第238回-2021年9月
千葉県八街市児童5人死傷事故報道における同級生へのインタビューについての討論で委員長コメントを公表…など
2021年9月28日、第238回青少年委員会を千代田放送会館会議室およびオンラインで開催し、7人の委員全員が出席しました。
千葉県八街市の児童5人死傷事故の取材での被害児童の同級生へのインタビューについて討論した結果、委員長コメントを公表することにしました。
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議にあたり、東海大学文化社会学部教授の水島久光氏からお話しをお聞きするとともに質疑応答を行いました。
また、8月後半から9月前半までに寄せられた視聴者意見について議論し、続いて9月の中高生モニター報告(テーマ:「オリンピック・パラリンピック関連番組について」)を検討しました。中高生モニターの「自由記述」では、「NHK以外の放送局でももっとパラリンピックの中継をしてほしいと感じた」という意見が複数のモニターからありました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、10月26日に定例委員会を開催します。
八街市児童5人死傷事故報道における同級生へのインタビューについての討論で委員長コメントを公表
千葉県八街市の飲酒運転による児童5人死傷事故の取材で、被害者の同級生へのインタビューを放送した番組について委員会で複数の放送局に対し、取材の目的・保護者等への許諾の取り方・チェック体制・2005年の「『児童殺傷事件等の報道』についての要望」の認識状況、などを文書にて問い合わせをし、その報告メモを基に討論を進めました。
事件直後のインタビューが子どもに与える影響とともに、2005年時には顕著ではなかった問題として、放映された画像と発言が、SNSや画像メディアとして記録、加工され拡散配信されてしまう可能性が大きくなったという事が挙げられました。今回の取材では保護者と本人にインタビューの同意を得たということですが、インタビュー画像が記録加工され、長い期間にわたって拡散配信されていく可能性についてまで説明したかどうかが重要なポイントの1つとして討論されました。子どもがPTSDになる、後のいじめの対象になる、あるいは、大人になってからもその発言を引きずる等の可能性もあるので、放送局には再考をお願いしたいとの意見が出されました。
以上を踏まえて、事故の被害者周辺の未成年者への取材の在り方に関し、取材や放送時に留意すべき点について、《委員長コメント》を出すこととなりました。
※
委員会の議論を受け、榊原委員長から、次のような《委員長コメント》が出されました。《委員長コメント》とは、「審議」には進まないが、青少年委員会の委員長として、特に注意してもらいたい点、配慮してほしい点などを述べたものです。
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議
2009年のBPO放送倫理検証委員会第7号意見書「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」作成の経緯等について -水島久光東海大学教授
現在進行中の「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議の参考とするために、7号意見書をとりまとめた経緯等を伺いました。
今から12年前である2009年のBPO放送倫理検証委員会第7号意見書「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」には、社会状況が悲痛な停滞感のある中では嘲笑的な笑いの構造がどんどん進んでいくのではないか、みんなでそれを笑わなければいけないような同調圧力が生まれ、それが暴走して一人の人間を攻撃するとか、社会がそうした風潮に染まっていく危険性が、SNS等の発展と共に進むのではないかと指摘されていました。(同意見書P.12)
当時の放送倫理検証委員として同意見書の作成に携わり、また、社会心理学の立場からコミュニケーション学を専門とする東海大学文化社会学部教授の水島久光氏から、同意見書を出した当時の経緯及び議論状況並びにその後の放送界の変化についてお話しを伺い、その後質疑応答を行いました。
水島教授の指摘された点を参考に、審議を続けていくことになりました。
視聴者からの意見について
8月後半から9月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
男性アイドルが冷水を浴びる修行を体験、水着が溶けて全裸になるという企画に対し、「いじめ・セクハラだ」「学校のプールで真似されて悲しむ生徒がいないことを願う」等の意見が寄せられました。
委員からは、「了解してのことのようには見えるが、それをいじめに繋がる印象を受ける人もいるだろう」「今回も男性だが、女性ではまずあり得ない。その辺の課題もある」との意見が出されました。
大掛かりなセットで傾斜の付いたレール上を、バーベルがゴロゴロと転がってきて、そのバーベルの棒を足のすねで受け止める、その痛みに耐える足のすね最強ナンバーワンを決めるという企画に対し、「エスカレートすれば骨折する」「苦悶している様を笑うのは余りにも酷い」という意見が寄せられました。
委員からは、「リアクション大会のようなもの」「巨大なセットを使っており、マネできないような、ある種防御線を張っている」等の意見が出されました。
大きな巨大風船をかぶって、柑橘系の液体を吹きかける銃で撃ち合って、その風船を割るという企画について、「子ども達が真似したら窒息などの重大事故に繋がりかねない」「注意喚起は小さい文字でされていたが、子どもはそんな所は読まない、見た目だけで真似をする」等の意見が寄せられました。
委員からは、「一般人にはマネできない」「安全対策もきちんと取られている」等の意見が出されました。
劇場版アニメが話題となった作品のゴールデン帯での放送について、「流血、残虐なシーンが多すぎる」「人を食べたり、腕がもげたり、ひどく暴力的でグロテスクな画が多くて大変不快」等の意見が寄せられました。
委員からは、「映画も大ヒットして、受け入れられているのでは」「注意しながら見てくださいということも、世の中的には了解されている」等の意見が出されました。
クイズ番組のルールで、部屋の中の”あるもの“を100回動かすと解答できるという設定になっており、それが「金魚の泳ぐ水槽」だったのですが、「生き物にストレスをかける行為だ」「動物虐待ではないか」等の声が寄せられました。
委員からは、「直接金魚を苦しめるものではない」等の意見が出されました。
以上は「討論」等に入ることはありませんでした。
催眠術をかけて記憶をなくさせて、トイレで爆竹を鳴らすというドッキリを何度も仕掛けてループにはめる企画に対して、「芸人に催眠術をかけて記憶を消し、何度も同じドッキリを仕掛けて皆で大笑いしていた。人の記憶を操作するなど倫理的に許されない」「いじめやパワハラは仕掛ける側が“いじめじゃないよ”と言い逃れすれば、一日中どころか一生ループが止まらない」等の意見が寄せられました。
委員からは、「民放連の放送基準 第3章 児童および青少年への配慮 (20)に催眠術を取扱う場合は、児童および青少年に安易に模倣させないよう特に注意するようにとされており、ドッキリであるとしても、催眠術をかけること自体の演出もいかがなものか」「民放連の放送基準に注意規定があることを確認しているのか」等の意見が出され、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」の審議の中で、引き続き議論することとなりました。
中高生モニター報告について
35人の中高生モニターにお願いした9月のテーマは、「オリンピック・パラリンピックの関連番組について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の欄も設けました。全員から報告がありました。
「オリンピック・パラリンピックの関連番組について」で複数のモニターから意見が寄せられたのは6番組でした。『東京2020オリンピック 開会式』(NHK総合)に6人から、『東京パラリンピック総集編』(日本テレビ)に4人から、『東京2020パラリンピック 閉会式』(NHK総合)と『東京2020パラリンピック あさナビ』(NHK総合)、『ハートネットTV「パラマニア」』(NHK Eテレ)、そして『ジャンクSPORTS』(フジテレビ)にそれぞれ2人から報告がありました。
「自由記述」では、今月もオリンピックに関連して記述したモニターが最も多く、複数のモニターから上がった内容は、「NHK以外の放送局でももっとパラリンピックの中継をしてほしいと感じた」「オリンピック・パラリンピックの開催とコロナ感染者数の増加は関係があったのか否か気になる」というものでした。今回は、ドラマや報道番組などについて、個別の番組名を挙げて感想を書いたモニターがいつもより多くいました。また、BPO青少年委員会で「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」が審議入りしたことについても複数の意見や感想が寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『よるドラ「古見さんは、コミュ症です」』(NHK総合)と『サザエさん』(フジテレビ)にそれぞれ9人が、『東大王 ★クイズに青春を捧げた夏・・・高校日本一決定★』(TBSテレビ)に3人が、『ロッチと子羊~迷えるあなたに哲学を~』(NHK Eテレ)と『高校生いいeeeee!STAGE:0 2021 eスポーツ甲子園』(テレビ東京)にそれぞれ2人が感想を寄せています。
◆委員の感想◆
◆モニターからの報告◆
以上