第306回放送と人権等権利に関する委員会

第306回 – 2022年7月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2022年7月19日(火)午後4時~午後7時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を基に議論した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

2. 審理要請案件「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
申立てを受け、双方による交渉が持たれたが不調に終わり、今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
なお、審理対象とするのは、申し立てられた日から1年以内の2021年2月以降の放送分とし、それ以前のことは背景事情として考慮することが委員会で決定された。

3.「判断ガイド2023」について

来年2023年を目途に制作される「判断ガイド2023」について、事務局からウェブ化を図りたいことなど計画を説明した。体裁などにも委員会の賛同を得て、実務編集作業を進めることとなった。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

5. その他

今年12月に開催予定の札幌での意見交換会について、事務局から概略を説明した。

以上

2022年7月25日

2022年 7月25日

感染症対策に伴う視聴者電話応対業務について

BPOは、新型コロナウイルス感染症対策のため、次の業務対応といたします。

  • 当分の間、視聴者からの電話応対時間を短縮します。
    視聴者意見電話受付時間 平日 10:30~12:00 および 13:00~16:30
  • 郵便物とメール、ファクスは通常通り受け付けます。
  • なお、今後の感染状況によっては、電話受付を休止することがあります。

2022年7月19日

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、7月19日の第306回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
 申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
 被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
 申立てを受け、双方による交渉が持たれたが不調に終わり、今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。

 7月19日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
 なお、審理対象とするのは、申し立てられた日から1年以内の2021年2月以降の放送分とし、それ以前のことは背景事情として考慮することが委員会で決定された。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第173回 放送倫理検証委員会

第173回–2022年7月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第173回放送倫理検証委員会は7月8日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年7月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から6月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再び、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 6月に寄せられた視聴者意見を議論

6月に寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組で参院選に向けた党首討論がなされた際の司会役の進行や、情報番組で前日の緊急地震速報を繰り返し使用したことに批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告したが、踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

2022年6月に視聴者から寄せられた意見

2022年6月に視聴者から寄せられた意見

参院選の選挙報道のあり方や、いわゆる「ドッキリ」で陰口を言うように仕向けてそれを本人に聞かせる企画などに意見が寄せられました。

2022年6月にBPOに寄せられた意見は1,705件で、先月から550件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール78%、電話20%、郵便・FAX 各1%。
男女別は男性45%、女性18%で、世代別では40歳代28%、50歳代21%、30歳代20%、60歳以上13%、20歳代11%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、6月の送付件数は675件、57事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から26件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

参院選を前に選挙報道のあり方についての意見が目立ったほか、陰口を引き出して本人に聞かせる、出演者の私物を本人に無断で「視聴者プレゼント」にするといったバラエティー番組の企画などに意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は51件、CMについては13件でした。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は84件で、前月から35件減少しました。
今月は「表現・演出」が24件、「低俗、モラルに反する」が11件、「いじめ・虐待」も11件で、「言葉」が5件、と続きました。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 参院選の目立った特番がなく、有権者が投票先を選択する上で必要な情報が、投票日より前に十分に報道されているとは思えない。各局、ゴールデンタイムに各党の政策の違い、与党の公約の達成状況などを伝える特番を放送してほしい。

  • 投票日前はさほど選挙を取り上げていない。放送業界が投票率を上げる努力をしないのは役割放棄ではないのか。放送業界の努力に期待している。

  • 党首討論で特定の政党の発言が「テーマから逸脱している」として司会者に遮られた。まだ到底「逸脱している」とは思えない段階だった。暴走を止めるために仕方がなかったとしても判断が早すぎると感じた。

  • 党首討論で司会者が党首の発言を制止していた。発言を終了させる権利はどこからきているのだろうか。

  • ネットの「底辺の仕事ランキング」という記事に批判が殺到し、その記事が削除された騒動を取り上げていた。信頼性のはっきりしない記事に基づいて取材、放送すること自体が職業差別を助長することになる。そのことを分かっていて取り上げたのであれば人の道に外れているし、分からずに取り上げたのなら能力不足。

  • 交通トラブルに起因する暴行事件の映像について。「被害者」とされる男性が明らかに挑発していて、「加害者」が悪いとは思えなかった。挑発した「被害者」の顔は隠されていたが「加害者」はそのままで名前も放送され納得がいかなかった。

  • 朝の情報番組で前日の地震について伝えた際、取材中に緊急地震速報の警報音が鳴っている場面を2度も放送した。テロップでは「昨日の速報音」と表示されたようだが、私は出勤準備をしていたので画面は見ておらず、大変驚いた。追い討ちをかけるように2度目が流され、生きた心地がしなかった。命の危険を知らせる音をこんなにポンポンと流すというのはいかがなものか。わざわざこの部分を流す必要はあったのか。

  • 猛暑、電力ひっ迫で日本中が節電に腐心しているが、そのニュースを伝える出演者はきちんとスーツを着て汗もかいていない。どれほどスタジオの冷房を効かせているのか。ネクタイ姿で「節電を」と言っても視聴者には響かない。冷房を弱め、半袖シャツ姿でニュースを読んでも礼儀に反することはない。考え方を改めるべきだ。

  • スーパーの節電を伝えるリポーターがタンクトップ姿だった。店の紹介には失礼でふさわしくない。暑くてももう少しきちんとした服装をすべきだ。

【番組全般・その他】

  • 国会議員のいわゆる「パパ活」疑惑を取り上げた際、それを楽しいこと、良いことと若者に思わせかねない部分があった。実際には性被害を受ける女性も多い。推奨される行為ではないということも強調すべきではないだろうか。

  • 情報番組中、「ランドセルが重い」という話題でMCが「タブレット端末があるのになぜ教科書を別に持たないといけないのか。今は書籍や漫画もタブレットで読めるのに遅れている」と発言した。学習端末によるいじめが報告され、私の子供が通う中学校の保護者の間にも心配する声がある。視力、学力が紙ベースの時より下がったという報告もある。ネットの無料漫画も年齢制限がないなど心配。自宅待機もなくなり学習端末を持つメリットが感じられない。番組としてもう少し思慮深い発言が聞きたかった。

  • 摂食障害を経験した元アスリートが、医師に入院と競技生活の休止を勧められたが、実家暮らしのまま、競技も続けながら病気を克服したと語っていた。苦しんでいる人たちの役に立ちたいという気持ちは素晴らしいが、この部分は残念。命に関わることであり、番組は「危険なので皆さんはまねをしないでください」と付け加えるべきだったと思う。

  • 芸能人の闘病体験の再現ドラマ。医師から「股関節に負担をかけないよう杖を使って」と指示された芸能人が、妻を心配させまいと「杖を使うがカッコイイものにする」と伝える。妻は「杖が『かっこいい』なんてダサい。病気を受け入れている感がある」。芸能人本人はこれを「励まし」と受け止めて杖を使わなかったというが、医師の指示に反する行動であり、また病気を受け入れて戦っておられる方々や杖を使用する方々に対して大変失礼。

  • 肥満の子ども2人とその父親が大量の食材を買い、調理して食べる様子を紹介するシリーズ。朝食にコンビニサイズの4倍だという巨大おにぎりとバナナ6本(1人分)を食べて「爆睡」していた。子どもたちが糖尿病になってないか心配になった。こうした様子をスタジオの芸能人が笑いながら見ている。いいのだろうか。

  • いわゆる「ドッキリ」で、タ―ゲットのタレント数人が囲んでいるテーブルから突然、天板を突き破って仕掛け人が飛び出し、ターゲットたちがいすから転がり落ちていた。1人は心配になるほど腰を強打していた。所属事務所が事前に了承していたとしても、実際の反応までは予測できない。以前にも同様の場面を目にしたことがあり、問題が多いと感じた。

  • 芸人数人に犬の着ぐるみを着せて「大型犬コンテスト」。MCが「吠えまねでカラオケ」「お題のことばを吠え声で」など課題を指示して採点、罰ゲームは「尻の嗅ぎ合い」や「ドッグラン」。その態度にも何かしら難癖をつけてさらなる罰ゲームを課し、笑いをとろうとしていた。全員が合意の上での演出とは推察されるが、それでもなお学校のいじめの風景を強く連想させる。いじめを助長しかねないと思う。以前から続くシリーズだが、今回はさすがに笑って見られなかった。

  • MCであるベテラン芸人が、ゲストでVTRを見て感想を述べる役割のお笑い芸人2人の顔に、番組冒頭で多量の墨汁をかけ、2人は汚れた顔のまま2時間出演した。かけられる側もあらかじめ承知しているとは思われるが、子どもが見た場合は誤解し、いじめを助長すると思う。また、人に痛みや不快感、驚きなどを与え、それを嘲笑する演出は、仮に出演者の同意があるとしても不快に感じる。

  • いわゆる「ドッキリ」。他人をだましてまで陰口を引き出して本人に聞かせ、それを面白いと思って放送する感覚はおかしいと思う。とても不快だった。

  • 陰口を本人に聞かせる企画で、仕掛け人役が中座した後の陰口は聞いていられないほどひどかった。仕掛け人役がふびんでとても悲しかった。人の心をどう考えているのだろうか。

  • 陰口を本人に聞かせる企画は出演者たちの今後の関係性にも影響するように見え、一ファンとして心配。

  • 「自分が二度見したことは」と質問された出演者が「たぶん、路上生活を始めた初日の人」と答え、その様子を滑稽なものとして笑いながら紹介していた。路上生活者をあざ笑うなどありえない。ほかの出演者やスタッフも笑っていた。この編集を許し放送したテレビ局の人権感覚を疑う。

  • 出演芸能人の私物を自宅から勝手に持ち出して本人の承諾なく「視聴者プレゼント」。本気で嫌がっているように見える。そのように演じているだけだとしても非常に不快だ。司会者が「マネージャーさんに協力してもらいました」と説明していたが、マネージャーが盗んだということなのか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 歌手や歌のうまい芸能人が、曲のサビ部分を歌って、1音でもミスすると失格、それを10曲連続で成功すると100万円もらえる番組で、司会者らが歌っている人をバカにする発言や暴言ばかりで、ほんとに耳障り、不快だ。そのひどい発言を笑い、全員で演者を攻撃ばかりしている様子はいじめとしか受け取れない。子ども達が真似し、いじめを助長する。
  • オムニバスドラマの2話目で、銀座の金持ちの頭に網をかぶせて捕獲する場面がある。人間の金持ちを家畜のように飼う内容で、道徳・人権に反していて差別的だ。人身売買を促進する内容で見ていて非常に不快だった。子ども達にも悪影響を及ぼすと思う。

【低俗、モラルに反する】

  • バラエティー番組の「2時間スペシャル」で、外来種を美味しくいただくとして、沖縄のタイワンハブを探すため、廃墟のような空き家の中に勝手に入りヘビを探していた。家主に確認したとのテロップ記載はない。子どもが真似したら困るし、不法侵入が疑われて不快な内容だった。
  • 大型犬コンテストと称して、芸人5人ほどに犬のような模様のタイツを着せ、犬の吠え真似でクイズに答えさせ、その解答が気に入らないと、罰ゲームとして懸命に遠吠えさせたり、犬の恰好で必死に走らせたりしていた。実際は、仲間内の芸人が合意のもと、やっていると推察されるが、それでも学生のいじめの風景を強く連想させる。いじめを助長しかねないと考える。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • お笑いタレントが、子どもに走り方を指導し、最後には、そのタレントを落とし穴に落として笑いにするドッキリがあった。子どもに演技させてまで、指導を踏みにじる場面を笑いにしたことと、それを見た子どもが、指導をあざ笑うことが面白いと受け取ることが、心配だ。

【「言葉」に関する意見】

  • 天気予報のコーナーで、女性キャスターが気象予報士と楽しそうに父の日について喋っていたが、親がいない子どももいる。気遣いがなさすぎてお手本になっていない。赤ちゃんポストを知らないキャスターなのか、そんなわけない。ニュース番組でそんなことをいうのは、いかがなものか。

第247回 放送と青少年に関する委員会

第247回-2022年6月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会を開催…など

6月28日、青少年委員会が4月に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について、加盟各社との意見交換会をオンライン併用で開催しました。
意見交換会終了後に第247回青少年委員会を開き、8人の委員全員が出席しました。
視聴者からの意見(5月後半から6月前半)では、マナー講師が番組スタッフにテーブルマナーを厳しく指導する内容のバラエティー番組や、新型コロナのワクチン接種を連想させる設定の子ども向け特撮ドラマなどに多くの視聴者意見が寄せられました。
中高生モニターの6月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターからの報告について議論しました。
次回は、7月26日(火)に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年6月28日(火)午後4時00分~午後7時00分
場所
千代田放送会館ホール
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会

2022年6月28日、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解をテーマに、青少年委員会とBPO加盟各社との意見交換会を開催しました。バラエティー番組の制作が多い在京・在阪の放送局およびNHKには千代田放送会館に来場いただき、全国の加盟社にはオンラインで配信しました。
委員会からは委員全員が出席し、各委員の紹介のあと、今回の『見解』の趣旨や、見解を出すに至った経緯などを榊原委員長が説明しました。
そして、事前に各局から受けた質問に委員がそれぞれの考えを述べたのに続き、会場の参加者と直接質疑応答を行い、およそ1時間半にわたって意見交換をしました。 
青少年委員会の基本的な立場や考え方についても、あらためて理解を深めてもらう機会になりました。

視聴者からの意見について

5月後半から6月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
女性マナー講師がスパルタ式にテーブルマナーを番組スタッフに指導したクイズ形式のバラエティー番組の内容に対し、「弱いものに対する高圧的な態度は不快だ」といった意見が寄せられました。
委員からは「同じ文脈の中で『今度はよくできました』とほめてもいるので問題はない」との意見がありました。
子ども向けの人気特撮ヒーロードラマで新型コロナワクチン接種の危険性を揶揄したような内容に対し、「現在の(政府の)ワクチン政策に反対する考えや、ワクチンに対する恐怖を子どもに植え付ける」などの意見が寄せられました。
妻の機嫌を損ねないような気配りを語り合うトーク番組で、脳科学者の「みなさん(夫)は寄生虫」という発言に対し、「夫への侮辱・差別だ」「妻の要求は全て正しく、夫に対してのモラハラ・パワハラは笑いごととして看過されるべきと勘違いする危険性がある」などの意見が寄せられました。
歌のうまいタレントに音を外さずにカラオケを歌いきったら100万円ブレゼントという企画で、MCのお笑い芸人が挑戦者に暴言を浴びせ続ける内容に対して、「いじめを助長する」「暴言をヒートアップさせ、大変不快だ」との意見がありました。
速く走れない小学生にお笑いタレントが長期ロケで秘訣を伝授するというニセ密着番組のフィナーレで、頑張った小学生に走り寄るタレントを落とし穴に落とすドッキリの内容に対して、「人の善意を弄び過ぎ」「小学生をだます側に起用するのは不快だ」との意見が寄せられました。
委員からは、「子どもにだます役割を負わせるという点では非常に後味の悪い番組」「子役の子たちならば許容範囲ではないか」との意見が出されました。
その他は特に議論もなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

6月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」で、モニターからは合わせて24番組への報告がありました。
このうちトークやクイズを中心とした番組には「自分自身を見つめ直すきっかけになっている」「人間力を高めることができる」などの感想が届きました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢についてもっと放送してほしいという声などが寄せられています。

◆モニター報告より◆

  • 【最近見たバラエティー番組について】

    • 『人間観察バラエティモニタリング』(TBSテレビ)
      一般人をターゲットにしているため、「一般的な考え方」「一般的な行範囲」などが共感できて楽しく、家族全員が夕食を食べながら感情移入する良い機会になると思う。個性豊かなレギュラーのみなさんが、感想や意見を面白おかしく次々とテンポよく述べていく様子は見ていて飽きない。ときには考えさせられることもあり、いろいろな面で自分と重ねて考える機会になる良い番組だ。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ)
      笑えるような話から、あまり考えてこなかったけど案外深い話までさまざまなジャンルの話を聞くことができます。ドッキリ企画やクイズ番組など、企画があらかじめ用意されているバラエティー番組ももちろん面白いですが、誰が話すかを決める酒瓶ルーレットと円卓だけで笑いを起こさせるというのは、やはり芸人さんの腕だなと毎回感じています。このようなトークバラエティーは今のテレビにあまりないように感じます。この番組は「唯一無二だから見たくなる」そんな力があるのではないでしょうか?番組で気になったトークテーマは、友達や家族にも話して意見を聞くようにして2段階で楽しんでいます。 (お酒を飲まない高校生も視聴していることを伝えたい)(高校2・女子・千葉)

    • 『しゃべくり007』(日本テレビ)
      この番組ではドッキリを含むロケなどはほとんど行われず、しゃべくりメンバーのみなさんとゲストの方の純粋なトークや即興コントなどで僕たち視聴者を笑わせてくれます。痛みを伴っているかもしれない行動は、ときおり行われるジャングルパニックと呼ばれるものがありますが、あれはお互いの信頼のもとで成り立っているように思うので、視聴者としてまったく不快な気持ちにはなりません。(高校3年・男子・東京)

    • 『THE グレートアンサー』(毎日放送)
      冒頭の「テレビ画面にかじりついて必死に問題を解く必要はありません!」というセリフに衝撃を受けました。問題を解いている方々の思考法を見ているだけで、気がつくと賢くなったような気持ちになりました。どの問題も観察力や、目の前のことだけでなく周りに気配りができているかをみるもので、真のトップは勉強だけではないのだなあと思いました。次はぜひゴールデン帯で放送していただきたいです。ただのクイズ番組ではなく、人間力を高めることができるのも良いポイントだと思いました。(中学3年・女子・千葉)

    • 『キョコロヒー』(テレビ朝日)
      この番組のように出演者が毎回あまり変わらないトークバラエティーは、コーナーも含めてあまり代わり映えがないように思えるかもしれません。しかし、そのぶん毎回安定した面白さがあり、視聴者としても安心感があるなと思います。たくさんの方が出ている番組もいいのですが、この番組のようにゆるく、リラックスして見られる番組に出会えて本当にうれしく思います。(中学2年・女子・東京)

    • 『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ)
      キー局や在阪局にできないような、いい意味でのB級感や手づくり感が出ていてとてもいいなと思いました。ほかの地方局が制作した番組もキー局とはまったく違う味を出しているので、もっとローカル番組を見たい!と思い、地方局間でもっと柔軟に番組を融通しあったりできたらいいのにと思いました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
      お祭りに芸人さんが参加する企画では一緒にその土地の情報をPRしていて、街を知るきっかけになっていいと思いました。祭りの定義などを改めながら企画のノリなどをそのまま残していて、昔から見ていたひとも楽しめると思います。(中学1年・男子・山形)

    • 『マツコの知らない世界』(TBSテレビ)
      「自衛隊メシ」についての特集番組は何度も見たことがありますが、この番組のように陸・海・空それぞれから給養員の方をゲストに呼ぶという企画は見たことがありませんでした。3人の料理隊員の方が一堂に会することで、それぞれの特色が明確に分かり、とても面白かったです。空自の料理についてお話してくださった方が「日本一元気な、ご飯をいっぱい食べてくれる人にご飯を作りたい」という理由で給養員になったという言葉にはとても感動しました。「やりがい」をいちばん大切にして仕事を選ぶという姿勢を、将来進む道や仕事を決めるときに思い出したいです。(高校2年・女子・東京)

    • 『有吉ぃぃeeeee!』(テレビ東京)
      毎回気になったゲームを取り上げてくれ家族と楽しく見ています。「負けた人に罰ゲーム」などということがないのでいつも安心して見られます。食についても毎回紹介してくれるのでご飯を食べている時の会話がとても面白いです。(中学2年・女子・山形)

    • 『100カメ』(NHK)
      大河ドラマの制作現場に密着していた。戦いのシーンは主役の武将を見ることが多いですが、エキストラや動物の撮影と演出にもこだわっていて、ときには別撮りの映像を使うことで映像の効率とクオリティを上げていることが分かりました。作品を見るだけでは知ることができない裏方の努力が見られる部分もこの番組の醍醐味です。(高校3年・男子・千葉)

    • 『むっちゃリサーチ!関西リアルコスパ』(毎日放送)
      商品の値段だけではなくほかの要素も加えた“コスパ”から紹介しているところに独自性が出ていて面白かったです。番組内のコーナーを明確に分けていたことで情報が錯そうせず、変に間延びしている感覚がなくて見やすかったです。すでにある商品データだけを使って計算するのではなく、番組が独自に実験しているのも面白かったです。ランキングが絡む番組の多くは、順位の結果がコーナーの終盤に発表されると思いますが、それが見ていてストレスが溜まる原因になっているのではないかと考えます。もしランキングの結果をコーナーの初めのほうで発表した場合、今までのようなランキングの結果がいつ発表されるかを注意し続ける見方から、ランキングの結果を知ってリラックスしたうえで商品の詳細な情報に耳を傾けられるような見方に変わるのではないかと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 【自由記述】

    • ここ2、3年の動物系バラエティー番組のほとんどがインターネットで話題になった短い動画を引用しているのが気になる。コロナウイルスの流行初期はそのような形式の番組が増えたことにも違和感を覚えなかったが、規制緩和が進むいま、このようなジャンルの番組はもとの形に戻っていく必要があると考える。動物の面白い動画や人気の動画はスマートフォン等で手軽に閲覧でき、テレビという媒体を通すメリットがないからである。テレビ局の強味を生かし、高価な資料映像の放送や一般人の立ち入りのできない場所の取材などを行なってほしい。(高校3年・女子・東京)

    • 最近あまりウクライナのことが言われなくなりましたが、今どういう状況なのかを知りたいです。(中学2年・女子・山口)

    • ロシアのウクライナ侵攻から3か月以上経っていますが、最近はこれについてのニュースが少ないように感じます。テレビで見ないと、政治関連のニュースはあまり情報が入ってこないので、定期的に報道していただきたいです。(中学2年・女子・山形)

    • 最近、情報番組等で出演者がコメントする際、批判がないようにと慎重に言葉を選び、誰でも思うようなコメントは多いです。同じような意見ばかりだと、人は同じような考えになってしまいます。このようではメディアとしての意義が失われてしまいます。より多くの意見を多くの人に知ってもらうのがメディアなのではないか、と家族と話をしました。(中学2年・男子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ロッチと子羊』(NHK Eテレ)
      面白くて30分一気に見終わりました。登場した哲学者の著書や解説書などの紹介があると、興味を持った人がより学びやすくなるのではと思います。(高校1年・男子・滋賀)

    • 『激レア動物タイムズ』(テレビ東京)
      このような動物を扱う番組はいろいろあると思うが、空港探知犬など社会において動物が重要な役割をはたしていると気づかされた。こうした番組は、動物の殺処分などへの意識を啓発するという意味でも価値があると思う。(高校3年・男子・東京)

◆委員のコメント◆

  • 【バラエティー番組の感想について】

    • トーク番組での話題について地方在住の観点から感想があった。テレビは依然、とくに青少年にとって世界とつながる重要な窓口になっていて、自分の住んでいる地域の価値について考え直す契機にもなっているのだなと思った。

    • 人気が高まっているeスポーツやゲーム番組の青少年の見方がうかがえた。一時期は地上波から消えたゲーム番組だが、ネットのゲーム実況動画との差別化を図りながら、いまのテレビバラエティーらしい仕上がりになっているという印象を受けた。

    • ランキングの結果を初めのほうで発表してもいいのではという意見があった。「ランキングはCMの後で」という考えで固まっている制作者が“そうかもね”と思うような、そもそも的な感想だった。

    • 「世界の果てまでイッテQ!」についての感想は、番組の新しい模索が若い視聴者に受け入れられているのだなと思えるコメントだった。祭り企画を立て直した番組制作者の皆さんに、個人的には敬意を表したいと思う。

  • 【自由記述について】

    • 海外の衝撃映像を紹介する番組について、家族の中でも好みが分かれるという感想があった。とても鋭い分析で、動画投稿サイトにあるものをテレビにも求めるのか、それともネットにはないものをテレビに求めるかの違いなのかと思う。

    • ネットで話題になった動画を引用する手法に対し、それでいいのかという意見があった一方、いま流行っているいわゆるバズりものの特集を評価する声もあり、とても対照的な受け止めだと思った。

今後の予定について

地方局との意見交換会について、次回以降に対象地域と日程を具体的に詰めていくことになりました。

以上