第36回 放送倫理検証委員会

第36回 – 2010年3月

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

バラエティー問題について …など

第36回放送倫理検証委員会は3月12日に開催された。まずブラックノート(黒く着色された偽札)詐欺事件を報じたTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』について3回目の審議を行い、委員会決定の文案について若干の修正を加えた上で、通知・公表することにした。
「バラエティー番組」のブックレットの内容について基本的な合意が得られたので、近く刊行の運びとなった。
毎日放送の報道番組『VOICE』で放送された街頭インタビューは、ヤラセではないかと視聴者から抗議があったが、当該局の説明を了承して取り上げないこととした。

議事の詳細

日時
2010年 3月12日(金) 午後5時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

昨年12月、TBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』で、ブラックノートに特殊な薬品をかけると1万円札に戻ると称して、薬品代をだまし取るという詐欺事件が放送された事案。担当委員から提出された決定文案をもとに3回目の審議を行った。
まず、他人の車に勝手に発信器を取り付ける行為については、それ自体は妥当とは言い難いが、事案によっては報道の公益性との関わりが生じるので、委員会が安易に一般論を述べることは適当ではない、当該局と制作会社が具体的状況に即して判断すべき問題だ、という意見が大勢を占めた。
また、テレビ局と制作会社とは、対等なパートナーだと標榜されているが、実態は支配・従属関係になっているように見える、番組クレジットの表示方法も、制作実態に合わせて検討すべきではないかとの指摘があった。
決定文案を多少修正したうえで、速やかに通知・公表することにした。

【委員の主な意見】

  • 犯人と思われる人物の車に、無断で発信器を取り付けた取材方法について検討することは大切だが、一方で報道の公益性とのバランスを常に考えなければならない。その線引きはケースバイケースであり、この委員会がガイドラインを作るような問題ではない。
  • テレビ局と制作会社は使用者と非使用者ではないから、支配・従属の関係にはないのに、現状はそのように見える。バリエーションはあるにしても、本来両者は請負や委任の対等な契約関係にあるのではないか。
  • テレビ局と制作会社の契約関係は対等だとしても、放送責任は一義的にはテレビ局が負わなければならない。そのため、テレビ局が制作会社へコンプライアンスについて注文を出すのは当然だ。それは番組の中身だけでなく制作プロセスの問題も含まれる。今回の場合、制作会社とテレビ局の間で、報道の使命が自覚もされず、議論もされていないのではないか。
  • 制作会社と局との共同制作と、制作会社の完パケ持込みとの中間で起こった問題だ。今回の場合、局は制作会社との共同制作ならば、責任の所在を明確にするためにも、きちんと制作表示すべきだ。
  • 委員会は制作会社に対して直接意見を言う立場にない。制作会社で生じた今回のような問題は、放送局に対してきちんと取材方法の適正性をコントロールするように伝えるべきだ。
  • テレビ局が責任を負うべきなのに、制作会社をより厳しく取り扱うという方向で対応するのだとすれば、それは違うと思う。
  • 委員会は発足して3年になるが、今まで取り上げた事案の中には、テレビ局と制作会社との関係がおかしかったが故に起きた事例がたくさんある。

バラエティー問題について

昨年秋に公表した「委員会意見」のほかに、ブックレットに何を収録すべきかについて、担当委員がまとめた原案が報告され、基本的に承認された。
また、複数の番組や勉強会などで「委員会意見」を熱心に検討したフジテレビの対応を評価する意見が出された。
委員会は、「意見」を出したからバラエティー問題を今後扱わないと判断したわけではなく、問題のある番組が放送されれば、引き続き個別に取り上げることを確認した。

やらせインタビューを疑われた毎日放送の『VOICE』

毎日放送の報道番組『VOICE』(2月1日放送)で、大阪のワンコインタクシーが、乗務距離制限を課せられたことで経営的な難問に直面していることを報じた。その中で、タクシー乗り場にいて利用者としてインタビューされた男性が「乗車拒否されたことがある」など乗務距離制限に否定的なコメントをしたが、実はその男性は、ワンコインタクシー会社の社長であったことから、対立する大阪タクシー協会から、ヤラセではないかと抗議があった事案。毎日放送はそういう人物だと知らないでインタビューしたと、後日の放送で釈明した。委員会は毎日放送の説明を了承し、取り上げないこととした。

連絡事項

総務省が開催している「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」(3月29日)に飽戸理事長が呼ばれ、BPOの活動を説明することになったと報告した。また、4月1日に行われるBPO事務局スタッフの交代(事務局長と調査役1名)について報告した。

以上

第35回 放送倫理検証委員会

第35回 – 2010年2月

「バラエティー番組」のブックレット刊行について

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』 …など

「バラエティー番組」のブックレット刊行について

バラエティー番組のあり方を議論する際の資料として、委員会は昨年11月に発表した「委員会意見」を収録したブックレットを近く刊行するが、このブックレットに収録するそのほかの内容について意見を交換した。「委員会意見」についての新聞記事や「委員会意見」を受けた各局の取り組み方などを収録することとし、さらに担当委員が原案をまとめて次の委員会で報告することにした。

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

昨年、TBSの『報道特集NEXT』(12月5日)と『イブニングワイド』(12月8日)で、ブラックノートに特殊な薬品をかけると1万円札に戻ると称して薬品代をだまし取るという詐欺事件が放送された。当該局から、この事案の調査報告書が提出されたので、2回目の審議を行った。
まず、配達された郵便物をポストから抜き取って開封するという取材方法が違法なことは議論するまでもないこと、他人の車に勝手にGPSを取り付ける行為も、取材倫理上、妥当とは言い難いことが確認された。
更に、この事案が抱えている重要な要素として、主として制作会社が企画・制作したものを局が採用して放送した番組であることから、当該放送局が定めた「報道倫理ガイドライン」を制作会社といかに共有して運用すべきかという問題がある。今回のように、テレビ局が制作会社の持ち込み企画を局の番組として放送する以上、局側が制作開始時点から責任を持てるように関与することの重要性が議論された。他方、制作会社が企画・制作した番組であることが、視聴者に分かるよう番組クレジットの表記方法を見直すことも、ひとつの方法ではないかという指摘もあった。いずれにしても、放送責任を負う放送局にとって重大な問題であり、真しに検討しないと今後も同様の問題が繰り返されるとの懸念が示された。
次回までに、担当委員が委員会の「意見」をまとめることにした。

【委員の主な意見】

  • テレビ局と制作会社との関係で再発防止を考える場合、テレビ局が制作会社を一方的に締め付ける方向だとしたら問題だ。テレビ局が制作会社に対して威圧的でない、ゆとりある番組制作環境をめざすべきだ。
  • テレビ局が制作会社をどのようにコントロールできるかというのが、今後に影響する問題だ。コントロールできないということになると、テレビ局は制作会社が作った番組を、その局の番組として放送できるのかということになる。
  • テレビ局が納入された番組をするときに、具体的なシーンに疑問を持てるのかどうかだ。疑問を持てなければスルーするしかなく、当該局に過失はない。にもかかわらず、当該局が全責任を負わなければいけないというあり方はおかしい。
  • 制作会社が完パケで持ち込んできたものを、自局の番組として放送するかぎり、放送局として責任が取れなければおかしい。視聴者はその局が作ったものだと見てしまう。
  • テレビ局の名前で番組を放送する以上、制作会社に委託した段階で外形的にはテレビ局が作っていることになる。だから制作会社とのやりとりは、テレビ局内部の問題だ。体制だけを議論しても意昧がない。
  • テレビ局が今置かれている状況を如実に反映している事案だと思う。当委員会が絡んだ途端、局が制作会社に対して制裁を行う、それが今後のパターンになるとしたら、それは全く委員会の本意ではない。
  • 違法な取材が許されないのは当然のことだ。しかし、制作会社への丸投げ状態になっていることが問題を引き起こしていると、局側は自覚すべきだ。

やらせインタビューがあったCBCの『なるほどプレゼンター!花咲かタイムズ』

CBCの生情報ワイド番組『なるほどプレゼンター!花咲かタイムズ』(1月23日放送)で、ファッション関連のフリーマガジンを紹介する際、その編集に関わっている女性3人に、一般の人のように装って街頭インタビューしたことが、視聴者の指摘で発覚した事案。制作現場の安易さや、機能が働かなかったことなど、番組を制作する姿勢に対して厳しい意見が出された。しかし、当該局は視聴者へのお詫び放送など迅速に対応し、社内に調査委員会を設けて自主的に再発防止策を講じる努力を開始しているので、委員会としては取り上げないことにした。

【委員の主な意見】

  • なぜあえて「街の声」という演出方法をとったのか。単純に雑誌の編集に協力している若い女性たちへのインタビューとして紹介すれば良いではないか。街頭インタビューの意昧や必要性について、真剣な議論をしているのだろうか。
  • この手法を使えば、実際にはありもしないことでも制作者側が情報を意図的に操作できるし、ねつ造もできる。これこそが問題で、その結果、いいかげんな内容の情報番組があふれ、テレビの信用を失墜させることにつながる。
  • 安直すぎる。制作者が、テレビをなめ、視聴者をなめているとしか思えない。不快感が先にたつ。
  • この企画全体として、非常にいやな印象を受けた。取材に応じる側は、テレビはコマーシャルに使うもの、うまく利用するものと思い、制作側はそれを気にも留めていないような作りになっている。これは、情報番組なのか、広告なのか。
  • サクラを仕込めば、制作者が意図するコメントが得られるだろうし、効率的な取材ができるのは当たり前だ。制作者としてそれをしてはいけないという社内教育や指導はどうなっているのか。
  • 取材スタッフとして同行した先輩の社員たちは、彼女たちが関係者と知りながら、若いディレクターに注意さえしていない。編集段階でも何の助言もしていない。スタッフ間の相互が、機能していないのではないか。
  • 去年、同じエリアの他局の番組で、よく似た事案があったばかりなのに、その教訓や反省は生かされなかった。プロデューサーらの体制も十分とは言えず、今回は厳しい対応をすべきだ。
  • この放送によって、誰かが甚大な被害をこうむったわけではない。そこまで目くじらを立てる必要はないのではないか。

連絡事項

今年のBPO年次報告会は3月25日に開催され、川端委員長がこの1年の活動報告を行うことが報告された。また、任期満了に伴い交代する委員と新委員の紹介があった。

以上

第34回 放送倫理検証委員会

第34回 – 2010年1月

「バラエティー番組意見」のブックレット発行について

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与疑惑を伝えたテレビ東京『週刊ニュース新書』 …など

「バラエティー番組意見」のブックレット発行について

昨年11月17日に公表した「意見」で委員会は、放送界全体がバラエティー番組に関する議論を深めることが必要であると表明したが、この「意見」を踏まえて、3月11日に民放連が主体となって、バラエティー問題をテーマにしたシンポジウムが開催されることになった。
一方、委員会は、今後、バラエティー番組に関して議論されるときの参考資料としてブックレットを発行することになり、その内容について意見交換を行った。さまざまなアイデアが出されたが、委員会の「意見」に対する新聞やテレビの報道内容や雑誌などの論評、テレビ各社のさまざまな取り組みを一冊にまとめることにした。

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与疑惑を伝えたテレビ東京『週刊ニュース新書』

テレビ東京が昨年11月28日の『週刊ニュース新書』で、民間業者の貧困ビジネスに岡崎市が関与している疑いがあると報道した。これに対して岡崎市長が、事実確認が不十分だと抗議した事案。両者間で折衝中であるので委員会としては引き続き推移を見守ることとした。

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

昨年、TBSの『報道特集NEXT』(12月5日)と『イブニングワイド』(12月8日)で偽札詐欺事件が放送された。マイケルと称する外国人が、真っ黒に着色された紙幣(ブラックノート)に特殊な薬品をかけると色が消えてもとの1万円札に戻るので山分けしようともちかけ、日本人男性から薬品代として多額の金銭をだまし取った事件を被害者側から取材した番組である。この事案については、前回の委員会で取材を契機に犯人が国外逃亡したことを非難する視聴者意見が報告された。その後、制作過程で違法な取材が行われたことが明らかになり、TBSはそれぞれの番組で説明しお詫びした。
それによると、TBSから番組を受注した制作会社のスタッフが、マイケルのアパートに配達された郵便物をポストから抜き取って開封するという違法行為を行っていた。
委員会は審議入りすることを決め、当該局に対して事実関係の調査報告を求めることにした。

【主な委員の意見】

  • 犯罪行為をしてはいけないのは当然だが、制作会社の持ち込み企画について、どこまで放送局としてチェックができるのか、責任を持つべきなのかということは難しい問題だ。
  • 違法な取材について委員会が意見を言わなければ、委員会は当然批判を受ける。当該局は制作会社に詳細なヒアリングをしたうえで、委員会に対して正式に調査報告を提出すべきだ。
  • 取材の過程で、「自称マイケル」の本名をつきとめた方法について当該局が制作会社からどういう説明を受け、どう納得したのかを確認する必要がある。
  • 放送局に犯罪者を捕まえる義務はないが、取材中、犯人の面前でトリックを暴いたために犯人が逃亡する結果になった。そのことで視聴者が当該局に対して、事実経過を説明してほしい、という意見を寄せるのは当然だ。
  • 現場はみんなギリギリなことをやっている。違法性が問われかねない取材は確かにあるが、真実を伝えることの社会的利益・公共性に比べれば小さいことだという理屈もある。アメリカの場合、「もしこれが違法だというのだったら私が責任を取る」と編集局長が名乗り出て刑務所に入った例がある。
  • 番組制作を外部に委託する以上、きちんと法令を守ること、犯罪行為に及ばないようにするためのチェック体制を作っておくことが放送局の役目だと思う。要するに監督義務だ。
  • BPOが「お上」のような監視機関になってはいけない。放送局の自主自律を尊重し、この問題についても、まず放送局に対策を考えてもらえばよいと思う。

連絡事項

今年のBPO年次報告会は3月25日に開催され、川端委員長がこの1年の活動報告を行うことが報告された。

以上

第33回 放送倫理検証委員会

第33回 – 2009年12月

「バラエティー番組問題」に関する今後の展開

視聴者からの問い合わせに真実でない説明をしたフジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』 …など

第33回放送倫理検証委員会は12月11日に開催された。まず、「バラエティー番組問題」の委員会決定について、今後民放連とどのように協力して議論を深め、実効性のあるものにしていくかを検討した。
視聴者からの問い合わせに対して真実でない説明をしたフジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』は、当該局の説明とホームページによる対応を了承した。民間業者による貧困ビジネスに愛知県岡崎市が関与している疑惑があると伝えた、テレビ東京『週刊ニュース新書』に対して、岡崎市長が抗議した事案については、当面、両者の折衝を見守ることにした。

議事の詳細

日時
2009年12月11日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

「バラエティー番組問題」に関する今後の展開

委員会は、11月17日に公表した「意見書」で、バラエティー番組についての議論を深めて実効的な指針を作ることが適切な場合もあると述べ、意欲的な番組づくりに向けて放送界全体で議論する場が必要なので、シンポジウムなどを開催して考えを深めることを提言した。それらを実行するのは民放連(およびNHK)であるが、委員会としてはどのように協力すべきかについて検討した。

視聴者からの問い合わせに真実でない説明をしたフジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』

10月に、お笑いタレントの運転免許証等(本物)を研磨機にかけて、その一部を削ってしまうシーンが放送されたが、視聴者から問い合わせがあった場合、それらは美術品(小道具)であると真実ではない回答をするよう、番組担当者が指示していた事案。委員会の質問に対して当該局はその事実を認め、番組ホームページに経過説明とお詫びを掲載した。委員会は「これまでも原則として視聴者には事実を回答してきたが、その原則をもう一度確認し、徹底を図る」とする当該局の対応を了承した。

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与疑惑を伝えたテレビ東京『週刊ニュース新書』

生活保護を受けている人を食い物にする民間業者の貧困ビジネスに、岡崎市が関与している疑いがあると、テレビ東京が報道した。これに対して岡崎市長が、この報道は事実確認が不十分で、証言者の一方的な主張ばかりを伝えたと、当該局に抗議した事案。両者の折衝は始まったところであり、言い分が対立しているため、委員会としては当面推移を見守ることとした。

『真相報道 バンキシャ!』のブックレット発行

昨年7月30日に通知・公表を行った日本テレビの『バンキシャ!』は、調査にあたって特別調査チームを編成し、はじめての「勧告」を出した重要な事案であり、報道番組における裏取り取材の重要さや制作体制の問題など、他山の石として全局に参考になりうる事案であるので、今後の議論の材料になるよう、ブックレットを発行することにした。

連絡事項

第1回BPO事例研究会が11月26日に開催されたこと、総務省が立ち上げた「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」(座長・濱田純一東大総長)の動向について、事務局から報告があった。

以上

第32回 放送倫理検証委員会

第32回 – 2009年11月

最近のバラエティー番組に関する問題点

視聴者からの問い合わせにウソの説明をした民放局のバラエティー番組 …など

第32回放送倫理検証委員会は11月13日に開催され、民放連に対して11月17日に通知・公表を予定しているバラエティー番組の決定文案について詰めの意見調整を行った。
続いて、10月に放送された民放局のバラエティー番組で、当該局が視聴者からの問い合わせに対して、事実とは異なる説明をしていたことが判明した問題について議論した。その結果、当該局に事実関係についての質問書を出し、その回答をもとに改めて討議することにした。
事務局からは、BPO事例研究会の開催について説明があった。

議事の詳細

日時
2009年11月13日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

最近のバラエティー番組に関する問題点

最近のバラエティー番組に関する放送倫理上の問題点について、決定文案の詰めの作業として5回目の審議を行った。制作現場に届くことに配慮して、新たにカットを追加することや表現の手直しなど、若干の修正を行うことを決定した。
また、委員会の「意見」を実効あるものにするために、今後、民放連などとともに、シンポジウムの開催やブックレットの発行などを計画することとした。(11月17日に発表した意見書はこちらPDF)

視聴者からの問い合わせにウソの説明をした民放局のバラエティー番組

10月に放送された民放局のバラエティー番組で、町工場を経営するお笑いタレントAの父親が仕事で使用している研磨機に、別のお笑いタレントがAの運転免許証をかけて、一部を削ってしまうシーンが放送された。このシーンについて、視聴者から問い合わせがあった場合に、免許証は本物であるのに、美術品(小道具)であると回答するように指示が出され、実際にそのような対応がなされたことが当該局の説明文で判明した。討議の結果、当該局に対してどのような経過を経て、そうした対応になったかの事実関係を質問し、その回答を待って改めて討議することにした。

その他

連絡事項

事務局から、11月26日に全国の放送局を対象に「第1回BPO事例研究会」を開催し、2つのテーマのうち、「取材における事実確認のあり方」について小町谷委員長代行が報告することの紹介があった。

以上

第31回 放送倫理検証委員会

第31回 – 2009年10月

バラエティー番組の問題点について

第31回放送倫理検証委員会は10月30日に臨時に開催され、バラエティー番組の問題点に関して集中審議を行った。事前に提出された決定文案に対して議論した結果、若干の手を加えることを前提に、全委員の合意が得られたので、通知・公表の手続きに入ることにした。

議事の詳細

日時
2009年10月30日(金) 午後6時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点について、4回目の審議を行った。この1年の間に視聴者からBPOに寄せられたバラエティー番組に対する批判的な意見の分析を踏まえつつ、テレビ番組全体に対してバラエティーが果たしてきた役割をどう評価するか、バラエティーという表現形態と放送倫理との関係をどう考えるかなどについて、決定文案の検討と詰めの議論を行った。
「放送基準ではバラエティー番組が鬼っ子のように扱われているが、この際バラエティーの倫理基準はどうあるべきなのかをきちんと議論することが必要だ」「バラエティー番組制作者は、志と確信を持って番組を制作すべきだ」「規範にとらわれずに新しい表現方法を開拓して表現の自由の限界を拡大していくのがバラエティーの特性だから、放送基準を機械的に当てはめるには適さない」といった意見が大勢を占めた。
その結果、安易な番組作りに陥り視聴者からイエローカードが出されている今日のバラエティー番組について、当委員会が民放連に対して放送基準とは異なる実効的な指針の作成を提案すると共に、放送局の制作現場の人々の参加を前提としたシンポジウムの開催を働きかけ、ブックレットの発行を検討することにした。
なお、決定文案は若干の修正と追加を行って、11月17日に通知・公表する運びとなった。

以上

第30回 放送倫理検証委員会

第30回 – 2009年10月

バラエティー番組の問題点について

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』 …など

第30回放送倫理検証委員会は10月9日に開催され、バラエティー番組の問題点に関して3回目の審議を行った。担当委員から事前に提出された決定文案に対して、いろいろな角度からの意見が出された。また、他の委員から代案が提出されたので、あわせて議論したが最終的合意に至らず、継続して審議することにした。
日本テレビから『バンキシャ』についての報告書(民放連との申し合わせにより、具体的な改善策を含めた取り組み状況の報告が求められている)が提出されたので検討した結果、委員会はこれを了承し、公表することにした。

議事の詳細

日時
2009年10月 9日(金)午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点について、前回までの議論を踏まえた決定文案の改訂版と、今回、他の委員から新たに提出された代案について議論した。両案を合体させればよいだろうという意見も出されたが、構成や論調が大きく異なるので、執筆した2人の委員が話し合って、ひとつの案としてまとまった段階で、あらためて審議することにした。そのために、本事案について2度目の臨時委員会の開催を決定した。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組は本来、「番組の質の向上」「放送法」「倫理規定」等とは対極に位置し、アナーキーな指向アンテナをもとに動く無頼なものだと思う。だからこそ視聴者の共感とカタルシスを得ている。「無頼」こそがテレビバラエティーが精神として踏まえている「自由」と同義語だ。
  • バラエティーの無頼さやつまらなさだけを強調すべきではない。つまらないかもしれないが、健全なバラエティーが視聴者から支持されている。
  • 「バラエティーがつまらない」と言っているのは委員会ではなく視聴者だ。しかも、個別の番組についてだけではなく、多方面から数多くそのようにいわれている。これは視聴者を置き去りにしているということであり、そのこと自体が制作者の倫理問題ではないか。
  • 難しい表現の意見書だと制作現場の人たちからは、俺たちには関係ないと敬遠されるか、場合によってはいじめられていると誤解されてしまうのではないか。私たちの目的は、元気でよいバラエティー番組を作ってほしいということだ。
  • 視聴者は視聴者個人の倫理観を根拠に、この番組はけしからんと言っている。特にバラエティーについては、いらだつ視聴者が多く存在するようになってきている。そういった現象とバラエティー番組の変容とが結び付かないと「意見」を出す意味がない。
  • 番組を向上させるにはほめるしかない。これがイカンあれがイカンでは、番組は向上しない。
  • 委員会決定が「見解」「勧告」の場合はともかく、「意見」である場合には、必ずしも一本化した決定を出す必要はないと思う。まず総論を示して、それに加えて何人かが署名つきの意見を並べる方法もある。
  • あらゆる基準を超越するのがバラエティー。この精神が大切だ。
  • バラエティーだからといって放送基準のらち外にあるのではなく、当然、その範囲内にある。放送基準を無視したり違反することが良いことだと思っている制作者が放送業界に存在していることが問題だ。
  • 視聴者は相当のボリュームでバラエティー番組に文句を言い続けている。だからといって、それらの文句を受け入れ、しゃくし定規に番組基準に合致した番組作りをすると、バラエティーはつまらなくなり絶滅してしまう。どう折り合いをつけるかの問題だ。
  • 今回は委員会の「意見」を公表するだけではなく、制作者と意見交換をするシンポジウムなどをセットに考えるべきだ。シンポジウムを開くならば参加するのは偉い人ではなく、現場感覚を大切にしたカジュアルで開かれた議論にすべきだ。

10月中に臨時の委員会を開催し、決定文を作成したうえで通知・公表を急ぐことにした。

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

日本テレビは、一連の『バンキシャ!』誤報問題に関する報告書をまとめ、10月7日に委員会に提出した。各委員には事前にこの報告書を配付し、読んでもらったうえで意見を求めた。委員会としては、日本テレビが信頼回復に努力することを期待し、この報告書を了承することにした。なお、この報告書はただちにBPOのホームページで公開することにした。

以上

第29回 放送倫理検証委員会

第29回 – 2009年9月

バラエティー番組の問題点について

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』 …など

第29回放送倫理検証委員会は9月11日に開催された。
前回、審議入りしたバラエティー番組の問題点に関して、担当委員が提出した決定文の原案について議論した。全体の構成や結論は、ほぼ了解点に達したが、若干の手直しが必要であるので、改訂案をまず担当委員が作成し、その改訂案について各委員の意見を聞いた上で決定文を完成させることにした。
『真相報道バンキシャ!』については、8月24日に日本テレビが放送した検証番組に対する意見交換を行った。問題点がいくつか指摘されたが、番組は「勧告」の内容に従って制作されていると認められるので、この検証番組の放送により委員会の「勧告」は履行されていると了承した。
女性を殺害したとされる容疑者が護送される航空機内で、客室乗務員の制止を聞かずに取材が行われた事案。審議には入らないが、さまざまな意見が出されたのでその要点を「BPO報告」とBPOホームページに明記し、関係各局に機内取材のあり方について検討を促すことにした。

議事の詳細

日時
2009年 9月11日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点については、7月17日に開催された臨時委員会で審議入りを決めた。そのときに議論した内容を骨子に、担当委員から決定文案が提出された。全体の構成や結論については、原則的に了解点に達したが、表現については全面的に改める必要があるとの意見が大半を占めた。引き続き担当委員が改訂案を作成し、更に各委員の意見を聞いた上で修正作業を行い、決定文が完成され次第速やかに通知・公表すべきであるという点で一致した。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組にはエスプリ、ユーモア、発想の大胆さ、面白さがある。形を変え、姿を変え、出演者を変えて、いろいろなアイデアを生みだして今日まで生き続け、しかもどんどん広がってきた。そのエネルギーを評価しなければいけない。
  • バラエティー番組の歴史的な経過を書いておくことが、すなわち「バラエティーの価値は新しいものを作り出すことにある」という基礎的定義になってくる。
  • 何も定義する必要はない。歴史的にはこのような形でバラエティー番組が展開されてきたが、その中で、今、問題になりうる要素は何かを考えたのか、ということが示せればそれでいい。
  • バラエティーが、例えば報道番組や教養番組と混ざり合う時に、バラエティー的な目的と、報道・教養的な目的とがどこかでぶつかる。その時にバラエティー的な目的を優先させて報道的な事実に対する扱い方を損なうと、問題が発生する。
  • 報道問題の軸は客観性や公正さだ。それに対して娯楽番組を作るときは表現の自由だ。「あなたたちがしっかりしてくれないと憲法21条が危ないですよ」といいたい。
  • 検討した番組資料から言えるのは、テレビ局の責任体制の空洞化と事後対応が全く機械的にしか行われていないこと、それから、視聴者や関係当事者による指摘があってはじめて問題が明らかになったこと-の3点だ。
  • バラエティー番組共通の問題として、かつての時代と比べてメディア環境が変わり、経済的な圧迫が強くなっているけれど、制作者はお金がないならないなりに努力しようとするはずだ。しかし現実は、知性とか感性とかエスプリの感覚が劣化しているように思われる。
  • 番組をつくる当事者自体が試みとして、何でも自由にやるというのは、番組向上の基本だ。バラエティー番組というのは非常にポジティブな価値があって、正にテレビの原点であるということはきちんと言うべきだ。

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

日本テレビは、8月23日の『バンキシャ!』枠内後半の26分30秒間と、翌24日0時50分からの特別番組(38分間)で検証番組を放送した(検証結果の報告書の提出とホームページへの公表も実行されている)。各委員が事前に配付された検証番組を視聴した上で意見交換が行われた。その結果、「勧告」の内容を踏まえ、それに沿って構成されており、委員会はこの検証番組を「勧告」の履行として了承することにした。

<主な委員の意見>

  • 放送日が予定より1週間延びた理由と、ほぼ同様の内容を2回に分けて放送した理由は何だったのか。
  • いろいろな不祥事があると、責任者が並んで立って頭を下げて謝るが、あれは何なんだろう。検証番組の場合は、あの場面は要らない。
  • 勧告書は、テレビ的演出論についても言っているが、検証番組ではそれについてふれられていなかった。むしろそちらのほうが大事だと思う。
  • 社員と外部のディレクターの2人だけは顔を写さない映像にし、ほかの人たちは実名だった。あの違いは、視聴者に対してあの2人がすごくいけないことをしたかのような印象を与えてしまう。
  • こうなった原因はこれだ、そうしなければよかった、という反省はされている。しかし、なぜちゃんと取材をしなかったのか、なぜ上と下の間の、また現場と本社との間のコミュニケーションが上手くいかなかったか、が抜けているので検証とはいえない。
  • この「なぜ」の部分はヒアリングのときにも聞いたが、やはりきちんとした答えはない。取材不足になったのは情報提供者を保護しなければならない、の一点張りだ。
  • 放送の不祥事は放送でかえすべきだ。つまり検証番組を促進するという意味で最大限に評価したい。
  • いわゆる”検証番組”のパターンができてしまったという感じがする。みんなで頭を下げて、ここは本来やるべきことができませんでした、というふうに中身がなくなってどんどん形式化していくと思う。何か新聞の謝罪広告みたいだ。
  • 委員会の意見書を公表したときの記者会見時の映像が多すぎて、非常に違和感がある。何でそれに寄りかかってこの番組を作ったのだろうか。自分たちの言葉による検証番組とはいえない。
  • 一応、それなりに意思が表れているけど、何か「やりましたよ」というアリバイ作りみたいなものを感じた。例えば訂正放送について今後検討すると言うけれど、今回はあそこまで指摘されたのだから、「私たちはこのような訂正放送とすべきでした」といったことがあるのかなと思ったが、全くなかった。
  • 講義形式の研修などをやっても効果がないというのははっきりしているのに、どうしてああいうものしか思いつかないのだろうか。
  • 『バンキシャ!』のスタッフが全員集まって頭を下げるよりかは、あの30人、一人ひとりの生の声を流したほうがよかった。それでうまく構成していけばよいものができたと思う。
  • ともあれ、「勧告」に従って検証番組を制作し、それを放送した事実は高く評価するに値する。委員個々人の感想はいろいろあるだろうが、委員会としてはそのことをきちんと認める必要があるし、それで十分なのではないか。

容疑者が護送される航空機内における取材について

千葉で女性を殺害し、その娘を連れて逃亡した容疑者の男が沖縄で逮捕され、航空機で東京に護送される機内の模様がテレビ3社により取材、放送された。機内の取材は、機長の許可を受け、客室乗務員の指示に従って行うのが基本ルールである。ところがある局のニュースは、客室乗務員から「他のお客様の迷惑になるので、お席にお戻りください」と度重なる注意が行われたが、それを無視して取材が続行されたことが分かる内容の放送であった。この放送に対して、視聴者から多数の苦情が寄せられた。本事案に関しては当該3社から報告書を求め、それをもとに討議した。

<主な委員の意見>

  • ある報告書には「(客室乗務員から)口頭で言われただけで、機内アナウンスされたことはなく、同行する警察官やほかの乗客からも抗議や注意はなかった」と書かれている。これで取材側のエクスキューズになると思っているのだろうか。
  • 容疑者を取材している記者やカメラマンを単に非難するよりも、あの映像を見たときに機内でこんなことをしていいのかと、むしろそちらのほうに疑問を感じた。つまり、マナーの問題ではなく法律に触れる問題ではないのかということだ。そういう縛りがかからないかぎり、プロとしては取材するだろうが…
  • 客室乗務員に注意されても撮影を続行できるのは、そこまでしても報道する価値がある取材対象だという場合でなければ正当化されないと思う。
  • 客室乗務員がやめてくださいというような深刻な事態が起きていたのかどうかは、この映像からだけでは判断できない。それを判断したのは取材者であり、その姿勢をどう見るかだ。
  • 取材はしかたないとしても、その映像をあとでどう放送するかは、場合によっては人権問題にも関わってくると思う。今回の映像を見た感じでは、あれを流してはいけないというようなものではなかった。
  • 報道を呼び寄せたのは捜査側ではないのか。であるのならば、この場合モノを申すとすれば、放送局に言うべきなのか、警察に言うべきなのか、どちらなのか。
  • 客室乗務員の注意を無視する機内の映像も、その後の高速道路の追跡取材の生中継も、放送する側は重大事の貴重な映像であるかのように扱っているが、本当にそうなのか。

討議の結果、審議入りするまでの事案ではないが、各委員の意見を「BPO報告」とBPOのホームページに明記することにより、機内取材のあり方について各局に再検討を促すことにした。

以上

第28回 放送倫理検証委員会

第28回 – 2009年7月

バラエティー番組の問題点について

第28回放送倫理検証委員会は7月17日に臨時委員会として開催された。今回は、「バラエティー番組に関する問題」について担当委員が示した原案を集中的に議論した。その結果、この問題について審議することが決まり、これまでの議論を踏まえて、委員会としての「意見」案を8月中に作成し、9月の委員会でまとめることにした。

議事の詳細

日時
2009年 7月17日(金)午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる問題点を委員会としてどう扱うのかというテーマについて、担当委員から原案が提出された。問題が指摘されている具体的な番組を、あくまで事例として取り上げることと、抽象的な議論にならないようにするという点で一致した。また、「番組向上」に力点を置くべきなのか、バラエティー番組における「放送倫理」をどうとらえるのか、表現の自由を確保しながら制作現場に自覚を持ってもらうためにはどうすべきか-など、さまざまな議論が展開された。その結果、審議入りして委員会の「意見」を出すことにした。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組による性表現とか暴力とかから出て来るさまざまな”おでき”が、むしろ問題なのであって、バラエティー番組そのものが健全であるとか、不健全だとかというような議論は、ちょっと的外れではないか。
  • 事例として議論の対象にしている番組中、特別にひどい要素を持った番組はない。どれもその気になって見れば、それなりに楽しめる。ささいなところで叩かれているだけだと思う。
  • バラエティー番組というのは、何でもありの世界だと思う。まさに、それこそ言論表現の自由の本質そのもので、それに対してこれがいけない、これはまずいというのは違うのではないか。
  • 「テレビバラエティー」は、テレビだという免許事業の制約があり、なおかつお茶の間に直接届けられるというメディアの特性に由来する社会的責任を持っている。番組制作者は何をやっても良いというものではない。ただ委員会は規制を求めるのではなくて、あるべきところを示すべきだ。
  • テレビのバラエティー化傾向は宿命として、あるいはある種の末期現象として、もう止めようがない。そういう中で、テレビがある規範を失って行く状態に、歯止めがかけられるだろうかという問題だ。
  • バラエティー番組ということで、エクスキューズを作ってはいけない。バラエティー番組であれば何でも良いという意識が業界にあるが、現行の民放連の作った基準、あるいは各局が作った番組基準には従うべきだ。新しく基準まで作る必要はないと思う。
  • この委員会は何のためにあるのか。”第二総務省”になることは、最も避けるべきだ。だから、総務省とは違う立場に立ってものを言うべきだ。そうすると、寄って立つところは放送法の1条しかない。まさにその自律性のためにあるわけだ。
  • 本来、局が発揮すべき自律性が、実際には発揮されていないケースがたくさんあり、それがこういう問題を引き起こす。委員会は、自律性を担保するような仕組みを各局がきちんと作る必要があるというべきだが、個々の番組で、ああだこうだという議論はすべきでない。
  • 番組制作体制の無責任化、あるいは空洞化がある。今後、こういう問題が起こらないような体制を作るべきである。問題があるごとに弁解だけして取り繕うやり方はもう通用しないと指摘すべきだ。
  • 各番組の制作者たちに法規制されるのを待っているのかと、問いかけたい。こういう問題がなぜ繰り返されるのか、繰り返されると総務省が入ってくるだけじゃなくて、それこそ法規制の問題すなわち放送法の1条の放送の自由、憲法21条を自ら縛ることになるんだ、ということを自覚すべきだ。
  • 現場にも問題があるけれども、結局は放送の経営者の問題だと思う。要するに視聴率が高ければいいみたいなところがある。

以上のような委員の意見を受けて、担当委員が新たな視点と論点を盛り込んだ修正案を作成することになった。

以上

第27回 放送倫理検証委員会

第27回 – 2009年7月

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』 …など

第27回放送倫理検証委員会は7月10日に開催され、まず、日本テレビ『バンキシャ』について5回目の審理を行った。担当委員による委員会決定文の修正案が提出され、審理の結果、初めての「勧告」を出すこととなった。決定の具体的表現については委員長および担当委員に一任とし、速やかに当該局への通知と公表を行うこととした。
NHK『ETV2001』については、前回の委員会で発行することをきめたブックレットについて、掲載する文書等の詰めの討議が行われた。二重行政をテーマに大阪府の道路清掃を取り上げた『ニュースキャスター』事案は審議入りしないことをきめた。その理由を「委員長談話」として明文化し、委員会からの質問に対するTBSの回答とあわせて公表することにした。
バラエティー番組の問題点に関する討議は、担当委員により提出された原案について各委員の意見交換を行い、方向性を確認した。7月17日に臨時委員会を開いて集中的に議論することにした。
ホームレスの男性の生活を報道した『スーパーJチャンネル』に対して、取材を受けた男性がヤラセがあったなどと抗議している事案については、当該男性とテレビ朝日との間の話し合いを当面見守ることにした。
北朝鮮の金正日総書記の三男の写真の誤報問題は、テレビ朝日が速やかに誤りに気付き、翌日の放送でお詫びがなされたので、取り上げないこととした。

議事の詳細

日時
2009年 7月10日(金)午後5時~8時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

岐阜県が発注した土木工事で、裏金作りが行われているという建設会社役員の証言を報じた日本テレビの報道番組『バンキシャ!』(2008年11月23日放送)について、担当委員が作成した決定文の修正案をもとに審理した。 委員会は審理の結果、検証番組の制作を求めることなど、複数の問題点について具体的な「勧告」を行うことで一致した。 なお、「再発防止計画」については、検証番組の中に盛り込むことを求めることとし、文書での提出は求めないことにした。

<主な委員の意見>

  • この事案を社会的に捉えれば、事実に反する報道であることが明白である点でも、刑事事件の手段となり実害をもたらした点からも『あるある大事典』よりも重いといえるだろう。
  • 番組を制作していく過程で、分業化は進んでいるが、それをつないでゆく司令塔の役割が機能していない。事が起こる前にコミュニケーションを深め、指示を仰ぐことが危機管理の本質だ。
  • この事案は情報提供者の異常さに原因があるが、10年に1度くらいはこういう問題が起きるので、局は対応能力を持った人物を育て、配置すべきだ。
  • 日本テレビへのヒアリングでは異口同音に、税金を不正に使うことは良くないという答えが返ってきた。会計検査院の調査とこの告発とを、「裏金」という同一の言葉を使って、同質のものとして報じた原因は、税金の不正使用を責める報道をすれば視聴者が納得してくれるだろう、という安易な考えがあったからではないか。
  • 放送法に則った訂正放送といいながら、何を訂正し、お詫びしたのか全然分からない。意味不明かつ中途半端であったことが問題だ。

日本テレビへの通知と記者発表は7月30日に行うことにした。(委員会決定本文はこちら)

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』

前回の委員会で、この事案の委員会決定に関して、より広く、深い議論をしてもらいたいという趣旨で、ブックレットを発行することにした。ブックレットには、委員会の「意見」および添付資料(「NHKへの質問と回答」および「業務命令と制作者の自由をめぐる論点の整理」)、委員会の「意見」に対してNHKが出した見解―を収録することにした。なお、NHKが出した見解に対しては、ブックレットの前文の委員長コメントのなかで委員会の考え方を表明するとともに、この問題についての議論が行われたNHK経営委員会の議事録のURLを掲載することにした。

道路清掃をめぐる二重行政を取り上げたTBS『情報7daysニュースキャスター』

二重行政の例として、大阪府道と国道との交差点において、府の清掃車が国道を横切るときに清掃用のブラシを上げ、国道は清掃しないで通行する映像がTBSの『情報7daysニュースキャスター』(4月11日)で放送された。通常はブラシを上げていないので、TBSは、これが誤解を招く放送であったことを認め、お詫び放送を行い、更に、委員会の質問に対し、再発防止策を盛り込んだ回答書を提出した。委員会では、問題の小ささと、局が既に自主的・自律的に誤りを十分に正していることから審議入りはしないこととしたが、委員会の決定について誤解を生まないよう、その理由を「委員長談話」として明示し、「委員会が出した質問書とTBSの回答書」と共に公表することにした。
なお、「委員長談話」では、委員会がこの事案を討議中であるのに、総務省がその結果を待たずにTBSに対して「厳重注意」を行ったことについての委員会の考え方も表明することとした。(委員長談話などはこちらを参照)

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点を議論するために、担当委員が方向性について絞り込むメモを作成して討議を行った。前回の委員会で委員から出された提案どおり、次回の委員会で集中的に議論することとなった。

<主な委員の意見>

  • 放送法の精神、番組編集準則、番組基準の設定、これらは報道だけではなく、バラエティーにも当てはまる。性表現に関する放送基準は、報道はもちろんバラエティー番組の基準でもある。何かバラエティーだけが特殊なものとして捉えられてしまうことに、危惧をいだく。
  • テレビの中に、何でもありの、底なし沼みたいなものがある。そういうテレビが生み出したブラックホールを、どう扱っていくべきなのか。
  • バラエティーとは、論じようが論じまいが、自然発生的に出てきた分野であるし、これからも変化して行くと思う。変に、原理主義的に捉えるのは、高みからものを言っているように見える。ブラックホールもあっての宇宙だから、作る側の自由も尊重すべきだ。
  • 抽象的な議論よりも、問題点を抱えたバラエティー番組が、どんどんあふれてくるという現象は、一体どこに原因があるのかということにポイントを絞るべきだ。
  • 質が低く、世間的に守る価値がないと思われているような言論をいかに守るかというのが、アメリカの言論の自由に関する判例だ。この議論も、問題の立て方を誤ると、バラエティー番組は守る必要がないという方向に行く危険性を感じる。
  • ただ、アメリカでは、性的な表現などのテレビ放送が許容される基準は日本以上に厳しい。その理由は、地上波という有限でどこにでも届く媒体を使った放送の守るべき公共性とか、社会的責任にあり、そこが普通の出版活動とは絶対に違う。

この事案は、7月17日に臨時委員会を開いて集中的に議論することになった。

取材されたホームレスの男性から抗議があったテレビ朝日の『スーパーJチャンネル』

今年の1月20日に、札幌市のホームレスの男性を取りあげ、日常どのような生活をしているかを詳しく放送した。その男性がテレビ朝日に対して、取材の際、ヤラセなどがあったと抗議していることが週刊誌で報じられた。双方の言い分が食い違う上、テレビ朝日の対応も継続しているので、当面、両者間のやり取りを見守ることとした。

金正日総書記の三男の写真を誤報したテレビ朝日の『ワイドスクランブル』

テレビ朝日が、韓国在住の金正日総書記の「そっくりさん」として有名な男性の写真を、三男の近影として報道した事案。テレビ朝日は、6月10日昼前の『ワイドスクランブル』で「これが三男の写真だ」と放送した。しかし、夕方の報道番組で同様の放送をしたあと、その番組のエンド部分で「三男かどうかを確認中」とコメントし、新聞のラテ欄で予告していた夜の『報道ステーション』では、お断りのコメントだけで放送しなかった。そして、翌日の各番組で誤報だったことをお詫びした。誤報の原因が裏づけ取材の不足だったことを速やかに確認し、お詫び放送もくり返ししているので、委員会としては取り上げないこととした。

以上

第26回 放送倫理検証委員会

第26回 – 2009年6月

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』 …など

第26回放送倫理検証委員会は6月12日に開催され、まず、日本テレビ『バンキシャ!』について4回目の審理を行った。担当委員による委員会決定文案について議論されたが結論に至らず、次回に持ち越すこととした。
『ETV2001』については、NHKから「放送倫理検証委員会の意見についての見解」が提出されたので意見交換を行った。その結果、より多くの方々に議論を深めてもらうために、委員会の「意見」とNHKの見解等をまとめたブックレットを発行することにした。
二重行政をテーマに大阪府の道路清掃を取り上げた『ニュースキャスター』事案については、委員会からの質問に対するTBSの回答が提出された。それをもとに討議したが取り上げるかどうかを含めて、再度議論することにした。
バラエティー番組の問題点については、担当委員により2案出された原案を一本化した上で、7月に臨時の委員会を開いて集中的に議論することにした。

議事の詳細

日時
2009年 6月12日(金)午後5時~8時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

岐阜県が発注した土木工事で、裏金作りが行われているという建設会社役員の証言を報じた日本テレビの報道番組『バンキシャ!』(2008年11月23日放送)について、担当委員が作成した決定文案をもとに審理した。
現場で取材したスタッフの能力の問題よりも、むしろ制作体制の不備など構造上の問題ではないかという点に議論が集中した。
また、委員会として、検証番組の制作・放送を行う等の「勧告」を出すべきかどうかについても議論されたが、今回は結論に至らなかった。

<主な委員の意見>

  • 本来、取材を陣頭指揮すべき立場の人たちが局内にいて、現場で走り回って取材しているのは裏取り取材の経験の乏しい人たちばかりだ。日本テレビは、問題の根本を個人の能力の問題と捉えているように見えるが、そういうしくみを作ったのは局である。その責任について、日本テレビの報告には触れられていない。
  • 番組の責任者は十分な情報を知らずに判断を迫られ、その一方で現場のスタッフは情報提供者の詳しい情報を知らされずにロケに行っている。オーケストラのように協業を行わなければいけないのに、それぞれが一部分しか分からないオートメーション工場のような分業になっている。
  • 事実ではないことを報道したことついて、結果責任ではなくて注意義務を怠った重大な過失があると捉えるべきだ。まず、真実でないかもしれないと予見する”予見義務”をどうやって制作体制に取り入れるかという問題だ。
  • 放送前に、おかしいと思うべきことが何点か分かっていたのに確認しなかった。調査報道をする際に踏むべき常道をどの程度踏んだのかを検証すべきだ。
  • 検証委員会が最初に審理したTBSの事案の場合は、一人の内部告発者の証言だけで番組を作ったとすると、注意義務違反が問われたかもしれない。しかし、非常にあいまいだったけど第2の証言者がいたので、真実と信じるに足る根拠が得られたと委員会は考えた。今回はそれがない。
  • 番組制作期間があまりにも短すぎる。大きなテーマなのに調査がそんな短い時間でできるはずがない。全体の責任体制もよくわからないなど、いろいろな問題がある。オーケストラの例が出たが、コンダクターがきちんとすべてを把握して指揮しないとだめだ。
  • この状況下であれば、自分も同じ過ちを犯しただろう。現場のスタッフを責められない。私たちは、検証番組を作るべきだと反省のあり方を示唆してはどうか。テレビで犯した過ちはやっぱりテレビであがなう、それが一番フェアなテレビマンの反省の仕方ではないか。
  • 視聴者が納得するような検証番組を制作することが大切だ。日本テレビの調査報告書、特別調査チームの調査報告書、委員会の決定文案は70%位重なっていると思う。これらは検証番組の立派な台本になる。

こういった意見を踏まえて、次回の委員会で最終決定できるよう、継続して審理することにした。

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』

4月28日に委員会が通知・公表した「意見」に対して、6月4日にNHKから「放送倫理検証委員会の意見についての見解」が提出された。同日の記者会見において、NHK会長はこの問題に言及している。また、5月12日(1094回)と5月26日(1095回)に開催されたNHK経営委員会でもこの件は付議事項として議題に上り、NHKのホームページで公開されている議事録からも活発な議論が行われている様子がうかがえる。当委員会は、この問題についてより議論を深めてもらう材料を提供する目的で、委員会の「意見」とNHKの見解などを一冊のブックレットにまとめることにした。

道路清掃をめぐる二重行政を取り上げたTBS『情報7daysニュースキャスター』

4月11日に放送された『ニュースキャスター』で、府道と国道との交差点で大阪府の清掃車が国道を横切るときに、清掃用のブラシを上げて国道は清掃しないようにして通行する映像が二重行政の例として取り上げられた。TBSは、これが誤解を招く放送であったことを認め、お詫び放送を行った。 この事案について、委員会がTBSへ出した質問に対する回答書が提出された。その回答書をもとに議論したが結論に至らず、委員会として審議入りするかどうかを含めて、もう一度討議することにした。

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点を委員会としてどう扱うのかというテーマについて、担当委員から2つの案が提出された。俎上にのっている個別の番組について問題点を整理し、具体的に議論することが必要である点では一致したが、方向性についてはひとつの案に絞り込んだ上で、引き続き検討することにした。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組は時代と共に変貌する。それに伴い、バラエティー番組に関する問題も反復して発生する。どうして、制作者は過去の事例や他局の事例に学ぼうとしないのか。
  • 放送倫理を問うときは先に判断基準があり、その基準に違反しているかどうかを検証するプロセスを経なければならない。バラエティー問題については、判断基準としての、民放連の放送基準に言及すべきではないか。
  • べからず集ではなく、おもしろいバラエティーを作るにはどうすればいいのか、という考え方を示してはどうだろうか。ルール的なものは多すぎないほうがいいわけだから、あまり書き込むべきではない。
  • 制作しているセクションがどこであっても、バラエティー番組と標ぼうしている限りは全て対象に考えるべきだ。いろいろなジャンルが混ざり合ってバラエティー番組は成立しているのだから、軸足がどのジャンルにあるかは問題にすべきではない。
  • 風刺がきき、毒がなければバラエティーではない。常識を破ってこそバラエティーだ。制作者は放送倫理のギリギリを狙っていると認識することも大切だ。

昨秋以降の委員会で俎上にのせた何本かのバラエティー番組をまとめて検討しなければならず、重いテーマなので十分な時間をかけて議論すべきだという意見が出された。そこで、7月に臨時委員会を開催し、バラエティー番組を集中的に議論することにした。

以上

第25回 放送倫理検証委員会

第25回 – 2009年5月

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『バンキシャ』

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』 …など

第25回放送倫理検証委員会は5月15日に開催され、まず、日本テレビ『バンキシャ』について3回目の審理を行った。最初に特別調査チームから裏金作り報道に関する調査結果の中間報告があり、その上で議論がなされた。
NHK『ETV2001』については、委員会が公表した「意見」に対して新聞報道などさまざまな反応があったので、それについて意見交換を行った。
荒川区議会に対する報道は過剰だったと当該局にクレームがあった事案については、通常の範囲内の取材であると判断し、取り扱わないことにした。
次に、二重行政をテーマに、大阪府の道路清掃を取り上げた事案は、当該局に質問書を出し、回答を待って改めて検討することにした。
バラエティー番組の問題点については、委員会として蓄積してきた具体的な事例をどういう方法で取り上げるかについて話し合った。
最後に、委員会で討議した事案が既にマスメディアにより周知されている場合には、原則として「BPO報告」等では実名を公表することを決めた。

議事の詳細

日時
2009年 5月15日(金) 午後5時~8時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『バンキシャ』

岐阜県が発注した土木工事で、裏金作りが行われているという建設会社役員の証言を報じた日本テレビの報道番組『バンキシャ』(2008年11月23日放送)について、委員会は特別調査チームを編成し、事実関係の調査を行った。調査は当該番組のスタッフおよび取材先の関係者に対するヒアリングを中心に行われ、調査担当責任者である調査顧問から委員会に対してその結果が中間報告された。

<主な委員の意見>

  • 全ての元凶は制作時間の短さだ。真相を究明するということよりも、放送日に間に合わせるようにしようとすることが、曖昧で中途半端な取材になる原因だ。可哀想なくらい現場のディレクターが駆け回っているという状況を作ってしまっている。
  • 画が取れれば何でもいいという、映像至上主義的な感じがする。組織としてチームでやっているはずだが、実態はチームになっていない。お互いの連絡は不十分で、てんでばらばら、チェック機能が働いていない。
  • 正確な意味で誰も価値判断していない。裏付けを取ろうと提言してみたところで、この構造である限りまた起きる。そこが一番問題。
  • こういうことがおきないためには(1)責任体制の確立(2)責任者の資質をたかめること(3)告発を疑うスタンスをもつこと、が大事だ。
  • 制作者は、こうすれば視聴者が “怒り”を抱くだろうと安易に演出しているようにみえる。その手法は報道番組ではなく「水戸黄門」を見ているようだ。「俺たちが正義だ」というような感じがする。

特別調査チームの報告や、こういった意見を受けて、次回の委員会で委員会としての対応を検討することにした。

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』

この事案は前回の委員会で審議を終了し、4月28日にNHKに対して委員会の「意見」を通知した後、記者発表を行った。新聞等でさまざまな報道がなされたので、それらについて意見交換を行った。

東京・荒川区議会報道は過剰取材だとクレームがあったテレビ朝日の『スーパーJチャンネル』

3月24日の『スーパーJチャンネル』において、荒川区議会の予算案に盛り込まれた区議会議員の人間ドック費用を全額公費負担にする件と、議長室の応接セットを高価なものに買い替える件はお手盛りではないか、という放送を行った。その取材方法が強引で、伝え方にも問題があるなどと数人の荒川区議からクレームがあった事案。
当該番組を視聴し、テレビ朝日の説明文書を検討した結果、委員会は通常の取材の範囲内であると判断した。また、議員は公人なのだから、その意見を公にできる場は他にもあるのではないか、という意見が述べられた。以上の観点から、この事案は取り上げないこととした。

道路清掃をめぐる二重行政問題を取り上げたTBS『情報7daysニュースキャスター』

大阪府の府道と国道との交差点で、大阪府の清掃車が国道を横切るときに、清掃用のブラシを上げて国道は清掃しないようにして通行する映像が二重行政の象徴的なシーンとして放送された(4月11日)。しかし、通常はこのような方法は行わず、TBSの依頼による動作だったことが分かった。TBSも行き過ぎた取材であったことを認め、2週間後にお詫び放送を行った(4月25日)。
委員会はTBSが作成した報告書を検討した結果、改めて同局へ質問書を出し、その回答を受けて引き続き検討することにした。

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点を委員会としてどう扱うのかという問題については、個別の番組としてではなく、いくつかの番組を複合的な視点から扱う方法など、時代と共に変化しているバラエティー番組に対応できるような新しい切り口を見つける必要があるとの議論がなされた。

<主な委員の意見>

  • 報道系の問題は事実をきちんと伝える義務があるから、その判断基準に従って議論できる。しかし、バラエティーは、視聴者を楽しませたかどうか、視聴者と良好な関係が作られているかどうかといった別の軸が必要ではないか。
  • バラエティー番組のアウトソーシング先は、制作プロダクション、芸能プロダクション、スポンサーないしは営業(代理店)の3つ。放送局の制作者がこの外部3組織との間で、主体性を持てなくなったことが、放送倫理と深い関係があるのではないか。
  • 最近のバラエティー番組の傾向は、視聴者が生身のタレントの姿を求めるようになってきたので、台本が邪魔になってきた。この変化が、バラエティー制作者の横着さを生んだのではないか。

「こういうバラエティーが良いバラエティー番組だからこのように作りなさい」という結論は、この委員会としては言うべきではないという点では一致し、引き続き議論を継続することにした。

「BPO報告」等における局名・番組名の公表ルールについて

従来、委員会の「討議」事案をBPO報告に記載するときは、放送局名や番組名は公表しないことを原則としてきた。しかし、新聞や週刊誌などのメディアで既に周知されている事案については匿名にする必然性がないので、今後は原則として公表することとした。
なお、「審議」「審理」事案については従来どおり公表する。

以上

第24回 放送倫理検証委員会

第24回 – 2009年4月

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『バンキシャ』

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』8 年前に放送されたノンフィクション番組 …など

第24回放送倫理検証委員会は4月10日に開催された。前回の委員会で審理入りした日本テレビ『真相報道バンキシャ!』で、昨年11月に放送された岐阜県の裏金作りに関する誤報について、特別調査チームのヒアリングの状況について中間報告が行われた。
NHK『ETV2001』事案は、担当委員から提出された委員会の決定文について議論し、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。バラエティー番組についての意見に関しては、単に現状の問題点を指摘するだけではなく、制作現場の人たちと一緒に考えていけるような表明方法をめぐって議論が展開された。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年 4月10日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

1. 虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『バンキシャ』

2008年11月23日に放送された日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』が、岐阜県が発注した土木工事に絡み裏金作りが行われているという建設会社役員の証言をスクープとして報じたが、証言が虚偽であることが判明し、結果として誤報となった事案。前回の委員会で審理入りを決定し、特別調査チームを編成して事実関係の調査を開始した。事実調査の状況について、その中間報告があった。

<主な委員の意見>

  • 新聞や雑誌の世界だと、半分以上が外部スタッフということはほとんどありえない。どの範囲まで制作会社に任せてしまっていいのか。
  • 個人の問題にするのは簡単だ。放送倫理の問題をきちんと語ることは、単なる個人のモラルの問題じゃない。ただ、「放送局自体がコンテンツを自分ではもうほとんど作らなくて、よそに任せているという構造全体をやめろ」というような意見は間違っている。
  • 番組制作をアウトソーシングするのが多くなったが、放送責任はその放送局にあるわけだから、番組内容は放送局の誰かがチェックしなければいけないし、正にシステムの問題だ。そのシステムがきちんと機能しているのかどうかということが根本だ。
  • 実際には、できあがったものだけを見てチェックしろといわれても、チェックのしようがない。取材の過程からチェックを入れる仕組みがなければいけない。どの程度の裏を取ったかを確認した上でないと放送できないというルールが必要ではないか。
  • 会計検査院が指摘した、机やイスを買ったという税金のむだ遣いと、いわゆる裏金を要求されたということは収賄とか汚職の話だから位相が違う問題だ。情報選択のしかたや報道の姿勢も問われなければいけない。

このような意見が出され、次回以降に特別調査チームの調査報告を受けて継続して審理することになった。

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』8 年前に放送されたノンフィクション番組

『ETV2001「シリーズ戦争をどう裁くか 第2回問われる戦時性暴力」』の制作過程において、政治的な圧力により内容が不当に改変されたと関係者が主張している事案について、4回目の審議(討議を含めると8回目)を行った。
まず、担当委員から委員会決定文案が提出され、それに基づいて議論がなされた。その結果、大筋において合意が得られたので、最終的な表現の手直しについては委員長一任とし、4月中にNHKに通知して記者発表をすることにした。

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる問題点を「バラエティー論」として総括しようとする事案については、担当委員から対象になっている15番組の分類、今後の議論の進め方などについて提案がなされた。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組の向上を目指すといっても、大変難しいこと。何を持って向上というのだろうか。ジャンルの横断がテレビの活気を作ってきた。枠にはめてしまう方法は疑問だ。
  • 事例はたくさんあるのだから、文書で出すよりもシンポジウムのような方法を検討したらどうか。シンポジウム会場がジャンル横断になるような。記録は後で出せばよい。
  • まとめ方を間違えると娯楽の精神に反してしまう。
  • まとめる必要はない。問題点の指摘はたくさん出るはずで、その答えは制作現場が考えるべきだ。委員会はこうすべきだというべきではない。
  • 『シャボン玉ホリデー』『夢であいましょう』などが本来のバラエティーで、ウソも捏造もOKの世界。今は情報バラエティーが主流だからウソも捏造も許されない。バラエティーの意味が変わってしまった。今回は情報バラエティーに限定したらどうか。
  • ボードビル系のバラエティーと情報バラエティーは根っこの部分で通じる問題がある。熟慮の足りなさ、作りこみの乏しさを地道に議論すべきだ。
  • 視聴者の声を聞かないとテレビが見捨てられるという危機意識が必要だ。
  • バラエティー番組を項目ごとに分類して一つ一つの問題点をクリアしていく。文字だけでなく、(映像や音声のある)マルチメディアで説明しないとこのくだらなさは分からない。バラエティー番組を素材として提起し議論する場を設定する方法がよいのではないか。

こうした議論の結果、具体的なまとめかた、発表方法の方向性については次回以降に持ち越してさらに検討することになった。

以上