熊本・病院関係者死亡事故報道
委員会決定 第17号 – 2002年3月26日 放送局:テレビ朝日
勧告:人権侵害(少数意見付記)
熊本で車に乗っていた病院関係者4人全員が死亡する転落事故があり、テレビ朝日は2000年8月の情報番組で”熊本・謎の自動車事故”のタイトルで取り上げた。この放送に対して、医療法人と理事長が「事故は保険金目的の殺人事件の可能性が高いと報道し、名誉・信用を毀損された」と抗議した。テレビ朝日は翌年7月に地検の「事故は運転ミス」とする最終処分を放送したが、医療法人側は名誉・信用の甚大な被害の回復に足りないとして申し立てた。
2002年3月26日 委員会決定
放送と人権等権利に関する委員会決定 第17号
- 申立人
- 医療法人A
B(同理事長) - 被申立人
- テレビ朝日
- 対象番組
- テレビ朝日 情報番組『週刊ワイドコロシアム』
- 放送日時
- 2000年8月6日午後6時56分~
申立てに至る経緯
2000年5月28日、熊本県天草町で乗用車が崖下に転落し、乗っていた熊本市内のC病院の副理事長や看護部長ら4名全員が死亡するという事故が起きた。同年8月6日、全国朝日放送株式会社(以下、テレビ朝日又は被申立人という)は、午後6時56分からの情報番組『週刊ワイドコロシアム』でこの事故を”熊本・謎の自動車事故”というタイトルで取上げ、約40分間にわたって放送した。(注 当該情報番組は同年9月10日で終了)
この放送に対して、当病院を経営している医療法人Aと同会を代表するB理事長(以下、申立人という)は、「本件番組は、当該事故を保険金目的の殺人事件の可能性が高いと報道し、申立人の名誉・信用を毀損している」と抗議し訂正放送と謝罪を要求した。
一方、テレビ朝日は、「番組は、警察の杜撰な対応を検証するのが狙いで、保険金目的の事故と捉える意図はない」と主張、話し合いは進展しないまま年を越えた。
2001年2月2日、テレビ朝日は、「検察庁の処分がなされた時点で、情報系の番組で取上げる。その際警察が送致に当たって発表した保険金殺人疑惑がないとの意見を付記する」旨申し入れた。
2001年7月27日、熊本地方検察庁は「事故は、運転ミスによるもので、保険契約と事故は無関係」との最終処分及びコメントを発表した。テレビ朝日は7月30日午前8時からの『スーパーモーニング』の中で、この地検の最終処分内容を放送したが、申立人は、「極めて不十分な放送内容で、当方の名誉・信用に対する甚大な被害を回復するに足りない」として、8月2日、BRCに申立てたものである。
目次
- Ⅰ. 申立てに至る経緯
- Ⅱ. 申立人の申立て要旨
- Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
- IV. 委員会の判断