第150回 放送と青少年に関する委員会

第150回–2013年10月

フジテレビ「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」について、「委員会の考え」公表で審議終了。

夕方の情報ワイド番組と、深夜帯の特撮番組について討論、審議入りせず。

第150回青少年委員会は10月15日、7人の委員全員が出席してBPO第2会議室で開催されました。今回は、一つの審議事案と二つの討論案件について話し合いました。まず、『生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!』(フジテレビ)について審議が行われ、「委員会の考え」を公表し審議を終了することにしました。また、関東圏の独立局で夕方放送されている情報ワイド番組と、在京テレビ局の深夜帯で始まった特撮番組について討論しましたが、いずれも審議入りしないことにしました。その他、10月の中高生モニター報告、10月4日に札幌で開かれた意見交換会の報告、11月26日開催予定の在京局との勉強会の現状報告がありました。
次回委員会は11月26日に開催します。

議事の詳細

日時
2013年10月15日(火) 午後4時30分~午後6時50分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

『生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!』(フジテレビ)について審議

・「爆烈お父さん」のコーナーについて引き続き審議を行い、「委員会の考え」を公表することにより、審議を終了することにしました。

2013年10月22日

フジテレビ「生爆烈お父さん 27時間テレビスペシャル!!」に関する
委 員 会 の 考 え

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会

BPO青少年委員会は、多くの視聴者意見が寄せられたフジテレビ『FNS27時間テレビ女子力全開2013』の「生爆烈お父さん 27時間テレビスペシャル!!」コーナー(2013年8月3日放送)について、フジテレビへ番組の制作意図などの報告書の提出を求めるとともに、番組制作者などを招いて意見交換を行い、さらに追加質問しました。
まずフジテレビには、真摯に対応をしていただいたことに感謝します。これらを受けて審議を行いましたが、下記の「委員会の考え」を公表することになりました。
これは、今後各放送局にも考えていただきたいと委員会が願っている諸点です。

*    *    *    *    *

論点は、以下の3点です。

第1に「出演者の身体に加えられる暴力や危険行為について」です。
フジテレビは「安全面に十分配慮している」「出演者同士が役割を理解している」と説明しましたが、視聴者から、人の頭を踏みつけるシーンや顔に向け足を上げるシーン、顔をいじるシーンなどに対して、多くのクレームがBPOに届きました。
フジテレビは、「爆烈お父さんはドキュメンタリーではありません。お茶の間プロレスコントです」と説明していますが、ある行為の意味は、その文脈・シチュエーションによって変わっていきます。プロレスというスポーツでは相手の顔を踏む行為は技の一種ですし、漫才師がボケとツッコミの役割の中で頭を叩くのはお決まり芸です。
ところが視聴者の多くは、今回のジャイアントスイング前後のシーンに、これが当然でおもしろいと感じる文脈を見つけられませんでした。多くの人が違和感を持ち、「不快だった」「危険すぎる」といったクレームを寄せました。爆烈お父さん、女性芸人、女性アイドルグループの三つ巴の面白さになっていないと受け止めたのです。しかも人間の顔を足で踏むことは人間の尊厳に関わる行為で、さらに不快感を増大させたと思われます。
視聴者の多くは「人間の尊厳に背くような行為をあえてして、それで笑いを取るという形でしかバラエティー番組を作ることができなくなっているのか」という落胆とさげすみのような感情を抱いたことに、局は想像力を働かせてほしいと願います。
青少年委員会は2007年10月に「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」を公表していますが、この中には、中高生モニターが「出演者をいたぶる暴力シーンや人間に対する否定的な扱い」に対して不快感を表明していることが述べられています。中高生のこの認識が、多くの一般視聴者の認識と考えてよいのではないでしょうか。

第2に「女性アイドルや女性芸人に対する性的な際どい演出について」です。
フジテレビは「でん部の露出は女性芸人の持ち芸であり、笑いの表現方法としてバラエティー的に許容範囲であると認識していました」としています。ジャイアントスイングをされている間に宣伝したいビデオや楽曲が流れるとなれば、女性芸人も女性アイドルも、身体を張って挑むことは容易に予測できます。
しかしここでも、女性芸人のお尻が丸見えになる、女性アイドルがパンツも露わに寝転んだり爆烈お父さんに股を開閉されたりするシーンがお茶の間で家族みんなが視聴する時間に流されれば、不快に感じる視聴者もいるだろうことに思いが至っていなかったのではないかと考えます。
放送局が自主的に定めた民放連放送基準には、「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する」(73条)、「全裸は原則として取り扱わない。肉体の一部を表現する時は、下品・卑わいの感を与えないように特に注意する」(78条)、「出演者の言葉・動作・姿勢・衣装などによって、卑わいな感じを与えないように注意する」(79条)といった条文がありますが、これに抵触するものではないかという認識が欠けていたのではないでしょうか。
お色気ネタが笑いのジャンルの一つであることは間違いありません。そこには快・不快、上品・下品の微妙な境界線が存在しますが、番組が男性の視点で作られていて、制作者に女性や子ども視聴者の視点が欠けていることが、今回のような視聴者とのミスマッチを生じさせたとも考えられます。生放送の特性の一つは、視聴者と出演者が同じ空気を共有出来ることです。それがなぜ視聴者に大きな違和感を残してしまったのか。制作者はこの点をもう一度深く考えてほしいと思います。

第3に「地上波の公共性に対する認識について」です。
フジテレビは、委員会の追加質問に対する回答の中で、「様々な年齢性別、多様な生活習慣と趣味嗜好を持つ全ての視聴者の方々に番組をお届けするのが地上波放送」であると強調しています。しかし、委員会に寄せられた視聴者意見をみる限り、放送時に視聴者が食事中かもしれない、老若男女が集まり家族団らんの中で視聴しているかもしれない、あるいは、このコーナーの内容や演出手法は不快感を与えていないだろうかなどと、さまざまな想像力を具体的に働かせながら制作したものとは残念ながら考えられませんでした。
地上波の公共性は、番組を作る側が最も重視しなければならない視点と考えています。このことはすでに本委員会が強調してきたことですので繰り返しませんが、視聴者には赤ちゃんから高齢者、外国人など様々な価値観を持っている人がいるということを前提に、可能な限り多くの人々が納得のいく番組を作るということ、そして番組の内容が何に笑い、何に悲しみ、何に喜び、何に怒るかという国民の教養の形成に与り、多大な貢献をしているという自覚を持つことの大切さだけはもう一度強調しておきます。

フジテレビは2010年、「私たちのフジテレビバラエティ宣言」を公表しました。そこには、「愛がなければテレビじゃない! 安心できなきゃテレビじゃない! やっぱり楽しくなければテレビじゃない!」とあります。これについて、フジテレビからは、「視聴者に愛され、安心して見ていただけるおもしろい番組」を目指すという決意が込められた宣言であるとの説明がありました。しかし、今回は、上記の3点を鑑みても、視聴者に対する想像力が十分でなかったといわざるをえません。
視聴者目線と電波が公共財であることを忘れると、テレビへの信頼は薄れていきます。お笑いも例外ではありません。テレビをもっと魅力的なメディアにしていくために、また多くの視聴者が心地よく笑えるために、バラエティー番組も「人間の尊厳」「公共の善」を意識して作られるべきでしょう。
参考のために申し添えますと、2009年11月17日に、BPO放送倫理検証委員会が「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を公表しています。その中で"バラエティーが「嫌われる」5つの瞬間"が挙げられています。下ネタ、イジメや差別、内輪話や仲間内のバカ騒ぎ、制作の手の内がバレバレのもの、生きることの基本を粗末に扱うこと―― の5つです。制作に当たっては、これらのことも常に心のどこかで意識していただきたいと願います。

以上

視聴者意見について

  • 関東圏の独立局で放送されている夕方の情報ワイド番組について「子どもが見ている夕方の時間帯で男性性器のことを口にしたり、下品な話をする」などの視聴者意見があり、全委員が番組を視聴した上で討論しました。委員からは「子どもが見る時間帯に放送されていて問題だ」「地上デジタル放送となり、リモコン操作でキー局と同じように簡単に見ることが出来るようになっている。また、ほかの地区でも放送されている現状を考えると制作者に話を聞いてみたい」という意見が出ました。今回は審議入りしないものの「民放連が定める『放送基準 第3章(18)の解説にある"午後5時から9時に放送する番組について、とりわけ児童の視聴に十分配慮する"』を意識した番組作りが望まれる」という強い意見があったことを明記し、今後も厳しく注視してゆくことにしました。

  • 「深夜帯とはいえ女性の乳首が放送された」という視聴者意見があり、在京テレビ局の深夜帯で始まった特撮番組について、全委員が番組を視聴した上で討論しました。委員からは「深夜帯とはいえ、いかがわしさを感じる。今後の展開を注視したい」「あまりにも隠さないのでCGかと思った。深夜帯でもあるので問題ないと思う」「戦隊モノのような特撮番組で子どもが見る番組を装っているが、実は対象は子どもではないのだろう。深く追及するほどではない」などの意見があり、今回は審議入りしないものの、番組はまだ始まったばかりなので、今後の展開を注視してゆくことにしました。

中高生モニターについて

10月の中高生モニターは、番組ジャンルを報道・情報・ドキュメンタリーに限定し、この3つのジャンルに関する番組感想を自由に書いてくださいとお願いしました。
今回は23人から報告がありました。ジャンル別では、ドキュメンタリー番組13件、情報番組3件、報道番組7件でした。
『情熱大陸』(毎日放送)は3人から、「人選が巧みで、様々な人を取り上げている」「取り上げた人の生き方が分かり、自分の生き方についても考えさせられる」「この番組は、自分応援番組だと思う。見終わった後が心地良く、日曜の夜、明日からまた頑張ろうと思える番組だ」などの好意的な意見が寄せられました。番組テーマはそれぞれ異なりますが『NHKスペシャル』に関する意見が4件あり、「巨大イカが映し出された瞬間の驚きは今でもはっきり覚えている」「緒方貞子さんのように、なんでも全力で取り組めるような人になりたい。番組にたくさんのエネルギーをもらった」「より多くの人に見てもらって放射線の恐ろしさを知ってもらい、これからの原子力問題、日本の今後について深く考えてほしい」「日本の海底に貴重な資源があることを知って驚いた。こういう夢のある番組はとてもいいと思う」などの感想が寄せられました。『ZIP!』(日本テレビ)には2件、「朝から明るい気持ちになれるので、毎朝、家族皆で見ている」という意見がある一方で、「スイーツ特集とかファッションとかバラエティー番組のようで、最新の知りたい情報は伝えられていない」という批判もありました。
放送局では、NHKが8番組、日本テレビが4番組、TBSテレビ、テレビ朝日、毎日放送が3番組、フジテレビ、東海テレビが1番組となっています。
<自由記述欄>では、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」と依頼しました。「秋の特番が多いが、つまらない番組が多くなった。視聴者を馬鹿にしているような内容のものも多い」「お笑い番組などで、あからさまに人物を特定できるような会話は、人を傷つけることもあることを考えて欲しい」「19時-22時頃のゴールデンタイムで芸能人が下ネタを言うのは小さい子どもも見る時間帯なのでやめてほしい」などの、厳しい意見が数多く寄せられました。一方、「この頃は、面白い連ドラが多い。主役だけでなく、出演する人全員に個性があり、見ると必ず笑ってしまう」などの好意的な意見もありました。また、ラジオの放送に関して、J-WAVEで放送している子ども向けの本を朗読する番組や、民放ラジオ局が連動して取り組んだ『首都圏ラジオ7局スーパープッシュ』(TBSラジオ/文化放送/ニッポン放送/RFラジオ日本/横浜エフエム放送/FM NACK5/ベイエフエム)などを称賛する意見も寄せられました。

◆中高生モニターと委員の主な意見

●【委員の感想] 人間に対する興味が強くあらわれたリポートが多い。自分と同じ人は1人もいないのだと認識させられたという感想がいくつか見られた。番組を見て、深くいろいろなことを考えて書いてくれているのがよくわかった。

  • (神奈川・中学1年女子)『NHKスペシャル 緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で』この番組は私にとって、遠くに住む自分にもできることはないかを考えるきっかけになりました。同じ日本人として活躍している人たちの仕事を、今の自分の世代が大人になった時も引き継いでいけるような社会を作りたい!!と思いました。緒方貞子さんのように、なんでも全力で取り組めるような人になりたいです。
  • (千葉・中学2年男子)『日本!食紀行 カレーに込めた雲上のもてなし』(テレビ朝日)舞台は富士山の御来光山荘で、登場人物は御来光山荘を営む赤池啓司さん・眞奈美さん御夫妻とその家族です。赤池眞奈美さんのやさしい笑顔や思いやりあふれる言葉が番組全体に流れていて、番組制作者の人たちは、時間をかけて、何日間も辛抱強くカメラをまわして、赤池眞奈美さんを取材したのだなぁと思いました。

●【委員の感想】ビートたけしさんなどベテラン出演者に関する辛口評論が多く、若い人は、新鮮な出演者を待ち望んでいるのかなという感じがした。

  • (東京・中学3年男子)『情報7daysニュースキャスター』(TBSテレビ)。冒頭のビートたけしの注目グッズ紹介の仕方が汚いなと思った。そんなものを流すくらいなら、もうちょっと短くして、もっとニュースを増やしてほしかった。またビートたけしの滑舌が悪くて聴きにくかったので、もうちょっと練習するか、構成を変えてほしいと思った。
  • (神奈川・中学3年女子)『情報7daysニュースキャスター』(TBSテレビ)。番組全体として気になったことがあります。一つはビートたけしさんの最初のトークです。ウケ狙いで話しているのか分かりませんが、不快になるような話があり、コーナー全体の内容がくだらないなと感じました。もう一つは、ある品物が紹介されてもすぐに別の話題に移ってしまうことです。紹介された品物はとても丁寧に細かく作ってあり、きっと職人が一生懸命作ったのだと思います。それなのに一瞬出てきてビートたけしさんが何秒かそれについて話して終わるので、もったいないと思います。

●【委員の感想】ドキュメンタリーに対する関心は高いようだが、生放送のニュースに関するストレートな感想はほとんどなく、今の若者の関心の焦点はそこではないのかと感じた。また、自由記述欄に書かれていた、報道担当者が危険な現場に入ってリポートすることへの懸念が気になった。

  • (秋田・中学2年男子)『NNNドキュメント 「人工ボディー~新たな体に魂を吹き込む~」』(日本テレビ/秋田放送)この番組を見て、「人工ボディー」とは何なのか、そしてその力を知りました。人工ボディーに運動機能はありません。見た目を重視したものです。しかし、人工ボディーをつけた方は、動かなくても、「精神的に楽だ」と言っていました。健常者は、障害がある方を、避けてしまいがちです。しかし、このような番組で、そのような差別をなくしていければいいと思いました。
  • (神奈川・中学3年女子)最近テレビのニュースを見ていて気になったことがあります。それは台風や大雨などの天候が悪い時にアナウンサーが現地の状況を伝える中継の仕方についてです。足がつかるほどの大雨の時に実際にその場に行って、こんなに危険です!!と呼びかけていますが、危険な場所にカメラを持って取材に行くこと自体とても危険だと思うし、逆に見ていてハラハラするので止めてほしいです。それに、その映像を見て実際に行ってみたくなる人もいるような気がして、説得性もないと思います。

●【委員の感想】今回は自由記述欄の表記の方が面白かったように思う。テレビ局が視聴者を馬鹿にしているのでは、という厳しい批判の感想が何通か見られた。

  • (愛媛・中学1年女子)秋の特番が多いテレビですが、なんかつまらない番組が多くなったと思います。出演者が食べてわいわいとお互いを"いじり"あって、出演者は楽しいかもしれないけど、「ぴー」ってテレビで流してはいけないことを言ったりとか、視聴者に聞こえないよう出演者が耳打ちしたり、これらは演出だって最近は分かるようになってきたけど、何か視聴者を馬鹿にしているようでつまらないです。制作している人は良いと思っているのでしょうか?
  • (仙台・中学2年男子)お笑い番組によくある、イニシャルトークのような企画には疑問を感じます。あからさまに人物を特定できるような会話は、人を傷つけることもあるということを考えてほしいです。スペシャル番組をやるとき、どの放送局もスペシャル番組を同じ時間にやっています。
  • (秋田・中学2年男子)他局に対抗することも必要かもしれないけれど、スペシャル番組より、普段やっている番組のほうが面白いということがよくあります。そうすると、面白い番組をどの局でもやっていなく、結局テレビを見ないということがあるので、あまりかぶせないでほしいです。

●【委員の感想】報道番組に関して批判的な意見はなかった。ドキュメンタリー番組を見て一生懸命、感じたことを書いてくれたモニターが多かった。自分で視聴後、深く考えて内的世界を作っていくという意味でドキュメンタリー番組への期待が高いように思った。

  • (宮城・中学2年男子)『池上彰が伝える2020五輪開催地決定SP 完全生中継!東京に運命の瞬間」(テレビ朝日/東日本放送)を見ました。五輪開催地発表の瞬間をリアルタイムに視聴者に伝える番組でした。池上さんはとても尊敬できる方で、開催地に東京が決まり、他局がお祭りムードの中、淡々と開催にあたっての問題点なども誠実に取り上げ、好感が持てました。この手の特別番組は、どのチャンネルを合わせても、お祭りムードだったり、似たような内容だったりして、ぱっとしない番組が多いですが、池上さんの番組は素晴らしかったです。
  • (神奈川・中学3年男子)『NHKスペシャル 被曝治療83日間の記録~東海村臨界事故~』この番組は、2001年に放送された、東海村の臨界事故で犠牲になった大内久さんの治療記録をテーマに制作された番組です。NHKオンデマンドで無料配信されたので視聴しました。僕がこの番組を見て最初に思ったのが「放射線がこれほどにまで人体に影響を与えるのか」ということです。CGや実際の顕微鏡写真、写真などを映像の中に入れ、視聴者側にわかりやすく放射線障害のメカニズムを説明していたことがとても良かったと思います。また、この番組では治療をした医師の人たちや、看護師の人たちにインタビューをしたり、当時の治療や面会した人と患者の会話などを記録した紙を使ったりして、当時の治療の様子、医師や患者の気持ち、面会した人の様子などを取り上げ、「命」の意味について考えさせられるような内容になっていたのも良かったと思います。この番組は放射線の恐ろしさをとてもよく伝えることができるものだと思います。より多くの人にこの番組を見てもらい、放射線の恐ろしさを知ってもらい、これからの原子力問題、これからの日本について深く考えてほしいと思います。

●【委員の感想】モニターは内容の優れたドキュメンタリーを選んで見ているようだ。テレビ番組が、ただ楽しいから見るだけでなく、番組を見る意味はどこにあるか、考える上でモニターの意見は参考になった。

  • (千葉・中学2年男子)多くの人が「お笑い番組やバラエティー番組が一番面白い」と思い込んでいるのだと思う。たしかにお笑い番組やバラエティー番組は笑える。でも笑えるだけで番組を見ているのではないと思います。『半沢直樹』(TBSテレビ)だって『あまちゃん』(NHK)だって、どちらも見たことがないけれど、見ていた大人の話を聞くと、笑えるから見ていたのではないと思います。すべてのテレビ局が週に2回か3回ドキュメンタリー番組をゴールデンタイムに流す協定を結んだらいいと思います。

●【委員の感想】今回は自由記述欄が面白かった。『あまちゃん』の話題ばかりでうるさい、とか、Yahoo!のトップニュースと報道番組のトップニュースの違いとか、中高生の視点ならではの意見があった。

  • (千葉・中学2年男子)『あまちゃん』ばかりがNHKや民放でも騒がれていてうるさく感じた。学校に通っている小学生から高校生は、普通は見られない時間帯の番組だ。大人が勝手に騒いでいる変な感じがしている。Yahoo! のトップページに並ぶニュースとテレビやラジオで流れるニュースと新聞で伝えられるニュースが必ずしも一致していないので、取り上げ方の違いに関心を最近持つようになった。テレビは何でもかんでも「芸能」に結びつけている感じがします。

●【委員の感想】報道番組やドキュメンタリーはあまり面白くないと思われているようだ。やはり若い人に興味を持てる番組作りを目指すべき。モニターの中には、中高生ながらマスコミの報道姿勢に関する明確な批判を含めた独自の考えを示している報告もあり、感心した。

  • (東京・中学3年男子)『報道7daysニュースキャスター』(TBSテレビ)バネの製造現場の技術力などのいろんな日本の良い所を報道していて、日本の悪いことばかり報道する番組とは違って、「これから頑張ろう」というような気持ちになれた。マスコミは「日本はダメ」と決めつけずに、この番組のように「まだ日本は頑張れる」と国民(特に自分のような若い人)に発信して国民の心を明るくするべきだと思います。また、外国(特に隣国)と仲良くするために日本がもっと努力すべきという報道があるが、真の友好関係を築こうというなら、やはり相手国の真実も報道するべきだと思います。

今年度の青少年委員会活動について

  • 10月4日に札幌で行った意見交換会の報告がありました。
  • 11月26日に開催予定の、在京局とのバラエティー番組の"いじめ"や"いじり"に関する勉強会について概要が報告されました。

第75回 放送倫理検証委員会

第75回–2013年10月

「他局の取材音声を、無断受信して使用」鹿児島テレビ2つのローカル番組審議入り決定

参院選関連の2番組、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本『百識王』、局のヒアリングを基に審議

「弁護士紹介の被害者は"関係者"」日本テレビ『スッキリ!!』、局のヒアリングを基に審議

第75回放送倫理検証委員会は10月11日に開催された。
今夏の参議院選挙をめぐって、選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議入りした、関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(ネット選挙解禁に関する特集企画で、特定の比例代表立候補予定者だけを紹介)とテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(投票日当日の放送に、比例代表候補者がVTR出演)の2つの番組について、担当委員からヒアリングの概要が報告された。
弁護士から紹介されたネット詐欺の被害者が別人だったのは裏付け取材が不備だったためとして、前回の委員会で審議入りした日本テレビの情報番組『スッキリ!!』についても、当該局に対するヒアリングの概要が報告された。
高校の男子新体操部を紹介した鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』で、他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し使用していたことが判明した。無線通信を傍受して使用することを禁じた電波法に違反する疑いもあり、なぜこうした不正な取材が行われたのか、審議入りして関係者へのヒアリングを行うことになった。

議事の詳細

日時
2013年10月11日(金)午後5時~8時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

1.選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議入りした参院選関連の2番組、関西テレビの『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本の『百識王』

インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党から比例代表選挙の立候補予定者になっていた太田房江元大阪府知事だけを紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、参議院選挙投票当日の午前中に放送した番組の「大企業のトップが持つ手帳」というコーナーで、自民党の比例代表選挙の渡邉美樹候補がVTR出演していた、テレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)の2つの番組を、前回の委員会で一括して審議の対象とすることとした。
10月初旬、2つの放送局の関係者あわせて10人を対象にヒアリングが行われ、その概要が、担当委員から報告された。
関西テレビの『スーパーニュースアンカー』については、「選挙に関連する特集企画の中で特定の立候補予定者だけを取り上げることについて、担当していた記者やデスクたちは、その放送が選挙の公平・公正性に影響を与える可能性について、どう認識していたのか」「民放連の放送基準をどう理解していたのか」などについて、ヒアリングの結果を踏まえて議論が交わされた。またテレビ熊本の『百識王』については、「なぜ、放送前のチェックの際に、候補者の出演に気づかなかったのか」について、社内でのチェック体制や立候補者情報の共有状況なども含めて審議された。
今回の議論をふまえて、次回委員会では、担当委員が意見書の原案を提出し、さらに議論を深めることになった。

2.弁護士が紹介した詐欺事件の被害者が別人だったのは、裏付け取材が不備のためとして審議入りした日本テレビの『スッキリ!!』

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演した弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして、前回の委員会で審議入りした事案。
10月初旬、当該番組の取材ディレクターやプロデューサー、それに情報カルチャー局の幹部やコンプライアンスの担当者など、あわせて11人を対象にヒアリングが実施され、その概要が、担当委員から報告された。
「なぜ被害者の人物を特定する質問を十分に行わず、免許証などによる本人確認をしなかったのか?」「なぜ被害事実の存在についての裏付け取材をしなかったのか?」「被害者を本物と信じたのはなぜか?」「弁護士を信用した背後にどんな事情があったのか?」「弁護士の紹介であることは、その内容が信じられる合理的な理由となるのか?」などを中心に、詳細で具体的な報告に基づく活発な議論が行われた。また、担当部局が異なるとはいえ、当該局で続発した類似事案の反省と教訓から講じられた再発防止策などについての説明もあった。
その結果、事実関係はほぼ明らかになり論点も整理できたとして、次回委員会に担当委員が意見書の原案を提出することになった。

3.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用した鹿児島テレビの2つのローカル番組

鹿児島テレビは、高校総体をめざして練習に励み、見事に出場を果たした鹿児島市内の高校の男子新体操部を、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』(6月29日放送)で紹介した。その際、練習する選手を激励する監督の声もたびたび放送されたが、あわせて10か所で約2分間紹介された監督の声は、他局の取材音声を無断で受信・録音したものだった。
取材したのは関連会社から派遣されたディレクターで、他局が監督に着けてもらったワイヤレスピンマイクの音声を、共同取材のような感覚で、カメラマンと音声マンに傍受するよう指示していた。監督との人間関係が築けていなかったため、自局のワイヤレスピンマイクも着けてもらうよう依頼できなかったという。電波法59条は、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して窃用することを禁じている。放送局が取材で使うワイヤレスピンマイクの周波数は一定の範囲内に限定されており、チャンネルを切り替えると容易に傍受できる構造になっている。
委員会は、不正な方法で取材したうえ、それを放送で使用したことは悪質で、放送倫理上も許されない行為であるとして審議の対象とすることとし、まず、ディレクターら関係者へのヒアリングを行うことになった。

【委員の主な意見】

  • 監督との人間関係が築けていなかったということだが、監督からは正式に許可を得て取材しているのだから、どうしてその時にピンマイクを着けてほしいと頼まなかったのか、理解に苦しむ。
  • このディレクターの手法は、明確な違法行為と言わざるを得ない。取材者としての職業倫理にも関わる問題だけに、どのような社内教育が行われているのかを確認する必要があるのではないか。
  • カメラマンや音声マンは、ディレクターの指示に疑問を感じながらも結局は反論することなく指示に従っている。現場の力関係の中では、それは間違いだということは難しいのだろうか。
  • その気になれば誰でも簡単にできそうなことだけに、なぜ不正な行為が行われたのかをきちんと検証するべきだ。そのためには、関係者へのヒアリングも実施する必要がある。
  • 当該局は総務省へ報告し総務省の調査も行われているようだが、委員会は、それとは関係なく、あくまでも放送倫理の問題として議論を進めていくべきだろう。

以上

2013年10月22日

フジテレビ「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」

2013年8月3日 放送局:フジテレビ

2013年8月放送のフジテレビ『27時間テレビ』のコーナーで、男性タレントが、女性アイドルグループメンバーに、両足を持って振り回すプロレス技をかけた後、頭を踏んだり蹴ったりした。
「バラエティーの度を越している」「暴力行為であり不快」などの視聴者意見が多数あり、委員会は番組を視聴した上で討論、委員からは「制作者の意図や意見を聞いてみたい」などの声もあり、審議入りを決めた。
委員会は、意見交換など3回にわたる審議の後(※審議の経過参照)、2013年10月22日「委員会の考え」を公表し、審議を終えた。

2013年10月22日「委員会の考え」

2013年10月22日

フジテレビ「生爆烈お父さん 27時間テレビスペシャル!!」に関する
委 員 会 の 考 え

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会

BPO青少年委員会は、多くの視聴者意見が寄せられたフジテレビ『FNS27時間テレビ女子力全開2013』の「生爆烈お父さん 27時間テレビスペシャル!!」コーナー(2013年8月3日放送)について、フジテレビへ番組の制作意図などの報告書の提出を求めるとともに、番組制作者などを招いて意見交換を行い、さらに追加質問しました。
まずフジテレビには、真摯に対応をしていただいたことに感謝します。これらを受けて審議を行いましたが、下記の「委員会の考え」を公表することになりました。
これは、今後各放送局にも考えていただきたいと委員会が願っている諸点です。

*    *    *    *    *

論点は、以下の3点です。

第1に「出演者の身体に加えられる暴力や危険行為について」です。
フジテレビは「安全面に十分配慮している」「出演者同士が役割を理解している」と説明しましたが、視聴者から、人の頭を踏みつけるシーンや顔に向け足を上げるシーン、顔をいじるシーンなどに対して、多くのクレームがBPOに届きました。
フジテレビは、「爆烈お父さんはドキュメンタリーではありません。お茶の間プロレスコントです」と説明していますが、ある行為の意味は、その文脈・シチュエーションによって変わっていきます。プロレスというスポーツでは相手の顔を踏む行為は技の一種ですし、漫才師がボケとツッコミの役割の中で頭を叩くのはお決まり芸です。
ところが視聴者の多くは、今回のジャイアントスイング前後のシーンに、これが当然でおもしろいと感じる文脈を見つけられませんでした。多くの人が違和感を持ち、「不快だった」「危険すぎる」といったクレームを寄せました。爆烈お父さん、女性芸人、女性アイドルグループの三つ巴の面白さになっていないと受け止めたのです。しかも人間の顔を足で踏むことは人間の尊厳に関わる行為で、さらに不快感を増大させたと思われます。
視聴者の多くは「人間の尊厳に背くような行為をあえてして、それで笑いを取るという形でしかバラエティー番組を作ることができなくなっているのか」という落胆とさげすみのような感情を抱いたことに、局は想像力を働かせてほしいと願います。
青少年委員会は2007年10月に「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」を公表していますが、この中には、中高生モニターが「出演者をいたぶる暴力シーンや人間に対する否定的な扱い」に対して不快感を表明していることが述べられています。中高生のこの認識が、多くの一般視聴者の認識と考えてよいのではないでしょうか。

第2に「女性アイドルや女性芸人に対する性的な際どい演出について」です。
フジテレビは「でん部の露出は女性芸人の持ち芸であり、笑いの表現方法としてバラエティー的に許容範囲であると認識していました」としています。ジャイアントスイングをされている間に宣伝したいビデオや楽曲が流れるとなれば、女性芸人も女性アイドルも、身体を張って挑むことは容易に予測できます。
しかしここでも、女性芸人のお尻が丸見えになる、女性アイドルがパンツも露わに寝転んだり爆烈お父さんに股を開閉されたりするシーンがお茶の間で家族みんなが視聴する時間に流されれば、不快に感じる視聴者もいるだろうことに思いが至っていなかったのではないかと考えます。
放送局が自主的に定めた民放連放送基準には、「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する」(73条)、「全裸は原則として取り扱わない。肉体の一部を表現する時は、下品・卑わいの感を与えないように特に注意する」(78条)、「出演者の言葉・動作・姿勢・衣装などによって、卑わいな感じを与えないように注意する」(79条)といった条文がありますが、これに抵触するものではないかという認識が欠けていたのではないでしょうか。
お色気ネタが笑いのジャンルの一つであることは間違いありません。そこには快・不快、上品・下品の微妙な境界線が存在しますが、番組が男性の視点で作られていて、制作者に女性や子ども視聴者の視点が欠けていることが、今回のような視聴者とのミスマッチを生じさせたとも考えられます。生放送の特性の一つは、視聴者と出演者が同じ空気を共有出来ることです。それがなぜ視聴者に大きな違和感を残してしまったのか。制作者はこの点をもう一度深く考えてほしいと思います。

第3に「地上波の公共性に対する認識について」です。
フジテレビは、委員会の追加質問に対する回答の中で、「様々な年齢性別、多様な生活習慣と趣味嗜好を持つ全ての視聴者の方々に番組をお届けするのが地上波放送」であると強調しています。しかし、委員会に寄せられた視聴者意見をみる限り、放送時に視聴者が食事中かもしれない、老若男女が集まり家族団らんの中で視聴しているかもしれない、あるいは、このコーナーの内容や演出手法は不快感を与えていないだろうかなどと、さまざまな想像力を具体的に働かせながら制作したものとは残念ながら考えられませんでした。
地上波の公共性は、番組を作る側が最も重視しなければならない視点と考えています。このことはすでに本委員会が強調してきたことですので繰り返しませんが、視聴者には赤ちゃんから高齢者、外国人など様々な価値観を持っている人がいるということを前提に、可能な限り多くの人々が納得のいく番組を作るということ、そして番組の内容が何に笑い、何に悲しみ、何に喜び、何に怒るかという国民の教養の形成に与り、多大な貢献をしているという自覚を持つことの大切さだけはもう一度強調しておきます。

フジテレビは2010年、「私たちのフジテレビバラエティ宣言」を公表しました。そこには、「愛がなければテレビじゃない! 安心できなきゃテレビじゃない! やっぱり楽しくなければテレビじゃない!」とあります。これについて、フジテレビからは、「視聴者に愛され、安心して見ていただけるおもしろい番組」を目指すという決意が込められた宣言であるとの説明がありました。しかし、今回は、上記の3点を鑑みても、視聴者に対する想像力が十分でなかったといわざるをえません。
視聴者目線と電波が公共財であることを忘れると、テレビへの信頼は薄れていきます。お笑いも例外ではありません。テレビをもっと魅力的なメディアにしていくために、また多くの視聴者が心地よく笑えるために、バラエティー番組も「人間の尊厳」「公共の善」を意識して作られるべきでしょう。
参考のために申し添えますと、2009年11月17日に、BPO放送倫理検証委員会が「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を公表しています。その中で"バラエティーが「嫌われる」5つの瞬間"が挙げられています。下ネタ、イジメや差別、内輪話や仲間内のバカ騒ぎ、制作の手の内がバレバレのもの、生きることの基本を粗末に扱うこと―― の5つです。制作に当たっては、これらのことも常に心のどこかで意識していただきたいと願います。

以上

 


 

審議の経過

第148回青少年委員会(9月3日)で審議入りすることを、決定。
青少年委員会は、フジテレビに対し9月24日に意見交換を行いたい旨を伝え、以下の5点について、青少年の視聴に関する留意点を中心に報告をお願いした。

  • 番組の制作意図について
  • 放送時間帯への配慮について
  • 危険行為に対する認識について
  • 女性タレントや女性芸人へのきわどい演出について
  • フジテレビ「私たちのバラエティ宣言」(2010年)を意識した番組作りがなされているかどうかについて

フジテレビの報告

『FNS27時間テレビ』の「爆烈お父さん」に関する報告書

フジテレビジョン

(1) 番組の制作意図について

  • 『FNS27時間テレビ』の「爆烈お父さん」は、『めちゃ×2イケてるッ!』の制作チームが演出のすべてを担当しました。

    1. まずは『27時間テレビ』のパーソナリティである女性芸人を輝かせたい

    2. そのためには女性芸人と対極の国民的アイドルAKB48と向き合わせる

    3. 両者が対峙する場として「爆烈お父さん」が最適と考えて、今回は「爆烈お父さん」を制作・放送することになりました。

  • 爆烈お父さん」とは、極楽とんぼ加藤浩次氏演じる一家のお父さんが本来あるべき父親像、つまり、怖いけれども尊敬できる絶対的存在として一家の主導権をにぎる物語で、理不尽な説教や乱暴な振る舞いも今の威厳を失くした父親像とのギャップとして面白がる"コント"です。
    具体的には、ゲストがお父さんの逆鱗にふれてジャイアントスイングで回されるシーンが見所の"お茶の間プロレスコント"で、回されている間ゲストが宣伝したいVTRや曲が流れます。
    今回は、『27時間テレビのパーソナリティとして各コーナーの見所VTRを流したい女性芸人』と『アイドルとして新曲を流したいAKB48』の対比になっていました。

  • 今回我々は、放送中のサイドテロップ『爆烈お父さんvs女芸人vs AKB48』のとおり三つ巴の対決を目指しました。

    • 『AKB48』は国民的アイドルであるはずなのに、お父さんや女性芸人相手に生放送で必死に体をはって頑張る

    • 『女性芸人』はアイドルに「見せ場」(ジャイアントスイング)を横取りされて、お父さんやAKB48相手に必死で挽回しようとする

    • 『お父さん』は女性芸人vs AKB48の触媒としてAKB48を贔屓し続ける

当然のことながら、我々はAKB48と女性芸人に対して危険な行為や性的にきわどい行為をしたかったわけでは一切ありません。

(2) 放送時間帯への配慮について

  • 『めちゃイケ』は毎週土曜日夜8時からゴールデン帯で放送している番組ですので、イジメ問題をはじめとする青少年への影響は常に意識して制作しています。また、「爆烈お父さん」は番組スタート時(1996年)から続く長寿コーナーで、演出スタイルが当時から変わっていないことも含めて、『27時間テレビ』における放送時間帯に関しては特に問題視していませんでした。
    今回視聴者からたくさんの苦情をいただいたことで、『27時間テレビ』は普段の『めちゃイケ』ファン以外の方、お笑いファン以外の方も見る番組であることをより深く認識する必要があったと改めて感じました。

(3) 危険行為に対する認識について

  • 「爆烈お父さん」は前述の通り、バラエティ番組の"コント"です。
    ドキュメンタリーではありません。
    テレビタレントの加藤氏は、設定として「爆烈お父さん」という乱暴なキャラクターを演じています。
    もちろんゲストも、設定として「爆烈お父さん」にジャイアントスイングをされたり転かされたり蹴られたりする役を理解し、受け入れます。
    つまり、出演者全員が互いに信頼しながら、プロフェッショナルとしてカメラの前で"お茶の間プロレスコント"を繰り広げるのです。
    しかも、加藤浩次氏は『どの程度にとどめておけば相手は怪我をしないか』を十分に理解しており、我々スタッフも信頼しております。
    実際、問題視されている"渡辺麻友さんの顔を蹴ったとされるシーン"も、加藤氏は自分の足を一旦彼女の顔に付けてから押し出すようにすることで、相手が怪我をしないようにしています。

  • 放送当日は、入念なリハーサルやセットの養生など安全対策を万全にした上で本番に臨んでおり、「爆烈お父さん」は我々の想定を越えた危険なことが起こるコーナーだとは思っておりませんでした。
    しかし、想定した演出から逸れていく可能性がある生放送で、『一見暴力的に見えるキャラクターで笑いを作る』という決して簡単ではない演出方法を採用したことは、今思えばリスキーだったのかもしれません。
    また、「"お茶の間プロレスコント"とはいえ、モラル的に女性に対してする行為ではない」というご指摘に関しては、我々はもっと慎重に演出する必要があったのかもしれません。
    以上"生放送における演出"に関しては、今後の番組作りの課題として十分に検討していきたいと思います。

(4) 女性タレントや女性芸人へのきわどい演出について

  • 我々は、AKB48や女性芸人を使って性的にきわどい表現をすることを 極力排除しようとしました。
    例えば、AKB48メンバーが当日着けていたアンダースコートは、事前に事務所と相談して決めた衣装です。
    一方、森三中大島さんのでん部の露出に関しても、あくまで女性芸人である彼女達の持ち芸であり、笑いの表現方法としてバラエティ的に許容範囲であると認識していました。

(5) フジテレビ「私たちのバラエティ宣言」(2010年)を意識した番組作りになっていたかについて

  • 『愛がなければテレビじゃない!安心できなきゃテレビじゃない!やっぱり楽しくなければテレビじゃない!』の『愛』と『楽しく』は、バラエティ宣言通り達成できたと考えております。視聴者の皆さんに愛される番組をつくるために、番組を愛し、出演者を愛する気持ちは十分にありました。楽しくなければテレビじゃないという熱い信念を持って生放送に臨みました。
    しかし、『安心』に関しては、十分に配慮したつもりであった我々制作陣と視聴者との間に大きな溝があったと認識しております。今回、我々の番組をご覧になった視聴者から数多くの苦情があったことは事実であり、スタッフ一同真摯に受け止める所存です。
    これを機に、『安心』という意味で制作陣と視聴者との溝をいかにして埋めていくか十分に議論して、今後の番組作りに活かしていきたいと思っております。

[意見交換概要] 第149回青少年委員会(9月24日)

〔Q:青少年委員 A:フジテレビ〕

論点1.コーナーの企画意図について

Q.コーナーの企画意図を説明してください。
A.ゲストの女性芸人とAKB48の魅力を引き出す目的で、「爆烈お父さん」を企画・制作しました。また、女子限定のゲストがジャイアントスイングで回されている間に宣伝したい曲やVTRが流れるなど、基本的にはタレントさんのプロモーションを兼ねたコント、つまり、ドキュメンタリーではなく「プロレスコント」として作っています。

論点2.放送時間帯への配慮について

Q.民放連の放送基準で定める「17時~21時までは児童および青少年、とりわけ児童の視聴に十分配慮する」への配慮はありましたか。
A.レギュラー枠の放送でも、青少年に見てもらいたいと思っているので、そのことは充分意識をして制作しています。今回の特番に関しても、通常の番組と同じスタンスで作れば大丈夫だという意識はありました。今回の特番では、ふだん『めちゃイケ』を見ていない方たちもかなり見ていたのだと後から気づかされました。
Q.『めちゃイケ』ファン以外の視聴者についてどうお考えですか。『めちゃイケ』ファンなら理解してくれたのに、と思っていませんか。
A.番組は、見終わったあとの感想「読後感」が大切だと思っています。全ての視聴者に楽しんでもらうために色々工夫しています。ただ、どういう線引きをしつつ表現したら表現者としての思いが『めちゃイケ』ファン以外の視聴者にも伝わるのかを、検討していますが、現状では答えは出ていません。

論点3.危険行為に対する認識について

Q.これまでこのコーナーで予定外のハプニングとか出演者の怪我につながるようなことは無かったのですか。
A.今まではありませんでした。全部の角を怪我をしないように細工したりして、我々があのお茶の間のセットで怪我を防止できることは100%やっています。
Q.子どもがジャイアントスイングを真似することについてどう思いますか。子どもは周りを怪我をしないように細工することはしないですよね。
A.真似をする子どもはいるかもしれませんが、かといって「危険なのでまねしないで下さい」とテロップを入れれば済む問題とも思っていません。そこは表現の仕方の問題で、我々がつかみきれていないところです。
Q.「お茶の間プロレスコント」という表現を使っていますが、単にプロレスごっこにしか見えないのですが。
A.お決まりの流れがあるので、「プロレスコント」だと思っています。
Q.2007年10月に青少年委員会は「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」を出し、その中で暴力シーンは「人間に対する否定的な扱い」であると不快感を示していますが、頭や顔を踏んだり蹴ったりする行為は、人間の尊厳にかかわる基本的なことだと思います。スタッフの皆さんにその辺の認識が乏しいのかなと思い、危惧を感じます。大事なのは人間の尊厳を守った中で笑いを作っていくことだと思います。
A.例えば、漫才でボケた芸人の頭を相方がはたく行為も人間の尊厳を冒すことになるのでしょうか?どの線からは人の尊厳を冒していることになるのかをお聞きかせください。
Q.漫才で頭をはたくことは、今や文化的な伝統として定着していると思います。線引きで、これはOK、これはダメとなればテレビは作れなくなるのではないですか。そうではなく、人間を大切にすることだと思います。そしてそれを常に考えてゆくことだと思います。
A.やっぱり顔を踏む行為が線を越えているという印象ですか?
Q.そうですね。人間をいたずらにもてあそぶような映像が横行すると、子ども達の深層に忍び込んで、人間観、価値観の形成において、問題になってくると思います。
A.複数の女性アイドルに同じことをしているのですが、映像から受ける印象はそれぞれ異なりますか?
Q.同じです。どの場合も厳しく問われるべきだと思います。
Q.過去に、頭を蹴ることはやっていたのですか。
A.定番ではないが、やっていました。
Q.クレームはありましたか。
A.ありました。
Q.そのクレームについて局ではどういう受け止めをしていましたか。
A.数が少なかったこともあり、コーナーの内容を変えるまでには至っていません。
Q.数が少ないことを軽視するのは問題があると思います。一つのクレームでも本質をつくことがあります。皆さんがちゃんとチェックしていてOKと思われたこと自体に、一般の人の感覚と放送局の人の感覚がかなりずれてきているのではと危惧します。
A.数が少ないからそれを重要視しないという考えでは決してありません。

論点4.きわどい演出について

Q.女性タレントがお尻を出した時に、その場に子役がいたのですが、そのようなシチュエーションについて内部で議論は無かったのですか。
A.あれは女性芸人の持ちネタの一つで、想定内の出来事です。ただ、キワドイ部分で楽しみたいという意識はありませんでした。
Q."見ていて不快"という視聴者意見が多かったのですが、それは性的なイメージを喚起したり、男性がやって女性がやられるという男女の位置関係などに関係していると思うのです。公共性の高い地上波の生放送で、"これ以上やってはいけない"という現場スタッフ、出演者との申し合わせや基準はあったのですか。
A.性的な表現を強調して視聴者を楽しませようという意識は全くありませんでした。エロくならない工夫をしています。でん部を出す行為に関しては、それを隠したり注意する周りの芸人達の面白さを引き出そうとしました。また、女性芸人の性(サガ)的なところを面白がろうとしていました。
Q.お尻を出すことに関して、この時間帯は子どもが見ている時間帯であることを注意していなかったのですか。
A.特にしていませんでした。というのもスタッフも私も、この場面のでん部の露出に関して性的な表現だとは全く思っていなかったからです。
Q.家族で見ている時などに、見る側が戸惑ったり不快に感じたりするということは考えなかったのですか。
A.笑いが勝つと思っていました。ただ、不快だと思った視聴者がたくさんいたことは、反省すべきことだと思っています。
Q.女性アイドルの足の開閉はエロティックだと感じましたが、あれはハプニングだったのですか。
A.はい、現場のノリでやったことです。我々は正面から撮らないようにしたのですが、そう受け取る方がいたことに関しては率直に受け止める気持ちです。

論点5.フジテレビ「私たちのバラエティ宣言」について

Q.フジテレビの「バラエティ宣言」に"愛がなければテレビじゃない"とありますが、これは人間すべてに対する「愛」があると思うのです。この「バラエティ宣言」の中身をみんなで議論して作っていただければ、いい番組が出来るのになと思います。ぜひ、いいバラエティーを作ってください。
A.我々が、かつてバラエティーとして許容していたものが、今は通用しなくなってきていることを感じます。我々は世の中にどこまでアジャストしていけばいいのか、どこまで清廉潔白さを追求しなければならないのか、特にバラエティーに関しては常識とのギャップを笑いの表現として使うことが多いので、毎回自問自答しながらやっています。

この後、委員会で審議した結果、フジテレビに対し、次の2点について追加質問した。
(1) 放送、特に地上波放送の公共性についてどうお考えでしょうか
(2) 貴社の番組のチェック体制について、あらためてお伺いいたします

フジテレビからの再報告

『FNS27時間テレビ』の「爆烈お父さん」に関する追加質問へのご回答

フジテレビジョン

(1)地上放送の公共性について
フジテレビは、その行動宣言において「高い公共性への使命感と放送倫理に対する社会的責任を強く認識し、社会からの共感や信頼を得ることが重要と考えている」とうたっております。様々な年齢性別、多様な生活習慣と趣味嗜好を持つ全ての視聴者の方々に番組をお届けするのが地上波放送であり、番組の種別に関わらず常に公共性を意識した番組制作を心掛けています。
今回『FNS27時間テレビ』においても、地上波の公共性と社会的責任への意識を強く持ちながら制作にあたりましたが、「爆烈お父さん」に関して我々が伝えたかったことと多くの視聴者の方々の受け止め方との間に乖離が生じてしまったことは事実です。
我々はこの結果を真摯に受け止め、改めて地上波放送の公共性の重要度を認識し、今後の番組制作に活かしていく所存です。

(2)番組制作におけるチェック体制について
フジテレビでは民放連放送基準を順守して各番組の企画制作にあたっており、バラエティ制作部では更に以下のチェック体制で放送番組内容の事前確認を行っています。
日頃より番組内容に関する問題事例が発生する度に、プロデューサー会議等で具体的な問題点の検証・情報共有を行い、各制作現場へ浸透を図っています。その上で、制作の過程で表現内容に疑問が生じた場合、番組プロデューサーはバラエティ制作部の上長や編成部の担当者に確認し、更に法律的な問題は法務室、コンプライアンス的な問題は考査・放送倫理部、権利問題は著作権契約部に個別に相談・確認しています。
また、放送の数日前、荒編集または白完(スーパーテロップやナレーションを入れる前のテープ)の段階でバラエティ制作部の部長・担当部長がそれぞれの担当番組の番組プレビューを行っています。ここで行き過ぎた表現がないか実際の映像をチェックし、問題があった場合は再度編集を行います。この荒編集・白完段階でのチェック作業は編成部の担当者も並行して行っており、バラエティ制作部内のチェックと共に二重に確認する体制をとっております。
最終的な放送用完成テープ(所謂完パケテープ)につきましては、MA戻し(整音した音声を完成テープに戻す作業)にプロデューサーが立ち会うなどの形で、最終チェックを行い、放送前に配布される完成テープのDVDコピーを、バラエティ制作部の上長が適宜内容確認する体制を取っております。

第202回 放送と人権等権利に関する委員会

第202回 – 2013年10月

大阪市長選関連報道事案の通知・公表の報告
宗教団体会員事案の審理・・・など

10月1日に行われた「大阪市長選関連報道への申立て」事案に関する「委員会決定」の通知・公表について、事務局から報告した。「宗教団体会員からの申立て」事案について審理し、「委員会決定」案をさらに検討した。

議事の詳細

日時
2013年10月15日(火)午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「大阪市長選関連報道への申立て」事案の通知・公表

10月1日に行われた本事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局が概要を報告した。当該局の朝日放送から放送対応の報告があり、決定を伝えるニュース番組の同録DVDを視聴した。決定は「本決定の主旨を放送する」ように求めているが、委員から「裏付け取材がなかったという重要な指摘を、他社は伝えているのに当事者として何ら触れず、自社のコメントを延々述べている」「いい放送を出したが、表現方法だけ問題だったとすり替えている」「決定の主旨は分かっていると思うが、なぜこういう放送がされたのか」などの発言があった。
朝日放送からは改善策を含めた取り組み状況が3か月以内に報告されることになっており、委員会は今回の放送対応を踏まえて報告の内容を検討することになった。【詳細はこちら

2.「宗教団体会員からの申立て」事案の審理

テレビ東京が2012年12月30日に放送した報道番組『あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~』で、番組で紹介された男性が、公道で盗撮された容姿・姿態が放送されたほか、カウンセリングにおける会話や両親に宛てた手紙の内容が公にされるなどプライバシーが侵害されたとして、謝罪と今後二度と当該番組を放送しないと誓約するよう求めて申し立てたもの。
この日の委員会では前回委員会の議論を反映した新たな「委員会決定」案について、プライバシーの侵害と公共性・公益性との関連、放送倫理上の問題としてどうとらえるか、などについて議論を深めた。
次回委員会で、さらに審理を進める。

3.その他

次回委員会は11月19日に開かれる。

以上

20130504

局名「タイトル挿入」

201%年%月%日 放送局:%%%%%%%%

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201%年%月%日「委員会の考え」

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審議の経過

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???の報告

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委員会からの再質問

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???の再報告

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2013年10月11日

「他局のワイヤレスマイクの取材音声を、無断受信して使用」審議入り決定

鹿児島テレビ『ゆうテレ』『チャンネル8』

放送倫理検証委員会は10月11日(金)の第75回委員会で、鹿児島テレビ『ゆうテレ』『チャンネル8』の審議入りを決めた。

対象となった番組は、鹿児島テレビが2013年6月19日と8月7日に放送した夕方の情報系番組『ゆうテレ』と、それを再編集して6月29日に放送した、ミニ番組『チャンネル8』。番組では、高校の『男子新体操部』を紹介した際、生徒を指導する監督の声を放送したが、これは、他局が監督につけたワイヤレスマイクの音声を無断で受信し、使用したものだった。
委員会では、無線通信を傍受して使用することを禁じた電波法59条に違反する取材が行われたことを重視、当該局へのヒアリングを行うことになった。

2013年10月1日

「大阪市長選関連報道への申立て」事案の通知・公表

放送人権委員会は10月1日に、上記事案についての「委員会決定」の通知・公表を行い、本件放送について「放送倫理上重大な問題がある」として、朝日放送に再発防止を「勧告」した。

〔通知〕
三宅弘委員長と起草を担当した小山剛委員、曽我部真裕委員が出席し、午後1時からBPO会議室で申立人と被申立人に対して「委員会決定」を通知した。申立人の大阪交通労働組合からは組合役員ら2人、被申立人の朝日放送からは報道担当者ら3人が出席し、三宅委員長が決定文を読み上げて通知を行った。
決定について、朝日放送は「私どもとしては、決定を真剣に受け止める。具体的には多岐にわたるご指摘があるので、熟読してじっくりと検討させていただきたいと思う」と述べた。また、大阪交通労働組合は「スクープ報道の十分な裏付けの重要性が示された。先入観で固まった勇み足とも言える報道に警鐘を鳴らしていただき、そして個々の組合員にも限度を超えた侮辱行為として名誉感情を侵害しているという決定をいただき、感謝申し上げたい」と述べた。

〔公表〕
午後2時から千代田放送会館の2階ホールで記者会見を行い、「委員会決定」を公表した。25社47人が取材した。
会見では、三宅委員長が委員会の判断と結論のポイントを説明した。
続いて、小山委員が次のように述べた。
「この放送は、非常にインパクトの強い報道だった。断定的な形で、いわゆる回収リストが存在するとし、またやくざと言ってもいいくらいの団体という発言を引用している。本来必要な裏付け取材が行われないまま、局の説明によれば時間的な理由からだが、そのような断定的な報道が行われてしまった。
決定文中の、地方自治法の百条委員会云々の部分について補足しておく。国会には、いわゆる国政調査権があるが、それに相当するものとして、地方議会にはいわゆる百条調査権が認められている。これは、関係人の出頭や証言、記録の提出を要求でき、その拒否には、罰則が定められている。そのような委員会が公表した内容であれば、裏付け取材なしで引用することも出来るのではないかと思う。でもそうではなくて、一国会議員、あるいは一地方議会議員が自分で独自の調査を行った、その内容がソースになっている場合には、多分報道機関として裏付けは必要だろうと思う。
警察取材などでも、正式の記者会見で伝達された内容については、場合によっては裏付け取材がいらないと思うが、インフォーマルに得た情報については、やはり裏付けをしないと、仮にそれが誤報であった場合には、今回と同じような形になってくるのではないかと思う」と述べた。

曽我部委員は次のように述べた。
「1点補足したいと思うのは、今回の決定は、名誉毀損の成否と放送倫理上の問題という2つの論点を取り上げているが、結論については放送倫理上の問題とし、勧告もそちらを理由にしている。放送人権委員会は、名誉毀損、プライバシー侵害という人権にかかわる判断だけではなくて、放送倫理の問題についても判断をするということはご承知のとおりだが、どちらの問題が前面に出てくるかというのは事案によって異なり、必ずしも人権の問題を優先するということにはならないのかなと思う。
今回の事案では、事後的な放送によって問題のリストがねつ造であったことは、少なくとも大阪市民には周知されているということなので、その限りで申立人の名誉というのは、かなり回復されているのではないかと。名誉毀損としては、結果としてそれほど深刻なものではなかったかもしれないと、これも断定は出来ないところですけれども。
それよりも、むしろ取材から編集、それから続報のあり方の一連のプロセスにおいて、いろいろ問題があったのではないか。そちらのほうが重要ではなかったかというような認識の下にこのような決定をしたと、個人的には理解している」と述べた。
このあと出席者から質問を受けて委員が答えた。主なやり取りは以下のとおりである。

(質問)
申立人は、謝罪と放送内容の訂正を要求していたと思う。謝罪については、決定文で10ページで民法723条について考察をしているが、放送法9条1項の訂正については記述がない。これは訂正放送は局が主体的に判断するからということなのか、それとも、名誉毀損を指摘するよりも放送倫理上の問題を結論にしたので、書いていないということなのか。
(三宅委員長)
本件は、基本的には名誉毀損に該当するが、事後報道がかなり度重なってされているので、事実上の訂正もされて、申立人の社会的評価の低下が一定程度回復されているとみることもできると判断している。放送法上の訂正放送のことまで判断せずに、放送倫理上の問題としての扱いに判断を収れんしたということである。

(質問)
決定文にある朝日放送と他社の報道との違いの点だが、リストの情報を入手しながら報道を控えた社もあり、また後追いの報道では指摘されているような「やくざ」というような表現もおそらくなかったと思う。あるいは、リストの疑惑の度合いが強調されていたという部分で、朝日放送の報道の方はより断定的で、より名誉毀損的だ、そういう違いがあるという理解でいいか。
(三宅委員長)
そういう含みもあるが、ただ本件申立ては朝日放送だけを問題にしているので、他社の報道内容を全て精査したわけではない。決定文に書いてあること以上の踏み込んだ判断はしていない。

(質問)
申立人が、他のテレビ局の報道に対して申立てをしなかったか理由はあったのか。
(小山委員)
ヒアリングで聞いた限りでは、他の局は表現の仕方が違っていたとか、自分のところへ取材に来てから放送していた、そういうことは述べていた。

(質問)
裏付け取材が十分ではなかったと書かれているが、逆に言えば、労組に対して取材をすれば、それは容易に真実ではないと分かったということか。
(小山委員)
申立人を取材すれば、回収リストは自分たちが作成したのではないという答えが返ってきたと、予想出来ると思う。放送日の2月6日よりも前に、別の局が取材した時に、申立人はそのような回答をしているようなので、多分2月6日に取材しても同じような回答ではなかったかと。その上で、どう処理するかは局の問題なのでよく分からないが、放送内容が変わっていたということも考えられる。

(質問)
取材をしていない理由として、朝日放送は時間がなかったと言っているが、それについて委員会は朝日放送になんらかの意見を言ったのか。
(小山委員)
時間がなかったということは、午前中に市議会議員の動きを取材しており、結果的に放送までに申立人側を取材することが出来なかったということだが、委員会を納得させるような説明がなかったので、今回のような決定文の記述になった。おそらく取材しなかった理由、事情等々あると思う。決定文で「委員会に提出された資料等においては」という、ある種の限定をしているが、その趣旨というのは、提出された書面やヒアリングの範囲では、説得力がある説明がなかったということである。

(質問)
「決定の概要」で、「『スクープ』として疑惑を真実であるかのように断定的に報じ」と書かれているが、「スクープ」という表現に、疑惑を断定的に報じるということの強調としての意味合いがあるのかどうか。報道する側にすれば、「独自ダネ」の意味で使っている言葉だと思う。決定では、この疑惑はさらに真実であると、付加するような意味合いで書かれているが、見解を聞きたい。
(小山委員)
「決定の概要」部分はあくまで要約で、「委員会の判断」部分、6ページの(b)のところを読んでいただければ、「『朝日放送のスクープです』と強調され、本件報道の真実性が強く印象付けられていることもあわせ考えると」と書いている。「スクープ」という言葉が、直ちに「疑惑」の「真実性」を高めたと言っているわけではない。

(質問)
1点は、「勧告」さらに「放送倫理上重大な問題あり」ということで、重い軽いでいえば、委員会の判断として、これ以上重いものはないという理解でいいのか。
また、今回確かに名誉毀損はしているが、最終的な結論としては名誉毀損と認定はしない。その理由というのは、結局、事後に名誉が一定程度回復された、社会的評価の低下が一定程度回復されたということだとすると、つまりどれだけ厳しい名誉毀損があったとしても、事後放送でちゃんとカバー出来ればよいということになってしまう。では一体名誉毀損が認定される場合はどういうケースなのかなと、何でも事後放送で回復すればいいのかいう疑問がわく。
(三宅委員長)
勧告で放送倫理上重大な問題ありというのは、判断のグラデーションでは、一番重い判断である。
それから「名誉毀損には該当するものの」という点だが、本件については、名誉毀損であるとはっきり言っているので、結論を名誉毀損をベースに判断するかどうか考えたが、名誉毀損として改善勧告を求めるよりは、放送倫理上の問題として決定文11ページで述べた4点の改善勧告をして、今後の放送に生かしていただくということで判断したほうが、今回の事案ではふさわしいと思った。
したがって、名誉毀損について、事後放送で回復されているからよいというような判断はしていない。委員会決定第40号の「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」で「名誉毀損の疑いが強い」にとどめ、しかし重大な放送倫理違反という判断をしたこともあり、これが最初のケースでもない。先例にのっとりながら、放送倫理上の問題として改善勧告を出すほうがふさわしいという判断をした。

第149回 放送と青少年に関する委員会

第149回–2013年9月

フジテレビ「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」で局の制作責任者らと意見交換

第149回青少年委員会は9月24日、7人の委員全員が出席してBPO会議室で開催されました。今回は、一つの審議事案と二つの討論案件について話し合いました。まず、前回審議入りした『生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!』(フジテレビ)について、フジテレビの制作関係者との意見交換を行いました。その後審議が行われ、フジテレビに対して、追加質問に対する回答と、補足説明を求めることにしました。また、地方局で放送されている深夜のお色気番組と、最近の自殺報道について討論し、いずれも審議入りしないことにしました。その他、9月の中高生モニター報告、10月4日に札幌で開く意見交換会、11月26日開催予定の在京局との勉強会について報告しました。
次回委員会は10月15日に開催します。

議事の詳細

日時
2013年9月24日(火)午後4時00分~午後7時00分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

フジテレビ制作関係者との意見交換

『FNS27時間テレビ女子力全開2013』(フジテレビ)の「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」のコーナー(8月3日放送)に視聴者意見が多数寄せられたため、9月3日の第148回青少年委員会で審議入りすることを決めました。
青少年委員会では9月9日に、フジテレビに対し9月24日に意見交換を行いたい旨を伝え、以下の5点について、青少年の視聴に関する留意点を中心に報告をお願いしました。

  • 番組の制作意図について
  • 放送時間帯への配慮について
  • 危険行為に対する認識について
  • 女性タレントや女性芸人へのきわどい演出について
  • フジテレビ「私たちのバラエティ宣言」(2010年)を意識した番組作りがなされているかどうかについて

フジテレビからの報告書は以下のとおりです。

『FNS27時間テレビ』の「爆烈お父さん」に関する報告書

フジテレビジョン

(1) 番組の制作意図について

  • 『FNS27時間テレビ』の「爆烈お父さん」は、『めちゃ×2イケてるッ!』の制作チームが演出のすべてを担当しました。

    1. まずは『27時間テレビ』のパーソナリティである女性芸人を輝かせたい

    2. そのためには女性芸人と対極の国民的アイドルAKB48と向き合わせる

    3. 両者が対峙する場として「爆烈お父さん」が最適と考えて、今回は「爆烈お父さん」を制作・放送することになりました。

  • 爆烈お父さん」とは、極楽とんぼ加藤浩次氏演じる一家のお父さんが本来あるべき父親像、つまり、怖いけれども尊敬できる絶対的存在として一家の主導権をにぎる物語で、理不尽な説教や乱暴な振る舞いも今の威厳を失くした父親像とのギャップとして面白がる"コント"です。
    具体的には、ゲストがお父さんの逆鱗にふれてジャイアントスイングで回されるシーンが見所の"お茶の間プロレスコント"で、回されている間ゲストが宣伝したいVTRや曲が流れます。
    今回は、『27時間テレビのパーソナリティとして各コーナーの見所VTRを流したい女性芸人』と『アイドルとして新曲を流したいAKB48』の対比になっていました。

  • 今回我々は、放送中のサイドテロップ『爆烈お父さんvs女芸人vs AKB48』のとおり三つ巴の対決を目指しました。

    • 『AKB48』は国民的アイドルであるはずなのに、お父さんや女性芸人相手に生放送で必死に体をはって頑張る

    • 『女性芸人』はアイドルに「見せ場」(ジャイアントスイング)を横取りされて、お父さんやAKB48相手に必死で挽回しようとする

    • 『お父さん』は女性芸人vs AKB48の触媒としてAKB48を贔屓し続ける

当然のことながら、我々はAKB48と女性芸人に対して危険な行為や性的にきわどい行為をしたかったわけでは一切ありません。

(2) 放送時間帯への配慮について

  • 『めちゃイケ』は毎週土曜日夜8時からゴールデン帯で放送している番組ですので、イジメ問題をはじめとする青少年への影響は常に意識して制作しています。また、「爆烈お父さん」は番組スタート時(1996年)から続く長寿コーナーで、演出スタイルが当時から変わっていないことも含めて、『27時間テレビ』における放送時間帯に関しては特に問題視していませんでした。
    今回視聴者からたくさんの苦情をいただいたことで、『27時間テレビ』は普段の『めちゃイケ』ファン以外の方、お笑いファン以外の方も見る番組であることをより深く認識する必要があったと改めて感じました。

(3) 危険行為に対する認識について

  • 「爆烈お父さん」は前述の通り、バラエティ番組の"コント"です。
    ドキュメンタリーではありません。
    テレビタレントの加藤氏は、設定として「爆烈お父さん」という乱暴なキャラクターを演じています。
    もちろんゲストも、設定として「爆烈お父さん」にジャイアントスイングをされたり転かされたり蹴られたりする役を理解し、受け入れます。
    つまり、出演者全員が互いに信頼しながら、プロフェッショナルとしてカメラの前で"お茶の間プロレスコント"を繰り広げるのです。
    しかも、加藤浩次氏は『どの程度にとどめておけば相手は怪我をしないか』を十分に理解しており、我々スタッフも信頼しております。
    実際、問題視されている"渡辺麻友さんの顔を蹴ったとされるシーン"も、加藤氏は自分の足を一旦彼女の顔に付けてから押し出すようにすることで、相手が怪我をしないようにしています。

  • 放送当日は、入念なリハーサルやセットの養生など安全対策を万全にした上で本番に臨んでおり、「爆烈お父さん」は我々の想定を越えた危険なことが起こるコーナーだとは思っておりませんでした。
    しかし、想定した演出から逸れていく可能性がある生放送で、『一見暴力的に見えるキャラクターで笑いを作る』という決して簡単ではない演出方法を採用したことは、今思えばリスキーだったのかもしれません。
    また、「"お茶の間プロレスコント"とはいえ、モラル的に女性に対してする行為ではない」というご指摘に関しては、我々はもっと慎重に演出する必要があったのかもしれません。
    以上"生放送における演出"に関しては、今後の番組作りの課題として十分に検討していきたいと思います。

(4) 女性タレントや女性芸人へのきわどい演出について

  • 我々は、AKB48や女性芸人を使って性的にきわどい表現をすることを 極力排除しようとしました。
    例えば、AKB48メンバーが当日着けていたアンダースコートは、事前に事務所と相談して決めた衣装です。
    一方、森三中大島さんのでん部の露出に関しても、あくまで女性芸人である彼女達の持ち芸であり、笑いの表現方法としてバラエティ的に許容範囲であると認識していました。

(5) フジテレビ「私たちのバラエティ宣言」(2010年)を意識した番組作りになっていたかについて

  • 『愛がなければテレビじゃない!安心できなきゃテレビじゃない!やっぱり楽しくなければテレビじゃない!』の『愛』と『楽しく』は、バラエティ宣言通り達成できたと考えております。視聴者の皆さんに愛される番組をつくるために、番組を愛し、出演者を愛する気持ちは十分にありました。楽しくなければテレビじゃないという熱い信念を持って生放送に臨みました。
    しかし、『安心』に関しては、十分に配慮したつもりであった我々制作陣と視聴者との間に大きな溝があったと認識しております。今回、我々の番組をご覧になった視聴者から数多くの苦情があったことは事実であり、スタッフ一同真摯に受け止める所存です。
    これを機に、『安心』という意味で制作陣と視聴者との溝をいかにして埋めていくか十分に議論して、今後の番組作りに活かしていきたいと思っております。

フジテレビからの報告書を基に、フジテレビの番組の制作責任者など6人と委員との間で意見交換を行いました。

[意見交換概要]

〔Q:青少年委員 A:フジテレビ〕

論点1.コーナーの企画意図について

Q.   コーナーの企画意図を説明してください。
A.   ゲストの女性芸人とAKB48の魅力を引き出す目的で、「爆烈お父さん」を企画・制作しました。また、女子限定のゲストがジャイアントスイングで回されている間に宣伝したい曲やVTRが流れるなど、基本的にはタレントさんのプロモーションを兼ねたコント、つまり、ドキュメンタリーではなく「プロレスコント」として作っています。

論点2.放送時間帯への配慮について

Q.   民放連の放送基準で定める「17時~21時までは児童および青少年、とりわけ児童の視聴に十分配慮する」への配慮はありましたか。
A.   レギュラー枠の放送でも、青少年に見てもらいたいと思っているので、そのことは充分意識をして制作しています。今回の特番に関しても、通常の番組と同じスタンスで作れば大丈夫だという意識はありました。今回の特番では、ふだん『めちゃイケ』を見ていない方たちもかなり見ていたのだと後から気づかされました。
Q.   『めちゃイケ』ファン以外の視聴者についてどうお考えですか。『めちゃイケ』ファンなら理解してくれたのに、と思っていませんか。
A.   番組は、見終わったあとの感想「読後感」が大切だと思っています。全ての視聴者に楽しんでもらうために色々工夫しています。ただ、どういう線引きをしつつ表現したら表現者としての思いが『めちゃイケ』ファン以外の視聴者にも伝わるのかを、検討していますが、現状では答えは出ていません。

論点3.危険行為に対する認識について

Q.   これまでこのコーナーで予定外のハプニングとか出演者の怪我につながるようなことは無かったのですか。
A.   今まではありませんでした。全部の角を怪我をしないように細工したりして、我々があのお茶の間のセットで怪我を防止できることは100%やっています。
Q.   子どもがジャイアントスイングを真似することについてどう思いますか。子どもは周りを怪我をしないように細工することはしないですよね。
A.   真似をする子どもはいるかもしれませんが、かといって「危険なのでまねしないで下さい」とテロップを入れれば済む問題とも思っていません。そこは表現の仕方の問題で、我々がつかみきれていないところです。
Q.   「お茶の間プロレスコント」という表現を使っていますが、単にプロレスごっこにしか見えないのですが。
A.   お決まりの流れがあるので、「プロレスコント」だと思っています。
Q.   2007年10月に青少年委員会は「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」を出し、その中で暴力シーンは「人間に対する否定的な扱い」であると不快感を示していますが、頭や顔を踏んだり蹴ったりする行為は、人間の尊厳にかかわる基本的なことだと思います。スタッフの皆さんにその辺の認識が乏しいのかなと思い、危惧を感じます。大事なのは人間の尊厳を守った中で笑いを作っていくことだと思います。
A.   例えば、漫才でボケた芸人の頭を相方がはたく行為も人間の尊厳を冒すことになるのでしょうか?どの線からは人の尊厳を冒していることになるのかをお聞きかせください。
Q.   漫才で頭をはたくことは、今や文化的な伝統として定着していると思います。線引きで、これはOK、これはダメとなればテレビは作れなくなるのではないですか。そうではなく、人間を大切にすることだと思います。そしてそれを常に考えてゆくことだと思います。
A.   やっぱり顔を踏む行為が線を越えているという印象ですか?
Q.   そうですね。人間をいたずらにもてあそぶような映像が横行すると、子ども達の深層に忍び込んで、人間観、価値観の形成において、問題になってくると思います。
A.   複数の女性アイドルに同じことをしているのですが、映像から受ける印象はそれぞれ異なりますか?
Q.   同じです。どの場合も厳しく問われるべきだと思います。
Q.   過去に、頭を蹴ることはやっていたのですか。
A.   定番ではないが、やっていました。
Q.   クレームはありましたか。
A.   ありました。
Q.   そのクレームについて局ではどういう受け止めをしていましたか。
A.   数が少なかったこともあり、コーナーの内容を変えるまでには至っていません。
Q.   数が少ないことを軽視するのは問題があると思います。一つのクレームでも本質をつくことがあります。皆さんがちゃんとチェックしていてOKと思われたこと自体に、一般の人の感覚と放送局の人の感覚がかなりずれてきているのではと危惧します。
A.   数が少ないからそれを重要視しないという考えでは決してありません。

論点4.きわどい演出について

Q.   女性タレントがお尻を出した時に、その場に子役がいたのですが、そのようなシチュエーションについて内部で議論は無かったのですか。
A.   あれは女性芸人の持ちネタの一つで、想定内の出来事です。ただ、キワドイ部分で楽しみたいという意識はありませんでした。
Q.   "見ていて不快"という視聴者意見が多かったのですが、それは性的なイメージを喚起したり、男性がやって女性がやられるという男女の位置関係などに関係していると思うのです。公共性の高い地上波の生放送で、"これ以上やってはいけない"という現場スタッフ、出演者との申し合わせや基準はあったのですか。
A.   性的な表現を強調して視聴者を楽しませようという意識は全くありませんでした。エロくならない工夫をしています。でん部を出す行為に関しては、それを隠したり注意する周りの芸人達の面白さを引き出そうとしました。また、女性芸人の性(サガ)的なところを面白がろうとしていました。
Q.   お尻を出すことに関して、この時間帯は子どもが見ている時間帯であることを注意していなかったのですか。
A.   特にしていませんでした。というのもスタッフも私も、この場面のでん部の露出に関して性的な表現だとは全く思っていなかったからです。
Q   家族で見ている時などに、見る側が戸惑ったり不快に感じたりするということは考えなかったのですか。
A.   笑いが勝つと思っていました。ただ、不快だと思った視聴者がたくさんいたことは、反省すべきことだと思っています。
Q.   女性アイドルの足の開閉はエロティックだと感じましたが、あれはハプニングだったのですか。
A.   はい、現場のノリでやったことです。我々は正面から撮らないようにしたのですが、そう受け取る方がいたことに関しては率直に受け止める気持ちです。

論点5.フジテレビ「私たちのバラエティ宣言」について

Q.   フジテレビの「バラエティ宣言」に"愛がなければテレビじゃない"とありますが、これは人間すべてに対する「愛」があると思うのです。この「バラエティ宣言」の中身をみんなで議論して作っていただければ、いい番組が出来るのになと思います。ぜひ、いいバラエティーを作ってください。
A.   我々が、かつてバラエティーとして許容していたものが、今は通用しなくなってきていることを感じます。我々は世の中にどこまでアジャストしていけばいいのか、どこまで清廉潔白さを追求しなければならないのか、特にバラエティーに関しては常識とのギャップを笑いの表現として使うことが多いので、毎回自問自答しながらやっています。

その他の質問

Q.   今回の「爆烈お父さん」のコーナーは長くなかったですか? すごくしつこい感じがしましたが。
A.   普通は30分程度ですが、今回は1時間半放送しています。
Q.   同じことをやっても、社会情勢や時代、時間帯によって見ている人が変わったり、受け止め方が変わるということを、作り手が意識しておかなければならないのではないでしょうか。また男性が女性を振り回すという構図は、一方的な男性から女性への加害に見えてしまいました。
Q.   制作体制とチェック機構について確認させてください。
A.   『めちゃイケ』はフジテレビの社員が作っている番組です。実際に放送する内容は、私どもで必ずチェックしています。今回の『27時間テレビ』は生放送ですので、どういう内容をやるかについて事前に内容を共有しています。ただ、女性の頭を踏むという行為が人間の尊厳にかかわるというところまで考えが及んでいませんでした。今後しっかり検討していかなければと思っています。今回、頭を踏まれた女性アイドルは、グループの中でも正統派アイドルだったので、ファンの方に刺激的であったと思います。今回クレームが多かったのは、熱狂的なファンの方々からなのかどうか、我々の中で噛み砕いて理解する必要があると感じました。
Q.   今回、AKBが被害者だったからクレームが多かったと考えるのであれば、今後制作するにあたって本質を見誤るのではないかと危惧します。
 
Q.   今回は、皆さんに文句を言うために集まってもらったのではなく、日本の国民に、本当にいい笑いをたくさんもたらしていただきたい、そういう番組を作っていただきたいという願いがありまして、それで集まってもらったのです。今回、見ている人が大きな違和感を持ったとしたら、あれは作り手が「プロレスコント」と設定したけど、実は受け取るほうは、そうは受け取っていなかったということが一番の原因だったと思います。良い面白い番組を作ろうとして努力されていることはよく分かるのですが、受け取る側の受け止め方は一番大きな問題なので、もうちょっと詰めて議論したいなと思いました。

この後、委員会で審議した結果、フジテレビに対し、次の2点について追加質問し、またフジテレビ側として付け加えたいことや、新たな意見があれば伺うことにしました。
(1) 放送、特に地上波放送の公共性についてどうお考えでしょうか
(2) 貴社の番組のチェック体制について、あらためてお伺いいたします
フジテレビからの回答は以下のとおりです。

『FNS27時間テレビ』の「爆烈お父さん」に関する追加質問へのご回答

フジテレビジョン

(1)地上放送の公共性について
フジテレビは、その行動宣言において「高い公共性への使命感と放送倫理に対する社会的責任を強く認識し、社会からの共感や信頼を得ることが重要と考えている」とうたっております。様々な年齢性別、多様な生活習慣と趣味嗜好を持つ全ての視聴者の方々に番組をお届けするのが地上波放送であり、番組の種別に関わらず常に公共性を意識した番組制作を心掛けています。
今回『FNS27時間テレビ』においても、地上波の公共性と社会的責任への意識を強く持ちながら制作にあたりましたが、「爆烈お父さん」に関して我々が伝えたかったことと多くの視聴者の方々の受け止め方との間に乖離が生じてしまったことは事実です。
我々はこの結果を真摯に受け止め、改めて地上波放送の公共性の重要度を認識し、今後の番組制作に活かしていく所存です。

(2)番組制作におけるチェック体制について
フジテレビでは民放連放送基準を順守して各番組の企画制作にあたっており、バラエティ制作部では更に以下のチェック体制で放送番組内容の事前確認を行っています。
日頃より番組内容に関する問題事例が発生する度に、プロデューサー会議等で具体的な問題点の検証・情報共有を行い、各制作現場へ浸透を図っています。その上で、制作の過程で表現内容に疑問が生じた場合、番組プロデューサーはバラエティ制作部の上長や編成部の担当者に確認し、更に法律的な問題は法務室、コンプライアンス的な問題は考査・放送倫理部、権利問題は著作権契約部に個別に相談・確認しています。
また、放送の数日前、荒編集または白完(スーパーテロップやナレーションを入れる前のテープ)の段階でバラエティ制作部の部長・担当部長がそれぞれの担当番組の番組プレビューを行っています。ここで行き過ぎた表現がないか実際の映像をチェックし、問題があった場合は再度編集を行います。この荒編集・白完段階でのチェック作業は編成部の担当者も並行して行っており、バラエティ制作部内のチェックと共に二重に確認する体制をとっております。
最終的な放送用完成テープ(所謂完パケテープ)につきましては、MA戻し(整音した音声を完成テープに戻す作業)にプロデューサーが立ち会うなどの形で、最終チェックを行い、放送前に配布される完成テープのDVDコピーを、バラエティ制作部の上長が適宜内容確認する体制を取っております。

この回答も参考に、次回の委員会で再び審議することにしました。

視聴者意見について

  • 「女性が裸になって男性に色々なことをされたり、オススメAVを流したりしている。深夜とはいえ、"性"をバカにしている」などの視聴者意見があり、地方局で放送されている深夜のお色気番組について、全委員が番組を視聴した上で討論しました。委員からは「見ていて痛々しい」「90年代のままの内容で今の時代では許容されないと思う」という意見が出ましたが、「深夜帯での放送の多様性を考えた時、ただちに審議する必要はない」との結論に至り、審議入りはしないものの、今後とも、こうした深夜番組を注視していくことにしました。

  • 女性歌手の自殺報道について、視聴者から『WHO自殺予防 メディアのためのガイドライン』に反しているのではないかとの指摘があったことについて討論しましたが、審議入りはしないことにしました。

中高生モニターについて

9月は「見たい、作りたい番組」とはどんな内容なのか、ジャンルを問わず、番組の企画書を作ってもらいました。
中高生ならではの視点でみなが熱心に企画を考えてくれました。中にはタイトル、放送時間帯、視聴対象、キャスターのほか、ナレーター、ゲスト、番組内容、企画意図など、詳細にわたって4ページもの企画書を書いてくれた方もいました。みな、中高生にも分りやすい番組作りを目指し、好感度の高いタレントを起用したり、現在の中高生に関心の高い「いじめ」などのテーマを取り上げるなど、工夫を凝らしています。
「動物」をテーマに設定している企画書が3本ありました。また、現在放送されている、或いは、最近放送されたテレビ番組からヒントを得た企画が数本見受けられた一方、まったく、違う視点でお年寄り向けの企画を考えてくれたモニターもいました。
「ドキュメンタリー」には、これまでのような日本人目線の作り方ではなく「世界からの視点で」考えることを提案したり、これからの自身の将来を見据えた「職業」について、中高生が実体験したり、また、中高生に人気のタレントさん、お笑い芸人、俳優、歌手が疑似体験するなどの企画書がありました。
野球などのスポーツや、趣味の「読書」を扱った企画もありました。
<自由記述欄>はコマーシャルや番組宣伝スポットに関して内容及び放送される時間帯について感じることを書いてもらいました。「面白いCMがとても多い」と書いているモニターもいましたが、批判の声も多く寄せられました。「ひとつの番組の中で同じCMを何度も流すのはやめてほしい」とか「何のコマーシャルか分からないCMが多くなった」など、内容そのものに関する批判が多くありました。時間帯に関しては「食事の時間帯に、トイレ用洗剤のCMが流れると不快になる」「深夜に通信販売やパチンコ店のCMが集中し、不快に感じることがある」などの意見が寄せられました。

【委員の主な意見】

  • なかなかユニークな発想が多い。オリジナリティがある。動物から見た人間の姿を描く企画があったり、高齢化社会を反映して、おじいちゃん、おばあちゃんを視聴対象者とした提案などがあった。

  • どれもおもしろくて楽しく読んだ。今の中高生は「ためになるもの」を求めているようだ。発想も豊か。また、世代をつなげていこうというような企画も良い。

  • 視聴者参加という形式がキーワードになっているものが多い。隔絶してなく身近なところを求めている。稀有壮大なものはない。また、ゲームと番組をつなげるなど、今の若い人の考え方の特徴が出ている。

  • 将来選択が豊富になりすぎた社会においてどういう職業をどう選ぶかが自分たちの夢の描き方につながるようで、そういう内容の番組企画が多かった。

  • 働くことへの関心が番組企画に反映されているものが多い。自分がどう生きていくか、考えていくに役立つような企画を書いてくれている。ユニークだし、創造性に富んでいる。

  • 動物関連の企画が3つあった。柴犬が主人公の企画もおもしろいし、動物の映像に芸人がコントをアドリブでつけるという発想も大変良い。芸人を鍛える企画になるかなと思った。一時動物番組に人気が出た後、最近は下火になっていたが、また、生き物に関する関心が高くなってきたのかと思った。

  • 身近で実用的な企画が多かった。バラエティであっと驚くような企画は寄せられてない。視聴者参加型の番組人気が根強いようだ。

◆モニターの企画書に対する在京局の現場の方から届いたコメント

◎企画1.『檻の中からごくろうさん』(新潟・中学3年男子)

【ねらい】舞台は動物園。何台ものカメラを7種類の動物の檻に設置し撮影。その映像を1分に編集し、その動物たちに超豪華演技派俳優がアドリブを交えながらセリフをつけていきます。動物たちの会話は「動物から見た人間の姿」「今、人間の間で話題の出来事」など。例えば「スマホに興味を示すゾウ」や「パンダ人気が気に入らない上野動物園のサル」「滝川クリステルのプレゼンに感動したカバ」など。どれもシュールで「クスッ」と笑ってしまいそうな会話で、明日会社や学校へ行くのが憂鬱なすべての人々へのパワーとなることを目指します。

【日本テレビ 編成局 編成部担当部長の感想 『エンタの神様』『仮面ティーチャー』など担当】

我々にとっても、目からウロコの、沢山の企画のタネがありました。その中で幾つかあったのが、企画者の「伝えたい想い」を紹介する番組。ただ、想いを伝えるだけでは、企画とは呼べません。視聴者サイドがどう楽しめるのか、感じるのか、徹底的にこだわって考え抜いて工夫して初めて、「紹介番組」でなく、真の「番組企画」となるのではないでしょうか。そして、そういった工夫が見られる企画も数多くありました。また、『檻の中からごくろうさん』は、動物が喋るという発想がユニークで、ショートコンテンツとしては「アリ」だと思いました。

◎企画2.『免許皆伝!』(岐阜・高校2年女子)

(1)分野別に免許(資格)職業を仕分け、世の中にどんな免許(資格)があるのかまず知る(2)その後人気のあるもの、一部の人しか知らないもの、取るのが難しいもの、年齢制限のないもの、高収入につながるもの、収入にはつながらないかもしれないけれど自分の生活が豊かになるもの、などなど紹介[免許(資格)をとるまでのステップ→生かし方などは図や動画を使って、わかりやすく説明] (3)実際にその免許(資格)を活用している方の生活を紹介。仕事や、企業の裏側を紹介する番組はありますが、免許(資格)に絞って紹介する番組をみてみたいです。(今の自分に知りたい情報なので)免許(資格)をとることがゴールではありませんが、小中高生の将来の進路の手助けになるといいと思います。

◎企画3.『ザ・マネジメント』(島根・中学3年男子)

【ねらい】小学生高学年~中学生の人が会社(大手企業やガソリンスタンドなど)に数日間入社体験をするという企画です。他の大人と同じような仕事をして、どういう風に思ったのかをインタビューしたりします。仕事内容に応じてお給料を渡され、社会人の大変さを勉強する番組です。家族みんなで見ることができる番組なので、19時以降がいいと思います。出演者もお笑いとは違い、コメントがしっかりしている人がいいですが、それだけではかたくなってしまうので、フットボールアワーの2人がいればよいと思います。

◎企画4.『なりきりお仕事体験!!』(愛知・高校2年女子)

中高生は、将来の進路を決める大切な時期です。でも、学校によっては職場体験がなかったり、希望するところがなかったりします。自分が将来何になりたいのかわからないまま進路を決めるのは大変なことだし、自分がイメージする仕事の内容と現実は大きく違っていたりします。だから、普段は見ることができない仕事の内容を中高生が実際に1週間程度体験して、その仕事に対する見方や思いが変わったかなどを聞き、視聴者は新たに職業を知ったり、一つの仕事を多方向から見たりできるようになったらいいと思いました。

【テレビ朝日 編成制作局制作1部 統括担当部長の感想】

皆さんからの企画案を見て「斬新だなぁ!」と思われたのは、"子供の職業体験"に関する企画です。みんなが「次は…?」と考えて同時に思いつくということはある種の予言で、近い将来放送される予感があります。60年の歴史がある日本のテレビで"まだだれも見たことがない"という企画は何らかの問題があるから放送されなかったものです。しかし、中高生のみなさんには自由な発想で思いついた斬新な企画が"なにをクリアすれば実際かたちになるか?"を考えてほしいと思います。

【フジテレビジョン 編成制作局バラエティ制作部 『ネプリーグ』プロデューサーの感想】

今回、皆さんの企画を見て、テレビ番組から「学びたい!」「知りたい!」という気持ちが強いということを改めて実感しました。特に、『免許皆伝!』『なりきりお仕事体験!』『ザ・マネジメント』のように、仕事・職業・企業の事を扱う番組企画に目がとまりました。テレビ番組だからこそ潜入できる企業・職業・現場の裏側ってたくさんありますよね。普段は見られない世界をテレビ番組から吸収し、将来を夢見る。という構造は素晴らしいと思います。ただ、その切り口を新しく・面白く・解りやすく演出することが番組作りには必要です。学生の皆さんのニーズを今回垣間見ましたが、テレビはコアなものであってはいけません。幅広い年代、カテゴリーの方々が楽しめるもの、その仕組みを発明することが日々、私たちの課題です。

◎企画5.『いじめ 徹底討論』 (仙台 高校2年男子)

放送時間帯:20時から 視聴対象:小学生・中学生・高校生
キャスターほか:今でしょ先生(林 修さん/東進ハイスクール)

『僕はなぜ止められなかったのか?~いじめ自殺・元同級生の告白~』(NHK)を偶然見て衝撃を受けました。14歳のとき、"相棒"と呼び合った友だちから、「今までありがとう。さようなら。」というメールを受け取った少年の話です。彼は、相棒がいじめに遭っているのを知りながら、傍観してしまったことに、とても激しく悔いていました。月命日には必ず、線香をあげに相棒のご両親の元を訪れるのですが、とても苦しそうでした。なくならない「いじめ」。そこで、いじめられている人・いじめている人・傍観者になってしまっている人50人をスタジオに呼んで、顔を隠して徹底討論して欲しいのです。なぜいじめは起こるのか。いじめられるとどういう気持ちになるのか。いじめるとどういう気持ちになるのか。なぜ傍観してしまうのか。このあたりに、焦点を置いた番組が見てみたいです。

◎企画6.『楽しく学ぼう!好きになれる勉強!』(山形 中学2年女子)

放送時間帯:19-21頃まで 視聴対象:小学校高学年、中学生
キャスターほか:頭の良い人 芸人さんなどが先生になり、楽しく勉強できる方法を伝授するというような番組が見たいです。歴史の暗記法や各教科、好きになれる勉強法を教えてほしいです。データ放送も使い、視聴者参加型だったら、もっと楽しめると思います。(この企画のイメージはアメトークの勉強大好き芸人です。)

◎企画7.『ビルドアップ!』 (東京 中学3年男子)

放送時間帯:夜8・9時台
視聴対象:10代 キャスターほか:ジャニーズ等の若手(イケメンが汗臭いことを爽やかにこなす)

コンセプト 出演者たちが力を合わせ、毎回のテーマに沿って一つのことを成し遂げる。未開の星の住民である出演者たちが地球に勉強しに来たという設定で、番組内でのクエストをクリアしていくとそれに関係した分野の文明レベルが上がって、さらに高いクエストに挑むことができる(最初は飲料水の確保や狩りといったことから、農業、工業、商業の各職業経験、時に起きる災害への対応といった形で身近な日常生活や職業体験から災害時まで役立つ情報を楽しく提供する。つまり鉄腕DASHや世界の果てまでイッテQにRPGゲーム感覚を合わせたような番組。

【NHK 制作局 青少年・教育番組部 チーフ・プロデューサーの感想 『Rの法則』などを担当】

Nスぺを視聴して思いついた"いじめる人・いじめられる人・傍観者の覆面討論"、アメトークの勉強大好き芸人からイメージした『好きになれる勉強』、鉄腕DASHやイッテQにRPG感覚を加えた『ビルドアップ!』が興味深かったです。全くの新企画はなかなか見当たらない今のテレビ業界では、既存の番組をいかに自分なりにアレンジできるかが、新しいものを生み出す1つのコツでもあります。若い人たちの"番組リテラシー"をもっと聞いてみたいと思いました。

◎企画8.『Book Review』(神奈川・中学1年女子)

放送時間帯:土曜日もしくは日曜日の夜(20時から21時)
視聴対象:小学校高学年からお年寄りまで幅広い世代が対象者
キャスターほか:視聴者参加型(本好きな芸能人と一般人)

この番組は、本好きな視聴者と本好きな有名人(芸能人)で作り上げていく、「本好きあつまれ!」的な番組です。この番組を通して、本好きな人が増えてほしいという願いを込めています。番組は、書いたとおり、視聴者参加型です。本を読むのが好き、音読が得意という中学生以上の視聴者の応募を募って毎月オーディション。音読する本は、その人が好きな本でぜひ他の人にも紹介したいというものや、いま話題沸騰中の本。本のイメージが伝わりやすいように、かわいいアニメーションに合わせて放送したいです。

◎企画9.『Rode to Japan~日本のこれからを担う世代へ~』(宮城・高校2年男子)

放送時間帯:週1または月1の金、土、日のいずれかの夜10時~12時ごろ、ラジオやインターネット配信でも可。
視聴対象:10代から20代の人たち、その父母や祖父母などの世代の方。

キャスターほか:若者(中高生~20代)とその父母世代(40~50代)さらにその祖父母世代(60代~)から、それぞれ毎回違う方に出てもらい、池上さんか田原さんのようなジャーナリストを司会として、様々なジャンル(政治、経済、戦争、領土や憲法だのといわゆる「堅いもの」からアキバ、原宿文化か、エンターティンメント、スマホ、などの若者中心のカルチャーまでと多岐にわたる)の専門家を呼び話を聞いた後、僕たち若者の率直な意見をツイッタ―やFacebooKなどで集めるいわゆる視聴者参加型にし、専門家にこたえてもらったり、父母世代か祖父母世代との考え方のちがいを理解し話し合い「日本のこれからについてしっかり僕たちの世代で考えて、発信していこう」というような内容です。

【テレビ東京 制作局 局次長の感想】

全体的には、役に立って楽しめる視聴者参加型の企画が多く寄せられました。将来の不安を解消したり、学ぶ欲求に応える企画もあり、若くてピュアな感覚を番組化することは大切なことだと思いました。我々は今まで見たことのないような新鮮味のある企画を開発したいと考えています。皆さんも10代の今だから発想できる企画をこれからも考えてみてください。深く考えることで今まで気付かなかった新しいモノが見えてくるかもしれませんよ。

◎企画10.『いつまでも元気!』(兵庫・高校2年女子)

視聴対象者:おじいちゃん、おばあちゃん
出演者:氷川きよしなど 内容:おじいちゃん、おばあちゃんのためのバラエティ番組

体の体操コーナー=これできるかな?かんたんな体操など。頭の体操コーナー=クロスワードパズルなど。お笑いコーナー=笑いは元気の素!漫才コーナーなど。これだけできればひと安心。まだまだいけるよ!と自信がもてるテレビ。本人も周りも元気の目安がわかるテレビがいいと思った。

【TBSテレビ 制作局 バラエティ制作部プロデューサーの感想】

世界のこと、世間のこと、大人のこと、人間のこと、自然科学のことなどなど、興味はあるけど、今の自分には実行できる術はないので、誰か代わりに やってくれているところを見てみたい!…僕が中高生のころ、確かにそんなふうなことをテレビに期待してましたし、そんな番組を見て興奮していました。今回、中高生の皆さんの企画アイデアを拝読させていただき、そんなことを思い出しました。世帯視聴率を金科玉条の指標として、効率と実現性の 追求に明け暮れるばかりに、結局、最大公約数的な番組を作ってしまいがちな"テレビ屋"になってから、すっかり忘れてしまった感覚、とても新鮮でした。

今年度の青少年委員会活動について

  • 10月4日に札幌で行う意見交換会について、進捗状況の報告がありました。
  • 11月26日に開催予定の、在京局とのバラエティー番組に関する勉強会について概要が報告されました。

2013年9月に視聴者から寄せられた意見

2013年9月に視聴者から寄せられた意見

2020年東京五輪決定のニュースが過剰との意見。竜巻被害の報道で、ヘリ取材が救助活動の妨げになる、危険を冒して撮影された一般人の映像使用に疑問などの意見。

2013年9月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,631件で、先月と比較して65件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール72%、電話26%、FAX 1%、手紙ほか1%。
男女別は男性71%、女性26%、不明3%で、世代別では30歳代31%、40歳代26%、20歳代16%、50歳代16%、60歳以上9%、10歳代 2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。9月の通知数は772件【41局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、19件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

2020年のオリンピックとパラリンピックの開催地が東京に決まったが、どこもその話題に浮かれているばかりで辟易するといった意見などが寄せられた。
台風や竜巻の被害状況があちこちで報じられたが、騒音を撒き散らすヘリコプター取材が救助の妨げになるのに、相変わらず是正されていないといった批判の声や、災害時の危険な映像入手について疑念が寄せられた。
また事件や事故のあと、子供たちにインタビューしている様子が放送されたが、配慮が足りないのではないのかといった批判や、人気司会者の次男逮捕の取材の仕方が、あまりに過激ではないかといった声もあった。
ラジオに関する意見は34件、CMについては39件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は133件で、前月より14件減少した。
今月は「委員会に関する意見」が36件、次いで「性的表現に関する意見」と「いじめ・虐待に関する意見」がそれぞれ12件、「報道・情報に関する意見」が11件と続いた。
「委員会に関する意見」では、フジテレビ『27時間テレビ 生爆烈お父さん』の審議入りに関する意見が多く寄せられている。
そのほか、「報道・情報に関する意見」では、事件・事故の報道にあたって、子どもへの取材について配慮が欠けているという意見や、有名人の自殺報道に関する意見など、取材方法に関する意見が寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 朝から晩までオリンピックの話題ばかりで、不愉快だ。決まったことは喜ばしいが、他にもTPP、シリア問題、福島第一原発など重要なことが沢山ある。また、汚染水問題は政府も乗り出すといっているが、どういう対策を今後とっていくのか等、仔細に報道してほしい。決まったことに浮かれすぎている今の報道のあり方は危うい。

  • 竜巻の報道を見た。各社がヘリコプターを飛ばして取材していたが、何機も飛ばさず1社にして、映像を各社で共有したらいいのではないか。災害によっては、ヘリコプターの音で被災者の声が聞こえず、救助できない事態にもなりかねない。

  • 栃木地方で発生した竜巻の映像だが、現地の学生から投稿されたものを放送していた。竜巻は前日も発生していて、危険であること、如何に身を守るべきかを再三にわたり放送していた。教室から撮影したらしいが、この映像を採用した意図が理解できない。撮影者には撮影するよりまず逃げることが最優先であることを諭し、映像は採用すべきものでない。もし映像がほしいのであれば、自社の責任において危険な場面でも取材すべきである。そういったことを真剣に考慮したのだろうか。

  • 終戦日や原爆の日に関連して、一部メディアでは一斉に「記念日」というが、この表現はおかしくないか。今年は関東大震災から90年の節目の年だが、悲劇を忘れない日ではなく、おめでたい日と勘違いするような表現は改めるべきだ。当時、幼少で現在100歳近い関東大震災を生き抜いた高齢者の方の証言は凄く胸に迫ったが、多くの死傷者、行方不明者、被害を出した戦争、災害が起きた日を「記念日」とすることは遺族や犠牲者を冒涜する行為に思える。

  • 三重県で起きた女子中学生の事件の被害者実名報道だが、この地域に住んでいる者としてひと言、言いたい。過去にも何度か未成年者が殺害された際、実名報道がされてきたが、ご遺族の方々のお気持ちを考えると心が痛む。それと同時に加害者の人権ばかり配慮して実名を出さないこともいかがなものか。しかも、マスコミという大きな存在により被害者家族だけでなく近隣住民も巻き込まれている。たとえば子ども達へのインタビューは考えてほしい。事実を伝えないといけないマスコミの立場も分かるが、あまりにも人の立場になって考えていない。報道の自由の裏には配慮する義務もある。

  • 「三重・女子中学生殺害事件」で、被害者の中学生は「衣服をつけていない状態で発見された」と報道していた。この表現では「わいせつ行為」を連想してしまう。残された家族の気持ちと、殺された少女の名誉のためにも、着衣に関するの報道は配慮してほしかった。

  • 首相や官房長官の記者会見で、横にいる手話通訳の画像がカットされていることを残念に思う。字幕があれば充分と考えているのだろうが、字幕の日本語を理解できない聴覚障害者もたくさんいる。ぜひ、カメラアングル等の工夫で、ニュースの画面に手話通訳が映るようにして貰いたい。手話通訳がいるにもかかわらず映さないことは、聴覚障害者にとって情報を得る機会を奪われることと同様だ。

  • テレビのコメンテーターはリベラルと呼ばれる人たちばかりで偏っている。報道もリベラル支持の内容が多く、その反対である保守の人たちを「右翼」と呼び、レッテルを貼り、批判する。「リベラルと保守」「左翼と右翼」というのがバランスの取れた呼び名なのに、「リベラルと右翼」という形になっている。バランスよくコメンテーターを配置してほしい。

  • オリンピック開催地決定に関して、9月7日時点で各社とも、「どこに決まるのやら」という内容で放送している。あと数時間で結果が出るのだから、そんなことよりマスコミとして扱うべき事柄を取材し、放送すべきではないだろうか。各社横並びの無思考的な報道が近年は多い。こういった楽なネタに飛びつく姿勢を続けていれば、確実にテレビ報道は国民の信頼をなくしていくであろう。

  • 野生動物による農作物の被害やトラブルが増えているが、野生動物を悪者扱いし過ぎだ。この問題は、近年のダムや高速道路などの建設を始めとする森林開発による自然破壊も原因の一つである。こうした中、多くの野生動物が有害鳥獣として駆除されている。しかし、そのように駆除されたことが原因で数が減り、絶滅あるいは絶滅寸前になってしまった動物も多い。今まで多くの野生動物を有害鳥獣として駆除することで絶滅させてきたということも、視聴者に知ってもらうべきだ。

  • 「福島の汚染水」という表現がされていることに意見したい。「福島の汚染水」では決してない。福島県から出されている汚染水ではない。「東京電力の汚染水」、または「東京電力福島第一原発の汚染水」だ。「福島の汚染水ではなく、正しくは東京電力福島第一原発の汚染水だ」と訂正が必要だ。正しく表現していただきたい。

  • 東京にオリンピックを招致、開催することの是非について、賛成、反対の両意見が存在する筈だが、まったく反対意見を報道していない。世論調査でも8割は超えていなかった。連日の報道を見ても、反対意見が存在していないかのようである。イスタンブール、マドリードの反対運動は報道しておいて、である。別に反対意見を国内で報道したからといって、開催地の決定に影響があるとは思えないが、報道しないということは問題だ。最近の報道は、言論機関が反対意見を封じて、言論を抹殺しているように思えてならない。

  • 私の知人は、2001年に9.11を経験したが、あの事件では多数の人々が亡くなった。今年も、全世界で9.11の慰霊行事が行われるが、日本ではオリンピックの開催決定で盛り上がっている一方で、9.11に関する話題は少ししか取り上げられていなかった。日本人もあの事件で犠牲となった。あの事件を風化させないように、放送局も取り上げるべきだ。

  • 「有名司会者の次男逮捕」の話題に意見したい。司会者の自宅に突撃するなど、過剰な取材があった。有名人の息子でも、31歳の成人だ。悪いことをしたのは司会者ではない。父親の自宅にまで押しかけ、司会者の夫人の葬儀の映像まで引用し、出棺風景まで映していた。コメントも「ズバッと発言する人なのに、これからは難しくなる」などと、逮捕された本人ではなく父親を批判していた。

  • 報道番組の司会者やコメンテーターの上から目線は不快だ。マスコミは当初「アベノミクス」は「ハイパーインフレ」になると批判していた。テレビは批判のための批判をする「批判屋」の集団になっている。賛否の分かれる事案でも自分の意見と違うと、問答無用に切り捨て、政治家を憶測で批判したりしている。事実誤認のときすらある。テレビは今「消費税でアベノミクスが駄目になるかも」と心配している。無責任な批判のために潰される政治家、政党、政策があるかもしれない。誰しも批判屋でいることは快感だが、メディアには責任もあることを自覚してほしい。

  • 台風情報コーナーで、女性リポーターに暴風雨の中、レポートさせていたが危険であり、全く必要性を感じない。カメラからの映像で十分状況は伝わる。コーナーの終わりにキャスターが「早く安全なところへ」などと言っていたが、その時にはすでにヘルメットが飛ばされ、女性リポーターの足が震えているのが見て取れた。いつまでこういった取材をするのだろうか。

  • 消費税増税を来年4月に8%へ引き上げることについて、出演者の一人が「まだ固まったわけではない」と言ったのだが、増税が固まったものと視聴者に受け止められる番組の進行をしていた。見ていて公平性を欠く偏向報道に、気分が悪くなった。

  • 「引きこもり」が社会問題になっているが、若者や子どもだけの問題ではない。高齢者の引きこもりも存在している。配偶者の死や家族や知人などとのトラブルが原因で自宅に籠ってしまうケースもある。青少年が引きこもりで学校に登校しない、会社に出勤しないことが問題視されているが、お年寄りがひきこもりで町内会の会合や敬老会に顔を出さないということもある。実は引きこもりの問題は青少年の事例より、高齢者の事例の方が昔から指摘されている。マスコミはこの点を見逃しがちで、なかなか取り上げない。

  • 大学教授が起こした死亡交通事故のニュースがあった。死亡事故は年間数千件あることを考えると、今回の事故の加害者が特に実名報道されているのは、なぜなのか。大学教授であるという理由で、全国に報道されることを甘んじて受けなければならないのか。本件に限らず、報道機関は特定の職業の人間を(正当な理由なく)攻撃する傾向が見られるが、厳格なガイドラインはあるのだろうか。

【番組全般・その他】

  • 若い女性に性的な表現をさせるなど、女性軽視もはなはだしい。放送されること自体ありえない。未成年の少女から20代前半の女性に、アイドルになりたいことを餌にして、アダルトビデオみたいな性的な行動をさせている。いくら深夜だとしても、あまりにも酷い。下劣だ。

  • 生放送中にちょんまげにするというだけの内容なのだが、インパクトが強すぎる。本当に応募によるものだろうか。バリカンで髪を刈る方は、理容師か美容師の免許を持っているのか。若者のおふざけ行為が社会問題されているが、これを流すことは問題がないのか。

  • 番組に洋楽の歌詞が日本語に聞こえるというコーナーがあるが、見ていて興味深い。こういうものは普通に聞いているだけだと気がつかないものだが、日本語に聞こえる曲は意外と多いことが分かる。3曲しか紹介しないので少し物足りない。たまには、4曲か5曲に増やしても良いのではないか。

  • ADを過剰に弄ぶ行為に不快感を覚える。過去にも、出演者がADの顔やTシャツに絵の具で落書きをしたり、格闘技のジムでスパーリングをさせたりしていた。今回は、出演者が「着替えがない」ということで、汚い川でADにパドルサーフィンをさせていたが、可哀相だった。イジメを助長するつもりはなくとも、イジメのヒントを与える行為は如何なものか。芸人なら「おいしい」かもしれないが、ADにやらせて誰が得するのか。素人を弄ぶ行為はやめたほうがいい。

  • 実際に起こった殺人事件の血痕の映像を流したり、殺人事件をクイズ形式にしたりと、故人への配慮が欠けている。面白くするためにミステリードラマ風に仕立てているが、人間の死を興味本位に軽んじることは不謹慎だ。また死んだ米国の有名歌手については、今現在裁判が進行しているのだが、憶測でVTRを構成している。故人やその親族、関係者、ファンらを侮辱した番組作りは許されるものではない。こういった番組はやめてほしい。

  • 番組には様々なことがあっていいと思う。視聴は本人の自由であり、保護者の責務でもある。なんでもかんでも教育番組にしようとしてはいけない。いまやインターネットで様々な動画も見ることができる。私の周りでもテレビがつまらなくなったという意見が多い。テレビ番組を面白く、楽しく、いつも見ていたいものに変えてほしい。

  • ドッキリ企画で、包丁が複数刺さったままの人がクローゼットから転げ出てくるという大変ショッキングな映像が流されていた。心臓の弱い方はご遠慮下さいとの前フリもなく、いまでも脳裏に焼きついて離れない。いくら冗談とはいえ、やりすぎだ。バラエティーを見ている最中に突然このような惨殺シーンが出てきてしまい、ショックで仕方ない。もう二度とこんな思いはしたくない。

  • 開催地が決まってもいないうちから、「東京に決定おめでとう」特集のようなことをやっていたが、その中で「オリンピック」や「五輪」の名前を持つ店に対し、東京に決まったら記念セールや記念商品を出すように依頼していた。まだ決定もしていないのに、東京に決定したかのようにはしゃぐ姿や、街の普通の店に対し値引きや特別商品を「おねだり」する礼儀のなさにあきれた。

  • 知っておかないといけない、忘れてはいけない出来事を、テーマを毎日決め放送している。知っている人も、若くて知らない人でも見やすいように工夫されている。怖い、つらいニュースや面白い出来事を混ぜていて、飽きずに見ることができる。ローカルならではの話題や関西の視点、テレビ局の歴史や裏話などいろいろとあり面白い。ローカルの良さが出たいい番組だ。

  • アナウンサーの言葉がはっきりしない。特に「さ行」の言葉にかすり音があり聞き難い。アナウンサーは正確に言葉を話してほしい。またコメントの初めに「いわゆる」というアナウンサーがいるが、どうなのだろうか。「いわゆる」の意味は「何々の別の言い方を」という意味だと思う。今のアナウンサーは、流行語に流されている。もっと、プロ意識を持ってほしい。

  • 一部のバラエティーで、他局の人気番組にあやかりたいという意図が見え見えの企画が放送されている。自局の他番組ならまだしも、他局の番組に頼らないと番組を作れないのか。優秀な人材が減っている証であるが、コント自体も内容によっては本家からのクレームにつながりかねない。もっと独自性を持ってほしい。

  • グーグルやラインなどの発音を、わざと間違えて「ギャル語」のように後ろに発音のアクセントを置くことは、おかしいのでやめるべきである。海外でこのような和製英語を正しいと思って使えば、恥をかくのは国民である。

  • 横断歩道上で役者数十人がしばらくの間立ち止まり、一般の横断者がどういう行動をとるかなど、公道上での秩序を乱す内容が放送された。道路交通法上も問題であることはもちろん、同様な行動を模倣する人が現れる可能性がある。影響力が大きいテレビ番組でこのような秩序を乱す企画は止めてほしい。

  • 大食い女性タレントがサービスエリアの人気グルメを食べつくす企画だが、驚くほどの量を食べつくすのは、見ていて吐きそうになる。世の中には満足に食事をとることができない人が大勢いるのに、あれほどの量を食べる番組に何の意味があるのか。

  • 出演者が半裸で尻を出して調理していた。コーナーは数分間にわたって続き、その間、尻を出したままだった。社会通念に照らして著しく性的に逸脱した行為で、不快になった。深夜だから何をやってもいいというわけではない。公の場所で男女を問わず尻を出せば逮捕される。それなのになぜ、子どもも見るテレビで、尻を出すのか。許されるべきではない。「笑いのためなら何をやってもいい」や「苦情のひとつやふたつは勲章だ」などと考えているなら大間違いだ。

  • 私は「統合失調症」の息子を持つ母親だ。長年息子の病気と闘ってきたが、昨日の放送を見た息子がフラッシュバックしてしまった。「俺にあんな世界はない」と言い出し、幻聴幻覚が始まり大騒ぎになった。時間をかけて病気と向き合い、やっと平和になりかけていたのに、最悪の状態に戻ってしまった。当事者が番組を見ることを想定して作ったのか。精神学会や専門家の意見を聞いて企画構成したのか。当事者とその家族の気持ちに配慮したとは思えない。抗議したが「放送中しか意見は受け付けない」と言われ、受けつけてもらえなかった。興味本位の放送はやめてほしい。

  • 朝の情報番組を久しぶりに見たが、まだ、新聞記事に線を引いて、あたかも自分が取材しているかのように報道するコーナーがあることに驚いた。まだこんなことをやっているのか。スタッフはさぞ楽だろう。「視聴者提供」映像もそうだが、もっと自分の足で取材するという考えはないものか。

  • 番組を見たが、クイズ選手権と言えるのだろうか。久しぶりに見るので楽しみにしていたのだが、全くクイズが出てこない。殆どバラエティー番組だ。ましてや開始10分ほどで参加校の殆どが放送されずに敗退している。これほど番組名と内容が一致しないことは、いかがなものか。何よりこの為に頑張ってきた高校生を馬鹿にしてはいないだろうか。是非とも番組とこの大会を今後も楽しむためにも、視聴者の意見として耳を傾けてほしい。

  • 一部の動物番組で、動物虐待に見えるようなシーンが見られる。嫌がっているのに出演者が子犬を無理やり抱き上げたり歩かせたりしている。今年から動物愛護法が見直され、動物愛護に関する規制が厳しくなる。動物番組でのこういった行為が動物愛護法に抵触しないか心配だ。テレビ局はそれを分かってやっているのか。こういった行為が動物虐待と見なされて、動物番組の制作や放送が規制されてしまうことになってほしくない。改善を望む。

  • ワシントン条約で厳しい規制対象となっている絶滅危惧種の、イッカクの「つの」に対し、高価格な評価をつけ、さらに、成分のカルシウムが風邪等に効くなどと、鑑定士のコメントをそのまま放送していた。この動物に限らず、絶滅危惧種に対して「高価格」のイメージを出すことは、密猟・違法取引を誘発することから、報道機関に対して、国際的に厳しく自粛、規制が提唱されている。しかもこの放送は、再放送とのことであり、社内の倫理機能が全く働いていないと思われる。

  • 一つの局に限ったことではないが、視聴者の意見や要望が番組の制作や企画に活かされていない。番組に関して意見や要望をしても、全く相手にされず、挙げ句の果てには「私どもには分かりかねます」や「意見や提案は一切受けつけておりません」というような、責任逃れを言われたこともある。番組の意見や提案をメールで送っても、ナシのツブテだ。もっと視聴者に対する応対を根本から考えるべきだ。

  • アルバイトや学生のツイッターでの問題行為を、若者の悪ふざけとして苦言を呈するコメンテーターの意見だけを紹介する番組が目立つ。若者に問題を矮小化するより、世代関係なく群集心理から来る、気が大きくなって調子に乗るグループや個人を批判すべき事例ではないのか。ピントがずれている気がする。メディアは、都合のいい時だけツイッターなどでの連動企画などを試みるが、こんな事件が起きると、突き放す。ツイッターやフェイスブックやLINEといったSNSに、メディアが過剰反応している気がする。

  • この放送日に限らず毎日なのだが、出演者がマイクを気にすることなく、咳をしている場面が不愉快でならない。全国放送でこのような不快な音を聞くことはないように思うのだが、配慮の問題なのだろうか。それとも技術的な問題なのだろうか。

  • 人気アイドルグループのじゃんけん大会が放送された。歌を歌うことがメインのアイドルが延々とじゃんけんをするだけの番組は放送する意味があるのか。じゃんけんという運任せの競技で、同じ手ばかり出し続けて勝つことは何万分の一の確率だろう。ましてや有名なメンバーが優勝することは、ほぼ奇跡に近いだろう。もしヤラセだとしたら、余計に長い時間を割いてまで放送するものではない。次回同じ大会があるのなら、せめて放送だけはやめていただきたい。

  • 過去の殺人事件を取り上げていたが、被害者女性を「美人姉妹」と銘打って顔写真を出した上で、「性的暴行」という言葉を繰り返し、スキャンダラスに伝えていた。被害者のご家族や関係者が見ていたらどう感じただろうか。死んだ人間に配慮は不要なのか、甚だ疑問だ。過去の事件を振り返ったり、追跡報道する意義は大きいと思うが、せめて顔写真は使用しないという選択肢はなかったのか。

  • SNSに芸能人の来店情報などが投稿され、プライバシーが侵害されたという報道がされているが、普段芸能人などの言動を根掘り葉掘り詮索しているワイドショーが他人に言える立場であろうか。他人にマナーを求める報道をされても説得力がない。マスコミに言われたくない。

  • スポーツ中継にお笑いタレントやアイドルグループが起用される傾向がある。近頃ではニュース番組にも顔を出す。さすがにニュース原稿を読ませてはいないが、彼らを起用する意図が理解できない。プロのアナウンサーよりも、タレントの言葉の方が政治、経済、事件、事故のニュースで重みがあるとでもいうのか。視聴率至上主義に毒されていないのだろうか。

【ラジオ】

  • コメンテーターがコンビニで酒、タバコを購入する際に、客に年令確認のボタンを押すことを求められることについて、「おもてなしの心に反するやり方だ」「このようなことをやっているのは日本だけで外国に対して恥ずかしい」と述べた。年令確認は法律に基づいたルールだ。法令順守の立場から見て、どうしてこのような発言を許したのか、局の考えを聞きたい。それらの購入の際に身分証明書の提示を求められることは当然のことだ。外国について分かったようなことを言うべきではない。

  • パーソナリティーの若者批判が目立つ。根性論から来る批判が多い。「今時の若者は根性がない」「会社も直ぐに辞める」「体力が無い」と、論拠のない決めつけを述べている。また番組はメールを募りながら、読まれる数が少ない。面白いメールや感動したメールに1万円をプレゼントしているが、何を基準に現金をプレゼントしているのか。

  • 職場では、朝からラジオをかけながら仕事をしている。穏やかな内容の番組ならいいのだが、ある番組は、下ネタばかりで、放送が始まると職場が凍り付いてしまう。仕事の手を止めてダイヤルを替えることも非効率なため我慢しているが、苦痛だ。深夜番組ならいざ知らず、夕方の時間帯の番組として下ネタはやめるべきだ。

【CM】

  • 最近のCMで、細かい字の注意書きが短い時間表示されることが気になる。デジタル化で細かい字の表示が可能になったこともあると思うが、録画して静止でもさせないと確認できない画面表示はとても不誠実だ。普通に見ていて読めない注意書きを表示することは規制してもらいたい。文字の大きさや、文字数と表示時間の関係など規定してほしい。

  • 同じ時期に同一のタレントをCMで起用しているのでタレントは覚えるが、CMの商品やサービス、会社名が全く記憶に残らない。何故スポンサーはそれを許しているのだろうか。商品名が記憶に残らないCMなど意味がないではないか。最近ではある女優をよく見かけるが、彼女のイメージビデオを見ているかのようだ。以前は違う若手女優が出ていて、売り出し用ビデオを見ているかのようだった。同じタレントのCMは記憶に残らない。

青少年に関する意見

【委員会に関する意見】

  • 何でもかんでも審議等に持ち込み過ぎだ。面白味のない番組ばかりになってしまう。「テレビの影響でいじめ等が起こる」などと言われているが、確かに100%ないかと言われればそうではないが、そのような行動を起こす子どもはテレビの影響より親や学校の教育に問題がある。

  • "生爆烈お父さん"をBPOで審議するそうだが、審議するほどの案件とは思えない。蹴られたアイドルも納得の上の演出で、一部の熱狂的ファンが騒ぎ立てているだけだ。

  • "生爆烈お父さん"で、男性タレントが女性アイドルグループのメンバーに、両足を持って振り回すプロレス技をかけた後、頭を踏んだり蹴ったりする場面が複数回あったが、同じ世代の子を持つ親として憤りを感じる。あれが面白いネタだという意見もあるが、そのようなことは断じて許されてはいけない。委員会には毅然とした態度で臨んでいただくことを切に望む。あれほど不快感を覚えた番組はない。

  • 男性タレントが女性アイドルの頭を足で蹴ったことは、テレビでは絶対にやっていけない。私も、親には人の頭や顔を蹴ってはいけないと強く言われた。しかも、男が女の人の頭を蹴るなんてもってのほかだ。あんなことを平気で簡単にやっていては、子ども達の教育に良くない。いじめにもつながるのではないか。

  • 顔を蹴ることは決していいことではないと思う。しかし、最近のバラエティー番組は笑う部分が減っている。それは芸人や出演者のせいではなく、社会が「あれはダメこれもダメ」と様々な規則や社会的意見を優先するようになったからだと思う。実際に番組は盛り上がったし、面白かったという人も沢山いると思う。顔を蹴ることはしてほしくない。しかし、これだけで番組やコーナーを打ち切ることはやめてほしい。せめて、生放送を中止してほしい。

【報道・情報に関する意見】

  • 登校児童に車が突っ込み、負傷者が出た事故に巻き込まれ、心身傷ついていると思われる子どもへ、事故当日にインタビューする姿勢は異常と言わざるを得ない。事故のショックも癒えず、恐怖におののいているであろうに、子どもを守るべき大人が、子どもの心に土足で入り込むとは言語道断だ。PTSDにでもなったら、マスコミはどう責任を取るのか。無責任な報道この上ない。

  • 集団登校事故の報道など、多くの番組で小学生にインタビューを行っている場面を目にする。これはデリカシーに欠けた行為なのではないか。学校側や保護者が子どもの心のケアなどを考えていたとしても、インタビューでそのことを思い出して話しているとすれば、それは無意味になるのではないか。何より子どもに話させていることが気になる。

  • 未成年者に対する取材が多すぎるような気がする。学校の暴力やいじめによる自殺は仕方がないかもしれないが、行方不明者が遺体で発見された際の同級生への取材や交通事故の被害者、その周囲の児童等に取材することは控えるべきではないか。いじめによると思われる自殺が多発し児童に取材機会が増える中で、保護の概念が崩れてきているのではないか。

  • 有名人の自殺報道は行き過ぎだ。有名歌手の母親で元歌手ではあるが、今は芸能活動をしていない一般人だ。いじめ自殺が増加する今、過剰に自殺報道すると、青少年の自殺を助長する恐れがある。

【食べ物に関する意見】

  • 朝食時という設定のコントの中で、お味噌汁や納豆に入れた靴下を箸でつまんで持ち上げ、それを身につけて笑いを取っていた。笑いを取るための手段として食べ物を使うなど言語道断、センスの無さに呆れ果てる。子ども達にも人気のある番組だ。テレビの影響力を考え、健全な笑いを取れる番組にしてもらいたい。

  • 「大食い」「早食い」は食べ物を粗末にしているようにしか見えず、子どもにも悪影響だと思われます。こうした番組の放送を終了するか、子どもが見ない時間帯(深夜等)に放送すべきです。

第74回 放送倫理検証委員会

第74回–2013年9月

参院選関連2番組を一括して審議入り
(1)関西テレビ『スーパーニュースアンカー』
(2)テレビ熊本『百識王』

「弁護士紹介の被害者は"関係者"」審議入り 
日本テレビ『スッキリ!!』

8月2日に意見書を通知・公表した関西テレビの「インタビュー映像偽装」事案について、当日の報道等の反応を確認し、若干の意見交換を行った。
7月に実施された参議院選挙に関連する2つの番組について、放送の公平・公正性の観点から議論が交わされた。関西テレビのニュース番組は、ネット選挙解禁に関する特集企画で特定の比例代表立候補予定者だけを紹介し、しかも参院選の公示予定日の1か月前を切った時点で放送した。テレビ熊本が投票日当日に放送したバラエティー番組には、比例代表候補者がVTR出演していた。委員会では、選挙の公平・公正性を守るよう要請した3年前の意見書や今年4月の委員長コメントの趣旨が活かされなかったことが指摘され、一括して審議の対象とすることになった。
日本テレビの情報番組で詐欺事件の被害者として放送された人物が、被害者ではなく、番組に出演した弁護士が所属していた法律事務所の事務員だった。委員会は、番組のスタッフが弁護士の紹介というだけで必要な裏付け取材を怠ったことについて、審議することとした。

議事の詳細

日時
2013年9月13日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

1.関西テレビの『スーパーニュースアンカー』「インタビュー映像偽装」に関する意見を、通知・公表

関西テレビのローカル報道番組『スーパーニュースアンカー』の特集企画で、大阪市職員の兼業について証言した情報提供者の映像を取材スタッフを使って偽装し、新聞報道で発覚するまで3か月余りも視聴者に説明していなかったとして、審議入りした事案。
8月2日、当該局に対して意見(委員会決定第16号)を通知し、続いて公表の記者会見を行った。事務局からの報告のあと、当該局の対応、当日のテレビニュースや新聞記事等の反応を確認しながら意見交換を行った。また、担当委員を講師として当該局で開かれた研修会について、委員からの報告があった。

2.関西テレビのニュース番組のネット選挙特集企画で、特定の比例代表立候補予定者だけを紹介

関西テレビが6月10日の夕方に放送したローカルニュース番組『スーパーニュースアンカー』で、7月の参議院選挙から解禁されるインターネットでの選挙運動を特集企画として取り上げた。この中で、候補者サイドの取り組みの例として、自民党から比例代表選挙の立候補予定者になっていた太田房江元大阪府知事を、インタビューを交えて約2分間紹介した。
民放連の放送基準第12項は、「選挙事前運動の疑いがあるものは取り扱わない」と規定し、その解説文のなかで、公示(告示)の1か月前を目安とするよう指摘している。参議院選挙の公示予定日の7月4日まで、すでに1か月足らずとなっていた。放送後、当該局の報道局内部から疑問の声があがり、1週間後の同番組内でお詫び放送を行った。
委員会では、民主主義の根幹である選挙について、放送の公平・公正性の確保に努めるよう、3年前に出した「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」(委員会決定第9号)や、今年4月に公表した委員長コメントなどで繰り返し指摘してきた。しかし、それが放送現場に十分浸透していないことが明らかになったことから、審議の対象とすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • ネット選挙の解禁をわかりやすく、面白く伝えようとするあまり、選挙に関する報道は公平公正にやるべきだという基本中の基本が、いつの間にか忘れられていたのではないか。

  • 3年前の意見書では、当該局だけでなく、各局でも参考にして役立ててほしいとの思いから、選挙の意義まで丁寧に記載している。それにもかかわらず同様なミスが繰り返されるということは、第三者機関として当委員会が活動してきたことが、役立っていないということになるのではないか。

  • 選挙の取材をするなら、まずは選挙の仕組みをきちんと勉強してほしい。記者のレベルが低下しているということなのだろうか。

  • 企画の提案から取材・編集の過程で、放送の公平・公正性に問題があることを誰ひとり指摘せず、放送されてしまったことは何を示しているのか。報道の現場で何の議論もなかったとしたら、問題は深刻だ。

  • 問題は、放送が公示日の1か月前を越えるかどうかではなく、放送基準でいう「選挙事前運動の疑いがあるものは取り扱わない」に抵触するかどうかという原則が、きちんと理解されていないことにある。マニュアル的に、公示日まで1か月程度ならいいだろうという思考方法では困る。

  • 同じような過ちが繰り返されることを心配して、参議院選挙を前にした今年4月に「委員長コメント」を出して注意喚起をおこなったのに、全く活かされていないことが残念でならない。

  • テレビは影響力が強いのだから、選挙の公平性を保つためには、もっと細心の注意を払わなければいけないという感覚をもってほしい。

3.テレビ熊本が参院選投票日に放送したバラエティー番組に、比例代表選挙の特定候補者がVTR出演

テレビ熊本は、参議院選挙投票日(7月21日)の午前9時30分から10時まで放送したバラエティー番組『百識王』で、各界の著名人たちのユニークな手帳活用法を紹介したが、この中に、自民党の比例代表選挙候補者の渡邉美樹氏が約2分間VTR出演していた。
この番組はフジテレビが制作したもので、関東エリアでは、渡邉氏が立候補表明をする前の4月16日に放送された。この番組を購入したテレビ熊本は、放送前に担当者がチェックしたが、渡邉氏が候補者であることに気がつかなかった。候補者の情報は報道セクションでは把握されていたが、全社的な情報共有はされていなかったという。
委員会は、この事案についても、放送の公平・公正性が確保されていなかったとして、関西テレビの事案と一括して審議の対象とすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • 民主主義の根幹をなす選挙、とりわけ国政選挙について、放送局の人間である以上は、報道セクションに直接関係していなくても、どの政党からどんな候補者が立候補しているかの情報は知っておく必要があるのではないだろうか。

  • 話題になった候補者のひとりだから、きちんとテレビや新聞に目を通していれば、報道以外の人であってもチェックできたと思うのだが。

  • この番組は、何年間も東京より3か月遅れで放送しているとのことだが、今の時代に3か月も時期がずれると、番組のテーマや、出演者の服装・季節感などに違和感はないのだろうか。

  • キー局の放送から3か月後の放送となったのは当該局の事情であり、番組を制作して販売したキー局には責任はないと考えるべきだろう。

4.日本テレビの情報番組が特集した詐欺事件の被害者は、同じ番組に出演した弁護士の法律事務所の事務員

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』が、昨年(2012年)2回にわたりインターネット詐欺を特集した際、その被害者として出演し、詐欺の手口や被害の実態などを語った男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演した弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だった。
昨年の2月29日放送の「悪質出会い系サイトの実態」には女性の被害者が、6月1日放送の「サクラサイト商法に注意」には男性の被害者が、顔を出さずに声も変えて登場した。この2つの特集は、別のディレクターが担当したが、いずれもこの番組に出演した同じ弁護士からの紹介だったため信用して、裏づけ取材や、人物の身元確認をきちんとしないまま出演させていた。
被害者として取材を受けた2人の話す内容が、具体的で詳細だったため、番組のほかのスタッフも被害者ではないことに気付かないまま放送してしまったという。
今年の7月になって、出版社からの取材があり、日本テレビ側が弁護士に面談して確認したところ、弁護士は虚偽の紹介をした事実を認めて謝罪した。日本テレビは7月19日、放送の誤りを認め、詳細なお詫び放送を行った。
委員会は、真の被害者ではない別人を、ただ弁護士の紹介だけで信用し、必要な裏づけ取材を怠り、しかも2回にわたって放送したことは放送倫理上問題があるとして、審議の対象とすることにした。

【委員の主な意見】

  • 取材が容易ではないテーマの専門家を探すとき、安易にネットでの検索や知人からの紹介に頼っており、取材者としての基本を知らなすぎる。

  • 専門家を探すように指示した現場の上司は、具体的にどのような指導をしたのか。指導の役割をきちんと果たせる人はいるのだろうか。

  • 専門的な分野について、専門知識に基づいて、一般の人にうまく説明できる適切な人物を探す能力、そのために人脈を形成しておく能力が欠けていると言えそうだが、現場の人にそれを求めるのは難しいのだろうか。

  • ある弁護士が信頼できるかどうかは、弁護士事務所のホームページがどのようなつくりになっているかが参考になる。過去の実績を誇示するなどして顧客を誘っている場合には、無条件に信用しないほうがいいかもしれない。まっとうな弁護士なら売り込みばかりのホームページは作らない。

  • 情報番組が扱える範囲というものを、もう少し考えてもいいのではないか。専門性が高い問題を扱うのは、制作現場の厳しい現実を考えると、ハードルが高すぎるのでは。

  • 弁護士は業務上、クライアントの本人確認をやらざるを得ないから、取材者は、被害者の身元について弁護士から十分確認できたはずである。しかし、そのチェックを怠っていたため、こうしたことになってしまった。

  • 過去にも類似した例があった。こうした問題が繰り返されるのは、特定の局に固有の問題なのか、それとも放送局全体に共通する問題なのか。

以上

2013年度 第51号

「大阪市長選関連報道への申立て」に関する委員会決定

2013年10月1日 放送局:朝日放送株式会社

勧告:放送倫理上重大な問題あり
本事案は、朝日放送が2012年2月の『ABCニュース』で放送した「大阪市交通局の労働組合が、去年の大阪市長選挙で『現職市長の支援に協力しなければ、不利益がある』と、職員を脅すように指示していた疑いが、独自の取材で明らかになりました」とのリードで始まるニュースについて、労働組合側が事実と異なる放送によって名誉や信用を毀損されたと訴えたもの。
放送人権委員会は審理の結果、10月1日に「委員会決定」を通知・公表し、「勧告」として本件放送には放送倫理上重大な問題があるとの判断を示した。

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2013年10月1日 第51号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第51号

申立人
大阪交通労働組合
A
被申立人
朝日放送株式会社
苦情の対象となった番組
『ABCニュース』(月~金 午前11時35分~42分)
放送日時
2012年2月6日(月)の上記番組内の1分37秒のニュース

【決定の概要】

1.朝日放送は、2012年2月6日の『ABCニュース』で、「大阪市交通局の労働組合が、去年の大阪市長選挙で『現職市長の支援に協力しなければ、不利益がある』と、職員を脅すように指示していた疑いが、独自の取材で明らかになりました」とのリードのニュースを「スクープ」として放送した。ニュースでは、「朝日放送が独自に入手した紹介カードの回収リスト」を映像で示し、内部告発者が、「やくざと言ってもいいくらいの団体だと思っています」と匿名映像で語っている。
2.本件の申立人は、大阪交通労働組合という団体である。このため、委員会は、個人による申立てを原則とする本委員会運営規則に照らし、審理入りの是非について検討した。その結果、労働組合が個々の労働者の権利・利益の確保を主眼とする、各労働者の集合としての性格が強い団体であること、また、本件放送は、組合及び組合員個人らの信用や名誉・名誉感情等の権利利益に対して深刻な影響を及ぼすおそれがある内容を含むものであることから、当委員会の過去の判断をふまえ、本件申立てについては救済を検討する必要性が高く、委員会において権利侵害や放送倫理上の問題の有無について審理することが相当であると判断した。
3.本件放送による権利侵害の有無について、委員会は次のように判断した。
本件放送の内容について、朝日放送は、申立人が選挙への協力を強要したとの「疑惑」あるいはこの疑惑を追及する市議会議員の活動を報じるものであると主張する。
しかし、協力を強要する文章が書かれた「回収リスト」について断定的に報じ、放送冒頭で「朝日放送のスクープです」と強調するなど、一般的な視聴者からすれば、本件報道は、申立人が非協力的な組合員を威圧し、選挙への協力を強要し、内部告発者が発した「やくざと言ってもいいくらいの団体だと思っています」とのコメントを伝えるものと受け止めよう。
本件放送は、申立人の社会的信用・評価を低下させるものである。本件放送には、公共性、公益性は認められるが、主要な部分において真実ではなく、また、放送の時点で真実であると考えたことについて相当の理由も認められない。すなわち、本件放送で報じられた「非協力的な組合員がいた場合は、今後、不利益になることを本人に伝える」との指示が書かれた回収リストは、ねつ造されたものであった。また、報道にあたって申立人に対する取材を行っておらず、取材を行わなかったことの理由も薄弱である。
その一方、回収リストの真偽については、朝日放送もその後の報道においてねつ造であることを報じている。本件放送によってもたらされた申立人の社会的評価の低下は、一定程度、回復されているとみることもできる。
4.しかしながら、本件放送には、放送倫理上の重大な問題がある。本件放送は、「スクープ」として疑惑を真実であるかのように断定的に報じ、さらに「やくざ」という強い表現で論評を行ったものである。そして、すでに述べたように、それは申立人への取材もないままに行われた。本件放送は、「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」とうたう放送倫理基本綱領(NHK・民放連)に違背し、正確・公正な報道を求める「日本民間放送連盟 報道指針」の「2 報道姿勢」に反するものである。
委員会は、朝日放送に対し、本決定の主旨を放送するとともに、スクープ報道における取材や表現のあり方、主要な事実が真実に反すると判明した場合の対応について社内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.本件申立てについて
  • 2.本件放送は何を報じたか
  • 3.本件放送により、申立人の社会的信用ないし評価が低下したか
  • 4.本件放送に公共性、公益性、真実性・真実相当性が認められるか
  • 5.放送倫理上の問題

III.結論

IV.放送内容

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2013年10月1日 決定の通知と、公表の記者会見

放送人権委員会は10月1日に、上記事案についての「委員会決定」の通知・公表を行い、本件放送について「放送倫理上重大な問題がある」として、朝日放送に再発防止を「勧告」した。
詳細はこちら。

2013年12月24日 朝日放送「放送人権委員会決定後の取り組みについて」

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2014年2月21日 報告に対する放送人権委員会の「意見」

放送人権委員会は、今回、上記の朝日放送の報告に対して「意見」を述べました。

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