第078回 – 2003年7月
BPO(放送倫理・番組向上機構)発足とその後の状況について
苦情対応について…など
BPO(放送倫理・番組向上機構)発足とその後の状況について
7月1日のBPO発足後の状況等について事務局から以下のような説明があった。 「BPOがスタートして約2週間、視聴者からの意見・苦情はかなり増えている。放送について何かを言う場が出来たと受け止められているのではないか。BPOは、苦情処理等に当たって、放送局寄りとか反放送局の姿勢とかではなく、第三者性を追求していく必要があると考えている。来年3月を目途に各委員会のあり方を考えていくが、清水理事長も1日の記者会見で『テーマによって特別委員会の設置なども検討する必要がある』と話していた」
これに関連して委員から「放送人権委員会の審理で、放送倫理に比重をという方向性が議論されているが、一方、放送番組委員会の目的は”放送倫理のあり方について見解の発表、提言を行う”となっている。委員会相互の調整等も検討事項として踏まえておく必要がある」という意見があった。
苦情対応について
6月の放送人権委員会としての苦情対応について事務局から以下のとおり報告があった
◆件数 293件=内訳
- 人権侵害に関連する対応 6件
- 番組や局への苦情に対する対応 87件
- 業務や資料請求への対応 42件
- その他(一般苦情18件など) 158件
次に、7月の新体制(BPO)になってからの苦情対応について次のような説明があった。
「7月1日から委員会前日の14日までの苦情件数は770件、中でも2日は160件の苦情等が寄せられ、電話を取りきれない状態だった。この内、人権関係は一般的ケースも含めて33件だった。また、長崎の少年による幼児殺害事件については、『加害者少年の顔写真にモザイクをかけてまで放送する必要があるのか』といった意見や抗議が複数あった」
また、新たにまとまった斡旋解決2事案と苦情受理事案が報告された。
- 「リフォーム番組で悪質業者の烙印」との抗議=斡旋解決
前回の委員会で説明した事案。その後、当該局のプロデューサーと苦情申立人が話し合った結果、放送局が遺憾の意を表明、この映像は再使用しないことで合意した。本年度2件目の斡旋解決事案。 - 「ドラマの台詞で、ショートステイを”姥捨山”に喩えた」苦情=斡旋解決
父親を老人ホームで介護してもらっている男性から、「ドラマの台詞の中に”ショートステイ(老人ホーム)は姥捨山”という表現があった。放送局に差別ではないかと抗議したが、問題はないとの返事だった。放送人権委員会で何とかならないか」との苦情があった。当該局に苦情内容を伝えたところ、後日、苦情申立人から「担当プロデューサーとの話し合いで、その台詞の部分は再放送しないなど納得できる回答があった」と連絡してきた。当該局に確認した上で、本年度3件目の斡旋解決事案。 - 「離婚した前妻だけへの一方的取材で事実無根」の抗議=苦情受理
男性から「離婚した前妻が取材を受け、放送では離婚理由はドメスティック・バイオレンスと伝えていた。事実無根で、私への取材は一切なかった。局側に抗議したら『迷惑がかかったのなら申し訳ない』という程度の回答で納得できない」という苦情が寄せられた。当該局に内容を伝え、本年度5件目の苦情受理事案とした。
こうした報告に対し、委員から「放送人権委員会に苦情が伝えられると、それを知った当該局が苦情申立人との話し合いを促進する場合があるようだが、それはいいことなのか疑問だ」という意見があった。
苦情申立て検討案件
最近、事務局に寄せられた苦情・要望の中からいくつかを選んで検討・意見交換した。
ア)「性同一性障害」報道
性同一性障害を取り上げた番組に対し複数の苦情・抗議が寄せられた。「番組における不適切な表現によって、性同一性障害者として生きている自分たちの生活空間を根底から揺るがされた。障害当事者の人権を無視した放送に抗議する」と訴えている。
こうしたケースでは、申立ての資格はあるのかなどについて意見を交わした。主な意見は以下のとおり。
- 直接の当事者ではないが、広い意味では当事者か。
- 放送内容が性同一性障害者の社会的評価を低下させるようなものであったかどうかに関わってくる。そういう趣旨で申し立ててきたら、資格はないとは言えないと思う。
- 取材に応じた人は苦情を言っていないようだが、そのずれはどう考えたらいいのか。
- 差別一般は固定しづらいところがあると思うが、そういう意識がなくても結果としてその差別、そしてその集積としての構造が出来上がってきたというのは、社会の事実だから、そこには気を付けねばいけないと思う。
- これは、差別問題というより表現に対する不満ではないか。
イ)再検討要請案件
去年6月、高校教諭が痴漢容疑で逮捕されたニュースで、「学校名を実名で放送したのは生徒に対する教育的配慮に欠ける」と同校PTA会長から放送人権委員会に申し立てたがあったが、放送人権委員会は、”申立人は直接の利害関係人”との運営規則から判断して、PTA会長は申立人としての要件を欠くとして審理入りしなかった。この件に関連して、7月に新組織BPOの発足を新聞記事で知った当時のPTA会長から、「新組織では、この案件について何らかの対応が可能か再検討してほしい」との要請があった。
- あちこちで問題になっているケースだ。匿名だったらいいのかとなると、匿名は匿名でよその学校と間違えて噂が流れてしまうということもある。
- 放送局は、公共性とか事件の重大性などをすべて考慮に入れて判断し、実名か匿名かを決めている。それでもなおかつ問題が起こってくるということだ。
- 生徒のためにどう配慮するかは正に倫理の問題だ。各放送局が考えながらやっているとは思うが、局任せにしていて外れるところがあったら、こういう第三者機関が意見を表明することが必要かなと感じる。
この件については清水理事長と事務局で対応方を考え、後日委員会に報告することとした。
このほか、新聞等で報道された放送局の”やらせ問題”について事務局から説明があり、意見を交換した。
そ の 他
事務局からBPO規約と改訂放送人権委員会運営規則について説明・報告があった。 変更点は、「委員長と委員長代行の選び方を、従前の委員の互選から代行は委員長の指名に変えた」ことで、運営規則については大きな変更はない。
最後に、次回の定例委員会の開催予定を8月19日(火)午後4時からと申し合わせ、議事を終了した。
以上