休会

休会 – 2011年8月

中高生モニターについて

8月の委員会は例年通り休会したが、中高生モニターについて持ち回りで審議した。8月に寄せられた視聴者意見については9月委員会で審議する。

中高生モニターについて

8月のモニター報告のテーマは、「大震災関連」「原発事故関連」の特集番組、もしくは「大震災・原発事故」を扱った通常の報道番組の中から番組を見て、何を感じたか、何を考えさせられたか、自分ならどう行動するかなどの感想を書いてもらい、26人から報告が届いた。

いちばん報告の多かった番組は、フジテレビ系列の『金曜プレステージ わ・す・れ・な・い~東日本大震災155日の記録~』で7人からリポートが届いた。

  • 「津波の映像はよく目にしましたが、ここまでまとめられた映像は見たことがなく驚きました。たくさんの地点からの映像を時系列ごとに放送していて、三陸海岸がどのように津波に襲われたのかがよく分かりました。東北地方に住む自分は、震災発生当初停電によりテレビを見ることができなかったので、地震発生時の情報カメラの映像はあまり見たことがありませんでした。また、津波で家族を失った方、危機一髪で津波から助かった方のドキュメンタリーは心に響くものがありました。改めて日本に震災が多いこと、そしてその震災から立ち上がってきたこと、『日本は負けない』ということが感じ取られました。」(中学3年・男子)
  • 「驚いたのは宮古市の津波は最初20センチだったのが、その数分後に10メートルの堤防を超える大きさになったことです。誰がそんなことが起こると想像したでしょうか?頑丈な堤防が一瞬で壊れてしまう自然の恐ろしさをまざまざと見せられました。1台のカメラがとらえた一人から『津波はまったく静かで音がしなかった』と言っていたのが不思議でした。それは堤防があったからだと言っています。堤防は津波を遅らせたり、抑えたりすることができるけど、逆に言うと、いつ津波が襲ってくるのかが分からないので堤防も良し悪しなんだと思う。私は津波にあったことがないし見たこともないが、この映像を後世まで伝えて、恐ろしさを伝えていかなければならない。それが私たちの使命なのではと感じた。」(中学1年・女子)
  • 「いろいろな場所のカメラが撮影した津波の映像を順番に流して、とても分かりやすかったです。一般の人が撮影した映像もあり、とても近くに津波が来ていることが分かりました。また、堤防は避難する時間を稼いでくれるが、堤防の下からは波の高さが見えないため、逃げ遅れる可能性もある、ということが分かりました。津波は跳ね返り、あちこちから戻ってきた津波が重なって、より高さを増すことにも驚きました。それをCGで説明していたことはとても分かりやすかったです。時々、こういう番組があるといいと思います。未来に語り継いでいくには映像が一番良いのだな、と思いました。」(中学2年・男子)
  • 「次々に流れる津波・地震の映像を見ると、心がえぐられているような感覚になりました。そして私が知らなかったこともたくさんありました。その中で、日本人の冷静さやマナーの良さを知ることができました。電車の全線復旧までわずか49日というのは過去最速の記録だそうで、それを聴き、すごく嬉しく感じました。日本人は強いと思います。日本人として誇りに思います。」(中学3年・女子)
  • 「千年に1度といわれるぐらい稀な大地震が東日本を襲い、それに続いて起きた大津波で、現在わかっているだけで、死者・行方不明者2万人以上、まさに未曾有という言葉で表現される大惨事。放送中、宮古市職員が思わず、言い放った『終わった、すべてが終わった』というように、まさに『この世の終わり』に匹敵するほどの大きなものでした。当時設置されていた19台のカメラが見た大地震・大津波の全容を通して多くのことを学ぶために放送されたものだと思いました。また、今回の災害を通して『人は人の記憶を生かすことができる。それがどんなつらいことであっても…』の言葉にあるように、大惨事を通してこの経験を次に生かすのが残されたものの使命であるということも痛感しました。」(高校2年・女子)
  • 「映し出されている人々が発する言葉がところどころ胸にささり、2時間という長い番組でしたが飽きることなく見ることができ、充実した内容だったと思います。具体的にどんな言葉が胸にささったかというと、視聴者が撮った津波の映像の後ろに入っている被災者の方々の叫び声です。『死にたくない』『もう終わった』『(津波を)止めてくれ』という言葉はそれだけで考えさせられるものがありますが、その声が震えていたり、本当に諦めの気持ちが伝わってきたりして、今までテレビで見て知っていた以上に被災者の方たちの心の傷を知らされました。始まってしばらくして、『生々しい津波の映像を流すのでストレスを感じる人は見ないで下さい』という注意が流れ、私はこんな思いをしてまで伝えるべきことなのかなと少し疑問に思いました。また、津波について科学的に分析・検証できていてその完成度は高かったですが、具体的な津波に対する対策法は述べられておらず、すこしもの足りなかったです。」(高校1年・女子)

次に4人から報告が寄せられたのは、NHK『BS世界のドキュメンタリー シリーズチェルノブイリ事故25年 永遠のチェルノブイリ 被ばくの森はいま』である。

  • 「チェルノブイリの原発事故で、周りの環境が崩れ、今も立ち入り禁止ということは知っていたが、ここまでひどいものとは知らなかった。放射線は雲となって流れて行き、世界各国へと散らばっていった。原発周辺は森となり、動物がかなり増えていた。しかし、どの動物も被ばくしていて、体内にセシウムがあったり、奇形だったりしていた。これが人間に起こったと思うと、ゾッとする。20年以上たった今でも、放射線障害を訴える子どもがいることにはびっくり。放射線が恐ろしいものだと再び認識した。」   (中学1年・男子)
  • 「この番組を見た印象は『怖い…』ということです。原発事故から25年たった現在のチェルノブイリは、かつて人間が生活していた場所には見えない自然の地へと変わっていました。人間が居なくなった静かなその場所は動物たちにとっては”楽園”となりましたが、皮肉なことに世界中の研究者たちにとっては放射能が生物に及ぼす影響を研究するのに絶好の場所にもなりました。その映像がなんともいえない…悲しい世界に見えました。私はこの番組を見て”原発の是非”について考えさせられました。チェルノブイリに住んでいた人々は25年たった今も、元いた場所に帰れていません。そして福島原発から30キロ圏内の人々もまた、5ヶ月たった今もまだ戻れるメドはたっていません。長い間住んできた場所を急に離れなくてはならなくなり、友だちとも離ればなれ…福島の人々のことを思うと胸が痛みます。かといって危険なので仕方はありませんが、チェルノブイリの森のようにならないように政府には少しでも早く福島の人々が元の生活に戻ることができるようにしっかりとしてもらいたいと思いました。」  (中学3年・女子)
  • 「福島原発事故と同じ史上最悪の事故である、このチェルノブイリ原発事故の現在の状況や長年にわたる調査結果を見ることによって、動植物に与える影響、人体に及ぼす影響について理解を深めることができたと感じています。元々自然界に存在しない放射性物質セシウム137とストロンチウム90はカリウムやカルシウムと科学的性質が似ていることから、植物が誤ってそれらの放射性物質を自らとりこんでしまうというのです。内部被ばくした植物でも人が食して良い部分などは分かっているようですが、野生動物には分かるはずもありません。その影響は植物を食べる草食動物、肉食動物など、食物連鎖の繋がりで人間にも影響を与えていくことになると思われます。人間が作り出したものは、周り巡って、私たち自身にも影響を与える結果になる事例の一つだと思います。今後、農業のことなどチェルノブイリから多くのことが学べると思います。それを利用して、これからの放射線との付き合い方も見えてきやすくなるのではないかと思っています。」(高校2年・女子)

3人から報告の寄せられた番組は、日本テレビ系列の『NNNドキュメント 天国のママへ~届け、いのちの鼓動~』(ミヤギテレビ制作)である。

  • 「この番組の主人公は石巻市に住む8歳という年齢で母親を津波で亡くした少女です。少女の母親は仕事が忙しかったため、2人はなかなか一緒に居られなかったそうですが、週に2回、母子で一緒に太鼓の教室に通っていました。その太鼓教室こそが、2人を繋ぐものでした。本当はお母さんと一緒に出る予定だった年に1回のお祭りの日の晴れ舞台。当日の舞台には、”お母さん”の分まで懸命に太鼓をたたく少女の姿がありました。母という大事な存在をなくしたにもかかわらず、懸命に生きる少女に、私は勇気をもらいました。」(中学1年・女子)
  • 「母一人、祖母一人の家に育った女の子が母を亡くしたということは、想像できないくらい辛くて、幼い女の子にとっては一人ではどうしようもできない不安でいっぱいだと思います。そんな女の子を周りが支えてあげる、学校でも特別扱いせず前と同じように接することで、徐々に自分も頑張ろうという気持ちが生まれたのだと感じました。だから、幼い子どもが家族を亡くしても、『かわいそうに』とか『頑張ってね』などの言葉はあまりよくないと思います。そのような言葉だと”孤独”を感じてしまうような気がするからです。”被災者”にはさまざまなケースがあります。もっと個別的にこういう生活を送っている人もいるし、また違った生活を送っている人もいるのだと報道した方が、真実を伝えられるのだと思いました。」(高校1年・女子)

日本テレビ系列の『24時間テレビ』で取り上げられた震災報道について報告が2人から寄せられた。

  • 「私は真矢みきさんが取材した『ガレキの中の小さな花屋さん』を見ました。地震が起きた後、どこのお店より早く店を再開した花屋さんに来る人は、ほとんどが津波で亡くなった人への花を買いに来る人でした。取材の様子を見て『よく悲しんでいる人に取材できるな。酷いな』とそのとき私は思いました。そこまでして取材しなくてもいいのでは?と思う一方で、この大災害を忘れかけていた自分がいることに気づきました。大震災のその日から悲しくて苦しくて、涙も流せないほど傷ついている人がいるという現実から、私は逃げていました…。しかしこの放送を見て、消えることのない悲しみにくれている人々がいるのだと痛感しました。そして、この事実を永遠に覚えておかなければいけないのだと分りました。」(高校1年・女子)

テレビ朝日系列の『報道ステーション』の特集コーナーについても2人から報告が寄せられた。

  • 「この番組では、最近の建物について注目していました。地震が起きると細かくS字形に揺れる構造にしたり、建物の地価に大きなバネのようなものを仕込んで地面が揺れてもバネが揺れを吸収したりして、被害を減らそうという工夫されていました。先日、学校で『原発は本当に必要か』という討論会をしました。最近、テレビで福島原発の大変な状況ばかりを見ているので、『要らない』『原発以外のもっと安全な方法で電気を作り出せるのではないか』という意見が多い中で、『今回の大地震が起きたからそう考えるけれど、もしあの地震がなかったら原発はあってもいいのではないかと自分たちは思っていたはず…』という意見が出され、今まで自分は『原発は要らない』としか思わなかったけれど、改めて考えさせられる意見でした。」(中学1年・女子)

NHK『ゆうどきネットワーク』の特集コーナーへの意見も寄せられた。

  • 「福島原発事故で暮らしを奪われた福島県相馬市の2つの家族を取り上げていました。最初の家族は夫婦と子ども3人が群馬県片品村に避難している一家である。3月から狭い避難所で暮らしていた一家に、『8月末にこの避難所を閉鎖する』という通知が…。家が放射能で危険だから、我慢して窮屈な避難所暮らしをしていた人に対する扱いがひどすぎる。『この国は正気か?』と思いました。もう1つの家族は、親子2人で運送業をしていた家族です。津波によって得意先も流されてしまい、運送業が続かなくなっていました。国から仕事を紹介されたりするのかと思いましたが、現実は甘くないみたいです。結局、娘さんがパートを掛け持ちしてお父さんを食べさせていくことになりました。お父さんも仕事をしたがっていましたが、年齢的に無理なのです。この番組を見て、『国』というものの無力さをとても感じました。」(中学3年・男子)

そのほか、NHKの『追跡! A to Z スペシャル 福島第一原発作業員に何が?』、『ETV特集 アメリカから見た福島原発事故』、テレビ東京の『ガイアの夜明け』の特集コーナーについての報告が寄せられたほか、3人から震災報道全般についてのリポートが寄せられた。

【委員の主な所感】

  • 今月の報告には、モニターの皆さんの「自分は何ができるか」という真摯な問いにあふれていました。今回の大災害を、テレビで報じられた「一過性の出来事」にとどめず、自分の問題として受け止め、自分にできることを具体的に模索しており、痛みを共にしようとする姿勢に、優しさを感じました。
  • 全体的にやや感想文レベルに止まっているリポートが目立っていました。日常生活から紡ぎだされる問題意識、被災地や原発事故で避難生活を余儀なくされた住民への想像力、「森を見てから木を見る」眼、具体的で分かりやすい根拠から導き出される自分なりの結論・感情などがリポートの中に表現されているかがポイントだと考えます。
  • ドラマやバラエティーですと見る側に「作りもの」という意識が強く働き、モニター報告も番組に対する批評や評価が前面に出やすいのですが、今回のようなドキュメンタリーの場合は、番組の作り方ではなく、そこで示されたことがらに対する感想が中心になりがちですが、批判精神にあふれた優れたリポートもありました。ドキュメンタリーなどのノンフィクションに関しては、何を取り上げ、それをどう描いたか、という制作者の視点を考えるとよいのではないかと思いました。
  • 未曾有の大震災や原発問題に関する特集番組を見ての感想だったこともあり、多くの皆さんが自分のこととして受け止めて自分なりの意見をまとめてくださってよかったと思います。もう一歩進めて、制作者が何を意図してその番組を制作したのかを推察し、自分だったらもっとこういう番組にしたという意見があると面白かったかなと思います。
  • 3月12日に福島原発で水素爆発が起ったことは、将来10年、20年、30年後にどうなるか?モニターである中学1年から高校2年の皆さんの人生とピッタリ合致して、この問題を意識する、しないに関らず背負い続けることになります。皆さんは一方的にテレビの報道を見ているだけでは、何がホントで、何がウソかの判断が下せないと思います。物事は自分の目で見たこと、聞いたことと比べることからすべては始まると思います。『複眼』で見つめることを心がけてください。

「今月のキラ★報告」(宮城・高校2年男子)

「彼らだけここにいて私だけどこかに逃げるのは嫌。同じ空気を吸って同じ季節を感じて生活したい」、船越の漁師は語る。
大震災から5ヶ月が経過し、大震災関連の特集番組が増える一方、通常の報道番組ではほとんど大震災関連の報道をすることがなくなった。とはいえ、いつまでも「東日本大震災」を伝え続ける訳にもいかない。常に新情報を届けなくてはならない報道番組は、時間の経過とともに震災情報を減らしたり、もしくはその番組の中で特集として取り上げたりするようになる。だから「いつの間にか震災情報が減ったなぁ」と私たちに感じさせるテレビは、私たちの震災に対する気持ちの薄れを見事に反映しているものだと言えるだろう。
さて、私が今回視聴した番組は仙台放送の『ともに』である。震災後定期的に放送され、東北の震災関連の情報を主に伝える生放送番組だ。冒頭の文章は、被災した漁師の言葉である。家族を津波で亡くし、漁をするための船や道具なども失ってしまった彼は船越に残り、仲間の漁師とともに漁業の復興に取り組んでいる。そこで私が驚いたのは、手作業で漁具を修復していたことである。もちろん、船がなければ漁をすることができないが、漁具も不可欠なものだ。特に、東北の復興に当たって重要視されるのが「漁業」であるにもかかわらず、国や地方自治体の対応が遅れ、漁師同士が船や道具の貸し借りをしているのが現状である。
番組を通して感じたことは「復興は全然していない」、そんな当たり前ともいえる言葉に尽きる。報道番組は「新情報」、そして「変化」を求めている。震災から数ヶ月たてば、状況の変化が見られないため、人々の「努力」を映し出そうとする。私の視聴した番組『ともに』も、被災者の「努力」や「心情の変化」を伝えている。それは「寄り添う」番組だ。私はとても大切なテーマだと思うが、現状を伝えることも忘れてはならない。例えば、原発作業員の話を聴く場面が多いが、原発の状況を「振り返る」ことも必要なのではないだろうか。東日本大震災を忘れないために…。
番組の最後に、被災地の少年野球チームが兵庫県に招待されたことが紹介されていた。震災後、被災地の生徒が他県や海外に招待されるといったニュースをよく見るが、私にはその趣旨がよく理解できない。「励ます」ということなのだろうか。私はそれよりも「地域との交流」を重視すべきだと考える。それに、平等性に欠けている。被災地見学やボランティア活動をして子どもや若者中心に「経験」をさせ、「将来の幅」を広げることが大切なのではないだろうか。東日本大震災(の経験)を生かすために…。

【委員会の推薦理由】

常に新しい情報を提供し続けなければならない報道番組の宿命を論じ、また時間の経過とともに、被災者の努力や心情の変化というような番組を提供する必要性を鋭く指摘していた。また、被災地の子どもたちを県外や海外に招待するよりも、被災地以外の子どもたちが被災地にやってくることの方が重要であるという意見も、被災地で暮らしているからこそ感じる指摘で、評価に値すると考える。

第131回 放送と青少年に関する委員会

第131回 – 2012年3月

視聴者意見について

中高生モニターについて

第131回青少年委員会は3月18日に開催され、2月16日から3月11日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、3月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年3月18日(日) 午後4時~5時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受け、審議対象に該当する番組はなかった。

中高生モニターについて

3月のモニター報告は、中高生モニターを体験した1年間の感想や放送界への率直な意見を求め、26人からリポートが届いた。寄せられたリポートは、「他の人のリポートを読んで、テレビ視聴の参考になった」「自分の企画書が放送局の方に読んでもらって励みになった」といった意見の一方、「不快な番組とリポートしてもあまり変化がない」「3・11以降、放送局が真実を伝えているのか疑問を感じた」など放送界への注文も寄せられた。

【主な意見】

  • 「1年前のあの日。テスト期間中だった私は午前授業だった弟と2人で家にいました。両親不在のまま夕食を食べ、5~6時間かけて母が翌朝徒歩で帰宅。そんな中、父の帰宅とともにモニター採用の通知。この1年は、東日本大震災でテレビのあり方についてよく考えた1年でした。とてもショッキングな映像でしたが、なぜか目が離せませんでした。なぜ目が離せなかったのか、それは言葉でした。被災者の方々の悲痛な叫びの声、リポーターの人々の必死に伝えようとするけどあまりにも悲惨で見つからない言葉。言葉は時に人を救いますが、時に人を傷つけます。それも身をもって感じられることができました」。(東京・中学2年女子)
  • 「中高生モニターは今しかできない貴重な体験です。私は文章を書くのが苦手で、モニターも母親に勧められてしぶしぶ応募しました。始まると毎月異なるテーマが出題されて皆さんの意見が届くにつれてだんだん楽しくなってくるのでびっくりしました。他の方の意見を読んでいるとたった数年しか違わないのに、どうしてこんなに上手な文章が書けるのか?と感心もしました」。(大阪・中学1年女子)
  • 「これまではただ単に”ぼーっと”テレビを見ているだけでしたが、企画書を実際に作ってみて、みんなに見てもらえるような番組の企画を立てるのはとても難しいことだと実感しました。実際に放送局では子どもから大人までの誰もが楽しめる番組を作っているのだということに気づき、みんなが番組を楽しめる番組を企画する大変さがよく理解できました」。(岐阜・中学2年男子)
  • 「モニターになってからは、以前とテレビの見方が変わりました。ふだん何気なく見ていたニュースでも、A局とB局だったらこっちの方のニュースの方が良かったなと、いつの間にか比較して見ていたり、ドキュメンタリーに興味を持って見たりと、見るものも変わりました」。(岡山・中学2年女子)
  • 「時間がない中でなんとなく見ているテレビのうち、バラエティー番組で多かったCMを途中にはさんで過剰に期待感をあおるようなことがとても不満でした。テレビを作る側の都合としか思えないような演出は、何かの役に立っているのか疑問です。またドラマなどで、子ども世代を対象にしているのに遅い時間にやっているものは、もう少し時間を早めた方がたくさんの人に見てもらえるのではないかと思いました」。(東京・中学1年男子)
  • 「私はこの一年間モニターを経験して、今まで何気なく見ていた番組(物事)を注意して見るようになりました。そして、『複眼』が少し使えるようになったと思います。今のテレビは、あまり人々のニーズに応えられていないのではないかとリポートを通して思いました。せっかくパソコンや通信機器が発達しているのだから、それらを利用してよりよい番組を作成してほしいと感じました」。(神奈川・中学2年女子)
  • 「BPOモニターをやって良かった事を書きます。今の放送局は必要な事を報道する割には世間に目をもっていない事。大きいニュースばかり取り上げて、肝心な、大事な、伝えなければいけないはずの小さなニュースをほったらかしにしていると私は思います。特に、東日本大震災が来てからそうでした。大きいニュースは、どこのテレビ局のチャンネルを見ても同じニュースばかり。小さな事でも、このような現状が起きているんだ!そう、視聴者に伝えるのが放送局の役目なんだからこそ、もっと小さなニュースでも取り上げてほしかったです」。(北海道・中学2年男子)
  • 「1年間モニターとして今までよりテレビを注意深く見ていたら『本当に見たいと思えるテレビ番組、見たいと思って見るテレビ番組は少ない』ということに気がつきました。面白くて私たちが見たいと思っている番組は、内容が濃くて独自性のある番組だと思います。内容が薄い番組は単発にとどめておくべきだと思います。それがいかに難しいことかは、私も番組の企画をしたので分かります。いけないのは、つまらない番組をそのままにしておくことです。私は、つまらない番組はどんどんリニューアルしたり、やめたりして変えてゆくことが大切だと思います。また、暇つぶしになんとなく見ている人の視聴率などあまりあてにせず、視聴者の意見をしっかりと聞いて番組を制作することが大切だと思いました」。(神奈川・高校1年女子)
  • 「モニターを担当してきて思ったこと。私たちが物心ついたときにはテレビやラジオ、携帯にインターネットがあり、徹底的に管理された情報があった。意識せずともそれらの情報端末を使いこなし、空気を吸うように与えられた情報を受け取り、上辺だけを見ては薄っぺらな怒りや悲しみ、同情、喜び、批判を感じ、自分の大した意見もないままに他者へと吐き出すように発信をする。繰り返されるこの行為が社会への無関心、自らの不安を煽っているのだ。結局のところ、私たちは発信者の意図というフィルターを通された情報しか目にしてこなかった。その噛み砕かれ、形の変わり、伝えたいことを大きく見出しにし、都合のいいように塗られた情報を何も考えずに受け取ってきた。東日本大震災という全く予想しなかったことが起き、フィルターを通す余裕がなくなってくるとどうだ、何がどうなっているのかが分からない、この学者はなにを言っているのか、要領を得ない。何も考えずとも噛み砕かれた易しい情報ばかりを享受してきた私たちはいつの間にか情報を取捨選択することを忘れ、真に理解することを知らず知らずのうちに放棄してしまっていたのだ。自分の興味にあっているような安易な情報に踊らされた若者たちは『なんだ、この議員は消費税を上げないんだ。いいじゃん』『この芸能人が選挙出るの?面白い』「AKB48の選挙の方が興味ある』などという考えしか持たなくなっている。これは深刻な問題である。本当に世の中で起きていることを理解しているのは国民のほんの一握りだと思う。だが、今の状況にしてしまったのは何を隠そうマスコミ自身である。うつつを抜かした空気に合わせていつの間にか視聴率ばかりを狙ったような報道があとを絶たない。切り口を変えれば悪もまた正義であり、正義もまた悪なのだと言わんばかりに、『やれ消費税を上げたら困る』『原発は今すぐに中止だ』など偏った意見を切り取っただけの報道が目立つ。東日本大震災の復興における情報の力はめざましいものがあった。それは確かである。人と人とのつながりが世界をも動かすようになったのだ。それほどの力を持つマスコミが日本を正しい方向に導いていけるのだということを私は信じている。情報は人に娯楽を与えるためにあるのではない。情報の意義とは、ものごとを正しく知るため、そしてそれを自ら考え、理解し芯の通った意見を持つための手段なのだ。そう私は感じている」。(千葉・高校2年男子)

【委員の所感】

  • 中学1年から高校2年という幅広い年代のみんなのリポートを、1年間読んだり理解したりすることから、文章力が伸びたり考え方が深まったりしていることがよく分かった。
  • 今の中高生たちは、テレビやラジオ、携帯電話・インターネットなどさまざまな情報入手のツールが生まれたときから手に入る状況にあり、果たして何が重要な情報なのか、何が真実なのかということへの疑問を持っているリポートには考えさせられるものがあった。
  • 中高生が本当に見たい番組は限られていて、ながら視聴しているケースが大半ではないか。つまらない番組が多ければ視聴者が離れてしまい放送局の経営は大丈夫?という意見にまったく同感。放送局は視聴者の意見をきちんと受け止めて番組を作ることが大切ではないか。
  • 1年間の成長の姿に感激した。モニターの皆さんが書いた文章を誰かに読んでもらえる、企画書をテレビ局の制作現場の人に講評してもらえるということが励みになったという意見が多いことが目についた。その結果、家族や友人ともテレビを見て話し合うきっかけになったというリポートにも感心させられた。
  • 他のモニターの声が届くことによって刺激を受けている様子がよくうかがわれた。同年代でありながら、違う視点でものを見ている意見や感想と接することで、自分とは違う人がいるということを自覚できるよいチャンスだったということがよく読みとれた。
  • 1年間のモニター体験で成長する度合いが大人より大きいことがよく分かった。文章力のアップはもとより、毎月テーマを出されることから見る視点を各自が作り出そうとしていることがなかなかのものだという印象だった。

* 「中高生モニター会議」の開催について

3月18日(日)正午から午後3時30分まで千代田放送会館7Fの会議室で、「2011年度中高生モニター会議」を開催した。出席者は中高生モニター20人(中学生16、高校生4)と7人の青少年委員全員で、「バラエティー系番組グループ」「報道・情報系番組グループ」「ドラマ・アニメ番組グループ」の3つのグループに分かれ、各自が考えてきたアイデアを出し合って話し合い、「私たちの作りたいテレビ」の企画書を作成して発表・討議した。
この会議の模様は、後日、冊子として発行する。

第130回 放送と青少年に関する委員会

第130回 – 2012年2月

「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」

フジテレビ『ザ・ベストハウス123』番組担当者との意見交換 …など

第130回青少年委員会は2月28日に開催され、前回に引き続き、震災報道における子どもへの配慮について審議し、「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」をまとめ、発表することとした。また、前回審議したバラエティー番組の制作担当者との意見交換を行ったほか、2月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年2月28日(火)  午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」

東日本大震災報道と子どものPTSD等の心理的ストレスとの影響について議論を重ねた結果、上記要望をまとめ、3月2日に公表することとした。
子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望はこちら

フジテレビ『ザ・ベストハウス123』番組担当者との意見交換

「浮気現場に突撃!男と女の修羅場最凶衝撃映像20連発」という企画について、視聴者から「20時台に卑猥な映像が放送され、子どもに不適切」等の意見が寄せられ、委員会と番組制作担当者との意見交換を行い、その概要を公表することとした。

フジテレビ意見概要

映像図鑑を作るという趣旨でスタートした。6年近くやっていく中で変遷し、海外の感動的なエピソード、衝撃映像、また、国内のドキュメンタリーを買ったり、番組で映像を撮って見せるということも含め、スタイルが確立してきた。
アメリカでは今、「リアリティーショー」というジャンルの番組が非常に人気があり、今回の「チーターズ」という番組は、これまでに250回以上放送されているアメリカでも認知されている人気シリーズ。番組として紹介できるということと、アメリカの国民性が出ており、人間は追い込まれた時に本性が出たり、滑稽だったり不思議な行動を起こすということがバラエティーの面白い要素としてあった。具体的には、言い訳のできない状況に置かれた男女がどう言い訳をするのか、どう逃げるのか、どう追い込まれるのか、そこも面白さだと思って作った。

【放送にあたっての留意点】

アメリカでこの番組がTV-14(親に強く警告。14歳未満の子どもに好ましくない番組)という指定があるという認識はあったので、スタッフ間で協議し、素材をそのまま放送するのではなく、直接的なシーンはカットし、問題があると考えられるシーンは強く大きいモザイクをかけることで、何が行われているか判らないように編集する等、放送上の配慮をし、地上波のこの時間にかけられる番組にするよう留意した。

【視聴者意見を受けて】

番組を作る基準として、自分の子どもと一緒に見られないものは作らない、ということを大前提としてやっている。子どもと一緒に見られるところまで映像等の配慮をし、処理したと思ったが、やはり抵抗を感じたり不快に感じる方が多かったということは、自分のハードルが低すぎ、世の中に対してはもっとハードルを高くしなければいけない、より注意しなければいけないということを痛感した。また性的なシーンの無い、モザイク無しでも放送できるエピソードもあったので、特に午後7時から9時までの子どもに配慮する時間帯についてはもっと精査すれば良かったと番組スタッフとも話し、認識をあらためて番組作りに臨むことにした。
この番組には面白かったというご意見もいただいており、今後は時間帯等を意識しながら、新しいソフトである「チーターズ」という番組をどうしたら視聴者に不快な感じを与えずに楽しんで見ていただけるか、工夫をすることが我々の仕事ではないかと思っている。

視聴者意見について

担当委員及び事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受け、審議対象に該当する番組はなかった。

中高生モニターについて

12月~2月まで「ドラマ・アニメ番組」について報告してもらっている。2月のテーマは、ドラマ・アニメ番組の企画書作りで、23人から提案が寄せられた。
ドラマの企画は14人(重複あり)から寄せられ、大半はオリジナル作品で、原作ものは3つだった。なかでもいちばん多かった企画は「青春学園ドラマ」で、7人がさまざまな設定で構想を練ってくれた。テーマは、”絆”とか”友情もの”で、今日、中高生が抱えるさまざまな問題に気づいていることを示唆してくれる内容で、東日本大震災の経験を生かした「仮想ドラマ」の企画も寄せられた。
アニメの企画は9人(重複あり)から寄せられた。そのうち、近未来をテーマにしたオリジナル企画と、ゲームソフトのアニメ化の提案がそれぞれ2人から寄せられ、そのほか原作もの1人で、『まんが日本昔ばなし』復刻の提案も寄せられた。重複企画はドラマ・アニメの企画募集提案で、スタッフなどに参加したいという提案だった。

【委員の所感】

  • 高齢者から自分たちと同じ年代まで見てほしいという気持ちは大切だが、もっと対象を絞った方がユニークでオリジナリティー豊かな番組が企画できると思う。その点学園ドラマの企画が複数あったのは興味深かった。また日常をベースにしながらも、近未来に想像をはせた企画は面白く感じた。
  • マンガを原作にしたドラマが数多く放送されている影響もあって、マンガを原作にした作品を作りたいという提案が目についた。もっと独創性があってもいいのではないか。
  • 学園ものを作りたいという企画には、今のテレビに中高生たちの気持ちや感情が反映されていないという思いがあらわれていると思った。併せて、参加したいという思いも感じた。
  • まず、模倣から始まるのがスタートだと思う。中には具体的なストーリーを展開させていた企画もあり感心させられた。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント。

*企画1.『僕の人生』(大阪・中学3年男子)

【ねらい】(抜粋)
最近のドラマやアニメは、ほとんどが『ドラえもん』のような理想的なものがほとんどのように思います。理想も良いですが、それよりもほんの少し現実に近づけているようなドラマを僕なりに考えました。テーマは、僕の人生です。

【内容】

普段から安い給料でアルバイトをしている主人公がある日、とても親切にしてくれたおばあさんに出会う。でも、突然おばあさんが認知症を患ってしまい、その後老人ホームへ。

そのことを知った主人公は、助けたい、恩返しをしたいと思い、友人からのアドバイスで「ホームヘルパー」の試験に見事に合格し、それを報告するために老人ホームへ。

ところがおばあさんは、主人公のことを忘れてしまっていた。しかし主人公は自分の思いを伝えるため、たまたまそこにいた家族に自分の思いを伝える。そしておばあさんは老人ホームを離れ、自宅で療養生活を送るようになる。そして毎日、主人公はおばあさんを訪ねる。

ある日、おばあさんが主人公に「君みたいな人がたくさんいる日本がね、わたしは大好きなの。もっと君に日本を変えてほしいな」と言った。

そこで主人公は猛勉強して日本国の総理大臣になり、日本の国民にたくさんの幸福を運び、やがて生涯を閉じる。

【テレビ東京 ドラマ制作室プロデューサーの感想】
オリジナル・原作もの含め、学園、恋愛、社会派など中高生が期待するドラマの方向性がそれぞれに反映されたドラマ企画14本だった。全体的には、各々の生徒が身近に感じ、今興味のあるピンポイントの事象をテーマにしたものが多く、そこからより幅広い視聴者に広げていくための次の段階にまで具体的に踏み込めている企画はなかったが、その中でもホームヘルパーを題材にしたオリジナル企画『僕の人生』は今の社会をしっかりと捉えていて、ドラマ的なストーリー展開もあり、登場人物のひたむきな心情も好感を持てる。

*企画2.『気づいてないだけ。』(静岡・中学3年女子)

【ねらい】(抜粋)
このドラマの主人公は中学生~高校生。内容は、クラスに何人かいるおとなしくて暗い子と、それとは真逆なクラスの中心的存在の子や明るく元気な子がかかわっていく内容。いつもは地味でクラスの中では居ても居なくても同じような子が、実は知らないところで支えになっているとか、自分はいつもひどいことをしていたのに、いざとなると手を差し伸べてくれたり・・・。ふだんの状況では気づきもしなかった人の隠れている優しさや思いやりを気づかせるようなドラマ。
【内容】
ここは、あるふつうの学校。本当にどこにでもあるような、やはりこの学校にも元気組と根暗組に分かれているようだ。いつも大声ではしゃいだり、笑ったりとテンションの高い前野翼と、アニメの世界が大好きで世間でいう”ヲタク”な清川匠。何の接点もない2人が、あることをキッカケに互いの存在に気づく・・・。
クラスの中心的人物であった前野翼は、いつも上から目線でウザイという理由で、いつものグループからハブられてしまう。本人の気づかないうちにクラスの元気組からは嫌われていて、もう誰とも一緒にはいられない。
そんなとき、川口春奈さん演じる謎の少女(ナナミ)が、「あんたが気づいていないだけで、目をかけてくれる人はいる。周りをよく見ろ」と謎の発言をする。ナナミにからかわれているだけだと思っていた翼だが、一人でいる孤独に耐えられず、仕方なく根暗組に話しかけることにした。そこで何となく声を掛けられたのが清川匠だった。いつも一人で人を好まない匠だったが、落ち込んでいる翼に、自分では気づかない翼にとっては自分が変わるような発言を連発していく・・・。自分は悪くないと思い込んでいた翼と、人の良さを徐々に気づいていく匠の関係は・・・。(つづく)

【テレビ朝日 編成制作局ドラマ制作ゼネラルプロデューサーの感想】
どこにでもある学校の教室に、一人の謎の少女の存在。「気づいてないだけ。周りをよく見ろ」という謎のフレーズでクラスの崩壊しかけた人間関係を救ってゆく。テレビドラマで大切なのはまず、「主人公」の魅力です。それと「ミステリー」の要素。どんなテーマを扱っても、その二つがなければ、面白いドラマになりません。この企画はそれらを備えています。その上で、人のやさしさや思いやりを信じたいという企画者の明快な気持ちがきちんと伝わってきます。そして「気づいてないだけ。」という、思わずハッとするようなストレートなタイトルも魅力的ですね。このような10代の皆さんの率直な「願いや祈り」が、これから先のテレビの基になります。ぜひ日常の中で感じる素直な気持ちをたくさんテレビ企画にしてみてください!

〔企画総評〕

【NHK 前ドラマ番組部長の感想】
東日本大震災から1年。ドラマ・アニメで閉塞感を打ち破ろうという明るく前向きな企画が印象に残りました。今回の企画を読んで皆さんに伝えたいことは、ドラマ・アニメの企画にあたってはまず、魅力的な主人公を生み出してほしいということです。視聴者は主人公に思いを寄せてハラハラドキドキしながらドラマを見ます。主人公のキャラは、企画者自身の独自の経験から生み出される想像力の賜物です。若い皆さんはこれからも豊かな人生を経験してドラマの素敵な主人公を生み出してほしいと思います。

【日本テレビ コンテンツ事業局EPの感想】
今回、人気のキャラクターや大ヒットゲームをもとにした企画やオリジナルストーリーの提案などが多く見受けられました。すでに人気のキャラクターや原作ものについては、映像化がし易く最初から認知度が高いのですが、いろいろな会社が映像化しようと熾烈な獲得合戦をしたり制約があったりするのも実情です。そういったなかで、オリジナルストーリーは扱いやすいです。今回、脱出ものやタイムワープものなどオリジナルストーリーを考えることは非常に良いと思いました。ただ、よほど面白く作らない限り、どこかで見たことのある話になりがちなため自分にしか書けないオリジナル企画を目指してほしいものです。それでも今回のように原作、オリジナル企画問わず自分の頭で番組の企画イメージを考えることは、我々にとってもうれしいことであり刺激になります。どうもありがとうございました。

【TBSテレビ ドラマ制作部プロデューサーの感想】
自分の興味のあることや好きなこと、身近な問題から世界規模での問題意識で、さまざまな題材があり、中には、あっと驚くドラマチックな展開があったりして、それぞれに個性的なパワーを感じ、とてもおもしろく読みました。オリジナルを一から考えた人は大変だったと思いますが、それだけに「これを伝えたい」という「熱い思い」が伝わってきて、特に「学園もの」の企画は、中高生のみなさんならではの”うーむ”という説得力がありました。

【テレビ東京 アニメ制作部長の感想】
全般的に多少の既視感は否めませんが、中には我々の発想からは出てこないような視点の企画もあり、大変興味深く読ませていただきました。「アニメが好きであるか否か」以前に「何を表現したいか、人に何を伝えたいか」が明確なものは、数行の文章でも「思い」は充分伝わります。アニメはどんな夢もどんな妄想も表現しうる創造の手段。いつの日か是非、自分なりの「思い」をこの世界でぶつけてみてください。なお『日本の民話・昔話』のレギュラー化という企画がありましたが、テレビ東京系にて4月から放送開始します。

【フジテレビ 編成部ドラマアニメ企画担当者の感想】
今回頂いた中で、非常に印象的だったのは、震災という大きな出来事を経験した中で生まれる社会の「空気」を捉えたものがいくつか見られたことです。人との「絆」や「思いやり」を描いたものなどが散見され、時代を捉えた企画が集まったことが非常に素晴らしかったかなと思います。また視聴者の中にもそういった人の温かさに触れたいという欲求があるのではないかと、今回の企画を拝見させていただき思いました。

その他

  • 「中高生モニター会議」の開催について
    3月18日(日)正午から、BPOのある千代田放送会館で2011年度「中高生モニター会議」を開催する。テーマは、「私の見たいテレビ、作りたいテレビ」で、グループに分かれて番組企画を作成する。
  • 2012年度「中高生モニター」について
    2012年4月~2013年3月までの中高生モニターに、中学生64人、高校生70人、合計134人から応募があり、審査の結果、34人(中学生22人、高校生12人)に委嘱することとした。
  • 青少年委員会主催の公開シンポジウム「”新時代テレビ”いま、制作者たちへ」が2月10日(金)に全国都市会館大ホールで開催された。
    第1部はNHKと在京キー局のドラマ・バラエティ制作者666人の意識調査についての報告、第2部は調査結果を踏まえて、「ドラマ論」「バラエティ論」や今後のテレビについて、制作者や評論家らによるパネルディスカッションを行い、132人が参加した。

第129回 放送と青少年に関する委員会

第129回 – 2012年1月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第129回青少年委員会は1月24日に開催され、12月13日から1月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に、バラエティ1番組について視聴し審議したほか、1月に寄せられた中高生モニター報告及び2月のテーマ等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年1月24日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

1. フジテレビ『ザ・ベストハウス123』(1月11日放送)について

「浮気現場に突撃!男と女の修羅場最凶衝撃映像20連発」という企画について、視聴者から「20時台に卑猥な映像が放送され、子どもに不適切」等の意見が寄せられ、番組を視聴の上審議した。

【委員の主な意見】

  • アメリカでは、14才以下は見ないようにと指定されている番組であるはず。そのことを認識した上で制作に当たったのか。
  • 他の企画は興味深く見たが、この企画は映像や言葉の性的な表現が見られ、この時間には不適切。
  • 短時間の放送なら視聴者の嫌悪感も違ったかもしれないが、長時間にわたって20本ものストーリーを見せられるとうんざりする。
  • 興味深い企画を分断する形で、この企画が挿入されている。その企画を見たいと思ってみている視聴者は、間に性的な映像を見せられ不快に思うはず。

以上の審議の結果、委員会としては番組の制作プロセスや企画意図等について、次回委員会で制作担当者など当該局からの説明を受け、引き続き審議を行うこととした。

2. 津波や大震災映像の取り扱いについて

3月11日の東日本大震災から1年を迎え、各局で特別番組等が編成されることに関して、委員より委員会として「地震や津波の画像をむやみに流すことは、PTSDを引き出して子どもらに負の影響を与えるので、そのことに配慮した映像使用や注意喚起を呼びかけるべき」との提起があり討議した。そのことの重要性は認識するものの、震災の大きさを忘れないよう国民に伝えていくということはマスコミの責務であり、委員会として事前に規制ととられかねない意見を出すことには慎重であるべきとの判断から、各放送局の自主性にゆだねることとした。

中高生モニターについて

12月~2月まで「ドラマ・アニメ番組」のジャンルを取り上げている。1月のテーマは、最近面白そうと思って見たドラマ・アニメ番組の中から、期待はずれだった番組、面白くなかった番組について率直な感想や意見を求め、27人からリポートが寄せられた。
ドラマについては21人が17番組(重複あり)について報告が寄せられた。そのなかで4人から意見が寄せられた番組は『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系列)で、「ストーリー展開が分かりづらくつまらなかった」「1回見て面白くなかったので2回目は見ないことにした」などが主な意見だった。また、『花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス~2011』(フジテレビ系列)には3人から「2番煎じでつまらなかった」などの意見が届いた。そのほか、韓流ドラマの日本版『美男ですね』(TBS系列)、韓国の人気女優を起用した『僕とスターの99日』(フジテレビ系列)も「盛り上がりに欠けた」「『冬のソナタ』に似ている」といった意見が寄せられ、そのほか、『大河ドラマ 江~戦国の姫たち~』(NHK)、『南極大陸』(TBS系列)、『DOCTORS~最強の名医』(テレビ朝日系列)などに、批判的な意見が寄せられた。

  • 「最近見ていたドラマで嫌いになったものは、ほとんどすべてです。なぜこんな回答かというと、ほとんどが原作のあるものになっているからです。原作ものならプロデューサーの苦労も努力もないだろうと思います。『家政婦のミタ』にはいい脚本家がいて評判になりました。そこで、です。僕は、ドラマは予定調和によって構成されたタダの劇ではなく、展開が波乱に満ち、ときに笑いもあり、次回が気になるような作品であってほしいと思っています」。   (愛知・中学3年男子)
  • 「私は日本テレビの『理想の息子』にジャニーズが3人も出ていることが気になります。歌手を主にしているアイドルの演技は正直うまいとは思いません。ドラマの視聴率狙いで、有名な俳優さんや女優さんを起用しているのでしょうが、無名の人でも与えられた役にどれだけなりきれるか、それがドラマの良さではないでしょうか」。(東京・高校1年女子)
  • 「『花ざかりの君たちへ~2011』は、前作を見ていた人間としては登場人物たちに対する思い入れがあって、新しい俳優陣たちがそのイメージを壊す、また”完コピ”でまったくオリジナリティーが無い、見るにたえないもので終わってしまいました」。(東京・中学2年女子)
  • 「『花ざかりの君たちへ』のリメイク版を作るなら、前作のイメージを吹き飛ばすくらい、ぶっとんだものを作ってほしかったです」。(東京・中学1年女子)

アニメには5人から4番組についての報告が寄せられ、なかでも『ドラえもん』(テレビ朝日系列)には、「昔は面白かったのにマンネリ化している。ストーリー展開がつまらなくなった」という意見が2人から寄せられた。

  • 「『ドラえもん』といえば四次元ポケットから出てくる”道具”だと思うのですが、原作や過去の放送を見ている限りは、ドラえもん自身が場と状況をわきまえて道具を出すべきか判断していたように思います。しかし、昨今の放送では”本当にこれでいいのか”と思えるほど、道具を出す頻度が増えており、それがのび太の成長を妨げているのではないかと思うと、子どもたちの目にはどう映っているのだろうと考えてしまいます。やはり、原作者がどんな意図で描いたかを考えながら、制作する必要があると思います」。 (東京・中学1年男子)

そのほか、ドラマでは地方局4局が共同制作している『歌セラ』(東北放送で視聴)というシリーズや、チバテレビなどで放送されたアニメ『神様のメモ帳』についての意見が寄せられ、「意欲的ではあるが何を描きたいのか分からない」、「スタートは面白かったが終わりに近づいて雑になった」という意見も寄せられた。

【委員の主な所感】

  • 最近のドラマ・アニメは原作のマンガを映像化したものが多く、原作を読んでいたモニターたちは期待して番組や映画を見るが、原作のイメージに合わない絵柄や、オリジナリティーが失われた番組が多いことに批判的な意見を寄せていることが印象に残りました。
  • モニターの皆さんが、期待はずれだった番組、嫌いな番組をリポートにまとめるのは難しいことだということを再確認しました。そんな中で、アイドルや旬の役者・タレントたちが出演していても、必ずしも中高生の皆さんたちが見たい番組ではないという意見に注目しました。オリジナル作品の少ないことと合わせて、今のテレビ界の抱えている課題でもあると思います。
  • 最近のドラマ・アニメ番組は、原作のアニメ化や実写化など数多く、原作のイメージを壊してほしくないという思いから、もっとオリジナル作品を作ってほしいというモニターの意見には、放送局も耳を傾ける余地があるのではないだろうか。
  • 原作をアニメ化することによって本来の作品の良さが失われている場合が多いと感じている人がかなりいると感じた。また、ドラマについては、有名なタレントを使って視聴率を上げるのではなく、無名でも本当に役をこなせる役者を起用すべきだという鋭い意見があったが全く同感である。
  • 原作のマンガが好きで、アニメやドラマを見た場合イメージが違うとがっかりするという意見が多くありました。また、マンガとアニメは違うのだから二つを比較するのは気が引けるとの感想もありました。しかし見方を変えて、この違いが実は面白いということに気がついてもらいたいのです。つまり、原作は一つなのに、紙に描かれた文字と絵からなるマンガは、映像や文字や音楽を含んだテレビとどう違うのだろう、そう考えるとそれぞれのメディアがどのような特性をもっているかが分かってきます。例えば、同じ原作で、小説、ラジオ、アニメ、ドラマなど表現の形が違う作品を分析すると、テレビというメディアについてより深く理解することができて、メディアリテラシーの学びにつながるのではないでしょうか。

「今月のキラ★報告」(神奈川・高校1年女子)

私が見て期待外れだったと思ったアニメは、『ゆるゆり』(テレビ東京で視聴)です。このアニメの原作は漫画です。私は以前から漫画の方を読んでおり、アニメ化するということで楽しみにしていました。しかしアニメは期待外れでした。
まず、キャラクターの絵が全く可愛くなかったです。漫画はキャラクターのゆるゆりの絵がとても可愛く、その点が一番の魅力です。しかしアニメを一目見て、絵が可愛くなかったのでとても残念に思いました。また、声優さんの声も声質はキャラクターに合っていたので良かったのですが、声優さんが皆台詞を棒読みしているような感じで、私はあまり感情移入することができませんでした。もとから漫画にもそれほど白熱したシーンがなく、ただキャラクターが日常を楽しく過ごしているさまが描かれているだけなので、声優さんもあまり感情を込めて読むことができないのかもしれません。しかし、本当にとってつけたような声を聞いて、唖然としました。
アニメ化されると聞いたとき、可愛いキャラクターが可愛く動いて、可愛い声で喋るのだと期待していたので、とても期待外れでした。ストーリーも漫画のものをところどころいじってアニメにしただけで、アニメを見ての”お得感”はあまりなく、また漫画のストーリー自体があまり面白い訳ではないので、見ていてとても退屈に感じました。30分がとても長く感じられました。
最近の深夜アニメはライトノベルや漫画をそのままアニメにしただけ、というものが多いと思います。それが成功している場合もありますが、多くの場合は原作と比べると、期待外れとなってしまう場合が多いと思います。アニメを放送するとよい宣伝になり、お金が儲かるということもあると思いますが、もう少しアニメの質・見応え感を考えて制作してほしいなと思います。
また、深夜だということもありますが、下品なアニメが多いと思います。そのようなシーンがないアニメの方が少ないのではと思います。別にそのようなものをアニメに求めていない人にとっては、そのようなシーンがあるととても不快な気持ちになります。また、そうだからこそ多くの人は深夜アニメに対し反感を抱いているのだと思います。深夜アニメの中には、見ていて感動するような作品も沢山あります。もう少し全体的に深夜アニメの質を上げて、今反感を抱いている人にもアニメを楽しんでもらえるようになればいいのにと思います。

【委員会の推薦理由】

原作の漫画がアニメ化された時に感じる違和感について言及し、安直な作りのアニメでは視聴者の心をとらえることができないことに言及していることは、最近のアニメへの警鐘として評価できる内容でした。また、深夜アニメの質についての言及も、青少年が深夜アニメをどのように見ているのか、ということをうかがわせていることも、興味深く読むことができました。

◆ 「中高生モニター会議」の開催について

3月18日(日)正午から、BPOのある千代田放送会館で2011年度「中高生モニター会議」を開催する。テーマは、「私の見たいテレビ、作りたいテレビ」で、グループに分かれて番組企画を作成する。

2012年度中高生モニター募集について

2012年度の中高生モニターの募集を1月23日(月)から開始した。募集人数は30人を予定。締め切りは2月24日(金)、当日消印有効。

第128回 放送と青少年に関する委員会

第128回 – 2011年12月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第128回青少年委員会は12月20日に開催され、11月15日から12月12日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、12月度の中高生モニター報告及び来年度の活動予定等について審議した。

議事の詳細

日時
2011年12月20日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、今月の視聴者意見の概要等について報告を受けた上で、各委員からの意見が述べられた結果、審議対象とするべき番組はなかった。

中高生モニターについて

12月~来年2月まで「ドラマ・アニメ番組」のジャンルを取り上げる。12月のテーマは、最近見たドラマ・アニメの中から「好きな番組、面白い番組」を選んで、どこが面白かったのか、どんな設定や構成、俳優や声優に好感が持てたかなどについて意見を求め、27人からリポートが届いた。
今回はドラマについてのリポートが多く、23人が19番組について報告してくれた(ドラマ・アニメの重複あり)。最も意見の多かったのは日本テレビの『家政婦のミタ』で5人(重複あり)、『ドン★キホーテ』に2人で、日本テレビの番組に合計8人から感想が寄せられた。TBSでは『南極大陸』『ランナウェイ』など5番組について5人、テレビ朝日では『相棒』『はぐれ刑事純情派』など4番組に4人から報告が届いた。フジテレビとNHKの番組にはそれぞれ3人から意見が寄せられ、フジテレビ『謎解きはディナーのあとで』に2人、NHKでは『坂の上の雲』『真珠湾からの帰還』など別々の番組だった。
アニメでは、『名探偵コナン』(日本テレビ系列)や『けいおん!』(TBS)、『ノイタミナ』(フジテレビ)など、7人から(重複あり)別々の8番組についてのリポートが寄せられた。

  • 「私が今毎週欠かさず見ているのは『家政婦のミタ』です。このドラマはタイトルが印象的で、番組が始まる前から興味を持ちました。この番組のいちばんの見所はやはりミタさんです。回を重ねるにつれて過去が明らかになっていくという構成は、どのドラマでも視聴者をひきつけると思います。あとミタさんの発言も毎回同じセリフがあり、家族で見ていて次のセリフをあて合ったりして楽しめます。また、このドラマでは父親と子どもの関係が変化していくのも見所の1つだと感じます」。(東京・高校1年女子)
  • 「『家政婦のミタ』は見ていて目が離せないといった感じだった。1話1話刺激の強い内容なので、あれだけの視聴率が取れているのだと思う。このご時世マジメにやっていては視聴率など取れないと思うので、放送コードギリギリのことをやれば、おのずと視聴率もついてくると思う」。(栃木・高校1年男子)
  • 「私が最近見ている好きな番組は『謎解きはディナーのあとで』です。北川景子さん演じる宝生麗子と、櫻井翔さん演じる執事の影山が事件を解決していくのですが、その過程がとても面白いです。原作と違う設定も良かったです。原作はあの人が犯人だったから、あの人捕まるんだと思って見ていたら、実は別の人物が犯人だったという予想外の展開で驚きました。原作を読んでいる人にも飽きない作品だと思います」。(岡山・中学2年女子)
  • 「父が仕事の合間に見るため撮りだめした『はぐれ刑事純情派』を見てとても面白いと思い、すぐに好きになりました。藤田まことさん扮する安浦刑事が主人公で、毎回事件解決にむけて奔走しますが、事件を起こさざるを得なかった犯罪者の立場を常に考慮し、犯罪行為そのものは許さないものの人を憎まずの精神がとても印象的で、私たちが今後生きていく上でとても参考になることがちりばめられているように思いました。また、安浦刑事が仕事帰りに寄るスナックの場面で、真野あずささん扮するママとの掛け合いがとても面白いです。大人の会話というものはこんなんだろうなあと毎回見入ってしまいます」。(徳島・高校2年女子)
  • 「私が最近みたアニメで面白いなと感じたのは『けいおん!』です。高校の軽音部を中心としたストーリーなのですが、舞台が女子高というのがポイントの一つです。今までのアニメでは、基本的には女の子と男の子の出会いや淡い恋を織り交ぜつつ、バトルものなら戦闘を中心に描いていったりするのですが、このアニメにはそのようなくだりは一切出てきません。最終回には卒業するシーンがあるのですが、自分の卒業式の様子と重なりあうような気がしました。学生時代の何気ない日常と、そこで繰り広げられる他愛のない会話はだれしもが経験してきた道なので、それをあえてアニメにすることですべての年代に人気を博した理由なのだなぁと思いました」。(千葉・高校2年男子)
  • 「私は深夜アニメ『ノイタミナ~あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。~』が好きです。素晴らしい所はよく考えられたストーリーの深さにあります。幼少期の友人の死をきっかけに離れ離れになっていってしまったキャラクターたちが再び心を一つにするという、ストーリーは簡単でありながらも、それぞれの抱える感情(後悔や罪悪感)が複雑に絡み合っていて、その点が深いと思います。学校のクラスの友人たちに意見を聞いたのですが、みんな最高だったと言っていたし、アニメを見た子が周りの子に見るように勧め、ふだんアニメを見ない子も見てくれていました」。(神奈川・高校1年女子)
  • 「NHK制作の『川の光』は動物を主体としたアニメ番組で、背景にとても大きな意味を持たせていると感じました。内容は単純で、かつて住んでいた川を求めて主人公であるクマネズミ3匹が、人間界から川までを大冒険するというものです。ネズミ視点の番組にすることによって、川という自然を破壊している人間の姿、タバコを平気で地面に捨てる人間の姿、動物に暴力をふるう人間の姿…。この番組は自然の大切さを伝えるだけでなく、人間としての生き方を考えさせられる、とても新鮮な番組だったと思いました」。(宮城・高校2年男子)

【委員の主な所感】

  • 「報道・情報番組」のジャンルから「ドラマ・アニメ番組」にジャンルが変わって、モニターみんなが生き生きとしている感じがする。良い悪いは別にして、ドラマ・アニメ番組がこの世代にとって身近で自分たちの生活圏の中に入っているからだと思った。
  • 同世代が主人公になっている番組が自分と重ね合わせて見られているようで、多く好まれていると感じた。中学1年生から高校2年生までの年齢差によって、見方や受け止め方がずいぶん異なっているようにも感じた。
  • 以前ならみんなが見ている番組があったのに今回のモニターを読むと全体的にバラバラで、学校などで話題になる番組が少なくなっているという印象が強かった。
  • 複数回答のあった『家政婦のミタ』『ドン★キホーテ』『謎解きはディナーのあとで』の3番組とも、内容は別々のストーリーだが、それぞれとがった部分をマニュアル化して映像化されているように感じ、そういうドラマが好まれているのだと強く感じた。
  • 自分なりの意見を持ったモニターも何人かいてよかった。ただ、巷間草食系男子が増えているという話のように、女性が主役の番組が数多く見られているのも特徴だった。

「今月のキラ★報告」神奈川・中学3年女子

私の最近見た面白いドラマは『ドン★キホーテ』です。CMなど番宣をあまり目にしなかったのですが、たまたま1話を見て、それから家族全員でハマって最終回まで楽しく見ました。今までのドラマにはなかったような楽しい工夫が凝らしてあるのがよかったと思います。
具体的には、前回までのあらすじを紹介するときに字幕と共にスペイン語で紹介するというものです。急にスペイン語が流れとても驚きました。視聴者を楽しませようとする工夫が良いと思います。HPを見てみると、撮影風景がUPされていたり、Twitterでは主人公がツイートをしている設定で面白いことを言っていたりと、スタッフと視聴者が直接関わっていました。作っている側も楽しんでやっているのだろうというのが伝わってきました。
内容は児童相談所の職員と、裏社会の組長という関わることのなかった2人が突然入れ替わってしまうという設定です。ありきたりの設定のようにも思いましたが、本来のテーマである児童相談所を舞台とした、児童虐待などの社会問題が頭に入ってきやすかったのだと思います。また主役の松田翔平さんと高橋克己さんの2人それぞれ演技を楽しませてもらいました。1人が2役ずつ演じるのでそれがとても上手で面白かったです。このドラマを見てからファンになりました。最終回もおなかを抱えて笑いました。最後まで裏切らないドラマでした。最近のドラマでは一番です!!
最近のドラマではないのですが、先ごろ再放送されていた『野ブタ。をプロデュース』を懐かしくて、つい毎日楽しみに見てしまいました。このドラマは私が小学生の低学年の時に放送されていて当時も見ていました。しかし今改めて見てみると、当時とは捉え方が全く変わって当時とは違うことを感じながら見ました。内容は、学校中の人気者である男の子が、いじめを受けているさえない女の子を人気者にしようとプロデュースするという友情青春ドラマです。当時は幼かったので表面上の意味しか理解していなく、ただただ出演者が好きで見ていました。
でも今見てみると、とても興味深くて格段に当時より楽しんで見ることができました。表面上の意味だけでなく一歩深くまで読み取れて、とても興味深かったです。歳も主人公と一段と近くなったので自分と重なる部分がたくさんあっていろいろ考えさせられ、昔は出なかった涙が出てきました。「うそ」「孤独」「友達」「信じる」など毎回テーマがあり、感じながら自分と重ねて深く考えてしまいました。同時に「いじめ」などといった社会問題も含まれていてとてもメッセージ性のあるドラマと思いました。こういったテーマが主人公と同世代の私たちにすんなりと伝わってきて考えさせられる、とてもいいドラマだなと心から思いました。
昔のドラマもまた違った楽しみ方や良いものがたくさんあると思うので再放送をもっと充実させたら良いと思います。今の時代はインターネットが発達していて過去のドラマもYouTubeなど動画投稿サイトにもUPされていますが、画質の悪い途切れ途切れの動画より、やはりTVの大画面で見るTVならではの感動や楽しみ方があると思います。

【委員会の推薦理由】

ドラマのストーリーに関心をよせるだけではなく、なにが、このドラマを面白くしているかを多角的に分析し、制作や演出の工夫にも言及したところが評価されました。また、以前好きだったドラマを再放送で見た経験から、自分の受け止め方が変化したこと、理解が深まったことについても、よく自己観察をしています。テレビドラマを通して、自らの成長や心理をも振り返り、テレビドラマの魅力について素直な感想を書いてくれたことが高く評価されました。

調査・研究について

青少年委員会主催の公開シンポジウム「”新時代テレビ”いま、制作者たちへ」を2012年2月10日に全国都市会館大ホールにて開催する。内容は、在京テレビ各局のドラマ・バラエティ制作担当者666人の意識調査の結果発表及びパネルディスカッションの2部構成で、パネリストには杉田成道(演出家)、桧山珠美(テレビコラムニスト)、宇野常寛(評論家)他各氏。詳細及び案内はこちらに掲載。

その他

2012年度の青少年委員会の活動方針について委員長他各委員から意見があり、引き続き3月委員会まで協議することとした。

第127回 放送と青少年に関する委員会

第127回 – 2011年11月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第127回青少年委員会は11月22日に開催され、10月16日から11月14日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、中高生モニター報告及び今年度の調査・研究の発表及びシンポジウムの出席者等について審議した。

議事の詳細

日時
2011年11月22日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、今月の視聴者意見の概要等について報告を受けた上で、審議対象となる番組はなかった。

中高生モニターについて

11月のテーマは「報道・情報・ドキュメンタリー番組」の企画書作りで、27人から報告が寄せられた。
まず、報道・情報系の番組では、中高生たち10代の知りたい情報が少ない、難しい問題を分かりやすく解説してくれる番組が少ないのでそうした番組を作りたい、もっと世界のニュースに目を向けてほしいという提案などが、9人から寄せられた。次にリポートの多かった企画がスポーツの分野で、7人から提案が寄せられた。なかでも、なでしこジャパンの活躍から、女子2人からサッカー番組の企画が寄せられた。また、政治討論番組や視聴者参加型の討論番組の企画も4人から届いた。東日本大震災関連では、復興関連のキャンペーン番組や、学生と記者で作るドキュメンタリー番組の提案も寄せられ、そのほか、ユニークな地域おこし企画も寄せられた。

【委員の主な所感】

  • 中高生が参加できる番組が少ない現状から、自分たちが参加したいという気持ちの現れた企画が多かった。また、面白い、センスのあるネーミングのタイトルには感心させられた。
  • インターネットやSNSなど、テレビと多様なメディアを組み合わせるという若々しい発想が面白かった。原発事故以降、科学的な分野への関心も高く、専門家と非専門家の溝を埋めたいという企画も特徴的だった。
  • ニュース・情報・ドキュメンタリー番組の企画というのは、中高生にはあまりひきつけられるものが少ないテーマだったかも知れないが、青少年にもっと社会的な問題に目を向けさせるような番組作りが、放送局に求められているようにも感じた。
  • 自分に関心のあるテーマばかりを求めているようで、食べ物を例にとると口当たりのいいものばかりを食べるのではなく、たまには硬いものを食べて栄養のバランスをとることが必要なように、難しい問題に挑戦することも大切だと思う。
  • 世界に目を向ける企画の一方、地域に密着した企画、関心のあるスポーツ企画、政治問題など分からないことを解説してほしいという企画など、やや社会問題に対する考え方がバラバラな印象だったが、どの企画にも共通して視聴者参加をうたっているのが印象的だった。
  • 世界が見えにくくなっている時代を反映して、若者たちはもっと世界が見えやすくなるような番組が見たい、作ってほしいという要望が強かった。そんな中で、対話型・参加型の企画を考えた人たちは、その考え方をぜひ伸ばしていってほしい。
  • 報道という社会問題を何ヶ月かトレーニングした成果からか、東日本大震災を取り上げた高校2年生男子の企画はすぐにも実現しそうで、何人かの人たちは非常にいいセンスを持っていると感じた。反面、気になる傾向がひとつある。それは「受け身思想」だ。分かりやすさ、見ていてさわやか、くだいたニュースなど、「心地よいもの」「抵抗を感じずスンナリ入るもの」は身にならないと思う。自分の頭で考えて、方向性を見いだすことを心がけてほしい。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント。

企画1.『希望の光を映すということ』 (仙台・高校2年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)
先月のニュースで、若者のテレビ離れが深刻化していることを知りました。これからの社会を担う存在である私たちは、より多くの「世界」を見なくてはなりません。しかし、テレビを通した間接的な接触では感情移入に限界があったり、簡単に目を背けたりすることもできます。ならば、直接若者を被災地に連れて行こうではないか、このような考えのもとで、今回私は東日本大震災をテーマにしたドキュメンタリー番組を企画してみました。
この番組のいちばん重要な趣旨は、「学生による情報発信」です。確かに被災地復興の様子を見学したり、地元の人からお話をうかがったりしますが、彼らが得た情報や感情といったものを地元へ持ち帰り、学校や公民館などで後日発表するという活動を、震災を報道した記者たちと行います。これまで見てきた東日本大震災のドキュメンタリー番組では、そのほとんどが「被災者を取材する」、もしくは「東日本大震災の発生メカニズムや津波被害」などでした。
私の企画においてはそれらを逸脱し、「学生と記者」が番組の主人公となるのです。この番組の目的は、若者のテレビ離れを防ぐだけでなく、「メディアの存在」を再び理解してもらうことでもあります。 さらに私が番組内で求めたいことは、「学校で震災を深める活動を行う」ということです。もちろん記者たちも参加します。彼らはきっと学生たちの考える「震災」に驚くに違いありません。「地震の予知に関する研究を将来してみたい」とか、「自分が親になったら子どもに東日本大震災のことを話したい」など、社会を明るくする希望の光が当たり、いっぱいに広がっているのです!
生徒と記者の交流を描いた作品は、「今」を伝えるだけでなく、視聴した学生、出演した学生が「未来」と向き合うようになり、同時に記者の使命、テレビの使命を改めて考え直すことのできる重要な機会を、気づかないうちに与えているのではないでしょうか。

【TBSテレビ 報道局『報道の魂』担当プロデューサーの感想】
この番組案に興味を覚えました。テレビを「社会に開かれた存在」にするための、いくつかの方法論を提示しているからです。
まず「学生と記者が一緒に被災地を回り、彼らを主人公に番組化する」という点がよい。「被災地そのもの」ではなく「被災地を回った側」を軸にすることで、これまでと違った震災報道が可能になるという発想はなるほどと思いました。取材した側の人間性が問われる番組、ともいえるからです。
また「学校や公民館で、被災地取材の成果を発表する」という点もよい。番組という枠を超えて、人々に直接語りかけることで、生の反応が返ってくる場が出来上がるからです。普段、私たちテレビ屋は、こうした経験をなかなか出来ていないのが現状です。
総じて、テレビは「享受するもの」ではなく逆に「利用するもの」という考えのもと、この企画書は書かれており大変に好感が持てました。

◆ 企画2.『フィロソフィア』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】(抜粋)
自分が疑問に思う「科学の分野」のことを自分が番組に参加して解決していく。だから、家族で参加とか、友だちで参加とかもできるし、幼児から大人までだれでも見てくれる。
キャスターにはタモリさん、解説者には池上彰さんや大学の先生、専門家などを起用する。
【内容】

  • 身近な疑問を募集する。
    (例) ・畑の向こうで走っている車がどうして止まって見えるのか?
        ・救急車の音は通りすぎるとどうして変わるのか?
        ・遊んでいるのと勉強とで1時間の長さがどうして違うのか?
  • それを実験しながら、分かりやすく説明する。質問してきた人が番組のスタッフと一緒に実験したり、リポートしたりする。そのときの内容がよく分かる専門家や、池上彰さんとかに解説してもらって、納得してもらう。
  • おまけとして、中世ラテン科学やイスラーム科学の錯覚とかをひとつずつ紹介していく。

◆企画3.『10代の10代による10代のための討論会』 (神奈川・中学3年女子)

【ねらい】(抜粋)
日本は先進国としては若者の投票率が大変低いです。それは若者が政治に関心がないことの表れです。これからの日本を担っていく私たち子どもに堅苦しいイメージの”政治”に少しでも興味を持てるよう中高生向けの政治・国際情勢についての番組を作りたいと思います。
【内容】
キャスターにはパックンを起用、解説は大谷昭宏さんにお願いします。スタジオには中高生を数人呼び、大谷さんに解説してもらったあとに討論会のような形で生の意見を出し合ってもらいます。見る側も、自分と年の近い子たちが意見を述べているので分かりやすいと思います。それによって自分の考えを持てると思います。
放送時間は家族が揃う夕食時間帯がいいと思います。その時間にこの番組を放送すれば自然と食卓の話題にもなり、話題にもついていくことができ自分の意見も言えるのではと思います。

◆企画4.『世界のNewsに目を向けて』(茨城・中学2年女子)

【ねらい】(抜粋)
私が考えている番組は、小学生以上の若者たちに世界のニュースを知ってもらおうというもので、放送時間帯も小中学生に負担をかけない19:45~20:50を考えました。生放送で、キャスターには村尾信尚さんを起用。解説者は政治、経済、国際、社会、科学、文化、スポーツなどの専門家を考えています。
【内容】
内容は、海外のニュースを誰もが見ても分かりやすく報道する番組で、また、面白いニュースや深刻なニュースまで報道する番組です。私は、パソコンで海外のメディアを見ます。けれど、日本では海外の大きなニュースしか報道されていません。内容によってはあっさりと終わってしまうニュースがあります。しかし、私は「あっさり」と終わらせたくないのです。だからこそ、詳しく説明してほしいために、この番組を企画しました。

◆企画5.『阪堺電鉄に乗ろう♪~地域と共に元気を取り戻そう~』(大阪・中学3年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)
私の大好きな阪堺電鉄は、大阪に残る唯一の「ちんちん電車」です。しかし、いつも、廃止の話が絶えない会社です。そこで、こんなプランを考えました。(1)視聴者から阪堺電鉄の再生につながる、計画やイベントを募集→(2)阪堺電鉄へプレゼンテーションする→(3)タレントを利用して、採用された計画・イベントの準備から開催までをレポートする。
ただ、タレントを使った単発イベントだけでは、瞬間的な効果に終わるので、「阪堺電鉄ファン」をつくりだすことを目標とする必要があります。阪堺電鉄には、国内現役で最古の電車が走っています。これは、もう、一番の「売り」なんです。乗っているだけで、癒されます。また、沿線には、通天閣、住吉大社などの観光ポイントがある他、昭和の香りを感じられる町並みがあちこちに見られます。地元の中小企業や商店も巻き込んで、自治体からも援助が出るような長期的な計画が実行されていく様子まで、取材を続けます。阪堺電鉄が観光電車としての面を確立するということは、大阪や堺の町おこしになるのではないかと思います。キャスターには浜村淳さんか石原良純さん(鉄道ファンだから)。取材者には笑福亭鶴瓶さんか桂小枝さんを考えています。

【日本テレビ 報道局『NEWS ZERO』担当プロデューサーの感想】
力作揃いで、思わず唸ってしまいました。『フィロソフィア』は番組の完成形が目に浮かびましたし、『10代の10代による10代のための討論会』や『世界のNewsに目を向けて』には、中学生としての問題意識を感じました。こういう企画書を読むと、選挙権の年齢をぐっと引き下げた方が日本のためになるのでは?とさえ思います。
視点として「面白いな」と感じたのは、『阪堺電車に乗ろう♪~地域と共に元気を取り戻そう~』です。テレビは全国放送だけではありません。地域密着、町おこし…テレビをツールとして自由に操る発想に、新しい可能性を感じます。
一方、全ての企画書を読み終えて思ったのは、「テレビは若い世代の期待に応えられているか?」ということでした。企画書からは今のテレビ番組に対する批判や不満も多く読みとれます。私が担当する『NEWS ZERO』は若い世代にきちんとメッセージを届けられているかどうか?みなさんに聞いてみたいと思いました。

◆企画6.『任せて!日本は僕らが変える』 (東京・高校1年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)
私は未だに政治の仕組みがよく分かっていません。”与党””野党”など小学校から習って来たけれど、それはほんの表面的な部分だけであって、ニュースを見ていても分からないことがたくさんあります。高校生になってから改めて勉強するのもいいと思いますが、私は小学生の時から政治を詳しく学べる番組に出会っていたら、ニュースの見方も変わっていたと思うので、以下の番組を提案します。
番組のテーマは、「今の日本の政治について」です。しかし、基本的な仕組みが分からない子どもがほとんどだと思うので、「ザ・ニュースペーパー」の方々にコント風に演じてもらい、そのVTRを見た後、解説者と爆笑問題にいろいろと突っ込んでもらう。あと、町や学校で小学生に「現在の日本についてどう思うか?」などの質問をし、将来の日本を担う子どもたちのさまざまな意見をインタビューする。スタジオには小学生を5~6人呼んで、自由な感じの雰囲気で意見を言ってもらい、キャスターの爆笑問題のお2人とともに考えます。

【フジテレビ 情報制作局『東日本大震災特別番組』担当プロデューサーの感想】

今回は「報道・情報・ドキュメンタリー番組」ということで、大別すると「ニュースを分かりやすく」、「専門家を呼んで詳しく」という内容の企画書が多く寄せられていました。世の中の動きに関心を持つからこその企画、興味深く読ませていただきました。
その中で、目を引いたのは『任せて!日本は僕らが変える』です。この番組企画も、「ニュースを分かりやすく伝えよう」というものの一つですが、タイトルに企画者の心意気が伝わってきます。既存のニュース・情報番組を、もっと分かりやすく、こうしたら見てもらえる等の企画が多かった中、この企画は「こうしたい」という思いが伝わってきます。小学生に特化している内容なので、実際に制作するには難しい点もあるかもしれません。それでも、「任せて!」「変える」のように、制作者の「こうしたい」思いを持ち続ける、番組制作の原点が表れていると思います。

◆企画7.『真実の時間』 (静岡・中学3年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)
本当は犯人ではないのに容疑をかけられたり、犯人のように大げさに過去を暴いて報道されたりするのをよく見かけます。一度犯人のようにされてしまうと、本当はやっていなくても、どうしてもそういう目で見てしまうし、容疑が晴れても実はこの人が…と思ってしまうことが、私は多々あります。きっと私以外にもそう思っている人もいるのではないでしょうか?ですから、報道で真実を曲げたり、大げさにして伝えたりしないために、この企画を考えました。
まず、実際に事件など起こったと見られる現場に取材に行き詳しく調べます。また、容疑者をよく知っている人にインタビューしたり、現場の目撃者にもよく話を聞いたりします。できれば、容疑がかかっている人に直接インタビューすることができれば本音も聞けるし、容疑者の証言に矛盾があれば気づきます。また、現場に行くときには犯罪に詳しい専門家や心理学者に同行してもらい、その状況で人間ならどう行動するかも解説してもらえばより分かりやすいと思います。
マツコ・デラックスさんと安住紳一郎さんをキャスターに起用します。選んだ理由は、マツコさんは偏らず何事にもはっきり言うところがいちばんです。この番組はより真相に近づくこと、見ている人にいかに本当のことを、できればありのままに伝えることが重要なので、偏ったことを言わないマツコさんがキャスターなら良いと思いました。安住さんはてきぱきと進めて全体をまとめるのが上手なので、見ている人に分かりやすく説明してくれると思ったからです。また番組はできれば生放送で、視聴者からファックスなどで意見も聞けたらいいと思います。

【テレビ朝日 報道局『報道ステーションSUNDAY』担当プロデューサーの感想】
『真実の時間』…大変骨太な意義のある企画だと思います。無実であるのに犯罪者として扱われてしまった可能性のある人物について、一つ一つ事実を検証して真実に迫っていくことは、テレビがやらなければならない重要な役目です。その番組キャスターにマツコ・デラックスさんをキャスティングしたのが、大変いい目の付け所だと思いました。バラエティ番組などの鋭いコメントで人気の高いマツコさんですが、発言を丹念に聞いてみると、弱者の側に立って社会の問題を指摘するコメントが数多くあります。マツコさんとタッグを組むのが実力派アナウンサー・安住紳一郎さんというのもいい狙いです。また、事件の現場にこだわって、専門家とともに取材し真実に近づくという姿勢も大切なことだと思いました。こうした志を持った方と、将来テレビ制作の現場で出会うことができたら嬉しいですね。

◆企画8.『こんなのはじめて!オモシロNEWS』(東京・中学3年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)
最近のニュース・報道番組はすべてが似たような感じで、一つだけでいいような気すらします。あんなにいっぱいニュース番組があるんだったら、一つくらいふざけていてもいいと思い、考えた企画です。
コンセプトは、学校から帰ってきた学生たちが見て、ちゃんとタメになりながらも笑って疲れが吹き飛ぶような番組です。しかし、ふざけすぎだと思われても嫌なので、主に大人たちが通常のニュースを見る時間とはあえてズラして午後6時台・30分に設定しました。
番組では、通常のニュース番組ではなかなか取り上げないような”ふざけたニュース”を思い切りクローズアップしたり、あちこちの番組でも取り上げたりしているようなニュースでも、ツッコミどころがあったら”ツッコむ”番組です。キャスターは三谷幸喜さんを起用します。三谷さんはトークが上手く、知識量もありアドリブに対応でき、あらゆる人と接することが得意だと思ったので向いていると思いました。三谷さんがゲストも巻き込んでハチャメチャする気がするので、解説者には茂木健一郎さんを招き、三谷さんを押さえたり、正しい情報を伝えたりするのに適任だと思い選びました。

◆企画9.『THE BUNKA NEWS』(大阪・中学1年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)
私が企画するニュース番組は日本の文化だけでなく世界中の文化などを取り上げる総合バラエティー&”為になる”教養系の番組です。例えば、日本でいえば沖縄のエイサーダンスなど、日本に住んでいてもごくわずかな人にしか知られていない文化はたくさんあるはずです。文化を通して見えてくる経済や科学など、大人も子どもたちも見ることができて楽しい番組にしたいです。
最近なんでもかんでもパソコンで調べたら分かるといわれているけど、私たちは何を調べたらいいのか分かりません。興味を持つことができる、手助けをしてくれる番組を要望します。放送は土曜日の午前9時から60分でどうでしょう。キャスターにはみのもんたさん、アシスタントに夏目三久さんかABCの島田大アナウンサーを考えています。

【NHK 制作局『クローズアップ現代』担当チーフプロデューサーの感想】
『こんなのはじめて!オモシロNEWS』と『THE BUNKA NEWS』は、普段ニュースでは取り上げられない日々の出来事を、テーマを絞って伝える点が、個性的で面白いと思いました。
既存のニュース番組は、キャスターや出演者の人選、取材の切り口などが番組の個性を形成していますが、どの出来事をニュースとして取り上げるかの判断は大きく異なりません。金太郎飴のようなラインナップに、物足りなさを感じている人も多いのではないでしょうか。取り上げるニュースそのものの定義を問い直す2つの番組提案は、一視聴者として是非見てみたいと思いました。

[企画総評]
【テレビ東京 報道局プロデューサーの感想】
中高生企画は様々な工夫が凝らしてあり興味深く読んだ。特に「自分が考えるための番組」「自分が発信する番組」等、”当事者”感の強い企画に好感を持った。ただ、既視感のある企画が多い。もしかして、テレビで放送した同趣旨の番組は中高生に見られていないために、新企画として出てきてしまったのではないか。それならまだしも、テレビ自体が中高生に見られてないのではないのか…。総評するつもりが図らずも自分が考えこむ機会となった。

調査・研究について

2012年2月10日(金)に開催を予定している本年度の調査発表及びシンポジウムについて、事務局よりパネルディスカッションの出席者等の説明があり、委員会として了承した。

第126回 放送と青少年に関する委員会

第126回 – 2011年10月

フジテレビ『FNS27時間テレビ』”ハケ水車”企画について番組責任者との意見交換

視聴者意見について …など

第126回青少年委員会は10月25日に開催され、9月委員会で審議した、フジテレビの長時間番組の未明から早朝にかけて放送された企画について、編成及び制作責任者と制作意図等について意見交換を行った。また、9月14日から10月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、中高生モニター報告及び今年度の調査・研究の日程等について審議した。

議事の詳細

日時
2011年10月25日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

フジテレビ『FNS27時間テレビ』”ハケ水車”企画について番組責任者との意見交換

当該企画について視聴者から「夏休みの早朝の番組として卑猥な描写で、子どもに見せられない内容」などの批判意見を受け、委員会と番組担当者との意見交換を行った。意見交換ではフジテレビ側から番組の企画意図や制作プロセス等について以下の見解が示された。

◆フジテレビ意見概要

【FNS27時間テレビについて】
フジテレビ及びフジネットワークの総力を挙げ、視聴者に面白さや感動を与え、一緒に楽しめ、テレビのパワーをアピールする年に一度のお祭り番組。今年は被災地を元気にしようというメッセージと、完全デジタル化によるテレビ新時代の幕開けという2つのテーマを柱に制作・放送した。例年この番組は”笑い”を一番大切なものとして全面に置いているが、3月の震災を受け、企画段階で果たして”笑い”を主眼にした番組ができるのか、またこの番組自体が今年は放送できるのか大いに悩んだ。しかし被災地の東北3県に赴いた際、多くの方から「自分たちは笑いたい。笑わせてほしい」「お涙ちょうだい番組にはしないでほしい」という言葉をいただき、フジテレビらしい面白い番組にしなければいけないと決意し制作した。結果として明るく楽しい、全編笑いに満ち溢れた番組になったと思う。

【”ハケ水車”企画について】
この企画は1993年に放送されていたものだが、アナログテレビの最後の日として、出演者たちの青春時代の、もっともアナログ的なコーナーの象徴としてこの企画を選んだ。当時も物議を醸していた企画だけに、見せ方に配慮し、肌を一切露出しないというルールを作り、女性はヘルメットをかぶり、レーシングスーツを着て手袋をすること、また言葉の表現も、レースになぞらえることで笑いにつながり、直接的な生々しい表現を避けるよう考慮した。

【放送時間について】
視聴者数が一番少ない時間を選ぶ配慮とともに、番組が始まってちょうど折り返し地点で、出演者たちの疲労がピークになるところを、大きな声で頑張れるコーナーにすること。また過激なコーナーをレースになぞらえ、そのすぐ後に放送される本当のF-1レースという健全なモータースポーツにつなげることで、そのギャップの面白さを演出すること。また、司会の今田耕司はあの直後、被災地に感動を与えるため宮城・南三陸町に出発したが、東京のスタジオではお笑い芸人として、あえて過激な仕事をすることでのそのギャップを演出するため等、複合的な理由であの時間を選んだ。

【反省点】
“ハケ水車”自体が面白いと思っているわけでは無い。今田耕司など当時の出演者は知っているが、若手芸人にとっては伝説のようなコーナーであり、その両者のコミュニケーションやリアクションなどを面白く笑いに
つなげようと思っていたが、演出が狙い通りにいかず、視聴者に笑いが届かなかった部分もあったのは、残念でならない。また放送時間については、この時間帯を1日の始まりというより、深夜の続きと捉えてしまい、早朝であり、子どもたちが起きてくる可能性が有る時間という意識が浅かったことについて大変反省している。

【事後の対応】
お色気ネタは笑いのジャンルの一つではある。しかし今回の視聴者意見等を受け、編成制作局内で協議した結果、番組制作にあたっては放送時間等を含め、女性や子どもたちに十分配慮すること及び、今後、下品で直接的な下ネタは避けることを再確認し、バラエティ制作の全プロデューサー、全編成部員に徹底した。

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、今月の視聴者意見の概要等について報告を受けた上で、審議対象となる番組はなかった。

中高生モニターについて

10月のテーマは、最近、一番注目した「ニュース・報道」(国内・国際)についてのリポートを提出してもらうもので、なぜそのニュースに注目したのか、その情報の伝え方が分かりやすかったかなど、その理由も書いてもらい、27人から報告が寄せられた。

【主な意見】

今回のリポートの特徴は、あまり1つの事件・事故に集中せず、さまざまな分野のニュース・報道に関する意見が寄せられ、モニターの興味の持ち方や関心の持ち方が多様であることがうかがえた。また、傾向として「もっと詳しく情報を伝えてほしい」という意見と、「伝え方に疑問を感じた」という意見に大きく分かれていた。
まず、国内問題でいちばん意見の多かったリポートは、やはり東日本大震災関連の報道で6人から、また、直近の世田谷の放射性物質発見のニュースにも2人からリポートが届いた。

  • 「震災時の都市部で起こった『帰宅困難』についての報道番組を見ました。大災害が起こると、まず交通機関がマヒすることで帰宅困難者が街にあふれてしまい、それがさらに大きな災害に結びついてしまう、といったことについて専門家や地域の実際の取り組みなどを取り上げて、とても広い視野で詳しく紹介していました。例えば、消防車が火災の現場に5分遅れると、火災範囲は一気に広がり、2~3軒の火事も町中に燃え広がり、街にあふれる人々が火災に巻き込まれるといった二次災害も起こりうるそうです。大地震では両親も帰宅困難に陥っていたので、このような事態にならなくて良かったと思いました。また、ある保育園ではツイッターを利用して保護者に地震後の子どもたちの状況を発信し続けたそうです。この番組では、個人では考え付かないような二次災害の可能性についてさまざまな立場の人が教えてくれ、とても有意義だと思いました」。(中学1年・男子)
  • 「今回私が一番注目したのは『コメ作付け制限区域』のニュースです。福島原発周囲17の市町村が制限区域に指定され、紹介されたのは福島県川内村でした。川内村は人口3,000人でしたが、その9割は村を離れたままでした。そんななか、半世紀もの間米を作ってきた1人のおじいちゃんがいました。今年収穫した米は1トン。しかし制限区域内で作った米はたとえ放射線量が少なくても処分しなければいけないのです。検査用に1キロを残し、残りの米を処分しました。その時、おじいちゃんは泣いていました。インタビューに答えるおじいちゃんは笑顔で快活だったけれど、その時のインタビューで見せた涙。それが今の被災者の皆さんの心を映し出しているのでは?と考えました」。(中学2年・女子)
  • 「僕は東日本大震災が起きたとき、どうして予測できなかったのだろうかとずっと思っていました。なぜなら阪神淡路大震災の時からたくさんの予算をかけて地震計や観測地をたくさん作って地震に備えたというニュースを聞いていたので、これほどの大きな地震なら予測ができたのではないかな、と思っていたからです。だから、『NHKニュース7~震災なぜ予測できなかった問い直す地震学の今後~』のタイトルを新聞で見たときは、ぜひ見たいと思って注目していました。しかしそのニュースの時間は短く、日本地震学会のシンポジウムの様子が報道されただけで、肝心のなぜ予測できなかったのかといったことがよく分かりませんでした。新聞のタイトルに出ていたぐらいだから、会議の様子ではなくもっと地震の予測に関係する内容を知りたかったのは僕だけではなかったと思います」。(中学1年・男子)
  • 「私が最近一番注目したニュースは、道路脇の側溝や雨どいなどに溜まった『放射性物質』についてのニュースです。その理由は私の住んでいる区でもその問題が起こっていて、比較的身近に感じたからです。その中で私が疑問に思ったのは、どの放送局も連日”同じように”取り上げていることです。具体的な対策法や処置法を伝えず、なんだか情報を流しっぱなしにしているような気がしてなりません。ただニュースをすばやく伝えるだけではなく、その後先のことも考えて伝えてほしいと思いました」。(中学2年・女子)

複数の報告が寄せられたニュースは、「島田紳助さん引退」、「民主党小沢元代表の公判開始」、「韓流ブーム」などで、そのほか最近話題の「年金支給年齢引き上げ問題」や、報道姿勢全般への批判の報告もあった。

  • 「最近一番注目したニュースは『民主党・小沢元代表の政治資金問題』です。私はこの問題の報道の仕方について、良い点と悪い点があると感じています。良い点はこの問題についての沢山の意見がほぼ全て報道されていて、偏った報道がされていないことです。その一方悪い点は、この問題で小沢元代表の資金問題ばかりが取り上げられていて、政治家としての小沢氏の政策などが全く伝わってこない点です。視聴者の求める情報を報道するのは正しいことですが、そればかりを取り上げてしまい、他の情報が伝わってこないのは問題だと思います」。(中学2年・女子)
  • 「私は『韓流エンターテインメント報道』について取り上げます。今は”韓流ブーム”です。私たちの間でもとても人気であり、そして興味もあります。そのブームに伴って多くの視聴者がいる今、各テレビ局は韓流番組や報道を劇的に増やしたように思います。多くの局でふだんは日本のドラマをやっていた時間帯に韓流ドラマを放送していますが、どこにチャンネルを回しても韓流ドラマだったりします。韓流ドラマを流しておけば視聴率が取れるからいいだろうという、放送する側の意図が出ているように感じて、嫌です」。(中学3年・女子)
  • 「私が最近一番印象に残ったのは『年金支給額年齢の引き上げ』に関するニュースです。3年に1歳ずつ年金受給開始年齢が上がっていく現行制度を、最終的に65歳や68歳に引き上げるようという案を、厚生労働省が提示したということでした。このニュースを見て以下のことを感じました。(1)年金受給が65歳や68歳になってしまったら、生きているうちに年金を受け取ることができなくなる人が増えるのではないか、ということ。(2)年金として納め始める年齢が同じだとして、生まれた年代によって受け取れる金額にばらつきが出てしまうのは良くないのではないのかということ、などです。年金に関しては本当に難しい問題だと思います。ですが、働いた分だけ報われない、支給額が本来の分だけ返ってこないというようになってしまっては、年金を納める意味が無くなってしまうのではないかと私は感じました」。(高校2年・女子)
  • 「報道って、人にとても影響力があると思います。しかし、ニュースなどを伝える側にちゃんとした意図が見えない時があります。政治の話だと、今の日本の政治は”メディア政治”だと思います。政治家がミスをしたら、喜んで報道しているようにも見えます。新しい総理が誕生しても、最初は持ち上げて、最後は突き落としているかのようです。いい加減、報道する人たちは自分たちのおそろしさに気づいてほしいです」。(高校1年・男子)

次に、国際関係のニュースではアップル社の創始者・スティーブ・ジョブス氏死亡と新発売された「iPhone4S」に関する意見、また、TPP参加問題に関する政府の対応への疑問や日本農業に及ぼす懸念、タイの洪水やギリシャの経済危機に関する経済ニュースに注目したリポートなどが7人から寄せられた。

  • 「僕が注目したのは、スティーブ・ジョブス氏逝去のニュースだ。今年の8月ころまでは発表会に出ていたのに、突然の死に僕はびっくりした。iPhone4S発表の後だったので、タイムリーすぎてなぜか少し怖かった。報道では、スティーブ・ジョブス氏の死による影響や、ユーザーの言葉などを報道していたが、ライバル企業の言葉はあまり聞けなかった。また、今回の報道ではスティーブ・ジョブス氏の成功した商品ばかりが紹介されていたが、失敗したことも紹介した方が、僕的には面白いと思った」。(中学1年・男子)
  • 「僕が住む秋田県は農業県です。きっと愛知県のような工業県ではTPP参加はいい意味でとらえられるでしょうが、秋田県では違います。このTPPに参加すれば工業製品、農産物ともに関税がほぼゼロになるといいます。日本の農産物の品質は世界でも高い評価を受けていますが、価格が外国製品に比べて高いです。ということは、外国から安い商品が入ってくると、日本のものが売れなくなる可能性があると思います。野田総理は推進派ということですが、日本の首相としてどのような判断をするのかに関心を高めています」。(中学3年・男子)
  • 「今、政府は来月12日からハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前に、TPP参加・不参加の決着を目指しているそうですが、これほど重要な問題を国民全体で議論し尽くさずに決定して良いものだろうかと考えます。関税撤廃が原則のTPPへ参加した場合、低価格の農産物が国内に流入し、国内農業が大きな打撃を受けかねません。私の家は農家ではなく、直接影響があるわけではありませんが、日本の岐路に際して、国民がこぞってTPPの問題を議論した上で、参加・不参加の決定をすべきだと思います」。(高校2年・女子)
  • 「私が今回最も注目したのは、世界の経済ニュースです。先日は日本でも甚大な被害を引き起こした大洪水が、タイでも起きた、という報道がまず目につきました。最初は『あぁ、日本じゃなくて良かった』と思ったのですが、報道を見ているうちにタイには日本の自動車工場が多くあることを知りました。タイで生産していた車の部品生産が洪水でストップしてしまったのです。これは経済的に大きな打撃を与えることになることが分かり、さっきまで”楽観視”していた私が急に”馬鹿らしく”思えました。また、ギリシャの財政危機に影響されたフランスやベルギーなどの各国の銀行が日本の円高に拍車をかける、という報道も印象に残りました。ギリシャが引き起こした影響は、ユーロ圏内、アメリカにまで広がっている、ということは知っていましたが、まさか日本には関係ないのでは?と勘違いをしていた私は、ひどくショックを受けました。今まで私は、国外のニュースはその国だけの問題で、自国に与える影響なんて考えてもみませんでした。しかし、最近の報道を見てからその考えが大きく変わりました。国内のことだけを見るのではなく、大震災などで苦しい今だからこそ、国外のことにも関心を持って『世界の中の日本』を客観的に見ることが重要なのだと、今はそう思えます」。(高校2年・男子)
  • 「私が今回注目した報道は『ノーベル生理医学賞の報道』についてです。2011年度はブルース・ボイラー博士とジュールズ・ホフマン博士、ラルフ・スタインマン博士が受賞しました。私はこの受賞についての報道が納得できませんでした。その理由は、報道の量がとても少なく内容も薄く分かりにくいものだったからです。発表当日、私はとても楽しみにしていたのでずっとテレビをつけて待っていましたが、報道は『iPS細胞、山中伸弥教授ノーベル賞受賞ならず』というものばかりで、私が期待していた受賞者の研究内容の報道はほとんどありませんでした。全てのことを知るのは難しいことですが、せめてノーベル賞を受賞した研究ぐらいは、分かりやすく国民に知らせるべきです。そうでないと、国民のノーベル賞への関心も下がってしまうし、中高生がこの賞がどれだけすごいものなのかも、分からないままになってしまいます」。(高校1年・女子)

【委員の主な所感】

  • 中学1年生から高校2年生まで幅広い世代のリポートのなかで、今回は中学生のリポートに読み応えのあるものが多かった。東日本大震災の問題から経済危機の国際問題まで、それぞれ自分が関心を持っているニュース・報道に自分の意見を素直に表現していたことを評価したい。
  • ニュースを見る”視点”に優れているリポートが多かった。事件そのものへの関心と、それを伝えるメディアの姿勢に”批判の目を向ける”視点が優れていた。
  • 原発事故の影響で、コメの作付け制限区域で収穫されたコメをすべて廃棄させられた農家の”涙”と”笑顔”を見て、映像の裏側に隠された被災者の”心”を読みとった報告に感動した。
  • ノーベル賞の報道でも、日本人受賞者が出なかった場合の情報の伝え方に疑問を呈したリポートなど、内向きの報道の多い日本のメディアのあり方に疑問を呈したリポートに注目した。
  • タイの洪水被害やギリシャの経済危機など、これまであまり関心を抱かなかったことへの自省を含めて、世界はつながっていると気づいていく過程が素直に表現されていた点が良かった。

「今月のキラ★報告」東京・中学2年男子

最近気になったニュースは、締め切りのほんの数日前のことですが、「世田谷区内で高濃度の放射性物質が見つかった」ということです。その地点と自分の通う学校が近いということもあり、最も詳細について知りたいと思った情報でした。学校でもそれに関する内容のものが配布され、クラスの一部の人はその家の前を通学路としている人も多くいました。その夜見たニュースでも取り上げられ、大々的なニュースとなって驚きました。
世田谷でも特に多くの人が住む地域、何より通学路沿いであることから、自分を含めて多くの人々が不安な気持ちになったので、詳細な報道をしてくれたのは大変よかったと思う一方、放送の仕方が少しきつかったのではないか、という気にもなりました。
例えば、翌日の報道。その家の所有者の方に話を聞くというのはいいのですが、インタビューと編集の仕方が、まるで何か事件の犯人の関係者のような扱い方で放送されていたような印象でした。また、世田谷区の会見についての報道も、世田谷区に責任があるかのような言い方であったのではないかな、と思いました。僕は世田谷区役所の近くに住んでいるのですが、その日、目の前の通りには報道関係の自動車やハイヤーが並び、他の車が通りづらそうだという印象を持ちました。
放射能に関しては特に3月11日以降、メディアは適切に扱う必要があると思います。今までの福島原発事故関係の内容では、不思議なほど口を閉ざしていたのに、今回の件では逆に騒ぎすぎだったのではないかという印象を持ちました。世田谷の中心部で、通学路としても多く利用されているということが要因でしょうが、それなら福島県の小中学校の通学路はさらに強い値を記録しているでしょう。そんな中で、たいして被害を被っていない東京で、その値が出たからといってここまで大騒ぎするというのは、福島の方に失礼ではないかと、思ってしまいました。
震災当日もそうでしたが、関東中心の報道が全国放送される今のメディアの姿勢に、少々疑問を感じます。確かに重要な情報ではありますが、重視するところを間違っているのではないでしょうか。家の人への問い詰めるようなインタビューは、見ている方も不愉快になります。また、福島や北関東で原発事故により毎日苦しんでいる人がいるのに、そんな一時のことだけで大騒ぎする必要などないはずです。
視聴者側の気持ちを考えるとともに、その優先順位も考えていくべきではないでしょうか。

【委員会の推薦理由】

全国放送でありながら”東京”中心の報道になっていることへの批判、当事者などに対するインタビューの際の配慮の必要性の指摘、報道内容に関する視聴者の立場から優先順位を決定すべきだ、という問題提起が高く評価されました。
今後も、報道に限らず、放送の仕方についても批判的な目”複眼”で事象を見て、報告してくれることを期待します。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者及び一般視聴者を対象とした調査について、その分析等が終了し、調査報告書にまとめるとともに、2012年2月10日(金)に調査結果の報告及びシンポジウムを開催することを決定した。

第125回 放送と青少年に関する委員会

第125回 – 2011年9月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第125回青少年委員会は9月27日に開催され、7月16日から9月13日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に、長時間番組の中の未明から早朝にかけて放送されたコーナーについて視聴し審議した。また、9月に寄せられた中高生モニター報告及び10月のテーマ等について審議したほか、今年度に取りまとめて公表する予定の調査・研究についての報告が行われた。

議事の詳細

日時
2011年 9月27日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

フジテレビ『FNS27時間テレビ』(7月23日~24日放送)
27時間テレビ中、24日未明から早朝にかけて放送された、女性の下半身にハケ状の物を回転させるいわゆる”ハケ水車”企画について、視聴者から「卑猥な描写や言動で夏休み中の子どもには見せられない内容」等の意見が寄せられ、番組を視聴の上審議した。

【委員の主な意見】

  • 『27時間テレビ』はフジ系列のステーションイメージを高めるブランド力のある番組であったはず。特に今年は被災地復興をテーマに掲げていたはずなのに、こういう企画が放送されることは理解に苦しむ。
  • テレビの現状は、3月11日の大災害を経験するとともに、地デジ化開始当日を迎え、今後どういう方向に進むのかという事が問われている時。制作者はどういう認識でこの企画を制作、放送したのだろうか。
  • かつて、テレビの深夜枠の性的表現について国会で議論され規制の声があがり、番組自粛の動きがあった。このような放送がそういう窮屈な状況をまねく恐れがあることを危惧する。
  • 視聴者は早朝の時間帯にこういう放送を流すことに強い憤りを持っている。夏休みで青少年が見ている可能性が高いという倫理的問題等を自覚しているのか問いたい。
  • 一般的に番組が男性の大人の目線で作られていて、制作者に女性や子どもの視点が欠けていることから、今回のような番組が制作されることになる。
  • かなり昔には深夜帯では裸を出したりするもっとどぎつい番組がたくさん放送されていた。それに比べると、裸でもなく水着でもなく、顔も隠していて配慮しているようにも見えるが、それが逆に覚悟なしでやっているようなすっきりしない印象を受ける。
  • 女性から見たら不快だろうと思うが、中身的にはぜんぜんリアリティーはなく、笑える部分もある。何をもって問題とするかは難しい。

以上の審議の結果、委員会としては番組の制作プロセスや企画意図等について、次回委員会で制作担当者等当該局からの説明を受け、引き続き審議を行うこととした。

中高生モニターについて

9月のテーマは、報道・情報・ドキュメンタリー番組の中から「いつも見ている好きな番組」について、どんな情報に関心が高いのか、どんな内容や構成に好感を抱いているのか、また、司会者やキャスターのどんなところに魅力を感じるかなど意見を求め、29人から報告が届いた。
まず朝のニュース・情報番組については12人から9番組について意見が寄せられた。複数回答があった番組は『めざましテレビ』(フジテレビ)が3人、『ZIP!』(日本テレビ)が2人で、学校へ出かける前の朝の忙しい時間帯に「テンポよく」「手短にニュース」を知ることができると同時に、エンターテインメント的な要素を含んだ番組が好まれていた。

  • 「私は家から学校が遠いのでゆっくり見られるわけではないのですが、『めざましテレビ』は、政治、芸能、スポーツと幅広いジャンルの最新情報をしっかり伝えてくれるので、とても役に立ちます。そしてメインキャスターの大塚さんをはじめ、皆さんがとても仲が良さそうなのが伝わってきます。ほかにも、『ココ調』というコーナーでは、今どきの若者のことだとか、どうでもいいようなことを調べていて朝から笑ってしまいます。」(高校2年・女子)
  • 「私が好きな番組は、『ZIP!』です。『ズームイン!!朝!』から毎朝、どんなに忙しくても10分は見るようにしています。報道番組はメインの司会者が気に入るかどうかで見ていました。新しい試みとして曜日ごとにメインの司会者が変わる、という点があります。最初のうちは慣れない生放送で、大丈夫なの?という風に感じましたが、徐々に慣れていって上手く噛み合うようになってきた今では、バラエティー番組に近い感覚で見ることができます。」(高校2年・男子)
  • 「最初は親が『NHKニュースおはよう日本』を見ているので私もなんとなく見ていたのですが、最近では毎朝これを見ないと一日が引き締まりません。この番組のいいところは、1つ1つのニュースが簡潔にまとめられていて、短時間で核心が伝わってくるのです。私は毎朝忙しいので30分ぐらいしか見ることができないのですが、それだけでもしっかり時代について行けます。」(高校1年・女子)

そのほか意見が寄せられた番組は、『ズームイン!!サタデー』(日本テレビ)、『みのもんたのサタデーずばッと』『サンデージャポン』(TBS)、『やじうまワイド!』(テレビ朝日)、『あさイチ』(NHK)『知りたがり!』(フジテレビ)。
次に、夕方から夜の報道番組には12人から9番組について報告が寄せられた。複数回答のあった番組は『報道ステーション』(テレビ朝日)が6人、『情報7daysニュースキャスター』(TBS)が2人だった。リポートからは、その日一日(もしくは一週間)に起きたたくさんのニュースを的確に伝えてくれると同時に、キャスターたちが硬軟おりまぜた明確なメッセージを伝えてくれる番組が好んで視聴されている傾向がうかがえた。

  • 「僕がいつも見ている番組は『報道ステーション』です。まず、古舘さんはひとつひとつのニュースに力・熱を入れて視聴者の方々に伝えているのが分かります。大震災の特集では、古舘さんが宮城の気仙沼市に行って現場から中継していて、その中で最も印象に残った言葉は『テレビで見るよりも実際に見る方がもっと被害が大きい』と伝えていて、テレビでは隅々までは伝えられないけど、古舘さんの言葉でホントに被害が大きいというのが伝わってきました。」(中学3年・男子)
  • 「私がこの番組が好きなのは、今国民が最も関心のある事柄を真っ先に取り上げ、それに対して真っ向から向かい合っているところです。国民が今何を望んでいるか、何を知りたいのか、政治、経済、教育、文化、スポーツ、芸能等どの分野も網羅して報道してくれるので、いつも満足して見ています。また、反対に歴史の狭間で忘れ去られた事も、敢えて時間をかけて取材し、埋もれていたことを知らせてくれます。さらに、父から聞きましたが、古舘さんが全盛期の頃のプロレス番組を担当されていたとか。実況中継をされていたことがあるだけに、歯切れが良く、知りたいことをズバリと言える能力を身につけておられ、安心して見ていることができます。」(高校2年・女子)
  • 「私が『情報7daysニュースキャスター』を好んでいる理由として、”バラエティー要素を含んでいる”ことがあげられる。ビートたけしがボケ、隣にいる安住アナがぴしゃりと締めるツッコミは、場面転換においてとても切り替えの良いものとなっており、”笑わせすぎない”ところが魅力的な番組だ。ビートたけしの発言が不謹慎で、クレームがくるのではないかと思う場面もあり、笑いが”過度”な部分もあるが、私たちやそれ以上の年齢の方たちにとっては十分面白い。子どもたちはもっと社会を知るべきだ。早すぎるということはない。自分の周りしか知らない彼らに、まだ見たことのない世界を見せること。それがテレビの役目であり、”社会を知る”大人へと育て上げる”教育者”でもあるのだ。」(高校2年・男子)

そのほか意見の寄せられた番組は、『クローズアップ現代』(NHK)、『NEWSZERO』『Going! Sports & News』(日本テレビ)、『スーパーJチャンネル』『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』(テレビ朝日)、『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)。
ドキュメンタリー番組には6人から5番組について意見が寄せられた。リポートの傾向は、さまざまな人物や事象に”密着”して真実に迫ろうとしている番組に強い関心が持たれていて、複数の意見が寄せられた番組は『情熱大陸』(毎日放送)だった。

  • 「私が今回見た『情熱大陸』は、発生から半年がたった東日本大震災について取り上げ、被災地の宮城県石巻市にある石巻日日新聞に密着取材していました。震災当日、津波によって浸水、漏電し機械類などすべてSTOPしてしまったので、もちろん印刷することなどできませんでした。しかし翌日から『壁新聞』を書き始めたのです。私はそのことに対して、驚きと尊敬を同時に感じました。家族の安否も分からないなか、情報を伝えるためにいろんな場所を取材する。それも翌日からです。本当にすごいなと思いました。石巻日日新聞社の方たちや被災者の方たちの生の声がとても多く、震災に直接は関係なかった私でも、とても考えさせられるものがありました。」(中学2年・女子)

そのほか意見の寄せられた番組は、『ダーウィンが来た!』『BS世界のドキュメンタリー』(NHK)、『カンブリア宮殿』(テレビ東京)、各局で放送される『警察24時』だった。

【委員の主な所感】

  • 時代のすう勢か、エンターテインメント系のニュース・報道番組がよく見られているのが今回の特徴で、もっと掘り下げた報道を求める声が少ない印象だった。
  • 報道番組にコメントがあった方がいいという意見と、コメントが要らないという2つの意見に注目した。『報道ステーション』を見ているという報告が多かったのは、深刻な話題が多い今日、大量の情報を分かりやすく解説してほしいという時代を反映していると感じた。
  • “分かりやすくて面白い”番組が好まれている傾向が強く、分からないけれど”なぜなんだろう”という疑問符のついたリポートが少なかったことが惜しまれた。
  • 『情報7daysニュースキャスター』について2人から報告が寄せられたが、ビートたけしの発言や役割を評価している意見は意外だった。我々から見ると彼の話は要らないと思うのだが、中高生が評価しているところに世代間の感覚にズレがあることがよく分かった。
  • 生真面目に伝えるニュースより、バラエティー化したニュース番組がよく見られている傾向が数多く目についたが、『おはよう日本』について書いてくれたリポートでは、さまざまな情報を簡潔にストレートに伝えてくれる番組がいいという意見には同感である。

「今月のキラ★報告」(東京・高校2年女子)

私がドキュメンタリーで見ている好きな番組は、『BS世界のドキュメンタリー』です。
NHKで放送されているこのドキュメンタリー番組は、海外で制作されたものを日本語に翻訳して放映しています。ドキュメンタリーの制作国は統一されているわけではなく、その時々にあった内容のものが毎回取り扱われています。今月は9.11テロが起こって10年目なのでそのことが中心に取り扱われています。
私が、この番組を好きな理由は、(1)海外で制作されたものをそのまま取り扱っていること、(2)翻訳の仕方、(3)司会者がいない、の3点です。
まず、海外で制作されているものを取り扱っているということが、私の中では非常に大切な点です。日本国内にいる以上、新聞やTVなど私の周りには常に日本の価値観が渦巻いています。海外でとらえている視点に触れるということは日常的にありません。そのなかで、日本独自制作のものではなく、海外制作のドキュメンタリーに日本語で触れることができるというのは大変貴重な機会だと思います。なので、そのまま丸ごと海外制作のものを放映してくれる番組というのは、日本においても、私たちにおいても必要不可欠なものだと思っています。
また、番組の翻訳の仕方が工夫されているように感じます。実際の英語の音声に被せて翻訳する場面と、字幕による翻訳で使い分けられていました。字幕の部分には、感情をあらわにしている人々の肉声がそのままこちらに伝わってくるようにされているのです。すべてナレーターの方に吹き替えられているのものでは、迫力やその人の思いなど伝わってこないものもあるので、きちんと使い分けられているのには好感が持てました。
最後に、この番組には司会者、というものがいません。つまり、このドキュメンタリーについてのコメント等が一切無いということです。私としては、ドキュメンタリー後に司会者の方から番組についてのコメントがあると、やはりその考えに偏ってしまうように感じています。コメントが無い方がもっとそのドキュメンタリーを見て思ったことに対して制限がかけられずに、ふくらませることができると考えているので、司会者なしで、ドキュメンタリーだけを流すというこの番組の構成を私は気に入っています。

【委員会の推薦理由】

日本の価値観だけでものごとを判断するのではなく、海外の情報をストレートに伝えてくれる番組を見て考えようという、”複眼”でものを見ようという姿勢が高く評価されました。また、外国語の伝え方について、字幕とコメントの違いを的確に分析していることも高評価の理由です。これからも”良い眼”を磨いて報告してくれることを期待します。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者及び一般視聴者を対象とした調査について、担当委員よりその分析及び関連等の概要が報告され、調査報告発表までの日程等について協議が行われた。

休会

8月の委員会は例年通り休会したが、中高生モニターについて持ち回りで審議した。8月に寄せられた視聴者意見については9月委員会で審議する。

1. 中高生モニターについて

8月のモニター報告のテーマは、「大震災関連」「原発事故関連」の特集番組、もしくは「大震災・原発事故」を扱った通常の報道番組の中から番組を見て、何を感じたか、何を考えさせられたか、自分ならどう行動するかなどの感想を書いてもらい、26人から報告が届いた。

いちばん報告の多かった番組は、フジテレビ系列の『金曜プレステージ わ・す・れ・な・い~東日本大震災155日の記録~』で7人からリポートが届いた。

  • 「津波の映像はよく目にしましたが、ここまでまとめられた映像は見たことがなく驚きました。たくさんの地点からの映像を時系列ごとに放送していて、三陸海岸がどのように津波に襲われたのかがよく分かりました。東北地方に住む自分は、震災発生当初停電によりテレビを見ることができなかったので、地震発生時の情報カメラの映像はあまり見たことがありませんでした。また、津波で家族を失った方、危機一髪で津波から助かった方のドキュメンタリーは心に響くものがありました。改めて日本に震災が多いこと、そしてその震災から立ち上がってきたこと、『日本は負けない』ということが感じ取られました。」(中学3年・男子)

  • 「驚いたのは宮古市の津波は最初20センチだったのが、その数分後に10メートルの堤防を超える大きさになったことです。誰がそんなことが起こると想像したでしょうか?頑丈な堤防が一瞬で壊れてしまう自然の恐ろしさをまざまざと見せられました。1台のカメラがとらえた一人から『津波はまったく静かで音がしなかった』と言っていたのが不思議でした。それは堤防があったからだと言っています。堤防は津波を遅らせたり、抑えたりすることができるけど、逆に言うと、いつ津波が襲ってくるのかが分からないので堤防も良し悪しなんだと思う。私は津波にあったことがないし見たこともないが、この映像を後世まで伝えて、恐ろしさを伝えていかなければならない。それが私たちの使命なのではと感じた。」(中学1年・女子)

  • 「いろいろな場所のカメラが撮影した津波の映像を順番に流して、とても分かりやすかったです。一般の人が撮影した映像もあり、とても近くに津波が来ていることが分かりました。また、堤防は避難する時間を稼いでくれるが、堤防の下からは波の高さが見えないため、逃げ遅れる可能性もある、ということが分かりました。津波は跳ね返り、あちこちから戻ってきた津波が重なって、より高さを増すことにも驚きました。それをCGで説明していたことはとても分かりやすかったです。時々、こういう番組があるといいと思います。未来に語り継いでいくには映像が一番良いのだな、と思いました。」(中学2年・男子)

  • 「次々に流れる津波・地震の映像を見ると、心がえぐられているような感覚になりました。そして私が知らなかったこともたくさんありました。その中で、日本人の冷静さやマナーの良さを知ることができました。電車の全線復旧までわずか49日というのは過去最速の記録だそうで、それを聴き、すごく嬉しく感じました。日本人は強いと思います。日本人として誇りに思います。」(中学3年・女子)

  • 「千年に1度といわれるぐらい稀な大地震が東日本を襲い、それに続いて起きた大津波で、現在わかっているだけで、死者・行方不明者2万人以上、まさに未曾有という言葉で表現される大惨事。放送中、宮古市職員が思わず、言い放った『終わった、すべてが終わった』というように、まさに『この世の終わり』に匹敵するほどの大きなものでした。当時設置されていた19台のカメラが見た大地震・大津波の全容を通して多くのことを学ぶために放送されたものだと思いました。また、今回の災害を通して『人は人の記憶を生かすことができる。それがどんなつらいことであっても…』の言葉にあるように、大惨事を通してこの経験を次に生かすのが残されたものの使命であるということも痛感しました。」(高校2年・女子)

  • 「映し出されている人々が発する言葉がところどころ胸にささり、2時間という長い番組でしたが飽きることなく見ることができ、充実した内容だったと思います。具体的にどんな言葉が胸にささったかというと、視聴者が撮った津波の映像の後ろに入っている被災者の方々の叫び声です。『死にたくない』『もう終わった』『(津波を)止めてくれ』という言葉はそれだけで考えさせられるものがありますが、その声が震えていたり、本当に諦めの気持ちが伝わってきたりして、今までテレビで見て知っていた以上に被災者の方たちの心の傷を知らされました。始まってしばらくして、『生々しい津波の映像を流すのでストレスを感じる人は見ないで下さい』という注意が流れ、私はこんな思いをしてまで伝えるべきことなのかなと少し疑問に思いました。また、津波について科学的に分析・検証できていてその完成度は高かったですが、具体的な津波に対する対策法は述べられておらず、すこしもの足りなかったです。」(高校1年・女子)

次に4人から報告が寄せられたのは、NHK『BS世界のドキュメンタリー シリーズチェルノブイリ事故25年 永遠のチェルノブイリ 被ばくの森はいま』である。

  • 「チェルノブイリの原発事故で、周りの環境が崩れ、今も立ち入り禁止ということは知っていたが、ここまでひどいものとは知らなかった。放射線は雲となって流れて行き、世界各国へと散らばっていった。原発周辺は森となり、動物がかなり増えていた。しかし、どの動物も被ばくしていて、体内にセシウムがあったり、奇形だったりしていた。これが人間に起こったと思うと、ゾッとする。20年以上たった今でも、放射線障害を訴える子どもがいることにはびっくり。放射線が恐ろしいものだと再び認識した。」   (中学1年・男子)

  • 「この番組を見た印象は『怖い…』ということです。原発事故から25年たった現在のチェルノブイリは、かつて人間が生活していた場所には見えない自然の地へと変わっていました。人間が居なくなった静かなその場所は動物たちにとっては"楽園"となりましたが、皮肉なことに世界中の研究者たちにとっては放射能が生物に及ぼす影響を研究するのに絶好の場所にもなりました。その映像がなんともいえない…悲しい世界に見えました。私はこの番組を見て"原発の是非"について考えさせられました。チェルノブイリに住んでいた人々は25年たった今も、元いた場所に帰れていません。そして福島原発から30キロ圏内の人々もまた、5ヶ月たった今もまだ戻れるメドはたっていません。長い間住んできた場所を急に離れなくてはならなくなり、友だちとも離ればなれ…福島の人々のことを思うと胸が痛みます。かといって危険なので仕方はありませんが、チェルノブイリの森のようにならないように政府には少しでも早く福島の人々が元の生活に戻ることができるようにしっかりとしてもらいたいと思いました。」  (中学3年・女子)

  • 「福島原発事故と同じ史上最悪の事故である、このチェルノブイリ原発事故の現在の状況や長年にわたる調査結果を見ることによって、動植物に与える影響、人体に及ぼす影響について理解を深めることができたと感じています。元々自然界に存在しない放射性物質セシウム137とストロンチウム90はカリウムやカルシウムと科学的性質が似ていることから、植物が誤ってそれらの放射性物質を自らとりこんでしまうというのです。内部被ばくした植物でも人が食して良い部分などは分かっているようですが、野生動物には分かるはずもありません。その影響は植物を食べる草食動物、肉食動物など、食物連鎖の繋がりで人間にも影響を与えていくことになると思われます。人間が作り出したものは、周り巡って、私たち自身にも影響を与える結果になる事例の一つだと思います。今後、農業のことなどチェルノブイリから多くのことが学べると思います。それを利用して、これからの放射線との付き合い方も見えてきやすくなるのではないかと思っています。」(高校2年・女子)

3人から報告の寄せられた番組は、日本テレビ系列の『NNNドキュメント 天国のママへ~届け、いのちの鼓動~』(ミヤギテレビ制作)である。

  • 「この番組の主人公は石巻市に住む8歳という年齢で母親を津波で亡くした少女です。少女の母親は仕事が忙しかったため、2人はなかなか一緒に居られなかったそうですが、週に2回、母子で一緒に太鼓の教室に通っていました。その太鼓教室こそが、2人を繋ぐものでした。本当はお母さんと一緒に出る予定だった年に1回のお祭りの日の晴れ舞台。当日の舞台には、"お母さん"の分まで懸命に太鼓をたたく少女の姿がありました。母という大事な存在をなくしたにもかかわらず、懸命に生きる少女に、私は勇気をもらいました。」(中学1年・女子)

  • 「母一人、祖母一人の家に育った女の子が母を亡くしたということは、想像できないくらい辛くて、幼い女の子にとっては一人ではどうしようもできない不安でいっぱいだと思います。そんな女の子を周りが支えてあげる、学校でも特別扱いせず前と同じように接することで、徐々に自分も頑張ろうという気持ちが生まれたのだと感じました。だから、幼い子どもが家族を亡くしても、『かわいそうに』とか『頑張ってね』などの言葉はあまりよくないと思います。そのような言葉だと"孤独"を感じてしまうような気がするからです。"被災者"にはさまざまなケースがあります。もっと個別的にこういう生活を送っている人もいるし、また違った生活を送っている人もいるのだと報道した方が、真実を伝えられるのだと思いました。」(高校1年・女子)

日本テレビ系列の『24時間テレビ』で取り上げられた震災報道について報告が2人から寄せられた。

  • 「私は真矢みきさんが取材した『ガレキの中の小さな花屋さん』を見ました。地震が起きた後、どこのお店より早く店を再開した花屋さんに来る人は、ほとんどが津波で亡くなった人への花を買いに来る人でした。取材の様子を見て『よく悲しんでいる人に取材できるな。酷いな』とそのとき私は思いました。そこまでして取材しなくてもいいのでは?と思う一方で、この大災害を忘れかけていた自分がいることに気づきました。大震災のその日から悲しくて苦しくて、涙も流せないほど傷ついている人がいるという現実から、私は逃げていました…。しかしこの放送を見て、消えることのない悲しみにくれている人々がいるのだと痛感しました。そして、この事実を永遠に覚えておかなければいけないのだと分りました。」(高校1年・女子)

テレビ朝日系列の『報道ステーション』の特集コーナーについても2人から報告が寄せられた。

  • 「この番組では、最近の建物について注目していました。地震が起きると細かくS字形に揺れる構造にしたり、建物の地価に大きなバネのようなものを仕込んで地面が揺れてもバネが揺れを吸収したりして、被害を減らそうという工夫されていました。先日、学校で『原発は本当に必要か』という討論会をしました。最近、テレビで福島原発の大変な状況ばかりを見ているので、『要らない』『原発以外のもっと安全な方法で電気を作り出せるのではないか』という意見が多い中で、『今回の大地震が起きたからそう考えるけれど、もしあの地震がなかったら原発はあってもいいのではないかと自分たちは思っていたはず…』という意見が出され、今まで自分は『原発は要らない』としか思わなかったけれど、改めて考えさせられる意見でした。」(中学1年・女子)

NHK『ゆうどきネットワーク』の特集コーナーへの意見も寄せられた。

  • 「福島原発事故で暮らしを奪われた福島県相馬市の2つの家族を取り上げていました。最初の家族は夫婦と子ども3人が群馬県片品村に避難している一家である。3月から狭い避難所で暮らしていた一家に、『8月末にこの避難所を閉鎖する』という通知が…。家が放射能で危険だから、我慢して窮屈な避難所暮らしをしていた人に対する扱いがひどすぎる。『この国は正気か?』と思いました。もう1つの家族は、親子2人で運送業をしていた家族です。津波によって得意先も流されてしまい、運送業が続かなくなっていました。国から仕事を紹介されたりするのかと思いましたが、現実は甘くないみたいです。結局、娘さんがパートを掛け持ちしてお父さんを食べさせていくことになりました。お父さんも仕事をしたがっていましたが、年齢的に無理なのです。この番組を見て、『国』というものの無力さをとても感じました。」(中学3年・男子)

そのほか、NHKの『追跡! A to Z スペシャル 福島第一原発作業員に何が?』、『ETV特集 アメリカから見た福島原発事故』、テレビ東京の『ガイアの夜明け』の特集コーナーについての報告が寄せられたほか、3人から震災報道全般についてのリポートが寄せられた。

【委員の主な所感】

  • 今月の報告には、モニターの皆さんの「自分は何ができるか」という真摯な問いにあふれていました。今回の大災害を、テレビで報じられた「一過性の出来事」にとどめず、自分の問題として受け止め、自分にできることを具体的に模索しており、痛みを共にしようとする姿勢に、優しさを感じました。

  • 全体的にやや感想文レベルに止まっているリポートが目立っていました。日常生活から紡ぎだされる問題意識、被災地や原発事故で避難生活を余儀なくされた住民への想像力、「森を見てから木を見る」眼、具体的で分かりやすい根拠から導き出される自分なりの結論・感情などがリポートの中に表現されているかがポイントだと考えます。

  • ドラマやバラエティーですと見る側に「作りもの」という意識が強く働き、モニター報告も番組に対する批評や評価が前面に出やすいのですが、今回のようなドキュメンタリーの場合は、番組の作り方ではなく、そこで示されたことがらに対する感想が中心になりがちですが、批判精神にあふれた優れたリポートもありました。ドキュメンタリーなどのノンフィクションに関しては、何を取り上げ、それをどう描いたか、という制作者の視点を考えるとよいのではないかと思いました。

  • 未曾有の大震災や原発問題に関する特集番組を見ての感想だったこともあり、多くの皆さんが自分のこととして受け止めて自分なりの意見をまとめてくださってよかったと思います。もう一歩進めて、制作者が何を意図してその番組を制作したのかを推察し、自分だったらもっとこういう番組にしたという意見があると面白かったかなと思います。

  • 3月12日に福島原発で水素爆発が起ったことは、将来10年、20年、30年後にどうなるか?モニターである中学1年から高校2年の皆さんの人生とピッタリ合致して、この問題を意識する、しないに関らず背負い続けることになります。皆さんは一方的にテレビの報道を見ているだけでは、何がホントで、何がウソかの判断が下せないと思います。物事は自分の目で見たこと、聞いたことと比べることからすべては始まると思います。『複眼』で見つめることを心がけてください。

「今月のキラ★報告」(宮城・高校2年男子)

「彼らだけここにいて私だけどこかに逃げるのは嫌。同じ空気を吸って同じ季節を感じて生活したい」、船越の漁師は語る。
大震災から5ヶ月が経過し、大震災関連の特集番組が増える一方、通常の報道番組ではほとんど大震災関連の報道をすることがなくなった。とはいえ、いつまでも「東日本大震災」を伝え続ける訳にもいかない。常に新情報を届けなくてはならない報道番組は、時間の経過とともに震災情報を減らしたり、もしくはその番組の中で特集として取り上げたりするようになる。だから「いつの間にか震災情報が減ったなぁ」と私たちに感じさせるテレビは、私たちの震災に対する気持ちの薄れを見事に反映しているものだと言えるだろう。
さて、私が今回視聴した番組は仙台放送の『ともに』である。震災後定期的に放送され、東北の震災関連の情報を主に伝える生放送番組だ。冒頭の文章は、被災した漁師の言葉である。家族を津波で亡くし、漁をするための船や道具なども失ってしまった彼は船越に残り、仲間の漁師とともに漁業の復興に取り組んでいる。そこで私が驚いたのは、手作業で漁具を修復していたことである。もちろん、船がなければ漁をすることができないが、漁具も不可欠なものだ。特に、東北の復興に当たって重要視されるのが「漁業」であるにもかかわらず、国や地方自治体の対応が遅れ、漁師同士が船や道具の貸し借りをしているのが現状である。
番組を通して感じたことは「復興は全然していない」、そんな当たり前ともいえる言葉に尽きる。報道番組は「新情報」、そして「変化」を求めている。震災から数ヶ月たてば、状況の変化が見られないため、人々の「努力」を映し出そうとする。私の視聴した番組『ともに』も、被災者の「努力」や「心情の変化」を伝えている。それは「寄り添う」番組だ。私はとても大切なテーマだと思うが、現状を伝えることも忘れてはならない。例えば、原発作業員の話を聴く場面が多いが、原発の状況を「振り返る」ことも必要なのではないだろうか。東日本大震災を忘れないために…。
番組の最後に、被災地の少年野球チームが兵庫県に招待されたことが紹介されていた。震災後、被災地の生徒が他県や海外に招待されるといったニュースをよく見るが、私にはその趣旨がよく理解できない。「励ます」ということなのだろうか。私はそれよりも「地域との交流」を重視すべきだと考える。それに、平等性に欠けている。被災地見学やボランティア活動をして子どもや若者中心に「経験」をさせ、「将来の幅」を広げることが大切なのではないだろうか。東日本大震災(の経験)を生かすために…。

【委員会の推薦理由】
常に新しい情報を提供し続けなければならない報道番組の宿命を論じ、また時間の経過とともに、被災者の努力や心情の変化というような番組を提供する必要性を鋭く指摘していた。また、被災地の子どもたちを県外や海外に招待するよりも、被災地以外の子どもたちが被災地にやってくることの方が重要であるという意見も、被災地で暮らしているからこそ感じる指摘で、評価に値すると考える。

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第124回 放送と青少年に関する委員会

第124回 – 2011年7月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第124回青少年委員会は7月26日に開催され、6月16日から7月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見について、また、7月に寄せられた中高生モニター報告及び8月のテーマ等について審議したほか、今年度の調査・研究について担当委員より進捗状況及び内容等について報告が行われた。

議事の詳細

日時
2011年7月26日 (火) 午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

6月16日から7月15日までに寄せられた視聴者意見の概要等について担当委員からの報告を受けた上で、視聴対象となる番組はなかった。

中高生モニターについて

7月の中高生モニター報告は、「バラエティー・クイズ・音楽番組」のジャンルの中から「こんな番組が見たい」「こんな番組を作りたい」という企画を考えてみようというもので、31人から提案が寄せられた。内訳は、バラエティー番組18、クイズ番組3、音楽番組10だった。
なかでも”中高生が主役”といった企画が数多く寄せられた。
『(じゅにあ)はいすくーるすちゅうでんと!!』(中学1年女子)。この番組は、まず話題の中高生たちに密着して彼らの”今”を届けたり、インターネットを使って普通の中高生から”生”の悩みや質問を投稿してもらったりという企画で、司会者はベッキーとユースケサンタマリアを起用する。理由は、ベッキーは人柄の良さ、ユースケサンタマリアはいい意味での適当さで2人の良さが存分に発揮され、中高生の考えも知ることができるはず、という内容だった。
『ダウンタウンの国際交流村』(高校2年男子)という企画では、中高生がさまざまな国の外国人とスタジオで交流して”国際化”の一助にしたいという企画。司会は”ボケ”と”ツッコミ”のするどいダウンタウンを起用したいというものだった。
そのほか、中高生の学校で流行っていたこと(わず)、いま流行っていること(なう)を生電話で紹介する『わず&なうmyhome!』(中学2年女子)といったユニークなタイトルの提案も寄せられた。
クイズ番組でも、地上デジタル化に対応して各家庭から参加できるクイズ番組『視聴者完全体験型クイズゴーールドラッシュ』(高校2年男子)、中高生が中心に参加できる『歴史まるごと日本史』(高校2年女子)といった提案が寄せられた。
また、身近な町を知ろうという『意外と知らないマイタウン』(中学2年男子)という企画の一方、誇れるニッポン発掘番組『日本をJAPANに変えてやる!!!』(高校2年女子)という提案も寄せられた。また、もっと”単純に笑える”番組を復活してほしいという『新8時だョ!全員集合』(中学1年男子)、お笑い芸人がすごろくを使って鬼ごっこをする『リアルすごろく』(中学1年女子)という企画を考えた中高生もいた。
次に意見の多かった音楽番組では、生演奏で自分たちが参加できる番組や、生バンドをバックに歌手が歌う番組が欲しいという提案がいくつかあった。視聴者参加型の番組では、『音楽のチカラでジモトを熱く!!チホウのチカラ』(中学3年男子)、ヒット曲を別の歌手が生演奏で歌えば楽しいという『The Dream Music Festival(略称Mフェス)』(中学3年女子)、ロックに徹した音楽番組やブームのK-POPを取り入れて、歌・ダンス・モデルなど韓国でのオーディション番組『Kスター☆』(高校1年女子)などの企画が寄せられた。

【委員の所感】

  • 中高生を取り上げた番組が少ない現況から、同年代をターゲットにした番組を作りたい、子どもからお年寄りまでを視聴対象にした番組を作りたいという企画が目につき、テレビを通じて世代を超えた”共有の場”を持ちたいという気持ちが強いことが印象的だった。
  • 予想したよりも音楽番組を企画した人が多いことに驚いた。内容も、一般の人が参加する番組からプロの歌手や生演奏のバンドで歌う企画、また、K-POPに焦点を合わせたものなど中身は多種多様だったが、音楽が若者たちに根強く支持されていることがよく分かった。
  • デジタル化に伴った双方向性を活用した番組を作りたいという企画や、電話を使ってオーディションをすれば手軽に番組が実現できるのでは、という企画には意外性があった。
  • また、今回は”地元”とか”地域”とか、”ディスカバーご近所”的な番組、身近なところから考えた番組が多かったことも特徴的だった。
  • 面白い企画が多かったという印象だ。地元に密着した番組とか、おじさん応援番組とか、大震災の影響からか、家族とか地域のことに目を向けた企画が目についた。
  • 一般的にどんな番組でも最初は模倣からスタートしている訳だから、今ある番組に少し味付けを変えた企画と、時代を感じて自分にこだわった企画の2通りの傾向があったが、後者のような自分の意見を前面に出したリポートを期待したい。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント。

◆◆◆◆

◆企画1.バラエティー番組:『リアルすごろく』(大阪・中学1年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)

私が考えている番組の視聴対象は、小中学生以上。出演者はお笑い芸人で売れている人も売れてない人もなんでもアリです。
内容は出演者全員ですごろくの上で鬼ごっこをします。ルールは15人で行って、逃げる人が12人、鬼となって捕まえる人は3人です。はじめに鬼となる人を決めます。次にサイコロをふる順番を決めます。でも鬼は最後です。順番を決めたらサイコロを転がし、逃げる人全員が5マス以上進んでから、鬼がサイコロをふって進んでいくんです。鬼が逃げる人のいるマスに来たら、その人と鬼はチェンジします。マスには「振り出しに戻る」や「鬼になる」などといった仕掛けがたくさんあります。
最後に、鬼にはバツゲームを受けてもらいます。1度でも鬼に捕まらずにゴールに達した人が、バツゲームを決めることができ、ゴールに達した人が誰もいなければ鬼がバツゲームを選ぶんです。本当は私たち視聴者も一緒に参加したいけど、そうなったら間延びしそうだからやめておいた方がいいかもしれません。芸人の必死さを見たいです。
◇◇

【TBSテレビ編成制作局制作センターバラエティ制作3部ディレクターの感想】
コンセプトはわかりやすくていい。出演者は面白くやってくれるかもしれないが、後はすごろくをやっていく中で面白みをどこで出すかと見る側のモチベーションをどこまで保てるかが課題かと思う。もう少し詰めて考えれば、企画になるかもしれない。発想のよさ、可能性は感じる。
◇◇

【テレビ朝日『アメトーーク』『ロンドンハーツ』担当プロデューサー】
「すごろく」…実は僕も数カ月前に興味を持ち、企画に出来ないかと考えました。すごろくを調べると、起源は古代エジプトという説まである、まさに「伝統の遊び」。誰もが楽しめるし、シンプルで素晴らしいですよね。今回の企画のポイントは「鬼ごっこ」になっているという点。しかし、ここに難しさがあると思います。それは、「鬼ごっこ」が持っている面白さは、「逃げる・追う」というスピーディーなドキドキ感。一方、「すごろく」は「1マスごとの指令」という間逆の面白さであること。つまり、この2つは共存できないと思います。
[改善案]
もし、この企画が「すごろく」にこだわるのであれば、シンプルに、誰が1番にゴールするか?誰がビリか?でいいのではないでしょうか?そして、その先にオリジナリティーを出すものを考えるべきです。例えば、マスが全て暴露になっている『暴露すごろく』とか、何かテーマ性を作ってはどうでしょう。
企画を考える上で大切なのは、実際にやったらどうなるかを、しっかりシミュレーションすることなんです。そうすると、色んな問題に気づくことができます。他にも、すごろくには面白さや難しさがありますが、僕も興味をもっている題材なので、この先は企業秘密ということでお願いします(笑)。

◆企画2.バラエティー番組:『夢見たきのう。』(神奈川・高校1年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)

視聴対象は、中学生・高校生、30歳~50歳位、男女問わないが、でもどちらかと言えば女性向け?出演者は、アイドル・芸人さんたちで毎回変わる。ナレーションはバカリズムさん。
内容は、出演者の夢を何でも叶えるという番組。夢の内容はなんでもいいけれど、子どものころの夢でなりたかった職業を体験して叶えるとか、今までの人生でやり残したことをやりきる、とか。その夢を叶えるために、夢を叶える人(Dreamer)が頑張っている様子を伝えたい。大事なのは、Dreamer自身が自覚を持って行動、努力し、自分で夢を掴みにいくという姿勢。制作側は、Dreamerに夢を叶えるチャンスを与えるだけ。このDreamerが頑張っている様子から、視聴者は何かすがすがしい思い、明日への活力を感じられるといい。ただ、あくまでもバラエティーなので、Dreamerの真剣さを伝えると同時に少しのギャグ要素を加えたい。勢いよく笑える番組ではないが、見ていてなんだかいいよね、というような番組にしたい。
◇◇

【TBSテレビ編成制作局制作センターバラエティ制作3部ディレクターの感想】
まずタイトルがおしゃれ。女性らしいセンスを感じた。中身は出演者の夢を叶える企画ですが、毎回の放送を1人のDreamerを対象としていくとすると、それなりの物語、見どころが必要なので、結構キャリーしていくのが大変な感じかなと思います。ただ、既存の番組の中のコーナーとしてであれば可能性あるか?

◆企画3.バラエティー番組:『日本をJAPANに変えてやる!!!』(東京・高校2年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)

視聴対象は、小学校高学年~すべて。司会はくりぃむしちゅー、関根麻里。出演者は世界が好き、旅行によく出かける芸能人等。
番組は、海外の考え方を受け入れ、幅広い部分からの視点で物事をとらえる1つの指標となるというのがコンセプト。日本や海外の国に対する良いところや悪いところ探しではなく、あくまでも、純粋に日本と他国との違いや、そこから発生する面白さをとらえることをテーマとする。
コーナーのひとつ、「日本の社会問題について、世界がモノ申す!」。現在の日本の社会問題について、他国だったらどのように対応するのかを色々な国の専門家に話して頂くコーナー。もちろん日本の専門家も交じって、話を聞くこととなる。色々な国の対応をのぞいてみることで、国民性の違いにも気づかされるものとなるだろう。また、現在の日本に足りないものはなんなのかをゲスト出演者に聞いてみたり、事前に話すテーマについての質問を視聴者から受け付けておいたりすると、内容が充実すると思われる。
二つ目のコーナーは、「セカイとニホン!」。日本に来て驚いたこと、もしくは、世界に行って日本人が驚いたこと、等の旅行でびっくりしたこと、面白体験等の紹介。体験談はゲスト出演者の体験話でもいいし、視聴者からの話を募集する形でもいいと思われる。(例:日本から外国に行って、チップを渡すという習慣について)また、特派員等が世界各地へ向かい、標識や世界の新聞広告、CM、お菓子のパッケージ、日本にはない謎のものなどを表示して、クイズ形式として視聴者と一緒に楽しむ形式も想定している。
◇◇

【TBSテレビ編成制作局制作センターバラエティ制作3部ディレクターの感想】
海外と日本との比較という切り口はわかるが、コーナー内容がちょっとゆるい気がする。ただ、世界の標識や新聞広告、CM、お菓子のパッケージなどで驚けたりする部分はあるかもとは思う。

◆企画4.音楽番組:『Kスター☆』(神奈川・高校1年女子)

【ねらい】(抜粋)

なぜ、私がこのような番組を企画したかというと、日本以外の国をもっと紹介してほしいと思ったからです。また、今は韓流ブームということもあり多くの人に韓国は支持されていると思ったので、今回は韓国についての番組にしようと思いました。
【内容1】K‐POPグループや韓流スターたちが総出演し、韓国のおススメスポット、文化、教育、ファッション、食べ物などを紹介する。また、歌やダンス、出演者でのトークも行う。
【内容2】まだデビューしていないグループや個人のオーディションを、歌・ダンス・モデル・キッズなど、部門ごとに行い、未来のスターを見つける。
司会進行は島田紳助さんにしました。私はこの前のレポートに紳助さんは嫌いだと書きましたが、今回紳助さんにやってもらう理由は、紳助さんは人を褒めるトーク力があるからです。オーディションを受ける人の長所をすぐに見つけ、うまく褒めることができるのは、紳助さんだけだと思います。審査員は、日本の女優・俳優、アイドル、プロデューサー、モデル、歌手。
オーディションを行う理由は、日本人のオーディションはたくさんありますが、韓国人のオーディションは聞いたことがないのでやったら面白いと思ったし、それがきっかけでデビューできたら、オーディションの時から見ていれば、ファンが長く応援してくれると思ったからです。
◇◇

【TBSテレビ編成制作局制作センターバラエティ制作3部ディレクターの感想】

韓国人のパフォーマー、エンターティナーのオーディション番組。結構いいなと思いました。韓国情報およびまだ見ぬスター”青田買い”という2大構成のため、韓国をしゃぶりつくした後、違う国で同じことができるのかというのが検討課題かと思います。

◆企画5.バラエティー番組:『おじさん応援番組おじさんFight!!』(東京・中学2年女子)

【ねらい・内容】(抜粋)

世の中にいるかっこいい、おもしろいオジサンを紹介する。ねらいは、父子関係の回復を図ったり、家族の中で肩身の狭い思いをしているお父さんに共感を与えたりする、オジサンのイメージアップ番組。
(例)「おもしろいオジサン」・終電後で酔っ払っているオジサンに共通の話題についての意見を求める(原発問題・節電…)。その意見を比較する。そして最後に、家族への愛や会社(社会)への不満を叫んでもらう。
「かっこいいオジサン」・1つの会社を取材して、学生が憧れるようなすごい開発をした人にインタビューをする。そして最後に、家族への愛や会社(社会)への不満を叫んでもらう。
司会・出演者は、ピース(芸人)・滝川クリステル・温水洋一・柳原可奈子など。
◇◇

【フジテレビ『ごきげんよう』担当プロデューサーの感想】
中高生の皆さんの企画の多くが情報番組であることを知り、皆さんの知的好奇心のすごさに驚かされました。クイズだったり地域密着型バラエティだったりと番組の形式は様々でしたが、その中で僕が一番おもしろいなと思った企画は『おじさん応援番組おじさんFight!!』です。世の中にいるかっこいい、おもしろいおじさんを紹介するというシンプルな企画なのですが、同じ情報でも「おじさん」という哀愁ある生き物を通して伝わる情報に、クスッとした温かい笑いが潜んでいるような気がしたからです。
伝えたいメッセージや情報をそのまま伝えるのではなく、オリジナリティーあふれるフィルター(=企画)を通して伝えることがエンターテイメントの作り手としてとても大事なことだと思います。

◆企画6.音楽番組:『電話で、オーディション』(北海道・中学2年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)

僕には、”こんな番組が作りたい”という夢があります。それは、視聴者が楽しめて、それに参加もできる音楽番組です。放送時間は、日曜の午後8:00から生放送というのがポイント。司会は中居正広さん、審査員は歌手、音楽プロデューサー。
視聴者がテレビスタジオで歌い、音楽プロデューサーがその場でスカウトするといった番組はありますが、視聴者が電話で参加して歌うといった番組は見たことがありません。なかなかスタジオに行って歌う勇気がなくても電話なら、と思う人もいるでしょう。参加したくても場所の関係で参加できないという人もいるでしょう。だからこそ、”電話”なんです。音楽プロデューサーに、アドバイスや感想などをその人に向けてしてもらうだけの番組で十分だと思います。僕は、”歌の魅力を皆に知ってもらう”、そんな番組を作りたいと夢を持っています。
◇◇

【テレビ朝日『ミュージックステーション』担当プロデューサーの感想】
「なかなかスタジオに行って歌う勇気がなくても、電話なら、と思う人もいるでしょう。だからこそ電話なんです」と力強く書いているあたり、逆に普通の人にはない想像力を感じさせます。通常なら、「テレビである以上、声のみでの参加は映像的に持たないし、企画として物足りない」と考えるでしょう。
しかし、そこにこそ、この企画の可能性があるのかもしれません。下世話な自己顕示欲とは無縁な、純粋に音楽を愛する気持ちを汲み取りたい、という真摯な想い。ルックスやその他の付帯条件を切り捨てた「純粋に声のみで音楽を伝えたい」というシンプルな意図。「人前に出ることが怖い」という引っ込み思案なシャイネスの奥にこそ、まだ見ぬ才能の原石があるはずと考える慧眼。セオリー通りに発想しないことの面白さ、逆転の発想が…。
そのためには、あえて「声だけ」にこだわるために、そこを補完する上でどんな工夫をしたらいいか、もう少し具体的に考えて書くといいでしょう。
視聴者や出演者がイマジネーションを膨らますための手助けとなる、演出やストーリーづくり、見せ方などを考えてみてください。誰の真似でもない企画を実現させるためには、発想の発端は、常に純粋で無垢でシンプルであるべきです。だからこそ、それを商品として成立させるためには、もう少し踏み込んだ「大人の計算」にチャンレジしてみてください。

◆企画7.クイズ番組:『視聴者完全体験型クイズ・ゴーールドラッシュ』(千葉・高校2年男子)

【ねらい・内容】(抜粋)

アナログ放送から地上デジタル放送に完全移行した今なので、『クイズ$ミリオネア』を彷彿とさせるようでありながら、視聴者が全面参加できるクイズ番組。データ放送に特有の青・赤・緑・黄の4つのボタンを使用し、視聴者が放送される問題に答え、番組終了までに正解した数により、得点を獲得でき、その得点数に見合う特典やプレゼントをゲットできる。毎週見続けていて、かつその得点数により、××旅行が当たる、食品が当たるなどがあると視聴者側も見続けてやろう、という気になると思われる。また、番組を観覧できる権利から『クイズ$ミリオネア』のように賞金を懸けて、実際に番組に出演できる権利などがあれば”本当に××なんて商品が当たるのか?当たんないしやめよう”という気にさせにくい。問題は、冠婚葬祭に始まる一般常識、芸能・スポーツ、出演者に関する問題などを出題する。家族全員で話あって答えを決めてもらうことで、ただ出演者がおもしろおかしく答える番組よりも好感度も良くなる。
出演者は局アナ、その時々に合わせたタレントなどで、司会者以外にレギュラーで固定はしない。なるべく出演者にお金をかけないようにすることで視聴者プレゼントに還元できるようにする。司会は頭の回転も早く、出演者も活かすことができ、現在右肩上がりの有吉弘行さんを採用。放送時間は夕飯の支度も終わる午後7時30分にすることにより家族で視聴できるようにした。
◇◇

【テレビ朝日『ナニコレ珍百景』担当プロデューサーの感想】
地上デジタル放送に切り替わった今、視聴者参加型の本格的な双方向番組が、近い将来、続々と誕生することは間違いないと思います。それをクイズ番組に利用することは大抵思いつくことでしょう。
しかし、企画を出した彼は、『ポイント制』や『スタジオにも招待してクイズに挑戦』という新たなシステムを取り組むことで、より一層厚みを増した企画にしています。ただし、あまり複雑な要素を盛り込むと…。
番組最大の魅力が何なのか?
例)・テレビの前で気軽に参加できること
・賞金や景品が必ずもらえること
・クイズに実際に参加できること、
など、どれが番組のキモの部分なのかがぼやけてしまいとっつきにくい番組になるかもしれません。ただ、ひとつ言えることは高校生の彼の「新しいモノを生み出そう!」という、既成概念にとらわれない発想。これこそが今のテレビには大切だということ。彼の発想力にあやかりたいと正直に思いました。

[企画総評]

【NHK制作局エンターテインメント番組部チーフプロデューサーの感想】

いずれも楽しく拝読しました。センスの良さが光るタイトルが多かったですね。まず幾つかあった視聴者参加型企画、このタイプは参加する方はともかく、一般視聴者にとって面白くなるような工夫が必要です。中高生だけに受けるようでは、番組は伸びません。音楽番組では『Mフェス』のバラエティ感のある音楽番組志向に光るものを感じました。現在テレビ界では、芸人がひな壇で目まぐるしいトークを展開させるバラエティ番組が大流行。これはお客を逃さないために発明した効果的な手法です。しかし、今後のゲームや通信業界などとの厳しい競合時代には、手法も大切ですが、他が作ることが出来ない「大きな感動」をいかに紡いでゆけるかがとりわけ大事だと考えます。その点、『新8時だョ!全員集合』の企画にはハッとさせられ、『意外と知らないマイタウン』の”人と関わる温かさ”を共有したいという主張には感動しました。どんな番組でも一番大切なのは「人の心」だと思います。

【日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』担当プロデューサーの感想】

30あまりの企画書には、「視聴者を飽きさせない様々な工夫」「タレントの適正を考えたキャスティング」など、様々な番組構成案が書かれており、テレビ番組を作る上でのポイントやテクニックを本当によく知っていると感心した。しかし一方、多くの企画は斬新さやオリジナリティーという輝きが乏しく残念だった。様々な人気番組から面白い要素を集めたり、人気番組を中高生向けにアレンジしたり…。人は絵を描けと言われた時、過去に見た好きな絵をつい模倣してしまう…。良い絵を模倣することは決して悪いことではないが、「自分が一番描きたいものは何か」「多くの人に見てもらいたいものは何か」と考え、粗っぽくてもいい、既成の番組の呪縛から離れた独創的な企画にチャレンジしてほしい。また、今の閉塞感のある時代を反映しているのかスケールの大きい企画も無かった。「お金や時間がどれだけ掛かってしまうのか」と驚くような企画も期待したい。

【TBSテレビ編成制作センターバラエティ制作1部プロデューサーの感想】

今回「中高生モニター報告」の中で30あまりの企画書を見させて頂いて…。最初に感じた事は、「一般視聴者の参加型企画」が多いことです。テレビ関係者はもちろん意識している事ですが、中高生の皆さんもデジタル化に伴い相互放送への意識が高く、僕らにとっても非常に参考になる企画書が多かったです。
また「外に向かっての企画」が目に付き、中高生の皆さんが《内輪的バラエティ》よりも《外に向かって何かしら発信》する番組への期待が高い事がわかりました。
総じて現在テレビ番組を作っている僕らよりも、放送時間帯や、制作費など気にせず「とにかく自分が面白い」と思うことを企画にする姿勢が見受けられ、中高生の皆さんの数々の企画書に刺激を受けた自分がいました。

【テレビ東京制作局長の感想】

全体的には、真面目で大人しい企画が多いなと感じました。震災後に皆さんが感じた日本や日本人、身近なものを見直す風潮もあり、馬鹿馬鹿しいお笑いよりも役に立って楽しめる企画が多くを占めていました。10代の本音やトレンドを取り込んだ企画も数点見受けられ、中高生らしいピュアでストレートな感覚を番組化することはとても大切なことだと改めて思いました。
最近どの局も同じような内容の番組が多いといわれる中で、我々も斬新で尖った企画を常に考え、求めています。皆さんも10代の今しか発想できないスゴイ番組を是非妄想し続けて下さい。”レディ・ガガを連れて国際宇宙ステーションへ行き、ライブを世界生中継する”なんていう企画も自由自在!番組企画はタダで出来る素晴らしい脳トレなのです。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者を対象とした調査について、担当委員よりその分析及び概要が報告された。また今後の作業日程及び作業分担等について協議が行われた。

第123回 放送と青少年に関する委員会

第123回 – 2011年6月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第123回青少年委員会は6月28日に開催され、5月16日から6月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基にバラエティー1番組について視聴し審議した。また、6月に寄せられた中高生モニター報告について審議したほか、今年度の調査・研究について担当委員より進捗状況及び内容等について報告が行われた。

議事の詳細

日時
2011年6月28日 (火)  午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』(6月4日放送)について

男性タレントが女性出演者に襲いかかったりした行為について「性的な行動で低俗であり、子どもが見る時間帯の番組にふさわしくない」などの批判意見が寄せられ、番組を視聴の上審議した。放送は、過激な芸風で売る男性タレントが震災後いち早く福島の被災地に救援物資を届けたことを番組内で暴露し賞賛したことを受け、その男性タレントが自身のキャラクターを守るために暴走するという内容であった。審議の結果、委員会としては特段問題視することはないとした上で、審議における各委員の意見をBPO報告等に掲載することとした。

【委員の主な意見】

  • 出演したタレントのキャラクターは多少ひどいことをしてもひどいという印象が残らない。今回も視聴者がいやらしいとかの感情は持たないという気がする。ただ、カメラアングルや編集にもう一工夫できたのではないか。
  • キャラクターがわかっている人には容認できる行為も、初めて見た人、特に子を持つ母親からしたら「何あれ」と思い非常に不愉快に感じるのではないか。
  • 悪役が社会的に良いことをするということがバレたらタレント生命がなくなるので必死にそれを隠そうとする。そういう世界を視聴者が感じる効果があったかもしれず特段問題にする必要はない。
  • 文脈上は理解できるが、少しでも面白いところは思いっきり引っ張るという手法が実にくどく大変不快だ。
  • 結構面白く笑えた。恒常的に毎週こうした内容が繰り返されるのであれば問題があるのかもしれないが、突発的なものとの印象を持ち、特段の問題は感じない。
  • 問題は被災地福島をタネに話を展開しており、福島の被災者から見たら不快感、嫌悪感を抱く内容ではないか。
  • 番組内容が福島の人を馬鹿にしているとも思わないし福島の人が不快になるとも思わない。

中高生モニターについて

5~7月の中高生モニター報告は、「バラエティー・クイズ・音楽番組」のジャンルを取り上げている。6月のモニター報告のテーマは、「バラエティー・クイズ・音楽番組」のジャンルから最近見た番組の中で「面白くない番組」「嫌いな番組」を選び、「その理由や、好感の持てない出演者・タレント」について率直な意見を報告してもらった。32人からリポートが届いた。
際立って意見の多かった番組は、日本テレビ系列の『行列のできる法律相談所』(9人)とフジテレビ系列の『クイズ!ヘキサゴンII』(7人)だった。この結果は、昨年の報告と極めて似通ったものになっている(昨年は『クイズ!ヘキサゴンII』に12人、『行列のできる法律相談所』に4人)。

  • 「『行列のできる法律相談所』が嫌いな理由は、番組名と番組内容が矛盾しているからです。だんだん出演者のトークが増えるとともに面白みと法律相談の内容は減り、弁護士の先生方もこの番組に出演する必要がないと思います。島田紳助さんは巧みな話術で皆さんを楽しませているのですが、出演者をいじるとき『死んでしまえ』『消えてしまえ』と言うときがあります。普通そんな言葉で人は笑いません。しかし彼はその言葉を巧みに操り、笑いに変えてしまうのです。もちろんそれは彼の個性であり強みなのですが、ときにそれは凶器となり、人を悪い方向に変えてしまうのです。ですからもっと責任のある言葉で話してほしいと思います」。(高校1年女子)
  • 「毎回の放送が”ワンパターン”ということと、島田紳助さんの行き過ぎた”芸人のいじり”があることが好感の持てない理由です。また、下ネタも控えるべきだと思います。子どもも見ている番組なので気を付けてほしいと思います。島田さんはじめ局の方は『面白くしよう』と思っているのでしょうが、毎回、毎回おなじようなことを放送しているのを見るとどこかイライラしてきます」。(中学3年男子)
  • 「司会の島田紳助は、自分の”株”をあげたいだけのように見えます。偉そうなことばかり言って、他の出演者は口をそろえて『そうですねー』とか『さすがですねー』とか言っています。いくら大御所だからといって、見ている側にとっては正直どうでもいいと思っています」。(高校1年女子)
  • 「『クイズ!ヘキサゴンII』が嫌いです。私には島田紳助さんの司会は権力で若い芸人をいじめているように思います。島田さんは、馬鹿な人には容赦なく馬鹿だと言って貶すし、馬鹿じゃない人にも上げ足を取ってすぐに馬鹿だと言います。それが司会者である島田さんの役目なのかもしれません。けれど、あんなに馬鹿だと言われると、言われる芸人さんは嫌な気持ちになると思うし、見ている私たちも嫌な気持ちになります」。 (高校1年女子)
  • 「クイズ番組なのに解答者がわざと変な答えを言って、うけを狙っているようにしか思えないのです。問題はとてもためになるのに、答える人がそれをぶちこわしているように思います。そういう雰囲気を作っているのは司会者のせいだと感じます。少しえらそうにしてかなり上から目線なのも見ていていやになります。番組の中だけで勝手に盛り上がっていて、見ている人はなんか取り残されているのではと思います」。(中学1年女子)
  • 「番組内で結成されるユニットが今もなおデビューしていますが、正直、そこまでデビューさせなくてもよいのではないかと思いました。いちばん最近デビューしたメンバーは、新選組リアンの方など、島田紳助さんがこれまでにプロデュースしているか、または推している方などがメンバーでした。私が思うに、ただ単に紳助さんの利益を上げようとしている、そんな感じがするのです」。 (中学2年女子)

次に複数意見のあった番組は『しゃべくり007』と『なるほど!ハイスクール』である。

  • 「『しゃべくり007』に出演しているタレントさんたちの芸は面白く好感が持てる。しかし、この番組を嫌いにしている理由は、ゲストの発言にモザイク音をかけることだ。そんなことをしては放送する意味がないし、収録現場の”身内遊び”になっていると思う。(中学2年女子)
  • 「『なるほど!ハイスクール』は、まず内容と雰囲気からしていろんな番組とかぶっている感がしました。例えば、授業があって似ている『世界一受けたい授業』、制服を着ていて雰囲気も似ている『スクール革命』。とてもありきたりで、うんざり感がありました」。(中学3年男子)
  • 「嫌いなタレントはAKB48です。本人たちが嫌いというより、周辺のマスコミの騒ぎ方が気に入りません。『総選挙』と呼ばれるイベントでは、投票権付きのCDを買わなければなりません。ひどい場合5000枚も購入した人がいたという噂です。そして結果が出た翌日、案の定芸能コーナーはこの話題で持ちきりでした。明るい話題ではありますが、国の緊急事態のとき呑気に時間を割くのは如何なものかと思いました」。(中学2年男子)

そのほか寄せられた主な意見。

  • 「『飛び出せ!科学くん』の『子どものころに持っていた夢や好奇心を呼び覚まそう!身近な疑問から地球規模のミステリーまでこの世に存在する全ての謎を遊びながら解明していく”謎解きバラエティー”』という謳い文句は、嘘です。昔は謎を解いたり人体の神秘にふれていたりした気もしますが、今はありません」。(中学3年男子)
  • 「『爆問パワフルフェイス!』が面白くないと思う理由は、出演している芸能人だけが楽しんでいるという感じで、見ている人に面白さが伝わってこないからです。内容も”しょぼい”企画が多いです。また、爆笑問題の2人も司会者としての役割を果たしていない感じで、他の出演者の人たちがワイワイ勝手に話していて全体的にまとまりがない気がします」。(中学1年男子)
  • 「『めちゃ×2イケてるッ!』は、もともと『くだらない』『下品』と感じたことがあったから両親も私自身も好きではなかったため、家ではあまり見ませんでした。たまたま修学旅行だったため旅行先で友達と一緒に見ることになりました。ふだん見ないせいか、新鮮でした。最初の『歌へた』という企画は歌が下手な芸能人が競い合って”歌へた”王者を決めるというもので、面白いところもありました。ところが途中で、江頭2:50さん(レギュラー以外で最多出演数)が絡んでからの内容は、私にはとても見ていられませんでした。すごく下品で気持ちが悪く顔を手で覆ってしまうくらいでした。一緒に見ていた友達全員が同じ状況でした。私たちはすごく不快に思いました」。(中学3年女子)
  • 「『もしものシミュレーションバラエティーお試かっ!』の『帰れま10(テン)』のコーナーが最近面白くないと感じました。なので、もう見てはいません。開始当初は、簡単にベスト10を当てられないことに面白さを感じていました。ですが、最近は7連続8連続なんか当たり前。そのためそこから4~5問不正解を出して番組の尺を稼ごうとしているように感じます」。(中学2年女子)
  • 「先日放送された『トリハダ・マル秘・スクープ映像100科ジテン』には、『トリハダ』が立つどころか、腹の立つ内容であった。宝くじに当選し、いわゆるお金持ちになった人を中心とした放送で、驚くことばかりだったが、正直、『宝くじはいいぞ!』と宣伝しているような内容であり、世の中にはお金がなくて苦しい生活を送りながら、一生懸命働いている人も数多くいるのに、『一発逆転』だとか、『人生が変わった』だとか、お金を湯水のように遣う姿は『自分は特別だ』と言っているようなものだ。人を楽しませるのはいいが、今の状況をしっかり見据えたうえで、放送をしてもらいたい」。(高校2年男子)
  • 「日曜の朝にテレビをつけると、たまたま『新報道2001』をやっていたので見ました。自民党や民主党の政治家たちが原発の問題について質疑応答をしていました。ここでとても不快に思ったのは、相手の政治家の失言を『待ってました!』とばかりに揚げ足をとり、その点ばかり攻めたてていたことです。ぼくは小学生のときクラスで討論する機会がありましたが、先生に『互いの欠点を言い合っても答えは出ない』と注意されました。確かにそうだと納得し、ぼくたちは欠点ではなく前向きな話し合いをするようになりました。この番組では、そのみっともない討論ともいえない様子を放送していたので、まったく面白くありませんでした」。(中学1年男子)

そのほか意見の寄せられた番組は、『紳助社長のプロデュース大作戦!』『秘密のケンミンSHOW』『情報ライブミヤネ屋』『知っとこ!』『ホンマでっか!?TV』『ロンドンハーツ』『ミュージックステーション』『ピラメキーノ』だった。

【委員の所感】

  • 今回の特徴には、特定の出演者の番組に意見が集中したことがあげられる。「嫌いだ」という意見を寄せてくれた割には、嫌いな番組でも見ていることがうかがわれた。
  • 「嫌いな出演者」についての分析では、「言葉を巧みに操って笑いに変えてしまう能力がある」「言葉で人を動かす力がある」などその人物を評価する一方、「他の人を傷つけているように見える」「自分の”株”をあげたいだけ」など、冷静に分析している意見も散見された。
  • 「嫌いな番組」だと基本的には見ないと思うので設問に多少無理があったという印象だが、「なぜその出演者が多くの番組に起用されているのか」「嫌いでもなぜ見てしまうのか」といった部分をもう少し掘り下げて書き込んでほしかった。
  • 人気アイドルグループが嫌いというわけではないが、そのグループの活動を大々的に取り扱っている多くのメディアの現状を批判している意見には、同感だった。
  • 東日本大震災を経験する中で、「もう少し震災のことを配慮して番組を作ってほしい」という意見や、ジャンルは異なるが『新報道2001』についての意見を寄せてくれたリポートには感心した。

「今月のキラ★報告」(神奈川・中学3年女子)

毎年夏に日本武道館で24時間生放送でやるチャリティー番組『24時間テレビ』。34回目にもなるので仕方ないのかもしれませんが、だんだん”マンネリ化”しているところが私は嫌いです。毎年メインパーソナリティーの誰かが、実話ドラマの主人公を演じたり、一人一人が障害のある人などのところへ行き、何かを手伝ったり…”お涙ちょうだい”的な番組になっているのが伝わってきます。チャリティーマラソンランナーがいるのも意味が分からなく、走ることで何を伝えようとしているのかさっぱり分かりません。「高校生ダンス甲子園」や深夜の芸人さんたちの番組には面白さがありますが、その他の企画を見ていると、イライラします。チャリティーというのは、3.11の大震災もあったので良いと思いますが、「何のために」「誰のために」という目的をもっと明確にしてほしいです。

【委員会の推薦理由】

番組の面白いところや良さを指摘し、応援したい気持ちを滲ませながら、だからこそ目的を明確にできないままダラダラと続けることに嫌悪感を抱いている。そんな素直な思いがストレートに綴られており、今月の「キラ★報告」に相応しいと思いました。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者を対象とした調査について、NHKを含めた在京キー局6社の計666人から調査票が回収され、今後分析作業を行うこと、また、補足調査として一般視聴者向けの調査票が作成され、8月初頭に回収が終了する予定であることが担当委員から報告された。

第122回 放送と青少年に関する委員会

第122回 – 2011年5月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第122回青少年委員会は5月24日に開催され、4月16日から5月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、5月に寄せられた中高生モニター報告について審議した。また、今年度の調査・研究について、進捗状況及び調査内容等について担当委員から報告が行われた。

議事の詳細

日時
2011年5月24日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、視聴者意見の概要等について報告を受けたが、視聴審議の対象となる番組はなかった。ただし、小学生女児出演の番組に対し、「子どもを性的対象にしている」という意見が数件あり、同様の意見が断続的に寄せられていることから、少女が出演する番組について当委員会が2006年10月に出した「少女を性的対象視する番組に関する要望」の趣旨を踏まえて番組制作にあたるよう、BPO報告等に記載し改めて注意喚起することとした。

中高生モニターについて

5~7月の中高生モニター報告は、「バラエティー・クイズ・音楽番組」のジャンルを取り上げている。5月は、上記のジャンルの中から「好きな番組、面白い番組」を選び、「その理由や、好感の持てるタレント・出演者」について意見を求め、32人から報告が届いた。

最も意見の多かったジャンルは「バラエティー番組」で、21人から22番組に意見や感想が寄せられた。そのなかで複数回答のあった番組は、『しゃべくり007』『AKBINGO!』(日本テレビ)、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)、『シルシルミシル(さんデー)』(テレビ朝日)、『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)の5番組だった。

  • 「『しゃべくり007』はいつもくだらないコントが突然始まって、予測不可能な展開がとても面白いです。そしていつも思うのが、くりぃむしちゅーの上田(晋也)はすごい!です。なぜなら、ボケようとしている芸人を察知して、例えば「(原田)泰造はどう?」と瞬時に話を振ったり、周りがすごく見えているなと感じます。ボケる芸人に対して、的確に突っ込むことができる芸人がいて面白くなるんだと思います」。
  • 「初めて『ホンマでっか!?TV』を見た時、”面白い!”と思いました。番組では、頭脳・博識軍団の先生たちが、いろいろ知識を紹介しながら、分かりやすく解説してくれるのですが、特に教育評論家の尾木直樹さんが少し”オネエ”になったり、明石家さんまさんがボケたりしながら番組を進めてくれてとても楽しいです。この番組を見ていると新たな発見があったり、世間に対しての関心が深まったりして、面白いという感情が生まれるのだと思います。出演者で共感できるタレントさんはマツコ・デラックスさんです」。
  • 「最近見始めた『シルシルミシル』は、主に『工場見学』であり、『身の周りのモノの原点』を明らかにしていく番組である。それだけにとどまらず、視聴者が疑問に思っていることを解決するコーナーがあり、”視聴者のために”という精神が全面に出ている番組だと思う。そしてなにより好きな理由は、バカリズムという芸人がナレーションを担当していることだ。彼のスムーズなナレーションで、視聴者は強い関心を抱いた状態を継続することができ、飽きずに見ることができるのだ」。
  • 「『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)が”おもしろい”。普通の番組ではやらない企画がたくさんあり、その中でも、小型バイクでベトナムを縦断したり、車でアメリカを横断したりするなど、本当にインパクトのあるものが多い番組です。出演者は、大泉洋さん、鈴井貴之さんです。旅の最中、大泉さんはずっとボヤいてそれがうるさくて嫌いという方もいるかもしれませんが、僕はそのボヤきが面白いからこの番組が大好きです。そして、この番組はもともと北海道のローカル番組だったのですが、北海道で大ヒットして、ついには全国区で放送されるようになり、北海道の番組から、日本の番組になりました」。
    そのほか意見が寄せられた番組は、『世界の果てまでイッテQ!』『コレってアリですか?』『1億人の大質問!?笑ってコラえて』『嵐にしやがれ』(日本テレビ)、『ウンナンの気分は上々。』(TBS)、『笑っていいとも!』『VS嵐』(フジテレビ)、『いきなり!黄金伝説。』『アメトーーク』(テレビ朝日)、『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京)、『着信御礼!ケータイ大喜利』(NHK)だった。

次に意見が多かったジャンルは「音楽番組」で、7人から意見が寄せられた。複数の回答があった番組は『ミュージックステーション』(テレビ朝日)である。

  • 「先日の未曾有の大震災の後”音楽番組”が増えたように思う。とても良いことだと思う。理由は2つある。1つは被災地の人が一時でも大震災のことを忘れられるのではないかと思うから。もう1つは被災地に元気や勇気を届けることができるからだ。地震当日は報道特別番組だったが、次週から予定通り放送していた。僕にはそこに”歌には大きなチカラがある”。だから”放送しなければいけない”という気持ちが伝わってきた」。

そのほか意見の寄せられた番組は、『CDTV』(TBS)、『HEY!HEY!HEY!』『僕らの音楽』『青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ』(フジテレビ)、『題名のない音楽会』(テレビ朝日)だった。

「クイズ番組」には4人から意見が寄せられ、『ネプリーグ』(フジテレビ)に複数回答が寄せられた。

  • 「私はクイズ番組『ネプリーグ』(関西テレビで視聴)が好きです。なぜなら1つ1つのジャンルがアトラクション形式になっていて、まるで遊園地にいるような楽しい雰囲気があるからです。特に好きなのは『トラップハウス』です。画像がリアルで本当に体験しているように思います。また『ファイブツアーズ』は私にも勉強になります。読めても書けない漢字って多いです。そういうときに、こういった番組で取り上げてくれるととても助かります。放送が日曜のお昼にやっているので、日曜の昼下がり両親と一緒に問題を解いて楽しめるのもいいです。昼食のとき、とてもワイワイ会話が弾みます」。

そのほか、『Qさま!!』(テレビ朝日)と『パネルクイズ アタック25』(朝日放送、テレビ朝日系)に意見が寄せられた。『パネルクイズ アタック25』が好きだという報告の中には、先日亡くなった児玉清さんの病状を気遣った報告も寄せられた。

【委員の所感】

  • 今回の特徴は、特定の番組にモニター報告が集中することなく、さまざまな分野の番組に関心を持っている様子がうかがえました。ただ、「今の中高生はこういうことに面白さを感じているんだ」といったイメージがあまり湧かず、あまり意外な思いを抱くことはありませんでした。今後、もう少し具体的に書いてくれることを望みます。
  • 際立ったリポートが少なかったように思った。具体的にどこが面白いのか、どんなやり取りが面白いのか、どんなシーンが印象に残ったのかという具体的な報告が少なかったように思う。その辺のところを今後書いてくれることを望みたい。そんな中で、番組のナレーションに目をつけたリポートには”なるほど”と思わせるものがあった。
  • モニターの目のつけどころ”視点”と、文章力、構成力を大切にしてほしい。例えば、”歌には大きなチカラがある”と書いてあるリポートがあったが、そのフレーズをまず書き出しにして、次にその理由を書いてくれると説得力のあるリポートになると思う。また、”生き残る芸人は自分を面白くできて周りも面白くできるそんな人だと思います”という報告には本質をついた感想があると思った。
  • バラエティー番組の基本は、家族全員で”アッハッハ”と笑えるものが健全なものだと考えるので、”親子の会話も弾みます”といった報告や、”どうしようもないボケっぷり&天然っぷりから笑いの絶えない番組が面白い”といった報告に接し、家族一緒に楽しめる番組の好感度が高いという印象でした。

「今月のキラ★報告」 (東京・中学2年男子)

好きな番組は、『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)です。この番組には「DASH村」というコーナーがあります。TOKIOのメンバーが農業をしたり、道具を一から作ったり、動物を育てたりするコーナーです。また、村の近くに住んでいる村人たちが農業などの技術を教えてくれたり、芸能人と一体となってTV番組に協力してくれたりしているところが、他の番組にはない魅力だと思います。
僕はこの番組を見ると、「DASH村」に行き一緒にやりたくなってしまいます。それは、TOKIOのメンバーが自分たちで汗だくになりながら、(演技ではなく)自分の意思で取り組んでいるように見えるからです。地域の人たちも楽しそうにTOKIOのメンバーとふれあい、村を助けています。この一つのTV番組を作っているのが、テレビ局や芸能人だけでなく、普通の地域の人たちでもあるというのは、とてもすごいことでこの番組の最大の面白さだと思います。
現在「DASH村」は、今回の東日本大震災に被災しています。そこにいた人、動物などは無事なようですが、原発の問題により村に近づけない状況が続いています。番組作りに協力していた地域の人たちも避難生活を送っており、TOKIOのメンバーがその人たちに会いに行き、励ましています。テレビの中の芸能人であるTOKIOのメンバーが、避難中の人たちを訪ね、笑顔で抱き合う姿は、とても温かくまぶしく感じられました。
テレビの一番組なのに、芸能人が本当に地域の人たちと関わりながらリアルな村の生活を作っている様子、その温かさがテレビからそのまま伝わってくるのは、他の番組ではなかなか感じられるものではなく、それもこのコーナーが10年以上続いてきたからこそ、その長年の絆が伝わってくるのだと思います。
この僕が大好きなコーナーが、今回の大震災で無くなってしまうのではないかと心配しており、「DASH村」の未来から目が離せません。

【委員会の推薦理由】

番組に出演するタレントと一般人の交流は、その場限りで終わってしまうことが多い中で、TOKIOのメンバーと「DASH村」の地元の人々との長年の”絆”が番組を支え、独自の魅力を生んでいることを的確に指摘していました。今回の東日本大震災によって「DASH村」のコーナーが終了することへの危惧感の表明から、番組に対する筆者の愛情がストレートに伝わってきたことを評価しました。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者を対象とした調査の実施にあたり、担当委員からその進捗状況が報告され、その補足として一般視聴者を対象とする調査を行うことの提案があり、委員会として了承した。

第121回 放送と青少年に関する委員会

第121回 – 2011年4月

TBS『さしこのくせに』制作担当者との意見交換

視聴者意見について …など

第121回青少年委員会は4月26日に開催された。東日本大震災のため3月委員会を中止したことから延期となった、TBSの深夜バラエティーの番組担当者との制作プロセス等についての意見交換を行った。また、2月15日から4月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、4月度の新中高生モニターのレポートについて審議した。

議事の詳細

日時
2011年4月26日(火) 午後4時30分~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

TBS『さしこのくせに』制作担当者との意見交換

当該番組について視聴者からの「スポンサーの運営する有料サイトに誘導する内容になっており、ファン心理に付け込んだ悪質なやり方」などの批判意見を受け、2月委員会で審議し、番組の企画意図や制作プロセス等について、委員会と番組担当者との意見交換を行うこととなった。

【TBS提出の経緯書】

深夜番組「さしこのくせに」投票企画に関するトラブルについて

このたび弊社の番組「さしこのくせに」(深夜1時25分~放送)の2月8日放送回における視聴者参加の方法をめぐり、視聴者の方々より厳しいご批判をいただきました。
私どもは、今回の件が放送に対する視聴者の皆様の信頼を揺るがしかねない結果になったことを重く受け止め、経緯の検証を行うとともに、番組の制作工程や体制の見直しをはかるなど再発防止に真摯に取り組む所存です。以下に事案の概要と経緯、今後に向けた私どもの見解を述べさせていただきます。

1.番組内容と今回の経緯
この番組はAKB48のメンバーの一人が毎回様々なチャレンジをし、視聴者がモバイルを使ってそれを評価する、という、いわばファンとの双方向性をコンセプトとしたバラエティ番組です。提供はモバイルコンテンツ事業会社で、制作は外部制作会社が請け負っています。
2月8日に放送された「番組存続をかけた投票」と言う企画は、スポンサーの代表者自らが出演し、主役のタレントに対し、「携帯サイトでファン投票を実施し、3月いっぱいで3万票が集まらなければ番組打ち切りを考える」と告げるものでした。
代理店を通し事前にこの企画を提案された弊社編成担当は、TBS運営の無料の携帯サイトで毎週行っている通常のファン投票の延長と理解いたしました。またスポンサーが番組に登場するという点についても、スポンサーが、番組内でタレントの活躍を審議するメンバーの一員に従来から加わっていることもあり、演出の範囲内であろう、と判断しました。
しかしながら、実際にはこの投票の場がスポンサーの運営する有料携帯サイト上であったため、投票しようとした視聴者にはサイト登録料などが必要となっておりました。
弊社側としましては、結果として、オンエア後に投票が有料であったことを知ることになりますが、投票のやりかたやシステムについて、局側の担当として代理店その他関係者と事前にすべき精査を怠っていたことは否定できず、大いに反省するところであります。

2.放送後の反響と対応
放送後、「番組と連動した投票でお金がかかるのはおかしいのではないか」、「お金がかかる旨を番組で知らせていないのはおかしい」といったご批判が電話およびメールで数十件寄せられました。 
実際投票する際には、携帯サイト上に「有料」となることが明示され、それを了解された方のみが投票する形とはなっていたものの、番組と連動した企画が「有料」となることに強い違和感を覚えた、とのご批判でした。
こうした批判を受け、スポンサー側では放送後2日後までに投票受付を打ち切り、サイト上において登録料と同額相当のポイントを還元する、といった救済措置について告知しました。
一方、弊社には一部視聴者から、投票のため登録したものの退会の仕方がわからない、という苦情も寄せられたため、弊社からスポンサーに対しサイト上に退会の手引きを明確に表示するように依頼、次週の2月15日放送回の番組エンディングにおいて、その旨をテロップにて告知いたしました。

3.今回の反省と今後について
私どもとしましては、放送される番組そのものの存続に関し、視聴者からの有料の投票で決定するという方法は不適切であると考えております。今回の投票が有料を条件とするものと事前に通知されていれば、企画として成立していなかったものと考えます。
一方で、今回の投票が有料でなかったとしても、「番組の存続をかけた投票」という内容そのものに問題があったのでは、というご批判もいただきました。
そもそも番組の継続、打ち切り、などの決定は純粋に局の編成権によっておこなうものです。にもかかわらず、「存続をかける」としたことで、必要以上にファン心理を煽ってしまったことも否定できず、深夜の企画開発枠とはいえ演出にやや行き過ぎた部分があった、といわざるを得ません。
今回の番組のようにインターネット、モバイルなどと地上波とが連動した企画が最近とみにふえており、そうした場合、編成、営業、制作会社、スポンサー、デジタルコンテンツ担当セクション、などが錯綜した連絡網の中で進行することになり、重要な情報が共有できない危険性も出てまいります。当然ながら局の担当としての編成の役割がますます重要となっており、企画立案、決定などのプロセスにこれまで以上に編成のチェックが求められると考えます。
私どもは今回の事態を深く反省するとともに、こうした複雑な構造の番組にはチェック機能を二重に設けることにいたしました。今後あらためて社外制作番組のチェックのあり方全体についても見直し、同様のトラブルの再発防止に真摯に取り組む所存です。

【意見交換概要】

◆番組の企画・放送の経緯
モバイルビジネスを展開するスポンサーから広告代理店を通じて、若者にも人気のあるAKB48のメンバーをフィーチャーしたサイト連動型の番組企画が営業を通じて持ち込まれ、担当部署である編成が精査した結果、将来的にも期待できると判断し成立に至った。問題とされた点については、広告代理店から放送側への連絡ミスがあり、事前チェックが不十分なままオンエアしたことが原因だった。

◆反省点と事後の対応
ネット・モバイル連動型については放送の外で、放送事業者が知りえない事象が起こることについての危機意識を持ち、番組の細部にわたって留意することが求められており、事後、スポンサー、代理店、営業、制作会社、編成等関係者による数度の会議が設けられ、意識とコミュニケーションの共有化を図るとともに、今回の事案の経緯をまとめ、他の類似番組についても再発を防止すべく体制を整えた。

◆ネット系メディアと放送の現状
各放送事業者は放送波と各メディアとを連動することにより、放送事業収入以外の何らかの利益を上げることを考えている。TBSも有料、無料のサイトを立ち上げ、各権利所有者等と協議しながら、責任の持てる範囲で一つずつ立ち上げている。テレビは大きなメディアなので各企業から様々な要望が寄せられるが、特に放送内容と関係することについては、情報の行く先が詳らかには見えず、100%責任が持てないことから、外部へのリンク等に関してはガイドラインを設け、基本的には禁止し危険を回避するよう努めている。

【意見交換を受けての青少年委員会としての所感】

各放送事業者は放送収入の停滞、低迷という現在の経済状況と、インターネットなど新たなメディア環境の急激な発達の中、その必然として(ビジネスの一形態として)各メディア連動型の番組が制作、放送される状況にある。今回の事案は、オンエアされた番組の放送表現については特段の問題は見えにくかったが、番組の情報がその先のモバイルサイトに行ったときに初めて表面化したというケースであった。
番組制作者も、ネット系連動番組はまだ緒についたばかりで模索段階にあることが推察され、放送された情報がネット連動により、伝達先でどういうことが起りうるのかということについての認識も十分とはいえない。また、放送倫理上の問題認識については放送事業者とスポンサー、代理店等関係者とで同一であるとは限らない。
当委員会としては、今後、ネット連動型の新たな分野の番組制作にあたっては、放送事業者が以上の点について十分に留意を払い、関係者相互のコミュニケーションと共通認識を図ること、そのための社内システムの検討とともに、関係各社と認識を共有する努力を期待したいと考える。

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、視聴者意見の概要等について報告を受けた上で、番組の視聴及び審議の対象となる番組はなかった。

○東日本大震災に関する報道について

仙台に在住し被災した委員から、「被災者が欲する情報は生活関連情報だが、地元の地域密着型のミニFM放送が最も役に立ち、キー局が発信するテレビ報道には限界がありほとんど伝えられなかった」等の報告があった。また、被災地に赴いた委員からは、現地の詳細な状況等について報告があり、一連の報道について一委員会ではなくBPOとしてしかるべき時期に何らかの検証をする場を設けるべきだという方向が示された。

中高生モニターについて

4月のモニター報告は、当初「バラエティー番組」のジャンルを取り上げる予定だったが、3月11日に起きた「東日本大震災」が現在の国民の最大の関心事であり、新モニターには大震災関連の「報道・情報番組」について率直な意見や感想を求め、メンバー34人全員から報告が届いた。

【モニターの主な意見】

モニター報告では、まず、初めて大震災を体験したときの驚きの様子が報告されている。

  • 「3月11日は私にとってたぶん生涯忘れることのない日になると思います。地震直後から大津波で家屋等がいっぺんに流される映像が繰り返し報道され、現地に入ったリポーターの方が伝える被害の状況が日を追うごとに悲惨さを極めていく様子…。大自然の前では、人間に力がいかにちっぽけなものであるかをまざまざと見せつけられ、本当にやるせない気持ちになりました」。
  • 「まるで戦場のようで、これは映画の宣伝なのか、新しいCMなんじゃないか、そう感じずにはいられないぐらいに衝撃的で信じ難い映像でした。大地震、津波、原発事故と続けざまに大変なことが起こり、本当に日本はどうなってしまうのだろうか?と不安になりました。
  • 「今回の東日本大震災で、テレビの映像がどれだけ大きいものか分かりました。テレビやラジオなどの報道メディアは1秒も休む事なく緊急放送。僕はさまざまなテレビ局やラジオ局の緊急放送番組を見たり聴いたりしている中で、ただ一つ思うのは、1日も早い災害の復旧と復興、そして被災者の皆さんの安全、それを願っています」。

また、計画停電が始まる中で、ラジオが大切な情報源だったという報告も寄せられた。

  • 「私は3.11の翌日、毎週放送されるTOKYO FMの番組にチャンネルを合わせると、予想通りその番組はやっていませんでした。でも聞き覚えのある声がラジオから聞こえてきたんです。それはDREAMS COME TRUEの中村正人さんでした。中村さんは、つらいことも音楽で僕らと繋がっているから、みんなで頑張ろう!と伝えたかったんだと思います。私は素晴らしいと思いました。この放送を聴いて私は元気と勇気をもらいました」。
  • 「地震からちょうど1週間後、宮城県出身のサンドウィッチマンというお笑いコンビが『オールナイトニッポン』をやっていて、全国のリスナーに募金を呼びかけていました。サンドウィッチマンのお二人は被災者の皆さんに少しでも元気を取り戻してもらおうと一生懸命ラジオを通じて漫才をやっていました。被災者の皆さんからは、『元気を取り戻しました』『涙がでました』などと数々の感想が送られてきていて、僕は東北の皆さんが少しずつ元気を取り戻してきているんだなと感じ、日本はいま一つになっているんだなと思いました」。

次に、連日の震災報道が続く中で、取材方法などに疑問を抱くようになったという報告も多数寄せられた。

  • 「今回の震災報道について特に感じたことは、過剰な報道です。特にヘリコプターによる空撮および、被災者の方へのインタビューです。確かに、各局の『この事実を伝えたい』という気持ちは伝わってきます。しかし、ヘリコプターの騒音は救助の妨げになるというのは事実ではないのでしょうか。また、被災者の方へのインタビューは、被災者の方がどんな思いで、どんな苦しみで、どんな願いがあるのかなど、被災していない者には分からない『真実』が見えてくるので、いいことだと思います。しかし、それが果たして被災された方へのフォローとなるのかが分かりません」。
  • 「大地震が発生してから、その日のうちに被害にあった場所の映像が報道され、私はどんなにひどいものだったのか知ることができました。いつ余震がくるのか分からないなかで、危険をかえりみず現場に行った記者のみなさんのおかげだと思います。しかし、そのなかで少しやめてほしいと思ったことがあります。『今、家族を探している』と泣きながらもインタビューに答えていた人に対して、『今、一番願っていることはなんですか?』と聞いたことが、イヤだなと思いました。家族を必死に探している人に対して、その質問をしたらかなりの確率で家族の無事を祈ると答えるのではないのでしょうか?」。
  • 「次の日の朝、テレビをつけると家が流されていたり、病院の屋上でSOSを出していたり、発炎筒を振って救助を待っていたり…とにかく衝撃を受けました。そして、それらの映像がすべて上空のヘリコプターから撮影されていて、『あそこにSOSの文字が見えますね!!!』など、救助を待つたくさんの人が映されるたびに、私はさっき映っていた人はちゃんと救助されたのかな、とすごく心配に思いました。救助を待っている映像が映されて、その後のことが映されないと報道を見たり聴いたりいている側としてはとても不安になりました」。
  • 「こういう時なのでいつものようなCMは控えようと、すべてのスポンサーがAC JAPANのCMにしたため、何度も放送されていました。派手なCMを控えることは良いことだと思うので、災害時のCMを作っておくことが必要であるということも分かったことの一つだと思います。ですが、ACのCMを流す時間に被災者の安否確認の映像などを流すということはできないのでしょうか(=CMを流さない)」。
  • 「自分がマスコミに一番配慮してほしいと感じるのは風評被害への対策だと思います。農作物に出荷制限・摂取制限が発表され、消費者が買い控えるという事態が発生し、被災された農家の方も含め産地で大変な被害や損失が発生しているということが、またテレビで放送されています。確かに、テレビは真実を伝えなければならないというのは大前提ですが、視聴者の誤解を招かないような正確な情報を伝えるのも仕事だと思います」。
  • 「私は大地震が起きた夜、学校に泊まりました。教室にあるTVで報道を見ましたが、アナウンサーやディレクターの方々が慌てている様子が明らかに伝わってきました。罵声が飛び交っている場面もあり、私はもう少し落ち着いて報道ができないものか…と思いました。また民放は協力し合い、同じ内容を同時に流さないように調整したり、バラエティーやアニメ番組を放送したりして、人々の気持ちを明るくする必要も感じられます」。
  • 「私は地震直後、テレビが被災地の様子ばかり放送していてとても怖く感じました。そんなとき、TOKYO  MXテレビが『探偵!ナイトスクープ』(制作:朝日放送)を放送していて、とても安心しました。被災された方は、『こんな時に何てのんきなことを』と怒っておられたかもしれませんが、私にとっては救いでした」。

◆ 被災地在住のモニターからの報告(抜粋)
【宮城・高校2年男子】

「東北地方太平洋沖地震」から1ヶ月が経過した。テレビやラジオ番組は、音楽、バラエティー、ドラマなどが大半を占めるようになり、徐々に被災地の情報が減少している。また報道番組においても、東京電力福島原子力発電所に関する問題が中心となり、地方選挙や相撲の賭博問題など、幅広い分野を扱う本来の放送に戻りつつある。
私たち被災者の中には、テレビの枠部分にテロップとして流れる情報を基に活動する機会が多くなったと感じる人もいることだろう。しかしながら「被災者向け」でないのは仕方ないことだろう。地方の番組ならともかく、全国には被災地情報を必要としない人もいるため、全国放送の番組にとって被災地の様子をもっと取り上げてくれという要求に応えることは、非常に難しい。何を放送すべきなのか、視聴者は何を必要としているのか、私たち放送をする立場の人間には何ができるのか。改めて放送の原点に戻り、考えながら情報を伝えてほしいものである。
現在被災者である私は情報に対してとても敏感になっている。その状態でテレビを視聴していると、指摘したい問題がいくつも出てきたため、被災者代表として伝えたいと思う。4月9日土曜日の夕方テレビを見ていると、ある報道番組が福島原子力発電所の半径20キロ付近で取材をしていた。線量計を用いて避難区域は放射性物質の濃度が高いということを説明し、住民に避難することを促したり、現地の静寂とした様子をカメラに収めたりしており、とても興味深い内容であった。その中でこういう場面があった。車を運転していると、犬を発見した。その犬は近づいてきて、ここでナレーションが入る。「餌を求めてこちらへやってきたのだろうか」。そこですぐにまた原発の話に戻すのである。このとき、「この犬はどうなるのだろうか」と私は思った。実はこのような犬たちは、NPOの組織によって保護され、現在少人数で活動しているために協力してくれる人が欲しいとラジオで主張していたのを知っていたのだが、まるで原発しか目に入っていないような、説明の足りない場面であった。”問題”は原発だけではないのだ。
また、被災者たちは津波からの復旧がなされていないことに苛立ちを感じている。なぜ復旧が進まないのか…。それは、テレビやラジオで放送されてないからだという。具体的に、宮城県の気仙沼、石巻、岩手県の大船渡はよくテレビに映るが、宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)という地域は放送されない。福島県いわき市は原発の問題だけ主に取り上げられ、津波の被害は”ついで”という感じである。もう少し全体的に取材するべきではないだろうか。津波は「三陸」だけではないのだ。
さらに、福島県や茨城県などは放射性物質に関する食品の問題がある。風評被害が心配だと連日されているが、人々は政府のあいまいな発言に戸惑いを抱き、テレビの解説を頼っている。そのテレビが人々を安心させる立場にあるのに、「福島県産の食品は心配だ」などというインタビューを取材してばかりだ。安全だと声を上げて主張する八百屋さんを取材したり、実際にスタジオで食べて安全を証明する活動を行ったりするなど、具体的な数値を使った説明だけでは足りないのではないだろうか。
テレビやラジオは人々を助けるための重要な存在なのだ。そして人々に大きな影響力を与えるそれらメディアは、日本の混乱を収束させる力を持っている。チェーンメールの具体的な内容を説明し、その内容は嘘だと伝えれば、人々がチェーンメールを流さなくなる可能性もある。CMで「チェーンメールに気をつけろ」などといっても、論理性のあるチェーンメールの内容には通用しない。知っている内容を何度も放送されれば、不満を抱くのも当たり前だろう。

【茨城・中学2年女子】

私は、今回の「東日本大震災」の被災者でもあります。そこで、私は一番強く関心を持ったのは「被災者の気持ち」です。特に、勢力をあげて報道をしているのがNHKだと思いました。NHKの報道は他局の民放局に比べ、多く被災者の”安否情報の掲載”、避難所へ行き”被災者の今訴えたいこと”等の報道を多く放送していました。また、NHKはいちはやく正確な情報を私たち被災者に報道してくれて、嬉しかったです。地震情報もすぐに出て、家族たちも安心をしました。
それに比べ、民放局は誤報が多く、人を惑わせていたりしているような気がします。放射能汚染問題でも同じです。「そこまで、報道するべきなの??」と私は思います。神経質すぎる報道が多すぎるのではないのか、と思います。
すべての報道でよかった事は、何日か前まで各放送局がテレビの左側などに出ていたテロップがすごく役立ちました。ですが、生活情報・放射能対策…等を出すならば、それぞれ放送局ごとにわけて情報を出してほしかったです。それぞれ見ていると、一緒のような情報が何回も見せられているような気がします。ですから、このような形だったら見やすいかもしれません。→A局が生活情報を出す。B局が放射能対策を出すなど…。
私は、この東日本大震災を体験した者として、報道はすごく頼りになりました。なので、私たち被災者にとっても、被災者になっていない人にとっても、報道はちゃんとやるべきだと思います。人を不安から安心へと導くことも大切です。テレビに出演する立場にもこの震災を報道きちんと報道すべき言動や行動をテレビで映してほしいです。

【委員の所感】

  • 今回、初めての慣れないモニターリポートにもかかわらず、真摯に取り組んでくれました。特に、震災報道で被災した子どもたちへのストレートなインタビューに対し、不快な印象をもったとの意見が多くありました。これは、世代が近く、年齢がそう離れていないため、小さいときの状態に想像が及びやすいからだと思います。子どもへの実感に近い共感と、優しさを感じました。あらためてこの世代のモニターが必要であることを痛感しました。
  • 皆さんのリポートを読んでいると、「津波の映像で特に引き波の恐ろしさがわかった」「テレビが被災者の伝言板となっていた」といった評価する声が届いている一方、「被災地に向けて報道しているのか、被災地の外に向けて報道しているのかわからない」「どのチャンネルを回しても同じ場面の繰り返し」「避難所での取材・インタビューの仕方があまりにも失礼で見るに耐えないシーンもあった」「原発事故では、どの専門家の話しを信用していいのかわからなかった」などマスメディアへの批判も目立ちました。それぞれ感じるところがあったと思いますが、私自身はテレビなどマスメディアの報道は、あくまでも第二次情報に過ぎないと考えています。
  • 中高生の感性で震災報道と向き合い、さまざまなことを感じていた様子がよく分かりました。被災された方と、被災されなかった方の感じ方の違いも分かり、興味深く読みました。また、被災して避難生活を送っている皆さんには最初の頃テレビがありませんでしたので、東京のキー局の発する震災報道は被災者に届いていません。実際に被災した体験者としては、避難生活を送っている人にとって必要な生活情報が少なかった、メディアもテレビよりラジオの方が貴重な役割を果たしていたと思います。
  • 被災されたお二人のモニターの方を除いて、他のモニターの皆さんは直接的に被災されていないので、大震災に対して”ピンときていない”と思いました。モニターの皆さんは、ぜひ、時間を作って被災地の様子を、皆さんの目で実際に見てください。特に宮城県や岩手県の海岸部の被災地をご覧になることをお勧めします。人生観が変わると思います。
  • 何人かのモニターから、各局が同じような内容の放送をするのではなく、分担制にしたらという提案がありました。震災直後からどの局も緊急報道態勢をとって同じような情報を競って伝えようとしていましたが、確かに非常事態においては、競争するよりも、各局が協力して役割分担をする必要があります。またラジオの効用を指摘する意見もありましたが、被災者が必要とするような情報は、テレビでは伝えにくく、むしろ地元に密着したラジオが重要な役割を果たすということも再確認できました。
  • 何人かのモニターの方が、各放送局がそれぞれのジャンルを決めて放送し、同じような内容にならないようにすべきだという提案がありましたが同感です。また、放送されてない地域があったり、外国からの援助に関する報道が少なかったりするので、もっと多様な切り口から幅広く伝えてほしいという報告がありましたが、この意見ももっともだと思いました。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者を対象とした調査の実施にあたり、ワーキンググループで協議を続けてきた調査票案が担当委員から提出・報告され、委員会として了承した。