放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第115回

第115回–2017年5月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』について審議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、制作会社にヒアリングの要請をしていたが、制作会社としては対応を放送局に任せている旨の回答だったため、5月初旬、委員会からの質問事項を文書にとりまとめ、改めて当該局経由で制作会社にヒアリングへの協力を求めた。委員会では、担当委員から質問項目について詳しい説明があり、今後の審議の進め方についても議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして先月審議入りしたTBSテレビの情報番組「白熱ライブ ビビット」について、同じ男性を取り上げた先行番組が当該局に2つ、他局に2つあったため、それらの番組を視聴したうえで意見交換を行った。また、5月中に予定されている当該局に対するヒアリングのポイントなどが担当委員から報告された。
カラオケ店の撮影の際に、従業員に客に扮してもらいインタビューした北海道文化放送の情報バラエティー番組『北海道からはじ〇TV』について、追加の報告書とお詫び放送のDVDをもとに意見交換した結果、必要な是正策は取られたものと評価できるとして、討議を終了することになった。

議事の詳細

日時
2017年5月12日(金)午後5時00分~7時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、反対派が「救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない”持ち込み番組”であるため、委員会は、番組を制作したスタッフにも話を聞いてさらに検証をする必要があるとして、ヒアリングへの協力を制作会社に直接求めていたが、制作会社から放送局に対応を任せている旨の返答があったため、5月初旬、委員会からの質問事項を文書にとりまとめ、改めて当該局経由で制作会社にヒアリングへの協力を求めた。
委員会では、担当委員から質問項目について詳しい説明があり、さらに、「前例にとらわれずに番組の内容とその裏付けを検証する必要がある」「当該番組のスタッフだけでなく関係者や専門家に協力を求めたことがある。その事例も参考にすべきではないか」など、今後の審議の進め方についても議論が交わされた。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。番組が中心に扱った男性について「犬男爵」と呼んだうえ、別の男性の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と化け物を連想させるどぎついイラストと合わせて表現したこと、また取材ディレクターが男性に「お前ら、ここで何やっているんだ」と言いながら歩いてきてほしいと依頼し、男性を「粗暴な人」と印象付ける結果になった点を謝罪している。
4月の委員会で、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りした。
委員会では、同じ男性を取り上げた先行番組が当該局に2つ、他局に2つあったため、それらの番組を視聴したうえで意見交換を行った。一部の番組では暗視カメラやドローンによる撮影が行われており、「一つ違法行為があれば、その人たちは犯罪者のようなものだからプライバシーの侵害をやっても構わないという意識があるのではないか」といった問題点も指摘されたが、議論の結果、審議は当該番組に絞って行われることになった。
また、「ジャーナリズムとは、強い者の側から"迷惑者"を見る視点ではないはず」「これを機にジャーナリズムは社会的弱者にどう向き合ったらよいか考えるべきではないか」などの論点も提示された。
さらに、担当委員からは5月中に予定されている当該局に対するヒアリングのポイントなどが報告された。

3. カラオケ店従業員に客に扮してもらい出演させた北海道文化放送の『北海道からはじ○TV』を討議

北海道文化放送は3月12日に放送した『北海道からはじ〇TV』で、歌わなくても映像が楽しめるというカラオケ店の使い方を紹介した際、客としてインタビューに応じた人が実は番組制作担当者があらかじめ依頼して客に紛してもらった店の従業員だったとして、3月27日に「不適切な演出があった」と、放送とホームページでお詫びした。
4月の委員会では、このお詫び放送やホームページの記載では何が問題だったのか視聴者に全く伝わらないなどと、事後対応に対して厳しい意見が相次ぎ、その後の対応を見たいとして討議を継続した。
委員会は、当該局がその後2回にわたって放送したお詫び放送とホームページの内容から、情報バラエティー番組であり問題も大きなものとは言えず、十分な是正策が自主的・自律的に取られたと評価できるとして、討議を終了することになった。

[委員の主な意見]

  • その後のお詫び放送やホームページ記載の内容で、何をしてしまったのかが、ようやく視聴者に伝わった。
  • どうしてこういうお詫び放送を、最初からできなかったのだろうか。
  • 情報バラエティー番組であっても、従業員に客に扮するよう依頼することはやってはいけないのは当然で、そのことは明確にしておきたい。
  • お詫び放送を見ると、番組審議会で委員たちが問題点を厳しく指摘していた。番組審議会が機能して自律機能が発揮されたいい例だといえる。

以上