第58回 放送倫理検証委員会

第58回 – 2012年3月

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

第58回放送倫理検証委員会は3月9日に開催された。
NHK松山放送局の県域番組「おはようえひめ」で2月16日、ニュースと関係のない不適切な架空字幕が放送された件について討議を行った。字幕作成の練習で使ったものが削除されずに電子台本に残っていたための事故であったが、NHKの経緯報告では、技術的仕組みや担当者の業務範囲などについて分からない点があるため継続討議となった。

議事の詳細

日時
2012年 3月9日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

2月16日、NHK松山放送局の朝のニュース番組「おはようえひめ」で、「窃盗の疑い 愛媛大学教授逮捕」という架空の字幕が2秒間放送され、その訂正とお詫びが翌日朝までに3度放送された事案。
NHKから提出された経緯報告によれば、深夜に放送用の装置を使って新人訓練を行った際に作成した字幕が、消去されずに送出されたもの。
訓練は、タイトルのほか、漢字を誤記しやすい容疑者の氏名など架空の字幕を5枚作成、送出用の電子台本に登録したのち消去をかけたが、そのうちの1枚が消去されずに残ったことが原因という。この字幕は放送直前のチェックでは発見できず、また放送中にも緊急に外す措置をとったがうまくいかなかったという。
不適切な架空字幕については、東海テレビ『ぴーかんテレビ』問題をうけて昨年9月に検証委員会から「提言」を全加盟社に発信し再発防止を呼びかけていた。それにもかかわらず発生した事故であることから、字幕の作成理由や、事故に至った原因等について、経緯報告書に基づいて議論した。その結果、原因や事後対応になお分かりにくい点があるのでNHKに再度説明を求めて、次回の委員会で判断することになった。

【委員の主な意見】

  • 最初の訂正では「ニュースと全く関係がない字幕が表示されました」 としか言わなかった。これでは名前を出された大学は事実かどうか不安になる。
  • 字幕習熟訓練のルール、デスクとスタッフの業務範囲が分からない
  • あれだけピーカンテレビで問題になったのに、もう少し事実関係を明らかにしてほしい。 提言が活かされていない。
  • この人たちは真面目に取り組み、ふざけていたわけではないようだが、消去を忘れたのは問題だ。
  • やはり研修に不備がある。どのように再発防止につなげるか。
  • 番組前にチェックした際に発見できなかった字幕が、なぜ本番で表示されたのか。
  • 人は必ず過ちを犯すから、システムはそれを前提に組み立てて運用する必要がある。誰かが間違ったときにも実害が生じない仕組みを考え、また誤りを迅速に回復する訓練をしておかなければいけない。

以上

第57回 放送倫理検証委員会

第57回 – 2012年2月

「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」についての各局対応報告書のまとめ

第57回放送倫理検証委員会は2月10日に開催された。
2011年9月22日に公表した「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、本年1月末までに11局から対応報告書が寄せられた。事務局は、これを取りまとめて委員会に説明した。

議事の詳細

日時
2012年2月10日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員

「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」についての各局対応報告書のまとめ

「怪しいお米」「「セシウムさん」など不適切なテロップが放送された東海テレビの『ぴーかんテレビ』問題に関し委員会は、当該局をはじめとしてBPO加盟全放送局に対し、2011年9月22日、BPO規約第23条に基づき4項目にわたる初の『提言』を行った。
その内容は、

  • 全社的なレベルで、あるいは部署や制作現場ごとに、放送の使命について話し合う機会を設ける
  • 番組の制作に必要な人員と時間が確保されているか、とくに生放送番組で不測の事態に対応できるゆとりが確保されているかについての再点検
  • スタッフの間で忌憚のない意見交換や問題提起ができる職場環境の整備
  • 制作現場スタッフの研修が、所属やフリーかを問わず、十分行き渡り、納得できる方法で実施されているかの再検討と、改善及び実りある研修の継続

である。

これを受けて、各局では様々な形で点検、検討が行われ、このうち、きっかけとなった東海テレビをはじめ、在京テレビキー全局、在阪準キー2局のほか、北海道、長野の地方局など、これまでに合わせて11局から『提言』への対応や取り組み状況が委員会に報告された。
それによると、東海テレビが自ら放送した「検証番組」をHPにリンクしたことで、各社とも不適切テロップが放送されるに至った経緯を知ることが出来たこともあり、この検証番組や、委員会の『提言』をもとに、全社的レベル、あるいは部署ごと、番組ごとに討論を重ねたことが報告された。
また、「検証番組」や『提言』について外部スタッフも含めて、制作現場をはじめ各セクションからアンケートをとり、その一部を報告書の中に書き込んだり、現場の感想や意見を取りまとめて報告書に添付した放送局が多かった。
そして、不適切テロップが作成されること自体、信じ難いことだとしつつも、それが放送されるに至った過程を見た場合、今回の事案が他局で起きた稀有な事例として片付けられない、と捉えている局がほとんどであり、「他山の石」として制作・放送の各段階において再点検を行うとともに、スタッフへの周知、研修を行っている。

1. 放送の使命について

各放送局には、すでに各部局、番組単位のほか社内横断的な会議が定期的に設けられ、放送に関わる諸問題を話し合い、情報の共有化を図っているが、放送の使命、放送のあり方について、これまで以上にこうした会議で論議を深める方向性を打ち出している局が多い。
一方、東海テレビの事案がテロップの作成に起因したこともあり、日常、放送で多発する誤字・誤読が視聴者の信頼を失うきっかけにつながるとして、「ミス撲滅」の強化を図り、実際に発生した事例を集約して、なぜそうしたことが起きたのか、分析を行っている局も複数あった。
そうした過程を通じて、ミスの発生には、制作に携わるスタッフ個人によるものと、組織の問題が混在することを再確認した、とある局は述べている。

2. ゆとりの確保

『提言』後、各放送局とも制作に必要な人員、時間、予算などの環境整備について洗い出しを行っているが、その点検を通じて、不安の声があった一部現場について、さらに実情を精査し、必要に応じて具体策を講じるとした局や、実際に生情報番組について増員した局もある。
一方、何をもって「ゆとり」と言うかについて戸惑いがありつつも、単に人数を確保するだけでなく、番組への参加意識・スキル・モラルなどスタッフの質の向上という視点が必要であり、スタッフ同士が助け合える職場環境が、結果的に二重、三重のチェックを生み出し、それがゆとりにつながるのではないかと考えている現場の声を寄せた局もある。

忌憚なく意見交換できる環境

ほとんどの局では、職場のコミュニケーションについて、上下関係、社員か外部スタッフかにかかわらず、何でも言い合える風土作りに力を注いでいる。
しかし、まだ風通しがよくないと感じているスタッフの声を寄せた局もあった。
そして、いかにスタッフが有機的にまとまるかが問題で、「あれ大丈夫?」の一言が言える心的余裕が必要だという現場の声もあった。
こうしたコミュニケーションを円滑にした上で、細かなことであっても現場で起きたヒヤリ、ハッとしたことを日々の反省会で共有したり、特定の部署のミスとしてではなく全部署の参考とするべく「ヒヤリ・ハット集」の作成を行っている局もある。

4. 実りある研修

各社が行っている研修会や勉強会はさまざまな形で行われ、コンプライアンス関係部署が説明するものや、テーマによって外部講師を招くものまで、その頻度は各局とも多い。
出来るだけ多くの社員や外部スタッフに参加して欲しいとの思いから、規模が大きくなり、結果として講義的側面もでてくる研修会もあるが、一方で、少人数による勉強会を組み入れ、相乗効果を生むよう試みている局が多い。
また、現場で実際に直面した課題やトラブルについて、どうすればよかったのかなど制作スタッフ同士のディスカッション形式による勉強会を実施し、その際には法務部や著作権部など他部署からも参加して、違う立場からの意見を取り入れることに力を入れている局もある。

今回の『提言』を受けて行った点検の過程そのものが、制作現場にとって意義深いものであったとした局もあり、自分が大好きな番組を守る、自分が大好きな番組が評価されるという観点が、すべてのスタートであるというスタッフの声を紹介した局もあった。

また、この東海テレビの事案や『提言』については「対応報告書」を提出した11局以外の放送局でも、各社番組審議会で取り上げられ、放送局側から「他山の石」として放送倫理の確立に全社を挙げて取り組んでいる状況の説明がおこなわれている。

以上

第56回 放送倫理検証委員会

第56回 – 2012年1月

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

テレビ東京『ありえへん∞世界』の対応報告書について ……など

第56回放送倫理検証委員会は1月13日に開催された。
まず、前回の委員会で継続討議となった、原発事故による放射能の食事に与える影響を検証したNHKの情報番組『あさイチ』については、主に12月15日の放送の内容を元に検討したが、放送倫理上の問題はなかったとの結論に達した。
委員会が昨年9月末に出したテレビ東京『ありえへん∞世界』に関する「意見」について、当該局から提出された対応報告書を検討、委員会はこれを了承し、公表することにした。
放送局がBPOの活動についてどのように受け止めているかなどについて、在京、在阪の民放テレビ局およびNHK併せて12局とAM民放ラジオ3局を対象に聞き取り調査を行った結果を、事務局から報告した。
また、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、新たに5局から報告があった旨、対応報告書を元に事務局から説明を行った。
なお、あと数局から提出の意思表示があることから、1月末に対応報告書の取り纏めをすることになった。

議事の詳細

日時
2012年 1月13日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、水島委員

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

10月17日にNHKの情報番組『あさイチ』で「放射能大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査」と題して、全国7家族を対象に、一週間の食事に含まれる放射性物質の量を調査、分析した結果を放送した。
放送後、視聴者から放送されたデータについて誤りを指摘され、当該局は、11月24日の同番組の中でその時点までに判明した間違いについて謝罪、訂正した。更に12月15日には同番組でほぼ同量の時間を割いて、間違いの原因、わかりにくかった部分の説明、更に新たな情報の放送を行った。
今回、委員会は3回の放送の視聴と当該局から提出された複数の報告をもとにし、特に12月15日の放送を中心にして討議を行い、説明が足りないところはあったとしても、放送倫理の問題ではないとの結論に達し、審議として取り上げないことになった。

【委員の主な意見】

  • ずっとさかのぼっていけば、測定器の調整不足でグラフが ずれているのにその実験をやったことそのものが問われるかもしれないが、少なくとも12月の放送では11月の反省を踏まえて、11月に感じた疑問は解消されているので、これで良かったのではないかと思う。
  • スペクトルのずれという間違いがあったことは事実 であり、そ れが分からなかった ことが正当化されてよいのかどうかが問題。
  • 当該局に責任を問えるかという問題だが、それは無いだろう。
  • 科学番組をたくさん作ってきた人間として、科学的に厳密な番組というのはものすごく難しい。受け手の許容量を遥かに超える 水準で説明しないと厳密な 説明はできない。科学番組は、少なくとも放送にのせうる水準 にするためには、誰かがどこかで丸めなければ出来ない。この番組は問題ないと思う。
  • 説明が足りないところがあったとしても、これは放送倫理の問題ではないように思う。

テレビ東京『ありえへん∞世界』の対応報告書について

テレビ東京は、『ありえへん∞世界』に関する意見書に対して、社内における再発防止策を報告書にまとめ、12月22日に委員会に提出した。委員会はテレビ東京が経営面での制作体制の点検を含む様々な角度からの見直しが必要としたこと、さらに、本事案の演出が過失でなく故意であると意見書で指摘されたことを重く受け止めている点を評価して、この報告書を了承することにした。(対応報告はこちらに掲載)

その他

■ 在京・在阪局への聞き取り調査

BPOでは、昨年9月から10月にかけて、放送局がBPOの活動についてどのように受け止めているかなどについて、在京、在阪の民放テレビ局およびNHK併せて12局とAM民放ラジオ3局を対象に聞き取り調査を行った。
この調査は、各委員会運営の参考に資することを目的としたもので、各委員会の調査役らによるプロジェクトチームが、各局のBPO連絡責任者や放送現場の責任者に直接面談する形がとられた。その結果がまとまり、この日の委員会に報告された。

調査結果は、

  • BPOに対して持つイメージや各委員会の意見書の周知方法など、BPOの活動全般に対する受け止めや対応
  • 公表する意見書をはじめとして各委員会への放送局からの意見、要望の2つに大別して、調査役からそれぞれ具体的に説明が行われた。
    これを受けて委員からは、さまざまな意見が出されたが、放送局側から出された要望に対しては、各委員会でそれぞれ対応できるものと、他委員会を含めてBPO全体として考えるものとがあり、今後も引き続いて議論を重ねることにした。

以上

第55回 放送倫理検証委員会

第55回 – 2012年12月

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

事前収録した出演者の映像を生中継であるかのように演出した日本テレビの音楽番組『ベストアーティスト2011』 ……など

第55回放送倫理検証委員会は12月9日に開催された。
まず、NHKの情報番組『あさイチ』が、原発事故による放射能の食事に与える影響を検証した企画を放送した際に、誤ったデータが使われたことについて討議を行った。結論を出す前に、NHKが12月15日に予定しているミスがなぜ起こったかを明らかにする放送を見る必要があるということで、継続討議となった。
日本テレビ『日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト2011』が3時間の生放送中に、2組のアーティストの演奏を生中継を装って挿入した問題についても討議を行った。生であるという付加価値に寄り掛かった、嘘がすぐにわかるような拙い演出手法ではあるが、当該局としては、今後視聴者の誤解を招かない別な手法を考え、導入すると表明しているので審議入りはしないこととした。
また、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、前回の2局に続いて、新たに3局からの対応が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2011年12月9日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

NHKの情報番組『あさイチ』で、10月17日、「放射能大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査」と題して全国7家族を対象に食事に含まれる放射性物質の量を1週間分調査、分析した結果を放送した。放送されたデータについて視聴者から誤りがあると指摘を受け、11月24日同番組の冒頭でこの時点までに判明した誤りについて謝罪、訂正する放送を行い、更に12月15日に、間違いが起きた原因について、改めて同番組の中で詳しく説明することを公表した。
委員会では10月と11月の両放送の視聴、NHKのホームページ、NHKから提出された経過報告をもとに討議を行った。議論の中では、11月の謝罪と訂正の放送が、当面判明した間違いを説明したものであり、NHK自体もより慎重な調査・分析が必要としていることから、12月15日の『あさイチ』の放送内容を検討するまで判断を留保した方が良いとの意見が大勢を占めた。
このため、委員会は12月15日の『あさイチ』での放送を視聴した後に議論を再開する事になった。

【委員の主な意見】

  • 11月24日の放送はとりあえずお詫びをということで終わっていると思う。12月15日の放送を見ないと判断がつかないところがある。
  • 検出限界についての説明があやふやになっている。この意味をきちんと説明して欲しい。
  • 誤りが事後に判明したのだとすると、倫理上の問題ではないのではないか。あらかじめ分かっていてやったとは考えにくい。
  • ホームページで原因は分析装置の不備といっているが、混乱を招く言い方ではないだろうか。

事前収録した出演者の映像を生中継であるかのように演出した日本テレビの音楽番組『ベストアーティスト2011』

11月30日に放送された日本テレビの『ベストアーティスト2011』は、午後7時から約3時間にわたり幕張メッセから生放送されたが、このうち2組のアーティストの映像が2週間前に収録されたものであったという事案。
放送では、生放送の会場から、司会者が別会場に呼びかける形をとり、収録の際もそれを受けるやり取りをしたもので、画面上にもパラボラアンテナのマークが表示されていた。放送後、視聴者から「てっきり生で歌っているのかと思った。騙された」という批判が相次いだ。当該局は、騙す意図はなく音楽番組としての臨場感、疾走感を出すための演出である旨の経緯報告を委員会に提出した。また、収録の際、観覧客に「口外しないよう求めた」と報じた一部記事に対し、そうした趣旨の説明はしていない、と述べている。
委員会では、演出の範囲、視聴者の許容度、実質的被害者の有無など様々な観点から論議が行われた。また、この番組の後で放送された他の放送局の音楽番組で、冒頭に収録部分があることを断った事例があったことも話題となった。
その結果、このような演出手法に問題がないとは言えないものの、視聴者の誤解を招かない新たな手法を考えたい、とする当該局の姿勢に期待し、審議入りはしないこととした。

【委員の主な意見】

  • 3時間生放送という謳い方がどうかだ。収録だと言われなきゃわからないし、いかにも生放送のような挨拶も交わしているので、姑息といえば姑息だ。
  • 生放送であることの付加価値を作り手が感じているから偽ったのだろう。
  • 生放送の臨場感を作るために、自然に乗っかるように収録映像を入れたもので、報道的な生の価値とエンターテイメント的な生の価値は別ではないか。
  • 収録であることがバレないはずはなく、騙す、騙されるということではなくて、サービス精神で下手を打ったということだ。
  • 会場の客のボルテージを下げないためという局の説明だが、これはある意味で会場の客をも騙している。あまり良い感じはしない。演出方法としてもセコい。
  • 生でないことが分かってしまう時代なのだから、そのことを考えて演出することが大事だ。
  • この様な演出手法で問題はない、と委員会が言っているようには捉えられたくない。
  • 当該局も別の新たな手法を考える、と言っているので、そこに期待を残したい。

福岡の各局と検証委員会との「意見交換会」開催

在福テレビ局とBPO検証委員会との意見交換会が、2011年12月6日、福岡放送の9階大会議室で開かれた。前年の大阪に続く2回目の開催である。RKB毎日放送、九州朝日放送、テレビ西日本、福岡放送、TVQ九州放送、NHK福岡放送局の6局を中心に、九州・沖縄地区からの参加局を含めて14局約90人が出席した。
委員会側からは、川端委員長をはじめ、小町谷・吉岡両委員長代行、香山・是枝・重松・服部・水島各委員のあわせて8人が参加した。この意見交換会は、放送局の取材・制作現場の人たちに、委員会の活動について理解と認識を深めてもらうとともに、放送局側からも委員会に対する疑問や要望などを、率直に語ってもらおうという趣旨に基づくもの。双方が本音の意見を交換できるようにという趣旨から、今回も非公開で行われた。意見交換のテーマとして、今回は2つの柱を設定した。

  • 2011年は、報道番組や情報バラエティーで、事実や情報の取り扱いの杜撰さを指摘する委員会決定が相次いだことについて、どう考えるか。
  • 東海テレビの「ぴーかんテレビ問題」を受けて、委員会がすべてのBPO加盟社を対象に公表した「提言」について、どう受け止めたか。

テーマ(1)については、情報の確認=裏を取ることに関連して、出席者のなかから「完全無農薬の野菜」と紹介する際に、実態は店頭の表示などを信用してそのまま伝えており、生産者まで溯っての裏取りには限界がある場合が多いなどの意見が出された。また、テーマ(2)をめぐっては、他山の石として放送現場の再点検を進めているという発言が目立ったが、たった一人の非常識な行為によって、放送界全体に問題があるように言われるのはおかしいという意見もあった。意見交換会は、予定の3時間を15分余りオーバーして午後5時前に終了し、会場を移して懇親会が行われた。懇親会には6局の社長・放送局長も全員参加し、委員を囲んでの歓談が続いた。各局から寄せられた出席者の声としては、「多くの委員から生の話が聞けたことはとても有意義。検証委員会が身近になった」「議論が盛り上がってきたなと思ったらもう終わりという感じで、もの足りなかった」「テーマをもっと絞り込んで、議論が噛みあうように工夫してほしい」などが多かった。
「8人もの委員が参加されたのだから、分科会のような方法も加味すれば、もっと充実した意見交換ができたと思う」との指摘も相当数あったので、次回への検討課題にしたいと考えている。

以上

第54回 放送倫理検証委員会

第54回 – 2011年11月

航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組

第54回放送倫理検証委員会は11月11日に開催された。
ある民放局のバラエティー番組で、航空便があるのに陸路を延々と旅をして、ヒマラヤ山麓の街を紹介したのは、秘境を強調するヤラセではないかという視聴者意見が寄せられた。討議の結果、演出の技法には何か釈然としない思いは残るが、放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。
9月22日に「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」を発表してから2度目の委員会になった。この間多くの局の番組審議会で取り上げられ、また民放連小委員会との意見交換会もあった。1ヵ月半の間に示されたNHK、民放各局の対応内容や考え方を事務局がまとめて全委員に報告した。

議事の詳細

日時
2011年11月11日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員

航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組

インドのヒマラヤ山麓に住むたったひとりの日本人女性を訪ねて、女性タレントがニューデリーから陸路をバスやジープを乗り継ぎ、テントに泊まる苦難の旅の末に、55時間かけて秘境に住む女性を探しあてるバラエティー番組。
ところが、女性が住む街とデリー空港の間は1時間余りの航空便で結ばれており、番組がそのことに言及していないのは、秘境を強調するためのヤラセではないかという視聴者からの意見が寄せられた。
最近の審議事案に「離島の実情」を不適正に伝えた番組があり、その中でも航空便の就航が言及されていなかったことから、この審議事案との比較検討も含めて議論が交わされた。その結果、演出の技法としては釈然としない思いも残るが、離島事案のように直接の被害者がいるわけではなく、制作手法として放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • 利用者の多い少ないは別にして、陸路のコースがあるわけだし、何でもかんでも最短距離を行かなくてはいうことではないだろう。情報バラエティー番組としてとくに問題はない。
  • この番組は、ヒマラヤ山麓に暮らす日本人女性の生活を紹介するというより、彼女を訪ねていく過程に主眼を置いて制作したと思う。そこにある程度の演出があってもいいのではないか。
  • 最近の審議事案の場合は、不適正な伝え方が目立ち、放送で誤解や被害を受けた人もいたが、この番組ではそういうことはなさそうだ。
  • 本来はモチベーションがないタレントに、ひとりの女性を探させようとするから、情報番組として成立させるため無理な苦労をさせることになる。日本人女性が陸路で行ったかどうかわからないのに、追体験、追体験と言っているのも、何かいやな感じがする。
  • 放送倫理に違反しているとは言わないが、現地までの定期航空便があることを種明かしする作り方があったのではないか。無理に隠さなくてもそれが、オチになって、面白かったのではないか。
  • 一妻多夫制は、現在は行われていないのに、今も存続しているような誤解を与えるという視聴者の指摘もあったが、文化・習俗としての影響が残っていると考えれば、さほどの問題ではないのではないか。

以上

第53回 放送倫理検証委員会

第53回 – 2011年10月

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見への対応報告書について

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』
毎日放送『イチハチ』情報バラエティー2番組3事案に関する意見への両局の対応報告書について ……など

第53回放送倫理検証委員会は10月14日に開催された。
まず、6月30日に通知・公表した「BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見」を受けて当該局から提出された対応報告書の検討を行った。委員会はこれを了承し、公表することにした。
7月6日に通知・公表した「情報バラエティー番組2番組3事案に関する意見」に応じて提出されたテレビ東京および毎日放送の対応報告書についても検討を行い、両局の対応策を了承し、公表することにした。
委員会は、9月22日、全加盟社に宛てて、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」を公表した。委員会が初めて行ったこの提言に対する放送業界の反応などについて、意見交換が行われた。
そして、9月27日に通知・公表したテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』の意見書についても議論が交わされた。

議事の詳細

日時
2011年10月14日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見への対応報告書について

BS11は、委員会の意見を受けて、どのような対応や取り組みを行なったかを報告書にまとめ、委員会に提出した。
新たに専任の番組適正検証委員を置いて、番組の公平性チェックを強化し、放送基準を遵守する旨の報告があり、委員会はこれを了承して公表することとした。(対応報告書はこちら)

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』
毎日放送『イチハチ』情報バラエティー2番組3事案に関する意見への両局の対応報告書について

テレビ東京および毎日放送は、委員会の意見を受けて、どのような対応や取り組みを行なったかを報告書にまとめ、それぞれ委員会に提出した。いずれも、意見書が指摘したインターネットを使ったリサーチ段階での留意点やバラバラの制作体制に起因する現場のコミュニュケーションギャップを埋めるための改善策などを打ち出している。
今回の意見書には、「若き制作者への手紙」が別冊として加えられたが、特徴的なことは、両局とも、意見書を受けて全社的規模で議論がなされ、その現場の声が報告書とともに「若き制作者への手紙」への「返信」という形で委員会に提出されたことである。その一部は報告書の中にも盛り込まれている。
現場での活発な議論は、自主・自律の観点から委員会が日頃より望んでいるものであり、こうした対応を高く評価し、両局からの報告を了承した。
当該局ではないものの、フジテレビも意見書を受けて、全社的に議論を重ね現場での受け止め方を文書にまとめて委員会に提出している。
また、両局の社内勉強会に参加した担当委員から感想が述べられた。

【担当委員の感想】

  • テレビ東京では、社外スタッフも含めて168名が参加したこともあって若干講義的な色彩とならざるを得なかったが、今回の意見書および「手紙」に対する関心の深さが示された。
  • 一方、毎日放送では大阪本社、東京支社のプロデューサー、ディレクターら30名ほどの参加であったが、それだけに全員が発言し、時にはスタッフ間同士での議論が白熱する場面もあって、充実した勉強会となった。

委員会では、放送局が様々な方法を模索して、現場クラスを含む真に実効性のある研修や勉強会を開くことを望む意見が多く出された。 (対応報告書はこちら)

東海テレビ『ぴーかんテレビ』問題に関する「提言」の公表について

9月22日に公表された「提言」では、全社的なレベルで放送の使命について話し合う機会を設けることや、生放送番組において不測の事態にも対応できるゆとりが確保されているかどうかを再点検することなど、4項目を挙げた。
委員会が初めて行ったこの提言は、単に東海テレビだけでなくBPO加盟全社に向けて出されたものであるため文書を各社に郵送したが、これを受けて各社がどういう取り組みを行うかを委員会として見守ることとした。(提言はこちら)

テレビ東京『ありえへん∞世界』に関する意見の通知・公表について

僻地紹介シリーズとして本年1月「南大東島」を取り上げた際、サトウキビ農家が沖縄本島に豪華な別荘を持ち、裕福な暮らしをしているなどと紹介した番組内容が事実とかけ離れ、住民の心情を害してしまったという事案。9月27日、当該局に対して委員会決定を通知し、記者会見を行った。
委員会では、公表当日のテレビニュースと報道された新聞記事をみたうえで意見交換が行われた。意見書にある「取材協力をしてくれた一般の人たちへの愛」について、委員から、取材対象者に誠心誠意向かいあうことにより、番組の向上のみならず、放送倫理違反のない放送が実現されるなどの指摘がなされた。 (決定文はこちら)

その他

■福岡の各局と検証委員会との「意見交換会」開催へ

昨年の大阪に続く2回目の意見交換会を、12月6日(火)に福岡で開催することを決めた。これは、委員会の活動について放送局の取材・制作現場の人たちに知ってもらうとともに、放送局側からも委員会に対する疑問や要望などを、率直に語ってもらおうという趣旨に基づくもの。在福のテレビ6局を中心に議論を進めるが、九州・沖縄の各局にも参加を呼びかける。

以上

第52回 放送倫理検証委員会

第52回 – 2011年9月

日本テレビ「ペットビジネス最前線」の対応報告書について

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』 ……など

第52回放送倫理検証委員会は9月9日に開催された。
まず、5月31日に通知・公表した日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見に対して当該局から提出された対応や取り組みについて報告書を検討した。委員会はこれを了承し、ホームページ等で公表することにした。 3回目の審議となったテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』は、担当委員から提出された意見書案について議論し、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。不適切な字幕テロップが放送された東海テレビの『ぴーかんテレビ』については、当該局から提出された検証報告書等をもとに、取り扱いについて議論した。その結果、委員会としては初めての「提言」を公表することにした。

議事の詳細

日時
2011年 9月 9日(金) 午後5時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、是枝委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ「ペットビジネス最前線」の対応報告書について

日本テレビは、「ペットビジネス最前線」報道に関する意見について、どのような対応や取り組みを行ったかを報告書にまとめ、8月29日に委員会に提出した。
委員会としては、日本テレビが、「バンキシャ虚偽証言放送」以降に取り組んできたコンプライアンスの推進策などが組織の隅々まで浸透していなかったと反省し、より踏み込んだ対応策を打ち出したことを評価して、この報告書を了承することにした。(対応報告はこちらに掲載)

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

僻地紹介シリーズの第2弾として「南大東島」を取り上げ、サトウキビ農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ、村から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。
担当委員から意見書案が提示され、それに基づいて検討を行った結果、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。
(委員会決定第13号はこちらから)

不適切な字幕テロップが放送された東海テレビ『ぴーかんテレビ』について

東海テレビの情報番組『ぴーかんテレビ』で、「怪しいお米」「汚染されたお米」「セシウムさん」と不適切な表示のなされた字幕テロップが23秒間放送されたという事案。
各委員には、事前に東海テレビの検証番組のDVDと検証報告書を配布し、また、メールによる意見交換を行った上で、議論した。
現象としては、単純な誤操作による放送事故ではあるが、不適切な字幕テロップの送出により放送が与えた影響は無視できないうえ、事故の背景にある制作現場の問題は、委員会の意見書がこれまでくり返し指摘してきたことであるから、BPO規約23条に基づく「提言」をとりまとめ、公表することにした。(提言はこちら)

【BPO規約】

  • 第23条
    放送倫理検証委員会は、第4条第1項第2号に定める事業を行うほか、必要に応じて構成員に対し、第3条に定める目的達成のため、放送番組や放送倫理のあり方についての提言を行う。
  • 第3条
    本機構は、放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とする。

【主な委員の意見】

  • 大騒ぎになっていることは核心ではないと思うが、非常に不適切なテロップが23秒間流れたのは事実だから、その原因と結果について委員会は何か言わなければならないのではないか。
  • BPOがなにもしなかった場合、「検証番組を放送したからもういいんだ」ということになり、それでこの営業拡大路線というものが追認されていく感じになる。
  • 何らかの過失で重大な誤った放送がなされた場合にも倫理違反なのかどうかを議論すべきだ。
  • 一つの倫理問題ととる場合、放送倫理という文脈で問えるのか、社会一般的な倫理問題として問うべきか。
  • 経営合理化の問題であって、倫理の問題というよりどうやって番組をちゃんと組み立てていくかの問題だと思う。
  • 事故の背景にある現場のゆとりのなさ、コミュニケーションの不在、研修が効果を上げていないことは、これまで委員会が指摘してきた共通の問題。この際、規約23条の提言が適切ではないか。

以上

第51回 放送倫理検証委員会

第51回 – 2011年7月

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見の通知・公表について

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』と毎日放送『イチハチ』の情報バラエティー2番組3事案に関する意見の通知・公表について ……など

第51回放送倫理検証委員会は7月8日に開催された。
6月30日に通知・公表が行われたBS11(日本BS放送)の『”自”論対論 参議院発』事案、および7月6日に通知・公表が行われたテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』と毎日放送『イチハチ』の情報バラエティー2番組3事案については、記者会見を報じたテレビニュースや新聞記事を見たうえで意見交換を行った。
前回審議入りしたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』僻地第3弾「南大東島」は、当該局への聞き取り調査の結果をもとに2回目の審議が行われた。その結果、「実態とかけ離れた誇張表現」に至る原因などの分析と問題点についての合意が得られたため、意見書の草案作りに着手することとなった。

議事の詳細

日時
2011年 7月 8日(火) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見の通知・公表について

2011年の1月から3月まで、11回にわたって放送されたBS11の政治討論番組『”自”論対論 参議院発』は、番組の司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されていて、政治的公平性に問題があるとされた。
委員会は6月30日、「この番組が放送倫理に違反する」と判断した意見を、当該局に対して通知し続いて記者発表を行った。委員会の席上では、記者会見での質疑応答などに関する報告が事務局からあり、続いて記者会見の模様を報じたテレビニュースや新聞記事を見たうえで、意見交換が行われた。

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』と毎日放送『イチハチ』の情報バラエティー2番組3事案に関する意見の通知・公表について

一括審議となっていた上記3事案は、いずれも取り上げた情報や事実の正確さを確認する努力を怠っていて、その扱い方が杜撰であったこと、また、そのうち2事案については、出演者が放送で取り上げた情報と密接な利害関係を有していた点で、公正さを欠くとして、「放送倫理違反」とする意見書を7月6日に当該2局に通知し、公表した。2日後の委員会では、これを扱ったテレビ各局の放送や新聞記事を検討したが、委員会の「意見」が正確に反映されていないニュースや記事があるとの指摘がなされた。
また今回、意見書の別冊として添えた「若き制作者への手紙」に対し、当該局のみならず各放送局の関心も深く、勉強会の開催が各局で予定、検討されていることが報告された。

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

僻地紹介シリーズの第3弾として『南大東島』を取り上げたが、多数の農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に豪華な別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ南大東村長から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。
審議2回目の今回は、番組制作者に対する聞き取り調査の結果が担当委員から提示され、それに基づいて議論が展開された。視聴者に誤った印象を与えてしまった原因はどこにあったか、笑いを取るための許される演出の範囲や、取材対象者への敬意の意義など多角的に意見交換が行われた。審議はほぼ終了し、次回9月の委員会で意見書をまとめることになった。

以上

第50回 放送倫理検証委員会

第50回 – 2011年6月

日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』 ……など

6月10日の放送倫理検証委員会は、2007年5月の発足から数えて、第50回の開催となった。 5月31日に通知・公表が行われた日本テレビの「ペットビジネス最前線」報道事案については、当日のテレビニュース(録画)や報道された新聞記事を見たうえで意見交換を行った。政治的公平性について審議してきたBS11の『”自”論対論 参議院発』については、前回の議論を踏まえた意見書の改訂案が担当委員から提示された。検討の結果、若干の修正を加えることで合意がえられたため、審議を終了し 速やかに通知・公表を行うことになった。新規事案として、テレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』が議題となった。僻地シリーズの一つとして沖縄県南大東村をとりあげ、島の多数のサトウキビ農家が年収1000万円を越える収入を上げて沖縄本島に別荘をもつような裕福な暮らしをしていると紹介、放送後に南大東村長から抗議を受け、「実態とかけ離れた表現」をしたことを認めて放送で謝罪した。当該局が自主的に提出した詳細な報告書をもとに討議した結果、誇張表現が多く悪質であるとして、審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2011年 6月10日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見

日本テレビの報道番組『news every.サタデー』の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。
5月31日、当該局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。事務局からそれに関する報告があり、続いて当日のテレビニュース(録画)や報道された新聞記事を見たうえで意見交換が行われた。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている番組が11回放送されたことが、政治的公平性を欠き、番組制作上の局の主体性も欠如しているのではないかと問題にされた事案。
前回の委員会で議論された、表現の自由と放送における政治的公平性の維持の関係をどう考えるかという問題や、番組編成全体で政治的公平性を配慮しているという当該局の主張に説得力があるかという問題を踏まえて作成された意見書の修正案が担当委員から提出され、3回目の審議を行った。
政治的公平性の問題に加えて、放送局としての主体性に問題はなかったかという視点で意見書をまとめることに意見が一致したので、表現の手直しは担当委員と委員長に一任することとして、審議を終了した。

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

今年1月25日に放送されたテレビ東京のバラエティー番組『ありえへん∞世界』で、南大東島には年収1000万円以上で、沖縄本島にも別荘を所有するサトウキビ農家が150から200名いるが、それはサトウキビの生産に多額の国の補助金が支出されているからであると紹介し、所有する別荘のイメージ映像としてビバリーヒルズの邸宅の写真を放送した。だが実は年収といっても生産諸経費が控除されていない売り上げ金額(粗収入)であり、しかも島のサトウキビ農家の平均粗収入は500万円程度で、経費を差し引いた所得金額は150万円程度であった。沖縄本島の家も子供の高校通学のための住居がほとんどで、ビバリーヒルズの豪邸のような別荘ではないことが判明した。南大東村長から「偏見にもとづいた誤解を招く」との抗議文を受け取った当該局は村に謝罪し、6月7日にお詫び放送をした。自主的な内部調査結果と改善策が、当該局から検証委員会に提出されたが、委員会では、番組は事実をゆがめて僻地を誇張し、サトウキビ農家についてのねじ曲げられた悪質な表現が多く、放送倫理違反が認められることから、その原因や制作過程の検証が必要だとして、審議入りすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • 担当したディレクターの取材が十分でなく、最初に作った筋書きにこだわっている。
  • 数字の取り扱いや確認が粗雑すぎる。取材対象者への誠意が感じられず、”上から目線”になっている。
  • 言葉遣いとして農家の場合、収入を年収ということは一般的であり、諸経費を引いて収入という人はあまりいない。しかし視聴者からみたら誤解すると思う。
  • 15時間かけて那覇から船で着き、港がないためクレーンで吊り上げられて島に上陸するのは”ありえへん”に相応しい光景だった。しかし飛行機では那覇から1時間少々で行けるのに僻地を強調している。
  • ビバリーヒルズの写真をだすアイディアは取材に行ったスタッフではなく、後になって出てくる。遊び心だと思うが目線は差別的ではないか。
  • ロケハンを兼ねて一人で取材している。しかも初めての担当ということでディレクターにはきつかったと思う。それにしても、局内のデスクやプロデューサーのチェックはどうなっていたのか。

以上

第49回 放送倫理検証委員会

第49回 – 2011年5月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』 ……など

第49回放送倫理検証委員会は、5月13日に開催された。
4回目の一括審議を行ったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送の『イチハチ』ホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3事案は意見書の詰めを行い、内容面での合意が得られたため、審議を終了した。最終的な修正作業を行い、速やかに当該局への通知と、公表の記者会見を行う。
同じく審議中の日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』についても、担当委員から提出された意見書の修正案に対し、委員の中からほとんど異論は出ず、5月下旬をめどに、当該局への通知と、公表の記者会見を行うことになった。
政治的公平性について審議しているBS11の『”自”論対論 参議院発』については、意見書原案が担当委員から提示され、ヒアリングの概要が報告された。

議事の詳細

日時
2011年 5月13日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

上記2番組で放送された3つの事案は、いずれも出演者からの情報に頼り、事実確認が杜撰であったことから問題が起きており、番組の制作過程に似通った構造的問題を含んでいることから、委員会は一括して審議をおこなってきた。
4回目になる今回の審議では、担当委員から出された意見書原案について詰めがおこなわれ、内容について大筋で合意した。
更に、多忙な制作現場のスタッフには、意見書を読む余裕がないという状況を踏まえて、どうしたら委員会の思いが伝わるのか、どんな方法が考えられるのかについても、意見交換が行われた。
審議は今回で終了し、表現の手直しなどの修正を行ったうえで、新たな工夫を加えて意見書を通知・公表することになった。

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

番組の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。
3回目の今回の審議では、担当委員から意見書の修正案が提出され、補足的な議論があったが、特段の異論などは出されなかった。
このため、必要な加筆修正を経て、5月下旬をめどに、当該局への通知と、公表の記者会見を行うことになった。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

番組の司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されていて、政治的公平性に問題があるのではないかとされる事案。
担当委員が作成した意見書の原案が提示され、あわせてBS11に対して行ったヒアリングの概要が報告された。憲法が定める表現の自由と、放送法や民放連の番組基準などが掲げる政治的公平性をどう考えるかという問題や、番組編成全体で政治的公平性を配慮しているという当該局の主張に説得力があるかという問題などについて、さまざまな議論が交わされた。次回の委員会では、こうした議論を踏まえた修正案をもとに、審議を継続する。

以上

第48回 放送倫理検証委員会

第48回 – 2011年4月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』2事案

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』 ……など

第48回放送倫理検証委員会は、定例の第2金曜日を第3金曜日に変更して、4月15日に開催された。
一括審議となったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送『イチハチ』のホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3つについては、担当委員が作成した意見書の原案について審議した。
同じく審議中の日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』についても、担当委員から意見書の原案が提出された。今回の問題が起きた背景を、担当ディレクター個人と報道局という組織の両面から検証したもので、次回に委員会の議論を踏まえた改定案に基づく審議をすることになった。
政治的公平性に問題があるのではないかということで前回審議入りしたBS11の『”自”論対論 参議院発』については、意見書の骨子が担当委員から提示され、主に表現の自由と放送法との兼ね合いをどう考えるかという点で議論が行われた。

議事の詳細

日時
2011年 4月15日(金) 午後5時30分~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、重松委員、服部委員、水島委員

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』2事案

  • 番組で酵素飲料を飲みダイエットに成功したと紹介した女性が、その飲料を販売する会社の社長だったことがわかったテレビ東京の『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(2010年11月8日放送)
  • ホテルを購入しようとした女性に密着した取材が、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の『イチハチ』(2010年11月17、24日放送)
  • 同じ『イチハチ』で、出演した女性がニューヨークに23件もの不動産物件を持っていると紹介し、その後、毎日放送が「女性の所有だったとは証明できず、(中略)事実と異なる放送をした可能性が極めて高いと言わざるを得ない」と公表した事案(2011年1月12日放送)

上記2番組3事案は、いずれも出演者からもたらされた情報に対する事実確認の杜撰さから起こった問題であることから、委員会は前回から3つの事案をまとめて審議している。今回は担当委員から意見書の原案が提出され、各委員の間でさまざまな意見が交わされた。委員会の考えていることを、どうしたら放送局の上層部だけでなく、実際に現場で番組を作っているスタッフに伝えることが出来るかという問題に多くの時間が割かれた。今回の議論を踏まえ、次回の委員会までに担当委員が意見書の改定案を作成することになった。

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

番組の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。審議入りしたあとの議論を踏まえて、担当委員から意見書の原案が提出された。 今回の問題が起きた背景を、担当ディレクター個人と報道局(経済部)という組織の両面から検証したもので、委員の間でさまざまな議論が交わされた。 一方、当該局からは、審議入り後に報道局の社員やスタッフが、各部ごと番組ごとに議論を重ねてまとめた総括的な社内文書「なぜニュース番組で『不適切手法』が放送されてしまったのか?」が委員会に自主的に提出され、議論の参考とされた。 次回の委員会には、意見書の改定案が提出され、審議が続けられる。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されていて、政治的公平性に問題があるのではないかと前回審議入りした事案。『”自”論対論 参議院発』全11回の放送を視聴しての審議が行われた。 表現の自由と放送法との兼ね合いをどう考えるか、また、番組のスポンサー表示がなされていないことが問題ではないか等の議論が行われた。次回の委員会までにBS11からヒアリングを行い、問題点を整理して原案作成に入ることにした。

以上