第147回 放送倫理検証委員会

第147回–2020年3月

北海道放送『今日ドキッ!』について審議 4月に委員会決定を通知・公表へ

第147回放送倫理検証委員会は3月13日に開催された。
委員会が昨年12月10日に通知・公表した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、再発防止に向けての取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、意見書で指摘した課題に対し適切な対応が行われているとして、了承し公表することにした。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の再々修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、4月に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。
番組で取り上げている特定企業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員から意見書の原案が示された。

1. 読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見への対応報告を了承

昨年12月10日に通知・公表した、読売テレビのローカルニュース番組『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見(委員会決定第31号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。報告書には、再発防止に向けて「人権研修会」を新設したことやBPO委員を招いて実施した勉強会の様子、その後の全社的な意識の変化についてなどが詳細に記されている。委員からは「番組のコンテンツ力やテレビのブランド価値を高める『攻めのコンプライアンス』ができればと思うというアンケートの感想に、前向きな姿勢であるとの印象を受けた」「良い番組づくりにはお金と人が必要だなどとする勉強会での社長の決意表明に感銘を受けた」「再発防止を図る取り組みや今後の改革に期待する」といった感想が述べられ、意見書で指摘した課題に対し適切な対応が行われているとして、当該報告を了承し公表することにした。(委員会決定など2019年度 参照)

2. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について審議、4月に通知・公表へ

北海道放送は参議院選挙公示前日の2019年7月3日、夕方のローカル情報番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。委員会は9月、比例代表制度では自分の住む都道府県に関わりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本来の選挙区の区切りとは異なった報道を行うことで有権者の投票行動をゆがめたのではないか、また特定候補者だけを取り上げ他の比例代表候補者や政党を報道しなかったことは選挙の公平・公正性を害しており放送倫理違反となる可能性があるとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りし、議論を重ねてきた。今回の委員会では、担当委員から示された意見書の再々修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、4月に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. スーパーの買い物客密着企画で不適切な演出を行った『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が示され、意見交換が行われた。

4. 海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組企画で不適切な演出を行ったTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、昨年12月の委員会で審議入りした。この日の委員会では、意見書の原案が示された。次回委員会には、意見書の修正案が提出される予定である。

以上

第146回 放送倫理検証委員会

第146回–2020年2月

NHK国際放送『Inside Lens』委員会決定を通知・公表へ

第146回送倫理検証委員会は2月14日に開催された。
1月24日と2月13日にそれぞれ通知と公表の記者会見をした関西テレビ「『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」とTBSテレビ「『消えた天才』映像早回しに関する意見」について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、3月にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、担当委員から意見書の原案が提出され、意見交換が行われた。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の修正案が提出され、これに基づいて意見交換が行われた。
参議院比例代表選挙に立候補予定の特定候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換を行った。
番組で取り上げている特定企業の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員からヒアリングの結果が報告され、意見書の構成案が示された。
宿泊施設を時々利用する客として登場した男性が、実際には一度も利用したことがなく、また、当該男性がその施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員であることが判明したNHK総合テレビ『おはよう日本』について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、放送倫理に照らして問題がある放送であるが、比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないこと、不十分であると言わざるを得ないものの事前に一定の確認作業が行われていたこと等の事情を総合的に考慮して、当該局に注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

議事の詳細

日時
2020年2月14日(金)午後3時~午後9時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、藤田委員、巻委員

1. 関西テレビ「『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」とTBSテレビ「『消えた天才』映像早回しに関する意見」の通知・公表について報告

関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』は、2019年4月6日など2回の放送の中で、韓国人の気質について、コメンテーターである作家の「手首切るブスみたいなもんなんですよ」という発言をそのまま放送した。また、TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』は、2019年8月11日など3回の放送の際、野球のリトルリーグなど4件の映像で早回し加工を行った。委員会はいずれも放送倫理に違反するものと判断し、『胸いっぱいサミット!』については1月24日、『消えた天才』については2月13日に、それぞれ当該放送局への通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長や担当委員が、通知の際のやりとりや会見での質疑応答などの模様を報告したあと、委員会決定を伝えた双方の放送局のニュースを視聴した。

2. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議、3月にも通知・公表へ

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。番組の制作担当者は利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが、見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。委員会は9月、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて制作担当者から直接話を聞くなど、放送に至るまでの経緯を検証する必要があるとして審議入りを決めた。この日の委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から出された意見書の再修正案について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、3月にも当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. スーパーの買い物客密着企画で不適切な演出を行ったテレビ朝日『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りし、当該放送局の番組制作担当者らに対するヒアリングが行われた。今回の委員会では、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換が行われた。

4. 海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組企画で不適切な演出を行ったTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送の『今日ドキッ!』について審議

北海道放送は参議院選挙公示前日の2019年7月3日、夕方のローカル情報番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。委員会は9月、比例代表制度では自分の住む都道府県に関わりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本来の選挙区の区切りとは異なった報道を行うことで有権者の投票行動をゆがめたのではないか、また特定候補者だけを取り上げ他の比例代表候補者や政党を報道しなかったことは選挙の公平・公正性を害しており放送倫理違反となる可能性があるとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が提出され意見交換が行われ、次回も引き続き審議することになった。

6. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に"セブン-イレブン"がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっていて、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、委員会は12月から審議を続けている。この日の委員会では、担当委員から1月以降に行われたヒアリングの結果が報告されるとともに、意見書の構成案が示された。次回委員会には、意見書の原案が提出される予定である。

7. 番組で紹介した宿泊施設の利用客が関係者だったNHK総合テレビの『おはよう日本』を討議

NHK総合テレビが2019年12月9日に放送した『おはよう日本』における午前6時台のコーナー「おはBiz」で、約4分間にわたり、"キャビン型ホテル"と呼ばれる宿泊施設が紹介された。その中で、施設を時々利用する客として登場した男性が、実際には一度も利用したことがない上に、施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員だったことが視聴者の指摘で明らかになった。NHKは、同月26日に当該番組およびホームページで説明を行うとともにお詫びした。取材・制作担当者は、複数回メーカー社員本人の確認作業を行ったが、勤務先や宿泊施設に対するチェックが十分ではなかったと説明している。このため、委員会では、当該放送局から提出された報告書と番組の同録DVDをもとに討議した。
委員会は、同局において、同種の事案が審議中であるにもかかわらず、看板番組の一つであるニュース番組において、過去に利用したことがないのに時々利用している客として紹介し、また、当該男性がその施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員だったことを見抜けなかったことは、事実と異なる内容の放送であり、放送倫理に照らして問題があるとの厳しい意見が出された。他方で、比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないこと、不十分ながらも事前に一定の確認作業が行われていたこと、再発防止策が導入され、今後徹底を図ることとされていること等の事情を踏まえ、当該局に注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

  • 過去に利用したことがないにもかかわらず、時々利用している客として紹介し、結果的に利害関係者を取り上げるなど事実に反する内容の放送になっている。現在審議中の当該局の他番組と同様の事態が、看板番組の一つであるニュース番組において再発したことは極めて遺憾である。

  • 当該客の属性等について事前に一定の確認作業は行われている。嘘をついている本人に何度確認したところで見破ることは難しい。もっとも、紹介された利用客をインターネットで検索した際、同姓同名のSNSアカウントを発見するなどシューズメーカーの社員である可能性が出てきた時点で、より慎重に確認すべきだった。

  • 比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないことなどからすれば、対象となる問題が必ずしも大きいわけではなく、審議入りするまでには至らないのではないか。

  • 当該局の他番組で起きた問題を受けて作成された「取材・制作の確認シート」をこのコーナーでも導入の検討をしている段階だったというが、導入されていたら今回のことは起こらなかっただろうか。企業のサービスを紹介する際に利害関係者から利用者の紹介を受けることを当面禁止したり、取材協力者に対して利害関係者ではないかを確認するための「出演承諾書」を交わす措置を取るなど、一定の自主的・自律的な事後対応がなされ、今後徹底が図られることに期待したいが、利害関係の有無の確認の難しさが問われている。

  • 「取材・制作の確認シート」を導入して安心するのではなく、記者のスキルや見極める目を高めていくことが重要なのではないか。それは一朝一夕には難しいけれども、より本質的なところから対処してほしい。

以上

第145回 放送倫理検証委員会

第145回–2020年1月

スポーツの映像を早回し加工したTBSテレビの『消えた天才』委員会決定を通知・公表へ

第145回放送倫理検証委員会は1月10日に開催された。 委員会が昨年10月7日に通知・公表した長野放送の『働き方改革から始まる未来』に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含めた取り組み状況など対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、当該対応を了承して公表することにした。 少年野球のピッチャーの投球などスポーツ映像の早回し加工が行われ審議中のTBSテレビの『消えた天才』について、担当委員から意見書の修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、2月に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。 仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の修正案が示された。 海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議しているTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』とついて、意見書の原案が提出された。 スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人だったという不適切な演出で審議入りしているテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、意見書の骨子案が示された。 番組で取り上げている特定企業の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議入りしている琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、ヒアリングの途中経過や今後の予定が報告された。

議事の詳細

日時
2020年1月10日(金)午後2時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、藤田委員、巻委員

1. 長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見への対応報告を了承

委員会が10月7日に通知公表した、長野放送の『働き方改革から始まる未来』に関する意見(委員会決定第30号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。 報告書には、「『役員・社員に対する放送倫理・番組基準の徹底と意識改革』に関する取り組み」として、社内で意見書勉強会とアンケートを実施するとともに、民放連事務局から講師を招いて「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の理解を深めるために勉強会を開いたことなどが詳細に記されている。委員からは「社員のアンケート結果からは、一人一人がしっかりと事例を受け止めていることがわかる」「社員に加え、制作会社の関係者まで広く対象とし、また、社員等の主体性を生かす研修を実施するなど、自主・自律的な観点から望ましい事後対応を行っている」といった感想が述べられ、適切な対応が行われているとして、当該報告を了承して公表することにした。(委員会決定など2019年度 参照)

2. スポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議 2月に通知・公表へ

TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、昨年8月11日の放送で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたと報告があった。9月の委員会で、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議することになり、議論を重ねてきた。 今回は、前回までの議論を受けて担当委員から出された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、2月に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議

参議院選挙公示前日の昨年7月3日、北海道放送は夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した企画を放送した。企画の中ではその他の比例代表の候補者や政党にまったく言及しておらず、制度上、参議院比例代表選挙には北海道という区切りがないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは道内の有権者を当該候補者に誘導する効果を否定できず、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして、委員会は9月から審議を続けている。 今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。次回委員会には、意見書の再修正案が示される予定である。 

4."レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは昨年5月、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと明らかにした。番組の制作担当者は、利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。 委員会は、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて、制作担当者から直接話を聞いて放送に至った経緯を検証する必要があるとして、昨年9月に審議入りを決めた。 この日の委員会では、担当委員から意見書の修正案が示され、それをもとに議論した。次回委員会には、意見書の再修正案が示される予定である。 

5. 生き物捕獲バラエティー番組で動物を事前に用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは、昨年8月14日放送のバラエティー番組『クレイジージャーニー』の中で海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行っていたと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議することを決めた。 この日の委員会では、12月に行われた制作担当者らに対するヒアリングを踏まえて担当委員から意見書の原案が示され、意見交換が行われた。次回委員会には、この日の議論を受けた意見書の修正案が提出される予定である。

6. スーパーで偶然出会ったように放送した買い物客4人が取材ディレクターの知人だったテレビ朝日の『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は昨年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」でスーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が、取材ディレクターの知人だったことがわかったとして、10月に謝罪した。 11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議することになり、12月に当該放送局の番組制作担当者らに対するヒアリングを行った。 これを踏まえて今回の委員会には意見書の骨子案が提出され、意見交換が行われた。次回委員会には議論を受けた原案が示される予定である。

7. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議

琉球朝日放送が昨年9月21日に放送した『島に"セブン-イレブン"がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92条、第93条)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっていて、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかという意見が相次ぎ、12月から審議を続けている。委員会は、昨年10月に別の放送局の番組に対して出した意見書の審議の過程や結果が、それぞれの番組の制作過程にどのように反映されたのについても詳しく聞く必要があるとしてヒアリングを始めていて、この日の委員会ではその途中経過が報告されるとともに、今後の予定が説明された。 次回委員会には、意見書の構成案が提出される予定である。

以上

第144回 放送倫理検証委員会

第144回–2019年12月

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』委員会決定を通知公表へ

第144回放送倫理検証委員会は12月13日に開催され、12月10日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
出演者の不適切な差別的発言を放送し審議中の関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、担当委員から意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、1月に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うこととなった。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送の『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の原案が提出され意見交換を行った。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の原案が示された。
少年野球のピッチャーの投球などスポーツ映像の早回し加工が行われ審議中のTBSテレビの『消えた天才』について、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換を行った。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議入りしたTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、番組制作関係者らに対するヒアリングが行われ、その概要が報告された。
スーパーの買い物客に密着する企画で、登場した主要な客4人がディレクターの知人だったことが明らかとなり放送に至った経緯を解明する必要があるとして審議中のテレビ朝日の報道番組『スーパーJチャンネル』について、番組制作関係者に対するヒアリングが行われ、その概要が報告された。
琉球朝日放送が9月に放送した『島に"セブン-イレブン"がやって来た』と北日本放送が10月に放送した『人生100年時代を楽しもう!』という2つのローカル単発番組について討議を行い、日本民間放送連盟放送基準(以下「民放連放送基準」という)等に照らし、それぞれの番組で取り上げている特定企業の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかといった意見が多く、また、同じテーマで意見書を公表した委員会決定第30号の審議の経過や結果を両放送局がどのように受け止めていたのかなどについて検証が必要であるとして、テーマが共通していることに鑑み2番組を1件としたうえで、審議入りすることを決めた。
トランスジェンダーの方について不適切な放送を行ったという新聞記事が載ったテレビ山口のローカル情報番組『週刊ちぐまや家族』について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、委員の中から厳しい意見が出されるなど、放送倫理に照らして問題がある放送であるところ、当該放送局の報告書に記載されている取材対象者本人の心情などへの配慮等も含め、総合的に判断して、当該局に注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載することとした上で、今回で討議を終え、審議の対象とはしないこととした。

議事の詳細

日時
2019年12月13日(金)午後3時~午後8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、藤田委員、巻委員

1. 読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見を通知・公表

読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見(委員会決定第31号)について、当該放送局に対する通知と公表の記者会見が12月10日に行われた。
読売テレビは、5月10日夕方のニュース・情報番組『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別を執拗に確認する内容を放送した。ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。6月の委員会において、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議入りし、議論を続けてきた。
委員会は、本件放送には、民放連放送基準の「(3)個人情報の取り扱いには十分注意し、プライバシーを侵すような取り扱いはしない」に反し、「適正な言葉と映像を用いると同時に、品位ある表現を心掛ける」よう求める放送倫理基本綱領および「人権の尊重」と「報道における表現は、節度と品位をもって行われなければならない」と求める民放連の報道指針に反する放送倫理違反があったと判断した。
今回の委員会では、委員会決定を伝えた読売テレビのニュースを視聴し、委員長や担当委員から、会見での質疑応答などが報告された。

2. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』の審議 1月に通知・公表へ

関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』の中で、コメンテーターとして出演した作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言した。この発言について、当該放送局は、4月の放送前に制作や考査の責任者らが検討し、「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」と判断して放送したとしていたが、6月に、視聴者への配慮が足りず心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだったと謝罪した。
委員会は7月、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている民放連の放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議に入った。
今回は、前回までの議論を受けて担当委員から出された意見書の再修正案について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、次回の委員会で最終確認し、1月に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議

北海道放送が参議院選挙公示前日の7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。9月の委員会において、その他の比例代表の候補者や政党にはまったく言及しておらず、参議院比例代表選挙には制度上北海道という区切りを入れる余地がないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは、道内の有権者を当該候補者に誘導する効果を否定できないことからすれば、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性を害し、放送倫理違反となる可能性があり、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして審議入りした。
今回の委員会では、担当委員から意見書の原案が提出され意見交換が行われた。次回委員会には、今回の議論を受けた意見書の修正案が示される予定である。

4. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。番組の制作担当者は利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが、見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。
委員会は9月、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて、制作担当者から直接話を聞くなど、放送に至るまでの経緯を検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から意見書の原案が示され、それを基に議論した。次回委員会には、意見書の修正案が示される予定である。

5. 少年野球のピッチャーの投球などスポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議

TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、8月11日の放送で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたことが社内調査で判明したと報告があった。9月の委員会で、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りが決まった。
今回の委員会では、番組関係者へのヒアリングが11月半ばに完了したことが報告され、担当委員が意見書の原案を示し、これを基に意見交換を行い、次回の委員会に向け修正案を準備することになった。

6. 生き物捕獲バラエティー番組で動物を事前に用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
前回の委員会では、当該放送局から提出された報告書や同録DVD、新たに提出されたメキシコの現地協力者などへの調査結果をまとめた追加報告書などを基に討議を行った。その結果、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。
12月初め、番組制作関係者らに対するヒアリングが行われ、その概要が担当委員から報告された。

7. スーパーで偶然出会ったように放送した買い物客4人が取材ディレクターの知人だったテレビ朝日の『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が、取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。前回の委員会では、当該放送局から提出された同録DVDや報告書を基に意見交換が行われ、その結果、放送倫理違反の疑いがあり放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。
12月初め、番組制作関係者に対するヒアリングが行われ、その概要が担当委員から報告された。

8. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議入り

琉球朝日放送は9月21日に『島に"セブン-イレブン"がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』という55分のローカル単発番組を放送した。この番組を見た視聴者から「放送なのか広告なのか曖昧だ」という趣旨の意見がBPOに寄せられたため、委員会はDVDと報告書の提出を求めて視聴した。番組は、あるコンビニエンスストアが沖縄に初めて出店する様子を描いたもので、開店の準備の様子や地元の反応に加え、独自の食品について紹介したあとで、スタジオで司会者が試食し、味を称賛している。番組は、このコンビニエンスストアを経営する企業の提供だった。
また北日本放送は10月13日、『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という15分のローカル単発番組を放送した。視聴者からの同じ趣旨の意見を受けて委員会が確認したところ、高齢化時代の資産形成に触れながら、番組の多くの時間を使って富山市に本社がある投資信託相談を手がける会社の事業を紹介していた。番組の直前にはこの会社が開くセミナーのCMも放送された。
委員会はいずれの番組についても討議を行い、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92条、第93条)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いが大きいのではないか、また、前者は番組内で試食して味を褒め、また後者も番組の直前にセミナーのCMが放送されて、視聴者にとっては広告か番組か識別できないのではないかなど、放送に至った経緯について検証が必要だという意見が相次いだ。また、別の放送局の番組に対して委員会が10月に出した意見書の審議の過程や結果が、それぞれの番組の制作過程にどのように反映されたのか詳しく聞く必要があるとして、テーマが共通しているこの2番組を1件とし、審議入りすることを決めた。今後は、琉球朝日放送と北日本放送の社員らに対するヒアリングなどを行って、審議を進める。

9. トランスジェンダーの方への配慮を欠いた放送だという新聞記事が載ったテレビ山口のローカル情報番組『週刊ちぐまや家族』を討議

テレビ山口が11月9日に放送した『週刊ちぐまや家族』について、トランスジェンダーの方への配慮を欠いた放送だという記事が新聞に載った。このため委員会は、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。
番組は、毎週土曜日の午前中に放送される58分のローカル情報番組。山口県内の各地域のさまざまな話題を紹介するコーナーで、1分30秒の間、駐車場で車の下に入ってオイル交換をしている人を紹介した。この際、リポーターが、視聴者にオイル交換をしている人が女性であることを示唆しながら、CMを挟んだあと、別のインタビューを受けた本人をよく知る男性の発言を受けて、画面には「珍 女性のような男性」と表示した。
放送後、本人が不本意なテロップ等とSNSでテレビ山口に抗議した。テレビ山口は、新聞報道の後、自社のホームページに「不適切な放送をしてしまいました」とお詫びを載せ、本人に会って謝罪した。またLGBT問題に詳しい弁護士などに委員になってもらい、社内に再発防止策を取りまとめる番組検証委員会を設けたという。
12月の放送倫理検証委員会では、第31号事案を踏まえると、取材の執拗さ等において相違があることは否めず、その点について一定程度考慮する必要があるとしても、本人に対する配慮を著しく欠いた取材、放送内容である、本人が受けたダメージは計り知れないほど大きいといった厳しい意見が相次いだ。他方で、当該放送局の報告書に記載された本人の心情などへの配慮が必要である、新聞報道後であるという誹りは免れないものの、当該放送局が一定の自主的・自律的な取り組みを行っていることは考慮する必要があるなど、さまざまな意見が出された。
以上の点を慎重に議論、検討した結果、委員会としては、放送倫理に照らして問題がある放送であるが、本人の心情などへの配慮も含め、総合的に判断して、当該局に対して注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載したうえで、今回で討議を終えることとし、審議入りしないことを決めた。

  • 委員会決定第31号事案を踏まえると、取材の執拗さにおいて相違があることは否めず、その点について一定程度考慮する必要があるとしても、本人のプライバシーに対する配慮を著しく欠いた取材、放送内容であり、放送倫理に照らして問題があると言わざるを得ない。

  • 本人が受けたダメージは計り知れないほど大きく、その点では審議入りも考えられる。

  • 本件において、担当ディレクターが、審議中である第31号事案のことを意識していなかったということは極めて遺憾である。

  • 放送倫理上問題がある放送であるとしても、報告書に記載されているご本人の心情への配慮が必要である。

  • 新聞報道後であるという誹りは免れないものの、自主的・自律的な取り組みを行っていることについては一定の評価をしてもよいのではないか。

以上

第143回 放送倫理検証委員会

第143回–2019年11月

読売テレビ『かんさい情報ネットten.』委員会決定を通知・公表へ

第143回放送倫理検証委員会は11月8日に開催された。
出演者の不適切な差別的発言を放送し審議中の関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、担当委員から意見書の修正案が示された。次回委員会には意見書の再修正案が提出される予定である。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し審議中の読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、担当委員から意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、12月上旬に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うこととなった。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送の『今日ドキッ!』について、当該放送局の番組関係者に対して行われたヒアリングの概要が担当委員から報告され、意見書の骨子案が示され、意見交換を行った。次回委員会には、意見書の原案が示される予定である。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の骨子案が示され、意見交換を行った。
少年野球のピッチャーの投球などスポーツ映像の早回し加工が行われ審議中のTBSテレビの『消えた天才』について、当該放送局の番組関係者に対して行われたヒアリングの概要が担当委員から報告され、意見書の骨子案が示され、意見交換を行った。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組を放送した際、事前に準備した動物をその場で発見し捕獲したように見せる演出を行ったTBSテレビの『クレイジージャーニー』について、当該放送局から追加の報告書が提出され討議した結果、番組内容が民放連放送基準に抵触している疑いがあるとして審議入りすることを決めた。
スーパーマーケットの買い物客に密着する企画で、ディレクターの知人を客として登場させた内容を放送したテレビ朝日の報道番組『スーパーJチャンネル』について、当該局から提出された同録DVDや報告書などを基に討議した。その結果、番組内容が放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を解明する必要があるとして審議入りすることを決めた。

1. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』の中で、コメンテーターとして出演した作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言した。この発言について、当該放送局は、4月の放送前に制作や考査の責任者らが検討し、「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」と判断して放送したとしていたが、6月になって、視聴者への配慮が足りず心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだったと謝罪した。
委員会は7月、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている民放連の放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から意見書の修正案が示され、それを基に意見交換した。次回委員会には、意見書の再修正案が示される予定である。

2. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』の審議 12月上旬、通知公表へ

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別を執拗に確認する内容を放送した。ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。6月の委員会において、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議入りした。
今回は、前回の意見書の原案に対する議論を受けて担当委員から示された再修正案の内容について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、12月上旬に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うこととなった。

3. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議

北海道放送が参議院選挙公示前日の7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。9月の委員会において、その他の比例代表の候補者や政党にはまったく言及しておらず、参議院比例代表選挙には制度上北海道という区切りを入れる余地がないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは、道内の有権者を当該候補者に誘導する効果を否定できないことからすれば、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性を害し、放送倫理違反となる可能性があり、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして審議入りした。
今回の委員会では、担当委員から、当該放送局の番組関係者に対して行われたヒアリングの概要が報告され、意見書の骨子案が示され、これを基に意見交換を行った。次回の委員会には、意見書の原案が示される予定である。

4. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。番組の制作担当者は利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが、見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。
委員会は9月、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて、制作担当者から直接話を聞くなど、放送に至るまでの経緯を検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から、意見書の骨子案が示され、これを基に意見交換を行った。次回委員会には、意見書の原案が示される予定である。

5. 少年野球のピッチャーの投球などスポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議

TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、8月11日の放送で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたことが社内調査で判明したと報告があった。
9月の委員会で、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りが決まった。
今回の委員会では、担当委員から、番組関係者に対して行ったヒアリングの概要が報告され、意見書の骨子案が示され、これを基に意見交換を行った。次回の委員会には意見書の原案が提出される予定である。

6. 生き物捕獲バラエティー番組で動物を事前に用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』審議入り

TBSテレビは、2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、制作スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行っていたと発表した。
当該放送局の報告書によれば、専門家が「爬虫類ハンター」としてメキシコを訪れ、珍しい爬虫類を発見・捕獲するという企画で、放送後、外部からの指摘を受け社内調査したところ、紹介した動物6種類のうち4種類が、事前に現地の協力者に依頼して捕獲し、生息地付近に放すなどしたものを使って撮影していたことがわかったという。また過去10回の「爬虫類ハンター」企画を調べた結果、計7回、11種類の生物が、事前に用意されたものであることがわかったという。
委員会は10月、当該放送局から提出された同録DVDや報告書を基に討議し、委員からは「民放連放送基準『(32)ニュースは事実に基づいて報道し公正でなければならない』に抵触する疑いがある」「事実を伝えていないという点で視聴者との約束に反している」など放送倫理違反の疑いがあるとの意見が出されたが、当該放送局によるメキシコなど現地協力者への調査が継続中であることから、討議を継続していた。
今回、当該放送局から調査結果をまとめた追加報告書が新たに提出され、これらを基に委員会で討議した結果、民放連放送基準に抵触している疑いがあることを踏まえ審議入りを決めた。

7. スーパーで偶然出会ったように放送した買い物客4人が取材ディレクターの知人だったテレビ朝日の『スーパーJチャンネル』審議入り

テレビ朝日は今年3月15日、報道番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーマーケットの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が、取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。
当該放送局から提出された報告書によると、当該企画は、業務用の食品などを扱うスーパーを紹介し、個人で利用する客の事情など生活の様子を描くもので、当該放送局の関連会社に派遣されたディレクターが単独でロケ取材を行っていたという。企画の主要なエピソードの中心人物である4人はこのディレクターの知人で、事前にロケのスケジュールなどを伝えていた。
委員会では、当該放送局から提出された同録DVDや報告書を基に討議として意見交換が行われ、委員からは「利害関係者を番組企画に登場させるなど、過失ではなく故意に行われた事案である可能性が大きく、放送倫理違反の疑いがある」などの意見が出され、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして、審議入りを決めた。

以上

第142回 放送倫理検証委員会

第142回–2019年10月

"生き物捕獲バラエティー番組で事前に動物を用意"
TBSテレビ『クレイジージャーニー』を討議

第142回放送倫理検証委員会は10月11日に開催され、10月7日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
また、委員会が7月5日に通知・公表した日本テレビ『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含めた取り組み状況など対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、当該対応報告を了承し、公表することとした。
出演者の不適切な差別的発言を放送し審議中の関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、担当委員から意見書の原案が示された。次回委員会には意見書の修正案が提出される予定である。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し審議中の読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、担当委員から意見書の修正案が示され、意見交換を行った。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し、前回審議入りした北海道放送の『今日ドキッ!』について、当該放送局の番組関係者の一部に対して行われたヒアリングの結果について担当委員から報告があった。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして、前回審議入りしたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、近く予定されている番組関係者へのヒアリングのポイント等について意見交換を行い、確認した。
少年野球のピッチャーの投球などスポーツ映像の早回し加工が行われ、前回の委員会で審議入りしたTBSテレビの『消えた天才』について、当該放送局から追加報告書が提出され、これを受けて担当委員から、当該番組関係者に対するヒアリングの準備に入る旨の報告があった。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組を放送した際、事前に準備した動物をその場で発見し捕獲したように見せる演出を行ったTBSテレビの『クレイジージャーニー』について、当該放送局から提出された報告書を基に討議した。その結果、番組内容が民放連放送基準に抵触している疑いがあり、他方で、当該放送局が調査を継続中であり、追加の報告書が提出される見込みであることを踏まえ、討議を継続することとした。

1. 長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見を通知・公表

長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見(委員会決定第30号)について、当該放送局に対する通知と公表の記者会見が10月7日に行われた。
長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、5月の委員会で、番組で取り上げられている特定企業の事業紹介が広告放送と誤解されかねない内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りし、議論を続けてきた。
委員会は、長野放送が、民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連が策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らした適正な考査を行わず、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した。
今回の委員会では、委員会決定を伝えた長野放送のニュースを視聴し、委員長や担当委員から、会見での質疑応答などが報告された。

2. 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見への対応報告を了承

委員会が7月5日に通知公表した、日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見(委員会決定第29号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、情報・制作局の全社員が意見書を読んだ感想をアンケートとして集め、それを基にミーティングを開いたこと、意見書の真意をより深く理解するために放送倫理検証委員会の担当委員を招いて勉強会を開催したことなどが記載され、それぞれの会合で出た意見や感想が具体的かつ詳細に記されている。
委員会では、勉強会に出席した委員の「活発な意見交換ができた」という感想を踏まえて意見交換を行い、当該放送局が意見書で指摘した課題を受け止め、個々の社員においても自分の問題として受け止めていることが窺われ、局の対応も適切であるとして、当該対応報告を了承して、公表することにした。(委員会決定など2019年度 参照)

3. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』の中で、コメンテーターとして出演した作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言した。この発言について、当該放送局は、4月の放送前に制作や考査の責任者らが検討し、「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」と判断して放送したとしていたが、6月に、視聴者への配慮が足りず心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだったと謝罪した。
委員会は7月、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている民放連の放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から意見書の原案が示され、それを基に議論した。次回委員会には、意見書の修正案が示される予定である。

4. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別を執拗に確認する内容を放送した。ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。6月の委員会において、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議入りした。
今回は、前回の意見書の原案に対する議論を受けて担当委員から示された修正案の内容について意見交換が行われ、次回の委員会でも引き続き議論を行う予定である。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議

北海道放送が参議院選挙公示前日の7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。前回の委員会において、その他の比例代表の候補者や政党にはまったく言及しておらず、参議院比例代表選挙には制度上北海道という区切りを入れる余地がないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは、道内の有権者を当該候補者に誘導する効果を否定できないことからすれば、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性を害し、放送倫理違反となる可能性があり、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして審議入りした。
委員会では、当該放送局の番組関係者の一部に対して行われたヒアリングの結果が報告された。次回の委員会までに引き続きヒアリングを実施し、意見書の骨子案が示される予定である。

6. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、利用客として出演した男性ら3名がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。番組の制作担当者は利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが、見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。
前回の委員会において、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて、制作担当者から直接話を聞くなど、放送に至るまでの経緯を検証する必要があるとして審議入りした。
委員会では、担当委員が、近く予定されている番組関係者へのヒアリングのポイント等について説明し、意見交換を行った。

7. 少年野球のピッチャーの投球などスポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議

TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、8月11日の放送で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたことが社内調査で判明したと報告があった。
前回の委員会において、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りが決まった。
委員会では、当該放送局から、その後の調査において当該番組の全放送回で他に同様の加工はなかった旨の追加報告書が提出されたことを受けて、担当委員から、当該番組関係者に対するヒアリングの準備に入る旨の報告があった。

8. 生き物捕獲バラエティー番組で動物を事前に用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』を討議

TBSテレビは、2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組を放送した際、制作スタッフが事前に準備した動物を、その場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行っていたと発表した。
当該放送局の報告書によれば、専門家が「爬虫類ハンター」としてメキシコを訪れ、珍しい爬虫類を発見・捕獲するという企画で、放送後、外部からの指摘を受け社内調査したところ、紹介した動物6種類のうち4種類が、事前に現地の協力者に依頼して捕獲し、生息地付近に放すなどしたものを使って撮影していたことがわかったという。また過去10回の「爬虫類ハンター」企画を調べた結果、計7回、11種類の生物が、事前に用意されたものであることがわかったという。
委員会では、当該放送局から提出された同録DVDや報告書を基に討議が行われた。委員からは「民放連放送基準『(32)ニュースは事実に基づいて報道し公正でなければならない』に抵触する疑いがある」「当該放送局が認めているように、この番組のロケ部分はドキュメンタリーや情報番組においても虚偽やねつ造が許されないことと同様に過剰な演出にならないように注意する必要がある」「事実を伝えていないという点で視聴者との約束に反している」などの意見が出された。
委員会は、当該放送局が、現在も海外の現地協力者などに対して調査を続けており、その結果について追加の報告書を提出するとしていることから、討議を継続することとした。

以上

第141回 放送倫理検証委員会

第141回–2019年9月

長野放送『働き方改革から始まる未来』通知・公表へ

第141回放送倫理検証委員会は、新たに西土委員が加わり9月13日に開催された。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し審議中の読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、意見書の原案が示され意見交換をした。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議していた長野放送の持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から意見書の修正案が提出された。委員会での議論の結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、10月上旬に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うこととなった。
出演者の不適切な差別的発言を放送し審議中の関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、担当委員から意見書の骨子案が示された。次回委員会には意見書の原案が提出される予定である。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客として登場した人物がこのサービスを提供する会社のスタッフだったことが判明したNHK国際放送の『Inside Lens』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議した。その結果、利用客が当該会社関係者でないことの確認が適切に行われたのかどうかなど取材や制作の経緯等を検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を、公示前日に紹介した北海道放送の『今日ドキッ!』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議した。その結果、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがあるとして審議入りすることを決めた。
少年野球のピッチャーの投球などスポーツの試合映像を早回し加工したTBSテレビの『消えた天才』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った。その結果、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を制作過程で加工した経緯等について検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

1. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し、ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。6月の委員会において、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議入りを決めた。
今回は、担当委員から意見書の原案が提出され意見交換が行われた。次回の委員会には、今回の議論を受けた意見書の修正案が示される予定である。

2. 「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』通知・公表へ

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会において、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送と誤解されかねない内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしていた。委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から示された意見書の修正案の内容について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、10月上旬に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うこととなった。

3. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』において、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、この発言について、当該放送局は、4月の放送前に制作や考査の責任者らが検討し、「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」と判断して放送したとしていたが、6月に、視聴者への配慮が足りず心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだったと謝罪した。
委員会は7月、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている民放連の放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から意見書の骨子案が示され、それを基に議論した。次回委員会には、意見書の原案が示される予定である。

4. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議入り

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、外部から指摘があり、NHKが独自調査を行った結果、利用客として出演した男女3名がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。
また、代行会社の社長が、利用客として番組に登場した3人は派遣スタッフとしてこの代行会社に登録していた人物であり、番組のため会社側が手配したことを認めたという。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、本番組の内容からすれば、その取材や制作に際し、「制作者は出演を依頼する消費者や利用者の選定に当たっては、注意深くその人物が企業の関係者ではないかどうかの確認をしなければならない」(2012年7月31日放送倫理委員会決定第14号)という視点を踏まえ、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われるべきであったところ、十分な確認をしなかった可能性が窺われるため、放送に至るまでの経緯や原因を検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議入り

北海道放送が参議院選挙公示前日の7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材し、他の比例代表の候補者にまったく触れなかったのは、公平性への配慮に欠けるという内容の批判的な意見が視聴者からBPOに寄せられた。
この番組は、長年にわたって政治活動を続けてきた一人の立候補予定者が、今回の選挙を「最後の戦い」だとして、スポーツジムで体を鍛えたり、国会議員でもある家族と買い物をしたりして選挙の準備をする様子が4分40秒余りにわたって放送されていた。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、(1)参議院比例代表には複数の政党・政治団体から多数の候補者が立候補したが、当該番組は、北海道に関係がある1人の候補者のみを取り上げ、その他の政党や候補者には言及していないこと、(2)参議院比例代表選挙には制度上北海道という区切りを入れる余地がないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは、北海道内の有権者を、当該候補者に誘導する効果を否定できないことからすれば、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性を害し、放送倫理違反となる可能性があり、しかも、この点に関しては放送倫理検証委員会が再三にわたり指摘してきたにもかかわらず(2010年12月2日放送倫理委員会決定第9号、2014年1月8日同第17号等)、制作に当たってその問題点が検討された形跡が窺われないことをも踏まえ、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして審議入りすることとした。

6. 少年野球のピッチャーの投球などスポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議入り

8月11日に放送されたTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才~2時間半スペシャル』で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した当時12歳の少年を紹介した際、投球シーン全31球のうち7球の映像を早回し加工し、実際より球速が約20%から50%速く見えるよう編集していたことが判明したと、当該放送局より委員会に報告があった。
報告書によると、当該番組を見ていたスポーツ局のスタッフが気づき、確認したところ、担当ディレクターが早回し加工を認めたという。また、その後の調査で、別の放送回で卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の試合映像を放送した際、同様の早回し加工が確認されたという。当該放送局は、過去の放送分すべてについて調査を行っており、調査完了まで同番組の放送を休止するとしている。
委員会は当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

以上

第140回 放送倫理検証委員会

第140回–2019年8月

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

第140回放送倫理検証委員会は8月9日に開催された。
出演者の不適切な差別的発言を放送し、前回の委員会で審議入りした関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』について、当該放送局社員など番組関係者に対するヒアリングが行われ、その内容について担当委員から報告があった。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送した読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、前回の委員会以降に実施された当該放送局の社員など番組関係者に対するヒアリングの報告があり、担当委員から提出された意見書の構成案が示されて意見交換をした。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議中の長野放送のローカル番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から提出された意見書案について議論された。

議事の詳細

日時
2019年8月9日(金)午後4時~午後9時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、藤田委員、巻委員

1. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

4月6日と5月18日に放送された関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、民族差別や女性蔑視をあおる人権的配慮を欠いた放送であるという意見や、生放送ではなく収録番組であるのに編集作業で発言がカットされなかった点などについて、BPOに多数の批判が寄せられた。
委員会は、民放連の放送基準が人種や性別などによって取り扱いを差別しないとしていることに照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送された経緯や放送後におわびに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして、前回、審議入りを決めた。
委員会では、担当委員が8月に行った当該放送局や制作会社の担当者に対してのヒアリングの内容が報告された。次回委員会では、意見交換を踏まえた意見書の骨子案が示される予定である。

2. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別確認のために名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどの執拗な確認行為をする模様を放送した。ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから許し難い人権感覚の欠如であって報道番組としての感覚を疑う旨の厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。
委員会は、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議している。
今回は、前回の委員会以降に実施された当該放送局の社員など番組関係者に対するヒアリングの報告と意見書の構成案の説明が担当委員から行われ、意見交換した。次回は意見書の原案が提出される予定である。

3. 内容が番組か広告か曖昧だとされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』について審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会で、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしている。
委員会では、前回の議論を受けて担当委員から示された意見書案の内容について意見交換が行われた。次回も意見書案について議論を続ける予定である。

以上

第139回 放送倫理検証委員会

第139回–2019年7月

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』審議入り

第139回放送倫理検証委員会は7月12日に開催され、7月5日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見について、出席した委員長代行や担当委員から当日の様子が報告された。
街頭取材で取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し、前回の委員会で審議入りした読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、当該放送局など番組関係者に対するヒアリングが始まり、担当委員からその途中経過が報告された。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議中の長野放送のローカル番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から示された意見書案について議論された。
出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』について、当該放送局から報告書と同録DVDの提出を受け討議を行った。その結果、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送に至った経緯や放送後にお詫びに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
6月12日に放送されたTBSテレビのバラエティー番組『水曜日のダウンタウン』の企画「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」における「ヤバめ素人」の描かれ方について当該放送局から報告書と同録DVDの提出を受け討議を行った。その結果、当該企画は、民放連の放送基準に抵触している疑いがあるが、当該放送局は放送直後に視聴者から批判を受け、演出上の配慮や注意喚起が十分ではなかったと真摯に受け止めており、また、番組制作者にも差別に関する研修に参加するよう指導するなどの自主的・自律的な対応もとられているとして討議を終了することとした。
番組内で差別的表現があったことをお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』について、委員会は討議を継続していたが、当該放送局のその後の自主的・自律的な対応を踏まえて討議を終了した。

1. 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見の通知・公表について

日本テレビ『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見(委員会決定第29号)について、当該放送局に対する通知と公表の記者会見が7月5日に行われた。2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この2つの「祭り企画」を対象に審議を続けていた。
委員会は、「祭り」が番組のために用意されたものであったのに制作スタッフがその過程を把握していなかったこと、また視聴者の「了解」の範囲を見誤りナレーションによって地元に根差した「祭り」に出演者が体当たりで挑戦していると思わせてしまったこと、さらに挑戦の舞台である「祭り」への制作スタッフの関心が薄くなっていく中で安易なナレーションを生んでしまった、と検証したうえで、程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるをえないと判断した。
委員会では、委員会決定を伝えた日本テレビのニュースを視聴し、委員長代行や担当委員から、通知の際のやりとりや会見での質疑応答などが報告された。

2. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別確認のために名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどの執拗な確認行為をする模様を放送した。ロケのVTR終了後、レギュラー出演の男性コメンテーターが番組内容について、許し難い人権感覚の欠如であって報道番組としての感覚を疑うと厳しく叱責したが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。
その後読売テレビは、取材協力者や視聴者に謝罪するとともに、なぜ当該コーナーを取材し放送に至ったのかについて検証する番組を放送した。さらに社内に「検証・再発防止検討チーム」を設置して、人権に関する全社研修会の実施や映像チェック体制の強化を図るとともに、独自の検証結果を公表した。
委員会は、当該放送局の自主的・自律的な迅速な対応は評価できるものの、なぜ十分な議論や反対意見が出された形跡がないまま、この内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして、前回審議入りを決めた。7月上旬、担当委員が当該放送局や制作会社の担当者の一部に対してヒアリングを行い、その途中経過が報告された。次回委員会までに引き続きヒアリングを実施する予定である。

3.「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』を審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会で、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしている。委員会では前回に引き続き、担当委員から示された意見書案の内容について意見交換が行われた。次回も意見書案について議論を続ける予定である。

4. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議入り決定

4月6日と5月18日に放送された関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、民族差別や女性蔑視をあおる人権的配慮を欠いた放送であるとの批判的意見や、番組は生放送ではなく収録されたもので、編集作業で発言がカットされなかったことについての批判がBPOに多数寄せられた。
当該放送局の報告書によると、4月6日の番組内容について、制作や考査の責任者らが事前に発言を検討し、当該発言は「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」「配偶者が韓国人であり、頻繁に韓国を訪れ親近感を持っているコメンテーターならではの比喩表現であり、差別には当たらない」との判断を行った、5月18日についても、発言には差別的意図はないと判断し、放送したとしている。
放送後、関西テレビは、5月24日、「人種、民族、性別や自傷行為を繰り返す方々への差別的意図はない」という見解をまとめたものの、その後、6月18日に至り、「視聴者への配慮が足りず、心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送するという判断は誤りだった」とする謝罪コメントを発表、社長も記者会見で謝罪した。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と当該番組のDVDを基に討議した結果、民放連の放送基準が、人種・性別などを表現する時に、なにげない表現が当事者にとって重大な侮蔑あるいは差別として受け取られることが少なくないなどとしていることに照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送に至った経緯や放送後にお詫びに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行い、審議を進める予定である。

5. TBSテレビ『水曜日のダウンタウン』の「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」企画について討議

6月12日に放送されたTBSテレビのバラエティー番組『水曜日のダウンタウン』の企画「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」について、放送後BPOに「障害者をネタとし、健常な対応がとれない素人に(リポーターが)どう対応するかを笑う特集になっています」など批判的な意見が複数寄せられた。このため委員会は、当該放送局に番組の同録DVDと報告書の提出を求め、討議を行った。
TBSテレビの報告書によると、『水曜日のダウンタウン』で2018年10月3日にも「中継先に現れたヤバめ素人のさばき方で芸人の力量丸わかり説」という企画を放送し、その時と同じ俳優が「ヤバめ素人」を演じたという。また、昨年10月の放送後「障害者をイメージさせて不快である」という主旨の意見が2件寄せられていたため、今回の企画においては、視聴者にそのような意図にとられないよう検討した上で演出を行ったということであるが、TBSテレビには視聴者から「障害者を演じている設定に見えました」「障害者を笑うつもりですか」などと批判的な意見が寄せられ、身内に発達障害の方がいるという局員からも「障害がある者を身内に持つ身としては、辛い部分もあった」という指摘を受け、改めて社内で話し合ったという。
委員会では、当該企画は民放連の放送基準「(56)精神的・肉体的障害に触れる時は、同じ障害に悩む人々の感情に配慮しなければならない」で記されている配慮が足りなかったという意見が大勢を占め、上記の演出の工夫では改善されたとは思えないという意見も出されたが、昨年10月の放送への批判を受け、限定的ではあるが改善する努力をしていた点を考慮できるとの意見もあった。
その結果、障害がある方やその家族の視点を踏まえた演出上の配慮や注意喚起が十分ではなかったと真摯に受け止めており、また、番組制作者にも差別に関する研修に参加するよう指導したり、番組スタッフ全員で問題点を共有し、今回のような配慮が足りず不快感を与えるような演出については避けるなどの自主的・自律的な対応もとられているとして討議を終了することとした。

6. 高校中退芸人の差別的発言をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も、その方面に行かない方がいいという趣旨の差別的な表現をした。さらに、他の出演者の「道できれいな10円を12円で売っている」人がいたとの発言に、その様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。そして当該高校などからは一連の対応に理解を示してもらったという。
委員会では、討議を継続してきたが、当事者間で話し合いの場を設けてお詫びをしており、当該放送局の自主的・自律的な取り組みを評価して、委員からの意見を議事概要に公表することにして討議を終了した。

【委員の主な意見】

  • 番組内容のチェックが甘く、差別や人権など社会問題に対する認識が見受けられない。制作者には教育と啓発が必要である。

  • 高校の実名を出す必要性が感じられない。

  • 放送倫理上の問題があるが、放送やホームページで訂正するなど、抗議を受けた後は自主的・自律的に対応している。

以上

第138回 放送倫理検証委員会

第138回–2019年6月

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』の審議

第138回放送倫理検証委員会は6月14日に開催され、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議を続けている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、担当委員から意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、7月初めにも当該放送局へ通知して公表の記者会見を開く見込みとなった。
長野放送がローカルで放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、放送内容が番組か広告か曖昧であり、考査が適正だったか検証する必要があるとして、前回の委員会で審議入りが決まった。その後、担当委員が当該放送局や制作会社の担当者に対してヒアリングを行い、それを基にまとめた意見書の構成や原案の一部が示され、意見交換を行った。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送した読売テレビのローカルニュース番組『かんさい情報ネットten.』について、当該放送局から提出された報告書などを基に討議した。その結果、プライバシーや人権への配慮を著しく欠いた不適切な放送であり、この内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして、審議入りすることを決めた。
番組内で差別的表現があったことをお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』について、追加報告書が提出されて委員会で議論したが、さらに討議を継続することになった。
統一地方選挙の告示約3週間前に立候補予定の現職知事のインタビューを放送したテレビ東京の『日曜ビッグバラエティ』および立候補していた現職の知事を、告示の翌日に番組内で取り上げたCBCテレビの『ゴゴスマ』について、当該放送局に報告書の提出を求めて討議した。報告書によると、前者については、制作スタッフは選挙を巡る放送基準は認識していたが、告示の3週間前であることに思いが及ばず放送に至ったとのことであり、後者については、制作スタッフは選挙期間中の候補者を扱う場合には注意が必要との認識はあったものの、紹介した知事が候補者かどうかの確認を怠ったという。委員会では、最近の討議事案と類似のミスが繰り返されていることに厳しい意見が出されたが、いずれの番組も他の候補者との間で実質的に公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまで達しておらず、今後、各放送局が、社内のチェック体制を構築して再発防止に努めるとしていることから、今回は審議に入らず、議事概要に主な意見を記載して改めて注意喚起をすることとし、討議を終了した。

1.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この2つの「祭り企画」を対象に審議を続けてきた。
この日は、前回までの議論を受けて担当委員が作成した意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、7月初めにも当該放送局へ通知して公表の記者会見を開く見込みとなった。
なお、神田委員長は当該番組の審議には参加していない。

2.「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』を審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について視聴者から「放送番組なのか広告なのか曖昧だ」という趣旨の意見がBPOに寄せられた。当該番組は30分枠の編成で、2分間のステーションブレークを除いた28分間には、中CMがなかった。前回の委員会で、当該番組で取り上げている特定の社会保険労務士法人の事業紹介は、民放連の放送基準に照らして広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったのか検証する必要があるとして、審議入りを決めた。その後5月末から6月初めにかけて、担当委員が長野放送社員や番組を制作した制作会社の担当者にヒアリングを行った。
今回の委員会では、担当委員からヒアリングの概要が報告され、併せて、長野放送から再発防止策に向けた改善策などが記載された追加報告書が提出されたことも報告されたうえで、意見書の構成や原案の一部が示され、意見交換が行われた。次回も引き続き意見書案を中心に審議する予定である。

3. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議入り

読売テレビが5月10日に放送した夕方のローカルニュース番組『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画について、「プライバシーおよび人権を侵害しているのではないか」という批判的な意見がBPOに対して多数寄せられた。
「迷ってナンボ!」と題されたコーナー企画は、お笑い芸人2人が街頭に出て、人々のさまざまな疑問や迷いを探し、その場で解決していくというもので、当該番組は、大阪市内の飲食店の女性に依頼され、男性常連客の性別を確認するというものだった。その際、名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどした。ロケのVTRが終わって映像がスタジオに切り替わった際、レギュラー出演している男性コメンテーターが「許し難い人権感覚の欠如だ。よくこんなもの放送できるね。報道番組としてどういう感覚なのか」と厳しく叱責し、司会のアナウンサーなど他の出演者がその指摘に特に応じることなくコーナーの放送は終わった。
これを受けて読売テレビは5月13日、取材協力者に謝罪するとともに、番組ホームページに謝罪コメントを掲載、その日の同番組冒頭でも「人権的配慮に欠けた不適切な放送であった」と謝罪した。5月15日には番組を拡大し、問題を指摘したコメンテーターも出演して、なぜ当該コーナーを取材し、放送に至ったのかについて検証する番組を放送した。また、「迷ってナンボ!」という当該コーナーを当面の間休止すると発表した。
さらに社内に、「検証・再発防止検討チーム」を設置して、人権に関する全社研修会の実施や映像チェック体制の強化を図るとともに、独自の検証結果を公表した。また、視聴者からの意見に答える番組『声 あなたと読売テレビ』で、寄せられた意見を紹介し今回の問題点や再発防止策などについて改めて視聴者に説明した。
委員会では、当該放送局から提出された映像素材や報告書を基に討議が行われ、委員から「性的少数者の描き方に根本的な問題がある」「あまりにもマジョリティーの立場に立ちすぎた放送で重大性は群を抜いている」「放送内容のみならず制作過程に大きな問題があるのではないか」などの批判的意見が相次いだ。また、「深刻なのはコメンテーターや視聴者から指摘されるまで出演者だけでなく制作陣が問題に気づいていなかったことだ」「社会の批判的感覚と局内の感覚に深いギャップがある」との指摘もあった。
討議の結果、当該放送局の自主・自律の迅速な対応は評価できるが、読売テレビの放送基準が準拠する民放連放送基準の条項に複数抵触するおそれがあるとの意見や、十分な議論や反対意見が出された形跡がないまま、この内容が放送されるに至ったかを解明する必要があるなどの意見が出され、審議入りを決定した。

4. 高校中退芸人の差別的表現をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も、その方面に行かない方がいいという趣旨の差別的な表現をした。さらに、他の出演者の「道できれいな10円を12円で売っている」人がいたとの発言にその様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。当該高校などからは一連の対応に理解を示してもらったという。
委員会では、当該放送局から提出された追加報告書を基に意見交換したが、討議を継続することになった。

5-1. 統一地方選挙の告示約3週間前に現職知事のインタビューを放送したテレビ東京の『日曜ビッグバラエティ』を討議

テレビ東京はバラエティー番組『日曜ビッグバラエティ』で、3月3日に『不法投棄を許すな!ヤバいゴミぜんぶ拾う大作戦~東京湾ダイバー70人で潜って一斉清掃SP~』を放送した。この番組の「三重県の不法投棄地帯で奮闘する不法投棄Gメンに密着」という特集コーナーの中で、三重県知事がインタビュー出演した。番組はゴミの不法投棄を取り締まる三重県職員の奮闘ぶりを伝えるもので、その一部として現職知事のインタビューが37秒間放送された。
放送日は、統一地方選挙で三重県知事選挙の告示まで約3週間前だった。
委員会は、当該放送局に対して、告示の1カ月前を切った時期に現職知事を放送した経緯について、報告書と番組DVDの提出を求めて討議した。
報告書によると、制作会社のディレクターやプロデューサー、テレビ東京の社員も含め番組スタッフは民放連放送基準「(12)選挙事前運動の疑いがあるものは取り扱わない」の規定は認識していたが、知事のインタビュー出演が選挙事前運動にあたるとは考えなかったという。このため放送日が「告示の1カ月前を切った、3週間前の放送」になってしまう事に思いが及ばず、放送に至ったとしている。
選挙関連の放送を巡っては、これまでに複数の委員会決定や委員長コメントを出しており、つい最近の討議事案においても改めて注意喚起したにもかかわらず同様のミスが繰り返されていることについて厳しい意見があった。他方で、放送倫理違反の有無の判断にあたっては、候補者が番組に出演しているかどうかという形式的な観点からの検討だけでは十分ではなく、視聴者、有権者に与える印象の程度を考慮して、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがないかどうかという実質的な観点も合わせて判断すべきであること(決定第9号)を踏まえ、視聴者に与える印象の程度、放送の時期が選挙期間中であるか否か、露出の時間の長短、番組の性質が候補者への投票を誘導するような影響を生じるものか否か等の観点から検討すると、本件番組は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまで達しているとまでは言えないだろうとの判断で一致した。また、当該放送局は、今回の事案を受けて、社内に向けた注意喚起をより一層強化するとともに社内のチェック体制を構築し、制作会社に向けて説明する機会を設けるなど、再発防止に努めるとしている。
以上を踏まえ、委員会は、委員からの厳しい意見を議事概要に公表して、当該放送局に対して、当該担当部門だけでなく、全社をあげて選挙の公平・公正性の確保のために自主・自律に定めたルールが守られるよう注意喚起をすることとして、今回は審議に入らず討議を終了した。

【委員の主な意見】

  • 選挙は現職に有利であるとされており、インタビュー取材の相手は立候補予定者の現職知事ではなく、現職知事以外の責任者でも良かったはずではないか。

  • 現職の知事が自治体の最高責任者であることを踏まえて、懸案となっている不法投棄問題についてインタビュー取材を申し入れることはあり得ると考えられるが、今回のように、現職知事が政策や政治活動の実効性について発言することになれば、告示前であっても選挙の事前運動的効果が強いと視聴者に受け取られかねず注意が必要だ。

  • 統一地方選挙の時期である以上、日頃は守備範囲外である地方選挙に対しても感覚を鋭敏にすべきであるにもかかわらず、告示の3週間前であることなどについて意識が希薄であったことは問題であり、残念である。

  • 今年2月の委員会の選挙関連事案に際して注意喚起した意見が生かされておらず、大変遺憾である。

5-2. 統一地方選挙期間中に現職候補者の顔写真と名前を放送したCBCテレビの情報番組『ゴゴスマ』を討議

3月22日に放送されたCBCテレビの情報番組『ゴゴスマ』で、秋篠宮佳子さまの大学卒業の話題に関連して現職の鳥取県知事を扱った。番組では、佳子さま卒業のニュースを受け、佳子さまに関するエピソードのひとつとして「公務で見事な切り返し」と題して、鳥取県を訪問された際の知事とのやり取りを紹介した。その際、知事の顔写真と名前が書き込まれたフリップを約31秒間放送した。放送当日は、鳥取県知事選挙が告示された翌日でありフリップで紹介した知事も立候補していた。
委員会は、当該放送局に対して、統一地方選挙期間中にもかかわらず放送した経緯について、報告書と番組DVDの提出を求めて討議した。
報告書によると、番組制作スタッフは選挙期間中の候補者を扱う場合には十分な注意が必要であるという認識はあったものの、知事本人が選挙期間中の候補者かどうかという確認ができていなかったとしている。
本件番組に対しても、これまでに複数の委員会決定や委員長コメントを出しており、つい最近の討議事案においても改めて注意喚起したにもかかわらず同様のミスが繰り返されていることについて厳しい意見があった。そのうえで、上記と同様に、視聴者に与える印象の程度、放送の時期が選挙期間中であるか否か、露出の時間の長短、番組の性質が候補者への投票を誘導するような影響を生じるものか否か等の観点から検討すると、本件番組は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまで達しているとまでは言えないだろうとの判断で一致した。
そして、当該放送局は、今回の放送では名前や顔写真を出さない手法もあったと反省しており、番組制作にかかわるスタッフ全員が改めて選挙の公正性について高い意識を持つように注意喚起をしたという。また、国政選挙だけでなく地方選挙も含めた全国の選挙スケジュールを可視化して各番組で共有するとともに、このようなミスを起こさないために運用している番組内容確認表に「選挙期間中の候補者の出演、紹介、映り込みの有無」という確認項目を追加するなど、チェック体制の強化を図ったとしている。
以上を踏まえ、委員会は、委員からの厳しい意見を議事概要に公表して、当該放送局に対して、当該担当部門だけでなく、全社をあげて選挙の公平・公正性の確保のために自主・自律に定めたルールが守られるよう注意喚起をすることとして、今回は審議に入らず討議を終了した。

【委員の主な意見】

  • 単純ミスであるとしても、告示の翌日という選挙期間中であることは軽視できない。

  • 政治家の写真を扱う際に、選挙に関係しているかどうかを調べることは、それほど難しい作業ではないと思う。

  • 今年2月の知事選挙に関連した討議事案があったことをBPO放送倫理検証委員会の議事概要で知っていたとのことであるが、その教訓が自らの番組作りに生かされなかったのは大変遺憾である。

  • 今年は参議院議員選挙もあるが、選挙事前運動に関する不注意には十分気をつけたうえで、選挙報道に関して萎縮することなく積極的に取り組んでもらいたい。

以上

第137回 放送倫理検証委員会

第137回–2019年5月

"CMと誤解を招きかねず放送基準に抵触する疑い"長野放送『働き方改革から始まる未来』審議入り

第137回放送倫理検証委員会は5月10日に開催され、新年度になって委員3人が交代したため、冒頭、報道各社による委員会の写真撮影が行われた。
委員会では、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議を続けている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、前回の委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が担当委員から示された。来月の委員会では、今回の議論を反映した再修正案が提出される予定である。
また、以下の3事案について、当該放送局から報告書と当該番組のDVDの提出を受けてそれぞれ討議した結果、1事案の審議入りを決めた。
まず、長野放送が3月に放送したローカル単発番組『働き方改革から始まる未来』という持ち込み番組について討議を行い、日本民間放送連盟放送基準(以下「民放連放送基準」という)等に照らし、番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、また、広告放送であるにもかかわらず、CMのかたちをとっておらず、放送番組と識別できていないのではないか等の意見が大勢を占め、また、持ち込み番組であることを踏まえてどのような考査を行ったのか等について検証が必要であるとの意見も出され、審議入りすることを決めた。
また、テレビ朝日が、2月に放送した番組で差別的表現があったことをお詫びしたバラエティー番組『アメトーーク!』について討議を行い、委員会は、特定の地域や学校を差別する表現があり、民放連放送基準に照らして問題があると考えられるところ、さらに確認したい点があるとして当該放送局に追加の質問を行い、討議を継続することになった。
続いて東海テレビが、気象庁の訓練用「火山噴火情報」を誤って速報スーパーで放送した事案について討議を行い、事実と異なる放送であり放送倫理違反が認められるうえ、必ずしも速やかに誤報を訂正したとはいえない等の意見が出された一方で、問い合わせのあった視聴者に対しては適切な対応を取り、具体的な再発防止策なども取っており、最終的に自主的・自律的な対応がなされているとして討議を終了した。もっとも、従前の同種の事案において、「提言」や「委員長コメント」が出されていることを踏まえ、委員から出された意見を議事概要に掲載して、改めて注意喚起することとなった。

1.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この二つの「祭り企画」を対象に審議を続けている。
この日の委員会には、前回出された意見を受けて担当委員が作成した意見書の修正案が提案された。各委員からは、修正案の構成や指摘しているポイントの表現方法などについてさまざまな意見や見方が示された。
次の委員会では、今回の議論を踏まえて、担当委員から意見書の再修正案が提出される予定になっている。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。

2.長野放送『働き方改革から始まる未来』について放送か広告か曖昧だとして審議入り

長野放送は3月21日に『働き方改革から始まる未来』という持ち込み番組をローカル放送した。この番組は、労働基準法などいわゆる「働き方改革関連法」が変わる4月を前に、その準備ができているか等を問う内容となっているが、視聴者から「放送なのか広告なのか曖昧だ」という趣旨の意見がBPOに寄せられた。このため長野放送に対し、放送した番組のDVDと報告書の提出を求めて確認したところ、その内容のほとんどは、長野県に本社がある特定の社会保険労務士法人の事業の紹介であり、本編28分間の間にCMはなかった。
そこで、委員会は討議を行い、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92条、第93条)や「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」等に照らすと、番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、広告放送であるにもかかわらず、CMのかたちをとっておらず、放送番組と識別できていないのではないか等、放送倫理違反の疑いが大きいという意見や、持ち込み番組であることを踏まえて考査の過程など放送に至った経緯についても検証が必要である等の意見が相次いで出され、審議入りすることを決定した。今後は、長野放送の社員らに対するヒアリングなどを行って、審議を進める。

3.放送内容の差別的表現をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も「僕らも学生の頃にそっち方面は行かんとことみんなで言うてた」と発言、また他の出演者の「道できれいな10円を12円で売ってる」人がいたとの発言にその様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。その後、当該放送局は、4月18日の同じ番組で、「事実と異なる内容や差別的な表現があった」として謝罪し、番組のホームページにも謝罪文を載せた。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。また、当該放送局によると、当該高校などからは、番組の一連の対応に理解をしてもらったという。
そこで、委員会は討議を行い、特定の地域や学校を差別する表現があり、民放連放送基準に照らして問題があると考えられるところ、さらに確認したい点があるとして当該放送局に追加の質問を行い、討議を継続することになった。

4.火山噴火情報の「訓練用の速報スーパー」を誤報しお詫びした東海テレビの報道内容を討議

東海テレビは、1月22日午後3時過ぎ、「午後3時1分頃新たな活火山が噴火した(気象庁)登山者はすぐに下山または避難を」という内容を速報スーパーで伝えた。しかし、当日、実際には活火山の噴火はなく、気象庁が東京の放送キー局各局と行っていた訓練用の情報を誤って放送したものであった。
当該放送局の報告書によると、担当の報道部は、キー局から送られてきた情報に火山の地名がないことを不審に思ったものの「人命にかかわる緊急性の高い情報」「地震速報などでは続報で詳細な内容が追加される場合がある」と考え速報スーパーとして放送し、その後、情報が訓練用のものであることが確認されたため、訂正の速報スーパーを放送することを検討したが、速報スーパーでは十分な説明ができず、逆に視聴者の混乱を招きかねないと判断し、夕方のローカルニュース番組の開始まで待ち、その冒頭で訂正とお詫びをしたという。
委員会では、本件が事実に基づかないニュースであり、放送倫理違反が認められること、また、当該誤報を取り消して訂正しているものの、必ずしも速やかに対応したとはいえないこと、とりわけ、「登山者はすぐに下山または避難を」という災害情報であったことに鑑みれば、より速やかに速報スーパーで取り消し又は訂正を行う余地があったのではないかとの意見が出された。
他方で、災害情報であったことを踏まえると、まずは速報を行う必要性があったことも否めないこと、当該放送局では、誤報の可能性が高まった段階から、問い合わせのあった視聴者に対して誤報の可能性を伝え、誤報であることが確定した後は、誤報であることをお詫びとともに伝えていたこと、本件を契機として、訓練データが配信されないように当該放送局系列のキー局のシステムを改修し、訓練情報であることをデータに明記するなどの具体的な再発防止策がとられたこと、当該放送局の番組審議会や第三者諮問機関において、本件が取り上げられて厳しい意見が出されていることなど、最終的に自主的・自律的な対応がなされていることを踏まえ、審議の対象とはせず、討議を終了することとした。もっとも、かつて、誤字幕、誤映像のミスが生じた同種の事案において、委員会として「提言」(2011年9月)をおこなって注意喚起をした経緯が存すること、また、それとは別に、不適切テロップが送出された事案において、当該放送局が迅速な訂正をし、かつ訂正とお詫びを翌朝までに3度放送した事案においても「委員長コメント」(2012年4月)を出して注意喚起をした経緯を踏まえ、委員から出された意見を議事概要に掲載して、改めてBPO加盟の放送局に注意喚起することとした。

【委員の主な意見】

  • 火山の名前が記載されていなかったのであるから、まず火山を特定する必要があったにもかかわらず、その点を十分に確認しないまま誤った事実をスーパーで流したことは放送倫理違反にあたるのではないか

  • 災害情報であったことを踏まえると、火山の名前が記載されていなかったとしても、むしろ速やかに報道する必要性があったことも否めないのではないか

  • 「登山者はすぐに下山または避難を」という災害情報であり、人命にかかわる緊急性の高い情報でもあったことに鑑みれば、『ニュースの誤報は速やかに取り消しまたは訂正する』との放送基準に照らして、速やかに取り消し又は訂正を行うべきではなかったか

  • 災害情報を速報スーパーで誤ったのであれば、速やかに速報スーパーで取消又は訂正すべきだったのではないか

  • 誤字幕、誤映像の問題については「提言」や「委員長コメント」を行った先例があり、とりわけ災害報道や災害の緊急告知に際しての字幕や映像の正確性や訂正の必要性について、放送局全体が危機意識を有してほしい

以上

第136回 放送倫理検証委員会

第136回–2019年4月

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』の審議

第136回放送倫理検証委員会は、3名の新しい委員(高田委員、長嶋委員、巻委員)が出席して4月12日に開催され、冒頭、神田委員長が鈴木委員を委員長代行に指名した。
そして、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議を続けている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、担当委員から意見書の原案が示された。この日出された意見を受けて、次の委員会では意見書の修正案が示される予定。

議事の詳細

日時
2019年4月12日(金)午後5時~午後8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、藤田委員、巻委員

◆「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この二つの「祭り企画」を対象に審議を続けている。
この日は、前回までの議論を受けて担当委員が作成した意見書の原案が示された。今回から新しく加わった3人の委員に対して、意見書の構成についての説明を交えながら委員会は進行し、当該放送局へのヒアリングの結果を踏まえて番組の制作過程に関する調査の結果を確認するとともに、当該放送局の報告書をどう読んだか、バラエティー番組の制作にあたる姿勢や最近のバラエティー番組の傾向などについて、新委員からもそれぞれの経験や知見にもとづいて発言があった。その上で、これまでの意見を集約して、委員会としての判断およびその表現方法について活発な意見が交わされた。
次の委員会では、今回出された意見を踏まえて、担当委員から意見書の修正案が提出される予定。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。

以上