第132回–2018年12月
日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』について追加の報告書を要請し討議を継続
第132回放送倫理検証委員会は12月14日に開催された。
飲酒運転によって8人が死傷した交通事故で、発生当初、事実と異なるニュースを報道し、容疑者逮捕を受けてお詫び放送した青森テレビのローカルニュース番組について、当該放送局から報告書の提出を受け討議した。第一当事者や事故原因を誤って推認させる当該放送局の報道内容は、刑事事件に関するセンシティブな情報の取り扱いという観点からは裏付け取材が不十分で、放送倫理上の問題がなかったとは言えない。しかしながら、容疑者逮捕を受けて、お詫びの放送も行い、誤報に至った経緯を詳細に検証したうえ適切な再発防止策も実施しているとして、当該放送局の自主・自律の対応を評価して討議を終了した。
海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると一部週刊誌が報じた日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、委員会は、当該放送局からの報告書をもとに討議した結果、さらに確認したい点があるとして、追加の報告書を求めて討議を継続することになった。
1. 8人死傷の交通事故で事実と異なるニュースを報道し謝罪した青森テレビのローカルニュースを討議
青森県つがる市で2018年9月22日、4台の車が絡み8人が死傷する交通事故が発生し、この事故の続報として青森テレビは、翌23日の『JNNニュース』内ローカルゾーンと24日の『わっち!!ニュース』において、「対向する軽自動車同士の正面衝突に後続の2台が巻き込まれた可能性がある」と放送した。さらに25日の『ひるおび!JNNニュース』内ローカルゾーンと『わっち!!ニュース』で、「最初に正面衝突した軽自動車のどちらかの運転手が酒気帯びだった可能性がある」と報道した。ところが、10月22日、青森県警が、事故は後ろから来た飲酒運転の乗用車が暴走し前方の軽自動車に追突したことが原因とみられ乗用車の運転手を逮捕したと発表した。このため当該放送局は、一連のローカルニュースでの誤報を認め、お詫びの放送を行った。
当該放送局の報告書によると、県警から「放送内容は警察の見立てと違う」などと何度か示唆されていたにもかかわらずサインを見逃し、さらに当該放送局の誤報をもとにインターネット上で事故の犠牲者を容疑者扱いする中傷が広がっていたことにも気付かなかったという。
委員会では、刑事事件に関するセンシティブな情報の取り扱いという観点からは、当該番組は裏付け取材が不十分で、誤った情報がネットで拡散して被害者家族が心を痛めていたことは非常に重く、放送倫理上の問題がなかったとはいえないなどと厳しい意見が相次いだ。しかしながら、当該放送局は、誤報に至った経緯を社内で詳細に検証したうえ報告書に包み隠さず記載し、適切な再発防止策も実施しているとして、当該放送局の自主・自律の対応を評価して討議を終了した。
[委員の主な意見]
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「可能性がある」という表現とはいえ、酒気帯び運転の当事者をほぼ特定してしまうことが分かっていて、なぜ放送前にもっと取材して確証を得ようとしないのか理解に苦しむ。
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放送の結果生じる影響をどれだけ真剣に考えたのか。デスクや編集長という立場の人間こそ、一歩引いた冷静な目で見ることが必要。
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演出とか見せ方の問題でなく、事実の取り扱いを間違った事案だ。刑事事件のセンシティブな情報を扱っているという自覚が全く感じられない。
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血中アルコール濃度など科学的根拠を追加取材をしていたら、早い段階で誤報を修正できたのではないだろうか。
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事故で家族を失ったうえに、1か月もの間いわれのない中傷にさらされた被害者遺族が受けた報道被害は、容易に消えるものではなく、事案として極めて重い。
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関係者の内面にまで踏み込んで原因を追究する報告書には訴えるものがある。それほどの痛みを感じているのなら、それを糧にして自分たちの力で立ち直ってほしいと思う。
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刑事事件を扱った過去の事案と比較しても、生じた被害は深刻であるが、報告書に示された再発防止策が確実に実行されるのであれば、委員会で審議して意見を述べる必要はないのではないか。
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事後対応もきっちりとしており、当該放送局は自らを律することができる局だと思う。
2.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』について日本テレビに追加の報告書を要請し討議を継続
2017年2月12日と2018年5月20日に放送された日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると一部週刊誌が報じたことを受け、当該放送局から報告書と同録DVDが提出された。報告書には、「祭り企画」としてこれまでに放送した111本の企画すべてについても触れられている。委員会はこの報告書に基づき、委員会決定第7号「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」(2009年11月)や、委員会がこれまでに出した、そのほかのバラエティー番組についての意見も踏まえながら討議した。その結果、2件の「祭り企画」以外にも確認したい放送内容があり、考え方を重ねて聞きたい点があるとして、追加の報告書を求めて討議を継続することになった。
なお神田委員長は、法律顧問を務めたことがある制作会社が「祭り企画」の制作に参加していたため、この番組の議事に加わらないことになった。
3. その他
11月29日、北海道地区の意見交換会が開催され、9月に起きた北海道胆振東部地震を中心に意見を交わした。日本で初めて発生した「ブラックアウト」(大規模な電源喪失)によって、放送はするものの視聴者がテレビを見ることができないという前代未聞の状況下で生じたさまざまな問題等が報告された。
以上