第303回放送と人権等権利に関する委員会

第303回 – 2022年4月

「判断ガイド2023」の編集方法を協議…など

議事の詳細

日時
2022年4月19日(火)午後4時~午後5時30分
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、松田委員、水野委員

1. 2022年度新任委員挨拶 新任調査役挨拶

2022年度の新任委員として松田美佐中大教授が挨拶した。また、6人の調査役のうち3人が新たに事務局に加わりそれぞれ挨拶した。

2.「判断ガイド2023」について

概ね5年に一度の改訂を行っている「判断ガイド」の次期改訂方針について、事務局から報告した。現在の「判断ガイド2018」以降に10本の「委員会決定」が公表されているため、新たな決定をどのような方法で編集していくかなどを協議した。

3. その他

事務局から最新の申立て状況について説明した。また、4月15日に公表されたBPO青少年委員会「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について事務局から概略を説明した。

以上

2022年4月15日

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解

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2022年4月15日
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会の視点
インターネットの普及によるメディアの多様化の中で、従来のテレビやラジオなどの公共性が高い放送の相対的な位置が低下してきていると言われているが、依然として放送は、国民の誰もが視聴できるという特性を有するがゆえに、老若男女を問わず国民の生活に大きく関わっている。こうした放送の幅広い公共性がBPOの存立の基礎にあることは、BPOの創立以来不変の事実である。
単に青少年向けに作られた番組だけではなく、大人向けに制作された番組も、録画や「テレビ、ラジオ以外のメディア」によって、青少年の誰もがいつでもどこでも番組を視聴することが可能になった。青少年委員会は、BPOに統合前の当委員会の時代から、青少年向けの番組のみならず全ての番組について、それらが成長と発達の過程にある青少年の人間観、価値観、さらには社会情動性の発達に与える影響について注意を払うとともに、番組制作者に向け、以下の2つの見解をはじめ、折に触れて委員会の考えや委員長コメントを提示してきた。
今回、当委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議入りしたのも、これまでの基本的な視点の延長線上にある。

バラエティー番組に関するこれまでの当委員会の見解
バラエティー番組は、そのダイナミックな構成と展開によって、多くの国民の間で高い人気を博している。一年を通じて、人気のある芸人が出演するバラエティー番組は、相対的に高い視聴率を得ている。翻ってこのことは、人気のある芸人が出演する番組は、それを視聴する多くの視聴者に大きな影響力を持っていることになる。これまで当委員会の審議事案の多くがバラエティー番組であったこともこうした事情を反映している。

BPOに統合前の当委員会は、2000年11月29日に、暴力を肯定するようなシーンに対して「武力や暴力を表現する時は、青少年に対する影響を考慮しなければならない」という民放連放送基準(19条)などに抵触し、「"いじめ"を肯定的に取り扱わないように留意する」という放送基準審議会からの要望(1999年6月)の趣旨に反するという理由で見解を公表し、番組制作者に注意を喚起している。

さらに、当委員会は2007年10月23日に、バラエティー番組の中でよく行われる「罰ゲーム」に関して、「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解を発出している。同見解は、出演者をいたぶる暴力シーンについて、バラエティー番組を好んで視聴している中学生モニターさえも「人間に対する否定的な扱い」に対して一様に不快感を表明したことを紹介するとともに、暴力シーンと未成年者の「いじめ行動」との直接的な関係に関しては、いまだ確定的な結論が見出されていない現状ではあるものの、多くの青少年がテレビメディアの公共性を信頼している中において、「人間を徒らに弄ぶような画面が不断に彼らの日常に横行して、彼らの深層に忍び込むことで、形成途上の人間観・価値観の根底が侵食され変容する危険性もなしとしない」と述べ、番組がこうした動きを増幅させないよう一考を促している。

当委員会に寄せられる視聴者意見や中高生モニターの意見
当委員会は、上記をはじめとした一連の見解、委員会の考え及び委員長コメント等が番組制作者に共有され、バラエティー番組の企画制作に活用されていることを願うものである。しかし、ここ数年間、「出演者の心身に加えられる暴力」を演出内容とするバラエティー番組に関して、当委員会に寄せられる「いじめを助長する」「不快に感じる」という趣旨の視聴者意見は減少していない。また、近時の中高生モニターからも、「本当に苦しそうな様子をスタジオで笑っていることが不快」「出演者たちが自分たちの身内でパワハラ的なことを楽しんでいるように見える」など、不快感を示す意見が一定数寄せられている。
他方において視聴者からは、これまでにもバラエティー番組に対してBPOが見解等を表明することにより「テレビがつまらなくなる」「家庭の教育の問題」というような趣旨の意見、また当委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議を開始したことに対して、「BPOの規制により番組の多様性を失う」「表現の自由の範囲内の内容だ」「いじめは家庭のしつけの問題」などの意見も寄せられている。
あらためてBPOは、放送における表現の自由を実質的に確保するとともに、青少年の健やかな成長と発達にも資することを目的として、放送界が自ら設置した第三者機関であることを確認したい。今なおテレビが公共性を有し放送されることは、権威を伴って視聴者に受け容れられているといってよい社会状況のなかで、暴力シーンや痛みを伴うことを笑いの対象とする演出について番組制作者に引き続いて検討を要請するために、この見解を示すことにした。

審議の経過
当委員会は、2021年8月24日開催の委員会において「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議することを決定し、その後、2022年3月22日まで7回にわたり委員会で審議した。審議の過程で、2009年11月17日公表の「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を発出したBPO放送倫理検証委員会の委員の一人であった水島久光東海大学文化社会学部教授からのヒアリング及び意見交換、バラエティー番組制作に携わるテレビ局関係者との意見交換、2021年度青少年モニターとの意見交換を行った。

暴力シーンの意味
暴力シーンは、それ自体で視聴者に情動反応を引き起こし、幼少児では模倣行動を惹起するという意味で、その放映には十分な注意が必要である。しかし、番組の中で暴力シーンが提示される文脈(ストーリー)や、暴力を振るう個人と暴力を振るわれる個人の関係性によってその意味が大きく違ってくる。
事前に両者の間の一定の了解ないしはルールが明示されている場合と、そうでない場合で、視聴者の受ける情動的インパクトは大きく異なる。ルールのある格闘技(たとえルール破りという演出があっても)や、ドラマの中での暴力シーンは、幼少児を除いては、両者の了解のもとに行われる一種の演技であることが視聴者にも明白である。
ところが近年のバラエティー番組の罰ゲームやドッキリ企画は、時として視聴者へのインパクトを増すために、出演者の間では了解されていたとしても、リアリティー番組として見えるように工夫されている。より強いインパクトを求めて、最近のリアリティーショーは、制作者、出演者の作り込みを精緻化させ、大人でさえもリアルとしか思えないような演出がなされることもある。中高生モニターの高校生の中には、制作者と出演者の間の了解を理解している例も見られるが、視聴者が小学生の場合は、作り込まれたドッキリ企画をリアリティー番組としてとらえる可能性は高い。

近年には、多数の視聴者からの批判が寄せられた以下のような番組がある。

刺激の強い薬品を付着させた下着を、若いお笑い芸人に着替えさせ、股間の刺激で痛がる様子を、他の出演者が笑う番組があった。被害者のお笑い芸人は、事前にある程度知らされていたのかもしれないが、痛みはリアルであり、周りの出演者は他人の痛みを嘲笑していた。

深い落とし穴に芸人を落とし(ここまではドッキリ番組の定番であるが)、その後最長で6時間そのまま放置するというドッキリ番組もあった。その穴から脱出するための試みが何回となく放映され、脱出に失敗して穴の中に落ちる芸人を、スタジオでビデオを視聴する他の出演者のうち何人かが、嘲笑するというものもあった。

この2つの事例は、視聴者と、心身に加えられた暴力に苦悶する出演者の間に、それを見て嘲笑する他の出演者が入るという多重構造になっている。
この「他人の心身の痛み」を周囲の人が笑う場面が、リアリティーショーの体裁として放映されることの中に、2007年の当委員会の見解の中で憂慮した「人間を徒らに弄ぶような画面が不断に彼らの日常に横行して、彼らの深層に忍び込むことで、形成途上の人間観・価値観の根底が侵食され変容する危険性」が現実化しかねない、以下に述べる理由がある。

「他人の心身の痛み」を周囲の人が笑うことを視聴することの意味
近年の発達心理学と脳科学の発達によって、人の社会性や情動性の発達に関わる脳内活動についての理解が深まった。人が健全な社会性を獲得する上で重要な、「他者の気持ちや意図を理解する能力の発達」が、ミラーニューロン系と呼ばれる一連の脳内回路によって担われていることも明らかになっている。他者の表情や行動を見ることによって、自分が同等の表情(感情)や行動をしたときに活性化される脳内部位があり、それがミラーニューロンにあたる。たとえば他者の痛みによる苦悶の表情を見ると、自分が同様の痛みを感じたときに活性化する、自身のミラーニューロンが活性化することがわかっている。「他者の苦痛を慰撫することで、自分のミラーニューロンの活動(投影された痛み)が軽減するという仕組み」が、共感性発達の重要な鍵になるのである。子どもは「他者が慰められたり苦痛から解放されたりするシーンを見ること」で、自分自身も解放され、自然に他者の困難を助けようとする共感性を発達させてゆく。幼少時から、苦痛や困難に苦しむ人が他の人によって慰められたり助けられたりする場面を見ないで育った子どもは、共感性の発達が障害される可能性が高くなる。幼少時に虐待を受けた子どもが、自分が親になったときに、自らの子どもを虐待する率が高いこと(虐待の世代間連鎖)も、こうした共感性発達の障害が原因であると考えることができる。

では、バラエティーのドッキリ番組で、リアルに(見える)心身の痛みに苦しむ芸人を、周囲の他の出演者が嘲笑しているシーンを見たらどうなるだろうか。「苦しんでいる人を助けずに嘲笑する」シーンは、ミラーニューロンの活動を軽減せず、子どもの中に芽生えた共感性の発達を阻害する可能性があることは否めない。さらに他人の心身の痛みを嘲笑している人が、子どもが敬愛し憧れの対象である芸人だとしたらその影響はさらに大きなものになるであろう。

このように、攻撃的な場面が繰り返される番組が、人間の心理、とりわけ子どもの行動傾向および心理発達に与える影響については、多くの科学的エビデンスがもたらされている。米国を始めとする先進国において、過去60年間に蓄積された心理学・医学・社会学等の論文をメタ分析した研究では、暴力的な映像を日常的に視聴する青少年には、攻撃行動の増加および暴力に対する鈍感さ(脱感作)や、向社会的行動(例:援助行動)の減少と共感性の低下等々の心理・行動の変化が起きることが確認されている。暴力的な状況下で被害者が痛みを伴う場面を繰り返し視聴することには、視聴する子どもの攻撃性を増す危険因子があることが実証されているのである。こうした子どもの攻撃性は、視聴直後に現れるとは限らない。6歳から10歳の子どもが、攻撃的な場面の多い映像を視聴し続けたあと、その子どもが15歳から18歳になる頃に、攻撃的・反社会的行動の発現の頻度が高まることを示す縦断研究があることは、映像の視聴の影響が潜在的に長期に及ぶことを示唆するものである。

さらに、当委員会では、前述のように2000年と2007年に見解を出しているが、2013年に「いじめ防止対策推進法」が成立するなど、この15年の間にいじめをめぐる社会的認識は大きく変化している。テレビで演出される「他人に心身の痛みを与える行為」を、青少年が模倣して、いじめに発展する危険性も考えられる。また、スタジオでゲストが笑いながら視聴する様子が、いじめ場面の傍観を許容するモデルになることも懸念される。

結びとして
当委員会は、もとより番組制作者に対してバラエティー番組の基準やルールを提示することを目的として本見解を出すものではない。
気持ちの良い笑いが脳を活性化させてリラクゼーション効果をもたらし、ストレスを解放して、円滑な人間関係にもつながることは多くの人が実感するところである。バラエティー番組がテレビにおける重要なジャンルの一つであることは疑いようがなく、当委員会は、テレビ局関係者との意見交換等をとおして、制作者が限られたリソースのなかで工夫を重ね、視聴者に快い笑いを届けるために努力を重ねていることも認識しているつもりである。
その上で、70年余のテレビの歴史とその公共性に鑑みれば、その時々の時代や社会状況のなかで、視聴者を楽しませるバラエティー番組の制作を実現するためには、番組制作者の時代を見る目、センスや経験、技術を常に見直し、改善し、駆使することが重要であることを改めてお伝えしたい。
そして、「他人の心身の痛みを嘲笑する」演出が、それを視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性があることが、最新の脳科学的及び心理学的見地から指摘されていることも事実であり、公共性を有するテレビの制作者は、かかる観点にも配慮しながら番組を作り上げていくことが求められている。
当委員会は、番組制作者がテレビの公共性や青少年に与える影響を真摯かつ謙虚に受けとめながら、今後もさらに表現に工夫を凝らしてバラエティー番組の楽しさを深め、広げていくことを期待して、本見解を出すことにした。

以上

第170回 放送倫理検証委員会

第170回–2022年4月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第170回放送倫理検証委員会は4月8日に千代田放送会館で開催された。
字幕の内容に誤りがあったとされるNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、2月の委員会で審議入りが決まったことを受け、今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告され、事実関係について共有し議論を行った。
民放局のバラエティー番組に、同じ政党の幹部3人が出演し政治的な課題などについて見解を語ったことについて、当該放送局から提出された全社研修など事後対応についての報告書を踏まえ議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年4月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。 放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。 2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。 今回の委員会では、これまでに当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告され、委員の間で事実関係を共有し議論を行った。 次回の委員会では、今後行われるヒアリングの概要が報告され、意見書の原案が提出される見通しである。

2. 同じ政党の幹部がそろって出演した民放局バラエティー番組について議論

元日に放送された民放局のバラエティー番組に同じ政党の幹部3人が出演し、政治的な課題などについて見解を語ったことについて、視聴者から政治的公平性を問題視する意見がBPOに寄せられた。先月の委員会では、当該放送局から社内の調査チームがまとめた報告書とそれをもとに行われた番組審議会の議事録要旨が提出され、議論が行われた。今回は、当該放送局から全社研修の実施や番組内容を確認し助言する体制を強化することなど、事後対応の進捗状況について報告書が提出された。これらを受けて委員会では、放送における政治的公平性についてどのような形で意見表明をすべきか等について意見が交わされ、さらに検討が必要であるとして議論を継続することとした。 

3. 3月に寄せられた視聴者意見を議論

3月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、民放放送局の深夜のバラエティー番組(生放送)で、女性の身体的特徴に関する発言や差別的な表現等が放送されたことに対し批判的意見が多数寄せられたことについて、事務局から概要が報告され議論したが、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの結論には至らなかった。

以上

2022年3月に視聴者から寄せられた意見

2022年3月に視聴者から寄せられた意見

深夜のバラエティー番組出演者の発言について「セクハラ」や「差別」を指摘する意見が多かった。また、ウクライナ人ゲストへのラジオ番組出演者の発言に対して「配慮を欠く」などの意見が寄せられた

2022年3月にBPOに寄せられた意見は1,717件で、先月と比較して213件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール 82%、電話 16%、 郵便・FAX各 1%
男女別は、男性40%、女性22%で、世代別では40歳代 27% 、30歳代 21%、 50歳代 20% 20歳代 14%、 60歳以上 12% 、10歳代 2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送事業者を特定したものは、当該事業者のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。3月の通知数は922件【55事業者】であった。
このほか、放送事業者を特定しない放送全般への意見の中から23件を抜粋し、全会員事業者に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

深夜のバラエティー番組出演者の発言について「セクハラ」、「差別」と指摘する意見が多かった。また、ラジオ番組出演者のウクライナ人ゲストへの発言に対して「配慮を欠く」などの意見が寄せられた。ラジオに関する意見は87件、CMについては27件あった。

青少年に関する意見

3月中に青少年委員会に寄せられた意見は104件で、前月から12件増加した。
今月は「低俗、モラルに反する」が23件、「いじめ・虐待」が18件、「表現・演出」が14件、「差別・偏見」が12件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 電話出演したウクライナ人ゲストに対し、スタジオ出演者が「ウクライナが抵抗を続けることで死者が増えている」「『無駄死に』させたくない」などと発言、ゲストが取り乱すまでに至った。発言のもとになっているのが、ウクライナの人々の命を心配する気持ちであることは分かるが、心配していることを表現するに留めるべきであったと思う。

  • 有名タレントの名を冠した「緊急生放送」番組。「ゼレンスキー、プーチン両大統領の素顔に○○(タレント名)が迫る」などと予告していた。ウクライナ情勢について専門家の意見は他の番組で聞いていたので、より視聴者に近い彼の意見が聞きたいと思って番組を見た。ところが彼の発言はほとんどなく詐欺にあったような心持ちだった。番組タイトルは視聴率を取るためのものだったのか。

  • 2月に新型コロナに感染し復帰した情報番組の司会者が「『しばらくは抗体価が高いのでワクチンは今だと打ち損になる』などと聞いたので3回目はまだ接種していない」と発言した際、コメンテーターの一人が強い口調で「打ってないの?番組の代表であるMCが3回目打ってない」と非難した。テレビでワクチン接種を推奨することを悪いとは思わないが、未接種者を責めるような内容を放送するのはいかがなものか。

  • 学校でのいじめの問題を取り上げていた。27分間の番組で全てを表現するのは難しいとは思うが、いじめが犯罪であることが強調されなかったことに危機感を覚えた。やはりこのことが社会的に認知されていかないといじめ、自殺者は減らないと思う。でも放送することは非常に良いこと。次回はもっと良いものになることを願っている。

  • 子宮頸がんワクチンの積極的接種が始まるという特集が放送されたが、約9年前、何の医学的根拠もなく副反応の不安をあおる報道がなされた。生命を守るための国の政策であるにもかかわらず、当時の報道にはそれを中止させようという意図があったはず。放送局は毎年子宮頸がんで亡くなる人の数字をどう見ていたのだろうか。今回、メディアとして反省がはっきりと示されなかったことに憤りを覚えた。

  • 成人式会場周辺で暴走行為をした疑いで逮捕された新成人が「日本一派手な成人式にしたかった。捕まったのは残念だがテレビに映って日本一なので満足している」と供述。暴走行為を放送するテレビ局は「彼の愚行を誘ったのは自分たち」という自覚を持つべきだ。

  • ニュース番組の「野菜泥棒」「さい銭泥棒」の取材方法、放送内容について。無人野菜売り場や神社にカメラを仕掛け、スタッフがまるで探偵のような行動をとって盗んだ人物に詰め寄り、警察に現行犯で逮捕させる。犯罪者を作り上げているようなやり方だ。泥棒が絶対にいけないのは当然だが、人権はどうなるのか。テレビ局、報道というものはここまで許容されるのか。

  • 私は視覚障害者。ニュース番組の外国人のインタビューが、音声は原語のまま、日本語訳は字幕のみというケースがあり困っている。ロシアの戦争の情勢を知りたいと思っても、緊迫している雰囲気は想像できるが発言の中身が分からないので、ただただ不安を煽られているように感じることも多い。「吹き替えではニュアンスが変わってしまう」という意見も聞くが、聴覚に頼る人のためにぜひ吹き替えをつけてほしい。

  • 外国人のインタビューの日本語訳は、吹き替えではなく字幕で示してほしい。視覚障害者向けの吹き替えは副音声に入れてほしい。吹き替えでは話し手の元の発言が聞き取れず、誤訳、改ざんの可能性も否定できなくなる。

  • この報道・情報番組に出演しているのは、MCもコメンテーターも皆同じ考えを持つ人ばかり。反対意見を持つ人を出演させて番組内で議論するのなら理解できるが、これでは一方向に誘導されているように感じてしまう。

【番組全般・その他】

  • スタジオに水着姿の女性を並べて「品定め」。尻の大きな女性を例えて「ホッテントット」。「胸の張りで生理の前か後か分かる」には背筋がゾッとした。共演の男性タレントにも自慰の頻度を言わせるなど屈辱的なセクハラ。出演者とスタッフによる公開セクハラ、人権侵害だ。

  • スタジオに水着姿の女性を並べて「品定め」。さまざまなハラスメントがあった非常に不快な内容だった。「お色気」がよくないのではなく、異性や他者への敬意に著しく欠け、その尊厳を傷つけていて、大きな問題があると感じた。

  • タレントたちにニュースを解説する番組の「日韓関係SP」。全編が韓国を蔑視する論調で見るに堪えないものだった。こんな差別的な番組を放送していいわけがない。

  • タレントたちにニュースを解説する番組の「日韓関係SP」。日本の公式の立場を全く考慮せず、韓国側の主張に基づいて解説している。

  • 何らかの理由で歯が少ない一般の人をスタジオに集め、タレントたちが滑舌などを手掛かりにして歯の本数を当てるというゲーム。人の身体的欠損を笑う悪趣味な企画だった。気分が良くないし倫理的にどうかと思う。

  • 教員をしていて、東京大学をあがめるような番組の影響を子どもたちが少なからず受けている気がする。難関校に行きたがるが「将来自分が何になりたいか、何を学びたいか」については深く考えていない。「学歴ではなく何を学ぶかが大事」と諭すと、「学歴が悪いと馬鹿にされる」と答える生徒までいた。テレビで過度に学歴を誇張すると、それが社会に広まっていったり、子供たちの視野を狭めたりするのかなと感じた。

  • 何十年と放送が続く人気アニメでは、母親はみな専業主婦、父親は会社員。性別によって役割を決めつけ、そのイメージを子どもたちに洗脳のように植えつけている。ジェンダーギャップで日本が世界から取り残される下地になっていると思う。子どもたちに「ジェンダーギャップを助長するからこの番組は見ないで」とは言えない。何かを変えていかないと世界との溝は埋まらない。

  • サッカーW杯アジア最終予選。日本が勝てばW杯出場が決まるという試合なのに、地上波で放送する局が一つもない。がっかり。

  • 飲食店を紹介する番組を見て店に行った。放送では「一人前2,800円」だったが実際には1人1万円。ほかの客たちも皆同額だったので仕方なく支払った。制作している局にメールで事情を知らせたが何の返答もなく、この店はその後も何度か紹介されている。いくらバラエティー番組であっても情報は正しく伝えてほしい。他の店の情報も嘘っぱちなんだろうと思ってしまう。

  • 出演者がある場所の写真を渡され、写真から読み取れる情報をスマホで検索しながら、いかに早くその場所にたどり着くかを競うゲーム。約45分間のこの企画のかなりの部分が「歩きスマホ」で目的地に向かう出演者の姿で、強い違和感を覚えた。歩きスマホの女性が踏切で亡くなった、あの悲惨な事故を思い出した。

  • タレントが旋盤で「寸胴なべ」製作にチャレンジ、手袋を着けたまま回転部に手を近づけたり、回転する寸胴に触ったりしていた。一歩間違えば指や腕を失う非常に危険な行為。製造業に携わる者からすれば放送できるレベルではない。視聴者が参考にしたら危ない。

  • 大学院で脳の病気について研究している。番組でタレントがフィギュアスケートに挑戦、転んでリンク氷面で頭を強打した。「30分後、復活」と練習を再開していたが、この対応は非常にまずい。たとえヘルメットを付けていても危険な場合がある。タレント本人の健康を考えるとすぐに病院に行って検査を受けるべきだった。

  • 一部の放送局が視聴者意見の電話を、「0570」で始まる有料サービスでしか受け付けなくなった。公共の電波を使って放送事業を行う者が、視聴者からの意見に料金を課すというのは良くない。視聴者の意見に耳を傾けないという姿勢を取っているかのようだ。従来の番号に戻してほしい。

青少年に関する意見

【「低俗、モラルに反する」】

  • グラビアアイドルを集めて女性の体のことを揶揄、その女の子達に対する利きおっぱい、生理は匂いでわかるなどの際どいセクハラ発言。また男性МCに月に何回自慰をするのか聞くなど、男女双方にセクハラを感じた。「この時代において、尖ったことをやろう」というテーマなのだろうが「尖ったこと」とは女性軽視なのか。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 「人の普通の行動、クセを許せるかどうか」の基準を作るという企画、意見の不一致があれば階段を落とされ熱湯に入れられるという罰ゲーム。人の生まれながらの笑い方について笑い、怖い、許せない、気持ち悪いなどの悪口を平気で言う。笑い方が似ている娘はショックでトラウマになりそうと言っている。人のちょっと変わった特徴を笑うだけでなく、蔑み、許せるかどうかの基準を作るのはいじめにつながる。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 占い企画で、「29日生まれは嫌われる、人に好かれない」という発言。自ら鑑定を望んだ人に対してはいいと思うが、学生はちょっとしたことでイジメや揉め事、派閥が生じるデリケートな時なのに、いくら占いとはいえ、無神経に倫理観を欠いた発言と番組作りだ。

【「差別・偏見」に関する意見】

  • あるドラマの内容…主人公が住むアパートに越してきた青年には「連続幼児殺人事件の犯人・元少年A」とのウワサがあり、そのウワサをSNSに流していたのは、わが子を犯罪で失った過去のある管理人だった。犯罪を憎むあまりの過激な行為だが、ドラマの結末は「誤解も解け、全てを水に流してめでたしめでたし」となっていた。だが管理人の行為は反省すれば許される程度のことではない。「SNS上での人権侵害行為には懲役刑も適用され得る」と法律の改正案が決定されたばかりだ。いくらドラマでもあまりにも安易な終わり方だ。小学生の孫たちは「面白かった!」と見終わった後で言っていた。「人権を侵害する行為は決して許されず、厳しく罰せられる」ということで結んでほしかった

【「言葉」に関する意見】

  • 外来語など横文字の言葉のイントネーションがおかしくなっている。語尾を上げる「アクセントの平板化」が横行している。タレントは仕方ないにしても、最近はアナウンサーまでこの傾向が強い。国際社会に出てゆく子どもに正しい日本語を教育しなくては日本が恥をかくことになる。少なくともアナウンサーが正しい日本語を話すように、指導を徹底してほしい。

2022年2月18日

「リアリティ番組」をテーマに意見交換会を開催

放送人権委員会は、加盟放送局との意見交換会を2月18日にオンラインで開催し、全国103の放送局から約230人が参加した。委員会からは曽我部真裕委員長をはじめ委員9人全員が出席した。
放送人権委員会の意見交換会は、感染拡大の影響で、2019年に名古屋市で開催した「中部地区意見交換会」以来ほぼ2年ぶりとなり、冒頭で2021年度に就任した4人を含む委員全員を紹介した。
今回のテーマは、2021年3月に委員会が出した決定第76号「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」で、前半は委員会決定と個別意見の解説を行った。
後半は今回の事案で課題にあがったSNSへの対応について意見交換をした。

〈事案の概要〉
審理の対象となった番組は、2020年5月19日にフジテレビが放送した『TERRACE HOUSE T0KYO 2019-2020』。
放送後、出演していた木村花さんが亡くなったことについて木村さんの母親が、“過剰な演出”がきっかけでSNS上に批判が殺到したことなどが原因で、人権侵害があったと申し立てた。
委員会は決定で、人権侵害があったとまでは断定できないとした一方、「出演者の精神的な健康状態に対する配慮が欠けていた」と指摘し、放送倫理上の問題があったとした。

◆委員会の判断と個別意見

委員会の考え方や判断理由について、担当した曽我部委員長(審理当時は委員長代行)が解説した後、個別意見を付した委員3人がそれぞれの見解を説明した。
(以下、発言者と発言の概要)

一連の経緯について(曽我部委員長)
「コスチューム事件」と呼ばれる場面が2020年3月31日にNetflixで配信され、SNS上で木村さんへの非難が殺到した。直後に木村さんが自傷行為に至り、そのことは数日経って制作会社からフジテレビの制作責任者へ報告された。
木村さんは4月中旬頃まで精神的に不安定な様子で、制作会社のスタッフは自宅を訪問したりLINE等でやり取りをしたりして一定のケアをしていたが、コロナ禍もあり十分なコミュニケーションがとれないところがあった。
5月14日に番組公式YouTubeで未公開動画が配信されて再び誹謗中傷を招き、5月19日に地上波で放送が行われた後、木村さんは亡くなった。

人権委員会 図

「放送局の責任」の考え方 (曽我部委員長)
申立人は、視聴者からの誹謗中傷がインターネット上に殺到することは十分認識できたのだから、放送局には「本件放送自体による、視聴者の行為を介した人権侵害」の責任があると主張した。
委員会は一般論として、責任があるとすれば誹謗中傷を書き込んだ者の責任であり、その元になった放送局に常に責任があるとすることは、表現の自由との関係で問題があると考えた。
ただこの事案では、先にNetflixの配信で誹謗中傷を招き、すでにその段階で自傷行為という重大な結果を招いていたので、放送局は「大変な状況になる」ことが予見可能だったにも関わらず、地上波で放送した点に責任があるのではないかという点が更に問題となる。
この点について委員会は、具体的な被害が予見可能なのに、あえてそうした被害をもたらす行為をしたといえるような場合には人権侵害の責任が認められるであろうと考えた。
この点に関する裁判例はなく、「少なくともそういう場合には人権侵害と言えるだろう」という考え方である。
そのうえで、木村さんに対しては一定のケアがなされていたし、放送前も一定の慎重さを持って判断されていたので漫然と地上波で放送したとはいえず、人権侵害とまでは断定できないという結論になった。

「自己決定権の侵害」への判断(曽我部委員長)
申立人は、放送局と交わした「同意書兼誓約書」は、放送局の指示に反した場合に重いペナルティがあるなど木村さん側に非常に不利なもので、そうした威嚇のもとで無理な言動をさせられたとして、自己決定権や人格権の侵害があったと主張した。
委員会は、成人である出演者が自由意思で応募して出演している番組制作の過程で、制作スタッフからの指示が違法と言えるのは、自由な意思決定の余地が事実上奪われているような場合に限られると考えた。
委員会の審理手続きの限界もあって事実経緯に分からないところもあるが、今回は、少なくともそうした例外的な場合にはあたらないと判断した。

放送倫理上の問題(曽我部委員長)
放送倫理上の問題については、結論として、木村さんに精神的な負担を生じることが明らかな放送を行うという決定過程において、出演者の精神的な健康状態に対する配慮に欠けていた点で放送倫理上の問題があったと判断した。
リアリティ番組での出演者の言動は、ドラマなどと違って本人の真意のように見えるため、そのリアクションは良いことも悪いことも直接出演者に向けられ、それを自身で引き受けなければならないという構造がある。
このため出演者が精神的負担を負うリスクはフィクションの場合より格段に高く、放送局は、特に出演者の身体的・精神的な健康状態に配慮すべきといえる。

課題と委員会からの要望(曽我部委員長)
決定では、最初に自傷行為があった後のケアの体制やSNSで誹謗中傷を招いた時の対応について、組織的な対応や準備が十分でなかったとして、制作や放送体制に課題があったと指摘した。
リアリティ番組の特殊性やリスクというものを今回の事案と本決定から汲み取って、放送界全体で教訓として受け止めてほしい。
放送倫理としての出演者への配慮については、放送基準などに明確な規定はないが、当然に放送倫理の内容と考えるべきという提起だと受け止めてもらいたい。

放送とSNSについて(廣田智子委員)
SNSは発信される側としては制御することは難しく、社会のさまざまな場面で深刻な問題を引き起こす場合がある。そうした問題が起きたとき、放送局はどう対応すべきで、放送番組はどのような責任を問われるのか、非常に難しい問題である。
一方でSNSには、番組への利用の仕方によって社会を楽しくするような新しい可能性があり、放送とSNSとの関係について、放送界全体で、また放送に携わるひとり一人が考え続けて常にアップデートしていくことが重要だと思う。

補足意見(水野剛也委員)
木村さんを追いつめた直接的で最大の要因は、番組そのものではなくネット上の誹謗中傷と考えられ、結論として「放送倫理上問題あり」とすべきか、とても迷った。
放送局は全くケアをしていなかったわけではなく、スタッフが何とか木村さんを救いたいと真摯に向き合っていた姿勢が見えた。コロナ禍で思うように面会できないなど、放送局にとって不幸な事情も重なった。
しかし、未熟な若者の生の感情を資本とするリアリティ番組の本質部分の危うさについて、作り手側のあまりに無自覚な姿勢が見えた。番組制作者は、いつ爆発しても不思議ではない若者たちの生の感情をコンテンツの中核に置いていることに、もっと自覚的であるべきだったと考える。

少数意見(國森康弘委員)
自傷行為やうつは致命的な状況であり、放送局側は把握した時点で早急に専門家らによるケアや放送の中止、差し替えをするべきだった。地上波で放送したことは危機意識の欠如と言わざるを得ず、木村さんへの精神的ケアや誹謗中傷を防ぐための対応、また放送決定に至った判断材料の吟味も不十分だったと考える。
木村さんが番組スタッフにも送っていたSOSを、より責任ある立場の人たちと共有して速やかに全社的な救済対応を取るべきではなかったか。
重大な被害を被っている出演者を守る対応が不十分だったために、相当な精神的苦痛を与える形となって人権を侵害したと判断した。
木村さんは出演者として弱い立場にあり、自由な意思決定が一定程度奪われていたと思われ、一人の生身の人間にのしかかる精神的苦痛としては許容限度を相当に超えていたと考えられる。
日本の制作現場でも、精神科医やSNS対策の専門家、また弁護士などが常駐したり継続的に立ち会ったりして助言するような体制をつくることが望ましいと考える。
それが、出演者はもちろん視聴者ひいては制作者自身を守ることにつながると思う。

少数意見(二関辰郎委員長代行)
放送人権委員会は、放送されていないことは原則として取り扱わない。今回の事案では、木村さんの当時の心理的状況やケアのあり方など放送されていない事項が検討材料として大きな比重を占めていた。また、委員会には精神的ケアに関わる専門的知見がない。そのため、そうした問題を委員会が判断することは難しいと考え、法的責任の有無については、判断を控えるほうが妥当と考えた。
一方、放送倫理上の問題としては、「同意書兼誓約書」によって、放送局は出演者をコントロールできる強い立場を確保していたとみられ、そのことに対応して安全配慮義務的な責任が重くなると考えた。
また「コスチューム事件」は、木村さんがコスチュームを乾燥機に置き忘れた自分のミスを棚に上げて男性出演者を非難しているため、もともと視聴者からの批判が集まりやすいと予想できるものであった。YouTubeの未公開動画は、その点を修正する効果はなかったと考えられる。実際、YouTube未公開動画の配信後に再びSNSで非難が上がっており、その直後に地上波で放送した経緯を重視すべきと考えた。
放送倫理上の問題があるという根拠として多数意見が指摘する点に、そうした観点を踏まえ、放送倫理上は重大な問題があったとの判断に至った。

<おもな質疑応答>

Q: 木村氏の自傷行為を認識した時点での対応や判断は大事な論点だと思うが、その重大な事実が放送局の上層部で適切に共有・検討されなかったように見える。その点について委員会はどう考えたか
A: 自傷行為がフジテレビ側の責任者に連絡されたのは3日後ということだが、その点に関しては明瞭な説明が得られなかった。委員会の審理に限界もあり具体的な事実関係が解明できなかった部分はあるが、その範囲であったとしてもフジテレビ側のガバナンスがうまくいってなかったのではないか、危機意識が十分ではなかったのではないかという印象を持った。
(曽我部委員長)
   
Q: 今回の番組が、ネット配信がなくて通常の放送のみだった場合は、放送局に人権上の問題があったといえるのか。
A: 番組の全部あるいはその前のエピソードを見ると、木村さんの怒りというのはそれなりに理由があり、ネット上の激しい反発を呼び起こすことが確実だとか、意図的に煽っているという感じはなかったというのが多くの委員の考えだと思う。
番組の内容自体に、人権侵害や放送倫理上の問題があるようには見受けられず、仮定の話で断定はできないが、一回だけの配信や放送だったとすれば、問題はないという判断が出ることは十分あると思う。(曽我部委員長)
A: 一回放送して誹謗中傷などが起き、それで終わったのであれば放送倫理上問題ありという判断からやや遠のくと思われる。ただ一定期間後に再放送した場合は、かなり似た状況になって、問題ありとなる可能性はあるのではないか。(水野委員)
   

◆SNSとの向き合い方

後半では、今回の事案をきっかけにSNS対策部を新設したフジテレビから、具体的な取り組みについて報告してもらった。
これを受けてSNSへの対応について意見交換し、SNSとの向き合い方をめぐる課題や問題意識を共有した。

<おもな質疑応答>

Q: 自社ニュースのネット配信を行っているが、その記事に対するネット上のコメントで取材対象者の人権を侵害するような書き込みをされることもあり得る。具体的な事例はないが、放送以外の部分でどう対応していくべきか考えさせられる。
A: 放送したニュースがネガティブなものであれば、報道された対象者に対するネット上の誹謗中傷や批判が多数なされるということは普通にあり、そうした場合にも放送局に責任があるとすると、表現の自由や報道の自由は成り立たなくなってしまう。
ニュースや番組の内容自体が、名誉毀損やプライバシー侵害、肖像権侵害ということであれば放送局は責任を負うが、それ以上に誹謗中傷が引き起こされ、それによって放送対象の人物が傷ついたということについては、放送局には、少なくとも人権侵害といった法的な責任はないということを明確にしておきたい。
そのうえで、少しでも余計な被害や負担を減らすという配慮は考えられると思うが、法的な責任ということでいえば、先ほど述べたことが基本であることを押さえてほしい。
(曽我部委員長)
   
Q: 一般の人が主人公となる番組において、SNSの誹謗中傷からどう守ってあげられるか、今後そうしたことが起きたときのために何をすべきか。
A: すべての放送局がフジテレビのような体制を組むわけにいかないだろうがやはりSNS上の状況には注意をして、必要に応じて対応を取ることは大事だと思う。
そのときに、どういう対応、選択肢があり得るのか、実際にどのようにやるのか、誰に相談すればいいのかを予め社内で共有し、議論しておくことが必要ではないか。
SNSの誹謗中傷に限らず、出演の際のいろいろな悩みについて相談できるような体制、雰囲気といったものを作っていくことは、配慮すべき点だと思う。(曽我部委員長)
   
Q: BPOの審理・審議の対象は基本的に放送となっているが、最近はこの事案のようにSNSやデジタルのプラットフォームなどにおける発信で人権侵害や倫理上の問題が起きている。BPOの組織や審理、審議対象のあり方などについて、これまでどのような議論がなされ、今後どのような展開が見込まれるか。
A: BPOはNHKと民放連の合意に基づいて、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する組織として設立されたので、その合意に基づいた運営をしている。
したがって、BPOがただちにSNSやデジタルプラットフォーム上でのコンテンツに関して、審議・審理の対象にするということにはならないし、そうしたものを対象にするということであれば、改めてNHKと民放連に議論してもらい、合意の上で対応することになる。
(BPO渡辺専務理事)
A: 放送人権委員会の実情について補足すれば、先例として、例えばニュースを細分化してニュースクリップとしてウェブサイトに掲載するなど、放送と同じ内容のものがネットに掲載されている場合は審理している。
これは、放送に関する人権侵害を扱うというミッションからは厳密には外れるが、放送の延長線上にあるということで解釈上可能だろうと判断している。
今回の事案では、YouTubeで配信された未公開動画は放送された番組には出てこない部分だった。これを正面から審理して判断することは、現状のルール及びその解釈では難しいと思われる。(曽我部委員長)
   
Q: 性的指向や性自認などについての理解は深まっているが、性別に関わる放送用語についてどこまで配慮すべきか悩ましい。看護婦や保母といった役割の決めつけによる用語の言い換えは進んでいる一方、女優、女性警官、女流棋士など、説明として使用する用語も性差別となってしまうのか。
A: 難しい問題で確たる答えというものはないが、差別かどうかはグラデーションであり、ここまでは差別ではなくここからは差別だという明確な線引きがあるわけではない。ただ基本的なスタンスとして、必然性のないものは中立的にやっていくというのが大きな視点としてはあるのではないか。
例えば女優という言い方は、新聞社によっては性別を問わず俳優としているところもある。他方で女流棋士という呼び方は、まさに制度として棋士と女流棋士とで分かれていて、そこには必然性がある。
ニュースなどの中で、必然性があるときは性別を示すこともあるだろうが、そうでない場合、とくに説明できない場合は中立的に使うというのが基本的なスタンスではないか。
また、そうした言葉遣いも大事だが、番組全体の作りについてもジェンダーの観点というものが重要なのではないかと思う。(曽我部委員長)
   

◆意見交換会のまとめ(曽我部委員長)

今回の事案は、出演者が亡くなってしまうという重大性があったが、フジテレビには真摯に受け止めてもらい、しっかり体制を作ってもらった。今後、引き続き発展させてもらうとともに、他の放送局にもぜひ参考にしてもらいたい。
テレビ離れと世の中で言われるが、ネット上でもテレビ番組の話題というのは、まだまだ非常に多いと感じる。番組の出演者の言動などをきっかけに炎上することも少なからずあり、そうしたときに放置するのか、謝罪や釈明をするのか、あるいは抗議するのか法的措置をとるのかなど、いろいろな選択肢がある。
どういうときにどういう対応をするのか、法的措置をとるとすれば誰にどう相談したらいいかということを普段からシミュレーションしておくことが大事だ。
その前提として、自社の番組に対するネット上の反応というものを常に見ておく必要があるが、一方で注意すべきは、炎上に参加している人というのはわずかであって、炎上の中に出てくる声が世論全体の声とは限らないことである。
したがって過剰反応せずに冷静に見ていく必要があるので対応は難しいが、炎上とはどういう現象なのかといったネットに対する理解を深めることも大事である。
それぞれの放送局が問題意識をさらに深めて必要な準備をしてもらうことが、今回の教訓ではないかと思う。

以上

第244回 放送と青少年に関する委員会

第244回-2022年3月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について「見解」を公表へ・・・など

2022年3月22日、第244回青少年委員会を千代田放送会館で開催し、7人の委員全員が出席しました。
榊原委員長から、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について、先月の「審議」を受けて担当委員らが検討した修正案が提示され、その内容について意見交換しました。その結果、「見解」を出すこと及びその内容について合意するとともに、表現の最終調整を委員長に一任して「審議」を終了しました。
2月後半から3月前半に寄せられた視聴者意見には、とくに注目する案件はありませんでした。
3月の中高生モニターリポートのテーマは「1年間で最も印象に残った番組について」でした。モニターからは、出演者が秘境へ赴いたり、様々な事に体を張って挑戦するバラエティーについて、「この1年間で最も視聴し、最も笑いを与えてもらった番組だと思います」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、4月26日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年3月22日(火) 午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
今後の予定について

出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議

榊原委員長から、先月の「審議」を受けて担当委員らが検討した修正案が提示され、その内容について意見交換しました。その結果、「見解」を出すこと及びその内容について合意するとともに、表現の最終調整を委員長に一任して「審議」を終了しました。

視聴者からの意見について

2月後半から3月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
先月に引き続き、東大生というネーミングを使ったクイズ番組について、「東大前刺傷事件があったのに、学歴偏重を助長する」「学歴差別だ」などの意見が寄せられました。
委員会の議論から「討論」等に進んだものはありませんでした。

中高生モニターについて

35人の中高生モニターにお願いした3月のテーマは、「1年間で最も印象に残った番組について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で31人から報告がありました。
「1年間で最も印象に残った番組について」では、全部で26番組(テレビ番組24、ラジオ番組2)への報告が寄せられました。複数のモニターが取り上げたのは2番組で、『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ)について3人が、『クローズアップ現代+』(NHK総合)について2人が記述しました。特定の放送局の番組ではありませんが、「オリンピック」関連番組についての感想もありました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢のニュース・報道に関する記述が多く、「小学生や中学生には分かりづらい内容がある。理解できるように報道の仕方を工夫してほしい」「正しい情報をしっかりと伝えてほしい」「多面的な情報が知りたい」という要望が複数ありました。また、ニュース・報道全般に対して、「暗い話題だけでなく、明るい出来事についても取り上げてほしい」「偏りなく、信ぴょう性のある番組作りをしてほしい」などの声が挙がっていました。
「青少年へのおすすめ番組」では、複数のモニターから感想が寄せられたのは3番組でした。『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)を8人が、『モンモンZ』(NHK Eテレ)を6人が、『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)を3人が取り上げています。

◆委員の感想◆

  • 【1年間で最も印象に残った番組について】

    • 今回のリポートにたくさんあったような、「良い番組だ」というモニターからの評価はぜひとも制作者に伝えたい。そして、このような制作者を力づける感想を若い世代にどんどん発信してほしいと思う。

    • 芸人が体を張った企画について、「ちょっとやり過ぎではないか」という心配を記述したモニターがいた。何が面白くて何がやり過ぎと感じるのかという若者の意見はとても大事。これも積極的に発信してほしいと考える。

    • リポートの中に、番組を視聴して自分もいろいろなことに挑戦したくなった、元気を与えてもらった、という感想があった。やはりテレビの持つ力は大きく、中高生に良い影響を与えているということを再確認した。

    • 1年間で最も印象に残った番組として時代劇を挙げてくれたモニターの感想が印象に残った。時代劇を通して、現代社会のSNSで起こりうる問題について考えてくれたという内容で、そこに注目したというのが面白い。時代劇を視聴する若い世代は少ないのかもしれないが、見てみると現代社会のいろいろな問題について考えさせるような要素があり、提言のようなものが入っていることがある。このモニターにとっては、そこが新しい発見だったのだろう。

    • 「最も印象に残った番組」「自由記述」の両方の欄で、ロシアのウクライナ侵攻に関する記述が多かった。一般市民やジャーナリストたちの生々しい映像、その叫びとも言える声がテレビを通して伝えられ、モニターたちはそれをしっかり受け取っていると強く感じた。最前線の報道を、「これから侵攻が始まる」という情報が出た時点から見ている。ただ、中には、「さまざまな情報が飛び交う中で、情報がどのようにコントロールされているのか分からない」というような記述もあった。正しい情報を得ることが難しいと感じている様子が伺えた。

    • ウクライナにCNNやBBCなどからたくさんの記者が行っているが、様々な事情から日本の記者が現地に入ることはなかなか難しい。それを歯がゆく思っているモニターもいた。そのような状況だと、情報の信ぴょう性についてフェイクであっても分からない。ウクライナの一般市民からもSNSなどでどんどん画像が送られてくる中で、何を基準にして、何を信じればいいのかという疑問の声も上がっている。ウクライナの情勢というのは、今後の報道の在り方の大きな転換点になるのではないかと感じている。

  • 【自由記述について】
    • 「今のテレビは映像を“編集の力”で面白くしようとしているところがあまり好きではない」と記述したモニターがいた。この感想は示唆的なのかもしれないと思う。素材の力をより効果的に伝えるために行う編集作業が、かえって素材の良さを削いでしまうこともあり、バランスがとても大切ということなのではないのか。

◆モニターからの報告◆

  • 【1年間で最も印象に残った番組について】
    • 『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ)この番組は芸人さんたちが毎回体を張って企画に取り組まれているからこそ面白いと感じる反面、やりすぎではないのか、体を壊さないかという心配もあります。その部分はうまく調整してほしいです。そう感じる一方で、コロナ禍で制限されたからこそ、この番組で国内の魅力や素晴らしさを再認識することができました。この1年間で最も視聴し、最も笑いを与えてもらった番組だと思います。これからも放送が続いてほしいです。(中学3年・女子・富山)

    • 『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ)どの回が印象に残っているかと聞かれると…毎回印象に残っています。メンバーがたくさん努力したショーなどを見られるのがとても楽しいです。くだらないギャグなどもあるのですが、イラストやシンプルな編集により、とても面白くなっているのも見ていてひかれるポイントであり、魅力なのかなと思います。コロナが終わった時には、もう一度、世界に飛んでいってほしいし、一般人が見られないような景色を届けてほしいです。(中学3年・女子・奈良)

    • 『クローズアップ現代+』(NHK総合)ウクライナ情勢は、自分が生きている間にこんな軍事侵攻が起こるとは思っていなかった私にとって、今年最も衝撃的なものだった。人道回廊についての内容で「遺体の映像が流れます」というテロップが流れてきた。逃げようとした遺体とともに置いてあった避難に必要な物を詰め込んだスーツケースを見て、これが戦争なのだと感じた。今まで見てきた白黒の戦争ではない、1か月前まで私たちと同じように家があった街がボロボロになっていて、何十キロもの道のりを子どもも歩いていく。SNSでリアルタイムに流れてくる現地の人の映像が本当に起こっていることなのだと実感させられた。戦争にはさまざまな被害があることがよく分かる。攻撃によるもの、攻撃による物資の不足によるもの、精神的なもの。今回の番組を通して、目に見えない被害がたくさんあるのだと痛感した。(高校2年・女子・東京)

    • 『ソーイング・ビー4』(NHK Eテレ)モデルに合わせて洋服を作る時に、自分の選んだ人をモデルにすることができる場面があって、その中にゲイの人がいて、男性が恋人として男性を連れてきていました。まだ、日本では“性„についての多様な考え方が広まっていない所があります。ですが、この番組の中でモデルとして男性を連れてきていた男性や、その周りの人などは「その事は変ではない」と思わせてくれるような、ふだんと全く変わらない接し方をしていました。こういった世界のことをたくさん放送して、もっとみんなに世界中の人の考え方を知ってもらいたいと思いました。(中学2年・女子・大分)

    • 『グレートトラバーズ「田中陽希501座 7年の軌跡』(NHK-BSプレミアム)自分の知らない景色を見るために、僕も何かに挑戦したくなった。田中陽希さんはテレビを通じて僕らに挑戦することの意味を教えてくれた。(中学3年・男子・静岡)

    • 『日曜劇場「ドラゴン桜」』(TBSテレビ)自分は、勉強が嫌いな人だから、この番組を見るまで本気で勉強したことがなかった。しかし、視聴して、ここで頑張ることにより、未来で楽しいことが待っているかもしれないと思えるようになり、今は少しずつではあるが勉強を続けている。(中学2年・男子・神奈川)

    • 『金曜ドラマ「妻、小学生になる。」』(TBSテレビ)ドラマを見る時間が現実から離れて楽しめる時間であると同時に、作品に込められたメッセージを感じることができる時間でもありました。特にそれを感じたのがこの番組でした。家族がいる温かさ、その幸せは当たり前ではないということ、そして前を向いて歩むことの大切さ、たくさんのことに気づかせてくれる作品だと思いました。(高校1年・女子・京都)

    • 『はじめてのおつかい 泣いて笑って3時間!新春の大冒険SP』(日本テレビ)以前からこの番組が好きでよく見ていました。私が特に好きなのは「あれから何年?」のコーナーです。これは、昔おつかいをした子どものその後を調査するもので、この番組が長寿番組であるからこそできる企画なのだと思います。一部では泣いている子どもまでおつかいに行かせる必要があるのかという意見もあるようですが、私は、純粋に子どもたちの成長を見届けることができる番組としてこれからも長く続いてほしいと思います。(高校1年・女子・東京)

    • 『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ)日々の疲れを癒してくれるようなゆるい雰囲気から始まり、「また明日も頑張ろう!」と思わせてくれるような心温まる番組だと感じた。1年を通して、「また見たい」といちばん思った番組だった。(中学2年・女子・千葉)

    • 『スペシャルドラマ 必殺仕事人』(朝日放送テレビ)登場人物の描いたことを疑いもせず信じて広める町の人たちの様子が、今のSNS社会の悪いところをそのまま映し出しているなと思った。私たちもSNSを使う中で、真実か分からない情報を広め、誰かを傷つけてしまっているかもしれないと考えさせられた。時代劇で今私たちが抱える問題を考えるというのが面白いし、良いと思った。(中学3年・女子・京都)

    • 『オリンピック 卓球決勝(男女混合ダブルス)』水谷隼選手と伊藤美誠選手が中国人選手に勝ち、金メダルを取った瞬間が忘れられない。私は今年受験生だったため、毎日勉強漬けで悩むことが多かったが、このシーンを見ると、2人のように努力すれば必ず報われると信じて頑張ることができた。(中学3年・女子・千葉)

    • 『北京オリンピック』人の心を動かし、それぞれが称え合える平和の祭典、オリンピックを1年間に2回も見ることができ、より深く印象に残りました。コロナ禍で気持ちも落ち込みますが、こういった明るい話題が生まれるのはいいことだと思いました。(中学1年・女子・東京)

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)ゲストの秋元康さんが生活の中で細かなところでも注視して歌詞にしているという姿がよく伝わりました。何気ないことでも面白く考えて詞にしている秋元さんの視点は、私たちの生活の中でもいかせる部分が多くあると思います。例えば、友だちがしている小さなことでも、それを見つけるだけで発見になります。その発見を集めれば、人に良い思いをさせたり、場を和ませたりすると思います。これからもラジオでさまざまな発見、学びをしていきたいです。(中学2年・男子・長崎)

  • 【自由記述】

    • BPOのモニターになってから、家族でテレビを見る機会がかなり増えました。今までは、YouTubeやインターネットばかり見て、真剣にテレビを見ることはあまりありませんでした。しかし、しっかり見たことで情報の伝え方について考えさせられるきっかけになったとともに、毎月レポートを書く上で、語弊がないか、違う表現はないか、と文章を深く考えるようになりました。(中学1年・女子・東京)

    • 中高生モニターとしての活動を通して、テレビ番組をただ楽しむだけではなく、「このドッキリは不快に思う人がいるのではないか」とか「テロップが多くて見づらい」とか批判的な視点でもテレビを見てきました。そうする中で、全員が不快感なく楽しめる番組を作ることの難しさを感じました。また、SNSではテレビ番組についてのコメントが多数あることにも気づきました。「テレビ離れ」とよく言われますが、やはり今でもテレビの影響力は絶大であると思いました。(高校2年・女子・神奈川)

    • ウクライナとロシアの戦争が始まりました。どの情報が正しいのか、世界中のみんなが分からない状況になってきています。どの情報が正しいのか判断できるようにたくさんのことを身に付けたいと思っています。そして、メディアの方にも正しい情報を報じてほしいと思います。(中学3年・女子・奈良)

    • 最近のニュースではウクライナ侵攻が多く取り上げられています。しかし、中学生の私には言葉などが難しすぎて理解できない部分があるのでもう少し言葉を簡単に、分かりやすくしてほしいです。(中学3年・女子・宮崎)

    • 日本のテレビ局は他国のメディアに比べると現地での取材が少ないような気がしている。事実の説明に終始しているようで、これでは戦争の現実味がわかず、視聴者はどこか他人行儀に感じてしまうのではないか思う時がまれにある。(高校1年・男子・東京)

    • テレビをつけると殆どがウクライナ情勢の話題を取上げている。私は、最新の情報を知りたいので、YouTubeでニュースを見ることが多い。また、その中でも海外のニュース(CNN)などを見ている。テレビで放送されているニュースも勿論最新のものが多いが、その分信ぴょう性が薄いと私は思っている。なので、個人的にはYouTubeなどでいろんな国視点のニュースを見た方が情報収集の良い手段だと思っている。また、テレビは現状を伝えることがメインなので、今の私たちに何ができるか、なぜこのような事態が始まったのかなどは伝わってこない。テレビのニュースに依存するのではなく、自分から知っていかないと何も変わらないと思う。(高校1年・女子・埼玉)

    • ロシアのウクライナ侵攻について、はじめは他国のことだからと遠い存在のように感じていましたが、たくさんの情報番組がウクライナの現地の状況について取り上げているのを見て心が痛むことも多くなり、自分たちももっと国や政治について知るべきなのではと思うようになりました。改めて、メディアの影響力はとても大きいものだと思いました。(高校2年・女子・奈良)

    • ウクライナについて知ることはもちろん大切だけど、ロシアが今どのような状況かどうか知ることもこの軍事侵攻を理解するためには必要であるように思えた。報道に制限があるため難しいのかもしれないが、解決のために何かすることがあるのだとするなら、まず多くの側面から知りたいと思った。(高校2年・女子・東京)

    • ウクライナとロシアの戦争の報道が後を絶たない中、3月11日に東日本大震災の報道がどれくらいあったのかと思った。私は、少ないと思った。私は去年の夏に震災ボランティアで初めて岩手に行った。復興が進みきれいな街並みだった。でも、被災された方からの話は心に響くものばかりで、胸が痛んだ。だからこそ、震災を忘れずに伝えるためにも報道し続けるべきだと思う。(高校2年・女子・静岡)

    • コロナや戦争のことだけではなく、もっと良いニュースも知りたいと思うので番組の内容に入れてほしい。(中学1年・男子・神奈川)

    • テレビは私たちが情報を求めなくても自然と知ることができる大きなツールだと思っています。小さい頃は特にそのままのことを吸収します。それは良いことである反面、意識せず生じた情報の偏りなどもそのまま事実として知ることになると思います。耳、目、脳を通して印象づけられるテレビだからこそ、改めて情報の信憑性含めて慎重な報道に回帰してほしいです。(高校1年・女子・京都)

    • 今のテレビは全体的に、昔のテレビと違い映像を「編集の力」で面白くしようとしているところが、あまり好きではありません。(中学2年・男子・長崎)

    • どのテレビ番組も視聴者のニーズにこたえたいという根幹があると思いますが、人々が不快な思いをしないような番組をこれからも届けていってほしいと思います。これからもテレビを視聴していきたいです。(中学3年・女子・富山)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)津田梅子が女性のために動いたことで、今私たちはまだ対等になったわけではないけど、男子と共に学び、仕事をして自分の意見を言えるようになったんだとありがたく思った。(中学3年・女子・京都)

    • 『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)非常に良いドラマだったが、唯一残念な点があったとすれば、女子英学塾を創立するところまでの津田梅子の生い立ち、性格に関する描写に時間を割きすぎて、ドラマの最後の方が駆け足になってしまったように感じた点である。恐らく相当数の人々がこのドラマを見て津田梅子について知るであろうことを考えると、できることならもう少し津田梅子の功績を取り上げた方が、五千円札に採用された理由が分かりやすかったのではないだろうか。(高校1年・男子・東京)

    • 『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)約140年経った現代も、日本では完全な男女平等が達成されていないように感じるのは、梅の時代から人々の意識が変わっていないからだと思います。再来年には五千円札の顔となる津田梅子の生き方を通じて、日本人の価値観や現代まで続く男女間格差の問題について考えさせられました。(高校1年・女子・東京)

    • 『モンモンZ』(NHK Eテレ)恋愛に対する価値観の違いや悩みについて正直に話し合う新鮮な雰囲気が面白かった。(中学2年・女子・千葉)

    • 『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)何かに打ち込む子どもたちを応援する番組の姿勢がとても温かいなと思います。(高校1年・女子・京都)

    • 『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)私も卓球をしていて、水谷隼選手は本当にすごい選手だと思う。そんな選手から直接指導をしてもらえることは、一生の宝物になり、卓球へのモチベーションアップにもつながると思った。また、直接指導を受けることができ、自信にもつながると思った。指導を受けていた子どもは、小学5年生で卓球を始めて4年にもかかわらず、強くなりたいという思いで名門クラブに移籍したことだけでもすごいなと思った。そして、水谷選手から教えてもらったサーブを毎日クラブに早く来て、練習する姿に感心してしまった。このような姿を見て、私も負けてられないなと背中を押された。(高校2年・女子・静岡)

委員退任について

中橋委員が3月末で任期満了となり、退任することになりました。2期6年務められました。

今後の予定について

2022年度の中高生モニターのメンバーが決定したことおよび月別のテーマの予定について事務局より報告がありました。

以上

2022年4月1日

2022年 4月1日

BPO事務局の対応について

BPOは、新型コロナウイルスの感染対策に留意しつつ、視聴者電話の受付時間を通常に戻しました。
電話の受付時間は、平日、10時から12時までと13時から17時までです。
なお、今後の感染状況によっては、受付時間の短縮や受付の休止をすることがあります。