された意見や議論を踏まえた修正案が担当委員から提出され、内容や表現をめぐって意見交換が行われた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現の細部など一部手直しをしたうえで、12月14日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

2. 2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビの『とくダネ!』を審議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者としてまったく別の男性の映像を、インタビューを含めて放送した。翌8月も、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。委員会は10月、刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報について、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして審議入りした。
委員会では、3日間にわたって行われた制作担当者などへのヒアリングの概要が担当委員から報告され、取材のいきさつ、間違いがチェックされずに放送にいたった経緯などが説明された。そのうえで、ヒアリングの結果に基づいた意見書の構成案が示され、意見交換が行われた。次回の委員会で、意見書の原案が担当委員から提出される。

以上

第119回 放送倫理検証委員会

第119回–2017年10月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』を審議など

10月5日に当該局への通知と公表の記者会見を行った、TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見について、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。
フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』と同局の情報番組『ノンストップ!』で、ネット情報の真偽を確認しないまま放送が行われたことを受け、9月に委員長談話「インターネット上の情報にたよった番組制作について」が公表されたが、この談話に関する当該局の放送を視聴し、意見交換が行われた。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、担当委員から意見書の原案が示された。委員会では構成や表現を含めて意見交換が行われ、次回委員会で今回の議論をふまえた意見書の修正案が担当委員から提出されることになった。
フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月に医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違え、別人の映像をインタビューを含めて放送したのに続いて、翌8月の放送でも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について、十分な確認をしないで「書類送検された」などと放送し、いずれも次の日の放送で謝罪した。委員会は、刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報についての間違いが2件続いたことは問題だとして、審議入りすることを決めた。

1. TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見の通知・公表

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見(委員会決定第26号)の通知と公表の記者会見が、10月5日に実施された。1月31日放送の「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、4月の委員会で審議入りしていた。
委員会ではTBSテレビのニュースと当該番組を視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2. インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』および同局の情報番組『ノンストップ!』で、ネット情報の真偽を確認しないまま放送が行われたことを受け、9月に「インターネット上の情報にたよった番組制作について」と題する委員長談話が公表された。
委員会では、当該局のニュースや『ノンストップ!』などを視聴したあと、意見交換が行われた。

3. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、検証を深める必要があるとして制作会社にも文書によるヒアリングを行うとともに、担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。
委員会では、これまでの調査と検証に基づいて担当委員が作成した意見書の原案が示され、各委員から構成をはじめ表現など具体的な内容についてもさまざまな意見が出された。今回の議論を受けて担当委員がさらに検討を加えて意見書の修正案を作成し、次回の委員会で意見の集約を目指すことになった。

4. 刑事事件を扱った際の情報確認が不十分で2件続いて謝罪したフジテレビの『とくダネ!』について討議(審議入り)

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月27日に「医療プロジェクト・違法なさい帯血投与の実態」と題する企画の中で、医師法違反事件で逮捕された容疑者として、道路でインタビューに応じている男性の映像を放送した。しかし翌日、この男性は別人だったと訂正し、謝罪した。また8月28日の放送でも、京都府議会議員の夫婦間トラブルを扱った際、府議が「書類送検された」、妻が「ストーカー登録された」と放送し、翌日、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。
委員会は、なぜ同じ番組で問題が続いたのかなど、当該局から追加の報告を求めて討議した結果、「刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報なのに、同じ番組で間違いが2件続いたことは大きな問題だ」として、審議入りすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • 医師法違反事案の映像の取り違えは、制作の過程でディレクターらが疑問を感じたにもかかわらず、結果的に放送されてしまっていて、相当深刻だ。この時に反省したというのに、また1カ月後に事実確認が不十分なまま放送したことも問題だ。
  • 放送現場で事実の重み、特に刑事事件の容疑者についての情報の重みについての認識が軽くなっているから、不十分な確認しかしないという同種のミスが続くのではないか。キー局でこのような間違いが起こるのは、ジャーナリズムの現場が下から揺らいでいるといえる。
  • フジテレビの報告書では「系列局に問題はない。自分たちが悪い」となっているが、なぜ系列局との連携がうまくいかなかったのか。
  • それなりに社内調査を尽くし、事実関係を調べているのではないか。

以上

第118回 放送倫理検証委員会

第118回–2017年9月

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議 委員会決定を10月上旬にも通知・公表へ
インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話など

インターネット上の情報・映像の真偽を確認しないまま事実でない放送をした、フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』、および同局の情報番組『ノンストップ!』について、これまで2回にわたり委員会での討議が行われたが、その議論を受けて川端委員長から「インターネット上の情報にたよった番組制作について」と題された委員長談話の文案が委員会に示され、テレビの番組制作におけるネット情報利用の問題点について広く注意喚起するため、BPOのホームページなどで公表することになった。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、委員会が独自に行っていた沖縄の現地調査などについて担当委員から詳細な報告があった。さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。委員会での意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、一部手直ししたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビの情報番組『とくダネ!』について議論が交わされた。7月に放送されたこの番組では、間違われた人の映像だけでなくインタビューも使われるなど、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えと質が異なり、制作体制に問題があるのではないかといった厳しい意見が相次いだ。
同じ『とくダネ!』では、翌8月の放送でも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について、十分な確認をしないで「書類送検された」などと放送して謝罪した。この件も合わせて議論した結果、同じ番組で立て続けにミスが起きたことをどう考えるかなど、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を継続することになった。

1. インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督が過去に何度も引退を表明しては撤回したとして、同監督の引退表明歴をフリップで紹介し、それをもとにスタジオで出演者がコメントしたが、このフリップはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。また、同局の情報番組『ノンストップ!』は6月6日、人気アイス特集で「ガリガリ君」を紹介した。この中で「火星ヤシ」味のアイスのパッケージ画像を放送したが、これは実在しない商品であり、ネットに掲載されていた画像の真偽を確かめないまま使用したものだった。フジテレビは、翌日の番組内で謝罪を行った。
このふたつの事案について、委員会で2回にわたり討議が行われた結果、間違った情報を放送された側は、そのことを問題にしておらず、また間違った内容それ自体は大きな問題とはいえない上に、当該放送局によって適切なお詫びと訂正や再発防止策の策定が自主的・自律的になされているので審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、前回委員会で「委員長コメント」により改めて注意を喚起することになった。しかし、今回、同じような問題が他の局でも起こりうることを鑑み、インターネット上の情報を利用するときに起こりがちな問題点について注意喚起するための、より詳細な「委員長談話」が出されることになった。
委員長談話では、インターネット上の情報の利用にあたってはその真贋を見極めて使うというリテラシーが必要だとしたうえで、すくなくとも制作現場の担当者が、その情報自体について疑わしいのではないかというレベルの判断ができる能力を持たなければならないが、まず、どんなに時間に追われていても、真実でないことが紛れ込まないよう手抜きをせず注意し考える習慣を身につけることだ、と指摘している。また、放送局は、それを身につけさせるための実践的な研修と、疑問を提起できる制作体制と職場環境の構築を行うべきだとしている。この委員長談話の末尾には参考資料として、2011年に公表された「若きテレビ制作者への手紙」が再掲されている。

2. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」、「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、制作会社にも文書によるヒアリングを行うとともに、検証を深める必要があるとして担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。この調査結果についての詳しい説明が担当委員から行われ、疑問点については再確認を行うことになった。
さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。

3. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

1月31日に放送された「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。そして、委員会の考えや今後の番組制作への期待をどのような表現で伝えればよいか、詰めの議論が交わされた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

4. 医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月27日に「医療プロジェクト・違法なさい帯血投与の実態」と題する放送の中で、医師法違反事件で逮捕された容疑者として、道路でインタビューに応じている男性の映像を伝えた。しかし翌日、この男性は逮捕された容疑者とは別の一般の方だったと訂正し、謝罪した。
この番組ついて、委員会では「男性の映像だけでなくインタビューも使っていて、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えとは質が異なる」、「間違って放送された男性の顔は逮捕された容疑者の顔とはまったく異なり、理解できないミスだ」、「容疑者の写真を出すことの是非の議論にも影響しかねない」、「時間的、人員的な制作体制に問題があるのではないか」といった厳しい意見が相次いだ。その結果、同じ『とくダネ!』で8月にも、京都府議会議員をめぐる放送で事実確認ができていない部分があったと謝罪したことから、なぜミスが頻発しているかなどについて報告を求めて討議を継続することになった。

5. 京都府議会議員のトラブルの特集で、事実確認ができていない部分があったと謝罪したフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、8月28日の放送で京都府議会議員の夫婦間トラブルをめぐる問題を扱った。しかし翌日の放送で、府議が「書類送検された」、また妻が「ストーカー登録された」と放送した点は、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。
この放送について、委員会では「夫婦間のドメスティック・バイオレンスとストーカーでは問題が違うのに、一緒にしているのではないか」、「府議は放送の翌日に書類送検されていて、容疑者の映像を取り違えた7月の放送とは質の異なる事案ではないか」、「刑事事件の処分はセンシティブな情報であり、もっとも慎重な確認が必要なはずだ」といった意見が出された。フジテレビではインターネット上の情報にたよってミスが続いたため、番組制作について委員長談話が出されるという事態となったばかりなのに、1か月の間に同じ番組で、かつ慎重さが求められる刑事事件の放送でミスが相次いだことを軽く考えるべきではないとして、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を続けることになった。

以上

第117回 放送倫理検証委員会

第117回–2017年7月

ネット情報を誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』『ノンストップ!』を討議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、特集を取材・制作した制作会社に追加の質問項目を送り、再度ヒアリングへの協力を求めたところ、その回答が文書で寄せられた。担当委員から今回の回答のポイントについて説明があり、委員会が行うべき検証や調査の具体案など、今後の審議の進め方について引き続き議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から意見書原案が提出された。意見交換の結果、担当委員が修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。
真偽を確認せずに誤ったネット情報を放送した、フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』および同局の情報番組『ノンストップ!』について討議が行われた。その結果、ふたつの番組を審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、「委員長コメント」を出し注意喚起を行うことになった。

議事の詳細

日時
2017年7月14日(金)午後5時00分~7時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、TOKYO MXを通じて、特集を取材・制作した制作会社に質問事項を添えた文書でヒアリングへの協力を求めている。最初の質問事項に対しては文書で回答があったので、これについていくつかの追加の質問項目を送り、再度ヒアリングへの協力を求めたが、その回答が文書で寄せられた。担当委員からは今回の回答のポイントについて説明があり、あわせて今後どのような検証や調査を行うかについても具体案に沿って意見交換が行われた。そして、それらの検証や調査も踏まえ、担当委員が次回委員会までに意見書の原案を作成することになった。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』で1月31日に放送された「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、委員会は4月、審議入りを決めた。
TBSテレビには、5月に関係者ヒアリングを実施した後、取材ディレクターがホームレス男性に依頼した具体的な内容や状況、別の男性への取材内容や流れを確認する追加質問を行っていたが、その回答について報告があった。その上で、担当委員から、同番組の制作体制や放送にいたった経緯、問題の原因・背景を踏まえた意見書の原案が提出された。委員会では、意見書の構成やどのような点にポイントを置くかなどについて意見交換が行われ、それらの議論をもとに担当委員が意見書の修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。

3. ネット情報を誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』『ノンストップ!』を討議

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督が過去に何度も引退を表明しては撤回したとして、同監督の引退表明歴をフリップで紹介し、それをもとにスタジオで出演者がコメントしたが、このフリップはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。
また、同局の情報番組『ノンストップ!』は、6月6日、人気アイス特集のコーナーで「ガリガリ君」を紹介した。この中で季節限定商品の1つとして、「火星ヤシ」味のアイスのパッケージ画像を放送したが、これは実在しない商品であり、ネットに掲載されていた画像を真偽を確かめないまま使用したものだった。フジテレビは、翌日の番組内で謝罪を行った。
ふたつの事案に対し、委員会では「ほかの局の番組制作現場でも同じ状況があるのではないか」、「根が深い問題で今後も同様の事案が頻発するおそれがある」などの意見があがった。また、「番組制作のためのリサーチがネットからスタートする現状では、リサーチする人がどういうネットリテラシーを持つべきかを改めて考える必要がある」、「2011年に公表した『若きテレビ制作者への手紙』の中の『便利の落とし穴にはまらないで』で、番組制作のためのネット利用についての注意喚起をしたにもかかわらず、指摘したことがそのまま起きている」という指摘もあった。
討議の結果、ふたつの番組は、放送倫理違反があると認められるものの、間違った内容それ自体は大きな問題とはいえず、当該放送局によって適切なお詫びや再発防止策の策定が自主的・自律的になされているので審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、「委員長コメント」を出し注意喚起を行うことになった。

以上

第116回 放送倫理検証委員会

第116回–2017年6月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』について審議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、特集を取材・制作した制作会社にTOKYO MX経由で質問項目を送りヒアリングへの協力を求めたが、その回答が文書で寄せられた。担当委員からは制作会社の回答のポイントについて報告があり、委員会がどのような検証や調査を行うべきかなど、今後の審議の進め方について議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして4月に審議入りしたTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、5月に行われた制作担当者などへのヒアリングの報告と意見書の骨子案の説明があり、意見交換が行われた。次回の委員会で意見書の原案が提出される。
フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、宮崎駿監督の引退発言についてネット上の誤った記述を引用したとして謝罪した。当該放送局からの報告書をもとに委員会で議論した結果、「ネット情報のみでテレビ番組を作る危険性をきちんと指摘することが必要ではないか」などの意見が出され、次回委員会で討議を継続することになった。

議事の詳細

日時
2017年6月9日(金)午後5時00分~8時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集して、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、番組を取材・制作した制作会社からも話を聞く必要があるとして、委員会からの質問事項を文書にとりまとめヒアリングへの協力を求めていたが、5月末、制作会社から文書で回答が寄せられた。委員会では、担当委員から回答のポイントについて報告があり、さらに今後の審議の進め方について、「もう少し具体的な説明を求めるべき項目もある」「過去にも独自に調査した例があり、委員会でどんな検証ができるか検討すべきだ」などの議論が交わされた。その結果、制作会社に対して当該放送局経由でいくつかの追加質問を行うことになった。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。委員会は4月、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りを決めた。
委員会では、担当委員から、5月に3日間にわたり行われた制作担当者などへのヒアリングの概要が報告され、取材の経緯や放送前の内容チェックが十分行われなかった原因などについての説明があった。その上で、取材ディレクターが男性に依頼した具体的な内容や状況、別の男性への取材の内容や流れをさらに確認する必要があるとして、当該放送局に追加質問を行うことになった。また、ヒアリングに基づいた意見書の骨子案も提出され、そのポイントについても意見交換が行われた。その結果、これらの議論をもとに担当委員が意見書の原案を作成し、次回委員会に提出することになった。

3. 宮崎駿監督の引退宣言をネットから誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』を討議

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督の引退に関する発言を紹介したが、これはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。
委員会では、当該放送局からの報告書をもとに議論が交わされたが、「今後も起こりうる事案で、ネット情報のみでテレビ番組を作る危険性の指摘が必要ではないか」「あまりにネットに頼り信じすぎている。単純だが根が深い問題だ」などの厳しい意見が相次いだ。また、当該放送局ではその後、別の情報番組でもネット情報をもとに実在しない商品の画像を紹介したことが明らかになったため、この件についても報告書の提出を求め、『ワイドナショー』については、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 流布する情報に対する警戒感がまったくない。ネットに載っていればすべて正しいと思っているのではないか。
  • 情報バラエティー番組といっても裏付けが必要なことなど、かつて委員会が公表した「若き制作者への手紙」で指摘していることがすべてあてはまる。ネット情報を安易に信じ込み、それを前提に番組を収録している。
  • ネットの情報のみで番組を作るという傾向に対し、安直でよくないと注意喚起する必要がある。

以上

第115回 放送倫理検証委員会

第115回–2017年5月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』について審議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、制作会社にヒアリングの要請をしていたが、制作会社としては対応を放送局に任せている旨の回答だったため、5月初旬、委員会からの質問事項を文書にとりまとめ、改めて当該局経由で制作会社にヒアリングへの協力を求めた。委員会では、担当委員から質問項目について詳しい説明があり、今後の審議の進め方についても議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして先月審議入りしたTBSテレビの情報番組「白熱ライブ ビビット」について、同じ男性を取り上げた先行番組が当該局に2つ、他局に2つあったため、それらの番組を視聴したうえで意見交換を行った。また、5月中に予定されている当該局に対するヒアリングのポイントなどが担当委員から報告された。
カラオケ店の撮影の際に、従業員に客に扮してもらいインタビューした北海道文化放送の情報バラエティー番組『北海道からはじ〇TV』について、追加の報告書とお詫び放送のDVDをもとに意見交換した結果、必要な是正策は取られたものと評価できるとして、討議を終了することになった。

議事の詳細

日時
2017年5月12日(金)午後5時00分~7時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、反対派が「救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない”持ち込み番組”であるため、委員会は、番組を制作したスタッフにも話を聞いてさらに検証をする必要があるとして、ヒアリングへの協力を制作会社に直接求めていたが、制作会社から放送局に対応を任せている旨の返答があったため、5月初旬、委員会からの質問事項を文書にとりまとめ、改めて当該局経由で制作会社にヒアリングへの協力を求めた。
委員会では、担当委員から質問項目について詳しい説明があり、さらに、「前例にとらわれずに番組の内容とその裏付けを検証する必要がある」「当該番組のスタッフだけでなく関係者や専門家に協力を求めたことがある。その事例も参考にすべきではないか」など、今後の審議の進め方についても議論が交わされた。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。番組が中心に扱った男性について「犬男爵」と呼んだうえ、別の男性の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と化け物を連想させるどぎついイラストと合わせて表現したこと、また取材ディレクターが男性に「お前ら、ここで何やっているんだ」と言いながら歩いてきてほしいと依頼し、男性を「粗暴な人」と印象付ける結果になった点を謝罪している。
4月の委員会で、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りした。
委員会では、同じ男性を取り上げた先行番組が当該局に2つ、他局に2つあったため、それらの番組を視聴したうえで意見交換を行った。一部の番組では暗視カメラやドローンによる撮影が行われており、「一つ違法行為があれば、その人たちは犯罪者のようなものだからプライバシーの侵害をやっても構わないという意識があるのではないか」といった問題点も指摘されたが、議論の結果、審議は当該番組に絞って行われることになった。
また、「ジャーナリズムとは、強い者の側から"迷惑者"を見る視点ではないはず」「これを機にジャーナリズムは社会的弱者にどう向き合ったらよいか考えるべきではないか」などの論点も提示された。
さらに、担当委員からは5月中に予定されている当該局に対するヒアリングのポイントなどが報告された。

3. カラオケ店従業員に客に扮してもらい出演させた北海道文化放送の『北海道からはじ○TV』を討議

北海道文化放送は3月12日に放送した『北海道からはじ〇TV』で、歌わなくても映像が楽しめるというカラオケ店の使い方を紹介した際、客としてインタビューに応じた人が実は番組制作担当者があらかじめ依頼して客に紛してもらった店の従業員だったとして、3月27日に「不適切な演出があった」と、放送とホームページでお詫びした。
4月の委員会では、このお詫び放送やホームページの記載では何が問題だったのか視聴者に全く伝わらないなどと、事後対応に対して厳しい意見が相次ぎ、その後の対応を見たいとして討議を継続した。
委員会は、当該局がその後2回にわたって放送したお詫び放送とホームページの内容から、情報バラエティー番組であり問題も大きなものとは言えず、十分な是正策が自主的・自律的に取られたと評価できるとして、討議を終了することになった。

[委員の主な意見]

  • その後のお詫び放送やホームページ記載の内容で、何をしてしまったのかが、ようやく視聴者に伝わった。
  • どうしてこういうお詫び放送を、最初からできなかったのだろうか。
  • 情報バラエティー番組であっても、従業員に客に扮するよう依頼することはやってはいけないのは当然で、そのことは明確にしておきたい。
  • お詫び放送を見ると、番組審議会で委員たちが問題点を厳しく指摘していた。番組審議会が機能して自律機能が発揮されたいい例だといえる。

以上

第114回 放送倫理検証委員会

第114回–2017年4月

不適切な表現や取材手法があったと謝罪したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』審議入りなど

今年度、新たに神田委員が就任し、今回から出席した。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りした東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、制作会社にヒアリングへの協力を要請していたが、制作会社としては対応を放送局に任せている旨の回答だったため、委員会として改めてTOKYO MXに対して制作会社のヒアリング実現への協力を求めていくことになった。
IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』で、乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング」が行われたのではないか、という疑惑が報じられた事案の討議を継続した。委員会は、この問題に対する民放連の対応を中心に意見交換をした結果、当該局の当初の対応には大きな問題があったが、その後、当該局、民放連とも自主自律という意味では実効のある対応策が取られたのではないかとして、今回で討議を終え、審議の対象とはしないことを決めた。
NHK総合テレビ『ガッテン!』「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」で、糖尿病治療や予防に睡眠薬が有効であるかのような表現があり、また睡眠の長さの重要性を示す実験を睡眠の深さを示すデルタパワーに関連させる不適切な表現があったとしてお詫びした事案。委員会は追加報告書をもとに意見交換をした結果、当該局による迅速且つ的確なお詫び放送により、懸念された問題について、自主的・自律的な是正策が取られたことから、審議の対象とはしないが、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載することとして討議を終えることにした。
多摩川の河川敷で生活している男性の放送に際し、不適切な表現や取材手法があったとTBSテレビが謝罪した情報番組『白熱ライブ ビビット』に関して、当該局からこれまでの6回のシリーズについても報告書が提出され、意見交換を行った。その結果、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、審議入りすることを決めた。
カラオケ店の撮影の際に、従業員に客に扮してもらいインタビューした北海道文化放送の情報バラエティー番組『北海道からはじ〇TV』について、報告書をもとに意見交換をした結果、当該局のその後の是正策を見た上で決定したいとして、次回の委員会で討議を継続することになった。

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。これに対し、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。
委員会は、情報バラエティー番組であっても前提となるべき情報や事実についての裏付けは必要であり、「持ち込み番組」についての放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして、第112回委員会で審議入りすることを決め、先月、担当委員が当該局の編成や考査、営業の担当者5人にヒアリングを実施し、番組を編成した経緯や放送前の考査の実態などを調査した。
委員会では、この番組は放送局が制作に関与しない 「持ち込み番組」であるため、番組を制作したスタッフにも話を聞いてさらに検証をする必要があるとして、制作会社に対してもヒアリングの協力を求めていたが、制作会社からその対応についてはTOKYO MXに任せている旨の返答があったため、当該局に対して、制作会社のヒアリングが実施できるよう引き続き協力を求めていくことになった。
また、今後の審議の進め方について担当委員から説明があり、論点等についても意見交換した。

2. 番組内での乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』を討議

IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅~外国人の健康法教えちゃいます!?』(2015年9月21日放送)で、ある乳酸菌を摂取していると免疫力を高める効果があるという内容の放送をしたが、これが「広告」であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」ではないかと報じられた事案の討議を継続した。
この番組については、2015年11月の当該局の番組審議会で議論され、出席した局の幹部から「乳酸菌の扱いについては有料のタイアップである」という説明があったが、2016年12月、当該局はこの番組がタイアップで制作されたものでないと訂正していた。
また、当該局からは先月、この問題を受け作成した「番組制作の指針」に関する追加報告書が提出され、制作過程の適正化と視聴者に疑念、不信感を抱かれないための制作上の留意点、番組と広告の識別のための留意点などが記されていた。
委員会では、今回新たに提出された、「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」を策定した民放連の対応策をもとに、意見交換をした。
委員会の議論では、「この放送がステルスマーケティングということはできないにしても、ステマ的な広告の横行に警鐘を鳴らす必要はあるのではないか」といった意見や、「今回の問題に対し、民放連も相当スピード感のある対応をとった。ステルスマーケティングの問題は、それほど重大なことである」など意見が出た。
その結果、当該局、民放連とも自主自律という意味では実効のある対応策が取られたのではないかとして、今回で討議を終え、審議の対象とはしないことを決めた。

3. 糖尿病治療に睡眠薬を直接使えるかのような表現があったとお詫びしたNHK総合テレビ『ガッテン!』を討議

NHK総合テレビの生活情報番組『ガッテン!』(2月22日放送)で「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」と題して、”睡眠を改善することで血糖値が下がる”という最新研究を紹介し、「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」と伝えた。また、紹介した睡眠薬の説明に「副作用の心配がなくなっている」という表現があった。また、睡眠の長さが血糖値の改善に関係があるという実験について、睡眠の深さを示すデルタパワーも関連しているような不適切な表現もあった。
これに対し、放送後、視聴者、医療関係者などから「睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない」「副作用を軽視している」「健康保険では認められていない適応外処方の推奨に他ならない」などの批判が寄せられた。NHKは番組ホームページと3月1日の放送で、睡眠薬の説明が不十分だったり行き過ぎた表現があったりしたため、誤解を与え混乱を招いたことをお詫びし、誤った情報や不適切な表現を訂正した。
当該局から提出された報告書は、問題の原因として、「医学分野にある程度の専門知識があるメンバーだけで番組の制作が進められたため、睡眠薬のリスクを十分にチェックする姿勢が欠けていたこと」や「謎かけやキーワードが視聴者に届きやすいことを重視するあまり、無理な構成になったこと」などを挙げている。
委員会には、当該局からこの番組の過去の放送についての追加報告書が提出された。それによれば、これまでの同番組の放送で、不適切だという指摘を受けた例はなかったということであった。
委員会は、追加報告書などをもとにさらに意見交換をした結果、当該局による迅速且つ的確なお詫び放送により、懸念された問題について、自主的・自律的な是正策が取られたことから、審議の対象とはしないが、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載することとして討議を終えることにした。

[委員の主な意見]

  • まずい方向に進んだら『あるある大事典』のようになりかねない案件だったと思う。今回、いいお灸をすえられたと思って、今後はしっかりやって欲しい。
  • この種の番組ではキャッチーにしようとするとき危険が大きい。『ガッテン!』は特に影響力が大きい番組なので、細心の注意が必要だろう。
  • やはり、自分たちは医療情報に詳しいというスタッフのおごりが一番の要因だったのではないか。
  • この番組に対する日本睡眠学会の批判は極めて適切なものだったが、その批判に的確に応えるお詫びの放送がなされたことによって、問題は解消しているのではないか。
  • 報告書に書かれた再発防止策を実効のあるものにすべく、その継続的な実施を期待したい。

4. 不適切な表現や取材手法があったと謝罪したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を討議(審議入り)

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。番組が中心に扱った男性について「犬男爵」と呼んだうえ、別の男性の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と化け物を連想させるどぎついイラストと合わせて表現したこと、また男性に「お前ら、ここで何やっているんだ」と言いながら歩いてきてほしいと依頼し、男性を「粗暴な人」と印象付ける結果になった点を謝罪している。
問題の放送は「多摩川リバーサイドヒルズ族」と名づけられたシリーズの7回目で、第1回の2015年9月から第6回の2016年5月まで、名物企画として継続的に放送されてきた。
委員会には、当該局から過去の6回分の放送に関する追加報告書が提出されたが、「シリーズ当初から多摩川の河川敷で暮らす人たちを『迷惑モノ』として扱っていて、社会的弱者に対する姿勢は問題だ」「これまで6回の放送で取り立てて批判がなかったから問題ないと思っていたというのは、かなり深刻だ」といった意見などが出されるなど、問題点を指摘する意見が相次いだ。
その結果、当該局の事後の対応と問題点の把握は的確だったが、男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、審議入りすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • ホームレスの人たちを「迷惑モノ」としてとらえて、冷笑している。
  • 取材した対象者を、別の人の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と表現しているが、なぜ「人間の皮を被った化け物」なのか、番組内容からも報告書からもまったくわからない。
  • シリーズの中にはホームレスに寄り添っている回もあるのに、どうして7回目で、当該局も不適切だと認める放送になってしまったのか。
  • 自分たちは安全なところにいながら、社会的弱者に厳しいテレビ局の姿勢は問題だ。
  • これまでの6回の放送に対して取り立てて批判がなく、番組としてはホームレスの人間性が描けているという認識を持っていた、という趣旨が報告書に書かれているが、外からの批判がなく視聴率が良かったとしても、社内から異論があってしかるべき番組だろう。

5. カラオケ店従業員に客に扮してもらい出演させた北海道文化放送『北海道からはじ○TV』を討議

北海道文化放送は3月12日に放送した『北海道からはじ〇TV』で、歌わなくても映像が楽しめるというカラオケ店の使い方を紹介した際、客としてインタビューに応じた人が実は店の従業員だったとして、3月27日に「不適切な演出があった」と、放送とホームページでお詫びした。
委員会では当該局から提出された報告書をもとに意見交換し、お詫び放送やホームページの記載では、何が問題だったのか視聴者にまったく伝わらないと、事後の対応に対して厳しい意見が相次いだ。
その結果、当該局の是正策など今後の対応を見たいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • お詫び放送やホームページ記載の内容では、なにについてお詫びしているのか、視聴者にはまったく分からない。
  • いまだにこんな「お詫び」の内容でいいと思っている放送局があるのか。放送局からカラオケ店に依頼して、従業員に客に扮してもらったと、きちんというべきだ。
  • 放送後、インタビューした社員が「おかしい」と言ったために、事実経過が明らかになったことは評価できる。

以上