第173回 放送倫理検証委員会

第173回–2022年7月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第173回放送倫理検証委員会は7月8日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年7月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から6月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再び、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 6月に寄せられた視聴者意見を議論

6月に寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組で参院選に向けた党首討論がなされた際の司会役の進行や、情報番組で前日の緊急地震速報を繰り返し使用したことに批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告したが、踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

第172回 放送倫理検証委員会

第172回–2022年6月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

第172回放送倫理検証委員会は6月10日に千代田放送会館で開催された。
毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話が6月2日に公表され、その概要が報告された。
委員会が3月9日に通知・公表したテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年6月10日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. 毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話の公表を報告

毎日放送が2022年元日に放送したバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』について、5月の第171回委員会では、放送局としての自律的な自浄作用が機能しているとの一定の評価を行うとともに、質的公平性について踏み込むことは政治ジャーナリズムの足かせになる可能性があることを考え、紙一重のところで審議入りはしないとの結論に至った。その上で、当該番組に問題がなかったと誤解されるおそれもあることから討議入りとし、6月2日、委員長談話をBPOウェブサイトに公表した。
今回の委員会では、小町谷委員長から公表についての報告が行われ、事務局からは毎日放送のチェック体制の強化策など対応が説明された。

2. テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

3月9日に通知・公表したテレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見(委員会決定第42号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を社内に周知徹底した上で、社内各部署の危機管理担当者で構成される「放送倫理関連委員会」において、放送倫理違反があった点と、本件放送の5つの問題点についての説明が行われ、全社的な共有をしたことや、検証委員会の委員を招いて勉強会を開催したことなどが記されている。また再発防止に向けて、番組全般の管理の強化や、中堅、ベテラン向けの報道倫理研修を行い、「放送倫理ホットライン」を設置したことと共に、制作会社のテレビ朝日映像における再発防止策などが報告されている。
委員からは、再発防止に向けて「管理の強化」や「徹底的なチェック」などが挙げられているが、それ以前に放送ジャーナリストとしての基本的な確認作業を怠らないようにすべきだとの意見が出されたものの、委員会の意図するところはくまれているとして、報告を了承し、公表することにした。
テレビ朝日の対応報告は、こちら(PDFファイル)

3. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が出され、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から5月までの委員会において、担当委員からヒアリングに関する報告に続き、意見書の原案が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、追加で実施した当該番組の関係者に対するヒアリングの内容が報告された。その上で、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再度、意見書の修正案が提出される予定である。

4. 5月に寄せられた視聴者意見を議論

5月に寄せられた視聴者意見のうち、知床観光船事故で犠牲になった男性がプロポーズの手紙をしたためていたことを放送したことについてプライバシーの侵害だと指摘する意見や、人気お笑い芸人の死去に関する報道がWHOの「自殺報道ガイドライン」に反していたと指摘する意見が、それぞれ複数あったことについて、事務局から概要が報告されたが、さらに踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

委員長談話

毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』について

2022年6月2日
放送倫理検証委員会
委員長 小町谷 育子

 BPO放送倫理検証委員会は、毎日放送が2022年元日に放送した2時間のトークバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』(以下「本番組」という)に、政治的公平性を問題視する意見が視聴者から多数BPOに寄せられたことから、本番組について4回にわたり議論をしてきた。
 本番組では、司会のお笑いタレント2人が、3組のゲストとの間で順繰りにトークを行うという構成が取られていた。冒頭のゲスト1組が、松井一郎大阪市長、吉村洋文大阪府知事、弁護士でコメンテーターの橋下徹氏の3人だった。松井氏には日本維新の会代表、吉村氏には同副代表との肩書が付され、そこに日本維新の会前代表である橋下氏が加わることにより、同一政党の関係者が一堂に会した形となった。松井氏と橋下氏が吉村氏を挟んで並び、ボケとツッコミのような巧みな話術により笑いを取りながら、先の衆議院選における維新の躍進、文通費(文書通信交通滞在費)問題、将来の総理候補などの国政に関する政治問題や、大阪における新型コロナ対策、大阪万博、大阪都構想などの関西エリアの問題に関するトークが繰り広げられた。構成上、3人のトークは冒頭だけではなく最終パートでも流されており、3人がメインのゲストとして遇されている。
 委員会は、本番組を収録したDVDを視聴するとともに、毎日放送がまとめた報告書および番組審議会の議事要旨などを参考にしながら、本番組が制作された経緯や放送後の対応を検討した。委員会の席上、委員から次々と意見が述べられた。

  • 報告書は、視聴率の追求を前面に打ち出すことで、今回の問題を政治的公平性の案件とはとらえていない、政治性はないということを述べているようだが、果たしてそのように評価してよいか。
  • 政治的な問題を取り扱った番組としては量的公平性を著しく損なっている事案といえるが、それを質的公平性により補正し政治的公平性を保っているといえるか。番組側が日本維新の会の政治的主張に対する批判や反論を投げかけたりしていない以上、質的公平性も損なわれている可能性がある。
  • 収録番組で編成等の目を通っているはずで、バランスを取る編集も十分可能であったのに、そのまま放送に至ったのは、毎日放送のガバナンスに問題があるのではないか。
  • 報道、教養、教育、娯楽など各ジャンルの調和を保つことを求める番組調和原則があるが、多くの番組が特定のジャンルに分類することが難しくなっている現状を踏まえると、バラエティー番組だから政治的公平性は緩くても大丈夫という言い訳はもはや通用しない。
  • 番組を収録した以上、放送しなければならないという考えがあったとすれば、放送倫理違反など問題がある番組にストップをかけられなくなりかねず深刻な事態だ。
  • 政党政治家と公権力担当者の区別を曖昧にすることにより、行政の施策を府知事・市長が説明する形を取って、政党の言いたいことを言わせてしまっている。局は視聴者の知る権利に応えるために番組を制作すべきであり、誰の声を聴いて番組を制作しているのかわからない。
  • 政策トークの中に特定の政党名がふんだんに盛り込まれている。にもかかわらず、番組進行はただ面白く盛り上げているだけで、そのまま放送するようなことが許されていいのだろうか。
  • 局の他番組を精査した場合、果たして放送局全体で政治的公平性が保たれているのだろうか。放送、編成の実態も含めた判断が必要だ。

 委員のこれらの意見は、個別に述べられたものであるが、委員会の総意として共有のできるものであった。
 討議の結果、委員会は、全員一致の結論として、次の2つの理由から紙一重のところで本番組について審議入りを見送ることとした。
 第一に、テレビ放送における政治的公平性で問われるのは量的公平性ではなく質的公平性である(選挙報道・評論について述べたものとして「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」委員会決定第25号)。量的公平性を厳密に追求すると質的公平性がかえって損なわれる可能性があるとともに、放送ジャーナリズムの意義が形式化するおそれがある。質的公平性に十全に配意して番組制作がなされれば、たとえ量的公平性を損なっている部分があるとしても、政治的公平性を保つことができるはずである。しかし、本番組の制作過程で、質的公平性の確保に向けて、番組の構成を綿密に検討したり、トークの内容に創意工夫を尽くしたりした形跡はうかがわれない。非常に問題のある番組といえるのだが、委員会が審議し意見書を公表すれば、放送局が政治問題を伝えるにあたって質的公平性を追求する際の足かせになるおそれがあることを懸念した。
 第二は、放送後の対応である。本番組放送直後に開かれた番組審議会は、バラエティー番組の方が影響力は大きいこと、出演者が政治的な影響力を持っていることに制作者が鈍感であることなどを厳しく指摘し、維新の政策の取り上げ方、スタジオトークを出演者任せにした手法、毎日放送の番組全体で政治的公平性が取れていると局が考えたことなどに疑問を呈していた。委員会とは役割が異なるものの、番組審議会の意見は委員会も賛同ができるところである。そして、専務取締役をリーダーとして立ち上げられた調査チームが速やかに自主的な調査を行い、再発防止のための活動も始まっている。したがって、局の自律的な自浄作用が理想的な形で働いたと一定の評価ができる。
 以上が委員会が審議入りをしない判断に落ち着いた理由である。しかし一方で、審議入りしないという結論だけが独り歩きし、本番組に垣間見えた問題点が放送界に共有されないことを委員会は危惧する。そこで、各放送局の番組制作において参考にしてもらうために、以下の2点を指摘することとした。

①視聴率重視から生じる懸念
 まず、委員会が着目したのは、視聴率重視によるキャスティングが相次ぐことにより政治的公平性を損なうおそれがある点である。
 本番組で3人がキャスティングされた理由の一つは、松井氏、吉村氏が過去に出演したコーナーの視聴率が高かったことから、高視聴率が取れるのではないかと期待したからだという。新型コロナの感染拡大で、大阪府知事と大阪市長はコロナ対策の陣頭指揮を執るリーダーとしてテレビに出演する機会が格段に増えた。大阪の視聴者にとって、2人は名前も顔も良く知られた話題性のある政治家ということになる。彼らが話術に長けたタレント性を併せ持っていることもあって、視聴率を追求するならば、大阪の放送局では、日々のニュース以外でも日本維新の会の政治家を出演させる割合が高まる可能性がある。そこに党派的に偏った番組制作がなされる危うさがあるのだ。
 有権者に対する影響がより広範囲に及ぶ全国放送ではどうか。政治に関する番組を視聴率重視で制作するならば、テレビで取り上げられる機会が多くなじみのある政治家、すなわち大阪と同様に話題性のある政治家が視聴率の取れる出演者として選ばれることになるのではないか。それでは、特定の政党の政治家のみが取り上げられるおそれを払拭できない。 
 こうした視聴率重視のキャスティングが各番組でなされた場合、全体として政治的公平性を保つことは難しくなるといえる。
 番組ジャンル間の境界が曖昧になる中、バラエティー番組では、こと政治問題を取り上げるに限っては、視聴率重視によるキャスティングが適切であるかどうかは、今一度見直す必要がある。加えて、情報と娯楽が混在しているニュース番組や情報番組において、視聴率を偏重すれば本番組と同様のことが起きかねないことにも留意してほしい。
 さらに、視聴率にとらわれると、コメンテーター等の出演者の意見が過激になり、面白さを求めるあまり情報が偏り、結果として誤った印象を視聴者に与えることがありうるのではないか。政治に関する番組でそうしたことが起きた場合の悪影響はいうまでもないだろう。本番組はその最たる例になっているのではないかと、委員会は憂慮する。

②異なる視点の不提示と質的公平性
 次に、委員会が指摘したいのは、本番組が行政を担っている政党の政策について何ら異なる視点を提示しておらず、質的公平性を欠いているのではないかという点である。
 たとえば、新型コロナ対策については、行政における数々の実績が紹介される一方、その影で昨年5月以降、人口あたりの新型コロナ死者数が全国で一番高い水準で推移していたことなど、対策の評価にとって不都合な事実は紹介されていない。その他の事項についても日本維新の会の政策に対して、異なる観点から質問をしたり、反論、異論が出されたりすることはなく、同党の政策が一方的に肯定的に流される結果になったきらいがある。これでは、質的公平性をできる限り確保するために、局が自主性を発揮してさまざまな創意工夫をこらしたと見ることは困難だろう。
 もっとも、こうした事態は、バラエティー番組の本番組に限ったことではないかもしれない。政治家の記者会見や取材において、相手の嫌がる問題を取り上げたり、困らせる質問をしたりすれば、政治家を不愉快にさせ、怒らせ、ひいては将来の取材に支障をきたすのではないかと自粛、抑制、萎縮してしまっていないだろうか。それでは、メディアは、政治家の主張を紹介するだけの導管になってしまいかねない。
 政策を多角的に検討して、そのプラスとマイナスを十分に掘り下げることによって、視聴者はより広くより深く政策を理解することができ、その是非の判断もなし得るのである。質的公平性を担保するためには、異なる視点の提示が欠かせないことを忘れてほしくない。
 大切なのは、視聴者の側に立って、放送に至るまで、放送局が政治的公平性について真剣に議論をした上で番組を制作したのかということである。その鋭意な努力を欠いた放送番組によって一番不利益を受けるのは、偏った情報を受け取ることになる視聴者である。

 政治をめぐる放送において視聴率偏重の人選がなされていないか、異なる視点の提示がないなど質的公平性が担保されていない番組が制作されていないか。今回の問題をきっかけに各放送局において改めて確認をしてもらいたい。

 今夏には参議院議員選挙が予定されており、積極的な政治報道が望まれるところである。民主主義社会においては、政治に関する情報は党派に偏ることなく主権者に対し潤沢に伝えられるべきであり、委員会は、各放送局が、政治的公平性に配慮しながら、有権者のために政治に関する情報を分かりやすく多角的に伝える放送を行うことを期待している。

以上

委員長談話全文(PDF)pdf

第171回 放送倫理検証委員会

第171回–2022年5月

毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』を討議

第171回放送倫理検証委員会は5月13日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、当該番組の関係者に対して行ったヒアリング等を踏まえ、担当委員から意見書の原案が提出された。
毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』に同じ政党の関係者3人が出演し政治的な課題などについて見解を語ったことについて議論を行った結果、討議入りとし委員長談話を公表することを決めた。

議事の詳細

日時
2022年5月13日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。
放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、当該局から提出された報告書やヒアリングの内容を基に前回の委員会で交わされた意見を踏まえ、担当委員が作成した意見書の原案が示され、議論が行われた。
次回の委員会では、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』について討議

毎日放送は2022年元日、バラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』を放送した。番組ゲストとして、弁護士・コメンテーターの橋下徹氏と日本維新の会代表・大阪市長の松井一郎氏、日本維新の会副代表・大阪府知事の吉村洋文氏が出演し、MCのタレント2人と「今の政治&大阪の未来は!?」をテーマに、番組内で計1時間程度トークを展開する内容であった。
放送後BPOには、「まるで維新の会の宣伝にしか見えない」「一特定政党だけをヨイショする番組」など、視聴者から批判的な意見が多数寄せられた。また1月11日に開催された当該局の番組審議会では、委員から「政治的なバランスに欠ける」「バラエティー番組に政治家を招くことに対する認識が欠如している」などの意見が出された。
これを受けて毎日放送は社内に調査チームを立ち上げ、関係者に対するヒアリングを行って事実関係を明らかにするとともに、全社研修やチェック体制の強化など再発防止に向けた取り組み状況を3月1日の番組審議会に報告した。
委員会は、当該局の一連の取り組みについて、放送局としての自律的な自浄作用が機能しているとの一定の評価を行うとともに、質的公平性について踏み込むことは政治ジャーナリズムの足かせになる可能性があることを考え、紙一重のところで審議入りはしないこととした。一方で、問題がなかったと誤解されるおそれもあることから討議入りとし、政治問題や政治家に関する番組を制作する際の留意点などを委員長談話として公表することを決めた。
委員長談話は、こちら。

3. 4月に寄せられた視聴者意見について議論

4月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組でのウクライナ情勢に関するインタビューの字幕が不正確といった指摘や知床の遊覧船沈没事故での不適切な取材のあり方、また、今夏に予定される参議院選挙に関連した放送に対する批判的意見などが事務局から報告され議論を行った。

以上

第170回 放送倫理検証委員会

第170回–2022年4月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第170回放送倫理検証委員会は4月8日に千代田放送会館で開催された。
字幕の内容に誤りがあったとされるNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、2月の委員会で審議入りが決まったことを受け、今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告され、事実関係について共有し議論を行った。
民放局のバラエティー番組に、同じ政党の幹部3人が出演し政治的な課題などについて見解を語ったことについて、当該放送局から提出された全社研修など事後対応についての報告書を踏まえ議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年4月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。 放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。 2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。 今回の委員会では、これまでに当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告され、委員の間で事実関係を共有し議論を行った。 次回の委員会では、今後行われるヒアリングの概要が報告され、意見書の原案が提出される見通しである。

2. 同じ政党の幹部がそろって出演した民放局バラエティー番組について議論

元日に放送された民放局のバラエティー番組に同じ政党の幹部3人が出演し、政治的な課題などについて見解を語ったことについて、視聴者から政治的公平性を問題視する意見がBPOに寄せられた。先月の委員会では、当該放送局から社内の調査チームがまとめた報告書とそれをもとに行われた番組審議会の議事録要旨が提出され、議論が行われた。今回は、当該放送局から全社研修の実施や番組内容を確認し助言する体制を強化することなど、事後対応の進捗状況について報告書が提出された。これらを受けて委員会では、放送における政治的公平性についてどのような形で意見表明をすべきか等について意見が交わされ、さらに検討が必要であるとして議論を継続することとした。 

3. 3月に寄せられた視聴者意見を議論

3月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、民放放送局の深夜のバラエティー番組(生放送)で、女性の身体的特徴に関する発言や差別的な表現等が放送されたことに対し批判的意見が多数寄せられたことについて、事務局から概要が報告され議論したが、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの結論には至らなかった。

以上

2022年1月21日

差別問題をテーマに「意見交換会」を開催

放送倫理検証委員会と全国の放送局との意見交換会が、2022年1月21日千代田放送会館2階大ホールで開催され、事前に申し込みのあった放送局には双方向のオンライン配信を同時に実施した。放送局の参加者は、会場に15社19人、配信にて参加したのは 152社で、そのアカウント数は367件であった。委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、井桁大介委員、米倉律委員の5人が出席した。コロナ禍の影響を受けて2021年度に放送倫理検証委員会が意見交換会を開くのは今回限りで、オンライン配信を利用して全国を対象に実施したのは前年度に引き続いてのことである。

開会にあたり、BPO事務局を代表して大日向雅美理事長が「この意見交換会は、放送局の皆さまが抱いている疑問をBPOに直接ぶつける場となっている。BPOにとっても皆さまの本音を伺う貴重な機会だ。今回は、差別問題に関連する放送上の留意事項をテーマとして取り上げる。近年放送を取り巻く環境は大きく様変わりをし、人権問題や差別に関わる問題に対して社会の厳しい目が注がれるようになった。権利意識の高まりやインターネットの普及を背景に、今まで声を上げられなかった人たちが批判の声を上げるようになったためだと考えられる。今日は、差別に関連する問題や放送上の悩み、対処方法など実例を交えながら議論し、お互いに学ぶところの多い意見交換会にしたいと思う」と挨拶した。

意見交換会の最初は、前年7月21日に公表した「第41号日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見」と題した意見書について、以下のとおり、高田昌幸委員長代行が解説した。

日本テレビは、午前中の情報番組『スッキリ』で、毎週金曜日の番組終了間際に2分間程度「スッキりすの週末オススメHuluッス」のコーナーを放送し、系列の動画配信サイト Huluのお薦めの作品などを1本紹介していたが、そのコーナーで2021年3月12日問題が起きた。
普段このコーナーではドラマとか映画とかが紹介されていたが、この日紹介されたのは『Future is MINE -アイヌ、私の声-』という、各界の評価が高い35分間のドキュメンタリー作品だった。内容は、アイヌ民族の人がどうやって差別を克服しながら新しい自分を見出していくかというものだ。コーナーの前半で作品そのものが紹介された後、画面がスタジオに切り替わり、リスの着ぐるみを着た男性タレントが、定番の締めの言葉を「ここで謎かけをひとつ。この作品とかけまして、動物を見つけた時ととく。その心は、あ、犬!ワンワンワンワンワン!」と発話する。このシーンには字幕がついており、「あ、犬」の言葉にはルビのような位置にカタカナで「ア、イヌ」という言葉が入っていた。さらに、「ワン」を5回繰り返す箇所では、画面左からアニメーションの犬が小走りに走って、画面中央に向けて駆けていく。最後に男性タレントが「この作品を見てアイヌの美しさを堪能しよう」と言葉を続け「というわけで、今週もお疲れした〜っす」と語ってコーナーを終えた。
番組終了後、日本テレビの系列局の札幌テレビには、道内の視聴者から抗議の電話が殺到したそうだ。日本テレビにも、これは問題ではないかという連絡が視聴者などから来た。
問題になったのは、このコーナーで男性タレントが発した「あ、犬」という言葉だった。この言葉の一体何が悪かったのか。ダジャレも言ってはいけないのか。あるいは単なる言葉遊びも許されないのだろうか。
一般的に、問題となる差別表現は、ある民族や社会集団などが、歴史的、構造的、時には制度的、法的なものも絡まって虐げられてきたという問題を背景としている。このことは、単なる快、不快ということとは区別して、押さえておかなければならない。
2016年の内閣官房「国民のアイヌに対する理解度についての意識調査」によると、アイヌの人に対する差別は今も存在しており、「アイヌに関して関心を深めるためにはどうしたらよいか」の問いに対しては、テレビ番組や新聞を利用した情報提供という答えが圧倒的に多かった。差別されている側の人たちは、放送には差別を無くすための機能があると期待している。今回の問題は、その前提があってこの放送が流れてしまったということだ。
委員会がヒアリングや資料を基に事実関係を精査したところ、このコーナーには専任で担当するディレクターが1人もおらず、他のコーナーと掛け持ちで担当していることが分った。内容がグループ会社の番組宣伝的なものだったこともあり、コーナー自体あまり重要視されておらず、大きな問題は起こらないだろうという思い込みが事前にあったのではないかという印象を持った。
コーナーの制作に関わった担当者やチェックしたプロデューサーに、アイヌ差別問題は何かということを、知っている人がほとんどいなかったことも大きな問題だと思った。北海道、厳密にいえば東北の一部も、ということになろうが、アイヌという人たちがいるということと、アイヌ民族差別があったということは何となく知っているが、それがどういうものであって、どういった形で行われており、今も続いているのかどうか、そういったことを誰も知らなかった。
コーナーのチェック体制は、チェックして問題がなければ担当者に誰も何も言わず、無言、無反応は了承だとする流れでずっと運用されていた。最終的に番組をチェックする責任の所在と、誰がどのタイミングでチェックしたのかが曖昧なまま流れていったということもあったのではないかと感じた。
以上の点を踏まえて、委員会としては、チェック体制が非常に隙だらけだったことから、今回の事態は起こるべくして起きたと受け止めた。
また、コーナーで紹介したドキュメンタリー作品は尺が35分間と比較的短かったのにもかかわらず、作品を視聴者に紹介する前に見たスタッフは1人しかおらず、放送内容に関する局側のこだわりの薄さを物語っていると感じた。制作現場の上の人は「もし自分が35分間のこの作品を見ていたら、この『あ、犬』の部分は絶対通さなかった。この番組の訴えている内容と、この『あ、犬』の表現が、いかにかけ離れているのかがよく分かったから。自分が見なかったことが悔やまれる」ということをおっしゃっていた。
現場のスタッフは差別する意図は全くなかったと語っていたが、意図があろうとなかろうと、差別的な事柄を電波に乗せてしまったという事実は厳然としてあり、それを拭い去ることはできないと委員会は判断した。放送倫理違反があったという結論になり、主に日本民間放送連盟の「放送基準」の(5)、(10)に反したと判断した。
日本テレビは、1994年に大型クイズ番組の中で、出演したお笑いタレントがアイヌ民族の集団舞踊「イヨマンテの夜」の曲を流しながら踊ってみせた際、アイヌ民族の尊厳を著しくおとしめ、差別を助長したという苦い経験がある。アイヌ関係の団体の方などから激しい抗議を受け当時は勉強会も開かれていたようだが、現在社内にはこの経験が継承されていないそうだ。だから私は今回の事態は過去の過ちの再発だったのではないかと考えている。
知識がないと有効な判断は働かない。特に差別問題に関しては、歴史的、構造的なことを前もってきちんと知っておくことが必要ではないか。差別というのは歴史的な経緯がある。歴史を知ることの重要性を改めてこの場で強調させていただきたい。そのうえで、差別される側の立場に立って、一瞬立ち止まってでもその番組を放送前に見つめ直すことができるかどうかが大切だと思う。

次に、米倉律委員が「差別問題と放送人としての“感度”」というテーマで講演をした。

今回の意見書では、放送人としての感度ということが、ある種のキーワードとして使われていた。その感度の問題について差別問題との関係で考えたい。
今回の話を初めて聞いたとき、私は、こういう差別表現が過去にあったことを知らない現場で、うっかりミスのような形で発生してしまった比較的シンプルな事案ではないかと感じていた。その後、関係者の方に話を伺うなかで、この問題は、今のテレビを取り巻く現状、具体的には、制作現場の複雑な分業化や人員の不足、制作現場の繁忙化、スタッフの疲弊といったさまざまな問題が反映された、かなり複雑な問題ではないかと考えるようになった。昨今、価値観の多様化、グローバル化が進み、差別問題も非常に複雑化、多様化している。引いた目で見ると、テレビと社会との関係性や距離感が問われている問題でもあるのではないかと考えている。
高田委員長代行の話にあったように、制作現場の方々は、アイヌ民族の人々を犬という形で例える差別表現が過去に実際にあったことを誰も知らなかった。実を言うと私自身、アイヌ民族の歴史や差別の問題について、一定の理解や知識はあったと思うが、そういう差別表現が過去に実際に使われていたということ自体は知らなかった。世の中に情報を発信していく仕事に携わる者として、当然知っていなければならないと思っているにもかかわらずである。
他方、仮に知らなかったとしても、民族を動物に例えることについて「ちょっと待てよ。大丈夫だろうか」というふうに一度立ち止まって考えたり、ディスカッションしたりしようという感覚があったかどうかについても、併せて問われるべきではないだろうか。それがまさに放送人としての感度ということに関わる問題だと考えている。
では、放送人としての感度というものをどう磨いていったらよいのか、あるいは維持していったらよいのか。そのことを考えるうえで、テレビの制作現場、放送の制作現場が今置かれている厳しい状況について踏まえておく必要がある。
今回、日本テレビで関係者の方にお話を伺うなかで、今のテレビの制作現場がとても大変な状況に置かれていると再認識させられた。制作現場では非常に複雑な分業化が進んでいる。当該番組『スッキリ』の制作スタッフは、調査時点で180人を超え、このうち日本テレビの社員は12人、それ以外の人は制作会社の方やフリーランスの方が分業体制で仕事をしている。
当該コーナー「スッキりすの週末オススメHuluッス」には専従者がいなかった。逆の見方をすれば、全員がいろいろなコーナーを担当していて、兼任という形でこのコーナーの制作を担当するやり方になっていた。業務フローも非常に複雑で、収録後、プレビューの機会が何回かあるが、これもオンラインで行われていた。それに加えて、現場は多忙で、皆さん異口同音に日々の仕事に追いまくられて本当に余裕がないとおっしゃる。こういうコーナーで紹介する作品を見る余裕がないということだった。このコーナーで紹介したドキュメンタリー作品は、35分間とそれほど長い作品ではないが、事前に視聴した人は1人だけだった。そういう時間的余裕が現場から失われている。
そうしたなかで、あってはならないことだろうが、業務にある程度優先順位をつけ、物によっては後回しになって、いったん立ち止まって熟考したりみんなで議論したりすることがなかなかできなくなっている。最近、テレビの番組の劣化とか、いろいろな批判を時々耳にするが、私が非常に強く感じるのは、劣化ではなくて疲弊ではないかということだ。現場の疲弊が大きな問題を引き起こしているのではないかと感じた。
そういう状況で、危機管理的な発想がどうしても前面に出てくるということがあると思う。今回日本テレビも、再発防止策として、チェック体制の強化と社員やスタッフに警鐘を鳴らす施策の拡充をうたっている。その必要性は全く否定しないが、放送人としての感度ということを考えるときに、そういう危機管理的な発想だけでは十分ではないのではないかと私は考えている。
では、何が重要なのか。先程高田委員長代行が、知識が必要で勉強しなければいけないと指摘されていた。本当にその通りだと思う。他方、私が強調したいのは取材経験についてだ。日本テレビでヒアリングをした際、ある人が、当該コーナーに報道系のスタッフ、記者経験者や取材経験のあるスタッフが1人でも関わっていれば、今回の問題は起きなかったのではないかというふうなことをおっしゃっていた。
この話を聞いたときすぐに思い起こしたのが、2020年にNHKが放送した『これでわかった!世界の今』で問題になった事案だ。この番組は、Blacks Lives 
Matter(ブラック・ライブズ・マター)を取り上げ黒人の差別問題を紹介しており、その際、ツイッターに番組に関連したアニメーション動画をアップした。動画では黒人の男性を、筋骨隆々で少し怖く「俺たちは怒っている」というふうな形で描いていた。これが極めて典型的なステレオタイプ表現で差別的だと強い批判を招いた。
私はこの番組に関わっていた人にたまたま話を聞く機会があった。その人は、編集部に、アメリカで生活をした経験がある人かアメリカ人がいれば、こういうことは起きなかったのではないかとおっしゃっていた。つまり、黒人問題を取り扱う場合、アメリカの現実を肌感覚として知っている人が、どれ位制作現場にいるかどうかが非常に重要ではないかということだ。
先程も紹介したように、制作現場は分業化が進んでおり、いろいろな人たちが関わる形になっている。取材は取材、撮影は撮影、収録なら収録、そして完プロなら完プロという形で、専門化、分業化が進んでいる。そうしたなかで、社会の現場で取材経験を積み、いろいろな人とコミュニケーションを取るという経験が相対的に減少、あるいは不足していることが、こうした問題の背景にあるのではないか。
1つ紹介したい議論がある。イタリアの著名な哲学者ウンベルト・エーコによるネオTVという議論だ。どういう議論なのかというと、現代のテレビは、現実社会を映し出す窓のような機能ではなく、むしろ、テレビが自ら作り出したある種の現実、バーチャルな現実、テレビ的な現実というふうに言ってもよいかもしれないが、そういうものを映し出しているのではないかというものだ。
テレビは窓ではなくて、自分が作り出した世界を映し出す鏡のような機能を担うようになってしまっているのではないか。言い換えれば、テレビの自作自演というふうな状況になっているのではないかと、エーコは批判的に主張した。
それになぞらえて言うなら、全部が全部そうだというわけではないが、現場の制作者は、テレビが作り出した現実に住んでいる人、典型的な例を挙げれば芸能人と言われるような人たちとの間では接点があり、いろいろなやり取りがあるかもしれないが、現実世界との接点を次第に失いつつあるのではないだろうか。ゆえに、現実そのものとの接点を、取材を通して維持していくということが、放送人としての感度ということを考えるうえで重要なのではないだろうか。
視点を変えて、差別問題とどう向き合っていくべきかについて話をしたい。差別問題というものの特徴として、コンテクスト(文脈)によるということが挙げられる。どういう文脈の中で、誰が、誰に向かってどういう意味合いで表現しているのかということだ。それによって、ある表現は差別的だということになり、別の表現はそうではないということになったりすることが、さまざまな形でありえると思う。
その表現に、当事者がコミットして承認しているのかどうかということも、差別表現の構成要件として重要なポイントになると考える。例えば、関西人は声が大きいとか、関西人はセコイとか、お笑い芸人の人たちの言い回しによくある「関西人は何々だ」みたいな言い方は、当の関西人がいくら言ってもあまり問題にはならないが、東京の人が関西人はこうだというふうに言うと、その瞬間にそれは問題含みになるということが挙げられるだろう。
NHKが放送している障害者情報バラエティー『バリバラ』を例として挙げたい。この番組は、障害者の人たちがMC、あるいは自ら出演者となり、自分たちの障害のことをある種の笑いにするという非常にユニークなバラエティー番組だ。障害者の障害を笑いの対象にするということは基本的には有りえないことだが、当事者がコミットして、その人たち自身が笑いにするという限りにおいては成立するという、一つの例ではないかと思う。
現在の差別問題、これからの差別問題を考えるうえで、多様性の見地は欠かせない。現代社会は非常に多様化、グローバル化し、複雑化している。社会がそうである以上、番組の送り手の側も多様でなければならないということが、最近言われるようになった。
1つ紹介したいのがイギリスの公共放送BBCの例だ。BBCは、出演者、制作スタッフの人員構成における多様性を担保するために数値目標を設定している。出演する男女比率を50%ずつにすることを目指すフィフティ・フィフティということが、ここ数年よく言われるようになった。その延長線上で、BBCの場合、画面に登場する人をフィフティ・フィフティにするだけではなく、画面の向こうにいる制作者の人たちもフィフティ・フィフティであるべきだとしている。フィフティ・フィフティは通常ジェンダーの文脈で言われることだが、BBCのユニークなところは、女性だけではなく、非白人の人たち、障害者の人たち、LGBTの人たち、こういった人たちもそれぞれ数値目標を設定して多様性を担保しようとしている点だ。
私の聞いている範囲では、女性に関してはまだ数パーセントこの目標に届いていないそうだが、すごいと思うのは、非白人、障害者、LGBTについては、もうこの数値目標を達成しているということだ。
どうしたら差別をなくせるか、差別問題を防ぐことができるかについては、特効薬もマニュアルもない。日常の実践、取材活動を通した現実社会との接点、あるいは、その経験を蓄積していくことこそ重要だ。言い換えるなら、日々の実践からしか、放送倫理というものは形成、あるいは維持できない。
今回、放送人の感度の問題ということを考えるうえで、送り手の放送局と社会との距離が遠くなっていないかということや、放送局が視聴者にエージェントとして受け止められ、視聴者の知りたいことにちゃんと応えているか、あるいは、自分たちの主張や意見、立場をきちんと社会に伝えて共有する媒体になっているかということなど、いろいろなことを考えた。放送人の感度という問題は、重要な指標として位置付けられるのではないかと、今は思っている。

最後に、井桁大介委員が「差別問題 対応の視点」というテーマで講演をした。

はじめに、ある研修の場でいただいた1つの質問を紹介したい。「バラエティー番組などで、人を動物に例えることはよくあることで、今回の『あ、いぬ』というのもその中の1つとも思われる。バラエティーなど他の多数の例では許されて今回はだめだと言われても、線引きの基準が分からなければ、なかなか難しいのではないか」。この質問は、差別問題における線引きの難しさというとても重要な問題を含んでいると思われるので、これを題材に説明をさせていただきたい。
先程米倉委員が「関西人が自分たちで関西のことを何か言う場合にはOK」というふうに、コンテクストによってOKな場面があるとおっしゃったが。逆に言えば、OKかNGかはすべてコンテクストに依存してしまうように思われるので、悩まれると思う。つまり何らかの基準・物差しがないから常に手探りで対応せざるをえない。すべて総合判断、すべてコンテクスト依存ということになってしまうと、現場の対応力に任せざるをえず、悩み深き問題になってしまう。
この点について、高田委員長代行は「知識をしっかりインプットして高めていくことが大事だ」というふうにおっしゃっていたし、米倉委員は放送人としての感度が大事だとおっしゃっていた。いずれもおっしゃるとおりだが、私は法律家なので、こういった問題に関して法律家はどのように対応しているのかについて少し紹介したい。もちろん、法律と放送倫理というのは似て非なるものだということは当然の前提だ。また、今回紹介する視点は、国や自治体が何か差別的なことをしてしまって、それが訴訟になるような場合におけるものを典型とするもので、放送機関の皆さんのように放送の自由・表現の自由という憲法上の権利を行使した結果、差別的な取り扱い・表現をしてしまったという場面とは、当然同じようには考えられない。それでもなお、一つの視点として何らかの参考になるのではと紹介させていただく。
まず、差別問題に取り組む際には、差別は誰にでもあるということを前提にして取り組む必要がある。これについては最近、アンコンシャスバイアスという言葉がよく使われるようになっている。
自覚的な差別意識というのは実はあまりない。自分のことを非倫理的な人間だと思う人が基本的にはいないのと同じで、自分のことを差別的だとか、自分はここに関して差別的な意識を持っているとか自覚して明言する人は少ないと思う。
しかし、差別的なものの考え方というのは誰にでも少しは必ずある。例えば、私であれば、男女差別とか外国人差別とかはないのかと言われると、やっぱりあるのかもしれないというふうに思いながら生活をしている。友人や家族からそういう指摘を受けて、そういう差別的な意識があったのかなと気づくこともある。このように、個人レベルでは自分にも差別意識があることを前提に行動するというのが最初の前提になってくると思う。
そのうえで、放送機関という組織として、許されない差別的な放送をしないようにするには、構成員の各人に何らかの差別的意識があることを前提に、組織的な統制システムを作っていく必要が今後は出てくるだろう。その1つの手段として、先程米倉委員がおっしゃった多様性のある環境をしっかり作ることで差別的な意識を可視化する、もしくは共有化していくということが大事になってくるだろう。
そういった差別問題に取り組む際の、個人レベル・組織レベルの対策を踏まえたうえで、法律家はどのように差別問題に対応するかという視点を紹介したい。もったいつけて申し上げているが、実際のところは、法律においても差別問題に対応する具体的で万能の基準などというものはない。差別問題というのは非常に難しいということが、裁判でも法律業界でもある意味前提となっている。
どうしても差別問題の対応というのは基準が抽象的にならざるをえない。米倉委員がおっしゃったコンテクスト依存というのは本当にそのとおりで、判例が示している基準というのもせいぜいが、「事柄の性質に遡行した合理的な根拠に基づくものでない限り、差別的取り扱いを禁止するのが憲法の趣旨だ」と言っているだけである。不合理な区別は禁止しましょうと言うだけだ。これだけでは、何が不合理な区別で許されない差別なのかといえば、結局はコンテクスト依存ですねということになる。それを学説などにおいて、過去の膨大な裁判例・判例を検討し、少しずつ精緻な視点・基準が積み重ねられてきたので、それを紹介したい。

検証委員会 図

大きく3つの視点が重要だと思う。1つ目の視点は区別の属性である。例えば放送において、特定の属性をひとくくりにして評価を下す場合、その属性が、容易に変更できないものかどうかがポイントになる。
容易に変更できない属性とは、例えば、憲法の条文では「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」といった要素が挙げられているし、多くの皆さまが仕事の現場で触れていると思われる個人情報保護法では「要配慮個人情報」という言葉が使われ、具体的には「人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」と整理されている。こういった属性をひとくくりにして、何か取り扱いを区別しているのかというところが、1つ目の目の付けどころとなる。
次に2つ目の視点は、そのひとくくりの取り扱いによって対象となる属性に生じるダメージである。法律業界では反従属、反別異といった用語が使われるが、端的に言うと、地位のレベルに関するダメージが及ぶものなのか、利益のレベルに関するダメージが及ぶものなのかということだ。ありていに言えば、その人たち、その属性の人たちやその属性そのものを馬鹿にしたり、地位をおとしめたりするようなものなのか。そうではなくて、あくまで利益的なものなのかということだ。
利益的なものというのは、分かりやすく言うと、例えば、女性には妊娠、出産があり、労働法において産前産後の法定休暇が認められる。これは、女性を区別的に取り扱っているわけだが、別に女性をおとしめる意図とか、ダメージが与えられるようなものがあるわけではない。こういうふうに、利益レベルのものなのか、地位レベルのものなのかというところで分けて考えてみようというのが、視点の2つ目だ。
3つ目の視点は、放送機関の皆さまが、なぜその報道、表現、放送を行うのか、その目的や必要性の検討だ。その報道、表現、放送において、なぜ属性をひとくくりにする必要があるのか、その必要な程度はどのぐらいなのか、どういう目的でやっているのかというのを、自己分析をしてみるということだ。
この3つの視点を持ち込むことで、検討の目を細かくしていきましょうというのが私からの提案だ。もちろん実際に裁判例などで議論される要素はより多岐にわたるが、まずはこの3つの視点を意識することで、「不合理な区別は許されない」という抽象的な基準を、具体的な事例に落とし込み検討に役立てようという知見が蓄積されつつあるというところだ。
整理すると、第1に差別された属性が、人種とか信条とか、性別とか、そういったものである場合には、アラートを出してほしい。また、差別によるダメージが地位のレベル、つまり馬鹿にする、尊厳をおとしめるといったものであれば、さらなるアラートを出してほしい。
これらが重なる場合、例えば民族をひとくくりにして馬鹿にするようなものであれば、かなり厳しくアラートして立ち止まっていただく必要がある。そのような場合には、その表現でなければ報道、表現、放送がどうしても成り立たないのか、そういう報道を放送することが本当に必要なのか、言い換えは難しいのかということを、慎重に検討していただいたほうがいいと思う。いわば、原則NGで、高い必要性がある場合や言い換えが極めて難しい場合には許容される、といった基準を持ち込むということとなる。
他方で、差別される属性が変えられる場合、例えば、スーツを着ているかどうかとか、メガネをかけているかどうかとか、そのぐらいであれば、その人の人格に根ざした変えられない属性というわけではない。そういった変えられる程度の属性に着目した報道、表現、放送で、かつ、それがその属性の人々の尊厳を傷つけるようなものではないならば、よほどの場合でなければ特に目くじらを立てなくても良い、ということとなる。
このように、表現によって、どのような属性にどのようなダメージが生じるのかという着眼点に根ざして分析をしていただくと、少し緻密な検討ができるのではないかというふうに考えている。
本日の資料末尾の参考に、放送基準、法令、裁判例など、差別の問題に関して参考になる資料を付けている。例えば、最近ヘイトスピーチなどに関しても少しずつ裁判例が出てきている。ヘイトスピーチは、総体としての民族や人種に対する差別というところで、法律学でもどうやって取り扱ったらいいのかが争われてきた分野だが、少しずつ議論が進展してきており、参考にしてほしい。

この後の意見交換での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 井桁委員が説明した3つの視点を表にまとめた『差別表現のマトリクス』について、もう少し詳しく教えてほしい。
A: あくまで私が簡略化したものなので、本当の意味での正確性に欠けるかもしれないが、属性とダメージ、それぞれで、どれほど重い差別になるのかある程度の基準が動くということを表している。人種、性別、社会的身分のような変えられない属性に着目した区別的な取り扱いであれば、原則NGの方向で検討していきましょうという作用が働きやすいということだ。ダメージのところは、その表現によって、地位がおとしめられる、馬鹿にされる、社会全体で、その属性の人たちは馬鹿にしていい属性だというふうにメッセージを発信してしまうような表現の場合は、同じく、一旦立ち止まりましょうという方向に作用が働くでしょうということだ。そこの掛け合わせで、属性を変えられない人種などの属性に着目し、馬鹿にするなど、地位をおとしめるような表現をする場合には、原則NGだと思って立ち止まったほうがいいんじゃないかというふうに読んでいただければと思っている。
属性が変えられるレベルであれば、馬鹿にする表現をしたとしても、変えられない属性よりは少し緩やかな基準だとしていいのではないか。「メガネの人は貧乏だ」みたいなことを言ったとしても、貧乏だというのは馬鹿にした表現になるかもしれませんが、メガネをかけているというのは比較的、変えられる属性になるので、ある程度許容度が高まるのではないかというぐらいの話だ。
このマトリクスを、二次関数みたいにきれいな相関性で作れるかというと、そこまでではない。視点として、こういったマトリクスを頭の中に入れていただくと、何か現場で問題が起こったときに、少しだけ緻密な検討ができるのではないかということだ。
補足をさせていただくと、過去の委員会決定などを見ても、一言で言うと、地位をおとしめる、尊厳を傷付ける、馬鹿にするということに関しては、少し厳しい目が向けられている。そこはやはり、こういったマトリクスが検討の際に意識的にせよ無意識的にせよ作用しているのではないかというふうに思う。ですので、特に差別された属性が簡単には変えられない場合、地位のレベルで馬鹿にするような表現をするということについては、感度を高めていきましょうという視点になるかなというふうに思っている。(井桁委員)
  おさらいすると、このマトリクスは4象限あり、左上ほどアラート度が高く、右下は左上よりもアラート発令度が低いという、そういうグラデーションと見ていいのか。
(岸本委員長代行)
  その通りだ。では、右上と左下とではどちらのアラート度が高いのかというと、ちょっと難しい話になってくると思うが、個人的には、やはり地位のレベルのほうが、より厳しくなってくるかなというふうには感じている。(井桁委員)
  色分けをするとすれば、左上が真っ赤で、その右はオレンジ、一番右下になると黄色という、そんな色分けのイメージで、これを活用してみてもいいのか。(岸本委員長代行)
  最初はそういう色分けをしていたのだが、ちょっとどぎつくなるかなと思い自粛した。
(井桁委員)
  利益のレベルで、変えられない、変えられるというゾーンに入る具体的な例を挙げてほしい。(田中調査役)
  地位のレベルは、分かりやすくいうと、馬鹿にすると思っていただければよい。それ以外の区別的な取り扱いは、ほぼ全部、利益のレベルになる。実は、世の中にはたくさんの利益のレベルの取り扱いの差異があり、身近な例を挙げると、会社の近くに住んでいる人には近距離手当を支給する会社がある。一方で、遠くに住んでいる人には交通費しか支給していない。そういう取り扱いは、別にいつでも変えられる住所ですから、すぐに変えようと思えば変えられるものについて、利益のレベルでの取り扱いを変えているだけであったりするわけだ。同じように、放送表現のレベルでも、実はいろいろなところで、何かに着目して取り扱いを変えているということはたくさんある。属性について表現をするときには、ほとんど実はそういう表現を無意識にしている。その時に、地位のレベルでなければ、大体それは利益のレベルだというふうに思っていただければ いいと思う。そのぐらいの位置付けです。(井桁委員)
   
Q: 福島県では、部落という言葉を、地区という意味で主に中高年の方が使うことが多い。うちの部落ではこうこうこういうことがあるというインタビューを撮ったときに、福島県内での放送ではそのまま流しているが、昨今ネットでのニュース発信が多くなっているので、全国で見るということを考えたときに、部落という言葉を外す対応をとっている。西日本の方は部落という言葉に対して、受け止め方が違うだろうと配慮して、そのような対応をしているが、この対応は妥当か。
A: 福島県で部落という言葉を使っているのは、その地域だけの共通認識事項だと思う。その地域外の方からすると、一瞬ギョッとする表現であることは間違いないだろう。そうすると、放送や配信をする地域が広範囲に渡るときには、ある程度一定の配慮をするのは、当然のことではないかと思った。むしろ、その言葉を使いつつ、傍らに何か注記をするというのも、わざわざ部落という言葉を取り出して強調するようになってしまうので、適切ではないような気がする。対応としてそういうことがあるというのを、改めて共有させていただいた。(小町谷委員長)
  部落という言葉自体は封建時代からあった表現で、当初は、部分集落というワードで、それを縮めて部落という言い方をし始めたと私は認識している。もしかしたら間違っているかもしれないが。戦時中までは、郡部の自治組織という意味合いでも部落という言葉が使われていた。
自治組織や人が集まっているという意味の部落という言葉に、被差別部落という言葉が重なってきたのは、戦後の部落解放運動の高まりのなかだった。そういう歴史的な背景があるのだというふうに私は思っている。
実は私は出身が四国の高知県で、学校教育の中で同和教育があったので、それこそ中学校ぐらいから、部落と言えば被差別部落とイコールだと言われて育ってきた。一方で、私の祖母の世代、祖父母の世代というのは、部落という言葉は被差別部落と必ずしもイコールではない。昔から、明治時代からもう普通に、あの辺、あそこの集落という意味で、部落という言葉を普通に使っていた。先程、福島テレビの方のお話にあったのと同じで、それを使っていいのかどうかというのは、まさに文脈で判断すべきことなんだろうと思う。
たとえば、自治体のホームページを注意深く見ていると分かるが、九州では、あくまで行政的な意味で部落という言い回しをするとき、それを集落という言葉に置き換えることは、同和関係団体の方と議論をした結果、逆差別に当たるということになったと断り書きをして、部落という言葉をそのまま使っているところもある。九州は、被差別部落の問題がたくさんあると思いますけれども。
だから、文脈でどう考えるかだと思う。一律、いいとか悪いとかという判断はなかなかしにくい。しかし、誤解を招く恐れがあるのだったら、あえてそれを突っぱねる必要もないのではないかというふうに、私は思う。(高田委員長代行)
   
Q: 考査の現場にいると、非常に細かな言葉の悩みというか、判断が非常に難しい面がある。例えば、女の子らしい服装をしなさいとか、男の子だから泣いちゃダメよとか、今まで当たり前のように使われてきた言葉について、これ大丈夫でしょうかみたいなことを相談されたときに、これからの時代ダメだよねという部分と、これまで使われてきたからある程度文脈の中で許容できるよねという部分と、どちらで判断するのか非常に悩ましい。
関西なので、やはり部落というと被差別という意味合いがくっついて回る一方で、放送局として、その言葉がそういう意味を持たないというのであれば、正々堂々と使うべきじゃないかと。一番懸念するのは、やはり言葉狩り、表現狩りというところに行き着いてしまうということ。その辺りに関して、委員は、どういうふうに考えているのか。
A: 私も日々このラジオ、テレビで話すとき、あるいは文章を書くときに、この言葉を使っていいのかと迷う。ラジオの生放送は考査で判断してくれる人がおらず、自分で判断しなければならない。その時の判断基準には、放送倫理的に沿うかどうかよりも、自分を守る本能みたいなものが働く。その本能の部分でこれはどうかというのを判断している。先程から感度をどう身に付けるかという話が出ており、知識や取材経験が必要だとの指摘があったが、私にとって感度を身に付けるきっかけになるのは、同時代の炎上案件だ。
オリンピックの前に、ある要人の発言が非常に問題になった。女性の多い会議は長いと。あの炎上騒ぎを見ていて私が感じたのは、何かある事柄とか傾向を、性別と結び付けて語るというのは、今は危ないということだ。その炎上案件を見てから、自分がものを書いたり話したりするとき、少し考えるようになった。
以前だったら、女性同士、今度温泉に行きましょうみたいなこと言っていたのを、これは、女性同士とわざわざ言う必要があるのかなと、その必要性と目的を考える。別に女性と言わなくても、自分の表現したいことは成り立つと思えば、なるべく性別のことは言わないようにする。ただ、温泉に行くことを話すときに、男女で行くのかといった、誤解を招く恐れがある時は自然に女性同士と言う。
考査に上がってくる男の子らしさ、女の子らしさについて、私だったら、今はなるべく使わないが、文脈で判断し、プラス、その時代の感度で判断する方がよいと思っている。男女のことを合わせて話したいときに私がとった具体策を1つ紹介したい。女の子がピンクの色を好むという話をしたいときに、下手をすると差別になるので、困っていたところ、ある人の経験を知った。子どもの遊ばせの世話をしている人が、折り紙を広げて、皆、好きな色を選んでいいよと子どもを走らせると、女の子は皆ピンクを取りたがる、不思議だよねというような話を聞いたのだ。女の子はピンクが好きという話をしたかったら、ある人が体験した出来事として、折り紙で好きな色を選ばせたらピンクを選ぶ女の子が多かったそうですと言えば、それは別に差別ではなく、その人が体験した出来事だから嘘ではない。
このように、危ないなと思う表現をあえて使うには、後々気にする人がいることを自覚して使う覚悟が要る。そして、気にする人が何か言ってきた場合に、いや、こういうことで言ったんですよと説明ができるかどうかというところが、最終的に大事だと思う。後は、説明はできるが、この言い方をしなくてもいいのであれば言わないという判断だと思う。
(岸本委員長代行)
  性別と色の関係で思い出したのだが、化粧室、トイレの表示は、女性は赤かピンク色、男性は青などに色分けされている。日本はそうだが、世界的に見ると非常に珍しい。他の国に行くと、マークは何となく女性っぽいマークがあったり男性っぽいマークがあったり、あるいは、言葉でウーマンとかマンとか書いてあるが、それは全部黒などの同じ色で表現されている。世界の中で日本は特殊だということをご紹介しておく。(小町谷委員長)
  先程井桁委員の差別表現のマトリクスというところで話があった、差別される属性ということで考える際、ジェンダーにおいて考えなければいけないのは、その属性というものが、不変のもの、全く変わらないものなのではなくて、どんどん変わっていくということだ。そして、今は非常に細分化されていっている。差別される属性、アイデンティティというものがものすごく多様化し細分化されている。しかもそれが、多くの人たちの間で意識化され、言語化されている。そういう状況があるということを前提に考えないといけないということだと思う。
放送はマスメディアだから、ある種の大衆メディアみたいなものだ。そして、大衆メディアだからこそ、社会のマジョリティに向かって、どうしても情報発信、メッセージを伝えるというふうな性格が今まで強かった。これまでのそういうやり方のままでは、おそらくいろんな問題が起きてしまう、通用しなくなっている、そういう状況があると思う。先程私が言った、オーディエンスが放送局、テレビ局やラジオ局を自分たちにとってのエージェントとして、見てくれるのかどうかということが、今非常に重要になっていると思う。
日本では、あまりマイメディアという感覚がオーディエンスの中にない。国際比較の調査を見ると、海外と比べて、そういう感覚がないというふうなことが言われている。理由はいろいろあると思うが、1つは党派性があまりないこと。諸外国では、そういう党派性のあるメディア、主張がはっきりしているメディアはあると思うが、日本の場合はそうではない。
それだけではなく、何となくマイメディアということを持てない背景として、テレビ局やラジオ局が大衆に向かって、マジョリティに向かってメッセージを発信してきているがゆえに、感覚が時代の変化について行けていないということが挙げられる。世の中では非常にアイデンティティというものが細分化され、多様化してきており、オーディエンスはいろいろなことをセンシティブに意識している。そういうなかで、放送局というのは、自分の価値観、自分の感覚と全然合わないことをやっていると受け止められてしまうというふうな問題があるのではないかと思う。ジェンダーの問題も、たぶん、そういう観点で捉えるべきではないか。
ジェンダーに対する感覚とか意識とかが、ものすごい勢いで変化し、ずっと変化し続けているというところがあるので、そういったことを常に意識し続けるということが、放送局の現場は問われているのではないかというふうに考えている。(米倉委員)
  アイヌの問題で言うと、先程申し上げたように、2016年の調査で、内閣官房がアイヌの人たちに放送に何を期待しているのかと質問したところ、差別を無くすために正しい情報を伝えてくださいという期待値が1番高かった。米倉委員のおっしゃる通り、視聴者、オーディエンスが一体テレビに今、何を期待しているのか、何を求めているかというのが極めて重要な問題だと思う。
ですから、考査の場でも、この番組は放送局として何を伝えようとしているのか、どんなメッセージをオーディエンスに送ろうとしているのか、その番組全体の趣旨に沿いこのシーンでこの言葉を使わないとダメなのか、番組全体として最終的にどんなメッセージを視聴者に伝えようとしているのかを十分吟味し、判断するべきだと考える。言葉尻で、これがいいとか悪いとかと言うよりも、視聴者側は、放送局なり、その番組なり全体のスタンスを、極めて鋭く敏感に読み取っているのではないかと感じる。
『スッキリ』のケースに戻れば、この「あ、いぬ」という言葉自体は、アイヌの問題を取り上げた社会的な番組、ノンフィクション番組で、きちんと説明したうえで使っているのであれば、何の問題もなかったと思う。
絵で犬がワンワンワンと出てきて「あ、いぬ」と言うこのシーンが、このコーナーに本当に必要だったのか。そういう検討が十分に加えられていないなかで、今回の問題が起きてしまったと考える。(高田委員長代行)
   
Q: (オンライン)女性警察官がさほど珍しくなくなった今でも、女性白バイ隊員などの表現が時々ある。テロップをチェックする上司が女性である場合は、この点に気づけるが、男性である場合は気づかないという揺れが生じたことがあった。言葉狩りではなく、意識を改善するための対策はあるか。
A: 私は弁護士で、私たちの業界では女性弁護士という言い方をする。これはわざと言っている場合がある。どういう場合かというと、司法におけるジェンダーのバイアスを強調するために、女性弁護士の比率が少なく意思決定過程に入っていないということを強調するために、わざわざ言うことがある。
それとは別に、一般的な場で、女性弁護士という言われ方をすることも非常に多い。以前から私は、それは女性であるという属性をくっつけて、男性の弁護士と完全に区別して、ある意味貶めているというふうに思っている。女性は、そういうことに凄く敏感だと思う。恐らくその女性白バイ隊員の場合も悪気は全くないと思う。白バイ隊員というのは、基本的に男性が多いだろうと考え、そこに女性がいることが珍しいという趣旨で使っているのかなと思うが、女性と付ける必要性が本当にあるのかというと、ないだろう。やはり必要性ということが重要だと思う。もちろん文脈ということも関係するのかもしれないが。
もう1つ、女性を紹介するときに「美人の」と付く。新聞のラテ欄などを見て「美人の」という表記が目につく。一方で、男性に「ハンサムな」とはあまり言わない。やはり、女性を容姿で見ていることを示しているのだと思う。あまり意識されていないのかもしれないが、実は隠れている問題があると以前から感じている。
ジェンダーの問題というのは、米倉委員がおっしゃったように、加速度的な形で今、動いている課題なので、女性・男性と付けなくても表現できるのであれば、別の表現に置き換えたほうが良いのではないかと個人的には思う。(小町谷委員長)
  情報を提供する企業や公的な機関などが、いまだに「女性チームが出来ました」「女性役員が誕生しました」といったプレスリリースを出したり、あえて打ち出してきたり、そういうことが結構ある。恐らく、先程の女性白バイ隊員もそういう広報の一環ではないかと思う。そういうことを言ってきたら、あなたのところ古いですねと言ってあげるぐらいで、ちょうど良いと思う。
私がかつていた新聞社では、女性警察官とか、女性教員とか、女性何々と書くのは例外的なことだとしていた。そう書く場合は、なぜそうするのかをデスクに説明しなければいけないというルールがあった。
もう1つ、私が気になっているのは、女性を紹介するとき「家に帰れば二児の母」などと紹介されることがあるということだ。逆のパターンで男性を「家に帰れば三児の父」「家事と両立させている」と紹介することはほとんどない。非常にステレオタイプの表現が多いので、そういったことも再考されたほうが良いのかなと感じている。(高田委員長代行)
  先週、アジアからの留学生だけの大学院のクラスで、日本のバラエティー番組をジェンダーという観点から見ようという授業をして、生徒に「どういうふうに見ましたか」と聞いたところ、「古いですね」「昭和ですね」といった感想が異口同音に出た。私の感覚で言うと、これだけジェンダーということが言われているなかで、報道番組、ニュース、ドキュメンタリーといった番組では、比較的いろんな形で神経を使って作られているが、バラエティー番組など、いわゆる娯楽のジャンルにおいては、相当クレームも来ているだろうに、かなり内容がオールドファッションだと感じる。先程から話題に出ているルッキズムなどステレオタイプ表現というのがいろんな形で散見される。娯楽番組というのは半ば冗談みたいなもので、笑いの世界だということなのかもしれないが、実社会ではいまや、宴会の席だから冗談だからというふうなことは通用しないという状況だ。
そういう時代のなかで、娯楽番組のジャンル、バラエティー番組だけはなぜか、これぐらいは許されるだろうみたいな形で、今でもさまざまな表現がなされているというふうに、強く感じる。それを見て、人によっては、本当にテレビは古いと言い、放送は古い世界だというふうに受け止めてしまうということについて、十分に意識的である必要があるのではないかと考えている。(米倉委員)
   
Q: (オンライン)米倉委員が関西人を例に挙げて説明されたことだが、地上波という甚大な拡散力のあるメディアの機能を考えたとき、当事者が言っているからOKだとしてそのまま放送することが、本当にOKなのかと最近疑問を感じている。例えば、女装家のタレントが自分のことをおかまと呼ぶ。当事者が言っているからいいということになっているが、それは当事者一人のことでしかない。そのタレントが属性の同じ人すべてを背負えるわけではない。属性の同じ人は、それを見て傷ついたり不快に思ったりする人もいるかもしれない。さらに言うと、出演している当事者が、その属性に対して悪意のある発言をするかもしれない。そのあたりを最近すごく悩んでいる、あまりそれを言い始めるとどんどん表現の幅が狭くなってしまうというのもあるが、当事者がOKなんだからというふうに、何となく業界的になりすぎているような気がする。そのあたりをどう思われるのか意見を聞かせてほしい。
A: 日本が批准している障害者権利条約に、私たちのことを私たち抜きに決めないでくれというくだりがある。呼称、表現、制度、システムなどに当事者が関わっているかどうかということは重要なポイントだと思う。しかし、今のご指摘のように、ケースによっては、それだけでは判断出来ないということがあるというのは、なるほどそうだろうというふうに思った。井桁委員の、何々のためにその表現、その言葉であるということが、どのくらい重要な意味を持っているのか。あるいは、公共性という観点からどうなのかということは、ケースバイケースで判断していかなければならないと思う。
また、そういう言葉を使う人が、アナウンサーとか記者といった放送局の社員なのか、それとも、出演者の芸能人なのか、街頭インタビューに答えた一般の人なのかといった立場の違いによっても、良いという場合もあれば、ダメだろうという場合もあるように、判断はいろいろ分かれるのではないかと思うし、それを放送の現場で考えるべきだと考える。
ジェンダーの関係でいうと、例えば、奥さんという言葉は、ジェンダー論的にはNGワードだと思うが、一般の方が「うちの奥さんは」と自分の妻のことを言ったときに、奥さんという言葉はダメだし、その言葉によって傷つく人もいるというふうに言いだすと、じゃあどこまでやるんだというふうなことになってくる。ケースバイケースだし、その発話者がどういう立場の方なのかということにもよるし、非常に難しい問題だと受け止めている。
(米倉委員)
   
Q: (オンライン)放送の機能と影響力を考えたとき、通常「これは当事者が言っているからOKとして放送している」という説明を付けていないので、世の中に、OKだという価値観を拡散してしまっている面があると思っている。それでいうと、マツコさんの「自分はおかま」みたいなことを、どんどん放送していいのかどうかというふうなことについても、ちょっと考えてみる必要があるのではないかと感じている。ありがとうございました。
   
  質問が出るまでの間のつなぎで話をしたい。皆様から寄せられた事前アンケートを読んでいると、何かの基準、マニュアルを求めているとひしひしと感じる。私が文章を書くときに使っているのは、共同通信社から出ている記者ハンドブックだ。これには差別語不快用語という項目があり、この言葉に関しては、こう言い換えたらいいでしょうという言い換え集が設けられている。私は物を書く際、これはどうかなと思うときに、この共同通信の記者ハンドブックを調べて、これは今、差別語不快用語に入るんだなというふうに、まずアラートを立てる。しかし、だからといってその言葉を使わないのかというと、そうではない。
例えば、この差別語不快用語には、町医者という言葉は開業医と言い換えましょうと書いてある。町医者が本当にダメなのだろうか。今のコロナ禍の状況で、大病院に行くのは怖いから、まず近所のお医者さんで診てくれればいいなという思いがある。そういうことを語りたいときに、開業医という言葉でその思いが伝わるだろうか。東京の開業医は割と小規模なところが多いが、鹿児島など地方では個人の病院が大病院で入院施設も備えているというのが現状としてある。だから、開業医と言い換えるのかどうかは、身近なお医者さんで診てもらいたいという思いが伝わるかどうかという観点から検討する。
差別語不快用語に町医者イコール開業医と言い換え例があるからといって、機械的に言い換えるということをしない方が、言いたいことが伝わる場合もあるのではないか。ただしその場合、町の身近な医療機関とか、町の身近なクリニックとか、そういった身近という評価を1つ付け加えることで、もしかしたら、身近な町医者でも許されるのではないだろうか。準マニュアルとしての本の紹介と、しかしそれだけではないという私の考えについて話をした。
八百屋だったら、八百屋という3音だけを切り取って、そこを生鮮食品店みたいな別の言葉に言い換えようとすると、すごく不自然になるし、本当にそこで伝えたいことが伝わらない場合がある。機械的な言い換えではなく、ここで何を伝えたいのかという、表現者としての原点に戻って考えることが必要だと思う。
また、先程のおかま問題で、私は、当事者が言っているからいいという基準に加えて、2つ必要なことがある気がする。まず、当事者が誇りを持って言っているかどうか。そして、その言葉を言うことが、そのシーンで伝えたいことに必要かどうかだ。本人の誇りと必要性ということが、当事者性に加わってくると考える。
例えば、おかまの人が「私たちおかまはね、助け合うのよ」みたいなことを言いたかったとしたら、そこでおかまという言葉を外すのはどうなのかなと思う。同時に、その場合であっても、あまりにも「おかま、おかま」としょっちゅう出てくるのではなく、回数を1回ぐらいにするとか、そういった微調整がとても大事なことだと思う。(岸本委員長代行)
   
Q: (オンライン)放送後に総務省から出された行政指導について伺いたい。以前、放送倫理検証委員会でNHK『クローズアップ現代』の際、番組内容を理由とした行政指導に対して、「放送法が保障する『自律』を侵害する行為で『極めて遺憾である』」という声明をわざわざ出した。今回のケースも番組内容に対する指導であって、全く同じ状況であるように思うが、今回の決定では、そもそも行政指導に関して何も言及されていない。なぜ言及しなかったのかということと、委員会の議論の中でこの指導についてはどういう位置づけだったのかということを伺いたい。
A: 今回の件については、アイヌ差別を禁止する法律に対して疑義があったということで、内閣官房が主導したというふうに認識している。それは、番組に対しての是正というよりも、基本的には、差別的な放送をしないでくださいねという要請だったというふうに受け止めている。そういう意味では、以前のケースとは若干異なっているのではないか。内部で議論をしたが、総務省から放送法に基づいて指導があったということではなかったと理解している。(高田委員長代行)
   
Q: (オンライン)今回のケースは、総務省から民放連、NHKに対して行政指導が出ている。高田委員長代行の見解によると、差別的表現だからダメだというふうな総務省の指導は許されるということになってしまう。それでは、国家権力の介入を許してしまうように思え、問題なのではないかと個人的には考えている。差別的表現だからダメだという指導は許されるということか。差別的表現かどうかということは非常に曖昧なところがあるので、そういった指導を許してしまうと、放送局の自立性が侵害されてしまうのではないかというふうに危惧を抱いている。
A: 『スッキリ』の意見書をまとめることについては、委員会の内部で、総務省の部分について特段議論をしていない。ヒアリングの過程で、内閣官房からの聴取に対して、テレビ局がどのように対応したかとか、どういうやり取りがあったかということについては検討し、その範ちゅうの中で判断は下しているということだ。(委員会は実際に放送された番組を対象に制作プロセスにどんな問題があったかを審議する場であるから)総務省の行政指導について、そこだけを取り上げて議論したということはなかった。しかし、それはイコールそれ(放送局の自立性の侵害)を看過しているといったことではない。(高田委員長代行)
   
Q: (オンライン)行政指導が問題ではあるということですか。看過していないということは、問題ではあるという認識ですか。
A: (行政の行為に対して見解を示すことは、個別の番組を審議する委員会の役割とは異なっているため)委員会として、その部分に結論は出していないということだ。
(高田委員長代行)
   
Q: (オンライン)情報番組などでタトゥーが入っている人を取材した場合、極力タトゥーが見えないように撮影したり、そのカットを外したりといった作業をしている。一方で、外国人の人たちがテレビに映っている時は、タトゥーを堂々と出している。自主的に、日本人だったらタトゥーは外すが、外国人はOKみたいな感じで何となく運用しているが、そのあたりについて、どういう基準で番組制作をやっていけばいいと考えているか。
A: 基準と言われると、基準はありませんというふうにお答えすることになってしまう。
日本人と外国人を分けているというのは多分理由があるのだと思う。つまり、外国人の場合は、おしゃれで入れており一種の洋服のようなものだが、日本人の場合は、別の意味があるというふうにみんなが受け取る。そういうことで区別されているのではないか。
今ではそれが若干変わってきて、若い方がおしゃれで入れるということもなくはない。
でも同時に、入れ墨を入れている人はお断りしますというようなことが、お店や銭湯、温泉を利用する際の条件になっている。それはなぜかというと、やはり反社会的勢力の根絶と関連しているはずだ。そこまで視野に入れて、どう対応するかを検討することになるのではないか。
また、入れ墨を入れている人を、そのまま映してしまうと、その方が反社会的勢力であるかのように受け取られてしまう可能性もある。そういうことも考えざるをえないのではないかというふうに思う。これは私の個人的な意見だ。特にBPOに基準というものはない。
(小町谷委員長)
  もしかしたら世代の問題もあるのかもしれない。個人の感想で大変恐縮だが、もちろん
反社会的勢力への対応ということは理解しつつも、そろそろ社会的にタトゥーを許容してもいいのではないかというふうに感じている。数年前、最高裁でタトゥーの彫師の人が医師法違反で起訴された事件で無罪というのがあった。そこで、彫師というのは1つのれっきとした職業であり、入れ墨というものは1つの文化的なものだという判断が下されている。
もちろん入れ墨を入れている一部の人が、反社会的勢力だったことは間違いないので、ある意味差別的な取り扱いが許容されてきた時代があったことは確かだ。しかし、おしゃれでタトゥーをしている人たちまで差別してしまうということが、属性に基づく差別と評価される時代がもう来るのではないかと感じている。今は過渡期だと思うが、私はタトゥーを許容する社会に近づいていってほしいと正直思っている。(井桁委員)
   
Q: 意見書27号『ニュース女子』事案以降、審議に際し、制作過程に加えて考査部署の対応についても言及することがやや増えているように感じている。2020年10月の委員長談話にあるとおり、30号36号のような案件では、そこに焦点を置かれることは理解しているが、その他の案件も含めて、各委員の考査部署への見方や考え方などに何か変化があったのであれば教えてほしい。
A: 考査部門に対する見方の変化はない。一方で、持ち込み番組、あるいは、営業サイドから働きかけがあった番組が増えているという事象がある。その場合、外部で制作されたものを放送局が放送する場合でも、直接的な制作責任はないが放送責任が生じ、考査は、放送するかどうかという判断の大きな要ということで、その役割を重く見た意見書が出た。
意見書は基本的には放送局に対して出すものだ。制作会社が作った番組について調査をする場合、放送局との覚書で動いているBPOとしては、直接その制作会社の人に協力いただくのではなく、放送局の方に、放送に至った経緯を伺うという形で調査をしている。
直接的な答えになっているかどうか分からないが、考査に対する見方そのものが変化したわけではない。ただ考査の比重が大きい案件が増えているという印象は持っている。
(岸本委員長代行)

小町谷委員長が「まん延防止等重点措置が東京都に適用された日にもかかわらず会場までお越しいただき感謝している。今日は、オンライン参加の人も含め多くの方と意見交換の機会を持つことができた。コロナが終息したら、また各地にお邪魔して意見交換をさせていただきたい。場の持ち方も、当初は大きなテーマ1つでやるのではなく、分科会でやったらどうかという話もあったが、運営上の観点から出来なかったので、これから工夫していきたい。いただいたアンケートの内容については、BPO放送倫理検証委員会で共有しており、今後の活動に役立てていきたい」と述べて意見交換の場を結んだ。

最後にBPO事務局の渡辺昌己専務理事が、「限られた時間の中ではあったが、視聴者に直接向き合っている皆さまに役立つ内容を提供出来たのではないかと思っている。きょうここにいらっしゃらない社員の人、あるいはスタッフの人にも、ぜひ社内で情報を共有していただき、今後の番組制作に生かしてほしいと思う。改めて日ごろのBPO活動へのご理解とご協力に御礼を申し上げる」と挨拶して閉会した。

【参考資料】

  • 憲法14条1項 、21条1項
  • 民法709条
  • 個人情報保護法2条3項 、同施行令2条
  • 京都朝鮮学校判決(京都地判H25.10.7)
  • 大阪ヘイトスピーチ条例判決(大阪地判R2.1.17)
  • 日本民間放送連盟 放送基準 第一章 人権 (2) (5) 、第二章 法と政治 (10)
  • 放送倫理検証委員会 委員会決定
    • 第4号 光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見 (2008.4.15)
    • 第13号 『ありえへん∞世界』に関する意見 (2011.9.27)
    • 第26号 『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見 (2017.10.5)
    • 第31号 『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見 (2019.12.10)
    • 第32号 『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見 (2020.1.24)
    • 提言 『ぴーかんテレビ』問題に関する提言 (2011.9.22)

終了後に実施したアンケートの回答から一部を紹介する。

  • 1テーマに十分な時間をかけ考察する機会は良いことだと思った。
  • 質疑応答に半分くらい時間を割いており質問も具体的で大変参考になった。
  • 差別に関する意識の変化を再認識することができ社内で共有していくべきだと感じた。
  • オンライン参加で多くの局員が視聴でき有意義だと感じた。
  • 放送現場の“劣化”は差別問題に限らず他の問題にもつながるという認識を持った。
  • ジェンダー問題についての質問に対して委員の様々な意見が聞けたのが役立った。
  • 視聴者から指摘を受けた言葉を使わないようにするだけでは何も解決しないと感じた。
  • 「差別表現のマトリクス」は客観的なものさしとして活用できると思った。
  • スタッフの感度を磨いても確実な再発防止策とはならないところが難しい点だと思う。
  • 事前に寄せられた質問に対して答えてもらえる時間がもっと長いほうがよかった。
  • 各局が抱えている懸念などを議論する時間をもっと多くとってほしい。
  • 在京、在阪局と地方局との課題は違う。地方局に関する事案を取り上げてほしい。
  • 全国から多数リモート参加していることを意識して率直な意見交換がしにくかった。
  • 夕方の自社制作番組の準備のため報道・制作の現業部門が参加しづらい日程だった。

以上

第169回 放送倫理検証委員会

第169回–2022年3月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見の通知・公表について報告

第169回放送倫理検証委員会は3月11日に千代田放送会館で開催された。
委員会が3月9日に行ったテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
字幕の内容に誤りがあったNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、前回委員会で、放送倫理違反の疑いがあり放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りが決まったことを受け、今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して行うヒアリングの準備状況が報告された。
民放局のバラエティー番組に同じ政党の幹部3人が出演し、政治的な課題などについて見解を語ったことについて、当該局から提出された調査報告書および番組審議会議事録要旨を踏まえ意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2022年3月11日(木)午後5時~午後6時40分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見の通知・公表について報告

テレビ朝日が2020年10月から2021年10月までに放送した情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』の視聴者からの質問に答えるパートにおいて、番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていた。委員会は放送倫理違反の疑いがあるとして11月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。
審議の結果、質問は視聴者の関心事やその傾向を示す重要な事実情報であり、制作者が歪めることがあってはならず、また投稿者の属性を書き換えることはその出所を不明確にするものであり、いずれも民放連放送基準に反しているとして、放送倫理違反があったと判断し、3月9日、当該局に対し意見書の通知と公表の記者会見(オンライン形式)を行った。
この日の委員会では、委員会決定を伝えたテレビ朝日の当該番組内で放送された検証コーナーを視聴し、委員長と担当委員が通知・公表の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
前回の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して行うヒアリングの準備状況等が報告された。

3. 同じ政党の幹部がそろって出演した民放局バラエティー番組について意見交換

元日に放送された民放局のバラエティー番組に同じ政党の幹部3人が出演し、政治的な課題などについて見解を語ったことについて、視聴者から政治的公平性を問題視する意見がBPOに寄せられた。これについて2月の委員会では番組を視聴した上で意見交換を行った。
今回の委員会には、当該放送局が社内に設置した調査チームがまとめた報告書とそれをもとに行われた当該放送局の番組審議会の議事録要旨が提出され、委員会はそれらを踏まえて意見交換を行った。委員会では政治的公平性のバランスのとり方や制作過程でのチェック体制などさまざまな観点から意見が交わされ、さらに検討が必要であるとして議論を継続することとした。

4. 2月に寄せられた視聴者意見を議論

2月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、特定の政党関係者がさまざまな番組に数多く出演しているのは政治的公平性の面で問題があるとする批判的意見が多数寄せられたことに関して事務局から概要が報告され、意見交換が行われた。

以上

2022年3月9日

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、3月9日午後3時20分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会から小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、大村委員の4人が出席し、テレビ朝日からは常務取締役(報道局担当)ら4人が出席した。
まず、小町谷委員長から委員会決定について、視聴者質問の作り上げが行われた本件放送は、事実に基づいて報道されてない点と、意見の出所が明らかにされてない点とで、民放連の放送基準に抵触していると判断したことを伝えた。そして意見書に沿って、①“完璧な番組”への自縄自縛、②働かなかった「複数の目」、③権限の集中がもたらした歪み、④局が果たせなかった責任、⑤機能しなかった通報窓口、の5つの問題点について説明した。
続いて高田委員長代行は、大きなポイントとして「権限が番組のトップに過度に集中していた」ことを挙げ、「いかに有能な人物でも、権限の過度な集中は時に独善を生み、自分にとって都合の良い事実を求めていくことがある。今後は権限の集中を是正してもらいたい」とコメントした。また岸本委員長代行は、「制作を業務委託した生放送の番組で管理・把握が難しいと思うが、もっと局の関われる点があったのではないか」「現場の人間の様々なパーソナリティを包含する組織を作り、視聴者の期待に応える番組作りをしてほしい」と述べた。最後に大村委員から、「通報制度は、体制を整備することと運用を実効的に行うことが必要で、研修などを通じてものが言いやすい雰囲気づくりが必要と考える」とコメントした。
これに対してテレビ朝日は、「今回の問題は番組の信頼を毀損する許されないことと受け止めており、視聴者、関係者の方々に深くお詫びする」「今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作にしっかりと生かしたい」と述べた。

引き続き、午後4時から千代田放送会館7階の会館会議室からオンライン形式による記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には54社100人が参加した。
はじめに小町谷委員長が意見書の概略を説明し、「質問者の属性の書き換えと質問の作り上げを前提にすると、事実に基づいて放送していない点と意見を取り扱う時の出所が明らかにされていない点で、民放連の放送基準に抵触していると考え、委員会は放送倫理違反があると判断した」と述べた。また、判断の過程で委員会が問題とした5点について解説し、番組に投稿を続けた視聴者との間の信頼を裏切ったという点で重い事案だと述べた。
続いて高田委員長代行は、「報道においてダブルチェックのプロセスが入り込む仕組みになっていなかったことが大きなポイントである」「ものが言えない雰囲気の中では、有能さが独善を生む」と指摘した。岸本委員長代行は、「視聴者の質問はそのままで扱わないと放送倫理違反になる、という判断ではない」「すべての放送人に意見書を良く読んでもらい、どこに誤りがあったのかなどを自分事として理解してほしい」と述べた。大村委員は、「コロナ禍においてもコミュニケーションを円滑にはかり、相談しやすい環境や制作体制を整える工夫が求められる」とコメントした。
記者からは、「審議入りの際の議事概要には、世論誘導にもつながりかねない深刻な事案とあったが、結果はどうだったのか」という質問があり、これに対して小町谷委員長は、「ヒアリングを通してそのような事実は認められなかった」と答えた。その他の質問は、事実関係の確認に関するものがほとんどだった。

以上

第42号

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見

2022年3月9日 放送局:テレビ朝日

テレビ朝日は、情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』の2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるパートにおいて、番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。同パートでは、番組の前半で当日のテーマを視聴者に伝え、放送中に番組ウェブサイトなどで受け付けた質問を番組終盤で紹介し出演した専門家らが答えていた。ところが、番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問として放送したケースが多数含まれていた。また視聴者から受け付けた実際の質問を使用した場合も、文章の表現を修正したケースでは、クレームを避けるためとして投稿者の属性を書き換えて架空の属性で放送していたという。
委員会は、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論の誘導にもつながりかねず、放送倫理違反の疑いがあるとして、11月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議の結果、質問は視聴者の関心事やその傾向を示す重要な事実情報であり、本件放送のようにそれらを制作者が歪めることがあってはならない。また、本件放送で扱われた質問は、視聴者の意見表明とは必ずしも言えないが、投稿者の属性を書き換えることはその出所を不明確にするものであり、日本民間放送連盟の放送基準の「(32)ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない」「(35)ニュースの中で意見を取り扱う時は、その出所を明らかにする」に反しているとして、放送倫理違反があったと判断した。

2022年3月9日 第42号委員会決定

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目 次

2022年3月9日 決定の通知と公表

通知は、2022年3月9日午後3時20分から千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。
また公表の記者会見は、東京都で新型コロナウイルス感染拡大防止のためのまん延防止等重点措置が実施されていたため、午後4時からオンライン会議システムを使用して行われ、委員長および担当委員が委員会決定の説明と質疑応答を行った。
会見には54社100人の参加があった。詳細はこちら。

2022年6月10日【委員会決定に対するテレビ朝日の対応と取り組み】

委員会決定 第42号に対して、テレビ朝日から対応と取り組みをまとめた報告書が2022年6月1日付で提出され、委員会はこれを了承した。

テレビ朝日の対応

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目 次

  • 1.委員会決定前の対応
  • 2.委員会決定時の放送内容
  • 3.委員会決定内容の周知徹底
  • 4.放送番組審議会への報告
  • 5.委員会決定後の取り組み
  • 6.再発防止に向けて
  • 7.終わりに

第168回 放送倫理検証委員会

第168回–2022年2月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』審議入り

第168回放送倫理検証委員会は2月10日にオンライン会議形式で開催された。
番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問として放送し、11月の委員会で審議入りしたテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了承が得られたため、3月にも当該放送局へ通知して公表することになった。
字幕の内容に誤りがあったNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、当該局から提出された番組DVDや調査報告書等を踏まえて協議を行った。その結果、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
民放局のバラエティー番組に同じ政党の幹部3人が出演し、政治的な課題などについて見解を語ったことについて、当該局から提出された番組DVDを視聴した上で意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2022年2月10日(木)午後5時~午後7時15分
場所
オンライン会議形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. テレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について審議
3月にも委員会決定を通知・公表へ

テレビ朝日は、情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』の2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるパートにおいて、番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。11月の委員会で、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論の誘導にもつながりかねず、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、前回までの議論と追加で実施した調査を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。その結果、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、3月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

2. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。
番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。
放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
1月の委員会では、NHKから提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論を行い、深刻な事案である可能性があるとして討議入りを決めた。その上で当該局に対し事実関係について質問を行うとともに、改めて詳細な報告書の提出を求め、議論を継続することにした。
今回の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

3. 同じ政党の幹部がそろって出演した民放局バラエティー番組について意見交換

元日に放送された民放局のバラエティー番組に同じ政党の幹部3人が出演し、政治的な課題などについて見解を語ったことについて、視聴者から政治的中立を問題視する意見がBPOに寄せられていたことから、委員会は番組を視聴した上で意見交換を行った。
当該局からは社内に調査チームを立ち上げて制作過程の調査を行っているとの報告があったため、委員会はその結果を待って議論を行うことにした。

4. 1月に寄せられた視聴者意見を議論

1月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、民放局のバラエティー番組で放送された、コンビニエンスストアの食品を料理人が評価する企画や、民放局の報道番組で元総理大臣のツイートを批判したコメンテーターの発言に対する批判的意見等に関して事務局から概要が報告されたが、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの意見はなかった。

以上

2022年2月10日

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』審議入り

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。
番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。
放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
1月の委員会では、NHKから提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論を行い、深刻な事案である可能性があるとして討議入りを決めた。その上で当該局に対し事実関係について質問を行うとともに、改めて詳細な報告書の提出を求め、議論を継続することにした。
今回の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第167回 放送倫理検証委員会

第167回–2022年1月

NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について討議

第167回放送倫理検証委員会は1月14日に千代田放送会館でオンラインを併用して開催された。
11月の委員会で審議入りしたテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について、当該放送局に対して行ったヒアリング等を踏まえ、担当委員から意見書の原案が提出された。
字幕に不確かな内容があったNHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀬直美が見つめた東京五輪』について、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論した。その結果、事実関係や放送に至った経緯等に不明な点があるため、より詳細な報告書の提出を求めるとともに、討議事案としてさらに議論を継続することとした。
手製の筏を漕いで無人島から脱出を図りその所要時間を競う企画を放送した民放テレビ局の番組について、不適切な演出が行われたと週刊誌が報じ、BPOにも視聴者意見が寄せられたことについて、委員会は番組を視聴したうえで意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2022年1月14日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室およびオンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. テレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について審議

テレビ朝日は情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』の2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるパートにおいて、番組側が作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。同パートでは、番組の前半で当日のテーマを視聴者に伝え、放送中に番組ウェブサイトなどで受け付けた質問を番組終盤で紹介し、出演した専門家らが答えていた。また視聴者から受け付けた実際の質問を使用する場合も、文章に手を入れ表現を修正したケースでは、クレームを避けるためとして投稿者の属性を書き換え架空の属性で放送していたという。
11月の委員会で、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論誘導にもつながりかねず、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、当該局から提出された追加報告書やヒアリングの内容を基に前回の委員会で交わされた意見を踏まえ、担当委員が作成した意見書の原案が示され、議論が行われた。
次回の委員会では、意見書の修正案が提出される予定である。

2. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について討議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京五輪』の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と放送局のホームページで公表し謝罪した。
番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀬直美さんら映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。
放送後、視聴者から問い合わせがあり、NHKが男性に再度確認したところ、男性はデモに参加する意向があると話していたものの、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論を行った。委員からは、報告書に記されている内容だけでは、取材時および放送に至る過程での確認作業が適正に行われたかどうかがわからない、字幕で紹介された男性の発言内容など事実関係に不明な点が多い、などの意見が相次いだ。議論の結果、委員会は、深刻な事案である可能性があるとして討議入りを決め、当該局に対し放送に至った経緯等について質問を行うとともに、改めて詳細な報告書の提出を求め、それを踏まえて議論を継続することにした。

3. 民放局が放送したバラエティー番組について意見交換

手製の筏を漕いで無人島から脱出を図りその所要時間を競う企画を放送した民放テレビ局の番組について、船が筏をけん引するなど不適切な演出があったとする週刊誌報道があり、また、BPOにも視聴者からの意見が寄せられていたことから、委員会は番組を視聴した上で意見交換を行った。
委員からは「番組の最後に『安全に配慮して撮影しています』と小さくクレジットがしてあった。牽引はやむなくやっていることで、面白おかしくするためにやっているわけではないということだろう」「このタイプの番組で最も気を遣うのは出演者の安全確保だ。それを否定すると他の同種の番組が作れなくなるのではないか」という意見があった。
一方で、「出演回数の多いお笑いタレントを番組内のスターとして育てているのは理解できる。ただ、参加者同士の競争という体をとっておいて、3組のうち2組がリタイヤし、残った筏を船で牽引して成功させるというのはやりすぎだ」「少年少女に語り掛けるコーナーを設けるなど、この番組は子供向けの感動的な物語風の作りになっている。それだけに、今回船による牽引が行われたことは罪深いのではないか」という声もあがった。
その上で「週刊誌報道をきっかけに、番組を見る人に筏は牽引されていることがあるということがわかってしまった。今後自浄作用が働くのではないか」「そういう番組作りだとわかって楽しんでいる視聴者も沢山いると思う。幻滅する人は見なくなるだろう。この番組の扱いに関しては、そうした視聴者の判断に委ねるべきだ」として議論を終えた。

4. 12月に寄せられた視聴者意見を議論

12月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、大阪のクリニック放火殺人事件や女優の急死の取り上げ方等に関して事務局から概要が報告されたが、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの意見はなかった。

以上

第166回 放送倫理検証委員会

第166回–2021年12月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』の審議

第166回放送倫理検証委員会は12月10日に千代田放送会館で開催された。
番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問として放送したテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について、11月の委員会で審議入りが決まったことを受け、今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告された。

議事の詳細

日時
2021年12月10日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. テレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について審議

テレビ朝日は情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』の2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるコーナーにおいて、番組側が作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。同コーナーでは、番組の前半で当日のテーマを視聴者に伝え、放送中に番組ウェブサイトなどで受け付けた質問を番組終盤で紹介し、出演した専門家らが答えていた。また視聴者から受け付けた実際の質問を使用する場合も、文章に手を入れ表現を修正したケースでは、クレームを避けるためとして属性を書き換え架空の属性で放送していたという。
11月の委員会で、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論誘導にもつながりかねず、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、11月末から12月にかけて当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告され、それを踏まえて議論が行われた。委員からは、制作体制の中のポジションによる意見表明の難しさ、企画・制作の段階における局の関与の程度、好調な視聴率を背景とした制作フロー点検の欠落の可能性、視聴者とのキャッチボールという枠組みの変更可能性、コロナ禍でのコミュニケーションの困難さなどを指摘する意見が出された。
次回の委員会では、意見書の原案が提出される見通しである。

2. 11月に寄せられた視聴者意見を議論

11月の30日間にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、多数の意見があった「バラエティー番組の企画」等について事務局から概要が報告され議論したが、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの意見はなかった。

以上

第165回 放送倫理検証委員会

第165回–2021年11月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』審議入り

第165回放送倫理検証委員会は11月12日に千代田放送会館で開催された。
委員会が7月21日に通知・公表した日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な再発防止策などをまとめた対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表する事にした。
番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問として放送していたテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について、同局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議した結果、視聴者の質問等を番組が作ることは世論誘導につながりかねず放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯について検証する必要があるとして審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2021年11月12日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. 日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見への対応報告を了承

7月21日に通知・公表した日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見(委員会決定第41号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、社内の検証チームが今回の事態に至った経緯と原因について調査
し、結果を30分番組にまとめて放送したことや、当該番組『スッキリ』において、担当以外の複数プロデューサーによるチェック体制を構築したこと、他の生放送の情報番組においても、事前に制作したVTRを可能な限り担当者以外の視点でチェックする体制を構築したことが記されている。また、再発防止への取り組みとして、コンプライアンス推進室に人権問題の相談に対し助言を行う担当を新たに設けたことや、全社員・スタッフを対象に専門家を招いてアイヌ民族差別や人権問題に関する研修会を2度にわたって実施したことが報告されている。
委員からは、「今回の問題は1994年『イヨマンテの夜』の事実上の再発だ。再発防止策が機能しているかどうか、長いスパンで確認する仕組みがあればなお良いと思う」「チェック体制の強化や研修の実施が柱になっているが、それよりも職場のコミュニケーション不足への対応の方が重要なのではないか。今後何らかのかたちで取り組んでほしい」などの意見が出され、概ね適切な対応がなされているとして報告を了承し、公表することにした。
日本テレビの対応報告書は、こちら(PDFファイル)

2. テレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について審議

テレビ朝日は情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』で、2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるコーナーで、番組側が作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。
同コーナーでは、番組の前半で当日のテーマを視聴者に伝え、放送中に番組ホームページなどで受け付けた質問を番組終盤で紹介し、出演した専門家らが答えていた。
当該放送局によると、放送中の短い時間で採用する質問を選り分けるため、チーフディレクターが選別の基準としてコーナーの流れを想定した質問案を事前に作っていたが、今年3月から10月にかけて、この想定質問を視聴者からの質問として放送に使ったという。104問が番組側で作成され、年齢や居住地域などは架空の属性で紹介された。また視聴者から受け付けた実際の質問を使用する場合も、文章に手を入れ表現を修正したケースでは、クレームを避けるため属性を書き換えていたという。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議を行った。その結果、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論誘導にもつながりかねない深刻な事案で放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

3. その他

視聴者意見等を踏まえて、衆議院議員選挙を含む報道について議論を行った。

以上

2021年11月12日

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』が審議入り

放送倫理検証委員会は11月12日、テレビ朝日の『大下容子ワイド!スクランブル』について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、同番組内の視聴者からの質問に答えるコーナーで、今年3月からおよそ半年間にわたり、番組スタッフが用意した質問を視聴者からの質問であるかのように放送していた。
テレビ朝日は10月21日、番組や番組ホームページで概要を公表するとともに、謝罪を行った。
同局によると、放送した質問のうちおよそ2割にあたる104問が番組側で作成されていたほか、視聴者から受け付けた実際の質問の中には、質問者の居住地域や年代などが架空の属性で紹介されていたものもあった。
委員会は、テレビ朝日から報告書と番組DVDの提出を受けて協議を行った。その結果、深刻な事案であり、質問の内容等によっては世論誘導にもつながりかねないなどの意見が出され、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第164回 放送倫理検証委員会

第164回–2021年10月

9月の視聴者意見を報告

第164回放送倫理検証委員会は10月8日に開催され、9月にBPOに届いた視聴者意見の概要が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2021年10月8日(金)午後5時~午後6時40分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、
大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. 9月の視聴者意見の概要

9月の30日間にBPOに届いた視聴者意見のうち、批判的な意見が寄せられた「バラエティー番組の企画」および「自民党総裁選」や「皇室関連」を巡る報道について、事務局からその概要が報告され、議論を行った。

以上

第163回 放送倫理検証委員会

第163回–2021年9月

日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見の通知・公表について報告

第163回放送倫理検証委員会は9月10日にオンライン会議形式で開催された。
今回の委員会より大村恵実委員が加わり、また委員会の冒頭、小町谷委員長が委員長代行に高田昌幸委員を指名した。
委員会が7月21日に行った日本テレビの情報番組『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。

議事の詳細

日時
2021年9月10日(金)午後5時~午後6時15分
場所
オンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、
大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. 日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見の通知・公表について報告

日本テレビは3月12日に放送した情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した際、出演したタレントが「この作品とかけまして、動物を見つけた時ととく。その心は、あ、犬」という謎かけのコメントをした。
委員会は、本件放送はアイヌ民族に対する明らかな差別表現を含んだもので、オンエアに至った背景には、収録動画の最終チェック体制が極めて甘く、アイヌ民族やその差別問題に関する基本的知識がスタッフ間で決定的に不足していた点があったことを指摘し、日本民間放送連盟の「放送基準」の「(5)人種・性別・職業・境遇・信条などによって取り扱いを差別しない」「(10)人種・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しなければならない」などに反しているとして、放送倫理違反があったと判断した。
当該局に対する通知および公表の記者会見は、7月21日、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言下であることからオンライン会議システムを使用して行った。
この日の委員会では、通知・公表に関する当該局の報道と、その後当該番組内で放送された検証コーナー、ならびに当該局の検証番組を視聴したうえで、委員長と担当委員が通知・公表の詳細について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

以上

2021年7月21日

日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、7月21日午後5時40分から、オンライン会議システムを使用して行われた。委員会から小町谷育子委員長、高田昌幸委員、井桁大介委員、米倉律委員の4人が出席し、日本テレビからは取締役専務執行役員ら3人が出席した。
まず、小町谷委員長から委員会決定について、本件放送にはアイヌ民族に対する明らかな差別表現が含まれており放送倫理違反があると判断したことを伝えた。その背景として「収録動画の最終チェック体制が極めて甘かったことや、紹介作品をスタッフの中で1人しか見ていないなど自らの制作番組に対するこだわりが薄かったこと、番組で取り上げたアイヌ民族やその差別問題に関する基本的知識が決定的に不足していたことが挙げられる」と説明した。そして「ヒアリングを受けた制作スタッフは口々に差別をする意図はなかったと語っているが、意図がなくても差別発言が容認されるわけではない」と指摘した。また、スタッフの1人が、当該コーナーで紹介した作品は差別される側の問題を伝える内容なので、番組で片方の意見だけを伝えることになるのではないかと考えたことについて「バランスをとって伝えるということが誤って放送現場に定着している可能性がある。研修等を通じて改める必要がある」と述べた。
続いて高田昌幸委員が「日本テレビでは、かつて、バラエティー番組内でお笑いタレントが「イヨマンテの夜」の曲を流しながら踊ってみせた際、アイヌ民族の尊厳を著しく貶め差別を助長したという問題が起きた。その教訓が全く生かされておらず継承もされていない。我々が常識だと思っていたことが、若い世代にとってはそうではなく、そこにこの問題の一筋縄ではいかない難しさがある」と述べた。そのうえで「幹部や上席の人は、現場を信頼して任せることと、任せっきりにすることは違うと自覚し、細やかな目配りや手当てをしてほしい」と指摘した。
これに対して日本テレビ側は「委員会決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かし再発防止に努めたい。社員、スタッフの人権意識や感度の低さに光をあて、不断の努力を重ねて、正しい情報を視聴者に伝えていきたい」と述べた。

続いて、午後6時15分からオンラインによる記者会見を開き決定内容を公表した。小町谷育子委員長、高田昌幸委員、井桁大介委員、米倉律委員の4人が出席し、132アカウントからの参加があった。
はじめに、小町谷委員長が委員会の判断について「チェック体制が隙だらけだった。また、制作番組に対するこだわりが薄く、担当のディレクター以外誰も紹介作品を視聴していなかった。差別に関する知識に乏しく放送人としての感度にも問題があった」と説明し、差別の意図がなくても差別表現をした放送が容認されるわけではないと指摘した。
続いて高田委員が「差別をしてはいけないという当たり前のことが世代間で継承されていない。番組のチェックがきわめて簡略に行われていた背景には、当該コーナーがグループ会社の配信映画を紹介するいわば番組宣伝だとして、制作する側が軽く見てしまった側面もあるのではないか」と指摘した。
記者からは「どういうところで放送人の感度が欠けていると感じたのか」という質問があり、これに対して高田委員は「感度とは、人を動物にたとえたときに、これでいいのかなと一瞬立ち止まることができるかどうかということだ。今回、番組を制作する上で、それはできたのではないか」と説明した。
井桁委員は「現在もなお差別はさまざまな形で続いている。一般常識を持っていればそれに気づき、立ち止まって議論できたのではないか。その最初の引っかかりがなかったこと自体に感度の低さを感じている」と答えた。
米倉委員は「チェック体制が緩いという以前に、一つ一つの制作プロセスにおいて、現場のスタッフの間で本当にいいのかの一声がなかなか出ない。出たとしても十分に議論された形跡がない。その点こそが放送人の感度に関わる部分ではないか」と述べた。

以上

第41号

日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見

2021年7月21日 放送局:日本テレビ

日本テレビは3月12日に放送した情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した際、出演したタレントが「この作品とかけまして、動物を見つけた時ととく。その心は、あ、犬」という謎かけのコメントをした。放送後、日本テレビには視聴者から不適切だという批判が相次ぎ、日本テレビは、同日夕方のニュース番組『news every.』で「放送内容においてアイヌの方たちを傷つける不適切な表現がありました。深くお詫び申し上げるとともに今後、再発防止に努めてまいります」と謝罪し、日本テレビのウェブサイト及び番組ウェブサイトにお詫びを掲載した。翌週月曜日15日には、『スッキリ』の番組冒頭で「制作に関わった者に、この表現が差別に当たるという認識が不足していて、番組として放送に際しての確認が不十分でした」と説明し、全面的に謝罪した。
委員会は、当該放送局に報告書と同録DVDを求め協議した結果、差別的な表現であり放送倫理違反の疑いがあるとして、4月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議の結果、本件放送はアイヌ民族に対する明らかな差別表現を含んだもので、オンエアに至った背景には、収録動画の最終チェック体制が極めて甘く、アイヌ民族やその差別問題に関する基本的知識がスタッフ間で決定的に不足していた点があったことを指摘し、日本民間放送連盟の「放送基準」の「(5)人種・性別・職業・境遇・信条などによって取り扱いを差別しない」「(10)人種・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しなければならない」などに反しているとして、放送倫理違反があったと判断した。

2021年7月21日 第41号委員会決定

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目 次

2021年7月21日 決定の通知と公表

新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発出を踏まえ、通知は7月21日午後5時40分からオンライン会議システムで行われた。また公表の記者会見は午後6時15分から同じくオンライン会議システムを使用して行われ、委員長および担当委員が委員会決定の説明と質疑応答を行った。会見には132アカウントの参加があった。
詳細はこちら。

2021年11月12日【委員会決定に対する日本テレビの対応と取り組み】

委員会決定 第41号に対して、日本テレビから対応と取り組みをまとめた報告書が2021年10月20日付で提出され、委員会はこれを了承した。

日本テレビの対応

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目 次

  • 1、委員会決定についての放送
  • 2、検証番組の放送について
  • 3、番組審議会への報告
  • 4、BPO委員を招き研修会を実施
  • 5、再発防止に向けた取り組み
  • 6、おわりに

第162回 放送倫理検証委員会

第162回–2021年7月

日本テレビの情報番組『スッキリ』を審議
7月中に委員会決定を通知・公表

第162回放送倫理検証委員会は7月9日にオンラインで開催された。
アイヌ民族に対する差別表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』について、担当委員から意見書の修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、7月中に当該放送局への通知と公表を行うことにした。

議事の詳細

日時
2021年7月9日(金)午後5時00分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室およびオンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、井桁委員、大石委員、高田委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』について審議

日本テレビが3月12日に放送した情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した際、出演したタレントが「この作品とかけまして動物を見つけた時ととく。その心は。あ、犬」という謎かけのコメントをしたことについて、委員会は、差別的な表現であり放送倫理違反の疑いがあるとして、4月の委員会で審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、7月中に当該放送局へ通知して公表することにした。

以上

第161回 放送倫理検証委員会

第161回–2021年6月

フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見への対応報告を了承

第161回放送倫理検証委員会は6月11日にオンラインで開催された。
委員会が2月10日に通知・公表したフジテレビの「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な再発防止策やこれに基づいて再開した世論調査の実施状況など取り組みをまとめた対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』について、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2021年6月11日(金)午後5時00分~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室およびオンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、井桁委員、大石委員、高田委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見への対応報告を了承

委員会が2月10日に通知・公表したフジテレビの「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見(委員会決定第40号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定を社内やFNN(フジニュースネットワーク)の各会議で報告・共有し内容の浸透を図ったこと、再発防止策とこれに基づいて再開した世論調査の実施状況、研究者を招いての社内勉強会やBPO委員との研修会の模様、また報道局全社員が委員会決定を読み提出した所感の抜粋などが記されている。
委員からは、「取材活動であるはずの世論調査が、契約に基づく単なる委託業務としてルーティン化していたなどの反省が示されるなど問題が的確に認識されている」「再発防止策を緻密に設定しているのは問題を深刻に受け止めた結果だと感じる」「BPOが『丸投げ』と指摘した今回の問題は、世論調査特有のものではなく制作現場全てに当てはまる教訓だ、と所感にあるが、こうした問題に制作現場全体で取り組んでもらえるとよい」「マスメディアが行う世論調査に内在する問題に対策が必要とされる中、今後どうすればよいかの課題が見えて来たという点で、委員会の調査と当該放送局の対応には意義があった」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、当該報告を了承し、公表することにした。
フジテレビの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』について審議

日本テレビが3月12日に放送した、情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した際、出演したタレントが「この作品とかけまして動物を見つけた時ととく。その心は。あ、犬」という謎かけのコメントをしたことについて、委員会は、差別的な表現であり放送倫理違反の疑いがあるとして、4月の委員会で審議入りを決めた。
5月委員会でのヒアリング結果の報告を経て、今回の委員会では、当該局の関係者に対して実施したヒアリングに基づき担当委員が作成した意見書の原案が示され、意見交換を行った。次回は修正案が提出される予定である。

以上

第160回 放送倫理検証委員会

第160回–2021年5月

日本テレビの情報番組『スッキリ』を審議

第160回放送倫理検証委員会は5月14日にオンラインで開催された。
委員会が1月18日に通知・公表したフジテレビの『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含めた取り組み状況など対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、当該対応を了承して公表することにした。
アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』について、前回委員会で、差別的な表現は放送倫理違反の疑いがあり放送された経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りが決まったことを受け、今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者に対して行ったヒアリングの途中経過が報告された。

議事の詳細

日時
2021年5月14日(金)午後5時00分~午後6時45分
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第1会議室(千代田放送会館7階)およびオンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、井桁委員、大石委員、高田委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見への対応報告を了承

委員会が1月18日に通知・公表した、フジテレビの『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見(委員会決定第39号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。 また、担当委員から、4月に当該放送局がオンライン形式で実施した研修会での委員との意見交換の様子などが報告された。委員会は、当該放送局の今後の改善状況を見守り、当該報告を了承して公表することにした。

2. アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』について審議

日本テレビは3月12日、情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した後、コーナーに出演したタレントが「この作品とかけまして動物を見つけた時ととく。その心は。あ、犬」という謎かけのコメントをした。放送後、視聴者からアイヌ民族を犬とかけるのは不適切だという批判が相次ぎ、日本テレビは、同日夕方のニュース番組『news every.』で謝罪するとともに局および番組ホームページにお詫びを掲載した。また、翌週月曜日15日には、番組冒頭で「制作に関わった者に、この表現が差別に当たるという認識が不足していて、番組として放送に際しての確認が不十分でした」と説明し、全面的に謝罪した。
前回の委員会で、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議した結果、差別的な表現は放送倫理違反の疑いがあり、適切な編集が行われずに放送された経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りが決まった。今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者に対するヒアリングの途中経過の報告を受けて議論をした上、次回委員会において提案される予定の意見書案を踏まえてさらに検討することとした。

以上

第159回 放送倫理検証委員会

第159回–2021年4月

アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』が審議入り

第159回放送倫理検証委員会は4月9日に開催された。
委員会の冒頭、3月に退任した神田安積前委員長、中野剛委員に替わり新たに就任した小町谷育子委員、井桁大介委員が挨拶を行ったあと、委員の互選により小町谷育子委員が委員長に選出された。また、小町谷委員長は岸本葉子委員長代行及び升味佐江子委員長代行を引き続き委員長代行に指名した。
アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』について同局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議した結果、差別的な表現は放送倫理違反の疑いがあり、放送された経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2021年4月9日金午後5時00分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、井桁委員、大石委員、高田委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』が審議入り

日本テレビは3月12日、情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した後、コーナーに出演したタレントが「この作品とかけまして動物を見つけた時ととく。その心は。あ、犬」という謎かけのコメントをした。放送後、視聴者からアイヌ民族を犬とかけるのは不適切だという批判が相次ぎ、日本テレビは、同日夕方のニュース番組『news every.』で謝罪するとともに局および番組ホームページにお詫びを掲載した。また、翌週月曜日15日には、番組冒頭で「制作に関わった者に、この表現が差別に当たるという認識が不足していて、番組として放送に際しての確認が不十分でした」と説明し、全面的に謝罪した。
委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDを求め、それらを踏まえて協議した。その結果、差別的な表現は放送倫理違反の疑いがあり、適切な編集が行われずに放送された経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

以上

2021年4月9日

アイヌ民族に対する差別的表現を放送した日本テレビの情報番組『スッキリ』が審議入り

日本テレビは3月12日、情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した後、コーナーに出演したタレントが「この作品とかけまして動物を見つけた時ととく。その心は。あ、犬」という謎かけのコメントをした。放送後、視聴者からアイヌ民族を犬とかけるのは不適切だという批判が相次ぎ、日本テレビは、同日夕方のニュース番組『news every.』で謝罪するとともに局および番組ホームページにお詫びを掲載した。また、翌週月曜日15日には、番組冒頭で「制作に関わった者に、この表現が差別に当たるという認識が不足していて、番組として放送に際しての確認が不十分でした」と説明し、全面的に謝罪した。
委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDを求め、それらを踏まえて協議した結果、放送に至る経緯等を解明する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第158回 放送倫理検証委員会

第158回–2021年3月

2月の視聴者意見を報告

第158回放送倫理検証委員会は3月12日に開催され、2月にBPOに届いた視聴者意見の概要が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2021年3月12日(金)午後5時~午後7時
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第1会議室(千代田放送会館7階)+オンライン
議題
出席者

神田委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、大石委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. 2月の視聴者意見の概要

2月の28日間にBPOに届いた視聴者意見のうち、新型コロナウイルスのワクチン接種のニュースで注射の映像が頻繁に放送されることに対する批判的な意見などが事務局から報告されたが、個別の番組について特に踏み込んだ議論は行われなかった。

以上

2020年12月3日

全国の放送局を対象に意見交換会開催

放送倫理検証委員会と全国の放送局との意見交換会が、2020年12月3日千代田放送会館2階大ホールで開催された。また事前に申し込みのあった放送局に対して、オンライン配信を同時に実施した。放送局の参加者は、会場に40人、配信にて視聴したのは97社で、そのアカウント数は298件であった。さらに社内の会議室等で複数名による共同視聴をしたところも多数あった。委員会からは神田安積委員長、岸本葉子委員長代行、升味佐江子委員長代行、西土彰一郎委員の4人が出席した。コロナ禍のため、2020年度に放送倫理検証委員会が意見交換会を開くのは今回限りで、オンライン配信を利用して全国を対象に実施したのは初めてのことである。

開会にあたり、BPO事務局を代表して濱田純一理事長が「この意見交換会はBPOとしても大変重視しており、BPOの活動と放送局の皆さまとをつなぐ非常に重要な役割となっている。これからメインテーマである番組と広告の問題について議論してもらうが、民放連の広告の取り扱いのルールなどにもあるように、放送の番組内容と、広告放送との識別、区別というのは大変重要で、視聴者にとって、放送の効用というものがしっかり伝わっていくための重要な原理だと思う。同時に、広告放送は民間放送が放送を自由で自律的に行っていくための大事な柱でもあるので、この番組と広告の問題というのは、放送局全体として幅広く議論していくテーマである」と挨拶した。

意見交換会の最初は、10月30日に公表した「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題した委員長談話について、以下のとおり、神田委員長が解説をした。
放送基準は全部で152条あるが、3分の1以上は広告に関する放送基準である。理事長から、番組と広告の問題は民放において重要な原理であるとのお話があったが、放送基準における広告にかかる条文の多さはそのことを物語っている。
約3年前に、ある地方局の番組の中で、いわゆるステマの問題が取り上げられたことがあり、2017年5月25日付で民放連が「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」を策定した。
「留意事項」は、まず、「民放は視聴者の利益に資することを目的に、さまざまな情報を番組で取り扱っており、そうした取り組みのひとつとして、特定の商品・サービスなどを取り上げ、紹介することが日常的に行われている」「番組で特定の商品・サービスを取り扱うことは、視聴者に対して具体的で有益な情報提供となる」ということを明らかにしている。
同時に、「留意事項」は、「取り上げ方や演出方法などによっては、広告の意図や目的がなくても、視聴者に『広告放送』であるとの誤解を招く場合がある」ことも指摘している。また、万が一にも「誤解や疑念を持たれることは、民放の信頼やメディア価値の根幹にも関わる」と書かれている。
皆さんには、常にその2つの視点を意識しながら、番組の制作をしていただきたい。委員会も、番組が広告と誤解されることが問題になることがあれば、この2つの視点から考えることになる。つまり、特定の商品・サービスを取り上げ、紹介する番組について、最初から規制ありきではなく、視聴者に対して具体的で有益な情報提供であるという点を前提としたうえで、検討や評価をしているということをご理解いただきたい。
本年、秋田放送、山口放送の番組に関して、広告と誤解されるのではないかとの視聴者意見が寄せられ、委員会は討議を約半年間かけて行ってきた。その経過の中で、本年3月6日に、民放連の放送基準審議会が、「放送基準の遵守・徹底のお願い」という文書を発出した。本文書は、番組と広告の識別に関して、「その取り上げ方は放送責任の範囲内でおのずと決まってまいります。そのうえで、演出や構成などには大いに工夫の余地があるのではないでしょうか。番組の企画から放送前の考査まで、社内横断的なしっかりとした体制を構築し、放送の価値向上と収益の確保に尽力していただきたいと思います」としている。この点について、委員会は、民放連が各局に向けて、自主的・自律的な検討を促す趣旨のメッセージであると受け止めている。また、本文書は、番組と広告の問題とは別に、BPOにおいて過去にあった事例と同様の事例が繰り返し審議入りされていることについて、各局に対して警鐘を鳴らしている。
委員会は、このような動きを踏まえながら、半年間をかけて両放送局の番組の討議を行い、また、番組と広告の問題について、民放各局の自主的・自律的な対応を促すために望ましい結論に向けた議論をし、その結果、本年10月30日付の委員長談話を出すに至った。
委員長談話において触れているとおり、委員会は、これまで3局の事案について2つの意見書を出してきた。その中で、番組と広告の問題について、今後も民放各局で自主的・自律的に判断してほしい、その判断に当たっては「留意事項」を総合的に判断していただきたいということを繰り返し伝えてきた。その趣旨は、意見書で問題になった番組が放送倫理違反であると評価したとしても、そのことが、ある特定の部分を放送しなければ問題なかったということを意味するものではなく、むしろ、たとえば、その番組の中で、仮に問題がある部分があったとしても、他の部分で別の内容の放送になっていれば、いわば広告の印象が減殺され、全体として放送倫理に違反しないとされる余地があるのではないか、言い換えれば、ある特定の部分だけの問題ではなく、番組全体について「総合的に」考えてほしいということである。
通知公表時の質疑応答や意見交換会において、「番組の内容をどのようにすれば広告放送であると誤解を招かれなかったのか教えてほしい」といった質問や、さらには「番組と広告の境目をはっきりさせる明確な基準を示してほしい」という質問・要望も寄せられた。しかし、委員会の守備範囲は放送局の判断基準を作る役割ではない。仮に私たちが判断基準を作ることになれば、民放連が自主的・自律的に策定した「留意事項」を越えて、放送局の手足を縛る基準を作ってしまうことになりかねない。また、「総合的に判断する」ことは、放送局の自主的・自律的な判断を必要以上に阻害しないようにするためであり、決して放送局の判断を迷わせるためではない、ということは委員長談話でも重ねて触れているところである。
もっとも、「留意事項」が策定されてから既に3年が経過しているとしても、委員会で具体的なケースが取り上げられたのは去年以降であり、番組と広告の問題が急にクローズアップされて放送倫理違反という判断が出され、多くの局がどのような対策を講じたらよいか悩んでいることが意見交換等でもうかがわれたところである。そこで、委員長談話において、そのような事情を踏まえ、本問題について放送事業者や民放連が自ら問題点を整理した上で、処方箋を出すことが望ましく、自主的・自律的な取り組みが期待できるのであれば、その成果を待つべきであろうと考えるに至った。なお、自主的・自律的な取り組みが期待できるという1つの事情として、先ほど言及した民放連の放送基準審議会の文書に触れ、「本問題に関する放送局の現場の声を集約しながら、改めてこの問題に向き合う必要があるという民放連の自覚と決意がうかがわれる」と評価させていただいた。
以上のような点を踏まえて、委員会は、「民放連加盟各社または民放連の自主的・自律的な取り組みを当面注視することとする」旨の結論に至った。放送基準92条や「留意事項」の原点に立ち返っていただき、「留意事項」を実質的にまた総合的に会社の中で議論し参照して、よりよい番組作りをしてほしいと思う。委員会が「見守る」というのは、本問題を今後も皆さんと一緒に考えていくという趣旨であり、このような意見交換の機会があれば引き続き一緒に考えていきたいと思っている。
なお、本年9月に民放連の放送基準審議会に私が出席し、本問題について意見交換の機会をいただいた。議事要録が作成され各局に配付されていると聞いているので、どの程度ご参考になるか心もとないが、ご参考にしていただきたいと思う。
ご清聴いただき感謝申し上げたい。

次に、西土委員が「番組と広告の境目について」というテーマで講演をした。
本委員会は番組と広告の識別をめぐる問題を扱い、2つの決定を出している。これらの決定では、対象となった番組について、民放連放送基準第92条及び「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断した結果、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと結論づけた。
決定を公表した後、「何を基準として総合的に判断するのか」という声をよく聞く。この基準については、何よりも皆さんがお作りになった民放連放送基準第92条及び留意事項に依拠して判断する。その際、迷った時には原点に立ち返ってもらいたい。なぜ放送基準第92条及び留意事項が定められたのか、そこが原点になろうかと思う。当然だが、放送局の独立とそれに対する視聴者の信頼を保持することに、第92条の趣旨、目的を見出すことができる。
以上の趣旨に照らして、最終的には視聴者の読後感というか、視聴後感において、番組全体が広告放送であるとの印象を残すかどうかがポイントになるかと考える。つまり、番組の中に広告の要素、特定の商品をPRする要素があったとしても、番組を見終わった後に、例えば全体としてこれは情報番組であるという印象を視聴者に残すかどうかが、重要になる。
この判断のために、留意事項の2において例示として挙げられている「番組で取り扱う理由・目的」「視聴者への有益な情報」「視聴者に対してフェアな内容」など事案に即した多様な要素を番組のテーマや制作に至った背景も含め検討する。こうした検討は、繰り返しになるが、視聴者の知る権利に奉仕する放送の自由を確保するためという視点に立ってのことである。
もちろん、視聴者の知る権利に奉仕する放送の自由を行使するのは皆さんであり、したがって番組と広告の境目の問題は、皆さんがまず自主・自律的に考えていただくことになる。この点について、決定第36号は、決定第30号を引用して、「番組と広告の違い、その境目を認識し、緊張感を持って一線を画す日々の作業は部署を問わず、すべての民放関係者が肝に銘じるべき根本ではないか」と指摘して、自主・自律による対応策を求めている。
濱田理事長が冒頭で述べられた通り、広告は民放各局の自主・自律にとって、また財源という点でも極めて重要である。皆さんが番組と広告の境目の問題に突き当たって苦慮されていることは、私共も重々承知している。綺麗ごとではないことを承知してはいるけれども、国民の知る権利に奉仕する放送のプロの皆さんであれば、視聴者の立場に立って、説得力のある根拠を示しながら、グレーゾーンにある番組と広告の線引きも行うことができるものと確信している。そして、以上の不断の積み重ねにより養われるはずの皆さんの実践的な知を、民放連等を通じて、ぜひとも放送界全体の共有知にしてくだされば、大変嬉しい。それができるのであれば、この問題を扱った本委員会として、せめてもの救いになると考えている。最後に希望を付け加えて、私からの簡単な話に代えたいと思う。
どうもありがとうございました。

このあとの意見交換での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 番組と広告の問題は民放全体の重要な課題でありながら、例えば他局の営業系番組に関する深い情報を聞くことなどはなく個別の問題は表に出て来ないのだが、共有知とするために、委員会がヒアリングなどを通じて経験したことから共有化に向けての方策や方法論として気付いた点があれば披歴してほしいのだが。
A: 委員会決定の対象になった当該局が、その経験値を民放連に伝えるとか、系列局で悩みや苦労を共有して民放連に出してもらい、民放連が何らかの形で文書化するのが筋道立った方法ではないかと考える。(西土委員)
  各事案の意見書、特に委員会の「調査」または「検証」というところには、ヒアリングで制作過程について詳細にお聞きし、委員の受け止めたことが非常に具体的に書かれている。ヒントや共有知としてお役立ていただければうれしく思う。(岸本委員長代行)
  事例研究会であれば、参加している局どうしの意見交換、質疑応答の場があるので知見を共有できると思う。また、各局からの依頼(講師派遣制度)で機会を設けていただければ、率直な意見交換ができると思う。(神田委員長)
   
Q: 今後番組が番組として成立しつつ、ビジネスツールとしても考えていかねばならない時代に、現場にはBPOを恐れるような感覚があるが、新しい取り組みについて委員はどういうふうに考えるのかを伺いたい
A: 大変難しい質問であるが、問題になった時に備えて、きちんと説明できる社内における社内横断的かつ総合的な検討と、それを記録しておくことが必要である。新しい取り組みの内容については私たちにも知見として教えていただきたいし、勉強会などで意見交換していくことも大切な役割であると思う。(神田委員長)
  個人の意見だが、家のテレビで自分の家族が見た時にどう思うか、というのが1つの判断基準になるのではないか。恐れるべきはBPOの審議入りより、視聴者にそっぽを向かれることのはずだ。皆さんと共にトライ&エラーしながら経験値を重ねて、視聴者の信頼を失わない放送を、維持していきたい。(岸本委員長代行)
  番組は放送局が自らの責任で作る。局自身の判断で作られていると視聴者は信じているから、広告放送の中でなく番組の中である特定の商品やサービスが取り上げられると、その商品やサービスに対する好意的印象は高まる。だからこそ、広告主も広告放送ではなく番組の中で、自分の商品やサービスが取り上げられることを期待する。そこに気を付けないと、局の作る番組の中に広告が紛れ込み、視聴者は混乱し、商品やサービスに対する判断を誤ることにもなる。それは、本来局が制作する番組に対する信頼を低下させる恐れもあり、その点が心配である。そうならないためには、局が独自の視点で番組を展開していることが明確になるようにしなければならないのではないか。番組が全部同じ方向での特定の商品やサービスの情報提供になると視聴者の選択肢がなくなるので、番組の制作主体である局の姿が見えにくくなりがちである。番組制作の際に構成や内容に何かしらの手間をかけ、制作する主体が局である点に誤解が生じないようにすることが、放送の領域を自分たちで守ることにつながると思う。(升味委員長代行)
   
Q: 秋田放送と山口放送のローカル単発番組について、委員会は審議の対象としないという結論になったが、その理由について詳細に聞きたい。また、審議入りするか否かの判断基準について「①対象となる問題が小さく、かつ、②放送局の自主的・自律的な是正措置が適切に行われている場合には、原則として審議の対象としない」との考え方は、今後も判断基準の1つと考えても良いのか。
A: 後者の質問については、2009年7月に出した委員長談話の中で、審議に入るか否かの基準についてご指摘の2点の基準を明示しており、現在もその基準に沿って運用している。最初の質問については、議事概要に書いてあるとおりである。討議で終了している案件は、当該局に対してもそれ以上の説明をしていないので、その旨ご理解いただきたい。(神田委員長)
   
Q: 現在、民放連の考査事例研究部会で放送基準の改定作業が始まっているのだが、放送基準の書きぶりやよく分からない点などが委員会で議論になったことがあるか。
A: 「留意事項」において「対価を得て」という点が要件になるのかが議論になった。この点について、民放連に問い合わせたところ、対価の支払いの有無に関係なく「留意事項」は適用がされるとの回答であった。このことは意見書や委員長談話において触れているが、民放連でも改めて各局に十分周知されたほうがよいのではないかと思う。(神田委員長)
   
Q: 番組制作に伴う収益化が放送局にとっては命綱なので営業担当としては守っていきたいのだが、考査上のストライクゾーンが以前と比べて狭まった訳ではないのか。今までストライクだと思っていたのをボールと言われたのが今回の例だった、と解釈しているのだが。
A: ストライクゾーンつまりホームベースの大きさは変わっていない。ただし、ホームベースを通っていなくてもストライクだと思い込んでいた可能性はあるかもしれない。投げる前にきちんと考査をしてほしい。ストライクゾーン自体に変わりはないとしても、永久に変えなくて良いのかという問題はあると思う。時代の変化やメディアの役割の在り方などを踏まえ、民放連や各局において自主的・自律的に検討の余地はあるのかもしれない。(神田委員長)
   
Q: 対価性があっても視聴後感が悪くなく、番組内容が視聴者にとって有益であれば、番組として成立するのかどうかについて聞きたい。
A: 「留意事項」に照らして総合的に判断した結果、特に内容に問題がなければ、対価の支払いの有無にかかわらず、番組として問題ないという判断になると思う。(神田委員長)
   
Q: 質問ではなく要望ですが、2009年にバラエティー番組に対して出された意見書(委員会決定第7号)の中に、バラエティーが「嫌われる」5つの瞬間というのがあってすごく分かりやすかったので、「番組が広告と認識されない5つの瞬間」のような形でまとめてもらえると理解しやすくなると思うのだが。
A: 今回の番組と広告の問題は、民放の信頼やメディア価値の根幹にも関わる問題であり、少し硬い文章にせざるを得なかった。ご指摘の趣旨を踏まえて、今後も分かりやすく説明する機会や工夫をするように努めていきたい。(神田委員長)

意見交換会のまとめとして、神田委員長が、「当面は放送局の自主的・自律的な対応を見守りたいと考えているが、チェックリスト化、マニュアル化という対応ではなく、自主的・自律的に総合的な検討を深めていただきたい」と述べ、「是非お声掛けいただければ、できる限り意見交換の機会を設けていきたい」と結んだ。
最後にBPO事務局の竹内淳専務理事が、「番組と広告をめぐる現状の厳しさはひしひしと伝わってくるが、皆さまの自主・自律に期待することをご理解いただき、コロナ禍でもこういう意見交換の場は今後オンラインも加味して設けていきたい」と挨拶して閉会した。

終了後に実施したアンケートの回答から一部を紹介する。

  • 気になっていた「委員長談話」の詳細な解説を聞くことができて良かった。
  • 番組と広告の境界線については、今後も引き続き取り上げてほしい。
  • 多数かつ関連部署の人が同時に遠隔参加できることがオンラインの最大の利点。
  • 出張しなくて済むので助かる。時間も交通費も節約でき、大変ありがたい。
  • 参加しやすく効果的なので、今後もオンライン形式での意見交換の場を設けてほしい。
  • 必要な資料の事前共有をさせてほしかった。
  • キー局の場合は社員数が多いので、「1社5枠」という配信の制限は厳しい。

以上

第157回 放送倫理検証委員会

第157回–2021年2月

フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見と、「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表について意見交換

第157回放送倫理検証委員会は2月12日に開催された。
委員会が1月18日に通知・公表したフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見の通知・公表について、委員長と担当委員から詳細が報告された。
委員会が2月10日に通知・公表したフジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。

議事の詳細

日時
2021年2月12日(金)午後3時~午後6時
場所
オンライン
議題
出席者

神田委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、大石委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見の通知・公表について報告

フジテレビが2018年10月20日から2019年10月26日にかけて放送したクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、委員会は、解答権のないエキストラを出場させていたことは、番組が標ぼうしている「1人対99人」というコンセプトを信頼した多くの視聴者との約束を裏切るものであり、また、NHKと日本民間放送連盟が定めた「放送倫理基本綱領」の「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定に照らし、制作過程の重要な部分を制作者たちが十分に共有していなかった点において、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであるとして、放送倫理違反があったと判断した。
新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発出を踏まえ、1月18日、当該局への通知は電子メールで行い、公表は委員会決定をBPOのウェブサイトに掲載する形で行い、記者会見の開催は見合わせた。広報を窓口に質問を受け付けたところ、当日数件の確認の連絡が寄せられた。
この日の委員会では、委員会決定を伝えた当該局のニュースを視聴し、委員長と担当委員が通知・公表の経緯について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表について報告

フジテレビは、2019年5月から2020年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」の一部に架空データが含まれていたとして、2019年5月13日から2020年6月1日にかけて18本のニュース番組で報じた一連の世論調査結果に関する放送を取り消した。世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査結果を1年余りにわたって報じたもので、委員会は、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めないとして、本件放送には重大な放送倫理違反があったと判断した。
新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発出を踏まえ、2月10日、当該局に対する通知および公表の記者会見をオンライン会議システムを使用して行った。
この日の委員会では、委員会決定を伝えた当該局のニュースを視聴し、委員長と担当委員が会見での質疑応答などについて報告した。
通知と公表の概要は、こちら

以上

2021年2月10日

フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が発出されていることから、2021年2月10日午後1時30分からオンライン会議システムで行われた。委員会から神田安積委員長、高田昌幸委員、巻美矢紀委員の3人が出席し、フジテレビからは5人が出席した。
まず神田委員長から、委員会決定について、「架空データが含まれた一連の世論調査報道」には重大な放送倫理違反があったと判断したことを通知した。その理由として、架空データが含まれた世論調査の結果を正しい世論調査として放送し、事実に反する情報を視聴者に伝えた点を挙げた上で、当該局は架空データ作成に関与しておらず、本件放送において意図的な作為もなかったものの、世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査のニュースを1年余りにわたって合計18本放送し、市民の信頼を大きく裏切り、また、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めない、と指摘した。
続いて高田委員は、民主主義の根幹である世論調査の信頼性に大きな影響を与えたことに言及した上で、「委託先の調査会社が全面的に信用できると考え、立ち会いで防げたかもしれないのに立ち会わなかった」といった、過去の審議事案と同様の思い込みや判断ミスが認められるとし、「ニュース番組で報じる以上、世論調査もジャーナリストの取材活動の一環であるとの認識があれば、委託先の作業であっても、より目配りがきいて今回の事態を防止できた可能性がある」と述べた。巻委員からは、「民主主義における世論調査の重要性を強く認識している以上、委託先に任せたままにせず、何らかの対応を取るべきだった。再発防止策をつくり、世論調査を開始しているが、二度とこうした事態を招かないようジャーナリストとしての目線を欠かさないでいただきたい」との意見が示された。最後に神田委員長から「結論として重大な倫理違反と評価しており、再発することがないように自主的、自律的な努力を続けていただきたい。」と要望が伝えられた。
これに対してフジテレビは、「本日の決定をきわめて重く受け止めている。ご意見を真摯に受け止め、今後の世論調査の報道に生かしていきたい」「世論調査は先月再開したが、不正防止策を徹底していくことで、視聴者の信頼回復に努めていきたい」と述べた。

続いて、午後2時30分から同じくオンライン会議システムによる記者会見を行い、委員会決定を公表した。記者会見には42のアカウントから参加があった。
はじめに神田委員長が「本件放送は、フジテレビが、架空データが含まれた世論調査の結果を正しい世論調査として放送し、事実に反する情報を視聴者に伝えたものであり、放送倫理基本綱領、民放連放送基準の前文、さらには、放送基準の第32条に反しているものと評価される。フジテレビは、架空データ作成に関与しておらず、また意図的な作為もなかったが、世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、意見書の別表に記載したテーマに関し、架空データが含まれた世論調査報道を1年余りにわたり、合計18回放送したものであり、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めない。これらの点を踏まえ本件放送には重大な放送倫理違反があったと判断した」と述べ、意見書の構成に沿って概要を説明した。
続いて高田委員は「専門の業者に調査そのものを任せたとは言え、世論調査に関する作業はすべて取材活動の一環であり、集めた材料が正しいかどうか、記者として仔細に検討し、裏付けを取り確認に確認を重ねるという、ジャーナリストとしての初歩の行いを貫徹することができていれば、また違った結果になったと思う」と審議を振り返った。
巻委員は「ヒアリングを通じ、当該局の皆さんが民主主義における世論調査の重要性を認識していることがわかったが、そうであれば、委託先の調査会社に任せたままにせず、ジャーナリストとして適切な対応を取るべきだったのではないか」と述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: この調査は産経新聞社と合同だが、主体はフジテレビだったという認識か。
A: BPOは放送のみを対象としている。新聞社は検証の対象にしておらず、フジテレビのみを対象として調査をした。(高田委員)
   
Q: 本件において、委員会は委託先、再委託先をヒアリングの対象としていないが、不正に実効的な役割を果たしていた再委託先、ないしは委託先にヒアリングしなかったのはなぜか?
A: フジテレビが委託先、再委託先にヒアリングを実施しており、フジテレビに対する委員会の調査で委託先、再委託先のシステムの実態について必要な情報が得られた。フジテレビに対するヒアリングの内容に特段の疑義があれば委託先、再委託先にヒアリングを求めることもあり得たが、今回の事案では、フジテレビからの聞き取りで事実認定が可能と判断した。(神田委員長)
   
Q: 他の新聞やテレビ各社に比べフジテレビのチェック体制はどうだったと評価しているか?
A: 委託先への立ち会いに入るか、入らないかなどは、他メディアと比べての判断ではない。今回はヒアリングでも、当のフジテレビ自身に、委託先を訪問していれば防ぐことができたかもしれないとの認識があり、我々もヒアリングを重ねる中、訪問していれば、防ぐことが出来た可能性があった、という判断をしている。他局と比べての判断ではない。(高田委員)
   
Q: フジテレビは取り消した放送18本の世論調査の結果と、それを修正した結果を、現在に至るまで公表していない。不正の内容を公表するべきと考えるが、委員会では明らかになっていない状態をどう考えるか?
A: 訂正をどのように行うかは、それぞれの当事者が自主的に判断することだと思う。取り消した場合はこのような内容で放送しなさいと言うことは、もとよりBPOの役割ではない。(高田委員)
放送の取り消しの方法には、各局の自主的・自律的な判断がある。取り消した放送の内容を紹介・周知することもひとつの考え方であり、それを明らかにしないということも、その是非は別として、当該局の判断だと考える。そこで、どのような内容の放送の取り消しだったのかということを事実として別表に客観的に記載するにとどめ、当該局のかかる自主的・自律的な判断については委員会が評価を控え、意見書の読み手がそれをどう評価するかに委ねることとした。(神田委員長)
   
Q: 重大な放送倫理違反があったという結論だが、重大がついた理由は?
A: 報道番組における重要な情報である世論調査であることを前提とし、フジテレビがその世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにしていたこと、その時々に世論形成に大きな影響を与える重要なテーマに関して架空データが含まれた世論調査報道を1年余りにわたり合計18本放送したということを踏まえ、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことを総合的に考慮し、委員会で議論の結果、重大な放送倫理違反があったとの判断に至った。(神田委員長)
   
Q: 1人に任せきりだったということだが、政治部長や、報道局長、あるいは解説委員室もあると思うが、一緒に作業をしていなかったということか?
A: トピック的にその時々の政治情勢、社会情勢に関する質問をつくる場合、報道局内で声をかけ質問を集め検討はしていた。ただ、委託先の世論調査会社から(調査の)答えが返ってくると、そのデータは共有するが、分析・解析、ニュース原稿の作成といったプロセスは担当者に任されていた。政治部長や報道局長は、職制上は当然関わっているが、事実上任されていた。(高田委員)

以上

第40号

フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見

2021年2月10日 放送局:フジテレビ

フジテレビは、2020年6月19日、2019年5月から2020年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったと発表した。フジテレビが調査を委託した会社が再委託した調査会社で、実際には電話をしていないにもかかわらず「電話をした」として架空の調査データが入力されていたと明らかにした。フジテレビは世論調査を休止し、2019年5月19日から2020年6月1日にかけて18のニュース番組で伝えた世論調査結果とそれに関連する放送を取り消した。
2020年8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたことや、調査を委託した会社が不正の行われた調査会社へ再委託した経緯自体をフジテレビが把握していなかったなどのチェック体制の不備を踏まえ、合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
日本民間放送連盟(民放連)とNHKが1996年に定めた放送倫理基本綱領は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」と定め、また、民放連の放送基準の冒頭では「世論を尊び」「正確で迅速な報道」の重視を求めている。さらに放送基準の第32条は報道の責任として「事実に基づいて報道し、公正でなければならない」と規定する。
委員会は、本件放送は世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査結果を1年余りにわたり報じたもので、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めないとして、本件放送には重大な放送倫理違反があったと判断した。

2021年2月10日 第40号委員会決定

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目 次

2021年2月10日 決定の通知と公表

コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が発出されていることから、当該局に対する通知は2021年2月10日午後1時30分からオンライン会議システムで行われた。また公表の記者会見は午後2時30分から同じくオンライン会議システムで行われ、委員長、担当委員が決定の説明及び質疑応答を行った。記者会見には42のアカウントから参加があった。
詳細はこちら。

2021年6月11日【委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み】

委員会決定 第40号に対して、フジテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が2021年6月1日付で提出され、委員会はこれを了承した。

フジテレビの対応

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目 次

  • 1.経緯、委員会決定時の報道と社内部局への周知
  • 2.再発防止策の策定・公表と世論調査再開
  • 3.委員会決定を受けての取り組み
  • 4.終わりに

2021年1月18日

フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見の通知・公表

フジテレビに対する委員会決定の通知は、新型コロナ特措法に基づき政府が緊急事態宣言を発出したことを踏まえ、1月18日午後1時30分に電子メールで行った。

これを受けてフジテレビは、「決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります。全社一丸となり、再発防止に取り組んでまいります」とコメントした。

意見の公表は、同日午後2時30分にBPOのウェブサイトに委員会決定の全文を掲載することにより実施し、記者会見の開催は見合わせた。広報を窓口に質問を受け付けたところ、当日数件の確認の連絡が寄せられた。

以上

第156回 放送倫理検証委員会

第156回–2021年1月

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送した
フジテレビのニュース番組を審議
2月にも委員会決定を通知公表へ

第156回放送倫理検証委員会は1月15日に開催された。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が18回にわたり行われたとして審議入りしたフジテレビのニュース番組について、担当委員から意見書の修正案が再度示された。意見交換の結果、大筋で了承が得られたため、2月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。

議事の詳細

日時
2021年1月15日(金)午後3時30分~午後7時
場所
オンライン
議題
出席者

神田委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、大石委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビは、昨年6月19日、2019年5月から2020年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送を取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、電話調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済のサンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成したとしている。フジテレビは架空のデータを含む誤った世論調査結果を放送していた。
昨年8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたことや、フジテレビが架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
前回までの議論を受けて担当委員から再度示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、2月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

以上

第39号

フジテレビ 『超逆境クイズバトル!!99人の壁』
解答権のないエキストラ補充に関する意見

2021年1月18日 放送局:フジテレビ

フジテレビは、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、2020年4月3日、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
委員会は、当該放送局から提供された報告書と番組の映像をもとに討議した結果、「意欲的な番組であるが、もともと無理があったのではないか」「同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似がうかがわれる。なぜ教訓が生かされなかったのか、再発防止策が生かされていたのか解明する必要がある」などの意見が委員から出され、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りし、議論を重ねてきた。
委員会は、本件番組が解答権のないエキストラを出場させていたことは、番組が標ぼうしている「1人対99人」というコンセプトを信頼した多くの視聴者との約束を裏切るものであり、また、NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた「放送倫理基本綱領」の「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定に照らし、制作過程の重要な部分を制作者たちが十分に共有していなかった点において、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであるとして、本件番組には放送倫理違反があったと判断した。

2021年1月18日 第39号委員会決定

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目 次

2021年1月18日 決定の通知と公表

政府の緊急事態宣言発出を踏まえ、通知は、1月18日午後1時30分に電子メールで行われ、公表は、午後2時30分にBPOのウェブサイトに委員会決定の全文を掲載し、記者会見の開催は見合わせた。
詳細はこちら。

2021年5月14日【委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み】

委員会決定 第39号に対して、フジテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が2021年5月10日付で提出され、委員会はこれを了承した。

フジテレビの対応

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目 次

  • 1.委員会決定の報道について
  • 2.委員会決定の社内周知について
  • 3.制作センターの取り組み
  • 4.BPO委員を招き研修会を実施
  • 5.番組審議会への報告
  • 6.再発防止の取り組み
  • 7.総括

第155回 放送倫理検証委員会

第155回–2020年12月

フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議
1月にも委員会決定を通知・公表へ

第155回放送倫理検証委員会は12月11日に開催された。
委員会が4月8日に通知・公表した北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
委員会が6月30日に通知・公表した琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
委員会が9月2日に通知・公表したテレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の修正案が再度示された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、1月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が18回にわたり行われたとして審議入りしたフジテレビのニュース番組について、担当委員から意見書の修正案が示され、意見交換を行った。

1. 北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見への対応報告を了承

4月8日に通知・公表した北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見(委員会決定第35号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
対応報告は、通常、通知・公表後3か月をめどに提出されるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で当該局研修の日程が大幅に延期されたため、この時期の提出となった。
報告書には、委員会決定を受けて、全社員・スタッフにその内容を周知したほか、報道制作現場に対してアンケートを実施し、意見書の内容に関する受け止め方を確認したこと、委員会からの問題指摘後すぐに「選挙報道マニュアルの策定」を行うとともに、「報道ゼミナールの定期開催」「編集主幹を新設、メンター制導入などの組織の改善」などの再発防止への取り組みを決め実践していることなどが記されている。
委員からは、「事前に現場アンケートや社内に設けられた検証委員会の報告書に目を通して勉強会に臨んだ。出席者の感想を見ると委員会の思いが伝わっていると感じた」「簡潔にまとめられた報告書ではあるが、局内で十分に議論され、率直な意見交換も行われて再発防止に向けた取り組みを深めている様子がうかがわれる」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
北海道放送の対応報告書は、こちら。

2. 北日本放送「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への対応報告を了承

6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」(委員会決定第36号)への対応報告が当該放送局である北日本放送から書面で提出された。
報告書には、問題が指摘された後、直ちに番組検証チームを立ち上げて関係者から聞き取った内容を検証し報告書にまとめ、営業活動における放送倫理研修会を自主開催したこと、関係部局が協議して営業系番組の取り扱いルールを明文化したことなどが記されている。また、委員会決定を受けて、機構改革を行い編成業務局内に考査部を新設したこと、検証委員会委員を招いて研修会を開催したことなどが記されている。
委員からは、「何が問題であり、なぜそうなったのかという観点からしっかりと検証した上で、今後の対応策についても極めて明確な方針を出しており、高く評価できる報告書である」「意見書の趣旨をきちんと受け止めている。放送倫理に対する意識の希薄さがあったことを率直に受け止め、再発防止に努める決意がうかがわれる」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
北日本放送の対応報告書は、こちら。

3. テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見への対応報告を了承

9月2日に通知・公表したテレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見(委員会決定第38号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を社内に周知徹底した上で、社内横断的な「放送倫理関連会議」で議論を行い、報道局以外の番組でも同種の事案の発生がないよう問題意識の全社的な浸透を図ったこと、再発防止勉強会や検証委員会の委員を招いて研修会を開催したことが記されている。また再発防止への取り組みとして、スタッフへの指導と環境づくりを行う「放送倫理を遵守するための対策」と、放送前に問題点を洗い出し修正する「放送倫理違反を防ぐための水際対策」を行ってきたことなどが報告されている。
委員からは、「研修会では活発な議論ができた。また再発防止策も大事なポイントを具体的に押さえている」「再発防止策がこの形で実施されるならば、今後は同様の問題が起きないことが期待できる」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
テレビ朝日の対応報告書は、こちら。

4. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」と、番組ホームページ上で公表した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
前回までの議論を受けて担当委員から再度示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、1月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

5. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビは、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送を取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、電話調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済のサンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成したとしている。フジテレビは架空のデータを含む誤った世論調査結果を放送していた。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたことや、フジテレビが架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
委員会には、前回の委員会に諮られた意見書の原案に対する議論を踏まえて担当委員が作成した修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

以上

第154回 放送倫理検証委員会

第154回–2020年11月

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビのニュース番組を審議

第154回放送倫理検証委員会は11月13日に開催された。
委員会が8月4日に通知・公表したTBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見について、当該放送局から具体的な改善策を含む取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
秋田放送または山口放送がそれぞれ制作放送した弁護士法人1社提供のローカル単発番組に関する討議を踏まえ、委員長談話「番組内容が広告放送と誤解される問題について」を10月30日にBPOのウェブサイトで公表したことについて報告があった。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の再修正案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が合計18回にわたり行われたとして審議入りしたフジテレビのニュース番組について、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換を行った。

1. TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見への対応報告を了承

8月4日に通知・公表したTBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見(委員会決定 第37号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の社内周知を行った上で、バラエティ部門の全プロデューサーを対象に書面によるアンケートを行い、それを読み込むことで互いの現状認識や危機感を共有したこと、レギュラーのバラエティ番組ごとに「演出講座」を開いて「許される演出」「許されない演出」とは何かについて意見交換を行い、それぞれの番組が許容できるラインはどこまでかを改めて確認し共有したこと、また、再発防止への取り組みとして、各バラエティ番組に新たにチーフプロデューサー制を導入し、複眼でのチェックを行うようにしたことなどが記されている。
担当委員からは、「『演出講座』は効果的で、良い素材として当該番組担当者以外にも考えてもらい、率直な意見が出ている」ことなどが報告された。委員からは、「アンケート内容は詳細で役に立つと思う。危険の芽は、どこの放送局でも共通しているので、この報告書で今回のような問題が解消していくことを期待したい」「最近のバラエティ番組に関する意見書を通じて、構造的問題が共通していることが窺われるので、当該局に限らず、改めて何らかの形で放送界全体に見解を示すよう検討することが望ましい」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
TBSテレビの対応報告書は、こちら。

2.「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題する委員長談話について報告

10月の第153回委員会において、秋田放送が制作放送した30分のローカル単発番組『そこが知りたい!過払い金Q&A』及び山口放送が制作放送し、秋田放送が山口放送から購入して放送した30分のローカル単発番組『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』について、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの指摘はできるものの、討議にて終了し、審議入りしないとの結論に至ったことを議事概要に掲載した。
また、番組内容が広告放送と誤解される問題に関し、10月30日に委員長談話としてBPOウェブサイトに公表した。
今回の委員会では、神田委員長から報告がなされ、事務局からは秋田放送と山口放送の議事概要掲載後の対応などが説明された。

3. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」と、番組ホームページ上で公表した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された意見書の修正案を踏まえて担当委員が作成した再修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

4. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビは、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送を取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済のサンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成したとしている。フジテレビは架空のデータを含む誤った世論調査結果を放送していた。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、報告書と、9月末から10月初旬にかけて当該局の関係者に対して実施したヒアリングに基づき担当委員が作成した意見書の原案が示され、意見交換を行った。次回は修正案が提出される予定である。

以上

委員長談話

番組内容が広告放送と誤解される問題について

2020年10月30日

放送倫理検証委員会
委員長 神田安積

1. はじめに

 委員会は、これまで、「長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見」(2019年10月7日付第30号。以下「決定第30号」という)及び「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」(2020年6月30日付第36号。以下「決定第36号」という)において、番組内容が広告放送と誤解されることに関する問題(以下「本問題」という)についての基本的な考え方を示してきた。
 そして、①秋田放送が制作し2019年10月26日に放送した30分のローカル単発番組『そこが知りたい!過払い金Q&A』(以下「本件番組①」という)及び②山口放送が制作し、秋田放送が山口放送から購入して同年10月19日に放送し、また山口放送においても同年5月25日及び同月29日に放送した30分のローカル単発番組『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』(以下「本件番組②」という。以下、本件番組①・②を「本件番組」と総称する)について、2020年5月の委員会(第148回)以降計6回にわたり本問題に関する討議を重ねてきた。
 討議の過程においては、本件番組を両局から購入して放送した局があり、また、本件番組を1社提供した弁護士法人X法律事務所(以下「X法律事務所」という)が提供する類似した番組を制作放送した局またはその番組を購入して放送した局がいずれも相当数存在することが報告され、本件番組が内包する本問題が全国的な広がりを有し、日本民間放送連盟(民放連)加盟各社が直面している共通の課題であることを改めて認識するに至った。
 そこで、10月の委員会(第153回)において、民放連加盟各社及び民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて示すことが適切であると考え、委員長談話として明らかにすることとした。また、本件番組については放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの指摘はできるものの、討議にて終了し、審議入りしないとの結論に至った。なお、本件番組に関する討議の詳細は委員会の議事概要に掲載することをもって代えることとする。

2. 委員会からの要望

 民放連の放送基準第92条は、「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない。」と定めている。冒頭にも述べたとおり、委員会は、3局の事案に関する2つの意見書において、本問題に関する基本的な考え方を示してきた。特に、決定第36号では、「番組と広告の違い、その境目を認識し、緊張感を持って一線を画す日々の作業は部署を問わず、すべての民放関係者が肝に銘じるべき根本ではないか」との決定第30号の一文を今一度引用したうえで、「『番組と広告の境目』をめぐる問題の対応策についても、民放連や民放各局の自主的・自律的な精神と姿勢で検討されるよう望みたい」との要望の意を表明した。
 同時に、委員会は、視聴者に広告放送であるとの誤解を招くような内容・演出になっていないかを局が判断する際、民放連が2017年に策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(以下「留意事項」という)において「総合的に判断する必要がある」とされていることを重視し、各意見書における個別的・具体的な判断がいわば新たな一般的な基準として独り歩きし、その結果、番組制作を必要以上に制約することがないように、両意見書において基本的な考え方を示すにとどめてきた。しかし、その結果、両意見書の通知・公表時の記者会見や意見交換会、事例研究会等において、少なからぬ局から、「どのようにすれば広告放送であるとの誤解を招かずに済んだのか」「番組と広告の境目を画するより明確な基準を示してほしい」という質問や要望が出されるに至っている。
 たしかに、留意事項が策定されて既に3年以上が経過しているとはいえ、本問題が短期間にクローズアップされたこともあり、また、民放連の説明によると、留意事項は対価の有無にかかわらず適用されるとのことであり、この点がまだ十分に浸透されていないことにも鑑みれば、問題点の整理や自主的・自律的な対応を講じるために一定の時間的な猶予が必要であると思われる。
 しかし、上記の要望の背景にかかる事情があるとしても、視聴者との約束である放送基準を策定し、また、適切に運用 するのはもとより委員会ではなく、放送事業者や民放連の役割であることからすれば、委員会が上記の要望等に応えることは適切ではない。そもそも委員会は、放送事業者自身がその自由を確保し、その自律を促すための仕組みの中に位置づけられた組織である。また、放送事業者は、放送の自由を生かし、その使命を果たすために、自らの手で放送倫理を具体化し、問題が生じれば、自主的・自律的に方策を講じる責任がある。
 したがって、本問題についても、放送事業者や民放連が、委員会がこれまで示してきた基本的な考え方を参照し、自ら問題点を整理したうえで、自らの手で処方箋を出すことが望ましいものと考える。そして、このような自主的・自律的な取り組みが期待できるのであれば、その成果を待つべきであろう。
 この点に関し、民放連は、2020年3月6日付で、放送基準審議会議長名による「放送基準審議会から放送基準の遵守・徹底のお願い」と題する文書を会員社宛に発出し、その中で「番組と広告の識別」の問題を取り上げて、「番組の企画から放送前の考査まで、社内横断的なしっかりとした体制を構築し、放送の価値向上と収益の確保に尽力していただきたい」と注意喚起し、併せて、「演出や構成などには大いに工夫の余地がある」ことを指摘するとともに、「会員社の皆さまの声に耳を傾けながら、丁寧に対応してまいります」と表明するに至った。この表明からは、留意事項が策定されたときと同様に、同種の事案が今後生じ得ることを前提として、本問題に関する放送局の現場の声を集約しながら、改めてこの問題に向き合う必要があるという民放連の自覚と決意がうかがわれる。
 そこで、委員会は、当面、本問題に対する民放連加盟各社及び民放連の自主的・自律的な取り組みを注視することとしたいと考えるに至った。当然のことながら、この判断は本問題にかかる放送倫理違反の疑いを今後一律に不問に付すことを意味するものではない。
 この結論に至るまでの委員会の議論では、すべての局が必要十分な自主的・自律的な対応を取るとは限らず、中には適切な対応を取らない局が出る可能性もあるのではないか、また、一見対応が取られたように見えても、留意事項に例示された事項をチェックリスト化することをもって十分と考え、様々な要素を踏まえた総合的な検討を怠る局が出るのではないか等の懸念の声が上がったのも事実である。実際、最近の意見交換会等における各局との質疑応答からは、留意事項に例示された基準や3局の事案に関する2つの意見書を形式的にマニュアル化しようとする傾向がうかがえることも否めないところである。
 しかし、番組と広告の識別には、抜け道を探すような後ろ向きの対応が求められているのではない。留意事項にも明記されている「民放の信頼やメディア価値の根幹」を維持・発展させるために、自主的・自律的な「攻めの対応」が求められているのである。そして、判断の当否に迷うことがあれば、本問題の原点に常に立ち返ることが求められる。それは、なぜ番組と広告を識別しなければならないのか、なぜ番組と広告の識別が「民放の信頼やメディア価値の根幹」に関わるのか、を考えることに他ならない。
 「広告」は、商品やサービスを視聴者に対して訴求し、その購買を誘引するために、スポンサーが主体となって制作されるものである。これに対し、「番組」は、放送局が主体となって、独立した立場で内容を吟味して制作しているとの視聴者からの信頼を前提として放送されている。ところが、「番組」の中に「広告」の要素が混在し、「番組」と「広告」の識別が困難になればどうなるか。視聴者の商品・サービスに対する判断を誤らせ、ひいては視聴者の放送事業者に対する信頼や番組の内容に対する信頼が損なわれてしまうのではないか。放送の社会的影響力の大きさ、そして視聴者の保護の観点をも踏まえ、番組と広告との識別の意義の重要性を今一度問い直すべきではないか。そのうえで、各局において、編成・制作・営業・考査がそれぞれの立場から多角的に相互にチェックすることが求められるのではないか。
 このような議論をする中で、委員会は、本問題にはもとより唯一の答えはなく、不断の議論こそが大切であることを痛感させられた。各局においても、制作・放送に携わる一人一人においても、番組と広告を識別しなければならない意義を常に自問自答し、その原点に立ち返る姿勢がない限り、たとえ対応策を講じても問題は再発し、民放の信頼は損なわれ、メディア価値の根幹も傷つき修復が困難になることだろう。
委員会は、民放連加盟各社及び民放連が、番組と広告の識別の意義を踏まえ、現場の声にも耳を傾けながら、留意事項に照らして「総合的に判断する」姿勢を深化させる取り組みを実行することを期待する。そして、今後も本問題に対する自主的・自律的な対応に重大な関心を持ちながら、その取り組みを見守りたい。

以上

委員長談話全文(PDF)pdf

第153回 放送倫理検証委員会

第153回–2020年10月

番組内容が広告放送と誤解される問題について委員長談話を公表

第153回放送倫理検証委員会は10月9日に開催された。
委員会が6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への対応報告が当該放送局である琉球朝日放送から書面で提出され、その内容を検討した結果、委員会との意見交換が適切な時期に開催されることを期待して、報告を了承し公表することにした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の修正案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にして、合計18回にわたりフジテレビで放送されたニュース番組について、当該局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人1社提供のローカル単発番組に関し、委員会はこれまで番組内容が広告と誤解されることに関する問題について合計6回にわたり討議を重ねてきたが、今回の委員会で討議を終了し、審議入りしないこととした。また、民放連加盟各社および民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて共有することが適切であるとして、「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題された委員長談話をBPOのウェブサイトで明らかにすることにした。

1.「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への琉球朝日放送の対応報告を了承

6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」(委員会決定第36号)への対応報告が当該放送局である琉球朝日放送から書面で提出された。
報告書には、委員会決定を受けて、全職員に決定内容を周知し、全社員・スタッフによる番組再検証を実施したこと、再発防止への取り組みとして、「番組制作にあたっては企画提案書を提出して、それを基に様々な人が意見を出し合い、スポンサーとも交渉をして、最終的にスポンサーが納得できないということであれば、見送りもある。売り上げが厳しいから放送倫理違反をしてもいいということはありえない」「放送倫理違反の意見書を受けた意味合いは大きい。今後も定期的に勉強会を開き社員教育を図っていく」などを確認したことが記されている。委員からは「全般的に意見書の主旨は理解されていると感じた」という意見が出され、また、「営業主導が途中から徐々に報道主導になったその境目を整理して書いていただけるとよかった」という意見も出されたが、意見書で指摘した課題に対しては概ね適切な対応がなされており、またコロナ禍で、委員会と当該局との意見交換は行われていないが、今後適切な時期に開催されることを期待することとして、当該対応報告を了承し公表することにした。
琉球朝日放送の対応報告書は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された原案を踏まえて担当委員が作成した意見書の修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの追加報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成し、誤った世論調査結果のデータを作成していたとしている。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、9月末から10月初旬にかけて当該局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告された。次回委員会では意見書の原案が提出される予定である。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した(以下「本件番組①」という。2018年2月17日初回放送・同年10月13日再放送)。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』(以下「本件番組②」という)を番組販売で購入し放送していた。また、山口放送は、本件番組②を2019年5月25日、同月29日に制作放送していた。
なお、山口放送は、本件番組②とは別に、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』(以下「本件番組③」という)を制作し、2018年6月2日以降合計4回放送している。本件番組③については、本件番組②との関連性から、念のため一体のものとして検討することが適切であると考え、討議の対象としたが、放送内容が類似していることを踏まえ、討議における議論の対象は本件番組①及び本件番組②のみ(以下「本件番組」と総称する)とした。

本件番組は、その共通点として、弁護士法人X法律事務所(以下「X法律事務所」という)の1社提供の単発番組であり、X法律事務所の提供表示がなされ、番組名の前にも「弁護士法人X法律事務所presents」というタイトルが付けられている。また、番組の内容は、X法律事務所の代表弁護士(当時)が自ら出演し、クイズ形式か再現ドラマ形式かの違いはあるものの、X法律事務所における高額の過払金の回収事例を複数紹介して解説を加えている。そして、X法律事務所の相談料が原則無料であることを含む基本的な料金体系を説明し、さらに放送日時と近接した時期に開催されるX法律事務所の無料相談会を案内して勧めている。本編の中には中CMがあり、いずれも代表弁護士が登場するX法律事務所のCMである。以上のとおり、本件番組の内容や構成はほぼ共通している。
なお、討議中において、X法律事務所が、2020年6月に破産開始決定を受け、その後、X法律事務所の所属弁護士会が、X法律事務所が回収した過払い金を依頼者の意思に反して流用した疑い等があるとして、同弁護士会の綱紀委員会に対して懲戒処分に向けた調査をするよう求めるという報道に接した。

委員会は2020年5月、両局から提出された報告書及び同録DVDを基に討議し、本件番組はいずれも、総合的に判断すれば、番組内容が広告放送と誤解されることに関する問題(以下「本問題」という)の観点から、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。その後の委員会においては、本件番組を両局から購入して放送した局があり、また、本件番組を1社提供したX法律事務所が提供する類似した番組を制作放送した局またはその番組を購入して放送した局がいずれも相当数存在することが報告された。上記の各局に対しては、本件の討議の参考のために、任意の報告を依頼し、報告書と同録DVDの提供を受けた。しかし、各局が番組を制作した時期に幅があり、一部の局においては日本民間放送連盟(民放連)が「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(以下「留意事項」という)を策定した2017年以前に制作・放送された番組もあるなど、番組の制作や考査の在り方について公平に比較検討することが困難であることを踏まえ、両局以外の番組は討議の対象としないこととした。

10月の委員会においても、本件番組について、民放連の放送基準第92条や留意事項に照らし、X法律事務所の取り上げ方や演出方法は、仮に広告の意図や目的がなかったとしても、また、必要とされる考査をした旨の両局の主張を踏まえても、総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であるとの誤解を招きかねず、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの意見が多数出された。
そして、審議に入るか否かの基準については、委員長談話「TBSテレビ『情報7daysニュースキャスター「二重行政の現場」』について」(2009年7月17日)において、①対象となる問題が小さく、かつ、②放送局の自主的・自律的な是正措置が適切に行われている場合には、原則として審議の対象としないとされており、本件番組の問題は小さいとは言い難いから、審議入りの基準を満たしているともいえ、実際、審議入りをすべきであるとの意見もあった。
しかしながら、10月の委員会までの、計6回にわたる討議を踏まえ、本件番組が内包する本問題が全国的な広がりを有し、民放連加盟各社が直面している共通の課題であることを改めて認識するに至った。そこで、民放連加盟各社及び民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて示すことが適切であると考え、委員長談話として明らかにすることとし、また、上記のとおり、同様の番組を制作放送した各局の番組について公平に比較検討することが困難であり、結論として討議の対象としないこととしたこととの均衡も考慮し、本件番組について放送倫理違反の疑いがあるとしても、委員から厳しい意見が出たことを議事概要に掲載して注意を喚起した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないとの結論に至った。
委員長談話は、こちら。

【委員の主な意見】

  • 本件番組はいずれも、X法律事務所における高額の過払金の回収事例を複数並べたうえで、X法律事務所の相談料が原則無料であることが説明され、本編の最後ではX法律事務所の基本的な料金体系と併せて、放送日時と近接した時期に開催されるX法律事務所の無料相談会を案内して勧める内容になっていること等からすると、過払金返還請求についての法的知識や手続きに関し、具体的で有益な情報提供をしていると認められる部分があるとしても、全体を通じて視聴すれば、X法律事務所のサービス内容を一方的にPRしているとの印象を否定できないのではないか。また、X法律事務所のサービス内容のみを取り扱う理由は明確とは言えないのではないか。

  • 本編の中にある中CMでは、いずれも代表弁護士が本編と関連するフレーズを語り、無料相談会を告知している。また、本編と中CMが連続して放送されるため、これを連続して視聴することによって、全体としてX法律事務所のサービスの広告効果がさらにもたらされているのではないか(2001年3月14日付にて民放連が作成し、2009年3月18日付にて改訂した「持ち込み番組と関連するCMの取り扱いについて」の第3文参照)。

  • 本件番組②については、本編におけるいずれの相談再現ドラマの中にもX法律事務所の情報が盛り込まれており、また、番組の最後の場面で男性タレントがX法律事務所の名前を挙げて番組が終了していること等も、視聴者に広告放送との誤解を招く事情となっているのではないか。

  • 総合的に判断すれば、本件番組におけるX法律事務所の取り上げ方や演出方法は、仮に広告の意図や目的がなかったとしても、視聴者に広告放送であるとの誤解を招きかねず、放送倫理違反の疑いがあるのではないか。

  • 本件番組に関し、秋田放送は「社員や代理店の勉強会などにより、いま一度、持ち込み番組を含めた社内外の認識確認を行いたい。『視聴者の誤解を招かない内容・演出』のため、今後はもっと全社的な考査機能を高めていかなければならない」との見解を、また、山口放送は「今回いただいた指摘を真摯に受け止め、民放連放送基準第92条及び留意事項、また2019年10月の委員会意見の内容について、改めて社内各所での徹底を図り、『広告放送』との誤解を招かない番組制作・放送に取り組んでいきたい」との見解をそれぞれの報告書において明らかにしている。両局が当該各見解を実質的かつ有効的に深化させる方策を講じることを期待したい。

以上

第152回 放送倫理検証委員会

第152回–2020年9月

解答権のないエキストラで欠員補充していたフジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

第152回放送倫理検証委員会は、8月末に退任した鈴木嘉一委員長代行に替わり新任の米倉律委員が出席して9月11日に開催された。冒頭、神田安積委員長が岸本葉子委員を委員長代行に指名した。
委員会が9月2日に行ったテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の原案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が合計18回にわたり行われたフジテレビのニュース番組は、前回の委員会で審議入りし、今回の委員会では当該局に対するヒアリングの準備状況が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、これまでの議論を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

1. テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表について報告

テレビ朝日が2019年3月15日に放送したニュース番組『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画について、委員会は主要なエピソードを構成する登場人物のすべてがディレクターの生徒や知人だったうえ、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いており、放送倫理違反があったと判断し、9月2日に当該局に対し、意見書の通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、委員会決定を伝えたテレビ朝日のニュースを視聴し、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などについて報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された骨子案を踏まえて担当委員が作成した意見書の原案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は修正案が示される予定である。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組が審議入り

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの追加報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成し、誤った世論調査結果のデータを作成していたとしている。
前回の委員会では、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者に対して行うヒアリングの準備状況などが報告された。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとし、7月及び8月開催の委員会では、その経過報告を踏まえ、討議を継続していた。
今回の委員会では、これまでの議論を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

以上

2020年9月2日

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、9月2日午後1時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、高田昌幸委員の3人が出席し、テレビ朝日からは常務取締役(報道局担当)ら4人が出席した。
まず、神田委員長から、委員会決定について、本件特集には放送倫理違反があると判断したことを伝えた。その理由として、本件特集の主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当ディレクターの知人らだったうえ、ロケがあることを事前に知って取材の舞台となったスーパーに来店していたのであり、偶然に出会った利用客ではなかった。このことからすれば、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていたと説明した。
続いて升味委員長代行は、「本件特集の制作会社はテレビ朝日と密接な関係があり、その報道部門を支えてきたともいえるところから、仲間意識もあってできた番組を受け取るときの考査、検収の意識が薄くなっていたのかとも思われる。対応策に示されているように今後は十分注意してほしい」「今後の対策として、本来なら準備に手間も時間もかかる人間ドキュメントを報道番組内で毎週のように定期的に放送していくことの難しさを認めて、このような番組制作を再検討するという点は、他局を含め多くの関係者に参考になるだろう」と述べた。また高田委員は、「今回ほど引き返すチャンスがたくさんあった事案は滅多にないが、それを生かせなかったのは残念」「番組に関わった多くの人が疑問を感じていたことが判明しており、仮にそれらの疑問が全体で共有されていればブレーキがかかったのではないか」「同僚や上下関係の中では仲間を疑うことに躊躇しがちだが、疑うことは確認することと裏表なので怠ってはいけない」とコメントした。最後に神田委員長から、偶然を装って故意に登場させたという点において、過去の類似の事案と比較して重い点があるとの補足説明がなされた。
これに対してテレビ朝日は、「今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります」「視聴者の皆様の信頼を回復すべく、引き続き再発防止に努めてまいります」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社31人が出席した。
はじめに神田委員長が委員会の判断について、「本件特集は、偶然に街で出会った人から話を聞き、その暮らしや人生模様を描き出し、ごく平凡に見える人の思いがけないドラマやエピソードを視聴者に伝える報道番組内の特集である。しかし、主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当した契約ディレクターの生徒や知人だったうえ、本件特集のロケがあることを事前に知って舞台となったスーパーに来店していたのであり、いずれも偶然に出会った利用客ではなく、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない『客』を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた」と評価をして、放送倫理違反があったと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて升味委員長代行が、「視聴者にとっては面白かったり楽しかったりした前提が全部崩れてしまうということにもなるし、報道番組としての事実を伝えるという点でも非常に問題があった番組だったと思っている」と述べた。高田委員は、「制作の各段階で疑問を持ったスタッフはいたが、それが共有されなかった点がポイント。取材において疑うことは確認作業と同じであり、それをしていれば本件は起きなかったのではないか」と述べた。
記者からの質問は、事実関係の確認に関するもの以外、特になかった。

以上

第38号

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見

2020年9月2日 放送局:テレビ朝日

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する特集を放送したが、この特集に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。委員会は、同年11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
日本民間放送連盟とNHKが1996年に定めた放送倫理基本綱領は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」とし、「取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」と定めている。また、民放連の放送基準では、前文で「正確で迅速な報道」を求め、第32条では報道の責任として「事実に基づいて報道し、公正でなければならない」と掲げている。本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた。
したがって、委員会は、本件特集には放送倫理違反があったと判断した。

2020年9月2日 第38号委員会決定

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目 次

2020年9月2日 決定の通知と公表

通知は、2020年9月2日午後1時30分から千代田放送会館7階会館会議室で行われ、午後2時30分から同2階ホールで公表の記者会見が行われた。記者会見には、21社31人が出席した。
詳細はこちら。

2020年12月11日【委員会決定に対するテレビ朝日の対応と取り組み】

委員会決定 第38号に対して、テレビ朝日から対応と取り組みをまとめた報告書が2020年11月27日付で提出され、委員会はこれを了承した。

テレビ朝日の対応

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目 次

  • 1.委員会決定前の対応
  • 2.委員会決定時の放送対応
  • 3.委員会決定内容の周知徹底
  • 4.放送番組審議会への報告
  • 5.委員会決定後の取り組み
  • 6.再発防止に向けて
  • 7.おわりに

第151回 放送倫理検証委員会

第151回–2020年8月

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組が審議入り

第151回放送倫理検証委員会は8月7日に開催された。
委員会が8月4日に通知・公表したTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして、5月の委員会で審議入りしたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の骨子案が示され、意見交換を行った。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、前回の委員会後の経過報告を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。
フジテレビと産経新聞が合同で行った世論調査のデータの一部に架空入力があり、それを基にしたニュースが合計18回放送されたことについて、当該放送局から提出された追加報告書に基づいて前回の委員会に引き続き討議を行い、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり報道されたこと、再委託の経緯自体を把握していなかったチェック体制の不備などを踏まえ、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
抗議デモの解説に使用したアニメ動画の描写が人種差別的であり、偏見があると批判されたNHKの報道番組『これでわかった!世界のいま』について、当該放送局から提供された報告書、追加報告書及び同録DVDを基に討議した。
その結果、当該アニメ動画部分は放送倫理に照らして問題があるが、番組全体としては抗議デモの問題を適時適切に取り上げた番組であると評価しうること、当該局の別の番組が、改めて様々な立場から本番組の問題点を取り上げて制作・放送した姿勢は高く評価できる、当該局による迅速なお詫びや自主的・自律的な再発防止策が取られ、今後その徹底を図るとされていること等を踏まえ、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

1. TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見の通知・公表について報告

TBSテレビが2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画について、委員会はハンターが自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との約束を裏切るもので放送倫理違反があったと判断し、8月4日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などを報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では6月末から7月上旬にかけて当該放送局の関係者に対して実施したヒアリング等に基づき担当委員が作成した意見書の骨子案が示され、意見交換を行った。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組が審議入り

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月までの14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約17%に当たる約2500サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えて架空データを作成しデータを作成していたとしている。
7月の委員会では、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行ったが、委員からは厳しい意見が相次ぎ、局からの再発防止策等についての追加報告を待ち、併せて管理体制、納品されたデータのチェック方法などについてもさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。
今回の委員会では、7月委員会で出された意見に加え、新たに提出された追加報告書を基に討議した。その結果、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとし、7月開催の委員会では、その経過報告を踏まえ、討議を継続していた。
今回の委員会では、その後の経過報告を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

5. 抗議デモの解説に使用したアニメ動画の描写が人種差別的であり、偏見があると批判されたNHKの報道番組『これでわかった!世界のいま』を討議

NHKは6月7日、報道番組『これでわかった! 世界のいま~拡大する抗議デモ アメリカでいま何が~』で、米国の人種差別抗議デモを取り上げ、その解説に使用したアニメーション動画を放送した。
番組は黒人の男性が警察官に押さえつけられて死亡した事件を紹介し、それをきっかけに人種差別に抗議するデモが全米に拡大していることを伝え、また、アニメ動画において、黒人がおかれた経済的な格差を描き、この格差が黒人の「怒り」の背景であると解説した。しかし、アニメ動画は、屈強な黒人の男性キャラクターなどが経済への不満から暴れているかのように描かれるなど、黒人に対する差別と偏見を助長するもので、実際に行われた人種を越えた平和的なデモとはかけ離れた表現だとして内外から批判が寄せられた。これを受けて当該局は、速やかにホームページやニュースなどで謝罪するとともに、翌週の同番組の冒頭で、番組責任者が経緯を説明するとともに、お詫びと再発防止に向けた取り組みを伝えた。
委員会は、当該局から提出された報告書と同録DVD及び追加報告書を基に討議した。その結果、当該アニメ動画部分は放送倫理に照らして問題があり、そのような放送がなされるに至ったことは残念であるなどの厳しい意見が出された一方で、番組全体としては抗議デモの問題を適時適切に取り上げた番組であると評価しうること、当該局の他の番組において、改めて様々な立場から本番組の問題点を取り上げて制作・放送した姿勢は高く評価できること、当該局による迅速なお詫びがなされ、また、人種問題等を取り扱う際の配慮や認識、動画をツイッターに掲載する際の注意点などについて局内で検討が行われ、国際的に扱いが難しい問題については外国籍や専門家などを活用した多様な視点でのチェックの実施、人種差別やアメリカの法律・メディア、SNSに詳しい専門家を招いた研修の実施などの自主的・自律的な再発防止策が取られ、今後その徹底を図るとされていること等を踏まえ、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

  • アニメ動画の内容については、放送倫理に照らして問題があるといわざるを得ず、また、表情の描き方、口調、声色などいずれにおいてもステレオタイプの表現であって、仮に差別意識や悪意はなかったとしても、そのこと自体、人種差別への問題意識が鈍感になっていることを物語るものであり、むしろ深刻に受け止めざるを得ない。

  • この番組で従前から使い続けている動画キャラクターを今回もそのまま使ったため、そこに慣れや油断があったのではないか。

  • 国際的な人権感覚やアメリカにおける人種差別の実態を知っているはずの国際部担当者が制作の過程を見ていたのに、放送が承認されてしまったことはとても残念である。

  • 約1分20秒のアニメ動画部分に問題があるとしても、約26分にわたる番組全体としては抗議デモの問題やトランプ政権の対応やそれに対する批判を適時適切に取り上げた番組であり、その点ではとても評価できる内容であった。

  • 番組の中で、デモに参加している黒人の女性を丁寧に取材している点が良かった。

  • 7月23日放送のEテレ「バリバラ」が抗議デモと人種差別の問題を取り上げ、その中で、日本にも人種差別の実態があるにもかかわらず、日本のメディアが人種差別の問題に向き合わず、むしろ助長してきた例があること、そして本番組について言及し、その問題点として、アニメ動画の内容が黒人のステレオタイプな暴力的描写であったこと、本番組の解説者が白人警察の立場に立って解説をしたことなどを取り上げていたが、当該局の他の番組において、改めて様々な立場から本番組の問題点を取り上げて制作・放送した姿勢は高く評価できる。

  • 再発防止策の徹底を図るという局の自主的・自律的な対応を評価し、今後の取り組みを期待して見守りたい。

以上

2020年8月4日

TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、8月4日午後1時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会からは神田安積委員長、長嶋甲兵委員、中野剛委員の3人が出席し、TBSテレビからは4人が出席した。
委員会決定について神田委員長はまず、本件番組について放送倫理違反があったと判断したと述べた。NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた「放送倫理基本綱領」には、「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定がある。「爬虫類ハンター」は、局自身が認めるように、X氏が「希少動物を発見・捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が本企画の根幹」であった。本件放送が、その核心である希少動物に、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を用いたことは、制作過程の重要な部分を制作者側が十分に把握していなかった点で、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであり、また、X氏が「確かな知識と野性の勘」を駆使して自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との約束を裏切るものであったというほかない。これらのことを踏まえて、放送倫理違反があったという評価をしたと説明した。
続いて長嶋委員は、ヒアリングの際にベテラン関係者が口にした「作り方改革」「話し合い不足」という言葉を意見書に引用した。これから頑張ってやっていただきたいとコメントした。また中野委員は、委員会決定第24号TBSテレビ『ピラミッド・ダービー』を担当した立場からすると既視感のある事案で、今回もプロデューサーの番組管理という観点から考えた。全体会議もない中で、身軽な、機動的な番組作りだったのかもしれない。それが面白さの源泉だった面はあるだろうが、それがアクセルだとするとブレーキ役は存在したのか、改めて考えていただきたいとコメントした。
これに対してTBSテレビは、「約束を自ら破った。信頼を失ったと認識して番組を終了した。大きく反省している」「今後も、番組制作についての改革を進め、視聴者の皆様の信頼回復に努めていきたい」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階の大ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には24社37人が出席した。
はじめに神田委員長が、「放送倫理基本綱領」には、「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定がある。「爬虫類ハンター」は、X氏が「希少動物を発見・捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が本企画の根幹」であった。本件放送が、その核心である希少動物に、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を用いたことは、制作過程の重要な部分を制作者側が十分に把握していなかった点で、その過程が適正に保たれていなかったと評価した。併せて、X氏が「確かな知識と野性の勘」を駆使して自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との約束を裏切るものであったという評価もした。その上で、「NHK・民放 番組倫理委員会」が1993年に出した「放送番組の倫理の向上について」と題する提言をも踏まえて、委員会としては、本件放送には放送倫理違反があったという結論に至ったと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて長嶋委員は、この番組のある種の試み、実験精神というものを放送全体が失わないで前に進んでほしいという思いを込めて意見書を書いた。それを読み取っていただきたいと述べた。また中野委員は、視聴者の普通の見方からすれば、真剣に探して捕まえているとみるだろう。局自身も捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が企画の根幹であると言っているので、視聴者との約束を裏切るものであったという認定になったと述べた。
その後、神田委員長が2点、補足説明した。まず、「本件放送のロケは、わずか現地滞在4泊5日という短期間で行われた」との指摘をしているが、これだけの希少動物を何種類も見つけ捕獲するシーンの撮影を4泊5日という短い日程の中で行うこと自体に限界、無理があるのではないか。これができなければ番組が成り立たないとすれば、逆にどこかで無理を強いることにならないか。そして、このような懸念を組織の中の誰かが感じなかったのか。そのような思いを、「番組の『作り方』そのものに内在していたと言えよう」という指摘に込めている。もう1つは、バラエティー番組を扱う際の演出論について、意見書に引用している『ほこ×たて』事案の意見書には、「どこまでが演出として可能なのか、許容されるのか、という個別事例における境界線の設定は、局の自主的・自律的な判断に委ねてきたのである」と書いている。この問題意識を共有し、また前提としながら意見書を作ったつもりであり、その中で、最大限、皆さんの制作の自由を確保しながら、それでも許されない演出があるとすれば、どういうことなのだろうかと考えるときに、これまで委員会が考えてきた1つの基準がそれぞれの番組における「視聴者との約束」ということになる。本件放送では、「視聴者との約束」をどこに見て取るか、この点については、「『爬虫類ハンター』は、局自身が認めるように、X氏が『希少動物を発見・捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が本企画の根幹』であった」ということであり、本件放送が、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を、撮影直前に撮影現場に移したことは「本企画の根幹」、ないしは「視聴者との約束」を裏切るものであり、その点で放送倫理違反があったということになる。その点は、あくまで本件放送限りの評価であり、直ちにこの手法をあらゆる番組において否定することを意味するものではない。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: ADはロケに同行したのか。ADやコーディネーターが、動物が逃げないように体を弱らせるようなことをしていたのか。
A: 現場にADは同行していないし、私たちが調べた限りでは動かないようにしたということはない。(長嶋委員)
A: 現地にはディレクター、コーディネーター、更には現地の協力者がいた。(中野委員)
   
Q: Bディレクターも手法としてはCディレクターと似たようなことをしていたということか。
A: 本件放送では、動物をあらかじめ協力者から借り受け、または別の場所で捕獲して、撮影直前に現場に置いている。過去10回の放送では、現地の協力者に対して、事前に目的の動物を発見したらその場所を連絡するよう要請し、また、その際に目的の動物を捕獲してしまった場合は、捕獲したのと同じ場所に、前日か当日に放ってもらったものであり、他の場所から持ってくることはしていない点という点で異なっている。過去10回の放送については審議の対象としておらず、また、演出論には踏み込むことを控えるという姿勢を踏まえて、「自主自律的にその限界を議論することが求められよう」という問題提起にとどめたものである。(神田委員長)
   
Q: 判断の1つの基準として、「視聴者との約束」を裏切るものは放送倫理違反ということか。
A: その番組が視聴者とどういう「約束」をしているのかという認定は非常にセンシティブであり、制作、編集の自由を不当に制限しないように、映像の視聴やヒアリングなどを経て、慎重に検討する必要がある。また、仮に「約束」を裏切ったとしても、その程度や自主的自律的な事後対応次第にて、討議入りしない、又は討議にて終了するものもあれば、仮に審議入りしてもその評価が分かれることもあり得る。したがって、個々の番組を離れて、「約束」違反をもって、直ちに一律に放送倫理違反になるとまでは言えない。(神田委員長)
   

以上

2020年8月7日

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議入り

放送倫理検証委員会は8月7日、データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について、審議入りすることを決めた。

フジテレビと産経新聞は、6月19日、2019年5月から今年5月までの14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。

フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約17%に当たる約2,500サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えて架空データを作成しデータを作成していたとしている。

7月の委員会では、「社会の意見分布を知る一番の手掛かりは世論調査だ。不正な世論調査結果に基づいて18回ものニュースが放送されたことは、その時々の世論に影響を及ぼした可能性を否定できない」「世論調査は国民にとって重要な判断材料であり、不正の有無についてチェックされることなく放送されていたことは深刻な問題だ」「放送、新聞が行うすべての世論調査の信頼性を揺るがす由々しき事態だ」などの厳しい意見が相次ぎ、「民放連放送基準『(32)ニュースは事実に基づいて報道し公正でなければならない』に抵触する疑いがあるのではないか」との意見も出された。

委員会は、フジテレビに報告書と同録DVDの提出を求めたうえで討議し、局からの再発防止策についての追加報告を待ち、併せて管理体制、納品されたデータのチェック方法などについてさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続。フジテレビから追加報告書が提出されたため、その報告書について意見交換した結果、放送倫理違反の疑いがあり、報道内容からして放送倫理違反の程度は軽いとは言えないとして審議入りを決めた。

委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第37号

TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見

2020年8月4日 放送局:TBSテレビ

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』における企画「爬虫類ハンター」を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
委員会は、日本民間放送連盟の放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた「放送倫理基本綱領」には、「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定がある。「爬虫類ハンター」は、X氏が特異な能力を発揮し次々と希少動物を発見し捕獲するシーンを核とする企画であった。その核心である希少動物に、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を用いたことは、制作過程の重要な部分を制作者側が十分に把握していなかった点で、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであり、また、X氏が「確かな知識と野性の勘」を駆使して自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との了解や約束を裏切るものであったというほかない。
よって、委員会は、本件放送には放送倫理違反があったと判断した。

2020年8月4日 第37号委員会決定

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目 次

2020年8月4日 決定の通知と公表

通知は、2020年8月4日午後1時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階の大ホールで記者会見が行われた。記者会見には24社37人が出席した。
詳細はこちら。

2020年11月13日【委員会決定に対するTBSテレビの対応と取り組み】

委員会決定 第37号に対して、TBSテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が2020年11月5日付で提出され、委員会はこれを了承した。

TBSテレビの対応

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目 次

  • 1. 委員会決定に伴う放送対応
  • 2. コンテンツ制作局内での取り組み
  • 3.「放送倫理委員会」での取り組み
  • 4. BPO放送倫理検証委員会の委員を招いて意見交換会を実施
  • 5. 番組審議会への報告
  • 6.「放送と人権」特別委員会での議論
  • 7. 再発防止への取り組み
  • 8. 総括

第150回 放送倫理検証委員会

第150回–2020年7月

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』を審議
8月下旬以降に委員会決定を通知・公表へ

第150回放送倫理検証委員会は7月10日に開催された。
委員会が6月30日に通知・公表した琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
2月13日に通知・公表したTBSテレビの『消えた天才』映像早回しに関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含む取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
委員会が3月31日に通知・公表したNHK国際放送の『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見への対応報告が当該放送局から書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承し公表することにした。
スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人という不適切な演出をしたとして審議中のテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』について、担当委員から意見書の再修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、8月下旬以降に当該放送局への通知と公表を行うことになった。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして、5月の委員会で審議入りしたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、同番組を購入して放送した複数の局から提出された報告書及び当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも順次報告を求めることとしたが、その経過報告を踏まえて議論を行い、討議を継続することとした。
フジテレビと産経新聞が合同で行った世論調査のデータの一部に架空入力があり、それを基にしたニュースが合計18回放送されたことについて、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議を行った。委員からは厳しい意見が相次ぎ、再発防止策についての追加報告を待ち、併せてチェック体制などについてさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。

議事の詳細

日時
2020年7月10日(金)午後2時30分~午後6時40分
場所
千代田放送会館会議室およびオンライン
議題
 
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、大石委員、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員

1. 「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」の通知・公表について報告

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやって来た〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!~自分に合った資産形成を考える~』の2つのローカル単発番組について、委員会はいずれの番組も視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められ放送倫理違反があったと判断し、6月30日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などを報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. TBSテレビ『消えた天才』映像早回しに関する意見への対応報告を了承

2月13日に通知・公表した、TBSテレビの『消えた天才』映像早回し加工に関する意見への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の社内周知や6月にBPO委員を招いてリモート形式で実施された研修会の状況等に加え、再発防止への取り組みとして、「放送倫理の向上を図るため、定期的に社内勉強会を行う」「素材段階でのチェックを強化する」「“密室”でのVTRチェックを禁止する」「スタッフを孤立させない組織作りを行う」などが記されている。
担当委員からは、上記研修会の様子や、研修の内容が受け止められて再発防止への取り組みが行われていることなどが報告され、適切な対応が行われているとして、当該報告を了承して公表することにした。
TBSテレビの対応報告書は、こちら(PDFファイル)

3. NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見への対応報告を了承

3月31日に通知・公表した、NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見(委員会決定第34号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、今回の問題を受けて2019年6月6日に公表した再発防止策の徹底を、放送に関わる全職員およびNHKの放送系の関連団体に改めて求め、経営委員会・国際放送番組審議会に報告したことが記されている。また、委員会決定を受けた新たな再発防止策として、取材した内容の真実性や利害関係者かどうかの確認などについて、出演者側の承認を取る内容になっている「出演等承諾書」を導入したことなどが記されている。
委員からは、「委員会決定を受けた後の局としての方策についての記載が乏しく、局として意見書を具体的にどう生かそうとしているのか分からなかった」という意見が出された一方、「番組制作に直接関わった人たちが、委員会決定をどう受け止めたのかについて、とても詳しく書かれていることは評価できる」「放送現場では意識や対応の変化が出てきていると書かれている。意見書の内容が伝わり、現場が受け止めているのであれば評価できる」「新型コロナウイルスの流行が本当に落ち着いた時点で、意見交換の機会が持てることを望みたい」などの意見が出され、概ね適切な対応がなされているとして、報告を了承して公表することにした。
NHKの対応報告書は、こちら(PDFファイル)

4. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から示された意見書の再修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、8月下旬以降に当該放送局へ通知して公表することになった。

5. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今回の委員会では6月末から7月上旬にかけて当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告された。次回委員会では意見書の骨子案が提出される見込みである。

6. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとして、討議を継続していた。
今回の委員会では、その経過報告を踏まえ、さらに討議を継続することとした。

7. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について討議

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月までの14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約17%に当たる約2500サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えて架空データを作成しデータを作成していたとしている。
委員会では、「社会の意見分布を知る一番の手掛かりは世論調査だ。不正な世論調査結果に基づいて18回ものニュースが放送されたことは、その時々の世論に影響を及ぼした可能性を否定できない」「世論調査は国民にとって重要な判断材料であり、不正の有無についてチェックされることなく放送されていたことは深刻な問題だ」「放送、新聞が行うすべての世論調査の信頼性を揺るがす由々しき事態だ」などの厳しい意見が相次ぎ、「民放連放送基準『(32)ニュースは事実に基づいて報道し公正でなければならない』に抵触する疑いがあるのではないか」との意見も出された。そのうえで、局からの再発防止策についての追加報告を待ち、併せて管理体制、納品されたデータのチェック方法などについてさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。

以上

2020年6月30日

琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、6月30日午後2時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会からは神田安積委員長、鈴木嘉一委員長代行、西土彰一郎委員の3人が出席し、琉球朝日放送と北日本放送からは7人が出席した。
委員会決定について神田委員長はまず、両局の番組についていずれも放送倫理違反があったと判断したと述べた。琉球朝日放送の番組は、民放連の「留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるので、放送倫理違反があったと判断したと説明した。また、北日本放送の番組は、民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連の「留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるので、放送倫理違反があったと判断したと説明した。
続いて鈴木委員長代行は「当該局による自主的・自律的な事後対応とその成果を期待している。正直、厳しい表現の下りもあるが、『自主・自律』を促すための苦言だと受け取っていただければありがたい」とコメントした。また西土委員は、番組と広告の境目を常に意識して番組を制作してほしい。そうした実践の積み重ねにより、自分のものにした留意事項、各局の実践的なルールこそが重要であると考えるとコメントした。
これに対して琉球朝日放送は、「放送倫理違反があったと判断されたことを何よりも重く受け止めている。今回の意見を踏まえて今後の番組作りに生かしていきたい」と述べた。北日本放送は、「委員会決定を本当に深く受け止めている。これからは考査体制を強化して、本当に視聴者から信頼される番組作りを、改めてどんな番組が信頼されるのかということを全社員で考えて、真摯に取り組んでいきたい」と述べた。
続いて、午後3時30分から千代田放送会館2階の大ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には50社67人が出席した。
はじめに神田委員長が、琉球朝日放送の番組は、番組の中身や表示の問題点から、視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連の「留意事項」に照らして総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるという判断をした。北日本放送の番組は、北日本放送が自ら「中途半端なPR色」を認めるように、特に番組の後半部分は視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連放送基準の92や民放連の「留意事項」に盛り込まれた特に留意すべき事項に照らして総合的に判断すれば、この番組も視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるという判断をしたと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて鈴木委員長代行は「広告をめぐる意見書は2件目だ。意見書は通常、当該局に向けてものを言うものだが、今回は『民放連や民放各局の自主的・自律的な精神と姿勢で検討されるよう望みたい』と民放連を名指しして対応を促している。我々のメッセージがそこに込められていることを読みとっていただけるとありがたい」と述べた。また西土委員は、営業、編成、様々な職責の方がコミュニケーションをとって実践していく中でルールが具体的に決まってくるものだと思う。そういう観点から意見書を執筆したと述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 意見書には放送法第12条が出てこない。民放連放送基準で言及できるので、12条を持ち出すまでもないということか。
A: 当委員会は放送倫理に照らして倫理違反があるのかを判断する機関であることを踏まえ、放送倫理違反に関する判断をすることをもって必要十分であると考えている。(神田委員長)
   
Q: 琉球朝日放送の番組がセブンの提供でないことは、いつ分かったのか。また、番組は局の自主制作か。
A: 1月のヒアリング時に分かった。ビックリした。番組は琉球朝日放送の自主制作だ。
(鈴木委員長代行)
   
Q: セブン出店で沖縄ではお祭り騒ぎになったことは1つの情報であり、ニュースだと思う。PR色と情報性は表裏一体だと思うが。
A: 民放連の「留意事項」において、番組で特定の商品・サービスを取り扱うことは、視聴者に対して具体的で有益な情報提供となることが指摘されている。当委員会においても、その意義を損なうことのないよう十分に意識して議論、判断をしている。同時に、番組で取り上げた情報が広告放送であるとの誤解や疑念を持たれることは、民放の信頼やメディア価値の根幹にも関わることとなるとの指摘もされているところであり、その「境目」の判断については、「留意事項」に書かれているとおり、3つの視点はあくまで例示であり、総合的に判断する必要があると考えている。ご質問の点については、本件においてその点だけを踏まえて判断したものではなく、番組全体について総合的に判断したものであるが、その判断に関しては詳細な記載は控えている。詳細に記載するときは、個別事案を離れて基準であるかのような誤解を与え、かえってその意義を損なう可能性があると考えている。民放連放送基準審議会においても、「演出や構成などには大いに工夫の余地があるのではないでしょうか」と呼びかけている。私たちも各局に「大いに工夫の余地がある」ことを狭めることがないようにしたいと考えており、意見書にも記載したとおり、各局に自主的・自律的に検討していただきたい。(神田委員長)
   
Q: 広告会社の方がプロデューサーとして表示されていたことについて、委員会はどんな議論をしたのか。
A: その部分は倫理違反の判断とは直接関係ないが、表示は正確であってほしい。(鈴木委員長代行)

以上

第36号

琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見

2020年6月30日 放送局:琉球朝日放送・北日本放送

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやって来た〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!~自分に合った資産形成を考える~』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとして審議入りを決め、議論を続けてきた。

琉球朝日放送の番組には広告取引の実態がなかったにせよ、番組の中身や表示の問題点から、視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連の「留意事項」は、広告取引という対価性の有無にかかわらず番組全般に適用される。それに盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、本件番組は視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められる。従って、委員会は放送倫理違反があったと判断した。
また、北日本放送の番組は特に後半部分は提供スポンサーの意向や事業などから独立した内容なのか見分けがつきにくく、視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連の「留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、本件番組は視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められる。従って、委員会は放送倫理違反があったと判断した。

2020年6月30日 第36号委員会決定

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目 次

2020年6月30日 決定の通知と公表

通知は、2020年6月30日午後2時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われ、午後3時30分から千代田放送会館2階の大ホールで記者会見が行われた。記者会見には50社67人が出席した。
詳細はこちら。

2020年10月9日【委員会決定に対する琉球朝日放送の対応と取り組み】

委員会決定 第36号に対して、琉球朝日放送から対応と取り組みをまとめた報告書が2020年9月30日付で提出され、委員会はこれを了承した。

琉球朝日放送の対応

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目 次

  • 1.委員会決定についての放送対応
  • 2.ホームページへの掲出
  • 3.委員会決定の社内周知
  • 4.社員・スタッフによる番組再検証
  • 5.社内連絡会議
  • 6.番組審議会への報告
  • 7.再発防止への取り組み
  • 8.総括

2020年12月11日【委員会決定に対する北日本放送の対応と取り組み】

委員会決定 第36号に対して、北日本放送から対応と取り組みをまとめた報告書が2020年11月30日付で提出され、委員会はこれを了承した。

北日本放送の対応

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目 次

  • 1.はじめに
  • 2.放送倫理違反があったと判断された番組
  • 3.番組放送から現在に至るまで
  • 4.主な取り組み
  • 5.おわりに

第149回 放送倫理検証委員会

第149回–2020年6月

生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意していたTBSテレビ『クレイジージャーニー』を審議

第149回放送倫理検証委員会は6月12日にオンライン会議システムを使用して開催された。
バラエティー番組の生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意する不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、7月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。
スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人という不適切な演出をしたとして審議中のテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させ、前回審議入りしたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局の関係者に対して実施する予定のヒアリングの準備状況が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組を購入して放送した複数の局から提出された報告書を踏まえて引き続き討議を行ったが、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を複数の局が制作・放送し又は番組を購入して放送していることがわかったため、それらの放送局からも順次報告を求めることとし、討議を継続することとした。

1. バラエティー番組の生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意していたTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。
この日の委員会では、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、7月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

2. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。
11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。
今回の委員会では、担当委員から意見書のさらなる修正案が示されて意見交換が行われたが、次回も引き続き審議することになった。

3. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
前回の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めたが、今回の委員会では当該放送局の関係者に対して実施する予定のヒアリングの準備状況が報告された。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。その内容は、ある弁護士法人が扱った過払い金などの借金問題の事例に法人の代表がクイズやQ&Aの形式で解説を加えるものであり、番組内において法人の料金体系の説明や県内で開催される無料法律相談の告知もされている。なお、提供は同法人であり、法律相談会の告知CMも放送されている。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送は同年10月19日には、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとして、討議を継続していた。
今回の委員会では、上記の番組のいずれかを購入して放送した他の放送局から提出された報告書も踏まえて引き続き討議したが、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を複数の局が制作・放送し又は番組を購入して放送していることがわかったため、それらの放送局からも順次報告を求めることとし、討議を継続することとした。

以上

2020年2月26日

在阪テレビ・ラジオ各局と意見交換会開催

放送倫理検証委員会と在阪のテレビ・ラジオ10局との意見交換会が、2020年2月26日大阪市内で開催された。放送局の参加者は10局74人、委員会からは神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、長嶋甲兵委員、中野剛委員、西土彰一郎委員、巻美矢紀委員の6人が出席した。放送倫理検証委員会が大阪で意見交換会を開くのは2014年11月以来である。

開会にあたり、BPO事務局を代表して濱田純一理事長が「BPOの役割は、放送の自由、放送の責任を担っている現場の皆さんを後押しすることである。決定を出す背景にある委員会の議論や思い入れを知ってもらい、また局側からも言いたいことをフィードバックして、双方向の流れを作る意見交換会にしたい」と挨拶した。

意見交換会の前半は、2019年度の委員会決定から、「読売テレビ『かんさい情報ネットten.』『迷ってナンボ!大阪・夜の十三』に関する意見」(委員会決定 第31号)、「関西テレビ『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」(委員会決定 第32号)、「長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見」(委員会決定 第30号)の3事案を取り上げ、担当委員からの説明と質疑応答を行った。

「読売テレビ『かんさい情報ネットten.』『迷ってナンボ!大阪・夜の十三』に関する意見」について、まず、審議の対象となった番組部分のVTRを視聴した。その後、担当の升味委員長代行が意見書の要点を説明したうえで、「街ブラ企画では事前に取材対象が決まっているわけではないので、現場にアンテナの立っている人がいないと問題のある個所がそのまま通ってしまうことになる。編集の段階で複数の目でチェックする体制が維持できなかったことも問題があった。社会ではLGBTなど性的個性に触れることに敏感になっているのに、どうしてピンとこなかったのか、ヒアリングでも決定的な要因は見つからなかった。日々番組を作る人たちがアンテナを張っていないと問題点を指摘するのは難しい。アンテナが立つようにするには研修なども必要だが、現場で意見交換や違った価値観のスタッフの話を聞くことが必要だと思う。現場ではそうした余裕がないようだ」と述べた。続いて同じく意見書を担当した長嶋委員が「情報バラエティー番組と報道番組の境界線があいまいになってきていて、それぞれの番組作りのやり方が混ざり合うところで問題が起こっていると感じる。それをマイナスに捉えず、お互いの専門分野の知見と経験を生かし合ってよい番組を作る方向があるのではないか。今年度は意見書の数が増えたが、放送界にとってはむしろよいことだと捉え、これまでの番組の作り方や中身を検討し直す機会にしてほしい」と述べた。参加局からは「取材対象者は特に不愉快と感じていなかったそうだが、それでも問題なのか」と質問があり、升味委員長代行が「取材対象者がどう思っても、テレビが他人のセクシュアリティを詳しくしつこく聞くのは社会に対する影響から考えてまずいと思う」と答えた。

「関西テレビ『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」については、冒頭で審議の対象となった番組部分のVTRを視聴した。その後、担当の中野委員が意見書の要点を説明したうえで、「『韓国ってね、手首切るブスみたいなもんなんですよ』という発言を放送に残すことになった局内でのやり取りを意見書にしっかり書いた。また、放送後、局が自律的に『様々な感じ方をされる視聴者の皆様への配慮が足りず、心情を傷つけてしまう可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだった』とする見解に至った経緯にも詳しく触れた。意見書の内容がもし制作現場に十分に受け止められていないとすれば、それを埋めるのは局の仕事で、放送倫理規範を現場に浸透させていく活動をこれからも行っていただきたい」と述べた。また同じく意見書を担当した巻委員は「社会の多数派にとっては何気ないような表現であったとしても、当事者、特にマイノリティにとってはそれが自尊を傷つけるようなことがあるということを、改めて当事者の立場に立って、想像力を駆使して今後の番組作りに生かしてもらいたい」と述べた。参加局からは「特定個人の発言が良くなくても、別の出演者が『そういうレッテル貼りはいけない』と発言すれば番組は成立するのではないか」と質問があり、中野委員は「この番組に関しては、ほかの出演者から『それは違うんじゃないか』といった発言はなかった。私たちは個別番組ごとに判断する」と答え、神田委員長は「番組の流れの中で放送倫理違反と判断した。『手首切る』『ブス』という2つの言葉自体が問題であると判断したものではなく、あくまでも発言全体の文脈の中で広く韓国籍を有する人々などを侮辱する表現だという結論に至ったものだ」と述べた。

「長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見」については、まず、神田委員長が、民放連が2017年に策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の概要を含めて意見書の要点を説明したうえで、直前に開かれたBPOの事例研究会でも多くの質問が出たことを紹介した。参加局からは「テレビでは商品の露出に協力スーパーを入れたり、あるいは番組のバックボーンとしてそれを基に番組ができていたりなど、『タイアップ』と呼ばれる手法があるが、このタイアップについてはどういうところに留意すればよいか」と質問があり、神田委員長は、「個々の映像を前提としないで、タイアップという類型について一概に回答することは難しい。あくまで一般論としていえば、まず民放連の『留意事項』に照らし、『広告放送』であると視聴者に誤解されないように自主的・自律的に留意をしてもらうことが大切である。『留意事項』2の3つの要素はもちろんのこと、これらはあくまで例示であるので総合的に判断いただく必要がある。そして、結果として、放送倫理違反になる事例があるとしても、制作の過程で、『留意事項』に照らした議論をきちんとしていただければ、自ずと視聴者に『広告放送』と誤解されるような番組は減っていくのではないかと思っている。また、議論の経過をきちんと残しておくことにより、局が自主的・自律的な判断をしたことがきちんと説明できるのではないかと考える」と述べた。また別の参加局からの「どの部分がどういう違反になっているのか、どうあるべきだったか明快にされるべきではないか」という質問に対して、神田委員長は「長野放送の事案では、『留意事項』に照らし、最後の部分についてはかなり宣伝や広告に近いように映ったと指摘したうえで、放送全体として視聴者に『広告放送』と誤解されると判断したが、事案によっては、どの部分が放送倫理違反といえるのか特定できるものもありうる」と答えた。

意見交換会の後半は、「実名・匿名報道などについて」をテーマに取り上げた。
はじめに、2019年7月に発生した京都アニメーション放火事件の遺族への取材をめぐる放送界全体の動きや自社の被害者氏名の報道について、毎日放送報道局の澤田隆三主幹が報告した。この中では、事件発生の3日後に在阪民放4社でメディアスクラム回避策を協議し、「警察発表の居住地への取材は代表1社のみとし、映像素材や情報を共有する」などと取り決めたこと、8月には、NHKと民放局が「取材交渉は代表1社の記者が行い、カメラは同行しない」「取材交渉では必ず、民放とNHKの 6社を代表していますと伝えること」といった「京都方式」と呼ばれる枠組みに合意したことなどが紹介された。また、毎日放送では、遺族の精神的ダメージが大きいことから、被害者の実名発表から24時間を過ぎれば、遺族が実名報道を拒否している場合は匿名にする方針を決めたこと、2回目に発表された25人の犠牲者のうち遺族が氏名の公表を拒否している20人について、全国ニュースと重ねて実名が放送されないようにローカルニュースでは匿名としたことが報告された。澤田主幹は「この事件は特定の会社で起こったことであり、公共の場で起きたテロなどとは報道の目的も変わってくる。この事件をきっかけに実名と匿名のあり方の議論を深めていくべきではないか。また、被害者とメディアの間に立って取材を受ける意向を確認できるような第三者機関ができないか議論を始めていければよいと思っている」と述べた。続いてNHKの担当者が「メディアスクラムは防ぎたいと、民放4社の動きの情報を得ながら、常に考えてきた。NHKは一貫して実名報道を行ったが、必要以上に長く実名を出さないように配慮した。実名報道が絶対的に正しいとは思っておらずその意義について、今後も議論を続けていきたい」と説明した。また朝日放送テレビの担当者は「この事件は実名報道が原則であることをゆるがしたのではないか。議論のうえで、実名報道は各番組で1回にとどめ、ネット配信では実名公表が可能とされている被害者も名前は出さなかった。今後このような事件が起きた場合にしっかりと実名報道する理由を放送の中で説明する必要があるのではないか」と述べた。これらの発言に対し、西土委員は「各局の発言を重く受け止めた。実名報道については、被害者本人がどう思うのか、想像力をたくましくして日々考えるしかないのではないか。現場で厳しい対応を迫られているジャーナリスト、とりわけ若い人々の実践を我々がどう厳粛に受け止めるかも大事だ。倫理は現場のジャーナリストが苦悩しているところからでき上ってくるものであり、BPOの委員が勝手に決めるものではないと思う」と感想を話した。
続いて、阪神・淡路大震災から25年を機に朝日放送テレビの映像アーカイブをウェブサイトで公開した取り組みについて、朝日放送テレビの木戸崇之報道課長が、実際のウェブサイトの映像を紹介しながら、公開したのは約38時間分・約2000クリップで、肖像権については、受忍限度と社会的意義のバランスについて議論のうえ公開することにしたと報告した。

意見交換会の終了にあたり、神田委員長が「私たちは、問題となった放送があった場合、『放送局の放送後の自主的・自律的な対応』と『放送倫理違反の程度の重さ』という2つの要素を考慮して審議に入るかどうかを決める。自主的・自律的な対応が採られていても、放送倫理違反の程度が重ければ審議入りをすることになるが、多くの事案では当該放送局自身も放送倫理違反であることを認識し、自主的・自律的であり、かつ適切な事後対応がされていれば、その点を適切に評価して審議入りしないとの判断に至っていると説明し、「今日は参加された放送局から多くの意見をいただき心強かった。皆さんとのやり取りを通じて放送業界の自主・自律を守っていかなければならないと感じている」と結んだ。
最後に参加局を代表して、NHK大阪放送局の有吉伸人局長が「メディアをめぐる状況が大きく変化していく中で、今日は意見書の背景や議論のプロセスなど我々にとって意味のある話が聞けた。それぞれの現場でよりよい放送を出していくために議論し続けていく」と挨拶した。
当日は意見交換会に続いて懇親会を予定していたが、新型コロナウイルスの感染が懸念される状況を考慮し中止することとした。

終了後、参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

  • 委員長はじめ各委員の説明や見解を直接聞くことができ、普段書面等で読むことしかできないBPOの“生”の考えの一端を知ることができた。

  • 委員の方々の見解、審議や考察のポイント、放送局側出席者の声など、このような意見交換会でしか知ることのできない視点や意見などに触れることができ、非常に参考になった。

  • 委員の発言を聞いて、制作側の視点と第三者の視点の両方から見ようとされていること、結果の「○」「×」より過程の問題点を明らかにすることに力点があること、そして「今議論しておかなければ」という覚悟を持って取り組んでおられることが感じ取れた。

  • 読売テレビと関西テレビの問題は、映像もあり、実際の雰囲気がわかりやすかった。

  • 実名報道の件は特に勉強になった。

  • 番組についての意見を局同士で忌憚なくやり取りできる機会は、こうしたBPOと局との意見交換会しかないと思われるので、そういう意味でも時間をかけて議論する場をさらに広げていただきたい。

以上

第148回 放送倫理検証委員会

第148回–2020年5月

琉球朝日放送と北日本放送のローカル2番組を審議
6月にも委員会決定を通知・公表へ

第148回放送倫理検証委員会は5月15日にオンライン会議システムを使用して開催された。
委員会が1月24日に通知・公表した関西テレビの『胸いっぱいサミット!』に関する意見への対応報告が、当該放送局から書面で提出され、その内容を検討した結果、委員会との意見交換が適切な時期に開催されることを期待し、報告を了承し公表することにした。
3月31日に通知・公表を行ったNHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。また4月8日にメールにて通知し、委員会決定をBPOウェブサイトに掲載して公表した北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見について、委員長から経過の報告がされた。
番組で取り上げている特定企業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、6月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の再々修正案が提出され、意見交換が行われた。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。
① 秋田放送が制作放送した『そこが知りたい!過払い金Q&A』、②山口放送が制作放送した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』、③山口放送が制作放送し、また秋田放送が放送した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座! PART2』というローカル単発番組について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、日本民間放送連盟放送基準の広告の取り扱い規定等に照らし、それぞれの番組で取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。もっとも上記番組のうち別の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書と同録DVDの提出を求め、継続して討議することとした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させていたことが判明したフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似が窺われることなどについて意見が出され、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2020年5月15日(金)午後1時~午後4時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)他オンライン
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、大石委員、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員

1. 関西テレビ『胸いっぱいサミット!』に関する意見への対応報告を了承

1月24日に通知・公表した、関西テレビの『胸いっぱいサミット!収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見(委員会決定第32号)への対応報告が、当該放送局から委員会に対し書面で提出された。また、同局の番組審議会およびオンブズ・カンテレ委員会の議事内容をまとめた「番組審議会議事録」、「オンブズ・カンテレ委員会の見解」もあわせて提出された。
報告書には、再発防止、放送倫理意識向上に向けた「制作局における取り組み」が制作部会で共有され、自社検証番組「カンテレ通信」で審議に至る経緯、決定内容、改善に向けた取り組み等について放送したほか、専門家を招いた「全社的研修会」を3回開催したことなどが記されている。
委員からは、「意見書やオンブズ・カンテレ委員会が指摘しているにもかかわらず、制作現場と局の間にある意見の分断の解消についての言及がないのは残念である」「意見書を受け、制作現場の意識に変化はあったのかについて書いていただけるとよかった」といった意見が出されたが、意見書で指摘した課題に対し概ね適切な対応が行われており、また、新型コロナウイルスの拡大に伴う緊急事態宣言のため、委員会と当該局との意見交換は行われていないが、今後、適切な時期での開催を期待することとして、当該対応報告を了承し、公表することにした。
 関西テレビの対応報告書はこちら(PDFファイル)

2. NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見および北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見の通知・公表について報告

NHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、委員会は放送の内容は正確ではなく、適正な考査も行われなかったとして放送倫理違反があったと判断し、3月31日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長や担当委員が当日の様子を報告した。
また、北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、委員会は有権者に誤解を与え、比例区の投票行動をゆがめた可能性があるなど選挙報道に求められる公正・公平性を害し放送倫理に違反していると判断し、4月8日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下であることを踏まえ、通知はメールで、公表は委員会決定をBPOウェブサイトに掲載する形で行った。この日の委員会では、その経緯について委員長が報告した。

3. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議、6月にも通知・公表へ

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやってきた〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、昨年12月の委員会で審議入りした。この日の委員会では、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、6月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

4. バラエティー番組の生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意していたTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再々修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。
11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が示されて意見交換が行われた。

6. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。その内容は、ある弁護士法人が扱った過払い金などの借金問題の事例に法人の代表がクイズやQ&Aの形式で解説を加えるものであり、番組内において法人の料金体系の説明や県内で開催される無料法律相談の告知もされている。なお、提供は同法人であり、法律相談会の告知CMも放送されている。
この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。
秋田放送では、上記番組を2018年2月17日に初回放送し、その後、同年10月13日に2回目の放送をし、今回は3回目の放送であった。また、上記番組とは別に、2019年10月19日に山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を放送していた。
そして、山口放送では、2018年6月2日、同月15日、2019年5月11日及び同月18日に、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を、また、2019年5月25日および同月29日に、上記の『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』をいずれも制作放送していた。
そこで、委員会は秋田放送と山口放送から提出された報告書を基に討議した結果、いずれの番組も日本民間放送連盟放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に照らし、それぞれの番組で取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。もっとも、上記番組のうち別の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求め、継続して討議を行うこととした。

7. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、4月3日、フジテレビは、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ウェブサイト上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
委員会は、当該放送局から提供された報告書と同録DVDを基に討議した結果、委員からは「意欲的な番組であるが、もともと無理があったのではないか」「同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似が窺われる。なぜ教訓が生かされなかったのか、再発防止策が生かされていたのか解明する必要がある」などの意見が出され、これまで2017年12月31日から2020年3月7日にかけて放送された番組のうち、レギュラー番組として放送された1回目(2018年10月20日)から25回目(2019年10月26日)までの回について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

以上

2020年3月31日

NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、3月31日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会からは神田安積委員長、升味佐江子委員長代行の2人が出席し、NHKからは国際放送局長ら2人が出席した。
委員会決定について神田委員長は、「NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた放送倫理基本綱領、また、NHKの『放送ガイドライン』に照らした適正な考査を行わなかったことを含め、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した」と述べた。続いて升味委員長代行が、「NEP(NHKエンタープライズ)による試写はプロデューサー1人だけ。できれば、NHK本体としても考査の役割を果たすために最終的に番組内容を検討する機会を意識してもつことが、今後、このようなつまずきにつながらない方法かと思う」とコメントした。これに対してNHKは、「再発防止はもとより、国際放送はこれからも放送法、放送番組基準、NHKの『放送ガイドライン』にきちんと従っていく形で、ますます視聴者のみなさまに資するチャンネルとして力を入れていきたい。今回のことを糧にして、これからも頑張っていきたい」と述べた。
続いて、午後2時30分から都市センターホテル会議室で記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には19社30人が出席した。
はじめに神田委員長が、「自主制作か外部への委託制作か、持ち込み番組かを問わず、放送局は全ての番組について放送責任を負い、その内容は放送倫理にかなったものでなければならない。NHKが適正な考査を行わなかったことを含め、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した」と述べ、意見書の構成に沿って説明を加えた。続いて升味委員長代行が、「テレビ局についての信頼は、事実が正しいことが大前提だ。事実の正しさを確認することは、地味で単純な作業だと思うが、それが大切である。それから、試写や考査で疑問が生じた時には、中途でうやむやにせず、結末まで原因を追究する必要性を再確認する機会にしていただければありがたい」と述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 「事実確認の基本的作業なし、誤認の連続」とのこと。ディレクター、カメラマン、音声マンの3人とも本当に誤認だったのか。つまり、どこかで気付いていたのではないかという議論、3委員の間であったのか。
A: カメラマン、音声マンは日本人ではない。不信は感じなかったと言っている。ディレクターは、その場で全く疑問を感じなかったと答えている。1点あるとすれば、「彼女をレンタルする20代男性」の取材している場面。彼女をレンタルする動機が、女性と話すのが苦手だからという割に、非常にこなれた感じで最初から彼女に接していることについて、「あれっ」と思ったことはあったようだ。しかし、自ら納得してしまったところがある。若い人はこんなものなのかということと、前に同じ女性をレンタルしたことがあったので、2度目ならこういうものなのかなと納得してしまった。ディレクターの説明によると、1つずつ多少の疑問はあったけれども、自分の中で納得してしまっているうちに終わってしまったようだ。(升味委員長代行)
   
Q: 音声マンとカメラマンが日本人ではないとことだが、日本語はよく理解できないような方だったのか。
A: 完ぺきではないと思うが、外国から呼んだわけではないようだ。日本にいるスタッフ。(升味委員長代行)
   
Q: この審議が行われている途中で、NHKの朝の番組でシューズレンタルの話があった。事後のブリーフィングで、その件は取り上げないということだったので、今日の意見書の中に取り上げているのかなと注目していた。記載すべきだという議論はなかったのか。
A: NHKの『おはよう日本』についての質問かと思う。『おはよう日本』については、審議に至らずという結論となった。ただし、討議に付し、その中での委員の議論状況は委員会のHPで開示した。委員会の問題意識を必要十分に開示したということを踏まえて、本意見書に重ねて指摘することは結論として控えた。(神田委員長)

以上