第246回放送と人権等権利に関する委員会

第246回 – 2017年4月

浜名湖切断遺体事件報道事案のヒアリングと審理、都知事関連報道事案の審理など

浜名湖切断遺体事件報道事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。また都知事関連報道事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年4月18日(火)午後3時~8時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュースで、静岡県浜松市の浜名湖周辺で切断された遺体が発見された事件について、「捜査本部が関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べている」等と放送した。この放送に対し、同県在住の男性が「殺人事件に関わったかのように伝えられ名誉や信頼を傷つけられた」と申し立てた。
今月の委員会では、申立人と被申立人のテレビ静岡にヒアリングを実施し、詳しい話を聴いた。
申立人は、「テレビ静岡は、私の名前も公表していない、被疑者として断定して放送していないと主張しているが、私の自宅、つまり私と特定できる映像と断定した『関係者』『関係先』とのテロップを用いて視聴者に残忍な事件の関係者との印象を与えた。実際、この放送による被害が目に見える形で発生しており、名誉毀損は十分に成立すると思う。私有地に侵入しての取材については、マスコミという屋外での撮影を主たる業務とする職種であるので、当然に撮影前のみならず、撮影後の編集の段階においても、私道等撮影をしても問題なき場所かの確認を取るべきで、少しの注意で結果が予見でき、回避ができるのに、注意を怠った重過失がテレビ静岡にはある。プライバシーである寝具を撮影したことも、奥の窓を撮影するためという主張は苦しいもので、編集段階でいくらでもどうにかなる。要は犯人視していたからこそ、躊躇なく知られたくない生活の一部も撮影、放送したものだと思う」等と述べた。
テレビ静岡は報道の責任者ら4人が出席し、「申立人の氏名等を一切報じていないのはもちろん、申立人を犯人視する表現をしたり、視聴者に申立人を犯人視させたりする演出やねつ造は一切行っていない。さらに、本件捜査が行われた申立人の自宅を一般視聴者が特定できないように種々の配慮をしつつ、報道の真実性を損なわないよう映像を編集した。その中で、申立人宅の道路に面して干してあった枕等が映像に映っていた点については、道路からごく自然に目に入るものであることや下着等のものでないことから、プライバシーの侵害には当たらないと考えている。申立人宅の私有地への立ち入りという点については、一般の立ち入りが禁止されることを示す表示や門柱・仕切りなどは一切なく、取材陣はこれを一般の生活道路として立ち入りや通行が認められているものと認識していた。本件放送は社会に大きな不安を与えてきた重大事件について、客観的な事実に基づいて、捜査の進展をいち早く知らせる目的をもって行ったものであり、申立人の人権の侵害や名誉・信頼の毀損にはあたらないものと考えている」等と述べた。
ヒアリング後、本件の論点を踏まえ審理を続行、その結果、担当委員が「委員会決定」文の起草に入ることになった。

2.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
今月の委員会では先月のヒアリングを受けて、人権侵害と取材方法や編集などの放送倫理の問題について審理を進めた。その結果、担当委員が「委員会決定」文の起草に入ることになった。

3.その他

  • 放送人権委員会の2016年度中の「苦情対応状況」について、事務局が資料をもとに報告した。同年度中、当事者からの苦情申立てが18件あり、そのうち審理入りしたのが4件、委員会決定の通知・公表が5件あった。また仲介・斡旋による解決が6件あった。
  • 次回委員会は5月16日に開かれる。

以上

2016年度 夏休み関東地区中高生モニター会議

◆概要◆

若い人たちの放送に対する考え方にも耳を傾けようと2006年から始まった「モニター制度」も、丸10年が過ぎました。年度末に行う「中高生モニター会議」は、中高生の意見を委員や放送局に直接伝えるとともに、放送局の見学や放送体験を通してメディアリテラシーの涵養の場にもなっている重要な委員会活動の一つです。今年度は、「中高生モニターとの意見交換の場を年度途中にも設けてみてはどうか」との委員からの提案を受け、夏休み中に関東在住の中高生モニターを対象にした小規模な意見交換会を企画、TBSテレビの協力を得て、「夏休み関東地区中高生モニター会議」を開催しました。
2016年8月3日に行われた会議には、関東地区在住の中高生モニター11人、TBSテレビから真木明コンプライアンス室担当局次長、瀬戸口克陽ドラマ制作部プロデューサー、BPOからは、汐見稔幸 青少年委員会委員長、最相葉月 同副委員長、稲増龍夫 同委員、緑川由香 同委員が参加しました。
中高生モニターは、まずTBS放送センターで、生放送中の情報番組『ひるおび』のスタジオ及び副調整室、報道番組『Nスタ』の準備風景などを見学し、竹内明キャスターとの質疑応答を行いました。その後、BPO会議室にて、全参加者の自己紹介ののち、瀬戸口プロデューサーが担当したドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』に関する懇談と質疑応答、「どっきり企画・私のボーダーライン」「子どもが関わる事件の取り扱いについて」「深夜アニメの性的表現や罰ゲームについて」などをテーマに意見交換を行いました。

≪『99.9-刑事専門弁護士-』について≫

  • 【モニター】予算内でドラマを作ることに苦労はあるか?

  • 【瀬戸口氏】予算内に収める苦労もあるが、制約がない方が、実は大変だと思う。制約を逆手にとって知恵を絞ることが大切。答えは必ずどこかにある。制約があるからといって、面白いものが作れないなどということはない。

  • 【モニター】『リーガル・ハイ』(2012年フジテレビ)に似ていた気がするが、影響を受けているのか?

  • 【瀬戸口氏】今回のドラマを作るにあたり『リーガル・ハイ』、『HERO』(2001年、2014年フジテレビ)、『古畑任三郎』(1994年、1996年、1999年フジテレビ)、『踊る大捜査線』(1997年フジテレビ)などのドラマを見直した。放送された当時も見ていたが、扱っている事件の詳細は覚えていないのに、役者たちのセリフのやりとりは記憶している。つまり、登場人物のキャラクター設定が大切なのだと思った。仮に、同じ事件を題材として扱ったとしても、「古美門なら…?」「久利生なら…?」「青島なら…?」それぞれの描き方があると思う。似た内容になることを避けようと意識しすぎると誰も見たくないものになってしまう可能性がある。だからこそ、一番大事なことは登場人物にオリジナリティーがあり、魅力的であること、だと考えている。

  • 【モニター】一つのドラマを企画制作するのにかかる時間はどのくらい?

  • 【瀬戸口氏】放送開始の1年前から企画は始まっている。だいたい2年で3本くらいのペースで制作している。たまに突発的なハプニングが起きて急に穴を埋めろと言われることもある。けれども、時間の有無は視聴者には関係のないことなので、どんな状況であってもベストを尽くして制作するだけ。

≪委員との意見交換≫
(1)ドッキリ企画・私のボーダーライン

  • 【委員】BPOに寄せられる意見は、番組を見た子どもたちが真似をするなど子どもたちへの悪影響を懸念する声が多いのだが、ドッキリ企画を見て、やってみようと思うことはある?

  • 【モニター】番組を見て真似なんて、普通しない。

  • 【モニター】ドッキリや嫌がらせ的な番組がなくなってもイジメはなくならない。だからドッキリ企画自体は別にいいと思う。

  • 【委員】いたずらは楽しめると思うが、やりすぎると人権に関わることもある。許されるボーダーラインを皆さんはどう考えている?

  • 【モニター】ボーダーラインは特にないが、最近はどれも「落とし穴」か「パイ投げ」か「水かけ」で、バリエーションが少ない。同じことばかりしつこくやるからつまらなくなってしまった。

  • 【モニター】見ている方が楽しめればいい。どんな番組でもドッキリが嫌いな人は一定数いると思う。

  • 【委員】ドッキリ企画がいじめにつながるのではないか?という大人の意見をどう思う?

  • 【モニター】なんでもかんでも非難したい人は、ヒマなんだと思う。「自分が小さい頃は危険なことを何もしなかったの?」と聞いてみたい。そうやって子どもからどんどん取り上げようとすることで、子どもの世界がつまらなくなる。

  • 【モニター】大人が規制をかけすぎると、かえって反発したくなる。

(2)子どもが関わる事件の取り扱いについて

  • 【委員】子どもが関わる事件の状況をどう伝えるか?子どもの被害状況はどこまで知りたい?

  • 【モニター】殺害の顛末を具体的に伝えることは、新たな殺害方法の提示になってしまう。模倣犯が出てしまうのではないかと思う。

  • 【モニター】具体的な殺害方法をテレビで報道しなくていい。知りたい人はインターネットで調べられる。インターネットは調べようと思わなければたどり着けないけれど、テレビはふいに見てしまうことがある。

  • 【モニター】事件を伝える作り手の姿勢が問われる。伝えるのであれば下世話な好奇心ではなく、きちんと報道すべき。

  • 【モニター】殺害方法など事件の内容をきちんと伝えないと残酷さが伝わらないし、罪の重さが分からない。

  • 【モニター】顔写真などは、テレビで公開を取りやめたとしてもインターネットには永久に残るから、扱い方を慎重に考えた方がいい。

  • 【モニター】殺害方法の報道で模倣犯が出るのなら、サスペンスドラマや小説もダメだ、ということになってしまう。問題はそういうことではなく、現在の報道を見ていて気になるのは、視聴者の興味を引こうと面白おかしく取り上げているように見えること。もっと真摯に伝えてほしい。

(3)深夜アニメの性的表現や罰ゲームについて

  • 【委員】深夜のアニメ番組について、性的表現が露骨だとの意見が寄せられることが多い。録画視聴する中高生の52%は、深夜番組を録画しているという調査結果があるが、深夜アニメを見たことがあるという人は?
    (モニター6人挙手)

  • 【モニター】性的シーンやグロテスクな場面は、テレビ放送では過激な表現は抑えられている。見たい人はDVDを買って見ている。

  • 【モニター】なぜ未成年が見ることがタブーとされるのか?誰も説明してくれない。残酷シーンは分かるが、なぜ性的シーンがダメだと頭ごなしに言われるのか、理解できない。

  • 【委員】一般的には性犯罪を誘発すると言われている。

  • 【真木氏】テレビは公共性が高く、誰でも目にしてしまうメディアである以上、ある程度の配慮があるのは当然だと思う。深夜の時間帯に放送しても、見たい人は選んで見にきている。しかし、露骨な性的シーンは以前に比べて減ってきている。それは規制のためではなく、視聴率が下がることが分かったから。つまり、視聴者がテレビでそういうものを見ることを望んでいないということ。視聴者の判断で自然に淘汰されてきた。そういう視聴者の判断を信頼している。

(4)中高生からみた公平な放送とは?

  • 【委員】先月のモニターリポートで「キャスターが自分の意見を言い過ぎだ」「選挙報道で特定の候補しか取り上げていない」という意見があった。テレビの公平性についてどう考えている?

  • 【モニター】世論を具体的に言葉で表現することは難しいから、キャスターが個人の意見を言うのはいいと思う。ただ、自分の発言の影響力を分かったうえで語ってほしい。

  • 【モニター】(7月の)都知事選では、いわゆる主要3候補しか報道されていなかったと感じた。

  • 【モニター】都知事選の報道は、面白かった。キャスターには事実だけ述べてほしいと思う。完全に公平な報道なんてできるはずはないので、見ている側が判断する力を養うしかない。

  • 【真木氏】あくまで個人的な見解だが、報道において客観的な判断なんて実はない。「どんなニュース」を「どの順番」で、「どんな長さ」で報道するのか、あるいは報じないのか。中味や、意見を言う言わない以前に、報道機関は、実はそこにおいて日々判断を迫られ、示している。

  • 【委員】放送には、政治的公平が求められているが、その「公平」にはいろいろな考えがある。「誰にとっての公平なのか?」「時間を同じにすれば公平なのか?」「どの場面を放送するのか?」受け手の評価によって、「公平」は全く違うものになる。「公平」という言葉が一人歩きすることに敏感でなくてはならない。「テレビは何のためにあるのか?」「公平性は誰のためのものなのか?」をきちんと考えてみてほしい。テレビから必要な情報を得て、他の経験や情報と併せて糧とするために、「公平」の一言でジャッジしてしまうのではなく、「なぜそう思うのか?」常に考えてほしい。もう一つ「多様性」というキーワードがある。社会の中から多様な意見が出てくること、多様性を寛容することで、「公平な視点」が養われるかもしれない。

≪まとめ≫

汐見委員長から、今後のモニター活動への期待が述べられるとともに「みなさんの話を聞いていると「公共の利益って何だろう」ということをいつも考えていると感じる。番組を作っている人たちも同じだ。インターネットがどれだけ発達しても、テレビの影響力は簡単にはなくならないと思う。「いいテレビ番組って何だろう?」と考え、率直に議論する場を今後も放送局と設けていきたい。若い世代がいいと思う番組は、すべての世代にとってもいいものに違いないと信じている」との話がありました。

≪中高生モニターアンケートより≫

モニター会議終了後、参加者にアンケートの記入をお願いしました。

  • 同世代の様々な意見を交換し合うことによって、自分の世界を広げることができた。テレビには新聞とは違う役割があると思うので、そのテレビがもっと良くなればと思い参加している。(中学1年・女子)
  • ほかのモニターの意見を聞くことができ良かった。今後のリポートに生かしたい。(中学2年・男子)
  • 11人のモニターとの意見交換はとてもやりやすかったし、自分と違う意見には「そんな考えもあるんだ」と考えさせられた。(中学3年・女子)
  • 初めての経験で緊張したが、身近なテーマについて話し合え、同世代の人の意見には共感できることもたくさんあった。しかし、視聴環境の違いなどから、自分とは意見の違う人もいてとても興味深かった。(中学3年・女子)
  • 会議では、大人世代の視聴者意見を知ることができ、大人が感じていることについて、私たち子どもの意見を伝えることができて良かったと思う。(高校1年・女子)
  • テレビを改めて批判的な視点でも視聴できるようになった気がする。(高校2年・女子)
  • 会議を通じ、一つの議題に関しても多くの視点があることを改めて実感した。一つの視点にとらわれずに、異なる視点も考えてみるということを意識して、これからのモニター活動を行いたい。(高校2年・男子)
  • 普段リポートを書いていても、対面している人が分からずやりにくい部分もあったが、今回実際に委員やほかのモニターと議論したことで、自分の考えだけでなく多角的な物の見方を知ることができた。機会があればモニターでディスカッションできたらいいな、と思う。(高校3年・女子)

以上

2016年度 中高生モニター会議

2016年度「中高生モニター会議~日テレフォーラム18~」

◆概要◆

2006年から始まった「モニター制度」も、11年目を迎えました。その間、若い世代のさまざまな意見が委員会に寄せられ、放送局に届けられました。「中高生モニター会議」は、中高生の意見を委員や放送局に直接伝えるとともに、放送局の見学や放送体験、放送に関する討論を通してメディアリテラシーの涵養の場にもなっている重要な委員会活動の一つです。今年度は、日本テレビと共同で「2016年度 中高生モニター会議~日テレフォーラム18~」として開催しました。
2017年3月5日に日本テレビで行われた会議には、全国から集まった中高生モニター22人、日本テレビから加藤幸二郎制作局長、杉本敏也コンプライアンス推進室長、BPOからは汐見稔幸青少年委員会委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員が出席しました。また、会議の進行役として蛯原哲日本テレビアナウンサーが、社内見学の案内役として豊田順子アナウンサーがご参加くださいました。

第1部では、参加者全員が自己紹介をしたのち、日本テレビ社内のスタジオを見学しました。最初に行った報道フロアでは、昼のニュースを読み終えたばかりの豊田アナウンサーにニューススタジオを案内していただき、天気予報などに使われるクロマキーによる映像の合成を体験しました。
その後、平日の生放送『ZIP!』と『ヒルナンデス!』を送出している番組スタジオに移動し、引き続き豊田アナウンサーに、スタジオの使い分けの演出などついて教えていただきました。また副調整室も見学し、演出や音声、映像など多くの専門スタッフが一つの番組に関わっていることを知ることができました。
第2部では、今年2月に放送開始10周年を迎えた『世界の果てまでイッテQ!』を題材に、番組初代プロデューサーでもある加藤制作局長を交え、演出方法や制作過程についての質疑応答や、番組に寄せられた批判の多い企画について意見交換を行いました。

≪『世界の果てまでイッテQ!』について≫

  • 【委員】『世界の果てまでイッテQ!』(以下、『イッテQ』)が誕生した経緯は?

  • 【加藤さん】2006年に深夜の30分番組として立ち上げた。当初は、タレントが世界に出かけてクイズを見つけてくるというコンセプトだったが、正直、迷走していた。結果、番組は終了することになり、終了特番の打ち合わせの場で、ロケハン帰りのディレクターの一言がきっかけとなり、「現場に行き、汗をかいて調べてみないとわからない」「インターネットでは調べられないことをアンサーにする」という今の番組の原型が誕生した。例えば、「火山の溶岩で焼肉は焼けるのか?」や「サメ肌でわさびをおろすことができるのか?」といったことをクイズにしてみた。この特番が好評を博し、急遽2月から新番組としての放送が決まった。しかし、番組スタート時は、長期間の海外ロケを行うことができる出演者のスケジュールを押さえることにも難航し、また低予算だったために、有名ではなくスケジュールに余裕があり、ギャラが安いタレントや芸人に必然的に出演してもらうことになった。有名になりたいというタレントの熱と番組を面白くしたいというスタッフの思いが相乗効果を生み、『イッテQ』の雰囲気ができていき、番組が人気になるにつれて、タレントたちも人気者になっていった。

  • 【委員】タレントが体当たりで頑張る姿が印象深いが、人によっては不快なのでは?というシーンがあることもまた事実だが…。

  • 【モニター】体当たり頑張っている姿が『イッテQ』らしさだが、女性芸人が裸になるボディペイントや、吹き矢を刺して痛がる様子を笑うことは道徳的にダメだという考えもあると思う。

  • 【委員】BPOにも結構、視聴者から意見が来る。中には「これは女性蔑視ではないか」「男性目線の企画じゃないか」などいろいろ厳しい意見もあった。女性から見て、どうだろう?

  • 【モニター】自分自身は、女性蔑視云々は感じなかったが、タレントの痛がっている姿を見るとあまりいい気持ちはしない。個人的には好みではない。

  • 【モニター】決して高度な笑いではないとは思うが、ああいう刺激的な映像をテレビが自粛していくなかで、インターネットの動画が伸びてきているのかなと思う。そういうなかで、刺激的な企画も堂々と放送しているからこそ、『イッテQ』が人気なのではないかなと思った。

  • 【加藤さん】番組を作る側としては、『イッテQ』は刺激のあるものを目指している感覚はない。みなさん、「笑い」について考えたことは?「笑い」は、人の失敗を笑う。だめなところを笑う。それができる関係性は幸せな関係。日本では「失敗は笑ってはいけない」と言うが、実は平和じゃないと笑えないと思う。もう一つ、笑いに高等や下品などのレベルがあるとは考えていない。ただ番組には人格があると思っている。『イッテQ』だから、視聴者は見方がわかっている。受け入れてくれる。ただ、あれが「好きではない」いう人がいることも理解して、その意見に対して「笑ってもいいんですよ」と啓蒙していかなければならないという思いもある。芸人たちは、そういう志を持ってやっている。かつてエルビス・プレスリーが初めてテレビに出た時、品のない歌い方や腰つきだと、放送局に猛抗議があった。大多数の大人はだめだと言った。しかし、若者は熱狂した。テレビはそれを放送した。それが文化になっていった。文化になるには時間がかかる場合があり、賛否両論あるかもしれないが、全員がいいと言うものは大体文化にはなりにくい。

  • 【委員】バラエティー番組を見ていて、「これは笑えない」と感じたことはない?

  • 【モニター】軍隊の訓練を女性芸人がやらされていて、女性として体がおかしくなったりしないかと心配になった。ロケの基準はどうなっているのか?

  • 【加藤さん】『イッテQ』においては、「安全第一」が全てにおいて優先する。危険だったらやらせない。その辺のリスク管理は必要。やらない勇気を持つというバランスが重要。

  • 【モニター】『イッテQ』は、「笑い」だけが目的なのか?ほかにも視聴者に伝えたいことはないのか?「笑い」だけが目的の番組は、見ていて飽きてしまうと思ったりもする。

  • 【加藤さん】お笑い系の番組で言われて嬉しい言葉が1つある。「くだらない」と言われること。何のためにもならないが、「時間を忘れて笑ってしまった」と言ってもらうこと。『イッテQ』が続いているのは、特別な強いメッセージを持っていないからだと思う。そういう押しつけがあった時、メッセージを受けとめる人と受けとめない人に分かれてしまう可能性がある。しかし、全ての人が喜ぶものを作るのがテレビとしての正しいバラエティーではないだろうか。ためにならないようなこともできる世の中にいられることが、実は幸せ。全て無駄のない時間を過ごさなければいけない状況は、すごく窮屈な世の中かもしれない。また「笑い」がなければ、不寛容な、優しさのない世界になる。

  • 【モニター】今まで、制作側で自粛した企画はあるのか?

  • 【加藤さん】あまり記憶にない。しかし、明確に現場で指示を出しているのは、家庭で面白半分にマネができ、さらに命に関わるような重大な案件になるものはやるな、と言っている。命に関わる、関わらないということが、何より一番重要だと思っている。家庭では真似できないような大がかりなものはやる。そういう基準で自主規制をすることはある。

  • 【モニター】出演者が、笑いを前提としていない時、例えば、一般の人が出てきて、その人は真剣にやっているけれども周りから見たら面白いことなどを笑いに変えているのは、ちょっとどうかと思う時がある。どこかの民族が出てきて、日本人から見れば面白いと、それを笑いにしていたりする場面を見た時など、決して全員が笑いを前提に何かをしているわけではないと思うことがあり、視聴者としては面白いかもしれないが、出ている人のことを考えた時に、どうなのかなというのは思うことがある。

  • 【委員】その国の風習であったり、その人にとっては当たり前の行為であったり、特に素人の出演者を笑ってしまうドッキリ企画などでよくあるかもしれない。

  • 【加藤さん】そこは気にしている。ただ『イッテQ』ではあまりないと思う。『イッテQ』では番組と視聴者やロケの相手方との関係性ができている。番組の人格で『イッテQ』は笑いをやっているけれども、相手に対して失礼なことをしているという人格がないから、許してもらえていると思う。しかし、違う番組が同じことを同じ手法、同じネタをやったとしても、その番組と視聴者との関係性ができていないと、なんて失礼なことをやっているんだと見えてしまう。それと、出てくれた人たちに対して制作者が愛情を持っているかどうかというのが、すごく大事なところ。

  • 【モニター】『イッテQ』で以前、宮川大輔さんが牛乳を飲むレースに参加し、吐いてしまう場面が放送されていた。きれいなモザイクがかけられていたが、食事をしながら見ていたことや、自分も普段飲んでいるものなので、ちょっとどうかと思った。

  • 【加藤さん】実は、私がプロデューサーの時の企画。今でも覚えているが、ロケから帰ったディレクターが「すごく面白いロケだが、放送できそうにない」と言った。牛乳を丸々1リットル飲んで走る参加者が、必ず嘔吐する。それをみんなが大笑いしながら見るというカナダの祭り。人が失敗するとか、滑稽なところを笑っちゃうという祭り。しかし、考査からは口から食べ物を出す映像を注意されるだろうと。『イッテQ』は海外の文化を紹介する番組でもある。そこで、ワイプという映像加工の手法を使って工夫するようアドバイスした。するとディレクターは、汚いものを隠すのなら、せめてきれいにしようと考えて、きらきらするCGをわざわざ作った。あれは、実は結構お金がかかっている。そして放送してみたら、クレームが1件も来なかった。汚い物を見て笑っているわけじゃないという放送の意図を受け取ってもらえたと感じた。しかし、だからといって、他の番組で同じことをやって同じ結果になるかどうかは分からない。

  • 【モニター】きらきらのCGに関してだが、森三中が鼻ヨガに挑戦して、よだれや鼻水を流す場面は隠さずに放送しているが、その判断の違いは?

  • 【加藤さん】私は、よだれや鼻水を汚いと思わない。人が思い切り泣いた時、涙や鼻水でぐずぐずになったりするが、汚いとは思わない。同じようにその国の文化であるヨガで、よだれを垂らしたからといって汚いとは思わない。気持ち悪い虫や動物だから映さないとか、何でも隠してしまう世の中よりも、ある程度のものは見せてもいいんじゃないかという感覚がある。そういうものも見られる寛容な世の中のほうが、素敵だと思っている。もちろん時と場合によるが、あの時は「いい」と判断した。

  • 【モニター】番組は、批判を受けたりもするぎりぎりの線で制作されていると思うが、テレビ放送は公共の電波なので、小さな子どもからお年寄りまで見ている。また過激な動画を見たい人は動画サイトなどで検索して、動画を探して見ていると思う。そんななか、それでもやはりテレビで批判覚悟の放送を流すということに何か理由があるのか?

  • 【加藤さん】テレビというメディアは、全ての人が楽しむことができるという方向性を持って作られるべきメディア。一部の人だけが分かればいいというメディアではない。そこがインターネット動画との大きな違い。100人が100人、見た人全員を楽しませようと思っている。その時に、半分以上の人が番組を不快に思ったら、それは失敗ということ。そして、失敗は淘汰されていく。その表現のぎりぎりを突くというのはどういうことかというと、道幅に例えるならば、絶対安全な道路の真ん中だけを歩いていても道路の幅というものはわからない。「これ以上はみ出ると溝に落ちるぞ」と知らせてくれるのが視聴者の反応、クレームだ。100件ぐらい来ると、「やばい、半分溝に落ちかかっているぞ」と分かる。「不快な人のほうが多いぞ」というふうに。ただ、安全なことだけをやっていたら、そのことも分からないままになる。そこに『イッテQ』は挑戦しているところはある。

休憩をはさんで行われた第3部には、スペシャルゲストとしてタレントのイモトアヤコさんがサプライズで登場、中高生モニターを沸かせました。その後、イモトさんも討論に参加し、出演者の立場から、『イッテQ』のロケ裏話や、制作スタッフとの関係や、過酷な撮影に挑む時の気持ちなど、率直にお話しくださいました。

≪『世界の果てまでイッテQ』について、イモトアヤコさんを交えて≫

  • 【イモトさん】こんにちは。実際見ている人の意見を直接聞く機会はあまりないので、正直な意見を聞かせてほしい。

  • 【モニター】『イッテQ』に出演する芸人にとってのスタッフの存在について聞きたい。もう一つはBPOについてだが、モニターに参加するまで、自分は勝手にテレビ局とBPOとは生徒と怖い生徒指導の先生みたいな関係だと思っていたが、今はそんなこともないと思っている。芸人にとってBPOというのはどういう存在かも教えてほしい。

  • 【イモトさん】BPOについては、正直、きょうまで意識したことがない。『イッテQ』に関しては、BPOの存在は気にせず自由にやっている。もう一つの「スタッフとの信頼関係の愛を感じるか」という質問だが、『イッテQ』では、そこが全て。同じチームとして、なんとかVTRを面白くしようという目的意識が共通している。例えるならいい意味での共犯者のよう。仲間意識はとても強い。

  • 【モニター】イモトさんとスタッフとで対立したり仲直りをしたりといったこともあるのか?

  • 【イモトさん】めちゃくちゃある。でもそこがいいところ。しかもケンカの時も全てカメラが回っている。たまにスマホのカメラで撮影していることさえある。今ではスタッフは家族より一緒にいる時間が長いので、一番わがままな部分を出せる人たちになっている。スタッフのことは信頼しているので、「どのシーンを使われても大丈夫ですよ」というスタンスでロケをしている。

  • 【モニター】『イッテQ』をやめたいと思ったことは?

  • 【イモトさん】いい質問。やめたいことは多々ある、毎回ぐらいの勢いで。しょっちゅうやめたいと思っている。でも結局、自分の意思でやっている。最終的にはケンカしつつも、やめた自分は嫌だと思うので、自分と葛藤しながらやっている。

  • 【加藤さん】スタッフもそう思いながらやっている。いつもやめたいって言いながら。でも仕事などは、9割5分がつらいこと、でも残り5分がすごく楽しい。9割5分つらいほど、そのわずか1割に満たない成功や達成感がすごく楽しい。わずかな喜びがすごい喜びになる。何もやらなければ、そんな感動もないかもしれないが、9割やめたいと思っている人間が、でも頑張ってやっていることが視聴者に届いているのだと思う。

  • 【モニター】牛のおしっこで頭を洗うような、普通の人なら絶対できないことができるようにイモトさんを突き動かしている原動力は何か?

  • 【イモトさん】究極、追い込まれた時は、頭にぷっと現れる人がいる。目の前にいるディレクターだったり、田舎にいる姪っ子だったり。その思いつく誰か一人のために頑張ろうって思って、いつもやっている。

  • 【委員】番組制作の際、面白くしたいという気持ちが行き過ぎてしまうことはないのか?そういうところでいかに踏みとどまるか?どのように調整しているのか?出演者やスタッフの意見は、どのように相互に作用しているのかを教えてほしい。

  • 【イモトさん】生放送ではなくロケなので、その状況に甘えて、自由にやっている。制作スタッフを信頼して、彼らが編集するのならば大丈夫!というふうに。たまにエゴサーチをすると「言葉遣いが悪い」など言われていることもあり、反省もする。でもロケ中にそれを考えすぎて、自分のよさが出なくなるのも嫌なので、基本、ノンストップでやっている。

  • 【加藤さん】表現については、よくネットで「テレビが自主規制して表現が苦しくなってきた」などと言われているが、日本テレビではあまりそういうことはない。イモトも言っているように、のびのびとやる。一つの価値観とか、固定観念だけでものを見ないということを含めて、多様な見方をしてもらえると嬉しく思う。

  • 【モニター】イモトさんにとって『イッテQ』という仕事は、どういう存在なのか?

  • 【イモトさん】全て。この10年に関しては仕事が全て。20代全部、仕事。自分を表現する全てだった。だからこれからは、アマゾンや雪山ばかりではない、きらきらしたものも見ていこうと思っている。アンコールワットなど海外の遺跡にはたくさん行ったが、京都の金閣寺、銀閣寺を見たことがないことについ1年前に気づき、最近は国内の行ったことがない所に一人で行くようにしている。

  • 【蛯原アナ】会議の最後に、イモトさんから感想を一言。

  • 【イモトさん】皆さんの鋭さにびっくりした。すごく年上の方としゃべっているような感覚だった。これまで自分の情報源はツイッターのエゴサーチしかなかったので、こんなふうに思ってくださる方もいるということがわかり嬉しい。すごく参考になったし、いい機会だった。
    (イモトさん 退場)

  • 【蛯原アナ】加藤制作局長からも一言。

  • 【加藤さん】バラエティーは、ちょっと下に見られることが多く、なかなか褒めてもらえない番組。いつも本当にくだらないと怒られる。けれども、ためにならないことも視聴者を勇気づけることがある。2011年の震災の時、一時、テレビからバラエティーの放送は一切消えた。その後、日本テレビは批判覚悟で、最初にバラエティーを復活させた。『イッテQ』も放送した。すると被災3県ですべて視聴率が20%を超えた。ためにはならない、くだらないと言われる番組だが、被災地の人たちは求めてくれていたということ。私は無駄なものなど一切ないと思っている。バラエティーがなくなっていく世界は、すごく不幸な世界になっていくのではないだろうかという感覚がある。汚いとか気持ち悪いとか言われるものにふたをして放送しなくなると、視聴者は見る機会を失うことにもなる。大人に「子どもがマネをするから放送してはだめ」と言われたら、「僕たちはマネをするなんてバカなことはしない」と声をあげてほしい。「お笑いだし、お約束だとわかっている」「素直に笑えばいいんだよ」と伝えてほしい。みなさんがこれから社会人になっていく時に、自分とは価値観の違う人に出会うかもしれない。その時に、お互いを認め合う。相手をただ否定することはしない、という世の中になっていけばいい。テレビがほんの少しでも、その環境をつくる足しになればいい。そういう番組をこれからも作っていこうと思う。

≪まとめ≫

最後に汐見委員長から、「BPO青少年委員会の一番の仕事は、放送を深いところから応援すること」であり、「放送の表現の自由を守るために活動している」と、青少年委員会の活動の意義が述べられました。さらに、「番組が真剣勝負のなかで作られているということが、きょうは手に取るように分かったと思う。『イッテQ』では、笑いを扱いながら、実は、人間にとっての文化の多様性の大切さをあわせて伝えていて、結果としてそのことがグローバル社会のなかでどれほど大切な価値あることなのかを、我々視聴者に知らせてくれている。皆さんも、きょう感じたこと、また放送から受ける影響などをポジティブに表現していってほしい」との話がありました。

以上

2015年度 中高生モニター会議

◆概要◆

青少年委員会は2016年3月13日午前11時から15時半までの間、テレビ朝日2階のプレゼンテーションルームで「中高生モニター会議」を開催しました。BPOからは汐見稔幸青少年委員会委員長を始め7人の全委員が参加、全国から集まった中高生モニター26人(中学生14人、高校生12人)、それにテレビ朝日から長田明お客様フロント部長、太田伸『サンデー!スクランブル』プロデューサー、下平さやかアナウンサー、平石直之アナウンサーが参加しました。
まず、午前11時に始まった第1部では最相葉月副委員長の開会あいさつや出席者の自己紹介の後、放送中の生番組スタジオに見学を行いました。スタジオでは実際に生放送がおこなわれる模様を見学した後、当日夜に放送が予定されている『報道ステーション SUNDAY』のセットをたてつけてあるスタジオを見学するなどテレビ朝日局内の様々な制作現場を見て回りました。中には、放送の原稿や映像を作成する作製室や、スタジオと制作室がコンピューターで直接結ばれ突然の発生ニュースにも対応できるような仕組みの説明を受けるなど、参加したモニターたちは専門的な分野についても理解を深めることができました。
見学を終えた後会議室に戻り、委員とモニターそれにテレビ朝日の長田部長らが加わって意見を交わす第2部の会議に入りました。テーマは(1)放送全般について、(2)情報番組についての2つです。まずモニターから、「1年間モニターを務めてみて、今まで視聴者という視点からでしかテレビを見る事がなかったが、制作者たちの考えや制作者側と視聴者側双方の視点からテレビを見る事ができるようになったと思う」「番組を中立的・第三者的視点から見ることの重要性を認識できるようになった」などの意見が出されました。仙台からの出席者は震災報道を引き続き是非やってほしいという切実な意見が出ました。委員からは、「中高生ならではの視点にとても驚かされた点がたくさんあった」「1年間のモニター報告を通じて、全員が成長していく模様がわかった」などの感想が述べられました。
情報番組については、「朝の情報番組で、芸能やエンターテインメントの情報が多いが、もう少しニュースの比重を多くしてほしい」との意見に続き、「大きなニュースが起こるとどの局を回しても同じようなことしかやっていない」などの意見が出ました。また、「ニュースを見たい、エンターテインメント情報を見たいなど、人によってニーズが違うので、機能的に仕分けができないか」という意見も出ました。また、「全国ネットの番組の一部をローカル局が差し替えている場合は、ネットニュースの重要な部分が欠けてしまうことがある」という不満が出ました。岩手在住のモニターからは「震災情報についても『復興が進んでいない、大変だ』というようなマイナスイメージの報道だけではなく、被災地の人々がいかに前向きに明るく生きているかも報道してほしい」という意見も出ました。他のモニターからも「青森や別の地方でも被災という意味では大変な地方があり、報道の地域格差のようなものを感じている」という意見が出ました。
地方在住のモニターからは「ローカルの催しなどを扱う地方ローカル番組が少しでも全国放送される機会が多くなればよい」や「地域ローカル番組同士がタイアップして協力して番組を作り、県と県や地域と地域を連携する企画を試してみるといいのでは」など地方局の積極的な番組制作を望む声が上がりました。
復興報道のテーマについては、長田お客様フロント部長から、「定期的に復興の状況を伝えることに関しては、『スーパーJチャンネル』というニュース番組でやろうとしており、被災地の国道の状況を見て行く定期シリーズ企画などをおこなっている。充分でないという批判は受け止めるが、局側としても意識して取り組んでいる」ということが語られました。また、居住地によって考え方に差異が出てくるのは当たり前で、より多くの人に見てもらうために何を選択するかということは情報番組の担当者は日夜頭をひねっていることが伝えられました。
休憩後の第3部からは生放送を終えたばかりの『サンデー!スクランブル』のキャスター2人と制作担当の太田プロデューサーも会議に加わりました。まず下平アナウンサーから、日頃の仕事の中での面白さ、番組制作での悩みや日頃番組を作っていく上での配慮など、担当者ならではの話が披露されました。平石アナウンサーからは、ニューヨーク支局での経験をはじめ、現在担当している番組を制作する上で心がけていることなど詳しい仕事内容が述べられました。「もっとも大切にしていることは、正確に伝える、わかりやすく伝える、また、興味深く伝えることである」など、日頃の仕事上の重要なポイントが伝えられました。1つの番組に多くの制作者が関わっているので、番組として何を目指したいのか、何を作ろうとしているのかなどの思いを汲み取りつつ日頃の制作現場に関わっていること、正確にわかりやすくということだけでなく、テレビとして一歩踏み込んで、コメンテーターや解説者からその経緯、今後の流れなどを引き出していくという作業だと説明されました。
太田プロデューサーからはプロデューサーの仕事内容が時系列的に説明され、これまで担当した番組の説明があった後、『サンデー!スクランブル』の番組制作現場で意識している内容、情報をきちんと整理して興味深く伝える経緯などが述べられました。情報をそのまま伝えるのでなく、事件の背景を探るというやり方で面白く視聴者を引き付けるやり方、またニュースの選択の仕方など具体的なポイントをあげて説明されました。
質疑応答では、モニターからのアナウンサーの仕事内容などについての質問があり、両キャスターが丁寧に答えました。平石アナウンサーは自ら被災地に入って現地から生中継を担当した経験などを踏まえて、災害などの現場での対応などについて話を進めました。また、視聴率に関する質問に対しては、話題になっていることに対して突き進むことは視聴率に結びつく場合も多いが、その際にもチェック体制を何重にも敷いて様々なことに配慮している、というニュース制作の仕組みが語られました。さらに、きちんと裏とりをしないものは放送できないなど、情報の正確性を求めて、それがなされてはじめて放送されるということが語られました。
この後情報番組の企画を立ててみようというコーナーに移りました。各モニターと委員、テレビ朝日担当者が4つの班に分かれて「情報番組の企画を立ててみよう」というテーマでグループワークを行ないました。各班それぞれ、企画を立て、模造紙に書き込んでホワイトボードの前で順番に発表しました。
まず、C班が地方のことをメインに伝えようということで、『うちの県にも来てくれ』というタイトルのテレビ番組を考えました。地方の工芸品、イベント、景色などを紹介し、各県がそれぞれに持ち回りで宣伝するという番組で、紹介したものをすぐに買える仕組みとか、毎日リレー方式で日本各地を紹介して進めていくと地方活性にもなるという企画でした。
B班は『ニュースの参考書』。視聴者の方々からその日のニュースに関してSNSなどで意見を募集し、それらについて模型を用いて説明するような番組です。キャスターは司会進行役が1人か2人。説明は専門家を招き視聴者と同じ目線でわからない単語に関して突っ込むという番組です。
D班の番組は「人生を豊かにする番組」というコンセプトを掲げ、人生という尺度で見た場合大事になる情報を与える番組としました。受験勉強だけでなく、若者に勇気ややる気を与える番組ということです。
A班は『ニュースと歩く』というタイトルの番組。家族向けの旅番組とちょっとしたニュースを組み合わせるものです。最初にニュースを15分間くらいやって、その後メインの旅番組にするというもので、毎週の出演者は地域出身の人や、その地域の人にする、放送はテレビとラジオ双方で連動してやることでテレビがないところにいる人も聞こえるというアイデアを取り入れました。
この後それぞれの企画に関し、太田プロデューサーから批評と助言が述べられ、ラジオとテレビの連動やインターネットテレビのあり方などについても制作者の立場から説明されました。
最後に汐見委員長から、「BPOは放送倫理と番組向上のための組織である。その中でも青少年委員会は“番組向上”に力を入れており、どうしたら良い番組を作れるのかを常に考えている。そのために視聴者の皆さんの意見を制作者に届けるなど、視聴者と放送局を太いパイプでつなごうという考えを持っている」との感想が述べられ、4時間半にわたる会議が終了しました。

以上

2017年4月14日

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』審議入り

放送倫理検証委員会は4月14日の第114回委員会で、TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について当該放送局に追加の報告書の提出を求めた上で討議し、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、TBSテレビが2017年1月31日に『白熱ライブ ビビット』で放送したホームレスに関する企画で、多摩川の河川敷で生活している男性について「犬17匹飼うホームレス直撃」として紹介した。これに対し放送後、河川敷で暮らす人たちへの偏見や差別を助長するという指摘があり、TBSテレビは3月3日、「不適切な表現ならびに不適切な取材方法が用いられていたことが判明した」として、番組内で謝罪放送を行うと同時に、番組ホームページ上にその経緯を掲載した。
審議入りの理由について川端和治委員長は、「TBSテレビの放送後の対応は評価できるが、放送倫理違反という問題について言えば、ホームレスの男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があって、看過できない」と述べた。
委員会は今後、TBSテレビの関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第190回 放送と青少年に関する委員会

第190回–2017年3月28日

視聴者からの意見について…など

2017年3月28日に第190回青少年委員会をBPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席し、まず2月16日から3月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。そのあと、3月の中高生モニター報告や今後の予定について話し合いました。
次回は4月25日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2017年3月28日(火)午後4時30分~午後7時00分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

「子どもに人気のアニメ番組でのキャラクターの言葉遣いや性格の設定がひどい。子どもが真似するのではないか」「オリンピック出場を目指す少女へのコーチの指導が厳しすぎる。虐待シーンを見せられているようだ」「出演者が小学生と一緒に給食を食べるシーンがあったが、出演者の食べ方などのマナーがひどい」「アニメ番組で、未成年と思われるキャラクターが性行為をしたかのようなせりふがあった」などの視聴者意見について話し合いましたが、現段階ではいずれもこれ以上話し合う必要はないとなりました。

中高生モニター報告について

32人の中高生モニターにお願いした今年度最後のリポートのテーマは、「この1年間を振り返って」です。また今月は、1年間中高生モニターの活動をサポートしてくださった保護者の方にもリポートをお願いしました。全部で24人の中高生モニターと18人の保護者から報告があり、それについて各委員が意見を交わしました。
また、今後の中高生モニターの運営などに関する小委員会を設け、より充実した制度にするための検討を進めることになりました。

【中高生モニター】
『モニターになる前と今とで、テレビやラジオの見方や聴き方が変わりましたか?』という質問にはほとんどのモニター(22人)が自身の変化を感じていると回答しました。「番組の後ろ側で制作している人たちのことを考えながら見るようになった」「スマホで見ていたニュースも、テレビならではの伝え方があることに気づいたり、細かい表現の違いや方法に疑問を感じたりするようになった」など多角的・客観的にテレビを視聴するようになったという意見や、「今まで見なかったジャンルの番組に接するようになりハマってしまい、こんな番組も好きだったと思えたことは収穫だった」「モニターになり、ラジオを聴くようになった。ラジオには聴取者に無限の想像を与えるというテレビにはない力があると思う」など新しい発見につながったという感想もありました。また、『今のテレビのあり方や、番組の内容についてどう思いますか?』という問いには、「リモコン操作で、自分が住んでいる地域では見られない他県の番組が見られるようになるといい」というアイデア、また「家族全員で小さなスマホの画面は見られないがテレビは囲むことができる。テレビにしかできないことはまだまだ存在する」「ラジオや新聞など様々なメディアがあるなか、家族みんなで楽しむことができるのがテレビ。これからも家族みんなで一緒に見て笑い、話題にできる番組を作り続けてほしい」「ネット社会の中で、テレビにしかできないことを模索していくべきだ」などテレビへのエール・提言が多く寄せられています。
最後の設問は『モニターとして過ごした1年間の感想を自由に書いてください』としました。「モニターの経験を通じて他人の意見を聞くことができ、自分が言いたいことの表現の仕方もわかった」「リポートを提出する経験で、番組を様々な角度から捉えてみたいという感覚が芽生えた」など自分自身の成長の報告や、「これからもメディアに対する自分の視点を持ち、自分はどうするのかを考える“能動的視聴者”を心掛けたい」という自覚の宣言、さらには「モニターをやってテレビがもっと大好きになった。テレビは僕にとってとても大切なもの。ドラマ・バラエティー・音楽番組どれも大好きだ。テレビから目が離せないくらいもっと大好きにさせてほしい」というテレビや制作者への“愛”を語ったモニターもいました。

【モニターの保護者】
保護者の方には、お子さんがモニターとなったことによる家族の変化を伺いました。
『お子さんがモニターをされたことによって、ほかのご家族のテレビやラジオの見方や聴き方に変化がありましたか?』という質問には、「同じ番組を家族で一緒に見る時間を意識的に持つようになった」「以前は個々に好きな番組を録画して見ていたが、みんなで一緒にテレビ番組を見て、話したり感想を言い合ったりする機会ができた」など家族団らんの機会が増えたという報告や、「番組を見れば積極的に報道の中身や背景を知りたがるようになったので、互いに意見を交わすようになった」「家族で自分の思いや考えを討論する時間が増えた。家族でも思いはそれぞれで、白熱してしまうこともしばしば」など、多くが家族とメディアの関係の変化を実感しているようでした。
『お子さんがモニターとして過ごした1年間の感想を自由に書いてください』という設問には、「今まで遠い世界の話だと思っていたテレビの世界が少し身近に感じられるようになった」「家族みんながいろいろな立場からメディアを考えるとても有意義な体験だった」などモニター活動を通じてのテレビやメディアに対する意識の変化を述べた報告が複数ありました。また、「(モニター活動を通じ)“文化とは何か”“品性とは何か”といったことを子どもと話した。BPOが守っているものは“番組の品性”ではなく“表現の自由”であり“多様性”であり“文化そのもの”であるということが良く分かった」と、BPOの使命・意義にまで言及してくれたリポートもありました。

◆委員の感想◆

  • 【この1年間を振り返って】について

    • 「モニターになる前はただ番組の面白さなどで判断していたが、今は『番組を見る人がどう思うのか?』と気にするようになった」という意見や「制作者は何を感じて欲しかったのか、と考えながら見るようになった」など番組を取り巻く多くの人の目線でテレビを見るようになっていることがわかる。

    • SNS時代のテレビについての意見が多かった。SNSネイティブの彼らとの世代間ギャップを、委員会として意識し汲み取っていかなくてはならない時代になっている。

    • 中高生モニターは1年間の活動期間を経てメディアリテラシーを得ている一方、彼らにはBPOのメンバーとして発言しているという思いもあるので、ある種のバイアスがかかっているという面もある。いわゆる普通の青少年の意見をどのようにすくい取っていくかは、我々委員会の課題である。

    • 「制作者の熱意を感じる作品とそうでない番組の差がひどい」「ゴールデンタイムの番組でも同じような番組が複数あったり、冗長な番組があったり不満を禁じ得ない。もっと制作者の情熱が感じられる内容の濃い番組が増えてほしい」などの意見から、作り手の熱を感じられる番組をモニターたちは求めていることがわかる。

  • 【青少年へのおすすめ番組】について

    • 『嘘の戦争』(関西テレビ)を家族で毎回ハラハラドキドキしながら見た、という報告があった。このドラマを視聴してはいなかったのだが、リポートを読んでとても気になった。

◆モニターからの報告◆

  • 【モニターになる前とテレビやラジオの見方や聴き方が変わりましたか?】

    • 今までは、ただ笑って見ていたものが、この放送は嫌な気持ちになる人がいるのかなと意識するようになりました。モニター会議で安全を考えて作られていることを知って、安心して笑えます。(長崎・中学1年・女子)

    • 今までは何気なく見ていたテレビをより深く、意味を考えながら見ることが多くなりました。テレビ番組の後ろで働いている人たちのことを少し考えながら見たりするようになりました。(宮城・中学1年・男子)

    • モニターを1年間やっていくうちにだんだんとテレビが存在している意味について考えるようになり、視点が変わりました。(北海道・中学2年・男子)

    • 変りました!今までは単純に面白い・汚い・下品とか単純な物差しで番組を視聴していたけど制作者の番組の目的ってどんなところなんだろうとか?ターゲット層はとか考えながら見るようになりました。(神奈川・中学3年・女子)

    • モニターになって自分がいままでスマホで見ていたニュースをテレビで見る時にもテレビならではの伝え方に気づけたり、よく目を凝らして見ることで今まで気づかなかった細かい表現の違いや表現の仕方に対する疑問を感じたりと、たくさんのことに気づくことができました。(東京・中学3年・女子)

    • 今までは見なかったジャンルの番組をモニターで書くために見て、そのジャンルの番組にハマってしまい、実はこういう番組も僕は好きなんだなぁと思えたのは、すごくいい収穫だと思っています。(愛知・中学3年・男子)

    • この一年、できうる限り時間をみつけて、ラジオを聴くようになった。ラジオには、聴取者に無限の想像を与える力があると思う。これはテレビにはないラジオの良さで、私はこのモニターをやらないと気づくことができなかったと思う。(東京・高校1年・女子)

    • モニターになる前は、テレビやラジオに対して面白さや聴いていて楽しいかという面だけで判断することが多かったですが、番組を見る人がどう思うのかとか、いやな気持ちになったりしないか、そして番組に出ている人もつらい思いもしてないだろうかと気にするようになりました。テレビやラジオのデータは一生残るので、きちんと評価していく必要もあるなと思いました。(高知・高校1年・女子)

    • これまでは、放送されているものは完成されたものだから、完璧なものであると思っていました。だから、疑問や非難の気持ちなどは皆無に近かったです。モニターに選ばれてから、テレビを見る時もラジオを聴く時も「さまざまな条件・立場の人たちが理解できたり、楽しめたりできるものかどうか」ということを意識するようになりました。(福岡・高校1年・男子)

    • これまでは、テレビを見た時に制作者側の気持ちになって見たことなど一度もありませんでした。実際に制作者や番組に携わるカメラマンやディレクターなどの人を目の前にすると、一つの番組に関わる人の多さに圧倒され物凄い心がこもっている番組なんだと思って見るようになりました。(福岡・高校3年・男子)

  • 【今のテレビのあり方や番組の内容についてどう思いますか?】

    • リモコンで操作したら、他県の番組が見られるようになったりするといいです。どこに住んでいても、関係ないといいです。今は住んでいる県しか見られないから、知らない番組があったりします。(長崎・中学1年・女子)

    • 今のテレビは「視聴者」を一番に考えて作られているものが多く、参加型だったり、見ているほうも楽しくいいのではないかと思います。それが番組に反映されて面白いものもたくさんありますが、逆に視聴者ばかりを意識して、番組の意図がわかりにくい番組もあるのではないかと思います。(宮城・中学1年・男子)

    • ラジオや新聞など様々なメディアがあるなかで、家族で一緒に居る時ボタン一つで見ることができて、みんなで楽しめるものがテレビだと思う。これからも家族で一緒に見て笑い、学校や家族の中で話題にできる面白いテレビ番組を作り続けていってほしい。(岡山・中学2年・女子)

    • テレビは公共のものなので、ある程度のマナーを守っていて、視聴者が求めている番組をしっかり放送局側が考えて放送していると思います。テレビは、ただ見るものではなく、参加型のテレビと進化しているなかで、いかに視聴者を飽きさせないようにするかが今後の課題だと思います。(埼玉・中学2年・男子)

    • インターネットが普及し、誰もが簡単に情報を発信したり得たりすることができる今、テレビはもっとテレビにしかできないことをするべきであると考える。最近の番組はどれも似たような番組であるように思え、別にテレビでなくともよいのではないかとも思う。(兵庫・中学3年・男子)

    • 今、若者のテレビ離れが進んでいるが、テレビにしかできないことがまだまだ存在すると思う。画面の大きさ一つとっても、家族全員でスマホ画面の映像は見られないが、テレビは見られる。これは当たり前のことだが、テレビの強みの一つであると思う。(東京・高校1年・女子)

    • SNSの登場でテレビ離れも進行するなか、番組の放送内容に対する世の中の視線がより厳しくなっていると感じる。ゴールデンタイムのバラエティー番組を見ていても、同じような内容の番組が複数あったり、冗長な長時間番組があったりと、不満を禁じ得ない部分はある。もっと制作側の情熱が感じられ、内容の濃い番組が増え、そうでない番組がなくなることを期待したい。(京都・高校1年・男子)

    • 今、ネットなどで一般の人でも番組について自由に意見を書き込めるので、何でも問題視されやすくて大変だなぁと思います。でも、それにめげずに面白い番組を作ってほしいなと思います。(福岡・高校1年・男子)

    • 面白い・制作者側の熱意を感じる番組とそうでない番組の差がひどい。とくに、「世界のおもしろ映像」とか言ってYouTubeの映像をひたすら流してタレントにコメントを言わせるだけの番組がゴールデンタイムに頻繁に放送されているのは違和感がある。もっと、「テレビにしかできないこと」を模索して行くべきだ。(神奈川・高校2年・女子)

    • インターネットとの差別化をはからなければテレビ離れが進むばかりだと思います。このような状況下でのテレビは、SNSなどのインターネットツールとの密接な関係が重要になってくると思います。テレビから視聴者の一方通行ではなく、SNSなどを使ってテレビと視聴者を相互につなげて「視聴者と番組をつくる」ことが今のテレビの在り方だと思います。これからも「視聴者と番組をつくる」ことを念頭におき、視聴者が参加したいと思えるような番組を作ってほしいです。(山口・高校2年・男子)

  • 【モニターとして過ごした1年間の感想を自由に書いてください】

    • 今まで何気なく見ていたテレビをじっくりを見て自分の意見を伝えるというのはとても貴重な体験でした。テレビ番組はその後ろに大勢の人が関わり、思いを持って作られているのだということがわかったのもとても勉強になりました。(宮城・中学1年・男子)

    • モニター活動に参加したおかげでテレビに触れる機会が増え、様々なジャンルの番組に触れる機会がありました。地元のテレビ局の番組や面白い番組に出合うことができました。とてもよかったです。(北海道・中学2年・男子)

    • 中高生モニターになってからは今までよりテレビをはじめ情報を発信するメディアにさらに興味を持ち始めました。1年リポートを書き、2回の会議に参加したうえで最後に、やはり私はメディアに関する仕事につきたいと改めて感じました。この1年テレビに関して考えられたことで自分の夢についても考えることができて本当にためになりました。(東京・中学3年・女子)

    • 自分の思ったことや感じたことを下手くそですが文字に書き起こしそれを読んでもらえる。とても嬉しかったです。質問にもしっかりと答えてくれていたり、自分の書いた感想に意見をくださったりとても嬉しかったです。自分の言葉が届いていることが嬉しく、面白くとても貴重な体験だったと思います。僕はテレビが大好きです。このモニターを1年間やることができ、もっとテレビが大好きになりました。テレビは人間の生活に必要だと思います。そんな素晴らしいものを作る人をとても尊敬しますし、これからもよりいいものにしていってほしいと思います。もっと大好きにさせてほしいです。テレビから目が離せないくらい、笑い過ぎてお腹が痛くなるくらい、そんな番組をこれからも楽しみにしています。(愛知・中学3年・男子)

    • 学校以外の方との交流をもっと増やしたかった。このように、単に青少年委員会へ文章を送るだけではなく、もっとface to faceをしたかった。文章では僕らの感じたことがうまく伝達できないし、声や表情で伝えることができれば幸いであった。(東京・中学3年・男子)

    • テレビはいろんな人が見るもので、様々な見方や捉え方があるから、私自身の一つの意見に絞らず、いろんな人の考え方に耳を傾けなくてはならないと感じました。このモニターで得られたことを糧に、視野を広げ、テレビやラジオの魅力を伝える人になれたらと思います。(東京・高校1年・女子)

    • 8月に出された、テレビ・ラジオ番組の企画を考えるにあたり、自分はテレビに対して批判的な目を持ち、その上での感想を持ちながら接しているが、では自分ならどうするのか、どのような番組を作るのか、ということをほとんど考えずに来たのだと気づいたことは、印象深い出来事だった。これからもメディアに対する自分の視点を持ち、感じたことを基に、では自分はどうするのかを考える、すなわち「メディアに能動的に接する」ことを心掛けたい。(京都・高校1年・男子)

    • テレビやラジオを通した意見を提出する経験で、番組をさまざまな角度から捉えてみたいという感覚が出てきました。また、学校生活以外の役割や人間関係が持てることで、ぼくの世界観が広がりました。(福岡・高校1年・男子)

    • モニターとしての1年間は本当に良い経験となった。ある物事に対する自分の意見をしっかり持つことができるようになり、同時に他人の意見も受け入れ易くなった。これからの日本のテレビ番組について深く考えている大人や学生が大勢いる。そのことが分かっただけで、これからのテレビは大丈夫だろう。僕はこのモニター経験を将来に活かしたいと思う。(東京・高校2年・男子)

    • 毎月、様々なテレビやラジオに触れることができました。今まで見たことのなかった番組も多く視聴し自分の視野を広げることができました。また、感想を書くということを通してその番組を再度見つめなおし、良いところ悪いところだけでなく、その番組が何を伝えたいのかということを考えることができました。(山口・高校2年・男子)

  • 【自由記述】

    • 普段、自分の意見を伝える機会がほとんどなかったので、この一年、本当に楽しかったです。自分の考えを言葉にするのが難しく、初めは手探り状態でしたが、今では大きな自信につながりました。(東京・高校1年・女子)

    • 今日、ラジオを聴く若者は少なくなっているのではないかと思います。友達との会話でも、ラジオについての話題があがることは全くありません。ラジオは、「音」だけを伝えて、視覚情報がないので、テレビやパソコンに慣れてしまった私たちには面白くないものとしてとらえられているのかもしれません。しかし、ラジオは、テレビよりリスナーとパーソナリティの距離が近いなどの利点が多くあります。ラジオを疎遠するのではなくて、積極的にラジオを紹介していく取り組みが必要になってくると思います。そのためにも、青少年へのおすすめ番組にラジオ番組を組み込むなど青少年にラジオの番組を紹介すればよいと思います。(山口・高校2年・男子)

◆保護者からの報告◆

  • 【お子さんがモニターをされたことによって、ご家族のテレビやラジオの見方や聴き方に変化がありましたか?】

    • 娘を通して、娘と見るテレビの見方が変わりました。変わったというか、話題が具体的指摘になっているような、言葉の言い回しに変化があるように思います。今までだと、ただ見ていたものが、こう言い方は分かりやすいか分かりにくいか、などというようになりました。(長崎・中学1年・女子の母)
    • 今までは、個人個人で好きな番組を録画して見ていましたが、毎月モニターで指定されるテーマのおかげで、みんなで一緒にテレビを見ることで、その番組について話したり、感想を言い合ったりして、良い家族団らんの機会となりました。(石川・中学2年・女子の母)
    • テレビの内容を起点とした親子の会話が以前よりも増えました。報道番組を見れば、積極的にその報道の中身や背景を知りたがるので、互いに意見を交わしています。政治や外交の報道を見ると、放送局や番組による違いがあることも少しずつ分かり始めていて、そういう意味ではテレビ報道を鵜呑みにするのではなく、自論を持ちながら番組を見る姿勢が養われたと感じています。この1年間は家族皆がそれぞれに楽しみ成長しました。(岡山・中学2年・女子の父)
    • 自分の思い考えを家族と討論する時間が増えました。家族内でも思いはそれぞれで、白熱してしまうこともしばしば。夫とはもちろん違いは分かっておりましたが、子それぞれ思想、願いが違うことも改めて分かりました。(千葉・中学3年・女子の母)
  • 【お子さんがモニターとして過ごした1年間の感想を自由にお書きください】

    • 普段の中学生生活とは別の世界で、自分の意見を大人の方たちに真剣に聞いてもらえるという経験は、本人にとって本当に貴重で得難いものだと思いました。今まで遠い世界の話と思っていたテレビの世界が少し身近に感じられるようになった一年でもありました。(宮城・中学1年・男子の母)
    • テレビ、映画、インターネット動画など今の世の中にあふれるほどの映像がある中で、どういうものを子どもに見せるのがよいか、親としては悩むところですが、今後もモニターで培った「考える力」を通して、息子のメディアリテラシーが少しずつ育っていけばいいなと思っています。(北海道・中学2年・男子の母)
    • 親子ともに倫理的なTVの見方を学ぶ貴重な経験でした。(東京・高校2年・男子の母)
  • 【自由記述】

    • 日本テレビでの会議は、親子共々、とても有意義で貴重な体験でした。『イッテQ』は、以前から家族でよく見ていた番組でしたが、番組そのものの見方も、今まで以上に深めることができると思います。終了後、家に着くまで「文化とは何か」「品性とは何か」といったことをずっと話しながら帰りました。BPOが守っているものは「番組の品性」ではなく、表現の自由であり、多様性であり、文化そのものであるということが大変よくわかりました。(岡山・中学2年・女子の父)

調査研究について

担当の菅原委員から、来年度に本格調査を行う「青少年のテレビ・ラジオに対する行動・意識の形成とその関連要因に関する横断的検討」の調査票案が示され、説明が行われました。また、中橋委員を加えた小委員会を設置して調査票を精査することとしました。

今後の予定について

  • 6月30日に島根県松江市で意見交換会を開催することを決定し、当該地区の放送局と調整を進めることとしました。委員長を含め、委員3名が参加する予定です。

  • 10月に全委員が参加する意見交換会を開催することを決定しました。

その他

  • 汐見委員長から、3月16日に開催した「BPO年次報告会」について報告がありました。

2017年3月に視聴者から寄せられた意見

2017年3月に視聴者から寄せられた意見

東日本大震災から6年。3月11日には各局で特別番組が放送され、その内容に関する意見が多く寄せられた。WBCの野球中継では試合時間が長く、その後の時間帯の番組編成に対する批判が多く寄せられた。

2017年3月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は2,101件で、先月と比較して291件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール72%、電話26%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性70%、女性29%、不明1%で、世代別では40歳代27%、30歳代26%、50歳代19%、20歳代14%、60歳以上12%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。3月の通知数は956件【50局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、23件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

東日本大震災から6年がたった。3月11日には各局で特別番組が放送され、その内容に関する意見が多く寄せられた。また、WBCの野球中継では試合時間が長く、その後の時間帯の番組編成に対する批判が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は44件、CMについては50件あった。

青少年に関する意見

3月中に青少年委員会に寄せられた意見は157件で、前月から55件増加した。
今月は「表現・演出」「性的表現」がともに25件と最も多く、次に「いじめ・虐待」「低俗、モラルに反する」がともに24件、「報道・情報」が19件と続いた。
「表現・演出」では、バラエティー番組で芸能人がだまされて穴や海に落とされる企画について多数の意見が寄せられた。「性的表現」では、未成年の設定だと思われるアニメキャラクターの発言について複数の意見が寄せられた。「いじめ・虐待」では、体操教室での少女に対する指導の様子について多くの意見が寄せられた。「低俗・モラルに反する」では、お盆で股間を隠す芸についての意見が目立った。「報道・情報」では、大阪府の幼稚園に関するニュース等での園児の取り上げ方についての意見が多かった。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 各局で、東日本大震災を振り返る番組が放送されていた。いまだに故郷に帰れない被災者や、現地の状況が報じられていたが、これは、3月11日にならないと放送できないものなのだろうか。復興が進んでいない、現地の産物が市場で売れないなどは日常のことであり、この日に限って復興、復興というだけでは全く意味がない。現地の産物はどのような検査を通して出荷されているのか、復興が進まないのは何故か、それらをメディアがきちんと調べた上で、普段から報道すべきだと思う。それが被災者に対するいじめや差別を防ぐことにも繋がるのではないだろうか。

  • 東日本大震災から6年、今、私たちは、“二つの風”と闘わなければならない。その一つは風化だ。毎年追悼式が国や自治体で開催され、多くのメディアも番組で取り上げるが、残念ながら年々参加者が減り、話題も少なくなっていく。防災の観点から決して忘れてはならない。3月11日を思い出し、災害時に何を準備し、何を施すべきかをきちんと覚えていれば、被害を少なくすることができる。二つ目の風は、風評被害だ。農産物に含まれる放射能はほとんど減衰したが、被災地産というだけで買い控えが起こる。日本産農産物に対して一定の輸入制限をかける国は、いまだ世界の半分近くに上る。さらに深刻なのは、人的な風評被害である。避難した子ども達が、いわれ無き中傷を受け、いじめに繋がった例も報告されている。差別しようとしている大人の心を反映したものか、大人の意識改革を進めなければならない。二つの風との闘いはこれからも続けなければならない。これも犠牲となられた方々への供養であり、被災者の方々への励みになるはずだ。

  • 関西の学園について連日報道されているが、感情的・扇情的な報道内容で、視聴者が公平な判断ができないのではないか。疑惑の段階なのだから、きちんと裏付けされた理性的・論理的な情報で視聴者に考えさせるような報道をすべきだ。

  • 芸能人が、飲食店などに現場で撮影許可を取るスタイルの番組について。芸能人は、お店には撮影許可を取るが、店内にいるお客様に許可を取っているのか。許可を出すのは店側ではあるが、取材などに慣れていない店に突然撮影許可をとる場合、店の人は、お客様の許可を取ることまで気が回らないのではないか。撮影する側は、最低でもお客様にも同意を得るように注意喚起をする必要があると考える。なかには断ることを言い出せない人もいるはずだ。食事中はすぐに退去することもできない。取材の際、前もって許可を取ること、店側にお客様の同意を得てもらうことを実施するべきと考える。

  • 甲子園の選抜高校野球の報道で、特定の学校に関する扱いが異常だと思う。注目選手がいるというのは理解できるが、あたかもその学校が負けて残念であるかのような報道はやり過ぎではないか。プロスポーツでない高校野球は、もっと冷静で公平に伝えるべきだ。

【番組全般・その他】

  • ディズニー映画の放送は、「ノーカット」としきりに事前告知していたが、エンディングの内容にがっかりした。エンドロールは早送りにされ、子ども達の歌声が出ていた。それだけならまだしも、テレビ局の社員が歌っている。番宣も流れている。なんだかわからないが、芸人も出ていた。「ノーカット」という場合、どういった定義になるのか。見ていて本当にがっかりした。エンドロールも含めて一本の映画だ。早送りして番宣を見せられるぐらいだったら、カットしてもらったほうがいい。視聴率ばかりが気になるから、視聴者の目線になっていない。

  • プロレスの番組を楽しみにしていた。前の番組はWBCの野球中継で、試合が延長して長時間放送になった。これにより番組の放送開始が大幅に遅れてしまい、番組予約がきかず、私は見ることができなかった。プロレスファンにとっては初めての企画で、どうしても見たかった。野球中継が延長することは容易に予想がつくことではないのか。番組編成に大いに疑問が残る。

  • 朝の情報番組で、「山陽新幹線トンネルから水蒸気」というニュースがあった。「水蒸気」は目に見えないので「水滴」が正しい。この誤りに誰も気づいていないのか、疑問を持たないのか、以前から間違ったままの放送が続いている。小中学校の理科の授業では、「水蒸気は目に見えない気体」と教えているが、テレビでは、「激しい水蒸気が見える」といった放送がされる。これを繰り返し見た子ども達は、混乱して正しい知識が身につかない。改善してほしい。

  • 昼の番組で、キム・ハンソル氏と思われる男性が公開したビデオについて、撮影された場所のフロアや部屋などの状況を、わざわざ専門家に分析させて放送していた。「撮影場所は50ヘルツの電子機器が使用されている地域」などと音声分析の結果を公表して、丁寧に50ヘルツ地域の国一覧までつけて放送していたが、やりすぎだと思う。当該男性が、北朝鮮政府から狙われている可能性や、他の国から国家レベルで保護されている情報がある。潜伏先について根掘り葉掘り分析し公開する内容は、男性を狙う暴力テロ組織を利するだけであり、一般視聴者に必要なものとは思えない。

  • 夜の番組で、番組ADが取材をしているが、食べ方が汚い。一呑みは当たり前、お寿司をまとめて手に抱え一気食い、きれいに盛られたものも手掴みで一呑み。大食い番組ならあり得る食べ方かもしれないが、食のリポートであって、大食いを自慢するコーナーではない。取材を受けたお店も、そんな食べ方をしてほしいわけでなく、純粋に料理を楽しんでほしいのではないか。食べ方のせいで、美味しそう、食べてみたいと思う気持ちを削がれる。放送時間帯も家族で見ている時間だ。あんな食べ方を見せられたら、真似をしてしまう子どもも出てくる。何かしらの事故が起こらないとも限らない。

  • 「無人販売所の農家は、相当なお人好し説」を検証するとして、農家の野菜無人販売所から野菜をすべて持ち去り、盗まれたとは思わないかどうかを実験していたが、例えお金を払っていたとしても、真面目に野菜を販売している農家の方に対し非常に失礼で、不愉快極まりない番組だった。しかもあの内容では、「無人販売所から簡単に野菜を持ち去るとことができる」という犯罪を助長しかねない。買い占めた大量の野菜が残ってしまったという、食べ物を粗末にする結末にも不快感を覚えた。

  • 一人芸人がナンバーワンの座をかけて対戦する番組の中で、優勝者が裸でパフォーマンスをしていた。それは、全裸で局部を皿のようなもので隠すという芸で、下品な宴会芸を思わせるものだった。局部を露出するかどうかでスリルを与えるのが狙いらしい。生放送でこのような芸を放送しても良いのだろうか。万一にも局部が露出したら、公然猥褻などの犯罪になるのではないかと思った。軽犯罪法に該当しないのかとも思った。いずれにしても、裸で芸をするというのは、いじめのツールとして利用されるなど、青少年に悪影響を与えるのではないか。

【ラジオ】

  • 関西在住だが、深夜放送を朝まで楽しみに聞いていたのに、3月中旬から、FMの放送に切り替わるということで、番組がなくなってしまった。私はFM局を聞くことができない。すべての人がFMを聞けるわけではないので、配慮してほしい。

【CM】

  • 77歳になる祖母が健康食品・美容化粧品のCMを見て、定期購入と知らずに通販を利用してしまった。幸いにも娘である母が定期購入の停止、及び、今後祖母が電話をかけても断るようにと約束させていたが、この手のCMは、どれだけ自社製品が良いのかとアピールするだけで、肝心の注意喚起の部分は、視力の良い人でも見えないのではないかと思うほどの小さな文字で表記している。CMは15秒程しかないのでそんな文字は読めないし、CM内容を孫の私が確認したところ、定期購入について詳しく書かれていなかった。頼んだ祖母も祖母だが、このような健康食品・美容問わず、通信販売のCMは大いに問題がある。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、芸能人をだまして海や穴に落とす企画があった。演技かもしれないが、俳優が海に落ちてワニに怯える姿を見て、他の出演者が大笑いしていた。人が困っている様子を笑って見ている様子は不愉快だし、子どもにはとても見せられない。

  • ゴールデンタイムの番組で、手術シーンが映像処理されることなく放送された。血や肉や骨がそのまま映し出されており、気分が悪くなった。子どもも見ている時間帯なので、もう少し配慮してほしい。

  • 番組スタッフが小学生と一緒に給食を食べるシーンがあった。そのスタッフは口に食べ物を含んだ状態で話をしたり、一気食いをしたりするなどマナーがひどかった。子どもに悪影響を及ぼす。

【「性的表現」に関する意見】

  • 未成年の設定だと思われるアニメキャラクターが、子どもを作ったかのような発言をしていた。子どもも見ている時間帯の番組としては不適切ではないか。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 体操でオリンピック出場を目指す少女を取り上げた番組があったが、少女へのコーチの指導が厳しすぎて虐待シーンを見せられているようだった。子どもが痛みで泣き叫んでいる映像はあまりにも残酷で見るに堪えない。

  • バラエティー番組で、あるタレントの嫌いなところを一般の人にアンケートし、その結果を他の出演者が当てるという企画があった。そのタレントの人格を否定するかのような回答もあり、いじめのように感じた。最終的には「嫌いなところはない」がアンケートの回答で圧倒的に多かったというフォローがあったが、このような企画は不愉快だ。

【「低俗・モラルに反する」との意見】

  • お笑いタレントがお盆で股間を隠す芸を披露していた。子どもが真似したり、悪ふざけで、無理やりその芸をやらされたりするおそれがある。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 幼稚園児が園の教育方針に沿って、運動会で選手宣誓する様子などを報道していた。顔は分からないように配慮していたが、報道されることにより、園児本人は自分が悪いことをしたかのように感じるだろう。園児のことを思うと胸が痛む。

2017年1月26日

TBS系列の九州・沖縄地区各局と意見交換会

TBS系列の九州・沖縄地区7局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、1月26日福岡市内で開催された。意見交換会には放送局側から21人が参加し、委員会からは升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、鈴木嘉一委員が出席した。放送倫理検証委員会が設立されて今年で10年になるが、TBS系列局との意見交換会の開催は初めてで、参加した7局すべてがラジオ・テレビ兼営局であった。九州地区では、昨年4月に「熊本・大分地震」が発生して、現在も地元局を中心に取材が行われていることから、議論のテーマを「災害報道」に絞り込んで意見交換を行った。
冒頭、地元局の熊本放送と大分放送から現場報告が行われた。
熊本放送からは「阪神大震災や東日本大震災など過去の大災害と比べてSNSがかなり普及したことから、デマや誤報のリスクが高まったのではないかと感じた」と問題提起があった。具体的には「『熊本市の動植物園からライオンが逃げ出した』『井戸に毒が投げ込まれた』『大型ショッピングモールで火災』『熊本市民病院が傾く』など、発災直後に不確かな情報が飛び交い、放送してしまった他局もあった」という。熊本放送では、「裏取りができていない情報は放送しないことを決めて災害報道に当たった。テレビでは誤報はなかったが、ラジオで『熊本城の櫓が見えない。崩壊したかも』と発生直後に放送してしまった」との報告があった。また、取材スタッフの二次災害を防ぐため、家屋の危険度判定で「赤判定(倒壊の危険)」の家屋には立ち入らないことをルール化して徹底したという。
大分放送のケースでは「熊本と比べると被害の程度は大きくなかったが、県内には海外からの留学生が多数住んでいて、アパートの外で一晩過ごした学生がかなりいた。外国人の避難誘導に課題が残った。素材伝送の地理的条件から、温泉で有名な由布市湯布院町にSNG中継車が集中した。その結果、由布院温泉の放送頻度が高まり、別府市民や別府市から被災地を公平に報道すべきと苦情が寄せられた」との報告が印象的だった。

地元局からの報告を受けて岸本委員は、「現場の葛藤はよくわかった。災害報道には(1)全国各地に被災地の実情を伝える(2)被災者に情報を伝えるという二つの役割があると思う。被災地への情報の伝え方は改善しやすいが、被災地以外の視聴者への情報の伝え方は難しく、方法にかなり工夫が必要だと思う。行きやすい避難所に取材が集中していないか、番組がバッシングされる背景には何があるのかなど、常に考えていなければならない。視聴者の支持が最終的には災害報道を支え、放送を支える。視聴者との信頼関係の構築に取り組んでほしい」と指摘した。
そして鈴木委員から「TBS系列各局報道の共同制作番組『3・11大震災 記者たちの眼差し』シリーズは、今後の災害報道のあり方を考える上で参考になる。この内『シリーズI』(2011年6月5日TBSテレビ放送)と『シリーズII』(2011年9月10日TBSテレビ放送)の中のIBC岩手放送と青森テレビが制作したミニドキュメントが示唆に富んでいる」と紹介があり、参加者全員で視聴した。
視聴した参加者からは「災害報道にスクープはないと思っている。系列間合戦の様相を呈してきていることに懸念を抱いている。また、インターネットとも競争するようになって、本当かデマかの裏取りがおろそかになりはしないかと心配だ」「被災地のマスコミに心のケアをしていますと冊子が送られてきた。よく調べたら新興宗教団体で、宣伝活動に利用されるところだった。裏を取ることは重要だ」「いま何が起きているかを伝えるためライブ映像は有効だ。被災地の地元局は葛藤もあるだろうが取材・記録することが大切だ」などと活発に意見交換が行われた。
会場の意見を受けて鈴木委員は「被災者にも、伝えてほしいという思いがあるのではないか。取材に大人数で行くと拒否されたりするが、来てくれることを待っている被災者もいるはず。番組も放送時間のワイド化が進み5~8分程度のミニドキュメンタリーは放送が可能だろう。被災者と一個人として向き合い一人称の視点で伝える努力をすることが、今後の災害報道にとって有効ではないかと考えている。その積み重ねが30分や1時間のドキュメンタリー制作につながるのではないか」と問いかけた。
 
また、升味委員長代行は「報道とは事実を伝えること。プライドを持って取材に当たってほしい。あらかじめ想定したストーリーに合わせたような安易な番組作りは報道の仕事ではないと常々思っている」と現場を激励した。

このほか、昨年12月6日に出されたTBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』「双子見極めダービー」に関する意見について、「意見書を読んで、あまりにも多くのスタッフがかかわっていることに驚いた。ローカル局の制作番組でも、インタビューなど編集段階でカットすることはあるが、放送前に事前に連絡するなど丁寧に対応している。番組に協力してくれた人との向き合い方が信じられない」との意見があった。これに対して担当委員からは「人物を消すことそのものは演出の範囲内だろうが、委員会は、出演者に対する敬意や配慮を欠いたと判断した」「人と人の関係が大切。こんなことをすれば制作者の財産にもならない」などと意見書の背景について説明があった。

最後に升味委員長代行から、「放送倫理検証委員会は、今年、設立10周年を迎える。常に放送局の応援団でいたいと思っている。みなさんが、自由に番組制作ができるお手伝いをしたいと考えている。自律的規範を守り自由に番組作りができるフィールドを一緒に守っていきましょう」との発言があり、意見交換会は閉会した。

今回の系列の地域単位の意見交換会について、参加者から以下のような感想が寄せられた。

  • 「『懲らしめられても仕方ないよね』と視聴者から思われないように…視聴者が味方についてくれるかどうかが重要」。岸本委員のこの言葉が、今回の意見交換会の中で特に印象に残った言葉です。これは、いま私たちが直面しているSNSや投稿動画サイトなどメディアを取り巻く環境において一番大切なことではないかと改めて感じさせられました。私たちは、時として伝えることに傲慢になりがちです。それは権力のチェック機関としての役割を果たさなければならない時でも俗に言う「第三の権力」を振りかざしてしまうこともあります。謙虚な心で取材現場と向き合い、功名心に走らないことが"視聴者からの信頼"を積み重ねていくことに繋がると思っています。
  • 系列局間の研修会は、顔が分かる関係者同士の集まりということもあり、非常に有益な意見交換ができたと思います。
    今回の議論の柱の1つだった「災害報道」は、同じ現場に足を運んだ系列同士ということもあり、前提条件として「上手くいったこと」「失敗したこと」が皆、分かっているので、手探りではなく、最初から突っ込んだ議論ができたのではないかと思います。
    そのことで、"机上の議論的"な、かしこまったやり取りではなく、各局の実情も良く分かる会合になったのではないでしょうか。
    今後も、同種の勉強会等を開く機会があるのなら、今回のスキームで開催していただきたいとも思います。
  • 『記者たちの眼差し』の視聴を通しても、私自身反省すべき点があった。日頃、ニュースデスクとしての立場で「こんな感じで、こういう内容のインタビューを取ってきてほしい…」と、取材に出かける記者にイメージを伝えてしまい、取材現場の真実とかけ離れたニュースを出してしまったことはないか?その場その場で、真実を追求すること。また、現場をもっともよく知る取材記者やカメラマンとの地道な意思疎通をしていくよう肝に銘じたい。

以上

第245回放送と人権等権利に関する委員会

第245回 – 2017年3月

都知事関連報道事案のヒアリングと審理、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の通知・公表の報告、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理…など

都知事関連報道事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。また事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の通知・公表の概要を事務局から報告、浜名湖切断遺体事件報道事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年3月21日(火)午後3時~8時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、中島委員、二関委員 (曽我部委員は欠席)

1.「都知事関連報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。この放送について、雅美氏と2人の子供が人権侵害を訴え申立てを行った。
今月の委員会では申立人と被申立人のフジテレビにヒアリングを実施し、詳しい話を聴いた。
申立人側は雅美氏が代理人の弁護士とともに出席し、「私が『撮らないでください』と伝えているにもかかわらず、フジテレビが子供2人を自宅前で登校時、カメラを避けようがない状況で撮影したことは揺るぎない事実だ。子供は大変な精神的苦痛を受けた。子供の姿が放送されなかったから良いということではなく、撮影自体が既に肖像権を侵害している。子供の撮影は必要なことではなく、私は怒り心頭で『いくらなんでも失礼です』と抗議した。子供を護るため母親としての当然の行為であったと考える。ところが、フジテレビは、あたかも私が取材を感情的に拒否しているかのように映像を編集し、意図的に事実とは違う印象を明らかに視聴者に与える放送を行った。この撮影は、もともと公共性・公益性を目的にしたものではなく、放送内容に真実性はなく、悪意を持って意図的に子供を撮影し、ことさらに私を貶めるように編集されたもので、それを放送したことは名誉毀損にあたる」等と述べた。
フジテレビからは番組の制作責任者ら5人が出席し、「疑惑解明に不可欠なのは、株式会社舛添政治経済研究所の代表者である舛添氏の妻、雅美氏本人の取材である。当然、子供への取材は何の意味も持たず、取材する意図は全くなかった。執拗な取材・撮影はあり得ず、その事実も一切あり得ない。雅美氏のインタビュー部分は、取材時のディレクターの質問から雅美氏の返答を一連の流れとしてノーカットで放送したもので、作為的編集という事実は一切ない。『いくらなんでも失礼です』という発言は、早朝に訪れて取材申込みをしたことが失礼であると同時に『間違ったことをしていないにもかかわらず、直接取材に来たことは失礼である』との意味で発せられたものと理解している。極めて公共性、公益性の高い取材だったと考える。政治家の疑惑を追及するための取材が問題とされるケースが常態化すれば、現場が委縮し、権力の監視と言う我々の役割が支障をきたすのではないかと強く懸念している」等と述べた。
ヒアリング後、本件の論点を踏まえ審理を続行した。

2.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案の通知・公表の報告

3.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ) 事案の通知・公表の報告

本事案に関する「委員会決定」の通知・公表が3月10日に行われた。委員会では、その概要を事務局が報告し、決定内容を伝える当該局による放送録画を視聴した。委員長からは、公表時に様々な質疑があったことを紹介したうえで、放送には警察をチェックする役割もあるので、この決定内容からそうした社会的要請が改めて受け止められることを期待したい旨の発言があった。

4.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュース。静岡県浜松市の浜名湖周辺で切断された遺体が発見された事件で「捜査本部が関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べている」等と放送した。
この放送に対し、同県在住の男性は9月18日付で申立書を委員会に提出。同事件の捜査において、「実際には全く関係ないにもかかわらず、『浜名湖切断遺体 関係先を捜索 複数の車押収』と断定したテロップをつけ、記者が『捜査本部は遺体の状況から殺人事件と断定して捜査を進めています』と殺人事件に関わったかのように伝えながら、許可なく私の自宅前である私道で撮影した、捜査員が自宅に入る姿や、窓や干してあったプライバシーである布団一式を放送し、名誉や信頼を傷つけられた」として、放送法9条に基づく訂正放送、謝罪およびネット上に出ている画像の削除を求めた。
また申立人は、この日県警捜査員が同氏自宅を訪れたのは、申立人とは関係のない窃盗事件の証拠物である車を押収するためであり、「私の自宅である建物内は一切捜索されていない」と主張。「このニュースの映像だけを見れば、家宅捜索された印象を受け、いかにもこの家の主が犯人ではないかという印象を視聴者に与えてしまう。私は今回の件で仕事を辞めざるをえなくなった」と訴えている。
この申立てに対し、テレビ静岡は11月2日に「経緯と見解」書面を委員会に提出し、「本件放送が『真実でない』ことを放送したものであるという申立人の主張には理由がなく、訂正放送の請求には応じかねる」と述べた。この中で、「当社取材陣は、信頼できる取材源より、浜名湖死体損壊・遺棄事件に関連して捜査の動きがある旨の情報を得て取材活動を行ったものであり、当日の取材の際にも取材陣は捜査員の応対から当日の捜索が浜名湖事件との関連でなされたものであることの確証を得たほか、さらに複数の取材源にも確認しており、この捜索が浜名湖事件に関連したものとしてなされたことは事実」であり、「本件放送は、その事件との関連で捜査がなされた場所という意味で本件住宅を『関係先』と指称しているもの。また本件放送では、申立人の氏名に言及するなど一切しておらず、『申立人が浜名湖の件の被疑者、若しくは事件にかかわった者』との放送は一切していない」と反論した。
さらに、「捜査機関の行為は手続き上も押収だけでなく『捜索』も行われたことは明らか。すなわち、捜査員が本件住宅内で確認を行い、本件住宅の駐車場で軽自動車を現認して差し押さえたことから、本件住宅で捜索活動が行われたことは間違いなく、したがって、『関係先とみられる住宅などを捜索』との報道は事実であり、虚偽ではあり得ない」と主張した。
今月の委員会では、次回4月の委員会で申立人と被申立人のテレビ静岡にヒアリングを実施し詳しい話を聴くことを決めた。

5.その他

  • 三好専務理事から、3月10日に開かれたBPO理事会で、放送人権委員会の委員を1名増員することが了承されたと報告された。また、2017年度の事務局の新体制についても報告された。

以上