第309回放送と人権等権利に関する委員会

第309回 – 2022年10月

「ペットサロン経営者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2022年10月18日(火)午後4時~午後8時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを踏まえた決定文草案を受けて、活発に議論が行われた。次回委員会でさらに文案を検討していくこととなった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、提出された書面を確認し、委員から質問が出された。今後の方向性などを議論していくこととなった。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

4. その他

12月に札幌で開催される意見交換会の内容について、事務局から報告した。

以上

第176回 放送倫理検証委員会

第176回–2022年10月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見に対する報道について報告

第176回放送倫理検証委員会は10月14日に千代田放送会館で開催された。
委員会が9月9日に公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見について、テレビ、新聞がどう報じたのか報告された。
また、9月にBPOに寄せられた視聴者意見が報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年10月14日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表について報告

委員会は9月9日、NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。今回の委員会では、NHKを含めテレビ、新聞がどのように報じたのかが報告された。これに関連して、総務省がNHKに対して行政指導を行ったことについて議論したところ、多くの委員から行政指導がなされたことについて懸念が示された。委員会は、番組内容に関する行政指導としては、2015年のNHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"に対する文書による厳重注意以来の指導になること、委員会は「『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見」(委員会決定第23号)において、放送法5条は放送事業者が自らを律するための「倫理規範」であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではなく、「放送局が自律的に番組基準を定め、これを自律的に遵守すべきことを明らかにしたものなのである。したがって、政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない。」との意見を表明していることを再度確認した。その上で、今回の行政指導は、NHKの報告書提出から約半年を経てなされたものであり、放送局が自主的にその原因を調査し再発防止策を検討して問題を是正すること自体が脅かされたとまではいえないこと等を踏まえて、委員会として意見を表明することはしないものの、委員会が議論を行ったことを公表することにより、今後も総務省の行政指導に対しては注視していくことを明らかにすることとした。

2. 9月に寄せられた視聴者意見を議論

9月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の国葬報道・特別番組に対してさまざまな意見があったことや、民放番組のコメンテーターが、国葬に大手広告代理店が関与したという趣旨の事実に基づかない発言をし、訂正・謝罪に至ったことに対する批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告した。

以上

2022年9月に視聴者から寄せられた意見

2022年9月に視聴者から寄せられた意見

情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、「大手広告代理店が入っている」と発言、翌日「事実ではなかった」と訂正して謝罪。両放送回に多くの意見が寄せられました。

9月にBPOに寄せられた意見は1,867件で、先月から319件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール82%、電話16%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性42%、女性19%で、世代別では40歳代25%、50歳代22%、30歳代20%、60歳以上15%、20歳代12%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、9月の送付件数は944件、59事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から28件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、政治的意図を持って演出された可能性を指摘し、ある大手広告代理店が関与していたと発言。しかし翌日「同広告代理店は関わっていなかった」と訂正、謝罪しました。この発言と訂正に多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は37件、CMについては20件でした。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は62件で、前月から9件減少しました。
今月は「表現・演出」が16件、「要望・提言」が11件、「性的表現」が9件、それに「報道・情報」が6件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、政治的意図を持って演出された可能性を指摘し、ある大手広告代理店が関与していたと発言。会場で故人を悼んだ人の尊厳を著しく傷つけるような発言だ。国葬には反対意見も多かったので個人の意見を封じる必要はないとは思うが、誤った情報を発信するような番組には再発防止を強く求める必要があると思う。

  • 元首相の国葬に大手広告代理店が関わっているという発言について、翌日、当該情報番組で「関わっていなかった」と訂正、謝罪した。公にデマを拡散したのに「一言謝罪して終わり」では、ネットで陰謀論を発言したり誹謗中傷したりしている人たちと変わらない。テレビの影響力は大きい。訂正を見逃してデマを信じたままの視聴者もいる。厳しく対応すべきだと思う。

  • 元首相の国葬に大手広告代理店が関わっているという発言について。内容に責任を持つことが前提での「報道の自由」ではないのか。それ相応の責任を取ってもらいたい。

  • 日本武道館での国葬の司会者が放送局のアナウンサー。報道機関の職員が国の側に立って仕事をすべきではないと思う。

  • テレビ全局が国葬反対の意見ばかり放送している。私は違った意見も知りたい。多方面からの意見を知って自身の考えを見つめたいからだ。それが放送の役目ではないだろうか。

  • 2世信者も含めて旧統一教会の被害者は今もたくさんいる。メディアが報じなかった「空白の30年」がなければ被害に遭わなかったかもしれない人がいる。メディアの責任は重大。継続して報道する義務がある。「政治家を責め過ぎている」という意見もあるが、政治家が広告塔になったことは重大。

  • 私たち家族は世界平和統一家庭連合の現役信者。普通に納税し生活している。番組で元信者の証言などが取り上げられ、教団の解散を求められているように感じた。教団がすべて否定されることで、自分たちが国家から否定され人権もないと感じる。番組は元信者の精神的苦痛を伝えているが、普通に信仰している私や子どもたちも人間関係が難しくなるといった状況に追い込まれていることを知ってほしい。子どもたちの未来は平等。公平な報道をお願いしたい。

  • 園児バス置き去り事件で、幼稚園全体を責める報道が多いのが心配。幼稚園は財政的に厳しく人手不足を解消できない。労働条件の改善も難しく優秀な人材からどんどんやめていく。事件の背景としてこの点を指摘する番組は皆無。テレビは正しい報道ができる、信用に値するメディアなのか。園長、園の責任だけを問うていては、いつまでたっても問題は解決しない。

  • 政治討論番組での与党幹部の「左翼的な過激団体と共産党との関係がずっと言われてきた」という発言について、放送局はきちんと検証し対応すべきだと思う。根拠に乏しい内容を放送してしまうことを厳に避けるべき。そうしなければ「言った者勝ち」になってしまう。

  • 近隣トラブルの果てに男が隣家の住民男性と殴り合い、刃物で刺した事件。防犯カメラに記録された「殴る」「刺す」動作、衣服についた血などの鮮明な映像が放送された。こうした映像を、子どもも見るテレビで流さなくてはいけないのか。とても不適切だと思う。

【バラエティー・教養】

  • 今問題になっている旧統一教会への入信のきっかけは、占い、霊視などによって不安をあおったりだましたりすること。心霊番組や占い番組は、ありもしない霊や予知などに市民権を与えていて問題だ。

  • バラエティー番組で芸人に企画内容を伝えずに目隠しをし、身体を拘束して鍵をかけ、通りかかった人(娯楽施設の入場者)に助けてもらえるまで長時間放置。人権を侵害していると思う。

  • ラジオのトーク番組で男性タレントが裸になり、陰部に墨汁をつけて視聴者プレゼントのTシャツに文字を書く様子を女性タレントが細かく説明していた。内容も表現も下品極まりない。途中で気分が悪くなり聴くのをやめた。ラジオ番組を汚さないでほしい。

  • 番組で大家族の夕食の風景を紹介していた。家族9人分の夕食をパートから帰宅した母親が一人で用意し、夫や子どもは一切手伝わない。こうした状況が一般的なことであるかのようにテレビで扱われると「女性が家族のために奉仕するのは当たり前」という印象を与え、男女共同参画やダイバーシティの推進が阻害される。これを見た子どもの教育にも良くない影響を与えると思う。

  • 出演した芸能人が、"猫島"で猫を管理する女性に独身かどうかたずね、独身と分かると、猫より自分の人生の管理をという主旨の発言。結婚は個人の自由、こんな発言はありえないと思う。制作側が「面白い」と思ってカットしなかったのであれば、その倫理観も疑う。クセのある芸能人の魅力があってこその番組であることは理解しているが、この発言はあまりにもデリカシーに欠ける。

  • 「中毒性のある食品」と紹介していた料理の名前が「麻薬卵」。軽々しい名前のつけ方、紹介の仕方で非常に残念。このネーミングの妥当性を問うような報道なら理解できるが、メディア側がこの名前を積極的に使うのはいかがか。

【その他】

  • テレビで放送した映画に、児童相談所の対応ルールを誤解させ、現実の虐待などの問題の解決を困難にしかねない内容があった。劇場公開時にすでに指摘されて分かっていた問題。放送時に、誤解を広めないような対応をすべきだった。

  • 点描で原画が作成されたアニメの映像を見た直後、目がチカチカし、目の奥の痛み、頭痛がしばらく続いた。強い光の点滅はないが“光感受性発作”と同じようなことが起きたのだと思う。テレビで放送する場合は注意してほしい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、素人の成人男女が無人島でサバイバル生活する外国のリアリティー番組を紹介したが、仲違いした女性が男性に「あんた、身体が臭いわ!」との暴言を吐き、それが日本語音声と字幕で出た。視聴者で、とくに体臭が気になる若者が傷つくのでは、と思った。

  • バラエティー番組の企画で、お笑い芸人が目隠しされた状態で、お化け屋敷に長時間放置された。これはパニック障害の発症を誘発するもので、見ているだけでつらくなった。

【「要望・提言」】

  • 過去の性加害が問題化した男性俳優が連続ドラマに引き続き出演している。示談で済んだといっても加害者本人が認めていることだ。子供たちになぜ出演を続けているのか説明できない人物は、降板させるべきだ。

【「性的表現」に関する意見】

  • バラエティー番組で、人気男性アイドルにCMビデオ撮影と偽り、水に溶ける衣装を着せて、頭上から大量の水を落として全裸にしてしまうドッキリがあった。正直、ドッキリとは思えず笑えなかった。不快で嫌な気持ちになった。

  • 男性アイドルがドッキリと称して全裸にさせられたが、公衆の面前で秘部(局部)を無理やりさらさせる行為は、人間の尊厳を損なうものではないだろうか。子供が学校などで真似たら、直ちにいじめと認定されるような行為だろう。

  • 男性アイドルが全裸にされるドッキリは、教育的な面や男性へのセクハラの面からみても、とても許される行為とは思えず、不快でした。全裸で笑いを取るというのは理解できません。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 通園バスの中に置き去りにされた園児が死亡した幼稚園(認定こども園)の近隣住民で、小学生の親です。過熱した報道に、子供たちが不安がっています。子供たちへの取材のせいで、保護者が下校時の小学生に付き添っているのを知っていますか。園長の自宅を報道したために、ユーチューバーが訪れたことを知っていますか。園長や園の関係者でない親族に何かあったら、責任を取れるのでしょうか。

2022年10月3日

2022年 10月3日

BPO事務局の対応について

BPOは、新型コロナウイルスの感染防止対策に留意しつつ、視聴者電話の受付時間を通常に戻しました。
電話の受付時間は、平日、10時から12時までと13時から17時までです。
なお、今後の感染状況によっては、受付時間の短縮や受付の休止をすることがあります。