第244回放送と人権等権利に関する委員会

第244回 – 2017年2月

STAP細胞報道事案の通知・公表の報告、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の審理、都知事関連報道事案の審理、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理…など

STAP細胞報道事案の通知・公表の概要を事務局から報告。また事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の「委員会決定」案を検討して委員長一任となり、都知事関連報道事案、浜名湖切断遺体事件報道事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年2月21日(火)午後4時~10時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本事案に関する「委員会決定」の通知・公表が2月10日に行われた。委員会では、その概要を事務局が報告し、当該局のNHKが放送した決定を伝えるニュースの同録DVDを視聴した。

2.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案の審理

3.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ) 事案の審理

対象となったのはテレビ熊本と熊本県民テレビが2015年11月19日にそれぞれニュースで扱った地方公務員による準強制わいせつ容疑での逮捕に関する放送。申立人は、放送は事実と異なる内容であり、初期報道における「極悪人のような報道内容」などにより深刻な人権侵害を受けたとして、謝罪文の提出など放送局の対応を求めているもの。
この日の委員会では、「委員会決定」案の読み合わせを行いながら修正が加えられ、委員長一任とすることを了承した。これを受けて、2月中に委員長が最終確認のうえ、3月に申立人、被申立人に対して通知し、公表することを決めた。

4.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
今月の委員会では、次回3月の委員会で申立人と被申立人のフジテレビにヒアリングを実施し詳しい話を聴くことを決めた。

5.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュース。静岡県浜松市の浜名湖周辺で切断された遺体が発見された事件で「捜査本部が関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べている」等と放送した。
この放送に対し、同県在住の男性は9月18日付で申立書を委員会に提出。同事件の捜査において、「実際には全く関係ないにもかかわらず、『浜名湖切断遺体 関係先を捜索 複数の車押収』と断定したテロップをつけ、記者が『捜査本部は遺体の状況から殺人事件と断定して捜査を進めています』と殺人事件に関わったかのように伝えながら、許可なく私の自宅前である私道で撮影した、捜査員が自宅に入る姿や、窓や干してあったプライバシーである布団一式を放送し、名誉や信頼を傷つけられた」として、放送法9条に基づく訂正放送、謝罪およびネット上に出ている画像の削除を求めた。
また申立人は、この日県警捜査員が同氏自宅を訪れたのは、申立人とは関係のない窃盗事件の証拠物である車を押収するためであり、「私の自宅である建物内は一切捜索されていない」と主張。「このニュースの映像だけを見れば、家宅捜索された印象を受け、いかにもこの家の主が犯人ではないかという印象を視聴者に与えてしまう。私は今回の件で仕事を辞めざるをえなくなった」と訴えている。
この申立てに対し、テレビ静岡は11月2日に「経緯と見解」書面を委員会に提出し、「本件放送が『真実でない』ことを放送したものであるという申立人の主張には理由がなく、訂正放送の請求には応じかねる」と述べた。この中で、「当社取材陣は、信頼できる取材源より、浜名湖死体損壊・遺棄事件に関連して捜査の動きがある旨の情報を得て取材活動を行ったものであり、当日の取材の際にも取材陣は捜査員の応対から当日の捜索が浜名湖事件との関連でなされたものであることの確証を得たほか、さらに複数の取材源にも確認しており、この捜索が浜名湖事件に関連したものとしてなされたことは事実」であり、「本件放送は、その事件との関連で捜査がなされた場所という意味で本件住宅を『関係先』と指称しているもの。また本件放送では、申立人の氏名に言及するなど一切しておらず、『申立人が浜名湖の件の被疑者、若しくは事件にかかわった者』との放送は一切していない」と反論した。
さらに、「捜査機関の行為は手続き上も押収だけでなく『捜索』も行われたことは明らか。すなわち、捜査員が本件住宅内で確認を行い、本件住宅の駐車場で軽自動車を現認して差し押さえたことから、本件住宅で捜索活動が行われたことは間違いなく、したがって、『関係先とみられる住宅などを捜索』との報道は事実であり、虚偽ではあり得ない」と主張した。
今月の委員会では、起草担当委員から本件事案の論点とヒアリングの質問項目の案が示され審理した。

6.その他

  • 委員会が1月31日に広島で開催した中国・四国地区意見交換会の概要を事務局が報告、その模様を地元局が伝えるニュース番組の同録DVDを視聴した。
  • 2017年度委員会活動計画案を事務局が説明し、了承された。
  • 3月16日にBPOが開催する2016年度年次報告会および3月22日に開催される放送倫理検証委員会10周年記念シンポジウムについて事務局が説明した。
  • 次回委員会は3月21日に開かれる。

以上

第112回 放送倫理検証委員会

第112回–2017年2月

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』審議入り
乳酸菌の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』の討議など

2月7日に通知と公表の記者会見を行った、2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見に関して、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。
IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』で、乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング」が行われたのではないか、という疑惑が報じられた事案の討議を継続した。委員会は、当該局から提出の追加報告書をもとに意見交換をした結果、さらなる確認や検討が必要だとして、再度討議を継続することを決めた。
東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』で、「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動についての特集が現地リポートとスタジオトークで放送されたが、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。委員会は、当該局から提出された報告書をもとに討議した結果、持ち込み番組であるので、まず当該局の考査が報じられた事実についての裏付けの有無に留意して行われたのか、そもそも制作時に事実の裏付けを十分に行ったのかなどを検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
委員会の10周年にちなんだ記念のシンポジウムについて、担当委員から「放送の自由と自律、そしてBPOの役割」を正式タイトルとすることが提案され、承認された。

議事の詳細

日時
2017年2月10日(金)午後5時00分~7時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見を通知・公表

2016年の参議院議員選挙と東京都知事選挙について、視聴者からさまざまな意見が寄せられたことから、選挙報道全般のあり方についての継続的な審議を経てまとめられた、2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見(委員会決定第25号)の通知と公表の記者会見が、2月7日に実施された。
委員会では、当日のテレビニュースをいくつか視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2. 番組内での乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』を討議

IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅~外国人の健康法教えちゃいます!?』(2015年9月21日放送)で、ある乳酸菌を摂取していると免疫力を高める効果がある、という内容の放送をしたが、これが「広告」であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」ではないかと報じられた事案の討議を継続した。
この番組については、2015年11月の岩手放送の番組審議会で議論され、出席した局の幹部から「乳酸菌の扱いについては有料のタイアップである」という説明があったが、2016年12月、岩手放送は、この番組がタイアップで制作されたものでないと訂正していた。
当該局からは、この問題について議論された1月の番組審議会に関する追加報告書が提出された。
それによると、「調査の結果、乳酸菌の商品を製造販売する企業から金銭は支払われていなかった。番組審議会に不十分な準備のまま臨み、誤った発言をしてしまった」という局からの説明に対し、委員からは「なぜここまで番組審議会での局幹部の発言を精査する機会がなかったのか」「その場で答えて終わりであれば、番組審議会への局の対応が形骸化していると言わざるを得ない」「自社制作の番組にも指針が必要だ」という意見が出された。
委員会の議論では、「番組審議会でなぜ局の幹部が誤った発言をしたのか、釈然としない感じは残る」「番組作りの不自然さについての疑念は晴れない」などの厳しい意見が出た。一方「当該局が作成に着手している『番組制作の指針』についても見届けたい」との意見も出され、当該局の今後の対応や民放連の動きも見守る必要があるとして、次回の委員会でさらに討議を継続することになった。

3. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について討議(審議入り)

TOKYO MXの『ニュース女子』は、1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、高江ヘリパッド建設反対などの沖縄での米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「過激派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。これに対し、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。なお、この番組は、TOKYO MXは制作に関与せずに、CS放送などに番組を供給している会社が制作したものを、“持ち込み番組”として放送枠を提供する形態をとっている。
委員会は、放送までの経緯について当該局に報告を求めて討議し、「持ち込み番組でも放送した責任は放送局にある」「番組内で取り上げられている事実についての裏付けがきちんとなされていないのではないか」「放送局の放送前の考査の段階で、報じられた事実についての裏付けの有無に留意するなど番組内容についてのチェックがきちんとなされていたのか」などの意見が出された。最終的に、情報バラエティー番組であっても前提となるべき情報や事実については合理的な裏付けが必要であり、裏付けが十分であったのか、持ち込み番組についての放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

4. 委員会発足10周年記念シンポジウムについて

10周年記念のシンポジウムについて、担当委員から「放送の自由と自律、そしてBPOの役割」を正式タイトルにとすることや、各コーナーのタイトルが提案され、承認された。

以上

2017年2月7日

2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、2月7日午後2時45分から、千代田放送会館7階のBPOの第1会議室で行われた。委員会からは川端和治委員長、升味佐江子委員長代行、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員、藤田真文委員が出席、一方、放送局を代表して日本民間放送連盟とNHKから合わせて4人が出席した。
まず川端委員長が「通例とは異なり、今回は個々の番組を対象に審議をしたわけではない。昨年は参議院議員選挙と東京都知事選挙という二つの大きな選挙があり、この二つの選挙のテレビ放送に関して視聴者や活字メディアからさまざまな意見や批評があった。このためいくつかの放送を視聴して、委員会として意見を述べる必要があると考えた」と決定を出すに至った経緯を説明したあと、意見書の要点を解説した。続いて升味委員長代行が「最近の選挙で投票率が下がっていることに危機感を持っている。政治的選択が少数の人で行われるのは良くないので、わかりやすく視聴者が興味を持てるような多様な放送に努力してほしい」と要望し、斎藤委員は「ジャーナリストだからわかる争点を、この決定に書かれている自由を生かして、放送局は有権者にもっと提示していい」と述べた。さらに渋谷委員は「選挙は国民が主役になる唯一の機会だ。選挙は難しいと現場が考えて萎縮しているのではないかと感じることがあるが、最高裁判決などを踏まえたうえで、自ら考えて自由に放送してほしい」と述べ、また藤田委員は「放送局には選挙に関する報道と評論の自由があるにもかかわらず、放送局が自縄自縛に陥っていると思うことがある」と指摘した。これに対して民放連は「決定の内容を全加盟社に周知する。決定は、我々に対するお叱りと同時に励ましでもあると受け止め、国民が主役になるために必要な情報をバランスよく伝えていきたい」と述べた。またNHKは「選挙放送に対する委員会の期待を、現場の記者やディレクターにしっかり浸透させることで、公平・公正で視聴者に役立つ報道を続ける」と述べた。

このあと、午後3時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には26社60人が出席した。
初めに川端委員長が意見書について「前半は、制作現場が公平・公正について窮屈に考えているのではないかと思い、公職選挙法と放送法をわかりやすく解説した。また後半は、昨年の選挙の放送に則して意見を述べた」と説明し、「必要なことは質的な公平性で、選挙の争点の指摘や事実関係のチェックなど、国民に必要な情報を提供することは放送局の責務だ」と指摘した。続いて升味委員長代行が「何が公平かを各放送局が自主・自律で決めることは現場にとり大変だと思うが、選挙に行きたいと思うような放送をもっとしてほしい」と述べ、斎藤委員は「最近のジャーナリズムに議題設定機能が欠けているのではないか。プロのジャーナリストとしての取材と見識に基づいて、何が重要な争点かを放送局が提示してほしい」と要望した。渋谷委員は「横並び意識で無難に番組を作るのではなく、自ら汗を流し、何ができて何ができないのかをよく理解したうえで、広大な自由の領域を生かした放送をしてほしい」と、また藤田委員は「政党や候補者が実現できないような公約を述べたり、虚偽の事実で対立候補を批判したりした時に、それが言いっぱなしになって事実関係を検証しないと、選挙の公正が害される」と、それぞれ意見書に込めた考えを述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:選挙の放送量についての議論はしなかったのか?
    A:放送量の検証はしなかったが、安全な放送だけをしようと考えて放送量が減ると、困るのは視聴者だ。視聴者に必要な情報を提供するのはメディアの責務だ。(川端委員長)

  • Q:2014年に自民党が放送局に出した「選挙時期の報道についての要望」や、停波の可能性に言及した総務大臣の発言は、考慮したのか?
    A:我々の役割は具体的な番組に即して意見を述べることだ。そのために必要な事項は考慮するが、番組から離れた抽象的な議論はしない。今回は、あくまでも昨年の二つの選挙をめぐるテレビ放送を踏まえて、この意見書を作った。(川端委員長)

  • Q:放送法の趣旨に照らして、今は放送局のあり方も問われていると思うが?
    A:放送の影響力が大きいから放送法があるのだが、放送法が作られた際には、放送の自由がなかった戦前の結果を繰り返してはならないという痛切な思いがあった。そのため権力が放送内容に介入するのではなく、放送局が自らを律することが一番いいと考え、放送法では、放送局の自主・自律の規範として番組編集準則を置き、各放送局が自律的に番組編集基準を定め、番組審議会がそれを審議するという仕組みを作っている。総務省と我々の見解が異なっているが、番組内容に法的な規制が必要だという動きがある中で、自主・自律がもともとの精神だということを思い起こしてほしい。(川端委員長)

  • Q:メディアが選んだ情報を視聴者が受け取るのではなく、自分から興味のある情報を取りに行くネットとの関係については?
    A:ネットの世界は「ポスト・トゥルース」の領域と言われている。何が真実かを見極める能力があるのはメディアで、その役割はますます重要になる。(川端委員長)

  • Q:意見書にある「挑戦的な番組」とは、どういうものか?
    A:候補者が言っていることを客観的に伝えるだけでは面白くない。一歩批判的に踏み込む姿勢があってもいい。紙に書いた選挙公報と同じものが画面に流れるだけでは、チャレンジ不足だと思う。(升味委員長代行)
    A:例えば、選挙期間中に立候補者をスタジオに呼んで意見を戦わせることを公職選挙法は禁じていない。(藤田委員)

  • Q:具体的にどう改善したらいいのか?
    A:なにか基準を出した方が現場は楽だという考え方はあるが、基準は私たちが決めるのではなく、放送人の職責として自主・自律に基づいて番組を作ってほしいと期待している。(升味委員長代行)
    A:マニフェストを精査して質問することをやっていないのではないか。本当の争点が隠されているのではないかという個人的な印象を持っている。(渋谷委員)

以上

2017年2月10日

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』審議入り

放送倫理検証委員会は2月10日の第112回委員会で、TOKYO MXの『ニュース女子』について当該放送局に報告書の提出を求めた上で討議し、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、TOKYO MXが2017年1月2日、『ニュース女子』で放送した沖縄の基地建設反対運動についての特集。この中で、「マスコミが報道しない真実」と題して沖縄の高江ヘリパッドの建設反対運動などを取り上げ、現地リポートとスタジオトークで放送した。
放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」など多数の意見がBPOに寄せられた。
審議入りの理由について川端和治委員長は、「どれだけきちんとした裏付け取材が行われたかが問題になる。ただ、持ち込み番組ということなので、放送局の考査の段階で、考査がきちんとできたのか、できなかったのかを、まずチェックしないといけない」と述べた。
委員会は今後、TOKYO MXの関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2017年1月24日

在京局担当者との「意見交換会・勉強会」概要

◆概要◆

青少年委員会は1月24日、「放送における障害者~当事者の視点から見た現状~」をテーマに、在京テレビ各社(NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、東京MXテレビ)との「意見交換会・勉強会」を千代田放送会館で開催し、14時から16時まで活発な意見交換を行いました。
各放送局からは、BPO連絡責任者、番組制作者など23人、青少年委員会からは汐見委員長ら7人の委員全員が参加しました。
今回の「意見交換会・勉強会」は、青少年委員会の中高生モニターから、障害者を取り上げた番組に対して賛否様々な意見が寄せられたこと、相模原市の障害者福祉施設で起きた殺傷事件で、被害者の氏名が警察から発表されずに物議を醸したことなどから、「放送における障害者」問題を今一度見つめることを目的に開催したものです。
司会役は中橋委員が務め、まず、東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎准教授にご講演いただきました。ご自身も脳性まひである熊谷准教授からは、障害者に関する意見交換のための重要な基礎的知識について、当事者の視点から解説いただいた上で、「相模原事件から考える暴力と障害」を中心としたお話がありました。その後の意見交換では、障害者を対象にした取材や番組制作時における悩みなどについて、出席者から質問があり、熊谷准教授からは自らの経験に基づいた考えが示されました。

【講演の概要】
熊谷准教授は、暴力と障害について、2016年7月26日に神奈川県相模原市の障害者福祉施設で発生した、元施設職員による入所者殺傷事件に触れ、「一方が加害者で一方が被害者と思いがちだが、どちらも同じような社会的な排除を受けていたり、リスクを持っていたりする」「障害者と介助者の関係は一般の関係とは違い、非対称性がある。障害者は介助者に暴力を振るわれたらかなわないし、介助者は介助の仕事を降りることができる。こうした非対称性は暴力の関係を生みやすい」などの解説があり、障害者が頼れる先(依存先)を複数持つことの重要性が示されました。
メディアに関しては、「事件と何かを関連付けたくなるだろうが、特定の精神疾患と暴力性に統計的な関連性はない。こうした疾患が暴力行為に直接関連しているかのような報道は避けるべきだ。一方、暴力性は"反社会的行動""薬物依存"など8つのリスクと関連しているとされているが、これについても様々な要因やケースがあるので、安易に関連があるかのような報道も慎むべき」「健常者と障害者の境は時代によって変わる。かつては手足を自由に使えることが"健常"だった。しかし、機械が単純労働を代替してくれる現代ではコミュニケーション能力が求められ、かつては"黙々と働く人"と言われていたような人が"コミュニケーション障害"とされるようなことも起きている。流動的で曖昧な"コミュニケーション能力"のひな型を作り上げる要因の一つにメディアがなっているかもしれないとの思いを持っていてほしい」などの話がありました。

【意見交換の概要】
▲=熊谷准教授、●=委員、○=放送局出席者

  • ● 中高生モニターからは、障害者をテーマにしたバラエティー・情報番組である『バリバラ』(NHK教育)や『24時間テレビ』(日本テレビ)について、それぞれの番組の良さを感じながらも、障害者のあり方、あるいはメディアが障害者をどう取り扱うかということに関する考えを深めたという意見が寄せられた。

  • 〇 モニターから「裏番組を批判しているようだ」との意見があったようだが、そのような意図はない。かつての自分を思い、自戒の念を込めて作ったものだ。

  • 〇 今回話題となった『バリバラ』の放送回はインターネット上でかなり話題になったが、視聴率は通常と変わらなかった。インターネットやSNSでの議論や意見などを確認したが、ほとんどの人は番組をしっかりと見ていないように感じた。

  • ○ "障害者がテレビに出てくる時には必ず何がしかの役割を期待される"ことについて考えてもらいたくて、ストレッチャーに乗ったままで何もしない障害者をあえて出演させた。しかし、同番組に関するインターネット上の話題では、そのことについて深く議論されなかったようだ。表層的な理論の域を出なかったのかと残念に思ったが、やった意味はあったと思っている。

  • 〇 相模原市の障害者福祉施設での殺傷事件では、警察が被害者の氏名を発表しなかったが、仮に情報提供があり、それを報道するかどうかをメディア側に委ねられた時に、どう判断すべきかの理論構築は非常に難しい。

  • ▲ 今回の事件後に、ご遺族の方などにインタビューをした。なぜ名前を出したくないと思うのかと聞いたら、「あんなやつらにうちのかわいい、大切な子どもの名前を明かしてたまるか」「これまでさんざん自分たちのことを見捨ててきたのに、こういう時にだけ急に関心を高めて知ろうとする。そんな人たちに大事なうちの子の名前を明かしたり、大事な思い出を紹介して、それを再編集されたりしてたまるか」とおっしゃった方がいた。

  • ▲ どこかで地域への恨み、メディアへの恨み、あるいは一部の障害を持った子どもが政治利用されたりすることもある障害者運動への恨みが家族の中にどこかある。その恨みはとても根が深いものだ。メディアは障害者である取材対象者を本当に仲間だと思い、「だから知りたいんだ」ということを、どれぐらい相手に伝えられるのかが問われているのだと思う。

  • ▲ メディアの倫理で、名前を出すか、出さないかといった矮小なレベルで考えても仕方がない。出せないことの背後に、重層的な恨み、地域への不信感、メディアへの不信感、障害者運動への不信感などが渦巻いている。腹をくくって、誠意をもってつき合い続けるしかないのかなと思っている。

  • ● メディアと障害者が信頼関係をどう築いていくかが重要だと理解した。

  • 〇 相模原市の障害者福祉施設での殺傷事件では、警察が匿名発表した際、障害者団体からは「実名で報じてほしい」という声もあった。本当の温度感が分からない。果たして、どこまで共通認識になっていたのだろうか。通常の事件と同じように扱うべきだと思いながらも、情報の入口と出口で制約があり、判断に迷った。

  • ▲ 一人一人の障害者の思いや、家族の思い、運動体としての思いは全く別だと思うので、障害者が共通認識を持つことはとても難しい。長期的には実名報道すべきだと個人的に思っているが、短期的には、その人の人生を知らない状態で暴くような形でアウティングするようなことは絶対にしてほしくない。事件が起きた時に、どう対応すべきか迅速な判断をすることはすごく難しいことだが、大事に扱わないといけない部分だ。

  • 〇 障害者だからといって実名を伏せるのも逆差別的であり、違和感を覚える部分がある。報じないのも一つの判断だという理解で良いか。

  • ▲ 被害者の名前を伏せるようなことは許されるべきではないという思いと、被害者一人一人のことを考えると、残された家族の思いなどを尊重したいという思いの両方がある。長期的に是正しなければいけないことと、短期的に意思決定を尊重しなければいけないこととのせめぎ合いがいつもある。それをしないでルーチン化して報道してしまうと、取り返しのつかないことが起きる可能性があるので留意が必要だ。

  • 〇 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、多様性の素晴らしさにあらためて注目が集まっているが、ついついきれいな言葉を使いがちだ。先日、障害者と健常者で、差別やバリアフリーを考えるという企画を行ったが、互いに深く話し合うことに慣れていない。本音を出すことで初めて話し合えると考えているのだが、すごく難しい。メディアはどうしていけばいいのだろうか。

  • ▲ 薬物依存症の人が自分たちをセルフサポートしている、ダルクというセルフヘルプグループでは、"正直になること"を大事にしている。正直になることは本音主義と対極ぐらい違い、本音主義は必ずしも正直になることとは違う。ダルクの代表に「正直になるとはどういうことか」と聞いたら、「祈りだ」と一言あった。「祈りとは何か」と聞いたら、「話すことではなく聞くこと」だと言っていた。正直になることというのは、アウトプットよりインプットを重視するスタイルだ。これを"祈り"と彼らは呼んでいる。"聞く"には二つの意味があり、自分とは異なる他者の分かりづらい言葉に耳を傾けるという"聞く"と、自分の中の内なる言葉になりにくいものに耳を傾けるという"聞く"がある。つまり、アウトプットに意識を払い過ぎると本音から外れていったり、正直さから外れていったりするが、自分にも他人にもインプットの回路を全開に開くことが正直さにつながっていき、相手への理解につながっていくと言いたかったのだろう。アウトプットに目が向きがちだが、むしろ"聞く"ことをどうファシリテートしていくかが大事だと思う。

【汐見委員長まとめ】

最後に、汐見委員長から熊谷講師と出席者に謝辞が述べられるとともに、「考えなくてはいけないテーマを整理できた。私は幼児教育に携わっているが、常に、その人が今、何を本当に必要としているのかを感じる能力を問われていると思っている。人間には違いがたくさんある。そのでこぼこは一人一人全く違っていて、でこぼこに応じた"必要"を持っている。その"必要"を感じ合うコミュニティーをどう作っていけばいいのかのヒントが今日の講演にはたくさんあった。一方、文化を創るということにも関心があり、マスメディアはその担い手の一つだと思っている。文化を翻訳して上手に伝えていく仕事をエディットという。文化は編集者と創造者が共同して創るものだ。熊谷講師の考えをエディットして、文化として世の中に生きる形で残していくのがマスメディアの仕事だと思う。すべてに迎合するのではなく、"必要"を感じ取り、それを形にしていくという点で共通していると感じた。各自がそれぞれに受けとめて、また議論していただきたい」との感想があり、意見交換会を終えました。

以上

第188回 放送と青少年に関する委員会

第188回–2017年1月24日

二つのバラエティー番組について討論…など

2017年1月24日に第188回青少年委員会を、7人の委員全員が出席しBPO第1会議室で開催しました。まず二つのバラエティー番組について討論しました。そのあと12月1日から1月15日までに寄せられた視聴者意見について、1月の中高生モニター報告や今後の予定について話し合いました。
なお委員会に先立ち、東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎氏を講師に迎え、在京テレビ局7社23人と委員との「放送における障害者~当事者の視点から見た現状~」と題した意見交換会・勉強会を開催しました。【詳細はこちら】
次回は2月28日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2017年1月24日(火) 午後4時35分~午後6時45分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員

二つのバラエティー番組について討論

●「バラエティー番組でお笑い芸人が真っ逆さまに頭からプールに飛び込むシーンがありました。首の骨を折ってもおかしくない状況で非常に危険です。安全管理を徹底してほしい」という視聴者意見があり委員全員が番組を視聴した上で討論しました。委員からは次のような意見が出ました。

  • 映像を見る限り顎をしっかり引いて飛び込んでいる。初心者のように見せて飛び込んだのかもしれない。
  • 「よい子はマネしないでね。」の注意喚起やスタジオのフォローもあったが、飛び込みの危険性についてのメッセージは無かった。
  • プールでの飛び込みは小中学校では禁止され、事故が相次いでいることから高校でも指導要領の改訂が検討されている。ただ、あの程度の飛び込みを放送に適さないとまでは言えない。
  • 今回の番組では事前に対応していたようだが、たとえバラエティー番組であっても危険が想定される行為を放送する場合、安全性の確保はもちろんのこと、その必要性や社会的な影響を考えた上で判断してほしい。

などの意見が出ましたが、討論の結果これ以上の段階に進む必要はないとしました。

●「バラエティー番組で、罰ゲームとしておしりをしつこく繰り返し蹴られるシーンがあった。これはいじめの契機となるのではないか。笑いがあれば暴力も見過ごされるのだろうか」などの視聴者意見があり、委員全員が番組を視聴した上で討論しました。委員からは次のような意見が出ました。

  • キックを受けた後、よろよろとしてロッカーの角で顔を打ちそうになったのはハプニングだと思えた。危険だと感じた。
  • キックを受けている方も"おいしい"と思っているように見える。演出の中でありお約束の一部だろう。
  • 同じようなバラエティー上の演出と比べて野蛮とは受け取れなかった。ただ、1人を孤立させて笑いを引き出すという典型的ないじめの構図であり、いかがなものかと思う。
  • バラエティー番組であっても、安全性の確保は重要であり、いじめを想起させるような演出については十分慎重であってほしい。

などの意見が出ましたが、討論の結果これ以上の段階に進む必要はないとしました。

視聴者からの意見について

●「生放送で女性芸人にドッキリを仕掛けていたが、いじめにしか見えなかった」、「殿様が遅刻した家来にお仕置きをするコントがあったが、いじめにつながる行為ではないか」、「スケートを題材にしたアニメで男性同士の同性愛を連想させるシーンが見られた。子どもたちの健全な性に対する考え方の形成に悪影響を及ぼしかねない」などの視聴者意見について話し合いましたが、現段階ではいずれもこれ以上話し合う必要はないとなりました。

中高生モニター報告について

32人の中高生モニターにお願いした1月のテーマは「年末年始に見た番組の感想」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で23人から報告がありました。
「年末年始に見た番組の感想」では、1人で複数の番組について報告を寄せてくれたモニターもおり、『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)をはじめとする歌番組に14人から、『ダウンタウンの大晦日年越しスペシャル!!絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』(日本テレビ)などのバラエティー番組に8人、スポーツ中継に2人、ドラマ映画番組に2人から報告がありました。最多の12人から感想が寄せられた『第67回紅白歌合戦』については、「祖父母の家で家族みんなで紅白を見ることが我が家の恒例の年越し」であるという声や、「今年は例年になく制作者の意気込みが感じられた」という感想の一方、「マンネリを変えようという制作者の姿があからさまに丸見えだったのはいかがだろうか」という意見もありました。また「毎年楽しみにしている」という意見が複数寄せられた『ダウンタウンの大晦日年越しスペシャル!!絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』は、6人のモニターが取り上げました。
「自由記述」では、「年末年始はバラエティー番組ばかりで飽きる」という意見や、「今回は、芸人に体を張らせる番組が多かったように感じる」という報告もありました。
「青少年へのおすすめ番組について」は、『関口宏の東京フレンドパーク2017 新春ドラマ大集合SP!!』(TBSテレビ)に「小さい頃、よく見ていた番組で懐かしかった」「当時の空気感が感じられる、変わらぬ良さが残っていて安心した」といった感想や「初めて見たが古い感じがした」という意見などが4人から寄せられました。

◆委員の感想◆

  • 【年末年始に見た番組の感想】について

    • 番組に偏りがあり、バリエーションが意外に少ないと感じた。しかし、どのモニターも「家族揃ってテレビを見るという幸せそうな年越しをしているのだな」ということが垣間見えた。

    • 『ONE OK ROCK 18祭~1000人の奇跡 We are』(NHK総合)についてかなり熱く書いてくれているリポートがあるが、これを読んで今の若い人が支持しているものが分かった。

    • 『ONE OK ROCK 18祭~1000人の奇跡 We are』について「ここまで勇気や元気、感動をもらえる番組は初めて。素晴らしい番組。この番組を見ることができて本当に良かった」というモニターが絶賛するコメントを読んで、ぜひこの番組を見てみたいと思った。

    • 『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)について「副音声やインターネットなどで飽きずに見ることができる工夫があって面白い」と評価しながらも、利用者目線でそのツールの改良の余地を指摘していた意見に感心した。

    • 『第67回紅白歌合戦』の「変わろうとしていること」や「これまでにない演出」のおかげで「飽きずに見ることができた」という感想を持ちながらも一緒に視聴していた「祖父母には不評だった」ことなどから、「多世代が楽しむことができる番組を仕立てることがどんなに難しいことかを考えた」という気づきが複数あった。

    • 『ダウンタウンの大晦日年越しスペシャル!!絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』(日本テレビ)について、「小さい頃から楽しく見てきたが、モニターの視点で見てみると危ないシーンがあった」という意見に、多角的にテレビを視聴しようとする中高生モニターの意欲が感じられた。

    • 「年末年始に見た番組の感想」というテーマだったからか、寄せられたリポートのほとんどが、大晦日と正月三が日の番組だった。テーマを「冬休みに見た番組の感想」にした方が、モニターたちも広く考えることができたかもしれない。

  • 【自由記述】について

    • 「モニターになってから、テレビを何となく見ることが減った」と言い、自分なりのこだわりを記述してくれたリポートがあったが、モニターとしての意義を感じてくれていることが分かりうれしかった。
    • 「海外の友人と一緒にテレビを見たが、英語字幕に対応している番組が非常に少なくて残念な思いをした。2020年に向けて英語字幕や英語副音声の番組が増えてほしい」という指摘に感心した。
    • ラジオについて「昔からの文化が残っている感じがとても好き」だとラジオの良さを語ってくれた記述に興味をひかれた。
  • 【青少年へのおすすめ番組】について

    • 『関口宏の東京フレンドパーク2017 新春ドラマ大集合SP!!』(TBSテレビ)について書いてくれたモニターが4人もおり、番組の根強い人気がうかがえた。ぜひ制作サイドに伝えてほしい。

◆モニターからの報告◆

  • 【年末年始に見た番組の感想】

    • 『ダウンタウンの大晦日年越しスペシャル!!絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』(日本テレビ/長崎国際テレビ)普段テレビを見る時はほとんどが録画です。この番組は、ところどころリアルタイムで見ました。毎年家族で見ます。父も兄も妹も大好きです。みんなで笑って楽しいです。今年は方正もタイキックされて笑いました。ウランちゃんにも笑い袋を押され続けて、何度も叩かれていました。大変なお仕事です。だけど面白いです。じゃんけんホイホイは家族でもしました。(長崎・中学1年・女子)
    • 『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)普段、大晦日は『絶対に笑ってはいけない24時』を見るのですが、今回の年末年始は、『紅白歌合戦』をずっと見ていました。なぜかというと、今回は星野源やRADWINPSなどの流行った人たちが出ていたからです。学校でも、それらの人達が出るので見ると言っていた人が多かったです。ニュースなどで、紅白は少し若い世代の人向けになったと聞きましたが、本当にそのように感じました。少しバラエティーの要素も入れてきたりしていたので、これからの紅白はどうなるのかなと思いました。(東京・中学1年・男子)
    • 『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)紅白歌合戦は毎年見ていますが、副音声やインターネットなどで常に飽きずに見ることができる工夫がしてあるのは、とても面白いと思います。ただ、副音声やインターネットのトークコーナーでは、誰が出ているのかずっと見ていたり聴いていたりしないと分からないので、画面の端に小さく表示してくれると便利で良いと思います。(岡山・中学2年・女子)
    • 『ダウンタウンの大晦日年越しスペシャル!!絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』(日本テレビ/札幌テレビ)毎年楽しみにしているので楽しく見ることができました。面白いものもあれば、ちょっとやり過ぎなのではという内容もありました。まず、食べ物を粗末に扱っているシーンがあったことが少し嫌でした。ラーメンを床にぶちまけたりするのは心が痛くなります。次に体張り勝負で、男性の大事なところを痛みつけるようなゲームをしていたことです。これを見た人たちが真似をして取り返しのつかないことに発展してしまう危険があります。最後に、蝶野さんが毎年恒例で方正をいじる時に耳元で大声を出したりしていたことです。小学生くらいの子だったら一人は絶対に真似します。これが一番ひどいと思います。(北海道・中学2年・男子)
    • 『ダウンタウンの大晦日年越しスペシャル!!絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』(日本テレビ)小さい頃は、ただ面白くて見ましたが、こうしてモニターの視線で見ていると結構、危ないシーンがありました。下手したら、けがをしてしまいます。そしたら、けがをした人も嫌になるし、視聴者も見ているのが嫌な気分になります。(埼玉・中学2年・男子)
    • 『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)紅白歌合戦といえば、毎年祖父母の家に行って見ることが恒例となっています。その年に流行った歌が出来事とともに振り返れるので良いです。また、恋ダンスも含めPPAPやパーフェクトヒューマンも歌われており、NHKの堅苦しいイメージが和らぎ子どもも楽しんで見られるという点でも良いなと思いました。ただ、私の祖父が「最近の紅白は若者の歌ばかりでよく分からなくてつまらない。」と言っていたので、すべての年齢に受ける番組にするのは厳しいと思いました。また、視聴者がdボタンで紅白投票ができる機能は兄弟で楽しめたので良かったです。ただ、最後の結果発表の時に視聴者投票では白が勝っていたのに、審査員投票で逆転しましたが、仕組みが分かりにくかったので、もっときちんと説明するべきだと思いました。(千葉・中学3年・女子)
    • 『ONE OK ROCK 18祭~1000人の奇跡 We are』(NHK総合)最初はアーティスト目当てで見ていましたが、すごく心に響く番組でした。とても勇気を貰えました。感動しました。僕と同世代の子たちが番組の最後、ONE OK ROCKと一緒に歌を歌っている場面はすごく鳥肌が立ちました。うまく言えませんがとても感動しました。みんな悩みや希望、夢などいろいろ抱えている気持ちをむき出しにして声に出してぶつけている感じが何とも言えない気持ちになりました。一人一人がみんなとてもキラキラしているようにも見えました。とても胸が熱くなりました。パワーをすごくもらえました。仕事や勉強、恋愛や将来の目標など、それぞれが悩みを抱える世代がこの歌を歌う姿、すごくかっこ良かったです。人生一度きりなので後悔したくないと思ったし自分に正直に精一杯生きたいと思いました。ここまで心を揺さぶられるというか感動させられるとは思っていませんでした。今この番組を見ることができて本当に良かったと思っています。今悩んでいる人、夢に向かって頑張っている人、普通に生きている人、年齢関係なく一人でも多くの人に見てもらいたい番組でした。テレビを見てここまで勇気や元気、感動を貰える番組は初めてというくらい素晴らしい番組でした。この番組を今見ることができて本当に良かった。(愛知・中学3年・男子)
    • 『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)今年の紅白は、現状を抜け出そうとして、今までの常連の歌手を排除し、新人の歌手などを受け入れ、NHKの並々ならぬ意気込みを感じた。まず、司会の2人が、ゆったりとしており、好感が持てた。これがフレッシュというものだ。タモリさんとマツコさんの軽妙な掛け合いもあり、僕は、賛成である。色々な意見があるが、この軽妙なやりとりが、次の歌へ「息抜き」となり、良かった。ただ家は、3世代で住んでいるために、おじいちゃんに今回の紅白の印象を聞くと、興味が全く持てなかったとのこと。やはり、全方位に納得させる番組は、無理と感じた。でも、やっぱり、今年の年末の紅白が楽しみになってしまう今日この頃である・・・(東京・中学3年・男子)
    • 『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)毎年、祖父母の家で紅白を見てから年を越すのが私の家では恒例だが、例年に比べ今回の紅白は良くも悪くも違った印象を受けた。良かった点としては、番組の展開に非常にわくわくして飽きずに見ることができたこと。悪い点は、全ての世代が楽しめる演出ではなかったこと。それともう一つ悪い点として、あまりにも制作者がマンネリを防ごうとしている姿が丸見え。「今年の紅白は違うぞ」とあからさまに見せられているように感じ、視聴者にそれは伝わってよいものなのか?私は疑問に思った。(東京・高校1年・女子)
    • 『第67回紅白歌合戦』(NHK総合)毎年大晦日の夜は紅白を見ています。今回の紅白は、今まで見てきたそれとは少しばかり違う印象を受けました。振り返ってみると、2016年は実に多くの流行、トレンドがありました。君の名は、恋ダンス、ピコ太郎、シン・ゴジラ・・・・。それらをあの4時間30分の中ですべて触れようとした結果、番組として統一性がなくなってしまったような感じがしました。紅白歌合戦とは、大晦日の夜に、1年を振り返りながら家族、親戚、世代を超えて歌を楽しむ番組だと定義できます。世代を超えて楽しめる、とは、どのような番組のことを言うのか。ただ、各世代の流行にとりあえず触れておけばいいのか。また、そもそも音楽番組なのに、音楽以外のパフォーマンスに注目が行ってしまうのは、どうなのか。「良い紅白」とは、どういう番組か、今回はその正解からは少し遠かった気がします。次回の紅白に向けて、制作側のさらなる努力に期待したいと思います。(京都・高校1年・男子)
    • 『ダウンタウンの大晦日年越しスペシャル!!絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』(日本テレビ/福岡放送)大晦日は毎年この番組をメインに見て、家族で盛り上がっています。笑いのツボは世代によって違うことも多いが、この番組を見ていると世代は関係ないなと感じる。今回は、イケメンでセクシーだと言われている俳優の斎藤工がお笑いのサンシャイン池崎の完全コピーをしたシーンに一番驚いた。これまでのイメージとは全く違う斎藤工は、意外でむちゃくちゃ面白かった。そして、一方でカッコイイ!!と思った。自分のイメージに縛られないで新しいことを全力でやるのは難しい。こういうことにチャレンジする人が成功するのかもしれないなと感じた。(福岡・高校1年・男子)
    • 『第95回全国高校サッカー選手権大会』(日本テレビ)今年も白熱していた。毎年様々なドラマが起きるのがこの大会で、決勝に行くまでに、心揺さぶられる試合が何度もあった。決勝を戦った青森山田高校と、前橋育英高校は、今まで戦ってきたチームの想いも背負って決勝を戦っているのかと思うと、胸の内が熱くなる。決勝のスコアは5-0で青森山田高校の勝利だったが、どちらも素晴らしいプレーをしていてとても良い試合だった。自分も悔いの残らないようなプレーをして、残りわずかな時間を大切にしたいと思った。(東京・高校2年・男子)
    • 『笑点お正月だよ大喜利祭り!歌丸綾瀬はるかTOKIO城島ピン子ら豪華ゲスト登場』(日本テレビ/山口放送)明るく楽しく番組が進んでいったので、元日から良い気分になれました。大喜利のコーナーでは、どの出演者にもキャラクターが確立していて、いつも面白いので「安心感」があります。これが視聴者を長く引き付ける魅力になっているのだと思います。出演者同士も互いにいじりあうなど仲が良い雰囲気でアットホームなので、視聴者も明るい気分になれます。また、公開収録になっているので観客の笑い声も聞こえるのでさらに「一体感」を感じることができます。このような番組は、他にはないと思うので長く続いてほしいです。(山口・高校2年・男子)
  • 【自由記述】

    • 年末年始なのに、バラエティー番組が多い!ちょっと飽きる。(石川・中学2年・女子)
    • 年末年始に海外から友達が来日しました。テレビを一緒に見ていた時、英語字幕をつけようとしたら、英語字幕に対応している番組が少なく、すごく残念な思いをしました。これから先、英語学習が見直されて、小学生から英語の授業が始まり、2020年の東京オリンピックではたくさんの外国人観光客の来日も予想されます。だから、英語字幕や英語副音声などで外国人と一緒に楽しめる番組が増えていくと良いと思います。日本の文化や歴史を紹介するようなドキュメンタリー番組や今の若者が好むバラエティー番組などに英語字幕や英語副音声がつくといいなと思います。(岡山・中学2年・女子)
    • 今年の年末の番組は、少し体を張りすぎていた番組が多かったように思えます。芸能人が裸でゲームをしていて、罰ゲームで電気が流れている棒に当たらないようにくぐるというものがあって、地面が氷で滑っていて、なおかつ体も濡れている状態で行うのは危ないと思います。感電してしまいますし、発火してしまう危険もあります。(埼玉・中学2年・男子)
    • 冬休み中、私は勉強中にラジオを聴く時間が多くありました。テレビに比べて画面を見る必要がないので、勉強に集中できるため音楽と同じ感覚で聴いていました。リスナーさんたちから送られてきた手紙を読んだり、リクエストのあった曲を流したりする昔からの文化が残っている感じがとても好きです。また、映像が無いので自分で想像しながら楽しむこともできます。周りの友達にラジオを聴いていると驚いた顔をされることも多いですが、みんなにも聴いてほしいです。(高知・高校1年・女子)
    • 青少年モニターとしてリポートを出すようになって、テレビを何となく見ることが減った。見ることで何か得したり、知識が増えたり、気分転換になったりすることもこだわるようになった。(福岡・高校1年・男子)
  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『林修の今でしょ!講座 2時間スペシャル』(テレビ朝日)予備校講師、林修先生と東京大学教授でNHK大河ドラマの監修も務める本郷和人先生が大河ドラマにしたい歴史上の人物を3人ずつ計6人紹介しました。私は本郷先生の解説の方が分かり易く親近感を感じるように思いました。また自分が、まだ知らないような偉人も出てきて学校の歴史の授業よりすごく面白かったです。(東京・中学1年・女子)
    • 『関口宏の東京フレンドパーク2017新春ドラマ大集合SP!』(TBSテレビ/長崎放送)フレンドパークは初めて見ました。クイズ番組は普段はほとんど見ません。知っている人が出ていなかったからかもしれません。あまり面白くなかったです。古い感じがしました。(長崎・中学1年・女子)
    • 『関口宏の東京フレンドパーク2017新春ドラマ大集合SP!』(TBSテレビ)小さい頃によく見ていて、特にハイパーホッケーのコーナーが好きだったのですが、数年ぶりに放送されてもホンジャマカの二人はホッケーが上手くて、3組を相手に次々対戦しても見応えがあって面白かったです。今回の東京フレンドパークは、久しぶりに見てもとても面白かったので、また放送してほしいなと思いました。(東京・中学2年・男子)
    • 『相葉マナブ1時間SP! 2020新しい東京へ マナブ工事中24時!』(テレビ朝日/山口朝日放送)東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さまざまな建造物などが変わりつつある東京を取材した番組です。いろいろな工事現場の裏側を見ることができました。適宜クイズなどを交えていたので飽きずに視聴することができました。特に私は、地下鉄の工事の様子が印象に残りました。今後の東京の姿は、多くの人々が興味を持っている事柄だと思うのでそれを工事現場という視点で見ることができて良い番組だと思いました。(山口・高校2年・男子)

調査研究について

2016年10月14日に立命館アジア太平洋大学で留学生との意見交換会を開催し、その際行ったアンケート調査について、標本数が少ないため参考程度ではあるものの、"いじめ"に対して高校生と留学生を含む大学生との意識の違いがみられたなどの報告がありました。

今後の予定について

  • 3月5日に開催予定の「2016年度中高生モニター会議~日テレフォーラム18~」(日本テレビと共催)について内容の検討を行いました。

2017年1月に視聴者から寄せられた意見

2017年1月に視聴者から寄せられた意見

大みそか恒例の歌番組の演出や審査方法に対する批判や、正月のバラエティー番組のドッキリ企画への批判が目立った。長期化している豊洲市場への移転関連や、沖縄の基地建設反対運動を取り上げた番組への意見も多かった。

2017年1月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,810件で、先月と比較して190件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール80%、電話18%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性62%、女性37%、不明1%で、世代別では30歳代29%、40歳代29%、50歳代18%、20歳代13%、60歳以上9%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。1月の通知数は991件【39局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

年末年始に放送されたスペシャル番組への意見が多く寄せられた。大みそか恒例の歌番組の演出や審査方法に対する批判や、正月のバラエティー番組のドッキリ企画への批判が目立った。そのほか、長期化している豊洲市場への移転関連や、沖縄の基地建設反対運動を取り上げた番組への意見も多かった。
ラジオに関する意見は56件、CMについては29件あった。

青少年に関する意見

1月中に青少年委員会に寄せられた意見は129件で、前月から19件増加した。
今月は「表現・演出」が34件と最も多く、次に「いじめ・虐待」が29件、「性的表現」が21件、「暴力・殺人・残虐シーン」が10件、「報道・情報」が8件と続いた。
「表現・演出」では、少女の芸能活動の取り上げ方についての意見が複数寄せられた。「いじめ・虐待」では、いわゆる"ドッキリ番組"やお笑い番組での企画がいじめのように感じるとの意見が多かった。「性的表現」では深夜アニメでの表現についての意見が目立った。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • クリスマスの夕方、1月放送のドラマの撮影が自宅付近であった。帰宅途中、警備員から「撮影が始まるので」と通行を止められた。私の前の人は通行でき、かつ自宅が目の前であり寒空の下で待ちたくないので、「自宅がすぐそこなので」と通してもらった。ところが、今度は玄関前に撮影クルーが陣取っていた。「自宅なので通してください」という声も聞かないので、無理やり玄関に割って入ったのだが、謝罪の言葉も一切なかった。マスコミが偉いのか、テレビが偉いのか。道を開けるのが普通だが、そんなことまで一般人がマスコミに説明しないといけないのか。常識の範囲内で行動してほしいが、その常識がかけ離れ過ぎていて話にならない。

  • ニュースになった宅配便の動画について、街頭インタビューしていた。声を掛けられやんわりと断ったが「動画だけ見て」と言われ、スマートフォンでの動画について、「荷物を蹴飛ばす配達員をどう思いますか?」「この宅配便会社にはどのようなイメージがありますか?」などと聞かれ、簡単に答えた。その後「ありがとうございました」の言葉だけでその場を去ったが、その時にもう1人のスタッフが撮影しており、翌日その映像がテレビに流された。初めに番組名を言われただけで「いつ使うか、放送しても良いか」などの説明や確認はなかった。ホームページ上の番組宛メッセージに投稿したが、返答はない。インタビューの仕方も強引だったが、放送される可能性がある以上、きちんとした説明をすべきではないか。

  • 私は、豊洲市場移転のために準備をしてきた。小池知事の決定で移転が白紙になり、今も築地市場で営業しながら豊洲市場のための借金を毎月返済している。豊洲への移転を一刻も早く決めてもらいたいと思っており、築地の劣悪な環境を認識し、移転時期を計画より早くしてもらいたいと願っているが、結局、移転問題は知事にとって政治の駆け引きであり、モニタリングの結果が良くても悪くても、解決する気がさらさら無いのが分かり、心より失望している。出口の見えないトンネルの中にずっといるようで、何を拠り所に頑張れば良いのか分からない。メディアで築地市場の実情を正しく伝えてもらいたいが、そういうことも無く、日々のニュース報道も見ていて辛いだけだ。築地の劣悪な環境をメディアで伝え、全国の人に認識してほしいと願うばかりだ。

  • 「『保護なめんな』などと英字でプリントされたジャンパーを、生活保護担当者が着用することは不適切だとして、市が職員の使用を禁止した」というニュースを見た。どこの局でも「今回の件は良くない、職員が悪い」という論調で伝えていた。果たしてそうであろうか。生活保護の不正受給は良いことではない。社会問題にもなっている。この件を伝えるのであれば、不正受給の実態なども併せて報道するべきだ。本来批判されるべき人間が擁護され、真面目に仕事をしている職員が批判されてしまうことは気の毒だ。

【番組全般・その他】

  • 大みそか恒例の歌番組で、視聴者投票と会場の観客投票で大差がついていたにもかかわらず、審査員票だけでそれら全てが覆った。何のための視聴者投票、会場の観客投票だったのか。視聴者からは、最初から結論ありきの出来レースにしか見えない。データ放送での投票などするだけ無駄という印象すら抱きかねない結果だった。残念だ。

  • 大みそか恒例の歌番組は、どちらが勝っても良いと視聴前から思っていたが、最後の結果発表と投票システムは一体何だったのだろう。視聴者の意見はどうでも良かったのだろうか。番組の冒頭で、投票システムについて細かく説明してほしかった。また、スペシャルゲストの2人が警備員に止められていたが、途中から座席に座らせてあげれば良かった。茶番とはいえ可哀想に見えた。色々な面から制作体制を見直してもらいたい。

  • 歴史ある音楽賞の新人賞に、韓国のグループが選ばれた。このグループは、日本国内でほとんど名前さえ知られていないのではないか。私だけかと思ったが、周りに聞いても誰も知る人がいなかった。そもそもこの賞に限らず、何を基準に選んでいるのか分からないものばかり。週刊誌で、この賞の金銭による不正疑惑が暴露されていたが、今回も同じことが行われたのかと勘ぐってしまう。この賞は今の時代にそぐわないし、放送する意味も感じられない。

  • 正月のバラエティー番組で、女性芸人にドッキリを仕掛けるという企画は、いじめとしか思えない内容で、新年早々大変嫌な気持ちにさせられた。立場の強い者から、一般の観客の前で執拗な要求を突き付けられ、罵倒され号泣していた。テレビだから事前の打ち合わせがあったかもしれないが、気持ちのいいものではない。年配の方も、子どもたちも、家族団欒でテレビを囲む新年のゴールデンタイムだ。心が痛む内容の放送をしてもいいのか。これを面白いとしてはいけないし、いじめを助長するような放送はやめてもらいたい。

  • 日曜夜の番組で、低年齢アイドルの活動が特集されていた。ある幼児アイドルのイベントに成人ファンが押し寄せ、写真撮影やグッズを収集していた。それが批判的であれば別だが、一貫して明るい演出となっており、ファンや関係者の意見も好意的に伝えられていた。最後に司会者が遠回しに批判的意見を述べていたため、本来はそのような趣旨で問題を取り上げたかったのかもしれないが、結果として不十分で、好意的に受け取られかねない特集になっている。このような放送内容が許されると、社会の基本的な道徳規範意識を歪めるおそれがある。改めてテレビによる影響が多大なものであることを認識し、社会規範を考慮した番組作りに努めてもらいたい。

  • 異国の地で暮らす日本人を紹介する番組は、フィリピンのピナツボ火山の噴火により親を失った孤児が、ゴミの山から売れるものを見つけて売って生きていく姿を紹介し、その逞しさに心を動かされたという内容だったが、ピナツボ火山の噴火を説明するVTRに何故か、長崎県雲仙普賢岳で発生した火砕流の映像が流れていた。迫力ある火山の噴火映像を出したかったのかもしれないが、全く繋がりのない映像を安易に使用したとしか判断できず、制作者の意図が理解できなかった。

  • 午後の情報番組は、都知事の定例会見を毎週生放送している。知事は各機関の報道を見て、自分に有利な報道をする局や記者を中心に質問させており、知事と記者の馴れ合いを毎週見させられてウンザリする。メディアの仕事は、権力の監視と批判のはずなのに、その機能が全く無く、知事側に気に入られるような内容を毎日放送し、視聴率を取ることしか考えていない。メディアは完全に知事に舐められているが、気づいておらず、見ている側だけが飽き飽きしている。いつまでも知事との馴れ合いをしているから都政が良くならず、オリンピックと豊洲移転の失敗のツケが都民に回される。いい加減やめてほしい。

  • 月曜夜の番組で、沖縄・高江ヘリパッド問題を特集していたが、建設に反対している人たちの印象を悪くする演出を意図的に多用し、公平性に欠くものだった。反対派の取材を試みたようにしていたが、さしたる根拠もなく「このままだと危険と判断、ロケ中止」なるテロップを流し、あたかも反対派が危険であるかのような印象づけをしていた。その後は、賛成派のみが登場し、反対派の活動の問題点を一方的に指摘していた。在日韓国・朝鮮人に対する言説も、いわゆるヘイトスピーチのレベルであり、公共の電波を使用するものとしてふさわしくない内容になっていた。

  • 固定電話に無作為で予告なしに電話をかけてくる行為が不安になる。特に高齢者は就寝が早いので、夜9時すぎなどに繰り返し電話が鳴ると、知らない電話番号で不安がっている。留守電も途中で切れたりしてなおさらな様子だ。年老いた家族から連絡があり、いろいろ調べた結果、夜のニュース番組からの電話と分かったが、当たり前のように、予告なしに世論調査や家族構成など聞き出すのはおかしくないだろうか。委託業者に頼んでいるので対応も悪いらしい。田舎の高齢者は不安でいる。無作為な世論調査などのいきなり電話はやめてもらいたい。

  • 番組への意見を言いたいと思い、局の視聴者窓口に電話をした。しかし対応に出た女性は、話を聞いているのかいないのか分からないような適当な対応だった。「はいはい、伝えます」と言えば良いというものではない。視聴者からの意見は、時にうっとうしいかもしれない。しかし真摯に意見を聞き、正確に関係部署に伝えることが仕事であろう。働く以上、あるいは視聴者窓口が存在する以上、きちんと機能するように仕事をするべきだ。

【ラジオ】

  • 深夜番組の司会者が、自ら作詞作曲した歌をフルコーラスで流していた。プロミュージシャンならともかく、大学教授の彼が趣味で作ったものだ。これは放送の私物化ではないのか。本人も「公共性がない」と言っていたので確信犯だ。例年このようなことをやっているが、今まで批判がなかったのが不思議だ。ラジオ番組司会者なら、何をやっても許されるという風潮が理解できない。

【CM】

  • アイドル育成ゲームのCMは、極めてギャンブル性が高く、課金しなければまともに遊べないゲームだ。子どもの起きている時間帯に、しかも数多く放送されている。未成年のゲーム課金が問題視されている中、注意喚起文も添えられていない。流すべきではないと思う。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 幼稚園児アイドルのライブやイベント活動に成人ファンが押し寄せ、写真撮影やグッズ購入する様子を取り上げていた。私はこのような芸能活動は青少年の健全な育成を阻害すると思っているのだが、番組では批判的な意見は少なかった。テレビは社会の規範意識形成への影響が大きいので、このような考えを持つ視聴者のことも考慮した番組作りを期待したい。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • いわゆる"ドッキリ番組"で、ベテランタレントが若手お笑いタレントに無理な要求を執拗に繰り返していた。とても笑える内容ではなく、いじめのように感じた。こうした内容を面白いものとして放送することで、善悪の判断が未熟な子ども達が間違った理解で人をいじめるのではないかと心配だ。

【「性的表現」に関する意見】

  • アニメ番組で高校生キャラクターの過激なキスシーンがあった。深夜の時間帯ではあったが、誰でもが簡単に視聴できる地上波で放送するような内容ではない。

  • 深夜のトークバラエティー番組で、男性器の俗称をそのまま発言したり、女性タレントが自慰行為について話をしたりしていた。テレビとは思えない下品さだ。私の住んでいるマンションは24時間分のテレビ放送を自動録画するシステムになっており、子どもがこのような番組を隠れて視聴しないか心配だ。

  • 昼間に子どもと外出していたところ、ラジオで性風俗店についての話題を取り上げていた。ラジオは飲食店やガソリンスタンドなどでかかっていることも多く、聞かなければいいというわけにはいかない。せめて時間帯に配慮して放送してほしい。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • バラエティー番組で、出演者にプロレスラーが平手打ちしたり、キックボクサーがお尻を蹴ったりするなどの暴力的なシーンがあり、他の出演者がその様子を笑って見ていた。実際に痛いかどうかはさておき、笑いがあれば暴力も見過ごしていいと青少年が受け止めかねない。

2016年度 第62号

「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定

2017年2月10日 放送局:日本放送協会(NHK)

勧告:人権侵害(補足意見、少数意見付記)
NHKは2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
この放送について小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論した。
委員会は2017年2月10日に「委員会決定」を通知・公表し、「勧告」として名誉毀損の人権侵害が認められると判断した。
なお、本決定には補足意見と、2つの少数意見が付記された。

【決定の概要】

NHK(日本放送協会)は2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
この放送に対し小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論した。
委員会は、申立てを受けて審理し決定に至った。委員会決定の概要は以下の通りである。
STAP研究に関する事実関係をめぐっては見解の対立があるが、これについて委員会が立ち入った判断を行うことはできない。委員会の判断対象は本件放送による人権侵害及びこれらに係る放送倫理上の問題の有無であり、検討対象となる事実関係もこれらの判断に必要な範囲のものに限定される。
本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる。
こうした判断に至った主な原因は、本件放送には場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題があったことである。そのような編集の結果、一般視聴者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となってしまっている。
申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送によるプライバシー侵害の主張については、科学報道番組としての品位を欠く表現方法であったとは言えるが、メールの内容があいさつや論文作成上の一般的な助言に関するものにすぎず、秘匿性は高くないことなどから、プライバシーの侵害に当たるとか、放送倫理上問題があったとまでは言えない。
本件放送が放送される直前に行われたホテルのロビーでの取材については、取材を拒否する申立人を追跡し、エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった。
その他、若山氏と申立人との間での取扱いの違いが公平性を欠くのではないか、ナレーションや演出が申立人に不正があることを殊更に強調するものとなっているのではないか、未公表の実験ノートの公表は許されないのではないか等の点については、いずれも、人権侵害または放送倫理上の問題があったとまでは言えない。
本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。

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2017年2月10日 第62号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第62号

申立人
小保方 晴子 氏
被申立人
日本放送協会(NHK)
苦情の対象となった番組
『NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層』
放送日時
2014年7月27日(日)午後9時~9時49分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.委員会の判断の視点について
  • 2.ES細胞混入疑惑に関する名誉毀損の成否について
  • 3.申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送について
  • 4.取材方法について
  • 5.その他の放送倫理上の問題について

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2017年2月10日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、被申立人に対しては2月10日午後1時からBPO会議室で行われ申立人へはBPO専務理事ら2人が東京都内の申立人指定の場所に出向いて、申立人本人と代理人弁護士に対して、被申立人への通知と同時刻に通知した。午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を行い、委員会決定を公表した。28社51人が取材、テレビカメラはNHKと在京民放5局の代表カメラの2台が入った。
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2017年5月9日 NHK 「STAP細胞報道に関する勧告を受けて」

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2017年7月3日 報告に対する放送人権委員会の「意見」

放送人権委員会は、上記のNHKの報告に対して「意見」を述べた。

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

第25号

「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」

2017年2月7日 放送局:民放連・NHK

2016年の参議院議員選挙と東京都知事選挙について、視聴者からさまざまな意見が寄せられたことなどから、委員会は、具体的な放送を踏まえながら選挙報道の公平・公正についての考え方を示すのは意味があるとして、選挙報道全般のあり方について審議してきた。
委員会は、「政治的に公平であること」などを定めている放送法第4条第1項各号の番組編集準則は「倫理規範」だとした上で、放送局には「選挙に関する報道と評論の自由」があり、テレビ放送の選挙に関する報道と評論に求められているのは「量的公平」ではなく、政策の内容や問題点など有権者の選択に必要な情報を伝えるために、取材で知り得た事実を偏りなく報道し、明確な論拠に基づく評論をするという「質的公平」だと指摘した。
この観点からすると、真の争点に焦点を合わせて、各政党・立候補者の主張の違いとその評価を浮き彫りにする挑戦的な番組が目立たないことは残念と言わざるをえないとして、「放送局の創意工夫によって、量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論がなされる」ことを期待した。

2017年2月7日 第25号委員会決定

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目 次

2017年2月7日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2月7日午後2時45分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。また、午後3時30分から記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には26社60人が出席した。
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