第96回 放送倫理検証委員会

第96回–2015年9月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』ほかを審議…など

第96回放送倫理検証委員会は9月11日に開催された。
新たに岸本委員が就任し、今回から出席した。
"出家詐欺"の報道について審議している、NHK総合の『クローズアップ現代』とその基になった『かんさい熱視線』について、担当委員から意見書原案が提出された。内容や表現についてさまざまな意見が出され、次回委員会に修正案を提出して、意見の集約を目指すことになった。
韓国での街頭インタビューの翻訳テロップと吹き替え音声が一部違っていたフジテレビの『池上彰 緊急スペシャル!』について、討議を継続した。誤って編集された映像を正しい映像に差し替えた番組が8月末に再放送され、誤りの起こった経緯が的確に分析された報告書も提出されたことから、実質的な訂正放送も行われ、放送の自主的自律的な是正がほぼ完全になされているので審議入りの必要はないと判断した。この報告書は他の放送局の参考にもなることから、当該局の了承を得てホームページなどで公表することになった。
テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』で使用された大阪都構想のニュース映像とそれに付されたテロップ等が、政治的公平性を欠くとして自民党から抗議を受けた事案は、当該局から最終報告書が提出された。局はお詫びをホームページに掲載し、謝罪した政党側から新たな動きもなく、再発防止策もまとまっていることから、討議を終えることになった。

議事の詳細

日時
2015年9月11日(金)午後5時~8時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)は、寺院で「得度」の儀式を受け法名を授けられると、家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用した"出家詐欺"が広がっていると紹介した。
この番組で、多額債務者に"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張しているのに対して、当該局は「事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないと判断したが、『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」とする報告書を公表している。
委員会では、番組関係者へのヒアリングやこれまでの議論を踏まえた意見書原案が、担当委員から提出され、出家による改名の相談場面の取材・制作の手法にどんな問題があったのかなどについて、2時間近い意見交換や議論が行われた。その内容を盛り込んだ修正案を担当委員が作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。

2.韓国での街頭インタビューの翻訳が一部間違っていたフジテレビの日韓問題番組『池上彰 緊急スペシャル!』を討議

フジテレビは、6月5日の情報番組『金曜プレミアム 池上彰 緊急スペシャル!』で、韓国での街頭インタビューのうち、男女2人分あわせて約10秒間にわたって映像の韓国語音声と異なる日本語翻訳テロップと吹き替え音声を放送していたことが分かり、ホームページなどでお詫びした。
委員会は前回の議論で、当該局の報告は、編集上のミスが重なった経緯などが詳細に検証されていると評価する一方で、局が存在すると主張している、日本語翻訳と一致する映像が実際に存在するのかという視聴者の疑問は解消していないなどとして、討議を継続していた。
当該局は8月29日、この番組を首都圏ローカルで再放送し、問題となったインタビューについて、字幕は本放送のまま編集の際誤って選択された映像を正しい映像に差し替え、韓国語が聞き取れる形で紹介した。この音声と字幕が合致することは、委員会が独自に依頼した通訳によって確認された。
委員会は、ミスが起きた経緯の的確な検証や再発防止策が他の放送局の参考になるとして、当該局に報告書の公表への協力を依頼したところ了解が得られ、固有名詞などを修正した公表用の報告書が提出された。
当該局が自主的自律的に行った事実上の訂正放送ともなる再放送により「放送の誤りを放送で正した」ことや、報告書のホームページなどでの公表に同意が得られたことを総合的に判断して、委員会は審議入りしないことを決めた。

【フジテレビ「『池上彰 緊急スペシャル!』の報告書】

フジテレビから公表の了解が得られた「『池上彰 緊急スペシャル!』インタビュー映像誤使用問題に関する検証および再発防止策」は、放送倫理検証委員会の川端委員長の前文を付して、2015年10月6日、ホームページ上に公表した。

pdf 公表にあたって – 委員長前文
pdf フジテレビ – 「『池上彰 緊急スペシャル!』インタビュー映像誤使用問題に関する検証および再発防止策」

3.既得権益問題をめぐる映像使用について政党から抗議を受けたテレビ大阪の情報番組『たかじんNOマネーBLACK』を討議

テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』(5月30日放送)で、在日外国人のゲストのひとりが「日本人は怠け者で既得権益を守りすぎる」と指摘した際に、大阪都構想のニュース映像が流れた。「たとえ社会の発展や活性化につながるものでも」とのナレーション部分に橋下大阪市長の映像が約4秒間、「既得権益のために政治が利用されてしまっているのが今の日本の姿」とのナレーション部分には自民党大阪市会議員団幹事長の映像が約6秒間、テロップとともに使われていた。
自民党側の抗議を受けて、当該局は自社ホームページにお詫び文を掲載し、自民党側に謝罪した。一方、自民党側からは議員団幹事長名で、委員会あてに「政治的公平性を欠く映像使用」だとする文書が届いた。
当該局の最終報告書によると、社内に調査部会を設けて検証した結果、担当ディレクターの思いつきで映像を使ったこと、放送前のチェック段階で疑問を指摘する声が複数あったにもかかわらず修正には至らなかったことなどが判明したという。そして、再発を防ぐため、社内あげての研修会を今秋実施すること、注意が必要な社内情報の共有化を徹底すること、視聴者にお詫びする際のガイドラインを作成することなどを決めた。
委員会は、報告書にはまだ十分とは言えない部分が残るものの、再発防止策がまとまり、お詫びも既になされていて、自民党側から更なる抗議などの動きもないことから、討議を終えることにした。

[委員の主な意見]

  • ゲストの在日外国人が大阪都構想については何も言及していないのに、そのニュース映像を使用し、自民党側を「既得権益にしがみつく怠け者」であるかのように放送したのは、名誉毀損的な表現として問題があった。十分に反省して今後の教訓にしてほしい。
  • 放送前の社内チェックで問題を指摘する声がありながら、なぜそれを反映させることができなかったのか。今後、注意を喚起すべき声が出た時に、それを具体的にどのように共有化するのか。報告書には、まだ十分とは言えない部分もあるので、きちんと議論して詰めてもらいたい。
  • ホームページに掲載されたお詫び文は説明不足で、視聴者や関係者に何を謝っているのかよく分からなかった。なぜそうなったのかをさらに検証してほしいし、このようなお詫び文にすべきだったという実例を、委員会に報告してほしかった。
  • 当該番組は、この問題が発生する前から、6月で終了することが決まっていたということだが、政党から抗議があったから打ち切ったと誤解されるおそれもあるのではないか。その経緯について、報告書にきちんと記載してほしかった。

以上

第224回放送と人権等権利に関する委員会

第224回 – 2015年9月

自転車事故企画事案の審理入り決定、
ストーカー事件再現ドラマ事案のヒアリングと審理、
ストーカー事件映像事案の審理、佐村河内氏事案2件の審理、
出家詐欺事案の審理、STAP細胞事案の審理…など

自転車事故企画事案を審理要請案件として改めて検討し、審理入りを決めた。ストーカー事件再現ドラマ事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。ストーカー事件映像事案を審理し、佐村河内守氏が申し立てた2事案の「委員会決定」修正案を検討、STAP細胞報道事案の審理に入った。

議事の詳細

日時
2015年9月15日(火)午後4時~10時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.審理要請案件:「自転車事故企画に対する申立て」

上記申立てについて前回に引き続き審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビが本年2月17日にバラエティー番組『カスペ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」と題する企画コーナー。同コーナーでは冒頭、自転車との衝突事故で母親を亡くした東光宏氏が自転車事故の悲惨さを訴えるインタビューが実名で流れた後、「事実のみを集めたリアルストーリー」として、14歳の息子が自転車事故で小学生にケガをさせた家族の体験を描いた再現ドラマを放送した。再現ドラマは、この家族が「被害者」弁護士との示談交渉の末に1500万円の賠償金を払ったが、実はこの小学生は意図的にぶつかってきた「当たり屋」だったという結末だった。
この放送に対し、インタビューを受けた東氏が7月5日付で委員会に申立書を提出。「私に対する事前取材にあたって、このような当たり屋がドラマのメインとして登場することについて、全く説明がなかった」としたうえで、番組冒頭でコメントした申立人についても、「『実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ』との誤解を視聴者に与えかねない状況にあり、私の名誉ないし信用が害され、犯罪被害者としての尊厳が害された」と訴えた。
申立書はまた、「私のインタビュー映像が、交通犯罪被害者および遺族を愚弄し冒涜する低俗な番組の前ふりに利用された」と主張。1500万円の賠償金について、「交通犯罪の被害者が、あたかも非常識な高額の賠償金を請求しているかのような間違った印象を与えかねない」、「本件番組は勝手な推測に基づく虚偽放送に当たる」等として、放送内容の訂正報道と文書による謝罪および訂正・謝罪のホームページ掲載を求めている。
これを受けてフジテレビは7月24日、本件申立てに対する「経緯と見解」書面を委員会に提出し、申立人のインタビューはあくまで当該コーナーの導入部分で、「自転車事故の悲惨さを実例で示し、視聴者の問題意識を高めた上で再構成ドラマに入り込んでいくことを目的」に放送したと主張した。そのうえで、「ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない。すなわち、再構成ドラマと申立人のインタビューの内容となった母親が被害者となった事件に関連性はなく、登場人物を含む設定の内容も類似性が全くない。『申立人があたかも当たり屋である』という受け取り方を視聴者がするとは全く考えていない。」として、番組による申立人の名誉・信用の侵害はないと述べている。
賠償金額については、「免許を必要とせず、手軽に利用できる自転車が時として甚大な被害を与え、利用者が重大な事故の加害者となり得る」ということを強く視聴者に印象付けるため慰謝料やケガの治療費、逸失利益等を加算して設定したもので、「非常識な」金額ではないと主張している。
またフジテレビは、申立人が「当たり屋」メインのドラマについて事前に説明が全くなかったとしていることについて、担当プロデューサーが申立人に台本の提供を申し入れたが、申立人がこれを断ったため、「結果として説明するタイミングを失った」と釈明している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回定例委員会(10月20日)より実質審理に入る。

2.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案のヒアリングと審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求める申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
この日の委員会では、申立人と被申立人のフジテレビから個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聴いた。
申立人は、「(被害者側のみの)一方的取材で、ひどい内容の放送だった。私がストーカーをしろなんて指導したことはない。私は首謀者でもなんでもない」と述べるとともに、再現ドラマで申立人とみられる女性がストーカー被害者のロッカーに大量のガラス片を入れたことについて、全く事実でないと主張。また番組が「一部再構成というが、一部がどこまでかテレビを見ている人には分からない。会社の人はテレビで放送されたのだから事実であるという認識を持っている。(番組を見た人から)よくあんなことできるなと言われた。未だに挨拶を返してくれない人もいる。辛いし、悔しかった。本当に精神的苦痛を受けた。家族も同じだった」と訴えた。さらに被害者の取材映像や取材協力者から提供された映像にマスキング・音声加工が施されていたことについては、「(駐車場が)会社の人ならあの場所だって分かる」とする一方、事件が本件番組で放送されることを被害者らが事前に社内で流布したことに触れながらも、再現ドラマを見れば「会社の人は全部、私だって分かると思う」と、番組内容だけでも社内では申立人が特定可能だったと主張した。
一方フジテレビからは編成担当幹部ら4人が出席し、番組は「実際の事件を題材にしているが、それ以外の部分は、登場する方々が特定されないように改編している。その部分には常時『イメージ』というテロップを出しており、視聴者の方は認識できる」と説明。申立人らに取材しなかったことについても、被害者の身の安全・プライバシー保護のため「反対取材は不可能と考えていた」と述べた。また、再現ドラマで申立人とみられる女性を事件の"首謀者"としたことについて、「取材協力者から得た証言や取材内容、取材協力者と申立人の会話を録音したICレコーダーを聴いて判断した」、「100%真実をつきとめることがこの番組の目的ではない。取材をした人の証言に基づいて再構成」したと説明、また申立人がガラス片をロッカーに入れたとした根拠を問われ、「(被害者の)証言だけ」と答えた。このほか、被害者らが放送前に番組内容を社内に流布したことについて、「その事実を加味すれば、(申立人らが)特定されることは当然」としながらも、「放送自体によって人物が特定されることはないという認識で、また情報の流布については非常に予見ができないもの」として、「放送上の責任はない」と主張した。
ヒアリング終了後、委員会はその結果を踏まえて審理し、10月に第1回起草委員会を開くことを決めた。

3.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは前事案と同じ、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かる。車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「ストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張する申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは「番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今月の委員会では、再度、論点の整理と質問項目の精査が行われ、次回定例委員会でヒアリングを行うことを決定した。

4.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では第3回起草委員会を経て一部修正された「委員会決定」案を審理し、今月初めに行われた担当委員による耳鼻咽喉科の医師への聴き取りの結果が報告された。

5.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では、これまでの検討で「委員会決定」案はほぼ固まっていることを確認し、前項の「謝罪会見報道に対する申立て」事案と同日に通知・公表を行う方針を決めた。

6.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
NHKは「収録した映像と音声は、申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
この日の委員会では、双方からの書面やヒアリングの結果をもとに第1回起草委員会を経て提示された「委員会決定」案の検討に入った。委員会の判断のポイントについて担当委員が説明し、各委員が意見を述べた。今後、第2回起草委員会を開いてさらに修正した決定案をまとめ、次回委員会に諮ることになった。

7.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は、人権侵害、プライバシー侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」として、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
また、論文に掲載されている画像やグラフに関し、「何らの科学的説明もないまま、『7割以上の不正』があったとする強いイメージを視聴者に与える番組構成は、強い意図をもって申立人らを断罪した」と主張。番組が申立人に無断で実験ノートや電子メールの内容を放送したことについては、著作権侵害やプライバシー侵害、通信の秘密に対する侵害行為にあたると訴えている。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」と主張した。
さらに、画像やグラフに関する申立人の主張に対して、「専門家が疑義や不自然な点があると指摘した事実を紹介したに過ぎず、NHKの恣意的な評価が含まれている訳でもない」と反論。申立人の実験ノートや電子メールの内容を放送したことについては、「本件番組において紹介することが極めて重要なものである」として、違法な侵害にはあたらないと述べている。
今月の委員会では事務局が双方の主張を取りまとめた資料を説明した。次回委員会では、申立人の「反論書」、被申立人の「再答弁書」の提出を受けて審理を進める予定。

8.その他

  • 10月5日に山形で開催する県単位意見交換会について、坂井眞委員長、市川正司委員長代行、城戸真亜子委員が出席することや、参加局との事前打合せの状況について事務局から報告した。

  • 系列単位意見交換会を11月24日にTBS系列の北信越4局を対象に金沢で開催することになり、事務局から概要を説明した。同意見交換会には、坂井眞委員長、二関辰郎委員、林香里委員が出席する。

  • 本年度中に福岡で開催する地区単位意見交換会(九州・沖縄地区)について、各委員の日程調整の結果、2月上旬に開催する方向で準備に入ることになった。同意見交換会には9人の委員全員のほか、濱田純一BPO理事長が出席する予定。

  • 次回委員会は10月13日に臨時委員会を開催する。10月は20日の定例委員会と合わせ2回開催となる。

以上

2015年9月15日

「自転車事故企画に対する申立て」審理入り決定

放送人権委員会は9月15日の第224回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビが本年2月17日にバラエティー番組『カスペ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」と題する企画コーナー。同コーナーでは冒頭、自転車との衝突事故で母親を亡くした東光宏氏が自転車事故の悲惨さを訴えるインタビューが実名で流れた後、「事実のみを集めたリアルストーリー」として、14歳の息子が自転車事故で小学生にケガをさせた家族の体験を描いた再現ドラマを放送した。再現ドラマは、この家族が「被害者」弁護士との示談交渉の末に1500万円の賠償金を払ったが、実はこの小学生は意図的にぶつかってきた「当たり屋」だったという結末だった。
この放送に対し、インタビューを受けた東氏が7月5日付で委員会に申立書を提出。「私に対する事前取材にあたって、このような当たり屋がドラマのメインとして登場することについて、全く説明がなかった」としたうえで、番組冒頭でコメントした申立人についても、「『実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ』との誤解を視聴者に与えかねない状況にあり、私の名誉ないし信用が害され、犯罪被害者としての尊厳が害された」と訴えた。
申立書はまた、「私のインタビュー映像が、交通犯罪被害者および遺族を愚弄し冒涜する低俗な番組の前ふりに利用された」と主張。1500万円の賠償金について、「交通犯罪の被害者が、あたかも非常識な高額の賠償金を請求しているかのような間違った印象を与えかねない」、「本件番組は勝手な推測に基づく虚偽放送に当たる」等として、放送内容の訂正報道と文書による謝罪および訂正・謝罪のホームページ掲載を求めている。
これを受けてフジテレビは7月24日、本件申立てに対する「経緯と見解」書面を委員会に提出し、申立人のインタビューはあくまで当該コーナーの導入部分で、「自転車事故の悲惨さを実例で示し、視聴者の問題意識を高めた上で再構成ドラマに入り込んでいくことを目的」に放送したと主張した。そのうえで、「ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない。すなわち、再構成ドラマと申立人のインタビューの内容となった母親が被害者となった事件に関連性はなく、登場人物を含む設定の内容も類似性が全くない。『申立人があたかも当たり屋である』という受け取り方を視聴者がするとは全く考えていない。」として、番組による申立人の名誉・信用の侵害はないと述べている。
賠償金額については、「免許を必要とせず、手軽に利用できる自転車が時として甚大な被害を与え、利用者が重大な事故の加害者となり得る」ということを強く視聴者に印象付けるため慰謝料やケガの治療費、逸失利益等を加算して設定したもので、「非常識な」金額ではないと主張している。
またフジテレビは、申立人が「当たり屋」メインのドラマについて事前に説明が全くなかったとしていることについて、担当プロデューサーが申立人に台本の提供を申し入れたが、申立人がこれを断ったため、「結果として説明するタイミングを失った」と釈明している。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回定例委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2015年8月に視聴者から寄せられた意見

2015年8月に視聴者から寄せられた意見

首相の戦後70年談話を報じた番組に対し、はじめから批判ありきの姿勢は如何なものかなど、様々な意見。大阪の中1死体遺棄事件で、容疑者のニヤけた顔を何度も放送したことに対し、違和感を覚えるといった意見。関東のサメ騒動の報道で、必要以上に恐怖心をあおっていたなどの意見。

2015年8月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,328件で、先月と比較して174件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール76%、電話22%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性74%、女性24%、不明2%で、世代別では30歳代27%、40歳代27%、20歳代17%、50歳代14%、60歳以上11%、10歳代4%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は591件【45局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、20件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

総理の戦後70年の談話が発表されたが、それを報じた番組に対し、はじめから批判ありきの姿勢は如何なものかなどといった、様々な意見が寄せられた。
大阪の中1死体遺棄事件で、容疑者のニヤけた顔を何度も放送したことに対し、違和感を覚えるといった意見や、容疑者の職業をことさら強調しているとの批判の声が寄せられた。
関東の海岸のサメ騒動を扱った番組に対し、「人食い鮫」などといったテロップを出すのは、いたずらに恐怖心を煽るものではないかといった意見が寄せられた。
バラエティー番組とはいえ、犯罪を犯した人たちを出演させ、面白おかしく過去の出来事を紹介するのは、不謹慎だといった批判が寄せられた。
ラジオに関する意見は52件、CMについては61件あった。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は141件で、前月から44件増加した。
今月は、「視聴者意見への反論・同意」が38件と最も多く、次に「性的表現」が18件、「表現・演出」が17件、「危険行為」が12件と続いた。
「視聴者意見への反論・同意」は、アニメ番組に対する視聴者意見についての反論・同意、それぞれの意見が多く寄せられた。
「性的表現」については、アニメ番組に関して、一層の配慮を求める意見が目立った。「表現・演出」については、CMや番組宣伝に関する意見が多かった。
また、放送前の番組について、番組タイトルや番組宣伝での表現が不適切だとの意見も多く寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • この番組は以前、「首相の戦後70年談話は謝罪やお詫びなど4つのキーワードを継承しなければならない」と主張していた。今般の談話で4つのキーワードが盛り込まれ、また「次世代に謝罪する宿命を負わせてはならない」との文言があったが、批判を浴びせていた。批判ありきの姿勢が垣間見える。

  • 首相による戦後70年談話の内容を解説していた。画面の下のほうに"反省""お詫び"などのキーワードを表示し、その横には△印が並んでいた。この△印は一体何を意味するのか。○や×であれば各キーワードが盛り込まれたか否かの判定として理解できる。では△という微妙な判定は何だろうか。できればニュースを途中から見た人でもわかるように画面に△印の意味を明示してほしかった。

  • 首相が集団的自衛権について中国の脅威を例に答弁していたが、男性コメンテーターが「中国を引き合いに出すのは禁じ手だ。焦っている表れだ」などと発言していた。身近な脅威を説明したことが何故禁じ手であり、焦っているということになるのか。根底に集団的自衛権反対ありきの姿勢があるのではないのか。

  • 今日は広島の原爆投下から70年の日だが、記念式典の様子を伝える局は殆どない。それどころかある番組では"原爆投下"に触れることさえなかった。放送界全体がこのようなことでは子ども達が原爆について無知・無関心になってしまう。現に、若い人たちの何割かは「日本はアメリカに原爆を落とされた」ということを知らないそうだ。原爆投下は非人道的な行為として日本人が絶対に忘れてはならないことであり、マスコミにはそのために力をつくしてもらいたい。

  • 原爆忌のころになると特集が組まれ、被爆者の体験談などを放送する。被爆体験を伝えることはとても大切だが、そちらがメインになってしまい、開戦から原爆投下に至る経緯があまり取り上げられない。毎年、被爆者の悲惨な体験談はほぼ同じだ。マンネリそのもので、若い人たちに新たな発見や学びを提供するどころか、うんざりされかねない。原爆投下を被爆者側から「悲しく苦しい出来事」として感傷的に捉えるのではなく、一体何が原因であったのか、きちんと検証する必要がある。戦後70年という節目の今年こそ、それを期待している。

  • 日航ジャンボ機墜落から30年の企画放送の間に、画面の左上の小さい枠に映っている芸人のコメンテーターがずっと頬杖をついていた。腹立たしく、何様かと思った。社会にそれなりの影響を与えている自分を自覚してほしい。

  • 日航機事故から30周年の今日、各局は遺族が苦労したという情緒的な報道ばかりだ。事故当時は、亡くなった機長の妻に、機長の責任を追及するという馬鹿げたインタビューをした報道に憤りを感じた。そして一番重要な事故の原因については、当時の事故調査委員会が出した結論を鵜呑みにしただけの報道だった。事故の原因は、修理ミスによる隔壁の破損ではなく、同機のしりもち着陸事故による機体の歪みという説もあるそうだ。30年経った今でも、真の原因を追究することがメディアの役目だ。情緒的な報道はするべきではない。

  • 大阪府中1死体遺棄事件についての報道で、LINEのやり取りを全て公開していた。事件の詳細を報道することを目的としたのだろうが、個人の連絡のやり取りを、本人が亡くなり、なおかつ遺体が発見された直後にこうした形で報道することは如何なものか。報道の自由だけではなくプライバシーの保護という制限も必要なのではないか。

  • 大阪で起きた中1男女2人の死体遺棄事件を伝える際、容疑者の顔写真がふざけ過ぎている。残忍な事件の容疑者のニヤケタ顔やピースポーズなど見たくもない。しかもしつこいくらいに何度も使用していたが、何か意図があるのだろうか。

  • 寝屋川市中1男女遺体遺棄事件に関する情報の中で、容疑者の写真を何度もしつこく出し、アップにすることはとても気持ちが悪い。これに限らず殺人事件があると、マスコミは事件をおもしろおかしく捉えているように思える。BGMをつける過剰な演出にも悪意を感じる。マスコミにとって事件や事故で人が亡くなっても「ネタのひとつ」でしかないと、改めて感じた。

  • 私は福島県いわき市の住民だ。「寝屋川中1遺体遺棄事件」の報道は、容疑者の職業が「除染作業員」であること強調し「除染作業員」が犯罪者の集まりのような印象を与えている。事件と職業は何の関係もない。まじめに除染に取り組む地元の人は迷惑している。どうしても職業を必要とするなら「派遣作業員」「作業員」などで十分だ。

  • 茨城県沖合に出没したサメ騒動において、過剰な表現で必要以上に視聴者の恐怖心を煽っていた。安全対策をとっているにもかかわらず、繁忙期の海水浴場の集客を損ないかねない、風評被害を生む内容であった。沿岸で人が襲われていないのに、番組内で何度も「人食い鮫」と表現していた。適切な注意喚起の報道に努め、誤解のない情報を視聴者に提供することを強く要望する。

  • 女子高生が切り付けられる事件で、実際に切られている時の音声が入った映像が流れた。犯人は捕まっておらず、事件の解決に繋がるとも思えない映像だ。女子高生のただ悲痛な声は同じ女性として聞いていて不快だった。レイプ事件の音声かと思った程だ。しかも執拗に何度も流していた。衝動を持つ犯罪者を煽るような音声としか思えない。

  • 「土用の丑の日」に関して、ウナギの消費を煽る内容ばかり取り上げている。確かに土用の丑の日は昔から続く伝統だが、現在ウナギの数が減少しているのははっきりとしており、さらにはニホンウナギは絶滅危惧種となっているはずだ。ウナギの保護政策ではなく、どのように商売をしていくかという内容ばかりで、絶滅危惧などないかのようだ。あまりに滑稽だ。

  • 全国ニュースで、甲子園出場の新人選手について大きく取り上げている。1年生でレギュラーはすごいが、マスコミが異常に持ち上げて、過熱報道だとしか思えない。全国には他にも優秀な選手がいるにもかかわらず、彼にばかり集中している。高校生なのだから、平等に報道してほしい。

  • 「視聴者からの投稿」という動画や画像が多い。自然現象などを撮ったものであれば分かるが、事故現場や火事の現場、遺体を運んでいるところなどは、とても不快だ。動画サイトやニュース番組に売る為か、最近特に多くなってきた。局側がその動画を流すので、ますますみんながそういう場面を撮っている。局の放送姿勢が問われているのではないのか。

  • 猛暑やゲリラ豪雨の報道をする際に、海岸で過ごしている女性や公園の噴水などで遊んでいる幼児の水着姿を放送している。雨でずぶ濡れになって、場合によっては下着が透けている。またそれ以外でも性犯罪の報道などをする時に、イメージのような形で女性の脚を映したりする。このような映像は、肖像権侵害には当たらないのか。

  • 「お盆の帰省ラッシュ」の特集で、取材班が高速道路を走っていた。リポーターが中継していたが、この際、高速を走る他の車のナンバーが映っていた。一般車を映す時はナンバーにモザイクをかけるべきではないのか。

  • 車両暴走事故について、放送時点では被疑者の体調や精神状態などに関する情報が警察などから一切発表されていないにもかかわらず、司会者が「また脱法ハーブでしょうか」などと、憶測に過ぎない発言していたことは問題がある。

  • 乗用車が歩道に突っ込み、歩行者5人が死傷するという事故があったが、各局の報道で現行犯逮捕された医師が「てんかん患者」だったことを、ことさら強調しすぎている。私も「てんかん患者」だが、医師から治療をうけ、運転できる資格も持っている。そういったことをもっと明確に報道するべきで、いたずらに「てんかん」を煽るべきではない。一種の差別であり、車の運転は私にとって死活問題なのだ。自重をもとめる。

  • 桜島の噴火警戒レベルが高まったのを受け現地から中継をしていたが、冒頭でリポーターが爆笑しているシーンが映った。おそらく中継のタイミングを間違えたのだろうが、噴火は全く笑いごとではない。スタジオで「お見苦しい点がありました」と謝っていたが、放送を作る側に緊張感が足りないのではないのか。

  • 殺人事件の被害女性について、「全裸」であったという情報は必要なのか。ことさらそこを強調している場合もあり、不快だ。加害者のプライバシー保護に神経質なわりに、被害女性や被害女性の遺族に対する配慮に欠けているのではないのか。

【番組全般・その他】

  • 犯罪方法や前科、刑務所内生活をバラエティーとして扱うなど、極めて低俗だ。具体的な犯罪方法を紹介し、犯罪を助長する軽率な内容だ。犯罪には傷ついた被害者がいる。場合によっては人生が破壊され、生命にも関わっているはずだ。そのような被害者に対し、配慮がないにも程がある。ここ数年見た番組のなかで、もっとも不愉快な内容であった。

  • 刑務所はどうのこうのと聞く放送は、如何なものか。小さい時の家庭環境で仕方なく犯罪に走ったのであれば、100歩譲ってわからないでもないが、苦労もしないで楽な方の生き方をして、人間として犯していけない罪を何回も犯した人に「刑務所はどうでしたか」と聞くことは、公共の電波を使って流すべきではない。番組は何のメッセージを伝えようとしているのか。

  • 同性愛やトランスジェンダーに対する否定や偏見、無知をテレビで拡散することはやめてほしい。本来ならセクハラに該当するような質問を同性愛者やトランスジェンダーにぶつけていた。終始、同性愛やトランスジェンダーを一人の人間として見ず、笑われるべき存在であるかのように扱っていた。

  • クイズを出すお天気コーナーがある。しかしそのクイズが、お天気に関係ないことばかりだ。そのことで時間が費やされ、本来の天気予報が粗雑になっていた。最近はゲリラ豪雨などが発生しており、天気予報の詳細を知りたい。面白半分のコーナーは控えていただきたい。

  • ゲームショーで、入場に至るまで炎天下で長い行列待ちをするうち、熱中症により10人以上が救急搬送されたという話題を取り上げた。直接の原因ではないが、「主催者が会場入り口での手荷物検査の際、ペットボトルなどの飲み物を没収していた」と報じた。しかし、イベント主催者はネット上で「そのような事実はない」とはっきり否定しており、それに対してゲームショー参加者からの反論もないが、誤りならば速やかに放送で訂正すべきだ。

  • 画面を回すようなシーンがあり、画面を見ていると酔ったように気持ちが悪くなる。以前、他局のドラマでも、早く回転させるシーンがあったが、このような撮影方法は心身に影響がないのだろうか。

  • ニュースを見たかったのに番組表で確認したら、高校野球の中継が行われる予定になっている。平日のこの時間は多くの人が会社に行っているかと思われるが、それほど高校野球中継に需要があるのだろうか。また、今日は広島に原爆が投下された日でもある。私は広島平和式典についてのニュースが見たかったのに、通常のニュースは放送されない。私のようにスポーツに興味がない人もいるのだから、放送配分を勘案してほしい。

  • バラエティーというジャンルそのものが下品になったと思う。少なくとも昭和の芸人にパンツ1枚という芸風の人はいなかった。最近ではアイドルでさえ平気で下ネタを発言している。品位が低下しているのではないか。制作サイドの人間にエロとお色気の区別がついていない。芸人も体を張ることが人気につながると錯覚する風潮が生まれたのではないか。

  • あまりメジャーとはいえない「競歩」を取り上げ、女性選手と芸能人が競う企画を放送していた。今までじっくりとこの競技を見たことはなかったが、面白かった。次は、実際の競技を見てみたい。今回焦点を当てたことで、私のように「競歩」に興味を抱いた視聴者も他にいたのではなかろうか。とても良い企画だった。

  • バラエティー番組で芸人が吐くシーンが流れることが度々見られる。人が吐く姿は気分が悪くなる。特に食事時に流れるとこちらまで食欲が失せる。世の中には嘔吐恐怖症など精神疾患に悩まされる人もいる。放送の自粛を願う。

  • どこの局も同じような若いタレントが出演するトーク番組ばかりで、見る気にならない。昭和の人気芸能人たちもゲスト出演するような番組や、老若男女が共に見られるような番組、企画の面白さで見せる番組、うるさくない落ち着いた番組などを作ってほしい。子供の頃に見ていた番組は、必ず若い人向けのゲストと中高年向けのゲストが同じ番組に出演して、それぞれの見せ場を作っていた。

  • ラグビーのルール説明を行っている動画だが、ルール解説を行うことは、これからラグビーを始める子ども達には重要なことだと思う。しかし、なぜ「セクシー美女」と題してあのような恰好で行う必要があるのか。ラグビーワールドカップの日本開催で世界が注目する中で、あのような動画は残念でならない。

  • 男性芸人が女性タレントの家に押しかけ、勝手に部屋の中を物色する内容があり、男性芸人が女性タレントの下半身用下着を顔に近づけていて、気分が悪くなった。テレビ局は、誰もが俗にいう「下ネタ」を好きだという認識を改める必要がある。

【ラジオ】

  • その時の放送は「丁寧に敬語つけよう」ということで、とりあえず「お」や「ご」をつけてくれたらというようなことを、パーソナリティーの男性が言った。投稿者からのメールを読む時に、そのまま読んでいたら卑猥に聞こえる投稿をそのまま読んでいた。深夜放送でかつ生放送なので、「放送禁止用語」も無視している感じだった。とにかく最低だった。卑猥に聞こえる表現をそのまま流すことや、深夜だからいいという感覚で話すことは本当に止めてほしい。

  • パーソナリティーがよく卑猥な発言をする。今日の放送では冒頭、相手役の女性パーソナリティーに「オッパイもみたい」と連呼した。また、男性の局部をゴルフクラブに見立ててあれこれいやらしい話をしていた。昼間の時間帯にこういう話を聞かされるのは不快なので、やめてほしい。

  • コメンテーターの1人が安保関連法案に関して、アメリカの言いなりであることを「アメリカケツ舐め外交」と評し、その後も繰り返し同様の発言した。「アメリカ追従外交」と言うべきで、「ケツ舐め」は総理をおとしめる発言だ。公共の電波で使うべき言葉ではない。

【CM】

  • 女性が子どもを抱っこしながら、スマートフォンを操作するCMがあるが、如何なものか。本来、子どもとは愛情をもって接するものだ。片手で子どもを抱きながらスマホをいじるという、まるで"ついでに"子どもを抱くかのようだ。子どもの落下事故に繋がりかねないし、スマホのながら歩きの温床にもなる。

  • 昔ながらの玩具"黒ひげ危機一発"を真似たものが放送されている。「海賊が頭だけを出している樽に短剣を刺し、海賊を樽から飛び出させる」という遊びだ。この海賊役を"お父さん犬"にさせている。樽の外から短剣で攻撃され、お父さん犬はおびえて「やめてくれよ」と嘆願する。このCMに刺激され、真似をする者が出るかも知れない。動物虐待につながるのではないかと心配だ。

青少年に関する意見

【「性的表現」に関する意見】

  • 深夜帯のバラエティー番組の番組宣伝を夕方にしていたが、女性の水着を脱がせるシーンがあった。子どもが見る可能性がある時間帯に放送すべきではない。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 近年、特に深夜帯のアニメ番組で顕著だが、表現を自粛しすぎることで、本来の作品の魅力が落ちているように感じる。深夜帯の番組は子ども向けではない。子どもが見るのに適していないからといって規制を強化するのではなく、子どもの生活習慣を見直すことが大事なのではないか。

【「危険行為」に関する意見】

  • クライミングの日本代表である高校生を情報番組で取り上げた際、その高校生が出演するウェブCMを紹介していた。CMでは、学校に遅刻しそうな女子高生が素手で校舎をよじ登るという設定になっている。危険な行為であり、子どもが真似することも考えられる。

  • たき火の上を飛び越えようとした少年2人がぶつかってしまい、火の中に落ちる投稿動画を面白おかしく紹介していた。かなり危険な行為であり、本人たちもけがをしたと思われる。このような危険な行為を子どもたちに見せたくない。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 大阪府で起きた中学生遺体遺棄事件の報道で、被害者から家に泊めてほしいと言われて断った子どもを取材していた。顔は映していなかったが、音声はそのままであり、配慮が欠けていると感じた。いじめにつながる可能性もある。思春期の子どもへのインタビューを放送する際には、より慎重な配慮が必要ではないか。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 子どもと一緒にニュースを見ようとテレビをつけたところ、第二次世界大戦に関する番組が放送されており、映像加工をしていない死体の映像を見てしまった。通常であればニュースを放送している時間帯である。放送時間帯に配慮するか、映像を加工するなどの配慮をしてほしかった。

【「差別・偏見」に関する意見】

  • まだ放送されていない番組だが、番組タイトルや番組紹介では女子高生を無知だと決めつけているように感じる。年齢差別、性差別ではないか。