第234回放送と人権等権利に関する委員会

第234回 – 2016年5月

世田谷一家殺害事件特番事案のヒアリングと審理、自転車事故企画事案の通知・公表の報告、ストーカー事件2事案の対応報告、STAP細胞報道事案の審理、審理要請案件の検討…など

世田谷一家殺害事件特番事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。自転車事故企画事案の通知・公表について、事務局から概要を報告した。ストーカー事件再現ドラマ、ストーカー事件映像の2事案について、フジテレビから提出された対応報告を了承した。STAP細胞報道事案を引き続き審理、また生活保護ビジネス企画に対する申立てを審理要請案件として検討した。

議事の詳細

日時
2016年5月17日(火)午後3時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「世田谷一家殺害事件特番への申立て」事案のヒアリングと審理

対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送を受けて入江氏は、テレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。このため入江氏は、委員会に申立書を提出。「テレビ的な技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びにテレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
これに対しテレビ朝日は、サファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張している。
今月の委員会では、申立人と被申立人のテレビ朝日からヒアリングを行った。
申立人は代理人弁護士4人とともに出席し、「この番組を見た方たちは、私が著書や講演で述べている半年間にも及ぶ怨恨説の否定の作業と、その過程で見いだした生きる意味について一体何だったんだということになる。そこがぐらつくと、私の述べる悲しみからの再生は伝わらなくなってしまう。悲しみからの再生を決意し、これまで覚悟を持って積み重ねてきた私の活動、私の生き方そのものがこの番組によって破壊されたと感じた。風化を防ぐというもっともらしい目的を挙げ、報道番組だと言われたから真摯に取材に応じたのに、実は興味本位の視聴率稼ぎの番組に遺族役として当てはめられたと感じた」等と述べた。
テレビ朝日からは制作担当のプロデューサーら5人が出席し、「事件の重大性、内容から、報道局も加わった。取材方法や事実関係の確認や放送内容をチェックするという体制で慎重を期した。出演依頼時には企画書を提示し、犯人像・犯人動機を元プロファイラーが独自の分析でアプローチするというのがメインの趣旨であるということを伝えた。犯罪被害者遺族である申立人が、番組に出演して、過去の記憶が呼び覚まされ、苦痛を覚える可能性があるということも含み置いて出演の許諾をいただいた」等と述べた。
ヒアリング後の審理で、次回委員会に向けて担当委員が「委員会決定」文の起草に入ることになった。

2.「自転車事故企画に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案に関する「委員会決定」の通知・公表が5月16日に行われた。委員会では、その概要を事務局が報告し、当該局のフジテレビが放送した決定を伝えるニュースの同録DVDを視聴した。

3.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の対応報告

4.「ストーカー事件映像に対する申立て」の対応報告

2016年2月15日に通知・公表された「委員会決定第58号」ならびに「委員会決定第59号」に対し、フジテレビから局としての対応と取り組みをまとめた報告書が5月13日付で提出され、委員会は、この報告を了承した。両決定はフジテレビの同じ番組を対象にしている。

5.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
委員会は4月26日に臨時委員会を開いて申立人のヒアリングを行った。被申立人のNHKのヒアリングは熊本地震の報道対応のため主なメンバーの出席が不可能になったことからいったん延期し、5月31日に開催する臨時委員会で行うことになった。今回の委員会では、NHKのヒアリングに向けて、質問項目等が確認された。

6.審理要請案件:「生活保護ビジネス企画に対する申立て」

いわゆる「生活保護ビジネス」を取り上げたニュース企画に対する申立書について、委員会運営規則に照らして審理事案とする要件を満たしているかどうか検討した。次回委員会で改めて申立書の取り扱いを検討する。

7.その他

  • 4月の定例委員会で審理入りが決まった「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)と同(熊本県民テレビ)に関連して、熊本地震の被害状況等について事務局から報告し、引き続き現地の状況に配慮しつつ審理を進めることを確認した。

  • 次回委員会は5月31日に臨時委員会を開催する。6月の定例委員会は6月21日に開かれる。

以上

第104回 放送倫理検証委員会

第104回–2016年5月

熊本地震の取材・報道について意見交換

議事の詳細

日時
2016年5月13日(金)午後6時~8時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.熊本地震の取材・報道について

第104回放送倫理検証委員会は5月13日に開催された。
討議の対象となる事案がなかったため、200件を超える視聴者からの意見がBPOに寄せられた熊本地震(4月14日発生)の取材・報道について、意見交換が行われた。
視聴者意見には、
▽ ヘリコプター取材の騒音などが被災者の救助の妨げになっている。
▽ 避難所に駐車している報道関係者の車両のために避難者が駐車できなかったり、夜間の中継や照明のために睡眠を妨害されたりしている。
▽ 行方不明者の搬出作業をテレビカメラが撮影するため、捜索隊はシートで目隠しをしなければならず、作業の遅れにつながる。
など、震災報道に関する具体的な批判が多かった。
また、取材者としてのモラルを問う意見として、
▽ テレビ中継車がガソリンスタンドで給油待ちをしている車の列に割り込んだ。
▽ 食料が不足する中、アナウンサーが弁当の写真をツイッターへ上げていた。
などの批判も寄せられた。

委員会では、個々のニュースや番組について、放送倫理上問題ありと指摘する意見はなかったが、取材や報道の在り方をめぐっては、さまざまな視点や論点から、議論が交わされた。

[委員の主な意見]

  • ヘリコプター取材に関する批判が多く寄せられているが、震災の初期などには報道のヘリで災害の場所が特定でき、被害の大きさが分かる場合もある。ヘリ取材をすべて否定してしまうと、被災地の状況が把握できなくなってしまうという一面もあるのではないか。

  • 打ち続く自然災害に対して、受け手の視聴者の方も相当に過敏になっている部分があるのではないか。そうした視聴者の不安も踏まえ、報道の内容や取材の仕組みを放送局が自ら精査していくことがとても大切だと思う。

  • 視聴者の知りたい情報、例えば九州・四国の原発の場所を地図上に加えて、異常がなければ異常なしと明記するなどの対応をしてもらえば、視聴者の不安解消につながるのではないか。

  • 視聴者意見やネットでの反応を見ると、被災地の当事者ではない人々がテレビの報道を見てそれをバッシングするという傾向もうかがわれる。周囲には厳しい目があることを自覚しながら、放送局として、必要な取材を適切な態勢でやっていることを視聴者にきちんと伝えることも重要だと思う。

  • バッシングにセンシティヴになりすぎるのも問題ではないか。取材者には、嫌われるのを覚悟で伝えるべきことは伝えるという姿勢がほしい。ニュースで、現地からの中継中に、被災者らしき人からクレームをつけられ中継をやめたケースがあったが、あわてて中継をやめるのではなく、逆にその人に話を聞いてほしかった。びくびくしている感じが残念だった。また、ボランティアが焼き芋を配っているのを中継したニュースでは、リポーターが雨に濡れながら待つ少女2人を押しのけてボランティアにインタビューしたという批判があったが、そうは見えなかったし、少女の話まで聞いていれば、そうした意見にはならなかったのではないか。

  • 東日本大震災や中越地震の際にも、取材しやすい場所にメディアが殺到し支援物資もそこに集中するという問題があった。それぞれの局が判断すべきことだが、過剰に詰めかけるところがある一方で、まったく行かない場所もあるということにならないでほしい。

  • 災害報道は、視聴者の放送に対する日ごろの不満が凝縮して出るという面もあるので、放送局は、一定の時間がたって自己検証する時に、こういう基準で震災を取材し報道したということが視聴者にきちんと伝わる総括的な検証番組を制作することも必要ではないか。

以上

2016年2月15日

「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の通知・公表

[通知]
前事案に引き続き午後2時から、本件の通知を行い、申立人と、フジテレビ側からは編成担当者ら4人が出席した。
まず、坂井委員長が「決定の概要」と「委員会判断」をポイントに沿って読み上げる形で「本件放送には名誉を毀損する等の人権侵害があるとは言えないが、放送倫理上の問題があると判断した」との結論を伝えた。決定について申立人は「自分の主張がこれだけ認められたというのは、一つ大きな区切りがついたのかなと思っている」と述べた。
また、フジテレビ側は「作り手はギリギリのところを狙ってしまう。今までがやり過ぎだというご判断ですが、程度の問題はありつつも、今のテレビの作り方、在り方みたいなことに関わってくるかなと感じた」と述べた。
市川委員長代行は、「普通の報道番組なら、当然、裏を取って、本当にそうなのか、本当に共謀しているのか、というところを丁寧にやるが、今回は、いかにバラエティー番組とはいえ、許される範囲をはみ出し過ぎてしまっている」と述べた。
紙谷委員は「たとえば警察にもう少し情報の確認をすると、少しは事件の見方が変わったかもしれない。情報提供者の一方的なストーリーに乗せられることはなかったかもしれない」と述べた。

[公表]
午後3時から千代田放送会館2階ホールで、坂井委員長、市川委員長代行、紙谷委員が出席して記者会見を行い、2事案の委員会決定を公表した。報道関係者は21社41人が出席し、テレビカメラ3台(うち1台は民放代表カメラ)が入った。

まず坂井委員長が「本件放送には申立人の名誉を毀損する等の人権侵害があるとは言えないが、放送倫理上の問題があると判断した」との結論を述べたうえで、委員会決定の申立人の同定可能性とフジテレビの反論を中心に解説を行った。そして放送倫理上の問題について「取材対象者の名誉、プライバシーも大事だが、放送される人の名誉、プライバシーも考えなければいけないのに、そこが足りてなかった」と述べた。
市川委員長代行は「本件は情報バラエティーということもあって、事実から離れてもいいと考えてしまったがゆえに、取材、事実に迫る努力が疎かになってしまったのではないか。この点が、本件での留意点になると思う」と述べた。
紙谷委員は「関係者の名誉とプライバシーをもっと慎重に考えていただきたい。暴いていいということではないが、両者、あるいは関係者全体に対する配慮は必要であるということを強調しておきたい」と述べた。

続いて質疑応答が行われた。

(質問)
第58号と第59号両件に関わるが、フジテレビ自身はそもそもこの件は、いわゆる架空のケースとして紹介しようとしたのか。それとも、特定の事件だが分からないように伝えようとしたのか。
(坂井委員長)
架空のケースということではないと思う。実際の映像や音声を放送しているわけだから。もちろん、ぼかし等をかけてはいるし、音声も変えてある。まったく架空ではないが、現実そのものとして放送したわけではない、という考えだったと思う。

(質問)
ストーカーはしていて、書類送検もされているが、それでも本人と同定されることについて、委員会で批判、指摘されているということは、要するに、本人が特定されて、この人がやったということが一般に、公に報道されることで行き過ぎとの批判なのか、それとも匿名性を持たせようとしていたのに、ちゃんとやれてないじゃないかということか。
(坂井委員長)
同定されたこと自体を批判していない。同定されたケースで名誉棄損になる事実を摘示した場合、それでも公共性、公益目的が認められて、真実、ないしは真実であると信じるに相当であると認められれば問題とはならない。本件では、摘示した名誉棄損にあたる事実の主要な部分、基本的な部分は真実であると認められたから、名誉棄損にはあたらない。
第58号、第59号に共通するが、事実として報道する以上、再現と言えども真実に迫らなければいけないし、両当事者に取材しなければいけない。そこは放送倫理上の問題があると言っている。同定されるように放送するなら、ちゃんと取材をして、真実性立証ができなくてはいけないし、できたとしても、取材のやり方として問題があったところはありますよ、そういう放送倫理上の問題点だ。

(質問)
乱暴な言い方になるかもしれないが、たとえばバラエティーを作る体制では、ちょっと手に余る事案だったということか。
(坂井委員長)
そこは、こうだと断言するわけにはいかない。もし、手に余るのであれば、現実から離れるという選択肢はある。現実につながったことを放送してしまうことから、視聴者が、ああこれは現実なんだと受け取る。多少の改編があってもそれがどこか分からないからだ。そこで、こういう問題が生まれる。もし、しっかり取材できないのであれば、これは現実だと受け取られるような形を避けなくてはいけないということだと思う。
誇張や架空の部分も含めて現実なのだと受け止められる放送をしてしまったら、これは現実ではないですよとテロップが入っても、視聴者は全体として現実だと思ってしまう、そういう作り方の問題だ。それは、現実の映像や音声が入ったうえで、再現ですと言ってしまうことからくるのだが、そうなってしまったら、局は責任を取らなくてはいけないのであって、そういう名誉毀損になるような作り方はやってはいけない。このような作り方をするのだったら、そこまで配慮しなければいけないということだろうと思う。なぜかと言うと、関係者の名誉やプライバシー、もっとストレートに言うと、放送されてしまう人の名誉やプライバシーを考えなくてはいけないからだ。

(質問)
AさんとBさんにこの結果を伝えた時の感想について。
(坂井委員長)
二人とも、結論は違うが、Aさんの方は名誉棄損を認めて頂いたことはありがたいと。どうしてこんなふうに放送されたのか、未だに納得がいかないということだと思う。Bさんの方も、名誉棄損ということは認めないけれども、放送倫理上の問題は、はっきり言っている。それについてはありがたいという感想だった。
(市川委員長代行)
Aさんに関しては、名誉棄損のところで触れているように、社内いじめの中心人物、あるいは首謀者という扱いをされたこと、そのこと自体に対して、それは違うと。私はそうではなかった。そこが主張の骨子であり、まさにそこに答えて頂いたというふうに思って頂いた、理解して頂いたと思っている。
Bさんにも、納得を頂いた部分はあるようだ。事件の背景等について、もう少し自分にもちゃんと取材をして、自分なりの弁明をさせてほしかったという気持ちはあったようで、その点をBPOが指摘したことは、ありがたいという印象を持っていたようだ。

以上

2016年2月15日

「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の通知・公表

[通知]
通知は、午後1時からBPO会議室で行われ、坂井委員長と起草を担当した市川委員長代行、紙谷委員が出席し、申立人本人と、被申立人のフジテレビからは編成統括責任者ら4人が出席した。まず、坂井委員長が「決定の概要」と「委員会判断」をポイントに沿って読み上げる形で「本件放送には、申立人の名誉を毀損する人権侵害があったと言わざるをえないと判断した」との決定内容を伝えた。
続いて、市川委員校代行は「再現ドラマであれば、現実の事件とは違うものだと受け止められるというふうには必ずしもならない。現実の事件と組み合わせて放送する以上、現実の事件を放送するものとして、事実を正確に伝える努力も怠らないようにしていただきたい」と述べた。
また、紙谷委員は「テレビの現場は女性の視点が少ないという指摘がしばしばあり、ステレオタイプの見方がすっと通ってしまう。むしろテレビだからこそ、いろいろな見方、ステレオタイプではない情報を積極的に提供していただきたい」と述べた。
この決定に対して申立人は、「自分の思いが届いたのかなと思う」「(放送された内容は)本当に身に覚えがない」「いまだに口をきいてくれない人もいる」などと述べた。
一方、フジテレビは「我々が主張したことは、ほとんど結果的に認められてない。100パーセントそれは駄目じゃないかという感じで、非常に厳しく受け止めている。番組の作り方とかに大きく影響するであろうと、改めてそういうことを認識した」と述べた。

[公表]
午後3時から千代田放送会館2階ホールで、坂井委員長、市川委員長代行、紙谷委員が出席して記者会見を行い、2事案の委員会決定を公表した。報道関係者は21社41人が出席し、テレビカメラ3台(うち1台は民放代表カメラ)が入った。

まず坂井委員長が委員会決定について「現実にあった事件の関係者本人の映像や音声を随所に織り込み、再現の部分も含めて一連の事件として放送している以上、視聴者は現実に起きた特定の事件を放送しているものと受け止める。職場の同僚にとって、登場人物が申立人であると同定できるものであったと判断した。それで、そのいじめをした張本人ということで、首謀者、中心人物、実行者にストーカー行為をさせていた、などと指摘するものであることから、これは名誉毀損、社会的評価を低下させる事実適示であることは争いがない」と述べたうえで「委員会の判断」と「結論」の要所を紹介しながら説明を行った。市川委員長代行は「報道番組でもそうだが、モザイクがかかって本人を特定できなかったとしても、現実の事件を再現するものとして放送する以上、事実に即して何が真実であるのかをきちんと取材したうえで、それに沿った形で放送するべきだ」と述べた。
また紙谷委員は「番組のように年とったおばさんは若い女性をいじめるという思い込みがあったから、そういうふうに作り上げたのではないか。そういう思い込み、ステレオタイプを外して取材をし、番組を作ってほしかった。ジェンダーという視点を忘れないでほしい」と「補足意見」の主旨を説明した。

続いて質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり。

(質問)
これは第58号と第59号にまたがった質問です。放送倫理上の問題のところで、第58号では、申立人からの苦情に適切に対応しなかったことに、特に重点を置いて、放送倫理上の問題があると書かれていると読んだが、第59号は取材の妥当性について、放送倫理上の問題があるというふうに読めるが、このふたつの違いはあるか。

(坂井委員長)
第58号は放送内容について、申立人の名誉を毀損するものであるという判断をしている。その内容について名誉を毀損すると判断している以上、後はそれとは別の部分で、放送の前後に連絡があった時に、真摯に対応していなかったということを中心に書いた。第59号は、名誉棄損があったとは認めていない。主要な部分について真実性があると判断している。では、そこについて名誉棄損がないとしても、こういう放送をしてしまった、その中身について、問題はなかったのかということを検討することを考えた。
そういう意味で、第58号の方は、まず真実に迫るための最善の努力を怠った点、そしてその点の取材面での具体的な問題として、一方当事者からの取材のみに依拠して、職場内での処遇の不満や紛争という事件の背景や実態を正確に把握する努力を怠ったことを指摘した。さらに、取材方法の在り方が申立人の名誉やプライバシーへの配慮を欠くものであったということを指摘し、最後に、59号と共通している点として、本件放送に対する申立人らの苦情に真摯に向き合わなかったことを述べた。4つ目は共通だが、最初の3つについては、名誉棄損を認めていないので、番組制作の過程で、たとえ名誉棄損にならないとしても、問題があったことを指摘した。それらは第58号にも共通する問題だが、58号では、その結果名誉棄損が生じてしまったと判断している以上、それらついてはあえて書く必要はないと判断したということになる。

(質問)
A氏については、勧告になる理由が分かる。ただ、B氏については、実際にストーカー行為をしていて、そのことは認めていながらも、見解という2番目に重い判断だ。要は、A氏のことに引っ張られた感じで、勧告という結論に引っ張られてB氏の方も少し厳しくなっているような気がするが。

(坂井委員長)
そういうことはない。それぞれの申し立てについて、それぞれ判断をしている。B氏については、名誉棄損はなかった。つまり、名誉を毀損する事実の適示はあったけれども、その主要な部分は真実であると判断している。
59号では、放送された内容で真実性が立証できないものが2点ほどある。そういう部分については、考えようによったら、適示された事実の主要な部分でないとは言い切れないから名誉棄損になると判断される可能性はあった。そういう作り方をしてしまった理由はどこにあるのかという意味で、やはり放送倫理上の問題があったとなるだろう。
つまり、作り方の問題としては、A氏の申し立てがなくても、同じ問題を抱えているから、そこは変わらなかったろうというのが私の理解だ。

(市川委員長代行)
私も、第58号に引きずられたとは思っていない。出家詐欺の『クローズアップ現代』の事件も、申立人そのものに対する人権侵害は、同定性がないということで否定した。ただし、その放送倫理上の、取材上の問題、放送上の問題が、これが進めば人権侵害になっていく可能性があるという意味で、看過できない放送倫理上の問題があったと考えたわけであり、それと同じように第59号も同じような問題があったからということだ。
特に今、委員長から説明があったように、事実関係でフジテレビ側が証明できてない部分は率直に言ってある。そこの部分をどう捉えるのか。場合によってはそれだけでも名誉棄損だという意見も、当然一つの見方としてはあり得る。その点が一点。もう一つは、実際の事件と多少離れた形での放送になってもいいと、そういう捉え方をしていたということからいくと、B氏に関しても、人権侵害になっていく危険性は、やっぱりある。そういう意味で、ここで放送倫理上の問題は指摘しておかなければいけないというふうに思った。

以上

2016年度 第60号

「自転車事故企画に対する申立て」に関する委員会決定

2016年5月16日 放送局:フジテレビ

見解:放送倫理上問題あり (補足意見付記)
フジテレビは2015年2月17日放送のバラエティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』の企画コーナーで自転車事故を取り上げ、自転車事故で母親を亡くした男性のインタビューに続けて、自転車事故を起こした息子とその家族の顛末を描いたドラマを放送した。ドラマでは、この家族が高額の賠償金を払ったが、この事故でけがを負った小学生が実は当たり屋だったという結末だった。
この放送について、インタビュー取材に応じた男性が、取材の際にドラマで当たり屋を扱うことの説明がなかったことは取材方法として著しく不適切であり、自分も当たり屋であるかのような誤解を視聴者に与えかねず名誉を侵害されたなどとして委員会に申し立てていた。
委員会は、「見解」として、名誉毀損等の人権侵害は認められないが、フジテレビは申立人の立場と心情に配慮せず、本件放送の大部分を占めるドラマが当たり屋の事件を扱ったものであるという申立人にとって肝心な点を説明しておらず、本件放送には放送倫理上の問題があると判断した。

【決定の概要】

フジテレビは、バラエティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』(2015年2月17日放送)の「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナーで自転車事故の問題を取り上げ、自転車事故被害者の遺族である男性のインタビューに続けて、自転車事故を起こした息子とその家族の顛末を描いたドラマを放送した。ドラマは、この家族が高額の賠償金を支払ったが、この事故でけがを負った小学生が実は当たり屋だったという結末であった。
この放送について、インタビュー取材に応じた男性が、ドラマで当たり屋を扱うことの説明が取材の際になかったことは取材方法として著しく不適切であり、自分も当たり屋であるかのような誤解を視聴者に与えかねず名誉を侵害されたなどとして委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には、申立人に対する名誉毀損等の人権侵害は認められないが、放送倫理上の問題があると判断した。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送は、番組の構成上、申立人のインタビュー場面を含む情報部分とドラマ部分とに区別され、本件ドラマの当たり屋の事件と申立人が母親を亡くした事故は関係がないことから、一般視聴者に対して、申立人が当たり屋であるかのような誤解を与えるものとはいえない。したがって、申立人の社会的評価の低下を招くことはないから、本件放送による申立人の名誉毀損は認められない。また、本件放送で申立人に対する否定的な評価やコメントがなされているものではなく、申立人が出演した情報部分とドラマ部分とは区別されており、その関連性は間接的なものにとどまるから、本件放送による申立人の名誉感情侵害が認められるとまではいえない。
次に、放送倫理上の問題について検討すると、本件ドラマは、当たり屋の事件をとりあげた事例であって、被害者を装っている者を描くにすぎないことになるから、自転車事故が被害者に深刻な結果をもたらすという側面をなんら描いていない。フジテレビは、申立人が被害者遺族の立場から自転車事故の悲惨さを訴えたいことを認識していながら、申立人の立場と心情に配慮せず、本件放送の大部分を占める本件ドラマが当たり屋の事件を扱ったものであるという申立人にとって肝心な点を説明しなかった。この点において、フジテレビは、申立人に対して番組の趣旨や取材意図を十分に説明したとは言えず、本件放送には放送倫理上の問題がある。
以上から、委員会は、フジテレビに対し、本決定の趣旨を放送するとともに、社内及び番組の制作会社にその情報を周知し、再発防止のために放送倫理の順守にいっそう配慮するよう要望する。

全文PDFはこちらpdf

2016年5月16日 第60号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第60号

申立人
A
被申立人
株式会社フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』
企画コーナー「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」
放送日時
2015年2月17日(火) 午後7時~8時54分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.申立人の主張と本決定における取り扱い
  • 2.人権侵害に関する判断
  • 3.放送倫理上の問題

III.結論

IV.放送内容の概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

全文PDFはこちらpdf

2016年5月16日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2016年5月16日午後1時からBPO会議室で行われ、このあと午後2時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
詳細はこちら。

2016年8月16日 委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み

フジテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が8月9日付で提出され、委員会はこれを了承した。

全文PDFはこちらpdf

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2016年4月に視聴者から寄せられた意見

2016年4月に視聴者から寄せられた意見

熊本地震の報道・取材のあり方に関して、「地震の際に町内放送が聞こえない」といった取材ヘリの騒音問題や、被災者への配慮を欠いたインタビュー、避難所での夜間撮影など、さまざまな批判や要望。国会議員の事務所経費疑惑の報道に対する意見など。

2016年4月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,669件で、先月と比較して240件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール74%、電話24%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性69%、女性29%、不明2%で、世代別では40歳代29%、30歳代26%、50歳代17%、20歳代15%、60歳以上11%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。4月の通知数は618件【60局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、23件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

熊本県で最大マグニチュード7.3の大きな地震が発生した。4月14日と16日には益城町などで震度7の揺れが観測され、県内各地に大きな被害をもたらすとともに、地震活動は大分県の一部にまで拡大した。多くの家屋が倒壊したほか大規模な土砂崩れも発生、49人が亡くなり、1人が行方不明になっている。5月になっても余震は続き、被災者の避難生活が長期化している。放送各局は現地入りし、被害状況や被災者の声を伝え続けた。こうした中で、マスメディアの報道・取材のあり方に関して、ヘリの騒音問題、被災者への配慮を欠いたインタビュー、避難所での夜間撮影、取材車輌によるマナーを欠く行為などへのさまざまな批判や要望が寄せられた。
このほか、国会議員の事務所経費疑惑についての報道や、日本の「報道の自由度」ランクの後退を国際NGO団体が公表したことに関して、さまざまな意見が寄せられた。
医師を多数出演させた番組の中で、患者から謝礼を受け取ることが一般的であるかように紹介したとして、悪習を助長することに繋がるとの批判が寄せられた。
政党の前代表だった人物が司会者の一人を務める番組について、政治的公平性を懸念する声が寄せられた。
ラジオに関する意見は58件、CMについては51件あった。

青少年に関する意見

4月中に青少年委員会に寄せられた意見は77件で、前月から10件減少した。
今月は、「表現・演出」が23件と最も多く、次に「性的表現」が13件、「犯罪の助長」が8件と続いた。
「表現・演出」では、バラエティー番組で、エキストラの青年の背中に「バカ」と書いた紙を貼り、気付くかどうかを検証した企画について複数の意見が寄せられた。
「性的表現」では、バラエティー番組で小学生の女の子に"キス顔"をさせたことについて、「性的な感情を惹起させかねない」などの意見があった。
「犯罪の助長」では、盗難バイクに乗って走り出す旨の歌詞が含まれる歌をCMで使用していることについて、「青少年に悪影響がある」など、多くの意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】
※熊本地震関連

  • マグニチュード7.3の本震が起きたとき、男性リポーターが、家の外に出ていた女性にひっきりなしに質問をしていた。その女性は「アパートの住民と連絡が取れない」と心配そうな様子だったのに、不安を煽るような質問を重ねていた。恐ろしい体験をして気が動転している人達をつかまえて話を聞くのは、デリカシーに欠ける。このようなときには現地の状況だけを伝えればいいと思う。

  • 地震による土砂崩れで家は全壊、父親はいまだに行方不明という状況の中、泣いている被災者の男性に対してマイクを向けていた。「家は完全に埋まっている状況ですか」「最初の地震ではこの辺りは影響がなかったのですか」などと、画面で見て分かることを質問していた。この被災者がつらい思いであることは十分察しがつく。マイクを向けることはあまりに残酷だ。

  • 熊本に住む友人の話では、報道ヘリの騒音で地震の際の町内放送が聞こえないそうだ。被災地の住民はテレビを見られる状況ではない。町内放送とラジオが情報の頼りだ。被災地の状況を理解していただきたい。

  • 各局がヘリ空撮を行っているために、被災者の救出に支障が出ているのではないかとの声が聞かれる。救助の声が掻き消されている可能性がある。画一的になるかもしれないが、こういうときにこそ代表取材で映像を共用することはできないものか。

  • 以前、ある地域への報道が集中し、報道されなかった被災地が取り残されてしまったこともあった。各局が共同し手分けして報道することで、救援活動に協力できるような取材を行ってほしい。

  • マスコミ関係者が避難所や災対本部、周辺道路、被災者の元に押し寄せ、救助活動や復旧活動の邪魔になっているとネットに書かれている。被災地の現状を広く伝えることは重要だが、各社がスクープを競うのではなく、人員・機材を出し合って「災害時報道チーム」を編成し、必要最小限の体制で正確な情報を伝えることはできないか。

  • 被災地に向かう中継車が給油待ちの車列に割り込んだことが問題になっているが、社員が起こした偶然のトラブルではなく、企業のコンプライアンスやガンバナンスに問題があると考えるべきだ。被災地では食料も寝床も燃料も現地調達しない、できる範囲で取材して安全に戻ってくる――これは報道機関として最低限のマナーだ。優先順位を狂わせるような指示は出ていなかったか。災害報道が義務付けられた放送局だからこそ、節度を持った行動が求められる。

  • 熊本の被災地からの中継で、ボランティアで駆け付けた焼き芋屋さんにリポーターがインタビューする際、屋台車両に張った雨除けシートの下にいた子ども達が一時移動せざるを得なくなり、雨に濡れたようだ。インタビューの際に、なぜ子ども達を気遣う言葉がなかったのかと悲しく感じた。スタジオ内の誰も注意しなかった。被災者への配慮に欠けていたのではないか。

  • 取材スタッフが自身のツイッターに「本日の1食目」として弁当の写真をアップしたため、被災地で弁当を調達したのではないかとして批判されている問題について、局側は「きちんと並んで購入したもので、問題はないと認識している」と説明している。しかし、流通が混乱している被災現場に入る際には、衣食住に関するものはできる限り自ら準備し、現地での消耗品の消費は避けるべきだ。先々の震災でも問題となり、報道関係者ならば十分に認識していたはずだ。

  • 77歳の女性が避難所のトイレで倒れているところを発見され、その後死亡したというニュースで、トイレに入っている人の足元が映った映像が一瞬流れたとしてネット上で静止画が紹介されている。撮影は適切だったのだろうか。

  • 被災地の中継が続いているが、すぐにでも必要な救援物資などを聞き取り、それを伝える局が少ないのが残念だ。テレビで必要な救援物資を呼びかければ、自治体や民間企業も状況を把握しやすくなり、不必要な物資を送らずにすむ場合もあるのではないか。

  • 熊本に住んでおり、避難所へ身を寄せていた。その間、取材班の車両のために避難者が駐車できない様子を見たほか、夜に車で寝ているところをライトで照らされるなどの経験をした。避難所はストレスがたまる環境なので、普段の心理とは違って取材を不快に感じた人も多いようだった。災害時の報道全般について、被災者を守るためのルールを作ることはできないだろうか。

  • 被災者の捜索活動を取材する際に、行方不明者の搬出の様子を撮影することは控えるべきだ。カメラに映らないようにするために、捜索隊員がシートで目隠しをしながら搬出せざるを得ず、余分な労力を使わされ救援活動に影響を与えているのではないか。

  • 倒壊した建物を延々とリポートするよりも、どのような防災道具を用意しておくべきか、地震の際にどのように行動するべきかなど、被害を拡げないための情報を発信してほしい。ボランティア情報、犯罪への注意喚起、適切な支援の仕方など、伝えるべきことはたくさんある。テレビでしか情報を得られないお年寄りなどのためにも、ネットに負けない正確な情報が求められる。Dボタンを活用し救援情報を見られるようにするなど、テレビならではの報道を期待する。

  • 東日本大震災で両親や家屋が地震と津波の被害を受けたうえ、原発事故もあり、つらい体験をしたので、熊本の被災者の気持ちがよく分かる。被災の悲惨さを報じるだけではなく、家を耐震補強していた割合や、被災を防ぐ手立てがなかったのかを検証するなど、全国の人が防災について考えさせられる番組があってもよいのではないか。

  • 取材に行く各メディアの人達は、できる限りの救援物資を届けているのだろうか。一般人は救援物資等を届けたい気持ちがあっても、救援の邪魔になるので行動できずにいる。取材する際には、国民の気持ちを代表して救援物資を持参していただきたい。

※そのほかの報道・取材関連

  • この番組は、今まで「与党議員の政治資金問題」を厳しく追及してきた。しかし、今回の野党国会議員の高額ガソリン代疑惑については放送していない。一方に偏った放送はやめるべきだ。

  • 野党国会議員の高額ガソリン代問題で、総理、官房長官、与党議員の高額ガソリン代については言及せず、同野党議員だけが行っているかのように報じていた。選挙前の時期に意図的と言わざるを得ない。

  • 3歳の女児を虐待死させた22歳の母親とその交際相手の男の再逮捕を報じていた。ほとんどのニュースで、少女が正座を強いられている姿や、虐待で腫れ上がったら顔の写真が使われていた。命を落とした後も、女の子が晒されているようで忍びない。行き過ぎではないか。

  • フィギュアスケート世界選手権の練習中に、日本の男子選手が外国人選手に妨害されたという当人の発言だけを根拠に、証拠映像も示さず、妨害が事実であったかのように報道されたことに驚きを感じている。公平な視点と証拠が存在してこそ報道できるはずだ。不可解な報道によって、前途のある外国の若者の心を傷つけてしまったのではないか。

  • リオ五輪代表を決める競泳の日本選手権で、これまでの五輪で2回、金メダリストになった男子選手が注目されていたにせよ、多くの番組で、この選手が代表を逃したということが強調されていた。なぜ、代表になった選手のことを報道する量が少ないのか。全ての選手が血のにじむ思いで練習している中、注目の選手だけを報じるのは如何なものか。

  • 保育園の開園計画が、住民の反対を受けて中止になったことを取り上げていた。インタビューに対して住民が、反対の理由として、狭い道路に多数の人の往来が生じることなどの立地条件をあげていたにもかかわらず、番組では、子どもの声がうるさいことが主な理由であるかのように説明していた。マスメディアによるこのような伝え方は世間に誤解を与えかねない。

  • 東京の地下鉄電車内の吊り革を引きちぎった会社員の男性が、器物破損容疑で逮捕されたことを報じたニュースの中で、容疑者の顔が映し出されていた。たった1本の吊り革を千切ったという容疑だけで、報道でこれほどの扱いをするのは人権侵害ではないか。

  • 日本の「報道の自由度」に対する国際的評価が大きく下がった。報道機関に対する政権側の干渉が強まっており、日本のマスメディアの信頼度がますます下降してゆくことに危機感を抱く。報道機関は権力を監視する責務から逃げてはならない。"自主規制"という名の屈服をすれば、事実上の"御用報道機関"になってしまう。戦争を経験した私には、軍部が新聞やラジオの支配を強めた時代の再来のように思える。

  • 「国境なき記者団」が日本の「報道の自由度」の世界ランキングが72位になったと発表したことを受け、官房長官が「日本の報道が委縮する事態には全くなっていない」との見解を示した。これに対しコメンテーターが、特定秘密保護法などがあり報道界全体では委縮しているのではないかとの考えを述べ、司会者も同調した。どんな思想のメンバーがいるのか定かでない団体の発表結果を正しいものとして論評するのは如何なものか。

  • ハトへのえさやりで近所とトラブルになっている女性を取り上げていた。モラルに反していたとしても、法令違反ではないと思われる問題について、女性を一方的に非難するような伝え方に疑問を感じた。「ハトばあさん」の呼称や、いきなりマイクを突き付ける取材は良くない。

  • 娘が、母親の再婚相手の"義父"との間に生まれた子を、出産した直後に殺害してしまった事件を取り上げていた。娘が暮らしていた家の前で、近所の家々も間近にあり母親が家にいるかもしれないのに、リポーターが大きな声で義父との関係などを報告していた。残された母親や、罪を背負って生きていかねばならない当事者の心情を考えていないと思った。

  • 官房長官の定例記者会見では手話通訳が行われているのにもかかわらず、その部分が放送されていない。手話通訳は記者に対してだけ行われているわけではないと思う。是非放送をお願いしたい。

【番組全般・その他】

  • がんを治療する50人の医師が出演し、手術などの際に「"袖の下"を受け取ったことがあるか?」との質問に対し9割以上が受け取ったと答えた。医師が金銭を受け取った際の体験を語ったほか、袖の下の渡し方までVTRで紹介していた。自分はがん患者だが、袖の下を渡さなければきちんとした治療を受けられないように感じて不安になった。高額な袖の下を渡せる人ばかりではない。患者の不安を煽るような内容は如何なものか。

  • スタジオに招いたがん治療に携わる医師に対し、「"袖の下"をもらったことがあるか?」と質問。50人中40数人が受け取ったことがあると答え、具体的な受け取り方法や金額があげられていた。番組を見て、手術などをする場合には、医師に"袖の下"を渡すのが一般的なことだと受け取れた。このような金銭授受は悪習であり、国立病院の医師なら違法となるだろう。病気になったときには、医師に"袖の下"を渡さないといけないのか、と不安にさせるような内容だった。「高額な袖の下をもらっているが、税法上きちんと処理しているのか?」などと、鋭く切り込むべきだ。

  • 政党の共同代表だった人物をMC(司会者)の一人に据え、その名前をタイトルに冠した番組が始まったが、このような番組を放送することは如何なものか。MCとして出演させるのは政治色が強すぎるのではないか。氏が政界復帰するために、彼の意見を述べる場を提供することにならないか心配だ。

  • 政党の前代表だった人がレギュラー出演すると聞いた段階から危惧してきた。純粋なバラエティー番組であれば良いだろうが、結局この番組は‟政治"を柱の一つにしている。特定の党、あるいは特定の思想を持った人間を中心に番組を進めれば、偏るなと言うほうが無理であろう。公平・公正な番組作りを求める。

  • 身体のトラブルと腸の働きとの関係を探る番組企画の中で、女性お笑い芸人が「もち麦」でダイエットに成功したとの紹介があった。放送後、購入希望者が殺到して商品が店から無くなり、メーカーも準備できない状況だ。健康に良いとされる食品がテレビで放送された直後にお客が集まることは、これまでにもあった。だが、事前に関連団体に連絡されないために、消費者も製造・販売側も迷惑を被ることになる。放送する側は、関連団体に事前に知らせ、商品の調達に問題が生じる可能性がないかを確認する責任があるのではないか。

  • "ミニ駅伝"に出場する大学チームと芸能人チームの勝敗を出演者が予想するコーナーがあり、配当金が表示されていた。このゲームは違法なのではないか。ニュースで野球賭博、闇カジノなどが報道されている中、バラエティー番組とはいえ何でもありなのか。

  • ある女性出演者を「ババア」と呼んで、笑いのネタにしている。氷の張った北欧の湖で、女性芸人たちが"氷上相撲"をする企画があった。対戦した2人とも落水したが、片方の女性を先に救助し、「ババアは後回し。それが世の習い」と面白がるナレーションが入った。それを見てスタジオ出演者は大笑いしていたが、"笑い"では済まされない。いじめにも等しい内容だ。

  • 海パン姿の芸人たちが熱い湯を入れた水槽に入り、お尻が水槽の底に付いたらクイズの問題が読まれるというゲームが放送された。湯に落ちた芸人の一人が、出題者の女性アナがいる前で水着を脱いで走り回り、ひしゃくで隠して笑いを取っていた。深夜枠とはいえ下品にもほどがある。

  • 『水からの伝言』という書籍で紹介された"水伝(みずでん)"にまつわるエピソードを取り上げていた。それは、水を凍らせるときに「ありがとう」などの良い言葉をかけるときれいな結晶ができ、汚く乱暴な言葉をかけると汚い結晶になるといった話だ。科学的に間違いであると既に指摘されている説なのだが、紹介の仕方やMCのリアクションなどは、何も知らない視聴者に本当のことだと信じさせかねないものであり、問題がある内容だった。

  • 五輪候補だった男子バドミントン選手の"闇カジノ"問題について、コメンテーターが、21歳の同選手を「まだ子どもだ」などとして擁護するかのような発言をした。同選手は社会的には立派な成人であり、発言は不適切だ。

  • 詐欺被害に遭った人が、弁護士や調査員などとともに詐欺師と直接対決する番組だった。被害者が救われ、悪人が正義によって打ち負かされていく様子は爽快感があり、素晴らしい内容だった。「どんなに巧みな手段を使っても詐欺師は正義には勝てない」というメッセージが伝わり、今後の詐欺事件を減らすことや、視聴者の中で詐欺被害に遭った人を救済することにも繋がる。定期的に放送していただきたい。

  • 興味を持っていただけに、久々に恐竜についての特集が放送されてとてもうれしかった。CGも恐竜の大きさが分かりやすいように表現されており、実物がどのくらいの大きさだったのかが実感できて良かった。続編が放送されるそうだが、今後も恐竜関連の特集を放送してほしい。

  • 県内に残る昭和の面影を発見する特集コーナーが放送されている。オート三輪や、軽便鉄道などの懐かしい風景、あるいは、受け継がれる職人技や、伝統行事など、地元には歴史あるものが根付いていることを知ってもらう良いきっかけになる。こうした郷土の歴史に関わる特集が、週に一度のコーナーだけで終わってしまうのはもったいない。特番などにして放送できないだろうか。

  • 番組の特集コーナーは「県を元気にする」ことをうたっているが、取り上げられる内容は県庁所在地周辺や県央地域のものが多く、衰退が危惧されている県北地域や沿岸地域の紹介は申し訳程度だ。メディアの取り上げ方によっては地域の衰退に拍車をかけることもあるので、バランスを考えて企画していただきたい。

  • 参加者全員の食事代を賭け、食べた料理の金額を当てるコーナーは、賭博もしくは賭博類似行為の可能性がある。一人当たり1万円を超える食事代を賭けるのは問題なのではないか。

  • 地震で被災された方々がいて、1日におにぎり1個などと報道されているなか、大食い芸人が食べている番組を放送しているのは、同じ人間として恥ずかしい。数字が取れれば何をいつ放送してもいいのか。

  • "大食いコーナー"が地震で自粛されないかと心配だったが、放送されてうれしかった。"大食いタレント"はいつもきれいに完食し、食べ物を大切にしていることが分かる。だが同じ物を食べているタレントは半分以上残している。地震で人々が避難生活をしているし、世界には飢餓がある。食べ物を残さないなどの配慮が必要なので、こうした企画を続けてほしい。

  • 男性芸人たちが温泉に入浴するシーンで、一人の芸人がお尻を突き出し、そのお尻にどれだけ顔を近づけられるかを競うゲームを始めた。全裸のままであり、そのような内容を放送するのが信じられない。不快ですぐにチャンネルを替えた。

  • 回答者の無知さを競うようなクイズ番組が目立っている。タレントがデタラメな回答をして笑いをとる内容だ。近年、子ども達の学習能力が諸外国と比べて低下している中で、このような番組が放送されているのは如何なものか。

【ラジオ】

  • 三重県沖を震源とする地震の緊急警報メールが携帯電話に配信され、スタジオでも着信があったようだ。番組の放送中に、アナウンサーが事実をよく確認せず、「エイプリルフールですから」という趣旨の発言をした。その直後に揺れがあった。大きな地震でなかったので良かったが、もし大地震だったらどうするのか。軽率な発言ではないだろうか。

  • 深夜番組のパーソナリティーを務める男性お笑いタレントが、中高年の女性を「ババア」と呼ぶ。街角で見かけた女性や自分の祖母など、熟年女性を一括りにして「ババア」と呼び捨てるので、とても不快だ。そんな彼が、昼間の番組のパーソナリティーを務めるという。昼間から「ババア」を聴かされるのはご免こうむる。

【CM】

  • 最近、以前よりもCMの量が増えたように感じる。特にBSは、番組を見ているのかCMを見ているのか分からなくなるほどだ。私は車椅子利用の高齢者で、テレビが唯一の楽しみだ。テレビ局の苦しい台所事情も理解できるが、何とかして頂きたい。

  • いわゆる"課金ガチャ"によって収益を得るソーシャルゲームのCMが流れている。法的な規制はされていないのかもしれないが、"課金ガチャ"のシステムはギャンブル性が高く、賭博などへの抵抗感が減る可能性もある。ゴールデンタイムなど、青少年が目にする時間帯に流すのは規制されるべきだ。

  • 熊本県在住で地震情報を知るために毎日テレビを見ている。余震が収まらない状況の中、ACジャパンのCMには、結核予防を訴えるものなど、重苦しく気分が滅入るような内容のものがある。公共心を喚起せる趣旨は大変素晴らしく、ACジャパンの目的に異を唱えるわけではないが、そのようなCMを見せつけられる側の気持ちも察してほしい

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、エキストラの青年の背中に「バカ」と書いた紙を貼り、気付くかどうかを検証していた。紙を貼ったままの青年をスタッフが追跡したのだが、その青年は通行人に後ろから写真を撮られるなどしていた。非常に不愉快な企画だった。

  • 動物の気持ちが分かるという人が出演し、タレントの飼っている犬や死んだ犬の気持ちを話していた。このような非科学的な内容を地上波で放送することの子どもへの影響をちゃんと考えてほしい。百歩譲って放送するなら、あくまでもエンターテインメントとしての見せ方にするべきだ。

  • 海外の投稿動画を紹介するバラエティー番組で、消防士が燃えている車を消火しているシーンがあった。車が爆発するなど、大変危険なシーンだったのだが、ふざけた吹き替え音声になっていた。危険な場面に対する子どもたちの危機意識が薄れてしまうので、ふざけるのはやめてほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • バラエティー番組で、大人の女性と小学生を見分けるという企画があった。その際に小学生を含む一般女性に"キス顔"をさせる場面があり、大変不愉快だった。性的快楽を求めて未成年を誘拐する事件も多い。性的な感情を惹起しかねない"キス顔"を未成年にさせるべきではない。

【「犯罪の助長」に関する意見】

  • CMソングに「盗んだバイクで・・・」という歌詞が使われている。大人であればこの歌全体の意味を理解できるだろうが、子どもたちがどう理解するかについては不安がある。子どもたちの間で「盗みは犯罪である」という認識が薄れてしまうのではないかと心配だ。

【「危険行為」に関する意見】

  • バラエティー番組で、ミニトマトをかまずに何個口に入れることができるかを競っていた。これを真似た子どもが誤飲し、窒息するおそれもある。

第180回 放送と青少年に関する委員会

第180回–2016年4月26日

視聴者意見を中心に意見交換…など

2016年4月26日に第180回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。新しく就任した中橋雄委員をはじめ、7人の委員全員が出席し、まず、3月1日から4月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、4月の中高生モニター報告、調査研究、今後の予定について話し合いました。
次回は5月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年4月26日(火) 午後4時30分~午後7時10分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

  • 女子中学生が誘拐監禁されていた事件の報道に対し寄せられた、「被害者が早く社会に戻って友だちと楽しい人生を送ってほしいと思うので、もう騒がないでほしい」「被害者に対して"窓が2つもあるのになぜ助けを求めなかったのか"など、コメンテーターの発言に疑問を感じた」「心理学者などが被害者の当時の心理状況を分析していたが、どれも憶測に過ぎない。デリケートな事件なので被害者に対して十分な配慮が必要だ」などの視聴者意見について話し合いました。委員からは、「被害者の心の中にまで踏み込んだ発言の場合は、話して良い限界があるだろう。節度を保つことが必要だ」「コメンテーターの発言に対してフォローはあったのだろうか。番組として意見のバランスを取る必要があるのではないか」「専門家としての発言は、より慎重にならなければいけない」「コメンテーターの発言を番組ではどの程度把握しているのか、また放送局としての責任はどうなっているのか」などの意見が出ました。また、容疑者が逮捕された時に被害者の実名が一部の番組で表示されたことについて、委員からは「公開捜査していた過去の映像を使った編集上のミスなのだろうが、被害者のことを思えば、慎重に対応する必要があった」との意見がありました。しかし一連の報道に関しては「各局の対応は、それなりに配慮が感じられたものであった」としました。

  • 「"盗んだバイクで走りだす。行先も分からぬまま、暗い夜のとばりの中へ・・・"という歌詞を口ずさむCMは青少年に悪影響がある」という視聴者意見について、委員からは「犯罪の誘発に繋がることは無いだろうし、青春時代の心の葛藤を歌った名曲でもあり、問題は無い」との意見が出ました。

中高生モニター報告について

2016年度中高生モニター制度は、19都道府県から、男女16人ずつ、中学生16人、新しく3年生も加えた高校生16人の合計32人にモニターを依頼しました。
4月にお願いしたテーマは、「好きなテレビかラジオの番組を1つあげて、その番組の好きなところ、良いと思うところを具体的に報告してください」でした。また「自由記述欄」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。28人から報告がありました。
「好きなテレビかラジオの番組について」は、テレビについての報告は25人から、ラジオについては3人からありました。複数の意見があった番組は、3人から「中学生でも安心して見ることができる」などの報告があった『ZIP!』(日本テレビ)だけで、あとはすべて別々の番組でした。ジャンル別ではニュース・情報・クイズも含めて、知識を深める教養系の番組が最も多く、バラエティー系は6番組、ドラマは映画・アニメを含めても4番組でした。
「自由記述欄」では、ラジオへの想いを語った報告が複数ありました。また放送の現状に対して「バラエティー番組での過剰な演出は視聴者の疑惑や反感を買う」など問題点の指摘や、「ニュースの分かりにくい言葉はデータ放送に説明を載せてほしい」などの要望もありました。
「おすすめ番組」では、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK教育)について「授業や勉強の取り組みのためになった」など、7人が報告してくれました。また、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)、『林修の今でしょ!講座3時間SP』(テレビ朝日)など、知識を深めてくれる番組についても報告がありました。

◆委員の感想◆

  • 皆さん初めての報告ということで、どう書いたら良いのかずいぶん悩んだのだろう。この中高生が、1年間でどう成長していくのか楽しみだ。

  • 「最近の民放のニュース番組は少し偏った放送になっている」という意見があった。政治的なことを積極的に考えていこうという姿勢を感じた。また、テレビにおける公平性とはいったいどういうことかと改めて考えさせられた。

  • 『スーパープレゼンテーション』(NHK)を面白く見ているという、とてもしっかりした意見に感心した。

  • 時代に合わせてSNSをうまく使った『NEWS WEB』(NHK)についての報告があったが、これからのテレビの方向性を見据えている意見だった。

  • 「家族みんなで見ながら笑える番組」に好感を持つモニターが何人かいた。子どもからお年寄りまで家族みんなで見られる番組は大切だと思った。

  • ニュースで使われる分かりにくい単語の説明をデータ放送でしてほしいという意見があったが、なるほどと思った。

  • 「個人のSNSの情報をテレビで使っているが、プライバシーの侵害に思えてならない」という意見があったが、確かに今後、大きな問題になる可能性があるだろう。

  • 昔見たアニメを再放送で見て「こんなに面白かったのか」と感動したという報告があった。小さいころに見たテレビ番組を大きくなって再び見てどんなふうに感じるのか、テレビのもう一つの楽しみ方を発見できて良かった。

  • アニメ『ちはやふる』(日本テレビ/東京MXテレビ)は深夜帯の放送なので見られない。ゴールデンタイムのドラマでは、殺人事件で死体が普通に放送されている。深夜帯のアニメとゴールデンタイムの死体とどちらが健全なのか、死生観が軽視されている、という意見には考えさせられた。

  • 「ラジオにはテレビと違う独特の距離感の近さを感じる」など、ラジオについての積極的な意見があり、嬉しかった。

  • 知識について強い関心があることがうかがえる。表面的な知識はネットから、本当の知識はテレビから得ようとする姿勢を感じた。

  • はやりの芸人さんやモデルさんなどいつも同じ人ばかり見かけるので、飽きてしまう時があるという指摘があった。

  • おすすめ番組については『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK教育)への意見が多かった。中高生にとって等身大の番組なのだろう。好意的な意見も多かったが、動画を使うことによって肝心の内容が頭に残らないという指摘があった。

◆モニターからの報告◆

【好きなテレビ・ラジオの番組について】

  • 『モニタリング』(TBSテレビ/長崎放送)この番組の好きなところは、家族みんなで見ながら笑えるところです。それから、友達も見ているから学校で話題にできるからです。『モニタリング』は、毎回一般の人や芸能人を隠れてモニタリングします。今回の放送からユッキーナの髪形や色が変わっていて別人みたいでした。だけど可愛いです。今回の放送で一番面白かったのは、フジモン&ユッキーナのカラオケの相席をお願いされたらです。カラオケ店に突然来たらびっくり、嬉しいです。私の学校にも来てほしいです。一緒に歌を歌えるなんてすごい。だけど、放送されたら恥ずかしい。笑いが止まりません。テレビってすごいです。予測がつかないのが『モニタリング』。普段の生活ではありえないのに何で騙されちゃうんだろうと思いながら見ています。(長崎・中学1年・女子)

  • 『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)この番組は世間で話題になっているニュースの核心に迫り、池上彰さんが詳しく説明してくださる番組です。ネットなどでは情報の多さに惑わされ正しい情報を見抜くのが困難な時がありますが、正確な情報を選んでから説明してくださるので良いと思います。(千葉・中学1年・女子)

  • 私が最近興味を持って見た番組は『Rの法則』(NHK教育)です。『Rの法則』は最近流行っている事柄を取り上げて、同世代の人たちが議論したり、実際に色々なことを体験したりする番組です。私が好きなところは、最近同世代の女子の間で流行っていることや、それに対する色々な意見を聞くことができて、新しい発見がたくさんあるところです。インターネットをあまり利用しない私でも友達と最近の話題で盛り上がることができるので、こういう番組はとても有難いと思います。(岡山・中学2年・女子)

  • 『芸能人格付けチェック 一流芸能人に常識は有るのか!?』(朝日放送/北海道テレビ) 僕がこの番組を見て、良いと思ったところは、芸能人たちが様々なジャンルのお題をこなしていくうちに、僕たち視聴者もその豆知識をたくさん知ることができることです。次に良いと思ったことは、ほかの番組のように一つのお題ばかりではなく、様々なジャンルがあることです。色々なことに挑戦しているので、視聴者を飽きさせないと思います。あと一つ良いと思ったことがあります。それは、出てくる常識の数々がとても身近なことだということです。身近なことで様々なジャンルのお題をやり続けることで僕たち視聴者側にも良いことがあり、テレビ局側も視聴率が上がって良いと思います。(北海道・中学2年・男子)

  • 『基礎英語』(NHKラジオ第2放送)は学校で自主学習として勧められ、中学1年生のころから聞き始めました。毎日英語に触れられるし、外国の先生も講師をやっているので学校では聞けないような本物の英語に接することができとても新鮮です。親に聞くと、『基礎英語』は昔からあったけれどあまり面白くなかったと言っていたのですが、今は自分と同じくらいの子が主人公のストーリーになっているので共感できるし、また、口語的な英語や日本語とは違う表現(笑い方とか泣き方とか)を知ることができるので面白いです。教科書だと英語って難しいイメージがあるけど、『基礎英語』を聞いているともっと楽しく勉強できるなと思いました。ただ、飽きて聞かなくなってしまうことがあったので、例えば放送中にキーワードを言って1か月分まとめて送るとイベントに参加できるとか、景品が貰えるとかすれば、もっと積極的に聞くかなと思います。(千葉・中学3年・女子)

  • 『ZIP!』(日本テレビ)番組の好きなところは、中学生が安心して見ることができる内容であることです。例えば、朝の忙しい時間に、今朝知っておきたい「ニュース」と「流行」を知ることが可能です。また、桝アナウンサーが、判りやすく内容を掘り下げてくれます。得意な「自然科学」については、中学生にも分かりやすい「視点」で説明してくれることで、中学校の友達で話題になることが多いです。コメンテーターが、新聞社等出身の「オジサマ」でないことに好感が持てます。構成が10分程度にまとめてあるので、朝食をとりながら頭の準備運動としては、最高です。今後は、経済ニュースについても関心を持って、18歳からの選挙権を有効に果たして行きたいと思います。(東京・中学3年・男子)

  • 『スーパープレゼンテーション』(NHK)この番組では、TEDカンファレンスという場で、さまざまな分野の人がスピーチをする様子を放送しています。そこには思想、医療、芸術など様々な分野で、魅力的なアイデアや考え方を持った人がたくさんいます。私は番組を見るたびに読んだことのない本を読んだような気分になります。この番組を見るようになったのは、母にこの番組面白そうだよと勧められたことがきっかけでした。これまで、経営の話や旗のデザインの話など、興味を持てる話がたくさんありました。私は、この番組を見ることによって、将来の自分にポイントが1つずつプラスされていくと思っています。自分が誰かに考えを伝えたり、どのような行動をすればよいか迷ったりしたときに、この番組で感じたり考えたりしたことを生かせるからです。(高知・高校1年・女子)

  • 『クイズやさしいね』(フジテレビ/関西テレビ)いわゆるクイズ番組では、高学歴のインテリ芸能人が出演し、その博識を披露するのがお決まりである。しかし、この番組にはそのような芸能人が出演していないこともあり、知識量、学力に関わらず誰でも参加できるクイズ番組という印象を与え、新鮮さを感じる。また、「優しい人」を評価する番組のコンセプトは、正解、不正解に縛られない"緩さ"を示すもので、これもクイズ番組としては画期的だと思う。ただ、「ネタ切れ」が少し心配。このようなチャレンジ精神のある番組がもっと増えることを期待している。(京都・高校1年・男子)

  • 『忍たま乱太郎』(NHK教育)まず何より、子どもから大人まで楽しめる。私自身、幼稚園から小学校低学年の頃まで見ていたがその後見なくなったのを、高校に入って再び見始め、「こんなに面白かったのか」と感動したのである。1話10分と短いが、その10分は非常に密度があり、鋭いギャグを飛ばしてくることもあれば、心温まる話に感動させられることもある。作画や声優の演技も安定しており、非常に質の高いアニメだと思う。また、たくさん登場人物がいるが、登場時には毎回「○○○の○○○じゃないか」などと、名前とともに人物紹介がセリフに挟み込まれるので、途中から見ても問題なく楽しめるのも良いところだと思う。(神奈川・高校2年・女子)

  • 『SCHOOL OF LOCK』(FM東京/FM山口)この番組は、主に中高生を対象としたラジオ番組です。パーソナリティー2人を中心に進められ、リスナーに電話をして話を聞いたり、ゲストとトークをしています。私は「掲示板逆電」というコーナーが好きです。リスナーが、公式サイトの掲示板に書き込んだ内容をパーソナリティーが見て電話し、話を聞いていくコーナーです。書き込みは明るいものばかりではなく、悩みを書いているものも多数あります。パーソナリティーの2人はいつも親身になって考え、時には怒ったり、泣いたりし、リスナーと気持ちを通わせています。そして必ず少しでも良い方向に進むように助言しています。このコーナーを聴くと、テレビとは違うラジオ独特のリスナーとの距離感の近さを感じることができるので、私はこのコーナー、そしてこの番組が好きです。(山口・高校2年・男子)

  • 私の好きなテレビ番組は、放送終了してしまいましたが、『NEWS WEB』(NHK)です。なぜ、この番組を選んだかというと理由が3つあげられます。1つ目は時代に合わせたTwitterを取り入れ視聴者の意見で番組を作っていたところです。2つ目は、番組に呼ぶゲストを曜日ごとに変えて放送していたことです。毎日同一人物のゲストだと意見や物の見方に偏りが出てくる恐れがあります。3つ目は、画面の右端に表示されていた、Twitterカウンターです。この番組をどれくらいの人が見ているのか、また、リアルタイムでカウントしていくので、視聴者がどの話題・コーナーに興味があるのかが一目で分かります。
    視聴者が番組、特にニュースを見ていく上で一番重要視することは、
    ● ニュースの内容をいかに映像や画像、音声を駆使して分かりやすく伝わるか?
    ● 出演しているキャスターやゲストが行う、番組の進行・話の間・話し方
    ● 番組で取り上げる話題性やその取り上げ方
    これらをいち早く番組側が察知し、番組に反映できたかが最終的に視聴率が上がることに繋がっていくと思います。(福岡・高校3年・男子)

【自由記述欄】

  • 最近私がニュースを見ていて思ったことは、青少年がニュースを見る上で、分かりにくい単語などが出てくると、そのニュースを理解するのが難しいということです。最近デジタル化が進んでいるので、データ放送に言葉の説明を載せると、ニュースをもっと分かりやすく見ることができて良いと思います。(岡山・中学2年・女子)

  • 『ガキの使いやあらへんで!!』(日本テレビ/札幌テレビ)の絶対に笑ってはいけないシリーズが全国の母親に評判が悪いという噂を耳にするのですが、僕たち子ども目線でいうと学校などでその話で盛り上がることができたりするので、放送中止というのは避けて頂きたいです。(北海道・中学2年・男子)

  • 最近のテレビの情報番組で、個人のSNS画面を出したり、LINEのトーク画面を公表したりと個人情報を公表しているように思います。こういうものは、プライバシーの侵害に思えてなりません。また、家族でテレビを見るときもよく親が「くだらない番組が多い」と言っているように、もう少し各放送局がテレビの内容を見直していくのが良いと思います。そして、番組の司会の方の発言がたまに騒がれることがありますがそういう発言は控えた方が良いと思います。(埼玉・中学2年・男子)

  • お母さんは子どもが見てもいい内容なら、子どもが起きている時間帯に放送されるのでは?というけれど、今放送していて映画化もされた『ちはやふる』(日本テレビ/東京MXテレビ)が真夜中に放送されていて見られないのが残念です。一方で、ゴールデンではサスペンスやミステリーのドラマが多く、いきなり殺人現場から始まります。アニメが深夜でゴールデンに死体を見ることになるのとどちらが健全なのかなって思う。死生観が軽視されている気がしました。(神奈川・中学3年・女子)

  • はやりの芸人さんやモデルさん、俳優さんがその時々でたくさん出ていて、いつも同じ人ばかり見かけることがあり、またあの人かと飽きてしまうときがある。(東京・中学3年・女子)

  • 最近のバラエティー番組を見ていて、一般の人を使った企画が多くて面白いと感じるものが増えた。だが一方で、これは制作者側が操っているのかと思ってしまう番組が少々見られる。番組の過剰な演出はときとして視聴者から疑惑や反感を買う恐れがあると思う。(東京・高校1年・女子)

  • 最近の民放のニュース番組は少し偏った報道になっているような気がする。例えば集団的自衛権。どの番組も反対派についての報道に重きを置いており、賛成派については反対派に比べてあまり報道されず公平な報道ができていないような気がしてならない。民放ということで背後にスポンサーがいることが影響しているのかもしれないが、報道番組はスポンサーや収益よりも公共の電波を使い収益を得ている以上、公平である必要があると思う。さらに先日の誘拐事件では少し被害者に対する配慮が欠けていたように感じた。もう少し民放における報道番組のあり方を考えるべきなのかもしれない。(兵庫・中学3年・男子)

  • 最近ラジオを聴く人がどんどん減っているように感じています。その理由はラジオに興味がないということではなく、学生がラジオを聴く手段や時間がないことだと思います。家にラジオがあったとしても、災害用として準備されているだけで、普段の生活のなかで聴いている人は少ないでしょう。また、ラジオを聴くよりは好きな音楽を聴いたほうがいいと思う学生も少なくないと思います。(高知・高校1年・女子)

  • 一つの問題や話題をどこの放送局も同じように何度も何度も取り上げるので、チャンネルがたくさんあっても意味が無いなとたまに思う。(福岡・高校1年・男子)

【おすすめ番組について】

  • 『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK教育)みんなが苦手なところの勉強の仕方を分かりやすく、具体的な方法をVTRで流しているので自分もやってみたいと思えるので、勉強する良いキッカケになると思いました。司会者の後ろに学生の人が座っているのですが、その人たちにも意見を聞くと良いなと思いました。(宮城・中学1年・女子)

  • 『世界一受けたい授業スペシャル』(日本テレビ)を見た。画家の特集は、あまり知らないことが多く、とても面白かった。(神奈川・高校2年・女子)

  • 『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK教育)放送時間は約30分と、忙しい月曜日の夜には適した放送時間だと思いました。放送内容は、新しい勉強法ということで"動画"と組み合わせるというのは、中高生には「見ていて面白い」内容だったと思いました。橋本環奈さんや、大関れいかさんなど、出演者は中高生にはウケが良いでしょう。"まこみな"さんたちが双子ダンスと生物の歌にトライしていたが、"双子ダンス"というのが中心にあるため、では生物に関して何か分かったのかと聞かれても何も無かった。動画と結び合わせる=視覚的な情報が多くなるということを、もう一度考え直してもらいたい。(広島・高校2年・女子)

  • 『林修の今でしょ!講座3時間SP』(テレビ朝日)普段の生活に役立つ正確な知識を身に着けることができる。問題提起から結論までの過程が面白い。なにより、今まで知らなかったことを知ることができて、それが私たちの好奇心をかきたてたり、新たな発見をすることに繋がる。(東京・高校2年・男子)

今後の予定について

  • 6月8日に新潟で開催するNHKを含む在新潟テレビ・ラジオ7局との意見交換会について、事務局から事前打ち合わせの報告があり、テーマなどについて話し合いました。

  • 9月12日に広島で開催予定の意見交換会について、事務局から進行状況の報告がありました。

  • 10月14日に大分で開催予定の留学生との意見交換会について、事務局から進行状況の報告がありました。

  • 2015年10月30日の立命館守山高校での意見交換会のときに行った、高校1・2年生267名を対象にした「メディアと高校生の考え方に関するアンケート調査」は、6月の委員会をめどにまとめるという報告が菅原委員からありました。