第134回–2019年2月
知事選挙期間中に特定候補だけ放送したフジテレビ『ダウンタウンなう』の討議を終了
第134回放送倫理検証委員会は2月8日に開催された。
海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じた日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、委員会は、番組制作者から直接話を聞き、放送倫理上の問題について確認したいとして、前回審議入りを決めた。この日の委員会では、近く予定している番組制作者へのヒアリングについて、対象者や聞くべきポイント等について、委員の間で意見を交わして確認した。
また、2月3日に行われた愛知県知事選挙に立候補していた現職の候補者を、告示直後にもかかわらず番組内の企画で取り上げたフジテレビの『ダウンタウンなう』について、当該放送局に報告書の提出を求め討議した。報告書によると、番組制作スタッフも編成担当者も誰ひとりとして愛知県知事選挙が実施されていることに気付かなかった。このため、選挙を巡って過去に放送倫理上の問題が生じた際に設けた社内の再発防止策が機能せず放送に至ったという。委員会では、選挙に関する過去の委員会決定等を踏まえると放送倫理違反は免れないとの厳しい意見も出された。しかし最終的には、当該放送局が今回のケースを受けて、これまでの再発防止策に加えて、国政や地方のあらゆる選挙について、日程や立候補予定者などを細かくチェックして番組スタッフ間で情報共有をはかる等の再発防止策を新たに講じたとしていることを踏まえ、委員会は、今後、当該放送局が当該再発防止策を実効的に運用するかどうか見守るとの結論に至った。併せて、委員からの主な意見を記載して、当該放送局に対して、繰り返される問題点を見つめ直し、当該番組の担当部門だけでなく、全社で自主・自律に取り組むよう注意喚起をすることとし、討議を終了した。
議事の詳細
- 日時
- 2019年2月8日(金)午後5時~午後8時20分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報道された日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について審議
2. 知事選挙期間中に特定候補だけ放送したフジテレビの『ダウンタウンなう』を討議 - 出席者
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神田委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員
1. 「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議
日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」の「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」という企画で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、日本テレビは当面「祭り企画」を休止にした。委員会は、バラエティー番組の演出の視点などについて番組スタッフの考えを直接聞きたいとして、二つの「祭り企画」を対象に審議入りしている。
この日の委員会では、まず担当委員が、ヒアリングのポイントとその理由を説明した。その上で、ヒアリング対象者の選定や、放送倫理上の問題をチェックするための要点などについて幅広く議論し、近く行われるヒアリングに備えることになった。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。
2. 知事選挙期間中にもかかわらず現職候補者の顔写真と名前を紹介したフジテレビのバラエティー番組『ダウンタウンなう』を討議
1月18日に放送されたフジテレビのバラエティー番組『ダウンタウンなう』の「有名人の豪邸で飲む」というコーナー企画で、大手ホテルチェーンの社長の自宅を訪問、これまで招かれたことがある主な著名人のひとりとして現職の愛知県知事を紹介した。番組では、首相経験者など5人の写真を張り付けたフリップを事前に準備し、司会役のタレントが順番に紹介、最後に愛知県知事の名前を読み上げた。写真は4回、計37秒間放送された。ところが、放送された18日は、愛知県知事選挙が告示された翌日であり現職知事も立候補していた。
委員会は、当該放送局に対して、選挙期間中にもかかわらず特定候補ひとりだけを放送した経緯について、報告書と番組DVDの提出を求めて討議した。報告書によると、番組制作に携わった関係者が誰ひとりとして愛知県知事選挙の実施を知らず、また社内のチェック体制が機能しなかったことから放送に至った。このチェック体制は、2016年フジテレビで選挙を巡って放送倫理上の問題が生じた際、その再発防止策として設けられたもので、選挙の情報を関係部局間で共有したうえで、番組ごとに配置されたプレビュー責任者が、番組プロデューサーや編成担当者と共に複数の目でチェックを行うというものであった。しかし、当該番組は、写真だけの使用であったことと地方選挙に対する制作スタッフの意識が薄かったことから、誰も気付かなかったという。
委員会では、選挙関連の放送を巡りこれまでに複数の委員会決定を出しており、当該決定等を踏まえると、当該番組の放送が選挙期間中であり、かつ番組があらかじめ写真を準備していたことなどからすれば、放送倫理違反は免れないのではないかという厳しい意見もいくつか出された。しかし最終的には、今回のケースを受けて当該放送局は、これまでの再発防止策に加えて、国政や地方のあらゆる選挙について、日程や立候補予定者などを細かくチェックして番組スタッフ間で情報共有をはかり、政治家に関しては、写真だけの使用や文字情報の場合でも細かく点検する素材担当責任者を設置し、チェック体制を強化する再発防止策を新たに講じたとしている。こうした対応を踏まえ、委員会は、今後、当該放送局が当該再発防止策を実効的に運用をするかどうか見守るとの結論に至った。併せて、委員からの厳しい意見を議事概要に公開し、当該放送局に対して、繰り返される問題点の本質を見つめ直し、当該番組の担当部門だけでなく、全社をあげて選挙の公平・公正性の確保のために自主・自律に取り組むよう注意喚起をすることとして、今回は審議に入らず討議を終了した。
[委員の主な意見]
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過去に同様の問題を起こし、猛反省して講じたはずの再発防止策が機能しなかったのは、地方選挙を意識していなかったことが原因では余りにお粗末過ぎる。
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「選挙の問題」をチェックするはずのプレビュー責任者が「選挙の問題」を見逃したのでは、担当を置いた意味がない。
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今年は統一地方選挙と参議院議員選挙の年なのに、番組制作に携わるスタッフが誰ひとりとして選挙を意識していないなどあってはならないことだ。
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選挙カレンダーを全社で共有し、政治家を取り上げる時は、必ず選挙の実施等をチェックすることを習慣にすべきだ。
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再発防止策として最終段階でのチェック役をひとり増やすだけでよいのか。制作現場の一人ひとりが、選挙期間中に候補者を登場させないというルールの意味を理解し、基本的な意識を高めることが必要ではないか。
以上