2022年3月に視聴者から寄せられた意見
深夜のバラエティー番組出演者の発言について「セクハラ」や「差別」を指摘する意見が多かった。また、ウクライナ人ゲストへのラジオ番組出演者の発言に対して「配慮を欠く」などの意見が寄せられた
2022年3月にBPOに寄せられた意見は1,717件で、先月と比較して213件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール 82%、電話 16%、 郵便・FAX各 1%
男女別は、男性40%、女性22%で、世代別では40歳代 27% 、30歳代 21%、 50歳代 20% 20歳代 14%、 60歳以上 12% 、10歳代 2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送事業者を特定したものは、当該事業者のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。3月の通知数は922件【55事業者】であった。
このほか、放送事業者を特定しない放送全般への意見の中から23件を抜粋し、全会員事業者に送信した。
意見概要
番組全般にわたる意見
深夜のバラエティー番組出演者の発言について「セクハラ」、「差別」と指摘する意見が多かった。また、ラジオ番組出演者のウクライナ人ゲストへの発言に対して「配慮を欠く」などの意見が寄せられた。ラジオに関する意見は87件、CMについては27件あった。
青少年に関する意見
3月中に青少年委員会に寄せられた意見は104件で、前月から12件増加した。
今月は「低俗、モラルに反する」が23件、「いじめ・虐待」が18件、「表現・演出」が14件、「差別・偏見」が12件と続いた。
意見抜粋
番組全般
【取材・報道のあり方】
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電話出演したウクライナ人ゲストに対し、スタジオ出演者が「ウクライナが抵抗を続けることで死者が増えている」「『無駄死に』させたくない」などと発言、ゲストが取り乱すまでに至った。発言のもとになっているのが、ウクライナの人々の命を心配する気持ちであることは分かるが、心配していることを表現するに留めるべきであったと思う。
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有名タレントの名を冠した「緊急生放送」番組。「ゼレンスキー、プーチン両大統領の素顔に○○(タレント名)が迫る」などと予告していた。ウクライナ情勢について専門家の意見は他の番組で聞いていたので、より視聴者に近い彼の意見が聞きたいと思って番組を見た。ところが彼の発言はほとんどなく詐欺にあったような心持ちだった。番組タイトルは視聴率を取るためのものだったのか。
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2月に新型コロナに感染し復帰した情報番組の司会者が「『しばらくは抗体価が高いのでワクチンは今だと打ち損になる』などと聞いたので3回目はまだ接種していない」と発言した際、コメンテーターの一人が強い口調で「打ってないの?番組の代表であるMCが3回目打ってない」と非難した。テレビでワクチン接種を推奨することを悪いとは思わないが、未接種者を責めるような内容を放送するのはいかがなものか。
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学校でのいじめの問題を取り上げていた。27分間の番組で全てを表現するのは難しいとは思うが、いじめが犯罪であることが強調されなかったことに危機感を覚えた。やはりこのことが社会的に認知されていかないといじめ、自殺者は減らないと思う。でも放送することは非常に良いこと。次回はもっと良いものになることを願っている。
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子宮頸がんワクチンの積極的接種が始まるという特集が放送されたが、約9年前、何の医学的根拠もなく副反応の不安をあおる報道がなされた。生命を守るための国の政策であるにもかかわらず、当時の報道にはそれを中止させようという意図があったはず。放送局は毎年子宮頸がんで亡くなる人の数字をどう見ていたのだろうか。今回、メディアとして反省がはっきりと示されなかったことに憤りを覚えた。
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成人式会場周辺で暴走行為をした疑いで逮捕された新成人が「日本一派手な成人式にしたかった。捕まったのは残念だがテレビに映って日本一なので満足している」と供述。暴走行為を放送するテレビ局は「彼の愚行を誘ったのは自分たち」という自覚を持つべきだ。
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ニュース番組の「野菜泥棒」「さい銭泥棒」の取材方法、放送内容について。無人野菜売り場や神社にカメラを仕掛け、スタッフがまるで探偵のような行動をとって盗んだ人物に詰め寄り、警察に現行犯で逮捕させる。犯罪者を作り上げているようなやり方だ。泥棒が絶対にいけないのは当然だが、人権はどうなるのか。テレビ局、報道というものはここまで許容されるのか。
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私は視覚障害者。ニュース番組の外国人のインタビューが、音声は原語のまま、日本語訳は字幕のみというケースがあり困っている。ロシアの戦争の情勢を知りたいと思っても、緊迫している雰囲気は想像できるが発言の中身が分からないので、ただただ不安を煽られているように感じることも多い。「吹き替えではニュアンスが変わってしまう」という意見も聞くが、聴覚に頼る人のためにぜひ吹き替えをつけてほしい。
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外国人のインタビューの日本語訳は、吹き替えではなく字幕で示してほしい。視覚障害者向けの吹き替えは副音声に入れてほしい。吹き替えでは話し手の元の発言が聞き取れず、誤訳、改ざんの可能性も否定できなくなる。
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この報道・情報番組に出演しているのは、MCもコメンテーターも皆同じ考えを持つ人ばかり。反対意見を持つ人を出演させて番組内で議論するのなら理解できるが、これでは一方向に誘導されているように感じてしまう。
【番組全般・その他】
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スタジオに水着姿の女性を並べて「品定め」。尻の大きな女性を例えて「ホッテントット」。「胸の張りで生理の前か後か分かる」には背筋がゾッとした。共演の男性タレントにも自慰の頻度を言わせるなど屈辱的なセクハラ。出演者とスタッフによる公開セクハラ、人権侵害だ。
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スタジオに水着姿の女性を並べて「品定め」。さまざまなハラスメントがあった非常に不快な内容だった。「お色気」がよくないのではなく、異性や他者への敬意に著しく欠け、その尊厳を傷つけていて、大きな問題があると感じた。
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タレントたちにニュースを解説する番組の「日韓関係SP」。全編が韓国を蔑視する論調で見るに堪えないものだった。こんな差別的な番組を放送していいわけがない。
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タレントたちにニュースを解説する番組の「日韓関係SP」。日本の公式の立場を全く考慮せず、韓国側の主張に基づいて解説している。
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何らかの理由で歯が少ない一般の人をスタジオに集め、タレントたちが滑舌などを手掛かりにして歯の本数を当てるというゲーム。人の身体的欠損を笑う悪趣味な企画だった。気分が良くないし倫理的にどうかと思う。
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教員をしていて、東京大学をあがめるような番組の影響を子どもたちが少なからず受けている気がする。難関校に行きたがるが「将来自分が何になりたいか、何を学びたいか」については深く考えていない。「学歴ではなく何を学ぶかが大事」と諭すと、「学歴が悪いと馬鹿にされる」と答える生徒までいた。テレビで過度に学歴を誇張すると、それが社会に広まっていったり、子供たちの視野を狭めたりするのかなと感じた。
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何十年と放送が続く人気アニメでは、母親はみな専業主婦、父親は会社員。性別によって役割を決めつけ、そのイメージを子どもたちに洗脳のように植えつけている。ジェンダーギャップで日本が世界から取り残される下地になっていると思う。子どもたちに「ジェンダーギャップを助長するからこの番組は見ないで」とは言えない。何かを変えていかないと世界との溝は埋まらない。
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サッカーW杯アジア最終予選。日本が勝てばW杯出場が決まるという試合なのに、地上波で放送する局が一つもない。がっかり。
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飲食店を紹介する番組を見て店に行った。放送では「一人前2,800円」だったが実際には1人1万円。ほかの客たちも皆同額だったので仕方なく支払った。制作している局にメールで事情を知らせたが何の返答もなく、この店はその後も何度か紹介されている。いくらバラエティー番組であっても情報は正しく伝えてほしい。他の店の情報も嘘っぱちなんだろうと思ってしまう。
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出演者がある場所の写真を渡され、写真から読み取れる情報をスマホで検索しながら、いかに早くその場所にたどり着くかを競うゲーム。約45分間のこの企画のかなりの部分が「歩きスマホ」で目的地に向かう出演者の姿で、強い違和感を覚えた。歩きスマホの女性が踏切で亡くなった、あの悲惨な事故を思い出した。
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タレントが旋盤で「寸胴なべ」製作にチャレンジ、手袋を着けたまま回転部に手を近づけたり、回転する寸胴に触ったりしていた。一歩間違えば指や腕を失う非常に危険な行為。製造業に携わる者からすれば放送できるレベルではない。視聴者が参考にしたら危ない。
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大学院で脳の病気について研究している。番組でタレントがフィギュアスケートに挑戦、転んでリンク氷面で頭を強打した。「30分後、復活」と練習を再開していたが、この対応は非常にまずい。たとえヘルメットを付けていても危険な場合がある。タレント本人の健康を考えるとすぐに病院に行って検査を受けるべきだった。
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一部の放送局が視聴者意見の電話を、「0570」で始まる有料サービスでしか受け付けなくなった。公共の電波を使って放送事業を行う者が、視聴者からの意見に料金を課すというのは良くない。視聴者の意見に耳を傾けないという姿勢を取っているかのようだ。従来の番号に戻してほしい。
青少年に関する意見
【「低俗、モラルに反する」】
- グラビアアイドルを集めて女性の体のことを揶揄、その女の子達に対する利きおっぱい、生理は匂いでわかるなどの際どいセクハラ発言。また男性МCに月に何回自慰をするのか聞くなど、男女双方にセクハラを感じた。「この時代において、尖ったことをやろう」というテーマなのだろうが「尖ったこと」とは女性軽視なのか。
【「いじめ・虐待」に関する意見】
- 「人の普通の行動、クセを許せるかどうか」の基準を作るという企画、意見の不一致があれば階段を落とされ熱湯に入れられるという罰ゲーム。人の生まれながらの笑い方について笑い、怖い、許せない、気持ち悪いなどの悪口を平気で言う。笑い方が似ている娘はショックでトラウマになりそうと言っている。人のちょっと変わった特徴を笑うだけでなく、蔑み、許せるかどうかの基準を作るのはいじめにつながる。
【「表現・演出」に関する意見】
- 占い企画で、「29日生まれは嫌われる、人に好かれない」という発言。自ら鑑定を望んだ人に対してはいいと思うが、学生はちょっとしたことでイジメや揉め事、派閥が生じるデリケートな時なのに、いくら占いとはいえ、無神経に倫理観を欠いた発言と番組作りだ。
【「差別・偏見」に関する意見】
- あるドラマの内容…主人公が住むアパートに越してきた青年には「連続幼児殺人事件の犯人・元少年A」とのウワサがあり、そのウワサをSNSに流していたのは、わが子を犯罪で失った過去のある管理人だった。犯罪を憎むあまりの過激な行為だが、ドラマの結末は「誤解も解け、全てを水に流してめでたしめでたし」となっていた。だが管理人の行為は反省すれば許される程度のことではない。「SNS上での人権侵害行為には懲役刑も適用され得る」と法律の改正案が決定されたばかりだ。いくらドラマでもあまりにも安易な終わり方だ。小学生の孫たちは「面白かった!」と見終わった後で言っていた。「人権を侵害する行為は決して許されず、厳しく罰せられる」ということで結んでほしかった
【「言葉」に関する意見】
- 外来語など横文字の言葉のイントネーションがおかしくなっている。語尾を上げる「アクセントの平板化」が横行している。タレントは仕方ないにしても、最近はアナウンサーまでこの傾向が強い。国際社会に出てゆく子どもに正しい日本語を教育しなくては日本が恥をかくことになる。少なくともアナウンサーが正しい日本語を話すように、指導を徹底してほしい。