第249回 放送と青少年に関する委員会

第249回-2022年9月

視聴者からの意見について…など

2022年9月13日、第249回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました(うち2人はオンラインによる出席)。
7月後半から8月末までの1カ月半の間に寄せられた視聴者意見には、1歳8カ月の幼児に初めて「おつかい」を体験させた番組について、「1歳や2歳の子をひとりで出歩かせるべきではない」「出演する子どもには(年齢の下限に)制限を設けてほしい」などがありました。
8月の中高生モニターリポートのテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。、モニターからは戦争関連番組の視聴により、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、戦争への恐怖と平和の尊さを再認識したなどの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
また事務局から、民放連の「放送基準」の改正(2023年4月施行予定)について説明がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、10月25日(火)に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年9月13日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室(オンライン併用)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
民放連「放送基準」の改正について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

7月後半から8月末までに寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
幼児が初めて「おつかい」を体験する様子を紹介するバラエティー番組で「(最年少)記録更新」と題し、母親らが見守る中、1歳8カ月の男児に、少し離れた隣家に回覧板、また別の家には菓子を届けさせたことについて、視聴者から「1歳や2歳の子をひとりで出歩かせるべきでない。真似をして子どもに行かせる親御さんがいると思う」「出演する子どもには(年齢の下限に)制限を設けてほしい」などの意見が寄せられました。
委員からは「1回だけでなく何度も行かせたことが、視聴者には不評だったかもしれない」「最年少記録という視聴者を煽るようなタイトルもどうかなと思われる」との意見があり、一方で別の委員からは「幼児の周辺で大人のスタッフが見守っていることが分かるように放送されており、安全に配慮していることを視聴者に見せる演出になっていた」と評価する声もありました。
別のバラエティー番組のコーナー企画で、浴槽内に電流を流すサービスを提供している香川県の銭湯に男性アイドルグループのメンバーらを入れ、電流を流したところ、視聴者から「電気を流されて痛がる様子が、いじめに見える」「子どもが見ていて、番組の真似をする可能性が高いので、とても笑えない」などの意見がありました。
委員からは「電気ビリビリ風呂は、通常の浴場で使われているものなので倫理的には問題ないと思ったが、繰り返し笑いを取ろうとしているところが、視聴者には不快だったのだろう」との意見がありました。
また、心霊現象などの体験談をドラマ化して構成したバラエティー番組のスタジオパートに子どもたちを出演させたことに、視聴者から「発育過程の子どもにオカルト現象を現実のものとして信用させるのは控えるべきだ」との指摘がありました。
委員からは「出演した子どもはみな、実績のある子役たちで、怖がっている顔も演技であるのは明らかだ」として問題にはならない旨の考えが示されました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

8月のテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、モニターからは合わせて15の番組について報告がありました。
このうち『僕たちは戦争を知らない~1945年を生きた子どもたち~』(テレビ朝日)を6人が取り上げ、「戦争体験者の話は実感を持って聞くことができた」「人を恐ろしい方向に変えてしまう戦争は二度とやってはいけないと強く思った」といった感想が寄せられました。
そのほかの番組にも「被爆者の高齢化が進んでいるので次は私たちが伝えていく番だと思う」「私たち若い世代ができることを考える良い機会になった」などの声が届きました。
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、番組を通して平和のありがたさを改めて感じたというモニターが多く、「当たり前のように過ごしている今の生活が当たり前ではないと実感した」「”戦争は遠い過去の話ではない”という制作者のメッセージが伝わってきた」などの感想が寄せられています。

◆モニター報告より◆

  • 【終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリー)について】

    • 『僕たちは戦争を知らない~1945年を生きた子どもたち~』(テレビ朝日)
      ・番組を見終わって戦争の恐ろしさ、悲しさを感じた。戦禍を生き抜く大変さを知ったと同時に、今がどれだけ幸せかを知った。戦禍の人々は自分のことしか考えられなくなり、人が変わってしまったという。人を恐ろしい方向に変えてしまう戦争は二度とやってはいけないと強く思った。もう誰もつらい思いをしないよう、戦争の記憶を若い世代に伝え続けることが大切だと思う。(高校1年・女子・栃木)
      ・戦争体験者の家族や生活といった背景をじっくりと伝えていたので実感を持って話を聞くことができました。一番心に残ったのは「戦争が人の心を変えた」という戦争体験者の声です。戦争体験者を悲しく見るだけではなく、たくましく生きてきたことを伝えていたのも良かったです。(高校1年・男子・兵庫)
      ・普段当たり前のように過ごしている生活は当たり前ではないし、飲める水があること、食べるものがあること、安心して過ごせる場所があることは本当に幸せなことだし、日々感謝して生きていかなければならないと思った。当時何があって人々がどんな思いだったのか、貴重な当事者の言葉を大切にし、感謝しながら次の世界に語り継ぐことが私たちのすべきことだし使命だと思う。(高校3年・女子・茨城)

    • 『特集ドラマ「アイドル」』(NHK総合)
      ・真っ先に思い浮かんだのが現在も続いているロシアによるウクライナ侵攻のことです。このドラマを見て、戦争をしてもいいことは本当に一つもないと思いました。自分の国でも同じようなことが起きてたくさんの人が犠牲になった過去があるからこそ、世界に戦争の恐ろしさを伝えていくことが大事だと思いました。(高校2年・女子・岩手)
      ・戦時中にアイドルが存在したことにすごく驚きました。いつの時代にも娯楽は求められていたのだと知り、親近感を持って見ることができました。前線へ向かわなければならない人たちの恐怖や葛藤は計り知れません。改めて戦争は繰り返してはいけないし、戦場に向かう選択肢しかなかった人たちのことや被害を忘れてはいけないと思いました。(中学3年・女子・群馬)

    • 『NNNドキュメント’22 「侵略リピート」』(日本テレビ)
      中国戦線に関する話では、戦争時には人が死んでもすぐに忘れてしまったりする特殊な心理について述べられ、当時の非人道的な行いが起こされた心理環境がいかに異常だったかが分かりました。番組の途中で、ロシアによるウクライナ侵攻の映像などが流れ、「戦争は遠い過去の話ではない」という制作者のメッセージが伝わってきました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『イサム・ノグチ 幻の原爆慰霊碑』(NHK BS1)
      日本とアメリカとの板挟みになったイサム・ノグチに焦点を当てることで、当時の在米日本人の扱い、戦後の日本でのアメリカ人の扱いなどの問題を取り上げていたのが斬新で面白かった。戦争イコール悲惨で命を奪うものという単一的な価値観ではなく、付随する課題を報じるものが増えれば、ほかの番組も面白くなるのかなと思った。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『NNNドキュメント’22「禎子さんの折り鶴~千羽になったら願いが叶うんよ」』(日本テレビ)
      被爆者の高齢化が進んでいるということは、次は私たちが伝えていく番だと思います。唯一の被爆国に住んでいるからこそ「二度と戦争はしてはならない」ということをしっかりと心に留めておきたいと思いました。(中学2年・女子・山口)

    • 『仲間由紀恵・黒島結菜 沖縄戦“記憶”の旅路』(NHK総合)
      “沖縄戦”の実状や奪われた日常を改めて見て「他人事ではない」と思いました。遺骨や遺品が見つからない人が多く、人々の記憶だけでなく戦争の爪痕もなくなってきていることを知り、また戦争が起きるのではないかという不安を感じました。(中学1年・男子・山形)

    • 『長崎原爆の日 被爆から77年のリアル』(NHK総合)
      今、ウクライナ情勢で核の脅威を目の当たりにすることが多い。被爆者の平均年齢が84歳であることを知り、とても驚いた。刻々と近づく「被爆者なき時代」のため、私たち若い世代ができることを考える良い機会になった。私たちには、被爆者の強い思いを継ぐ役割が任せられているのだと考えさせられた。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『セイコグラム ~転生したら戦時中の中学生だった件~』(NHK総合)
      スマホの画面のような見せ方のドラマで、とても新しい形だと思いました。インスタグラムという若者に身近なツールとテレビを掛け合わせる方法は、戦争関連のように、見るのを少しためらってしまうようなテーマの番組をより見やすくするのではないかと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 今年は終戦関連の番組が少なかったように思います。これまで学校で習うような表面的な部分しか知らなかったので、番組を通して当時の人々の暮らしを知ることができて良かったです。(中学3年・女子・群馬)

    • 去年に引き続き通常の報道番組の中で戦争関連の特集を組んでいる放送局が多く、そのぶん多くの人に情報が伝わったと思います。戦争の話題のように視聴者が深く考えて行動に移してこそ意味をなす報道は、一度に時間をかけることも大切だと思います。現状では、多くの人に情報を届けることと、しっかりした中身の濃い情報を伝えることのバランスが取れていないように感じます。(高校1年・男子・兵庫)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ニュー試』(NHK Eテレ)
      各国の先進的な取り組みを知ることができ、大学進学を目指す身としてとても勉強になった。番組内で模試を考える時間が十分にあって自分でも考えることができ、とても面白かった。(高校1年・男子・愛知)

    • 『Zボイス 私たちの声を聞いて 18歳 夏 参院選』(NHK BS1)
      政治がどこか遠くで行われているイメージを持っていましたが、政治家の判断によって私も日常生活の中で影響を受けてきた一人なのだと思いました。そのことをしっかり受け止めて行動している同世代の方々を見て、私も将来を担っていく社会の一員として政治に関心を持とうと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『チョコプラのぶらり溶接の旅』(テレビ東京)
      再利用が注目されている中で、廃材を使って人のために物を作るという取り組みはとても良いと思います。チョコプラの時々面白いやり取りに楽しませてもらえる番組でした。(中学2年・女子・山口)

◆委員のコメント◆

  • 【終戦関連番組の感想について】

    • 被爆者の平均年齢が高いことを知って驚いたという感想があったが、そのぐらい戦争のリアリティーがないのだろうかと思った。とはいえ、被爆者の思いを伝える役割は自分たちにあると考えたということで、番組からいろいろなことを深く受け取ってくれたのだと思う。ほかにも、これからは私たちが伝えていく番だというとてもいいメッセージが届いていて、感受性豊かに受け止めたモニターが多かったようだ。

    • ウクライナ情勢が連日のように報道される一方で、戦争を実感する機会が少なくなっているという感想を複数のモニターが述べていて考えさせられた。

    • SNSやタイムスリップを取り入れるなど、各番組がどうやって戦争に対するリアリティーを若い人たちに持ってもらうかに知恵を絞っていることが、モニターの報告からよく分かった。

    • 戦争体験者の証言を制作者が意味づけたりあらかじめ文脈を作ったりせず、あくまで個人の生活史に終始して伝えるのが今のドキュメンタリーらしい作りで、時間をかけて人物を丸ごと紹介するところにモニターも好感を持っているようだ。

    • 若い人たちは生々しい戦争の描写などを避ける傾向があるようで、出演しているタレントたちと一緒に理解を進めていくといった、アプローチの仕方の工夫が必要なのだろうと思った。

  • 【自由記述について】

    • 温かいご飯を食べられたりお風呂に入ったりできるなど、当たり前のことが実は当たり前ではないということを書いてくれたモニターが多かった。やはりウクライナで現実に戦争が起き、難民が大変な思いをしていることが報じられていることが、想像をよりリアルにしているのだろうと思った。

    • バラエティー番組について意見を寄せてくれたモニターが複数いた。ウェブサイトに公開している6月の意見交換会の報告も読んでもらい、BPOの役割などを知ってもらえればと思う。

    • 衝撃映像が流れる前に、安心してご覧くださいというテロップが表示されたので安心して見られたという声があり、興味深い感想だった。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 生き物の不思議な姿や行動に着目した番組『へんてこ生物アカデミー』(NHK総合)で、大学生が新しい生態を発見したことが印象的だったと書いてくれた高校生のモニターが、大学の研究費の少なさなど日本の現状についてさまざまな問題提起をしていて感心させられた。

民放連「放送基準」改正について

2023年4月施行の民放連「放送基準」の改正について、事務局から概要報告がありました。

今後の予定について

地方局との意見交換会開催の日程調整について、事務局から進捗状況の説明がありました。

以上

第175回 放送倫理検証委員会

第175回–2022年9月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

第175回放送倫理検証委員会は9月9日にオンライン形式で開催された。
委員会が9月9日に行ったNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から様子が報告された。
山梨放送が第26回参議院選挙期間中の7月2日に候補者が出演する番組『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送したこと、およびBS朝日が同選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』を放送し、それぞれに候補者が出演していたことについて討議を行った。
第26回参議院議員選挙の投票日当日に、フジテレビが、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組を放送したことについて討議を行った。

議事の詳細

日時
2022年9月9日(金)午後5時~午後6時15分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHKBS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、番組と局のホームページで公表し謝罪した。委員会は放送倫理違反の疑いがあるとして2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。委員会は9月9日、当該局に対し意見書の通知を行い、続いて意見書の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。同日に開催された9月の委員会では、委員会決定を伝えたNHKのニュース番組を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. 参議院選挙期間中に立候補者が出演した3番組について討議

委員会は、参議院選挙期間中に立候補者の出演番組を放送した以下の3番組について討議を行った。
① 山梨放送『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』
山梨放送は第26回参議院選挙期間中である7月2日、『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送し、西郷隆盛の玄孫(やしゃご)である西郷隆太郎氏を取り上げた。同氏は6月6日、日本維新の会から比例代表候補として立候補表明をしていた。当該番組は他系列の放送局が1月8日に放送したものを購入して放送したものだった。
放送後、候補者の宣伝になるような番組を放送するのは山梨放送が応援しているようで大きな問題だという内容の視聴者意見がBPOに寄せられた。これを受けて委員会では、当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書によれば、購入先の放送局から出演者リストを受けとった5月時点では西郷氏は立候補を表明しておらず、リストにもその記載はなかったという。また番組の素材チェックは公示2日前の6月20日に行われたが、同氏がいわゆるタレント候補ではなかったため担当者は立候補表明をしていたことに気づかず、そのまま放送した。
当該放送局は再発防止策として、購入番組は選挙期間中および公示1か月前からこれまでの担当者のほかに編成部員を加え二重の確認を行う、番組購入の際のチェック体制を一層強化することなどを挙げている。
② BS朝日『暴れん坊将軍Ⅱ』
③ BS朝日『新・科捜研の女3』
BS朝日は第26回参議院選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』をそれぞれ放送した。
いずれも他局から番組を購入して再放送したもので『新・科捜研の女3』には候補者の石井苗子氏(日本維新の会・比例代表)、『暴れん坊将軍Ⅱ』には三原じゅん子氏(自由民主党・神奈川選挙区)がそれぞれ出演していた。
『暴れん坊将軍Ⅱ』は約40年前の1983年制作で、三原氏は素性を隠し市井にまぎれる将軍に、ある出来事を契機に恋心を抱く町娘の役。『新・科捜研の女3』は約15年前の2006年の制作で、石井氏は質店の社長だが、裏で金融業を営んでいて、融資先とのトラブルで殺害されるという役。三原氏および石井氏は、共に準主役であった。
BPOにはBS朝日から「参議院選挙候補者が選挙期間中に出演していた」旨の自主的な報告があり、また、視聴者からも「過去の出演とはいえ、公職選挙法に違反するのではないか」という意見が寄せられたため、委員会は当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書には、出演者チェックやプレビューは購入時の4月のみで、放送直前には再度のプレビューを行わなかったこと、また、三原じゅん子氏は当時「三原順子」で芸能活動していたことをチェックの担当者が認識しておらず名前を見逃したこと、石井氏については番組資料の出演者リストの中に名前がなかったことなどが記載されていた。
また、再発防止策として、番組プレビューを購入時ではなく番組編成2週間前に行うことや、少なくとも選挙の公示・告示の1カ月前から内容・出演者が選挙期間にふさわしい作品かどうかを編成担当らが複数回確認する等が示されている。

上記の3番組は、委員会が過去に公表した3つの意見書で取り上げた問題を含んでいる。委員会は、2012年12月2日決定第9号「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」において、参議院選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組について、放送倫理違反があるとは判断しなかったが、原因について出演者のチェックが行き届かなかったという単純なミスであることや選挙に対する関心の低さについて指摘をしている。
また、2013年4月には、知事選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビのバラエティー番組『VS嵐』について、委員長談話を出し、参議院選挙の年であることに注意喚起も行っていたが、直後の参議院議員選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組があったため、委員会は、事態を重く見て、2014年1月8日第17号決定「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」において、視聴者に与える印象の程度は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれのある程度にまで達していることや選挙に対する全社的な意識づけの不足があった点も踏まえて放送倫理違反があると判断している。
さらに、2017年2月7日 第25号委員会決定「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」においても、再放送された番組に候補者が出演していた1番組について審議を行っている(放送倫理違反とは判断していない)。
以上の意見書を踏まえて今回討議した3番組のうち、番組①は、候補者が番組の中で国のために働きたいなどの発言をし国政に出る気持ちが察せられたものの、放送に至る経緯をみれば、当該局に不注意があり、選挙と結びつける意図があったとは思われないこと、候補者がタレントでなかったことなどの事実が確認でき、番組②と③は選挙とは全く関係のない番組であることを踏まえて、いずれの番組も他の候補者との間で実質的には公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまでは達しているとまではいえないと考えられた。そして、いずれの放送局においても再発防止策がとられていることから、委員会は、その実効性に期待することとして、討議を終了した。
もっとも、参議院議員選挙のたびに、候補者が出演している再放送番組の放送が繰り返されることについて、委員から「いたちごっこ」になっているとして憂慮する声が相次ぎ、担当者のミスで終わらせるのではなく、出演者の名前を会社のシステムに登録しておくなどの仕組みによって防止できる可能性があること、放送番組は出演者にとっては利用価値のあるものであることを留意すべきであること、再放送であってもチェックには念を入れるべきであることなどの意見が出され、議事概要で改めて注意を喚起すべきであるとの結論で一致した。

3. 視聴者から「投票行動に多大な影響を与える」という意見が寄せられたフジテレビ『日曜報道THE PRIME』について討議

フジテレビは、第26回参議院議員選挙の投票日の7月10日(日)7時30分~8時55分に、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、7月8日応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組『安倍晋三元首相を悼む…安倍氏の軌跡と日本の今後』を放送した。放送後、同番組について、視聴者からBPOに「実質的に特定の政党に投票を呼びかけるもので、公職選挙法に違反するのではないか」「放送法第4条、政治的に公平であることへの違反だ。投票行動に多大な影響を与える」といった意見が寄せられた。これを受けて委員会は、フジテレビに報告書と番組DVDの提出を求め、番組内容について討議した。
本件番組は、安倍元首相と所縁の深い3人の識者をコメンテーターとしてスタジオに招き、前半は、映像やコメンテーターが語るエピソードを通じて、安倍元首相の安全保障政策や外交政策の成果や功績について伝えた。後半は、銃撃事件の状況と警備上の問題点を専門家の解説を交えて伝え、選挙戦最終日を迎えた各党の同事件の受け止めを紹介し、最後に、コメンテーターが今後の日本はどうあるべきかについて語って終了した。
委員からは「自民党に直接つながることではないにしても、選挙の当日に、安倍元首相の功績や国際社会での評価を伝えることは、特定の政党の功績や評価を放送しているのと同じだと、視聴者に受け取られかねない」「番組の最後で、コメンテーターが、安倍氏の志を継いで憲法改正を岸田政権にやらせましょうと特定の政党へ投票を呼び掛けるに等しい内容の発言をしている。キャスティングの段階で、そういった発言が予期される場合、司会者や局側がどういう風にコントロールするのかを考えておくべきだ。番組制作のあり方に問題があったのではないか」という意見があった。
一方で「安倍元首相の襲撃事件を選挙前に報道した他の番組と比較して偏りがあるといえるだろうか」「特定の政党に投票を促すと認められる明示的な発言があったとまではいえないのではないか」「この番組が実際に投票行動を左右したかどうかを認定することは難しいのではないか」「銃撃事件のインパクトを考えると、週に1回編成されている番組が、その週を逃すと時期を逸するという気持ちになるのは分からなくもない。かなりレアな出来事に関して投票日当日に報道したということであれば、再発性は低いのではないか」という声があがった。
その上で、当該番組のみを取り上げて政治的な内容の番組に踏み込み具体的な判断を示すと、その判断が拡大解釈を招き、今後放送局が政治問題を伝えるにあたっての足かせになる恐れがあることに加え、当該番組が選挙についての報道・評論に関する番組とはいいがたく、他党の代表者の映像も含まれており、放送基準に照らして選挙の公正さや政治的公平性の問題として取り上げることは困難であるとして、本件番組については、委員から厳しい意見が出たことを議事概要に掲載して注意を喚起した上で、今回で討議を終了し、審議の対象とはしないとの結論に至った。

4. 8月に寄せられた視聴者意見を議論

8月に寄せられた視聴者意見のうち、ワイドショー番組などで旧統一教会に関連する様々な報道についての多様な意見や、情報番組で福島原発の処理水放出に関するコメンテーターの発言に対して批判的意見が寄せられたこと、宗教法人による悪質な霊感商法が社会問題となる中、霊能力者を自称する人物を番組出演させるのは不適切ではないかという意見があったことなどを事務局が報告した。

以上

第308回放送と人権等権利に関する委員会

第308回 – 2022年9月

「ペットサロン経営者からの申立て」ヒアリングを実施…など

議事の詳細

日時
2022年9月20日(火)午後3時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」ヒアリング及び審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを行った。特に犬の死亡の経緯について詳しく話を聞いた。終了後、本件の論点を踏まえ審理を続け、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を確認した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

3.「判断ガイド2023」体裁について

2023年発行予定の「判断ガイド2023」のウェブ上での体裁などについて、事務局から報告した。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

以上

2022年9月9日

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は9月9日午後1時30分からBPOで行われた。委員会から小町谷委員長、
高田委員長代行、西土委員、井桁委員の4人が出席し、NHKからは専任局長ら3人が出席した。
まず小町谷委員長から、NHKの報告等は字幕が誤っていたというトーンでまとめられているが、委員会は字幕の付け間違えという考えは取っていない。考えていただきたいのは、本件放送が視聴者に何を伝えたかということだ。五輪反対デモは確固たる信念を持った者が集まって行われているのではなく、主催者が金銭で参加者を組織的に動員し、主催者の意向に沿って行動させているという誤った印象を視聴者に与えることとなったと考える。なぜ、このような事態が起きたのか。委員会は取材、編集、試写の各段階に問題があると判断するに至ったとし、委員会決定に沿って問題点を説明した。
井桁委員は、重大な放送倫理違反と判断した理由について、単なる過失を超えていること、放送の影響が大きかったことの2点を挙げて説明した。コロナ禍での五輪開催という、国民の議論を二分するような大きなイベントに関して、その反対デモという一方当事者の信用や評価を傷つける結果となったことは否定できないと述べた。
高田委員長代行は、男性が五輪反対デモには行かないんだと繰り返して発言しているのにもかかわらず、なぜ、行くかもしれないといったようなことが番組のメインとして扱われることになったのか。一種の思い込みの暴走みたいなものに、なぜストップが掛けられなかったのか、非常に残念であり、疑問だと述べた。
西土委員は、国民が知りたいと思う社会的出来事に対する放送人の関心があって初めて、放送人の行動を規律する放送倫理が活きてくると思う。しかし、本件放送関係者はデモに対する関心が薄く、放送倫理違反に至ったということになる。本件放送は放送倫理の適用の在り方を検討する以前の問題を提起しているのではないか。その意味で、放送倫理を意識する上での条件を見直すべきことを問いかけているように思うと述べた。
これに対してNHKは、「指摘を真摯に受け止める」「取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者の信頼に応えられる番組を制作してまいりたい」と述べた。

その後、午後2時30分からオンライン形式による記者会見を開き、委員会決定を公表した。記者会見には57社118人が参加した。
はじめに小町谷委員長が、本件放送が視聴者に何を伝えたのか、何が問題だったのか、委員会決定に沿って説明し、放送倫理基本綱領及びNHK放送ガイドラインに基づき、重大な放送倫理違反があったと判断したと述べた。そして、従来、委員会が取り上げる事案は経験の少ないスタッフが関わるものが多かったが、最近は他局も含め、中堅スタッフが中心になったケースが散見される。中堅スタッフに何らかの問題があるとすると、若手スタッフの育成を担うことができないということになる。すると、全体として、放送の質が下がっていく可能性があり非常に危惧するところだ。そういうことのないよう、ぜひ、取材の基本である事実確認を改めて徹底していただきたいと述べた。
続いて井桁委員は、本件放送は悪意に基づくものではないかという憶測を呼んでしまったことも否定できない。1つのイベントに対する意見を、一方的におとしめるような悪意があったのかもしれないと思われてしまった。そのように視聴者に誤信させてしまったという影響も無視できないと考えていると述べた。
高田委員長代行は、一番印象に残っているのは、ヒアリングの際に現場スタッフの方のほぼ全員がデモとか、いわゆる社会的活動に関心がないということを、あっけらかんと語っていたことだ。もともと関心がない、だから深く考えなかったと繰り返していた。放送番組を作る側の感度、意識の低さというか、そういう部分も今回の問題の背景にあったのではないかと思うと述べた。
西土委員は、ある研究者の言葉(※)を借りるなら、「あるテーマのための集会に自らの身体を投入するという判断には、相当の決意」が必要なはずだ。五輪反対デモのように、政府の政策に、ある意味で反対する。そのために「自らの身体を人々の前に投入することは、何らかの損害を被るリスクを高める」と私も思う。リスクがあるにも関わらず、あえて声を出している人々の尊厳を傷つける結果となってしまった重大さをNHKは噛みしめていただきたいと述べた。
記者からは、委員会決定の付言:字幕問題に限定されるべきではなかった、について質問が重なった。「NHKが字幕問題に収れんしてしまった原因をどう考えるのか」という問いに対して小町谷委員長は、「まず、委員会は放送局の自律を支援するという立場にある。委員会が報告書の提出を依頼する前からNHKは報告書の準備を進めていた。そういう自律的な動きは尊重したい。ただ、委員会はNHKの報告書とは違う視点で本件を見たということだ。NHKの報告書がどうしてそうなったのか、私たちはそれを追及する立場にはない」と答えた。
「単なる字幕の付け間違いという問題ではないということだが、どういう問題だと認識しているのか」という質問に対して高田委員長代行は、「NHKの報告書と委員会決定を見比べるとわかると思うが、NHKの報告書には、五輪反対デモについての発言ではないものを、五輪反対デモのものとして編集したとか、そういったところは強く書かれていない。あるいは、男性は2時間ほどの取材の中で、カメラが回っている取材の中では、一貫して五輪反対デモには関心がない、自分は行かないということを言い続けたというところはNHKの報告書からは十分に読み取ることができない。しかし、委員会は検証の結果、そういう判断をしたということだ」と述べた。
その他の質問は、事実関係の確認に関するものが多かった。

(※)毛利透「集会の自由―あるいは身体のメッセージ性について」毛利編集『人権Ⅱ』(信山社、2022年)244頁以下

以上

第43号

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見

2022年9月9日 放送局:NHK

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
委員会は、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。

2022年9月9日 第43号委員会決定

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目 次

2022年9月9日 決定の通知と公表

通知は、2022年9月9日午後1時30分からBPOで行われた。
また公表の記者会見は、午後2時30分からオンライン会議システムを使用して行われ、委員長および担当委員が委員会決定の説明と質疑応答を行った。
会見には57社118人の参加があった。詳細はこちら。

2022年12月9日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】

委員会決定 第43号に対して、当該のNHKから対応と取り組みをまとめた報告書が2022年12月8日付で提出され、委員会はこれを了承した。

NHKの対応

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目 次

  • 1) 委員会決定の放送対応
  • 2) 放送現場への周知
  • 3) 経営委員会・放送番組審議会への報告
  • 4) 放送倫理委員会の開催
  • 5) コンテンツ品質管理連絡会の実施
  • 6) BPO 放送倫理検証委員会との研修会
  • 7) 再発防止に向けて

2022年8月に視聴者から寄せられた意見

2022年8月に視聴者から寄せられた意見

旧統一教会関連の報道、ドラマの中での反社会的勢力の描き方、バラエティー番組への「霊能力者」の出演などに意見が寄せられました。

2022年8月にBPOに寄せられた意見は1,548件で、先月から1,195件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール81%、電話17%、郵便・FAX各1%。
男女別は男性44%、女性17%で、世代別では40歳代27%、50歳代22%、30歳代21%、60歳以上14%、20歳代11%、10歳代1%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、8月の送付件数は618件、54事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

旧統一教会関連の報道、ドラマの中での反社会的勢力の描き方、バラエティー番組への「霊能力者」の出演などについての意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は27件、CMについては15件でした。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は71件で、前月から68件減少しました。
今月は「表現・演出」が17件、「要望・提言」が10件、「性的表現」と「編成」が、それぞれ6件ずつと続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる報道について。法令違反や反社会的行動があれば当然批判されるべきだが、エスカレートする報道に影響されて、信教の自由を尊重してきた視聴者の気持ちに、いささかでも変化が生じないかと心配。

  • 旧統一教会の記者会見について。さまざまな問題が指摘されている教団の主張を、生中継でそのまま放送したことに若干の懸念を持った。「教団の言い分」であることを明示して視聴者の注意を喚起してもよかったのではないか。また、脱会したばかりの元信者に影響を及ぼすのではないかと気になった。

  • 旧統一教会問題の追及を継続してもらいたい。政治家との癒着によって、旧統一教会のさまざまな問題が放置されていたのであれば許しがたいと感じる。

  • ある政治家を名指しして、事務所のスタッフに旧統一教会の関係者がいると、コメンテーターが発言していた。事務所スタッフの人数は限られているだろうから特定は不可能ではあるまい。信仰はきわめてセンシティブな個人情報であり、番組で暴露しようとする言動は不適切かと思う。

  • 家庭連合の仲間は報道によって仕事に行きづらくなり、学校でイジメにあい、あるいは人間関係が崩壊するなどしている。ワイドショーなどでの出演者の誤った発言による不利益の責任は誰が取るのか。

  • 旧統一教会の反社会的な活動はもちろん報じるべきだが、安倍元首相が被害者であるということを忘れてはならない。また、旧統一教会の構成員にも日本国民である限り参政権は認められている。報道各社が「報道の自由」を濫用していると感じる。

  • 東京渋谷区で起きた女子中学生による殺人未遂事件で、被害者が路上に倒れている映像が繰り返し放送された。現場映像の重要性は理解できるが、刺された直後の映像を何度も見ていると恐怖心や不安が募るし、被害者やその関係者の心情を傷つけるのではないかとも思う。事件に遭遇した一般の人がスマホなどで撮影した映像、特に視聴者への刺激が強い映像の使用については冷静、慎重であってほしい。

  • 自治体の指定した避難場所が自宅より氾濫箇所に近かったり、避難場所まで行く手段がなかったりなど、どのように行動すべきか迷うことがある。被災現場のローカル局は、地元の地形や道路事情などに詳しいはず。「避難してください」という呼びかけを繰り返すだけでなく、安全な場所はどこか、利用できる移動手段は何かといった、実際の避難行動に役立つ具体的できめ細かな情報を伝えてほしい。

  • ラジオの情報番組のコメンテーターが新型コロナ政策に関する東京都知事の発言について「バカじゃないの」、「人間のクズだね」などと侮辱していた。パーソナリティーの制止などもなし。番組中で行き過ぎたコメントなどがあればフォロー、修正するのがパーソナリティーや制作者の役割だと思う。

  • 情報番組のコメンテーターが福島第一原発の処理水海洋放出について「環境に与える影響が非常に大きい」と発言したことに驚いた。この問題についてはIAEAが国際基準に照らして問題はないという結論を出している。IAEAの見解に反論するのであれば科学的根拠をしっかり示して主張すべきだし、そうではなくて科学とは異なる観点から論じたかったのであれば、もう少し丁寧に言葉を尽くして説明すればよかったと思う。

  • 内閣改造の際、大臣に内定したと分かった人の名を、ひとりずつ速報する必要はあるのだろうか。ちょうどその時間帯に、記録的短時間大雨情報など警戒が呼びかけられている地方があった。組閣速報により気象情報への注意がそれてしまうのではないかと気になった。

  • 「使用済みのマスクを売ります」という女性を取材していた。コロナ禍での生活の実情を映し出した企画だったが、売る側の女性だけではなく、買う側の男性を追跡して取材すれば、さらに問題を掘り下げることができたと思う。買い手がいるから売買が成立するという側面にも触れてほしかった。

【バラエティー・教養】

  • 旧統一教会関連の報道でいわゆる霊感商法が取り沙汰される中、"心霊現象"を扱うバラエティー番組に、過去に相談者の不安をあおったとして損害賠償命令を受けている"霊能力者"を起用し続けているのは不適切。この人物は自身のウェブサイトで番組出演を自分の宣伝のように利用している。放送局が被害の一因を作ってはいないか。

  • 建設重機でビールのジョッキをつかんで人の前に置いたり、焼肉をつかんで人の口元まで近づけたりしていた。ビールや焼肉を提供される側の出演者にはヘルメットなし。安全管理の意識が低すぎるように思う。

  • 制限時間以内に止めないと小麦粉の入った風船が破裂して粉まみれになる装置の作り方と破裂の様子を紹介していた。粉塵爆発の可能性がある大変危険な装置ではないのか。

  • アニメのキャラクター「妖怪人間」に似た人がいるという視聴者の情報に基づいて、その人物を捜すという企画。人の容姿を好奇心の対象にする発想に違和感を覚えた。また、捜し当てた当該人物に取材の同意を得る際に、「妖怪人間」と表現していることなど企画の細部をきちんと説明したのか疑問が残った。その点についてもう少し具体的な説明を番組内で行ってもよかったと思う。

  • カルガモ親子の"引っ越し"に密着、という企画を放送していた。カメラマンをはじめスタッフが大勢で追いかけたことは、カルガモにとって大きなストレスになったのではないかと思った。カルガモはパニックを起こしていたかもしれない。離れたところから静かに見守るべきだと考えるが、もし、今回の番組のような形で密着するのであれば、子カルガモが溝に落ちたときには助けてやるなどしてもよかったのではないだろうか。

【ドラマ】

  • ドラマで、反社会的勢力から不当な要求を受けている被害者を、弁護士が「なすすべがない」と突き放し、その後被害者が警察に相談したかどうかは描かれなかった。また、いわゆるねずみ講に加担してしまった登場人物が、契約解除の申し出を拒否され、その場で暴力に訴えるなど、トラブルに遭った時の対処の仕方について、視聴者を惑わせる可能性があるのではないかと心配になった。また、結婚相手とその家族の経歴や資産状況を細かく調査したという、いわゆる"身上調査"について、当たり前のことのように描かれていたことに違和感を覚えた。

【その他】

  • 夏休み中は、子どもが普段より遅くまでテレビを見ている。美容整形などのCMの放送については、夏休み期間という事情を考慮してほしい。

  • 地方でテレビを見ていると、全国ネットの番組が最後まで放送されずに終わってしまうことがよくある。できれば最後の部分も見たい。何とかならないだろうか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、昭和の時代の実写映像の中に教師がパンツ一枚の生徒を背後から竹製の物差しでたたくシーンがあり、「愛のムチ」と紹介された。未成年者に対する暴行でしかない映像を扱うにあたっての配慮が不十分だ。

  • バスや鉄道を乗り継ぐバラエティー番組で、自転車で走行中に「止まれ」の標識が見えるのに一時停止しなかったり、安全確認しないまま横断歩道を渡ったりする場面があった。子供が視聴する時間帯の放送で、堂々と交通法規に違反するのはいかがなものか。

  • バラエティー番組で「熱さ我慢対決」として、蒸し器から出したてで熱々のメガネや帽子、Tシャツをいかに素早く身に着けるかを競わせていた。芸人たちが熱さに耐えながらやる様子を面白がる趣旨だ。子供が真似するかどうかは別にしても、何らかの悪影響があるだろう

【「要望・提言」】

  • 週末を使ったチャリティー放送に、私の孫たちは毎年のように、貯金しては寄付している。集まった金額は公表されるが、使途の詳細は明かされない。募金したお金がどこにどう使われているのかを明確に出してほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • 夜8時からのバラエティー番組でお笑い芸人にドッキリを仕掛けるコーナーがあり、下着姿のセクシーな女性が喘ぎ声を上げながら悶えるシーンが、繰り返し放送された。子供もまだ起きている時間帯に、このような内容は非常に不適切だと感じた。

  • 朝の情報番組の中で男性芸人が、おすすめの商品をフリップに手書きして紹介する際に、著名な清涼飲料の商品名(アルファベット)を、ボケでわざと一文字間違えて、アダルトサイトの名称を書き、ネタにした。夏休み中で、子供も見ている時間帯に流す内容ではなく、不適切なものだ。よく考えてほしい。

【「編成」に関する意見】

  • 23時台放送の連続ドラマを、まだ夏休み中なので遅い時間まで起きて家族で見ていたら、突然怖い映像が連続してあり、わが子がショックで夜眠れなかった。23時台でも起きている未成年者は多いので、このような映像のドラマは夜中にやってもらいたい。