2017年度中に委員長の指示を仰ぎながら、委員会事務局が審理入りする前に申立人と被申立人双方に話し合いを要請し、話し合いの結果解決に至った「仲介・斡旋」のケースが6件あった。
「死後離婚特集に対する申立て」
A局が2017年6月に放送したバラエティー番組で、配偶者の死亡後に相手側との親族関係を解消する「死後離婚」を取り上げ、夫と死別した後、「姻族関係終了届」を役所に提出した女性にインタビュー取材したVTRを放送した。この放送に対し、この女性から、夫の死因や義母との関係等、背景を詳しく説明したにもかかわらず、放送では、「使いたい部分のみを編集し、身勝手な嫁と思わせるような取り上げ方をしていた」と、名誉毀損を訴える申立書を提出した。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、A局側が申立人に面会して「配慮が足りなかった」等と謝罪、それを受けて取下書が提出され、解決した。
(放送2017年6月、解決同年8月)
「年末特番に対する申立て」
B局は2016年12月に放送した年末特番で、この年に県内で発生した「学校をめぐる問題」3件をフリップで示し、「いじめの疑い」がある事例として紹介した。この放送に対し、生徒の母親が特徴から自らの息子を指していることは明らかで、「いじめの疑いのある誤報道は、本人と家族の名誉を侵害した」と申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、双方の代理人が2回にわたり話し合いの場を持った結果、申立人は「これ以上アクションは起こさない」として取下げ書を提出し、解決した。
(放送2016年12月、解決2017年10月)
「在宅医療特集に対する申立て」
C局は2017年2月に放送した報道番組で、自宅で最期を迎えたいという人の間で広がる在宅医療を特集した。この放送に対し、難病で亡くなる直前の夫の痛々しい写真を全く無断で放送されたという女性が、「故人と家族のプライバシーの侵害」と主張する申立書を提出した。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、同局に写真を提供した診療所職員を交えて3者で話し合った結果、診療所職員に「より問題があった」ことが分かったとして、申立書は取り下げられ、解決した。
(放送2017年2月、解決同年10月)
「深夜番組に対する申立て」
D局は2017年11月に放送した深夜バラエティー番組で、街頭で無許可で一般女性の顔を撮影したうえ、リポーターが身体的特徴を予想し、一方的な感想を述べる等の内容を放送した。この放送に対し、番組で取り上げられた女性が「勝手に撮影されたことで、私のプライドや人権が酷く侵害された」と申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、同局取締役らが申立人に会って、「弊社にすべての責任がある」等とする謝罪文を渡し、申立人の要望を聞いたうえで当該番組および翌日の夕方ニュースでお詫びのコメントを放送、さらに同じ内容のお詫び文を3か月間ホームページに掲載した。これを受けて取下げ書が提出され、解決した。
(放送2017年11月、解決2018年2月)
「産廃不法投棄報道への申立て」
E局は2015年11月に放送したローカルニュース番組で、廃棄物処理業者の担当役員が産廃不法投棄の容疑で逮捕されたと放送した。この放送に対し、同役員は不起訴処分となった後、委員会に申立書を提出、「断定的な表現・演出」と自宅マンションから逮捕、連行される映像を放送されたことで、プライバシーを侵害され、また会社が風評被害に苦しみ、申立人および家族が精神的痛手に苦しんでいる」と訴えた。委員会事務局の要請に応じて双方が話し合いに入り、申立人は放送されたニュース映像を確認したいとE局に要求したが、同局は放送法で保存が定められた3か月が過ぎたため、処分してしまったと拒否。その後、テロップ等が入っていない未編集の白素材が残っていたことが判明し、申立人が同社に出向いて視聴したものの、不完全な映像では放送内容が確認できず、納得できなかったとしながらも、会社の判断を優先して取下げ書を提出し、解決した。委員会では、局がニュース映像を処分してしまったとし、その結果未編集の素材しか確認できなかったことに申立人が納得できなかったのは「もっともだ」との意見が複数の委員から出された。
(放送2015年11月、解決2018年3月)
「税金滞納報道に対する申立て」
F局は2016年3月、ローカル情報番組で、地元市長の親族による多額の税金滞納について報道した。この放送に対し、その後退任した元市長が「申立人が市長として滞納を知った時期および滞納額が事実でなく、名誉、信用を大きく侵害され、放送翌月の市長選挙で得票数を激減させた」と委員会に申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、双方が代理人弁護士同席の下面談し、同局によると、「真実相当性がある」との点でほぼ一致したため、同局から申立人代理人に申立ての取り下げを求めるファックスを送付したものの回答がなく、その後も同局と事務局からの電話およびファックスによる再三の連絡にも返信がない状態が1年以上続いた。このため、委員会内規に照らし、申立人の明確な意思が確認できない状態が3か月以上続いたと判断、本件申立ては取り下げられたとみなし、委員会に報告した。
(放送2016年3月、解決2018年3月)